説明

フタラジノン誘導体

式(I)


[式中、RHは、縮合シクロヘキセン環上の1個以上の場合により存在する置換基を表し;R1は、Hおよびハロより選択され;RNは、Hおよび場合により置換されたC1-10アルキルより選択され;かつRC1およびRC2は、独立して、H、R、C(=O)ORより選択され、ここで、Rは、場合により置換されたC1-10アルキル、場合により置換されたC5-20アリールまたは場合により置換されたC3-20ヘテロシクリルであり;RC1およびRC2は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、場合により置換されたスピロ縮合C5-7炭素環または複素環を形成してもよい]の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタラジノン誘導体およびその医薬としての使用に関する。特に、本発明は、酵素ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1の活性を阻害するためのこれらの化合物の使用に関する。この酵素はポリ(ADP-リボース)シンターゼおよびポリADP-リボシルトランスフェラーゼとしても知られ、一般にPARP-1と呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の酵素PARP-1(113 kDaのマルチドメインタンパク質)は、DNAの一本鎖切断または二本鎖切断を認識してそれらに迅速に結合する能力により、DNA損傷のシグナル伝達に関与している(D’Amoursら, Biochem. J., 342, 249-268 (1999))。
【0003】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼのファミリーには、現在約18種のタンパク質が含まれ、それらはすべてその触媒ドメインに特定のレベルの相同性を示すが、それらの細胞機能は異なっている(Ame ら, Bioessays., 26(8), 882-893 (2004))。このファミリーのうち、PARP-1(最初のメンバー)およびPARP-2は、これまでのところ、その触媒活性がDNA鎖切断の出現により刺激されるただ2つの酵素であり、そのため、それらはファミリーの中で独特の存在である。
【0004】
現在、PARP-1が、遺伝子増幅、細胞分裂、分化、アポトーシス、DNA塩基除去修復ならびにテロメア長および染色体安定性に対する作用を含むさまざまなDNA関連機能に関与することが知られている(d’Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。
【0005】
PARP-1が、それによりDNA修復および他の過程をモジュレートするメカニズムに関する研究により、細胞核内でのポリ(ADP-リボース)鎖の形成におけるその重要性が確認された(Althaus, F.R. およびRichter, C., “ADP-Ribosylation of Proteins: Enzymology and Biological Significance”, Springer-Verlag, Berlin (1987))。DNA結合型の活性型PARP-1は、NAD+を利用してさまざまな核標的タンパク質(例えば、トポイソメラーゼ、ヒストンおよびPARPそれ自体)上でポリ(ADP-リボース)を合成する(Rhunら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 245, 1-10 (1998))。
【0006】
ポリ(ADP-リボシル)化は、悪性形質転換にも関係している。例えば、PARP-1活性は、SV40で形質転換された繊維芽細胞の単離核中でより高くなる一方で、白血病細胞および結腸癌細胞はいずれも、対応する正常な白血球および結腸粘膜よりも高い酵素活性を示す(Miwaら, Arch. Biochem. Biophys., 181, 313-321 (1977); Burzioら, Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 149, 933-938 (1975); およびHiraiら, Cancer Res., 43, 3441-3446 (1983))。さらに最近、悪性前立腺腫瘍において、良性の前立腺細胞と比較して有意に増加したレベルの活性PARP(大部分がPARP-1)が、高いレベルの遺伝的不安定性と関連して確認された(McNealyら, Anticancer Res., 23, 1473-1478 (2003))。
【0007】
DNA修復におけるポリ(ADP-リボシル)化の機能的役割を解明するために、PARP-1に対するいくつかの低分子量阻害剤が使用されてきた。アルキル化剤により処理された細胞において、PARPを阻害するとDNA鎖切断および細胞死滅の顕著な増加がおこる(Durkaczら, Nature, 283, 593-596 (1980); Berger, N.A., Radiation Research, 101, 4-14 (1985))。
【0008】
続いて、そのような阻害剤は、潜在性致死損傷の修復を抑制することにより、放射線応答の効果を増大させることが明らかにされた(Ben-Hurら, British Journal of Cancer, 49 (Suppl. VI), 34-42 (1984); Schlickerら, Int. J. Radiat. Bioi., 75, 91-100 (1999))。PARP阻害剤は、低酸素腫瘍細胞の放射線感受性を増大させるのに有効であることが報告された(US 5,032,617;US 5,215,738およびUS 5,041,653)。特定の腫瘍細胞系において、PARP-1(およびPARP-2)活性の化学的阻害は、非常に低線量の放射線に対する感受性の著しい増大にも関係している(Chalmers, Clin. Oncol., 16(1), 29-39 (2004))。
【0009】
さらに、PARP-1ノックアウト(PARP -/-)動物は、アルキル化剤およびγ線照射に応答してゲノム不安定性を示す(Wangら, Genes Dev., 9, 509-520 (1995); Menissier de Murciaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 7303-7307 (1997))。より最近のデータにより、PARP-1およびPARP-2は、ゲノム安定性の維持において、重複および非重複の両方の機能を有することが示されており、そのため、それらはどちらも興味深い標的である(Menissier de Murciaら, EMBO. J., 22(9), 2255-2263 (2003))。
【0010】
最近、PARPの阻害が抗血管新生効果を有することも報告された。そこでは、HUVECSにおけるVEGFおよび塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)誘導性の増殖、移動および管形成の用量依存的な減少が報告された(Rajeshら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 350, 1056-1062 (2006))。
【0011】
PARP-1の役割は、特定の血管疾患、敗血症性ショック、虚血性傷害および神経毒性においても実証された(Cantoniら, Biochim. Biophys. Acta, 1014, 1-7 (1989); Szaboら, J. Clin. Invest., 100, 723-735 (1997))。DNAの鎖切断を引き起こす酸素ラジカルによるDNA損傷(この鎖切断は、続いてPARP-1により認識される)は、PARP-1阻害剤の研究により示された通り、このような疾患状態に対する主要な寄与因子である(Cosiら, J. Neurosci. Res., 39, 38-46 (1994); Saidら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93, 4688-4692 (1996))。より最近になって、PARPは、出血性ショック(Liaudetら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97(3), 10203-10208 (2000))、黄斑変性(AMD)および網膜色素変性における損傷のような目(眼)に関連する酸化的損傷(Paquet-Durandら, J. Neuroscience, 27(38), 10311-10319 (2007))、ならびに肺、心臓および腎臓などの器官の移植拒絶(O’Valleら, Transplant. Proc., 39(7), 2099-2101 (2007))の発病機序において、役割を果たしていることが実証された。さらに、PARP阻害剤による治療は、膵炎などの急性疾患ならびにPARPが役割を果たすメカニズムにより引き起こされる肝臓および肺の損傷を伴う急性疾患を軽減することが示された(Motaら, Br. J. Pharmacol., 151(7), 998-1005 (2007)。
【0012】
PARP-1活性を阻害することにより、哺乳類細胞の効率的レトロウイルス感染が阻止されることも実証された。組換えレトロウイルスベクター感染のそのような阻害は、多種多様な細胞型で起こることが示された(Gakenら, J. Virology, 70(6), 3992-4000 (1996))。そこで、抗ウイルス療法および癌治療における使用のために、PARP-1の阻害剤が開発された(WO 91/18591)。
【0013】
さらに、PARP-1阻害は、ヒト繊維芽細胞における老化特性(RattanおよびClark, Biochem. Biophys. Res. Comm., 201(2), 665-672 (1994))およびアテローム性動脈硬化などの老化に伴う疾患(Hansら, Cardiovasc. Res., (2008年1月31日))の発現を遅らせると推測された。これは、テロメア機能の制御においてPARPが果たす役割と関連する可能性がある(d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。
【0014】
PARP阻害剤は、炎症性腸疾患(Szabo C., “Role of Poly(ADP-Ribose) Polymerase Activation in the Pathogenesis of Shock and Inflammation”, J. Zhang編“PARP as a Therapeutic Target”; 2002年, CRC Press; 169-204)、潰瘍性大腸炎(Zingarelli, Bら, Immunology, 113(4), 509-517 (2004))、およびクローン病(Jijon, H.B.ら, Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 279, G641-G651 (2000))の治療に関連するとも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,032,617号明細書
【特許文献2】米国特許第5,215,738号明細書
【特許文献3】米国特許第5,041,653号明細書
【特許文献4】国際公開第91/18591号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】D’Amoursら, Biochem. J., 342, 249-268 (1999)
【非特許文献2】Ame ら, Bioessays., 26(8), 882-893 (2004)
【非特許文献3】d’Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999)
【非特許文献4】Althaus, F.R. およびRichter, C., “ADP-Ribosylation of Proteins: Enzymology and Biological Significance”, Springer-Verlag, Berlin (1987)
【非特許文献5】Rhunら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 245, 1-10 (1998)
【非特許文献6】Miwaら, Arch. Biochem. Biophys., 181, 313-321 (1977)
【非特許文献7】Burzioら, Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 149, 933-938 (1975)
【非特許文献8】Hiraiら, Cancer Res., 43, 3441-3446 (1983)
【非特許文献9】McNealyら, Anticancer Res., 23, 1473-1478 (2003)
【非特許文献10】Durkaczら, Nature, 283, 593-596 (1980)
【非特許文献11】Berger, N.A., Radiation Research, 101, 4-14 (1985)
【非特許文献12】Ben-Hurら, British Journal of Cancer, 49 (Suppl. VI), 34-42 (1984)
【非特許文献13】Schlickerら, Int. J. Radiat. Bioi., 75, 91-100 (1999)
【非特許文献14】Chalmers, Clin. Oncol., 16(1), 29-39 (2004)
【非特許文献15】Wangら, Genes Dev., 9, 509-520 (1995)
【非特許文献16】Menissier de Murciaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 7303-7307 (1997)
【非特許文献17】Menissier de Murciaら, EMBO. J., 22(9), 2255-2263 (2003)
【非特許文献18】Rajeshら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 350, 1056-1062 (2006)
【非特許文献19】Cantoniら, Biochim. Biophys. Acta, 1014, 1-7 (1989)
【非特許文献20】Szaboら, J. Clin. Invest., 100, 723-735 (1997)
【非特許文献21】Cosiら, J. Neurosci. Res., 39, 38-46 (1994)
【非特許文献22】Saidら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93, 4688-4692 (1996)
【非特許文献23】Liaudetら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97(3), 10203-10208 (2000)
【非特許文献24】Paquet-Durandら, J. Neuroscience, 27(38), 10311-10319 (2007)
【非特許文献25】O’Valleら, Transplant. Proc., 39(7), 2099-2101 (2007)
【非特許文献26】Motaら, Br. J. Pharmacol., 151(7), 998-1005 (2007)
【非特許文献27】Gakenら, J. Virology, 70(6), 3992-4000 (1996)
【非特許文献28】RattanおよびClark, Biochem. Biophys. Res. Comm., 201(2), 665-672 (1994)
【非特許文献29】Hansら, Cardiovasc. Res., (2008年1月31日)
【非特許文献30】d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999)
【非特許文献31】Szabo C., “Role of Poly(ADP-Ribose) Polymerase Activation in the Pathogenesis of Shock and Inflammation”, J. Zhang編“PARP as a Therapeutic Target”; 2002年, CRC Press; 169-204
【非特許文献32】Zingarelli, Bら, Immunology, 113(4), 509-517 (2004)
【非特許文献33】Jijon, H.B.ら, Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 279, G641-G651 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者らの一部は、PARP阻害剤として作用する一群の1(2H)-フタラジノン化合物を既に報告した(WO 2007/045877)。前記化合物のいくつかは、式:
【化1】

【0018】
[式中、
AおよびBは、一緒になって、場合により置換された縮合芳香族環を表し;
R1は、Hおよびハロより選択され;
RNは、Hおよび場合により置換されたC1-10アルキルより選択され;
RC1およびRC2は、独立して、H、R、C(=O)ORより選択され、ここで、Rは、場合により置換されたC1-10アルキル、場合により置換されたC5-20アリールまたは場合により置換されたC3-20ヘテロシクリルであり;RC1およびRC2は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、場合により置換されたスピロ縮合C5-7炭素環または複素環を形成してもよい]
により表すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、このたび、-A-B-により表される縮合芳香族環が縮合シクロヘキセン環に置き換えられている化合物を見出した。前記化合物は、PARPの活性の阻害レベル、および/もしくは放射線療法および種々の化学療法に対する腫瘍細胞の増感レベルの驚くべき向上、ならびに/または化合物の溶解度(水性媒体および/またはリン酸緩衝液中の)の驚くべき増大を示す。溶解度の増大は、IV経路による投与のため、または小児科で使用するための経口製剤(例えば、液体および小さい錠剤の形態)のために化合物を製剤するのに有用であり得る。本発明の化合物の経口バイオアベイラビリティーは増大する可能性がある。
【0020】
したがって、本発明の第1の態様は、式(I):
【化2】

【0021】
[式中、
RHは、縮合シクロヘキセン環上の1個以上の場合により存在する置換基を表し;
R1は、Hおよびハロより選択され;
RNは、Hおよび場合により置換されたC1-10アルキルより選択され;かつ
RC1およびRC2は、独立して、H、R、C(=O)ORより選択され、ここで、Rは、場合により置換されたC1-10アルキル、場合により置換されたC5-20アリールまたは場合により置換されたC3-20ヘテロシクリルであり;RC1およびRC2は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、場合により置換されたスピロ縮合C5-7炭素環または複素環を形成してもよい]
の化合物(またはその塩、溶媒和物、保護された形態またはプロドラッグ)を提供する。
【0022】
本発明の第2の態様は、第1の態様の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明の第3の態様は、ヒトまたは動物の体の治療方法における第1の態様の化合物の使用を提供する。
【0024】
本発明の第4の態様は、
(a) 細胞性PARP(PARP-1および/またはPARP-2)の活性の阻害によるポリ(ADP-リボース)鎖の形成の防止;
(b) 血管疾患;敗血性ショック;脳および循環器の両方の虚血性傷害;脳および循環器の両方の再灌流傷害;脳卒中およびパーキンソン病の急性および慢性治療を含む神経毒性;出血性ショック;目に関係する酸化的損傷;移植拒絶;関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性疾患;多発性硬化症;糖尿病の二次的影響;の治療;ならびに循環器の手術後の細胞毒性;膵炎;アテローム性動脈硬化;またはPARPの活性の阻害により改善される疾患;の急性治療;
(c) 癌治療における補助剤としての使用または電離放射線もしくは化学療法剤による治療のために腫瘍細胞を増感させるための使用;
のための医薬の調製における、本発明の第1の態様において定義される化合物の使用を提供する。
【0025】
特に、本発明の第1の態様において定義される化合物は、メチルメタンスルホネート(MMS)、テモゾロミドおよびダカルバジン(DTIC)などのアルキル化剤と共に、また、トポテカン(Topotecan)、イリノテカン(Irinotecan)、ルビテカン(Rubitecan)、エキサテカン(Exatecan)、ルルトテカン(Lurtotecan)、ギメテカン(Gimetecan)、ジフロモテカン(Diflomotecan)(ホモカンプトテシン類)のようなトポイソメラーゼ-1阻害剤と共に;また同様に、7-置換非シラテカン類(7-substituted non-silatecans);7-シリルカンプトテシン類、BNP 1350;およびインドロカルバゾール類などの非カンプトテシントポイソメラーゼ-I阻害剤、ならびにベンゾフェナジン類、XR 11576/MLN 576およびベンゾピリドインドール類のような二重トポイソメラーゼ-IおよびII阻害剤と共に、抗癌併用療法において(または補助剤として)使用することができる。このような組合せは、特定の薬剤の好ましい投与方法に応じて、例えば、静注用調製物として、または経口投与により、提供され得る。
【0026】
本発明の他のさらなる態様は、治療上有効量の第1の態様において定義される化合物を、好ましくは医薬組成物の形態で、治療を必要とする被験体に投与することを含む、PARPの阻害により改善される病気の治療、および治療上有効量の第1の態様において定義される化合物を、好ましくは医薬組成物の形態で、(電離)放射線療法または化学療法剤と組み合わせて、治療を必要とする被験体に同時にまたは連続的に投与することを含む、癌の治療を提供する。
【0027】
本発明のさらなる態様において、本発明の化合物は、相同的組換え(HR)依存性DNA二本鎖切断(DSB)修復活性が欠損している癌を治療するための医薬の調製において、またはHR依存性DNA DSB修復活性が欠損している癌を有する患者の治療(該患者に治療上有効量の化合物を投与することを含む)において、使用することができる。
【0028】
HR依存性DNA DSB修復経路は、連続的なDNAらせんを再形成させる相同的メカニズムを介してDNAにおける二本鎖切断(DSB)を修復する(K.K. KhannaおよびS.P. Jackson, Nat. Genet. 27(3): 247-254 (2001))。HR依存性DNA DSB修復経路の構成要素としては、ATM(NM_000051)、RAD51(NM_002875)、RAD51L1(NM_002877)、RAD51C(NM_002876)、RAD51L3(NM_002878)、DMC1(NM_007068)、XRCC2(NM_005431)、XRCC3(NM_005432)、RAD52(NM_002879)、RAD54L(NM_003579)、RAD54B(NM_012415)、BRCA1(NM_007295)、BRCA2(NM_000059)、RAD50(NM_005732)、MRE11A(NM_005590)およびNBS1(NM_002485)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。HR依存性DNA DSB修復経路に関与する他のタンパク質としては、EMSYなどの調節因子が挙げられる(Hughes-Daviesら, Cell, 115, pp523-535)。HR構成要素は、Woodら, Science, 291, 1284-1289 (2001)にも記載されている。
【0029】
HR依存性DNA DSB修復が欠損している癌は、正常な細胞と比較して、その経路を介してDNA DSBを修復する能力が減少し、もしくは抑止された1種以上の癌細胞を含むか、またはそのような癌細胞からなる可能性がある。すなわち、HR依存性DNA DSB修復経路の活性は、そのような1種以上の癌細胞において減少または消失している可能性がある。
【0030】
HR依存性DNA DSB修復経路の1種以上の構成要素の活性が、HR依存性DNA DSB修復が欠損している癌を有する個体の1種以上の癌細胞において、消失している可能性がある。HR依存性DNA DSB修復経路の構成要素は、当技術分野において十分に特徴が知られており(例えば、Woodら, Science, 291, 1284-1289 (2001)を参照されたい)、上に挙げた構成要素を含む。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞は、BRCA1および/またはBRCA2欠損表現型を有し得る。すなわち、BRCA1および/またはBRCA2活性が、癌細胞において減少または消失している。この表現型を有する癌細胞は、BRCA1および/またはBRCA2が欠損している可能性がある。すなわち、BRCA1および/またはBRCA2の発現および/または活性が、例えば、コードする核酸の突然変異もしくは多型により、または調節因子をコードする遺伝子、例えばBRCA2調節因子をコードするEMSY遺伝子における増幅、突然変異または多型により(Hughes-Daviesら, Cell, 115, 523-535)、または遺伝子プロモーターのメチル化などのエピジェネティックなメカニズムにより、癌細胞において減少または消失している可能性がある。
【0032】
BRCA1およびBRCA2は、ヘテロ接合保因者の腫瘍中でその野生型対立遺伝子が高頻度で失われている公知の腫瘍サプレッサーである(Jasin M., Oncogene, 21(58), 8981-93 (2002); Tuttら, Trends Mol Med., 8(12), 571-6, (2002))。BRCA1および/またはBRCA2の突然変異と乳癌との関連は、当技術分野において十分に特徴が知られている(Radice, P.J., Exp. Clin. Cancer Res., 21(3 Suppl), 9-12 (2002))。BRCA2結合因子をコードするEMSY遺伝子の増幅も、乳癌および卵巣癌に関係していることが知られている。
【0033】
BRCA1および/またはBRCA2の突然変異の保因者は、卵巣癌、前立腺癌および膵臓癌のリスクも高い。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、個体は、BRCA1および/もしくはBRCA2またはその調節因子の突然変異および多型などの、1つ以上の変異に関してヘテロ接合である。BRCA1およびBRCA2の変異の検出については当業者に公知であり、例えば、EP 699 754、EP 705 903、Neuhausen, S.L. およびOstrander, E.A., Genet. Test, 1, 75-83 (1992); Janatova M.ら, Neoplasma, 50(4), 246-50 (2003)に記載されている。BRCA2結合因子EMSYの増幅の決定については、Hughes-Daviesら, Cell, 115, 523-535に記載されている。
【0035】
癌に関係する突然変異および多型は、変異核酸配列の存在を検出することにより核酸レベルで、または変異(すなわち、突然変異もしくは対立遺伝子変異)ポリペプチドの存在を検出することによりタンパク質レベルで、検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
本明細書において、用語「芳香族環」は、通常の意味で使用され、環状芳香族構造、すなわち非局在化π電子軌道を有する環状構造を指す。
【0037】
アルキル:本明細書において使用される用語「アルキル」は、脂肪族であっても脂環式であってもよく、飽和であっても不飽和(例えば、部分的不飽和、完全な不飽和)であってもよい、1〜20個の炭素原子(他に特定しない限り)を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することにより得られる1価の基を意味する。したがって、用語「アルキル」は、下記で論じるサブクラスのアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル等を含む。
【0038】
アルキル基に関連して、接頭辞(例えば、C1-4、C1-7、C1-20、C2-7、C3-7等)は、炭素原子の数、または炭素原子の数の範囲を表す。例えば、本明細書において使用される用語「C1-4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。アルキル基の群の例としては、C1-4アルキル(「低級アルキル」)、C1-7アルキル、およびC1-20アルキルが挙げられる。最初の接頭辞は、他の制約に従って変化し得ることに留意されたい。例えば、不飽和アルキル基では、最初の接頭辞は少なくとも2でなければならず、環式アルキル基では、最初の接頭辞は少なくとも3でなければならない等である。
【0039】
(無置換)飽和アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)、オクチル(C8)、ノニル(C9)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ドデシル(C12)、トリデシル(C13)、テトラデシル(C14)、ペンタデシル(C15)、およびエイコデシル(C20)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
(無置換)飽和直鎖アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)、およびn-ヘプチル(C7)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
(無置換)飽和分枝鎖アルキル基の例としては、イソプロピル(C3)、イソブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソペンチル(C5)、およびネオペンチル(C5)が挙げられる。
【0042】
アルケニル:本明細書において使用される用語「アルケニル」は、1個以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基を意味する。アルケニル基の群の例としては、C2-4アルケニル、C2-7アルケニル、C2-20アルケニルが挙げられる。
【0043】
(無置換)不飽和アルケニル基の例としては、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)、およびヘキセニル(C6)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0044】
アルキニル:本明細書において使用される用語「アルキニル」は、1個以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基を意味する。アルキニル基の群の例としては、C2-4アルキニル、C2-7アルキニル、C2-20アルキニルが挙げられる。
【0045】
(無置換)不飽和アルキニル基の例としては、エチニル(-C≡CH)および2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
シクロアルキル:本明細書において使用される用語「シクロアルキル」は、シクリル基でもあるアルキル基、すなわち、炭素環化合物の炭素環の脂環式環原子から水素原子を除去することにより得られる1価の基を意味する。ここで、この炭素環は飽和であっても不飽和(例えば、部分的不飽和、完全な不飽和)であってもよく、この基は3〜20個の環原子を含む3〜20個の炭素原子(他に特定されない限り)を有する。したがって、用語「シクロアルキル」には、サブクラスのシクロアルケニルおよびシクロアルキニルが挙げられる。好ましくは、それぞれの環は3〜7個の環原子を有する。シクロアルキル基の群の例としては、C3-20シクロアルキル、C3-15シクロアルキル、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルが挙げられる。
【0047】
シクロアルキル基の例としては、以下の化合物から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
飽和単環式炭化水素化合物:シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)、メチルシクロヘキサン(C7)、ジメチルシクロヘキサン(C8)、メンタン(C10);
不飽和単環式炭化水素化合物:シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)、メチルシクロヘキセン(C7)、ジメチルシクロヘキセン(C8);
飽和多環式炭化水素化合物:ツジャン(C10)、カラン(C10)、ピナン(C10)、ボルナン(C10)、ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)、アダマンタン(C10)、デカリン(デカヒドロナフタレン)(C10);
不飽和多環式炭化水素化合物:カンフェン(C10)、リモネン(C10)、ピネン(C10);
芳香族環を有する多環式炭化水素化合物:インデン(C9)、インダン(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、アセアントレン(C16)、コラントレン(C20)。
【0049】
ヘテロシクリル:本明細書において使用される用語「ヘテロシクリル」は、複素環化合物の環原子から水素原子を除去することにより得られる1価の基を意味する。ここで、この基は3〜20個の環原子(他に特定されない限り)を有し、そのうち1〜10個は環ヘテロ原子である。好ましくは、それぞれの環は3〜7個の環原子を有し、そのうち1〜4個は環へテロ原子である。
【0050】
これに関連して、接頭辞(例えば、C3-20、C3-7、C5-6等)は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子の数または環原子の数の範囲を表す。例えば、本明細書において使用される用語「C5-6ヘテロシクリル」は、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基を意味する。ヘテロシクリル基の群の例としては、C3-20ヘテロシクリル、C5-20ヘテロシクリル、C3-15ヘテロシクリル、C5-15ヘテロシクリル、C3-12ヘテロシクリル、C5-12ヘテロシクリル、C3-10ヘテロシクリル、C5-10ヘテロシクリル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリル、およびC5-6ヘテロシクリルが挙げられる。
【0051】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、以下の化合物から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソキサゾール(C5)、ジヒドロイソキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);および、
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0053】
置換された(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基には、環状の糖類、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、およびキシロフラノースなどのフラノース類(C5)、ならびにアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、およびタロピラノースなどのピラノース類(C6)から誘導されるものが挙げられる。
【0054】
スピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル:本明細書において使用される用語「スピロC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル」は、両方の環に共通の一つの原子により他方の環と連結されるC3-7シクロアルキルまたはC3-7ヘテロシクリル環を指す。
【0055】
C5-20アリール:本明細書において使用される用語「C5-20アリール」は、C5-20芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を除去することにより得られる1価の基を意味する。ここで、該化合物は1個の環、または2個以上の環(例えば縮合環)を有し、かつ5〜20個の環原子を有し、また、ここで、該環のうちの少なくとも1個は芳香族環である。好ましくは、それぞれの環は5〜7個の環原子を有する。
【0056】
環原子は、「カルボアリール基」の場合のように、すべて炭素原子であってもよく、その場合、この基は、適宜、「C5-20カルボアリール」基と呼ばれ得る。
【0057】
環へテロ原子を有しないC5-20アリール基(すなわち、C5-20カルボアリール基)の例としては、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、およびピレン(C16)から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
あるいは、環原子は、「ヘテロアリール基」の場合のように、酸素、窒素、および硫黄を含むがこれらに限定されない1個以上のヘテロ原子を含んでもよい。この場合、この基は、適宜、「C5-20ヘテロアリール」基と呼ばれ、ここで、「C5-20」は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子を表す。好ましくはそれぞれの環は5〜7個の環原子を有し、そのうちの0〜4個は環へテロ原子である。
【0059】
C5-20ヘテロアリール基の例としては、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、テトラゾールおよびオキサトリアゾールから誘導されるC5ヘテロアリール基;ならびにイソキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2-ジアジン)、ピリミジン(1,3-ジアジン、例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)およびトリアジンから誘導されるC6ヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
ヘテロアリール基は、炭素環原子またはヘテロ環原子を介して結合し得る。
【0061】
縮合環を含むC5-20ヘテロアリール基の例としては、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドールから誘導されるC9ヘテロアリール基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジンから誘導されるC10ヘテロアリール基;アクリジンおよびキサンテンから誘導されるC14ヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
上記のアルキル、ヘテロシクリル、およびアリール基は、単独であるか別の置換基の一部であるかを問わず、それら自体が、場合により、それら自体および以下に挙げる追加の置換基より選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
【0063】
ハロ:-F、-Cl、-Br、および-I。
【0064】
ヒドロキシ:-OH。
【0065】
エーテル:-OR、ここで、Rは、エーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ばれる)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも呼ばれる)、好ましくは、C1-7アルキル基である。
【0066】
ニトロ:-NO2
【0067】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0068】
アシル(ケト):-C(=O)R、ここで、Rは、アシル置換基、例えば、H、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも呼ばれる)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも呼ばれる)、好ましくはC1-7アルキル基である。アシル基の例としては、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)、および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
カルボキシ(カルボン酸):-COOH。
【0070】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR、ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例としては、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、および-C(=O)OPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキシアミド):-C(=O)NR1R2、ここで、R1およびR2は、独立して、アミノ基に関して定義される通りのアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、および-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびに、R1およびR2が、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環構造を形成するアミド基、例えばピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジニルカルボニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
アミノ:-NR1R2、ここで、R1およびR2は、独立して、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジ-C1-7アルキルアミノとも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基もしくはC5-20アリール基、好ましくは、HもしくはC1-7アルキル基であり、または、「環式」アミノ基の場合、R1およびR2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8個の環原子を有する複素環を形成する。アミノ基の例としては、-NH2、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、および-NHPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。環式アミノ基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ペルヒドロジアゼピニル、モルホリノ、およびチオモルホリノが挙げられるが、これらに限定されるものではない。環式アミノ基は、その環上において、本明細書に定義される置換基のいずれか、例えば、カルボキシ、カルボキシレートおよびアミドにより置換されていてもよい。
【0073】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2、ここで、R1は、アミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、HまたはC1-7アルキル基、最も好ましくは、Hであり、R2は、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。アシルアミド基の例としては、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、および-NHC(=O)Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。R1およびR2は、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジルの場合のように、一緒になって環状構造を形成してもよい。
【化3】

【0074】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3、ここで、R2およびR3は、独立して、アミノ基に関して定義される通りのアミノ置換基であり、R1はウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、水素またはC1-7アルキル基である。ウレイド基の例としては、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、-NMeCONEt2および-NHC(=O)NHPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R、ここで、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。アシルオキシ基の例としては、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、-OC(=O)C6H4F、および-OC(=O)CH2Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
チオール:-SH。
【0077】
チオエーテル(スルフィド):-SR、ここで、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例としては、-SCH3および-SCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
スルホキシド(スルフィニル):-S(=O)R、ここで、Rは、スルホキシド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルホキシド基の例としては、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
スルホニル(スルホン):-S(=O)2R、ここで、Rは、スルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルホン基の例としては、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3、-S(=O)2CH2CH3、および4-メチルフェニルスルホニル(トシル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2、ここで、R1およびR2は、独立して、アミノ基に関して定義した通りのアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、および-C(=S)NHCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R、ここで、R1は、アミノ基に関して定義した通りのアミノ置換基であり、Rは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例としては、-NHS(=O)2CH3、-NHS(=O)2Phおよび-N(CH3)S(=O)2C6H5が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
上記の通り、上に挙げられた置換基を形成する基、例えば、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールは、それ自体が置換されていてもよい。したがって、上記の定義は、置換されている置換基を包含する。
【0083】
実施形態
適切な場合には、以下の特定の置換基を、本発明の各態様に適用することができる。
【0084】
縮合シクロヘキセン環は、環の置換可能な任意の位置に、1個以上の置換基(RH)を有し得る。これらの置換基は、ハロ、ニトロ、ヒドロキシ、エーテル、チオール、チオエーテル、アミノ、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールより選択される。縮合シクロヘキセン環はまた、一緒になって環を形成する1個以上の置換基を有してもよい。特に、これらは、式-(CH2)m-または-O-(CH2)p-O-[式中、mは2、3、4または5であり、pは1、2または3である]の置換基であり得る。特に関心がある置換基としては、ハロ、ヒドロキシおよびアミノ(例えば、NH2)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
縮合シクロヘキセン環が1個の置換基を有する場合、化合物は下記の式:
【化4】

【0086】
により表され得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、シクロヘキセン環は無置換である。
【0088】
いくつかの実施形態において、R1は、H、ClおよびFより、またはHおよびFより選択される。いくつかの実施形態において、R1はFである。他の実施形態において、R1はHである。
【0089】
いくつかの実施形態において、RC2はHであり、RC1はC1-4アルキルである。C1-4アルキル基は、無置換の、例えば、メチル、エチル、プロピルであり得る。いくつかの実施形態において、RC1はメチルである。
【0090】
C1-4アルキル(例えば、メチル)が置換されている場合、それはその末端においてカルボキシまたはアミド基により置換されていてよい。アミド基のアミノ置換基は、それらが結合するN原子と一緒になって、環状であってもよい。アミド基の環状部分は、好ましくは、C5-7含窒素複素環基、例えば、ピロリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニル、モルホリノであり、それらはすべて上記の通りにさらに置換されていてもよい。特に、置換基としては、ヒドロキシ、置換および無置換C1-4アルキル(例えば、メチル、ヒドロキシメチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル)およびC5-7ヘテロシクリル(例えば、N-ピペリジニル、モルホリノ)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
いくつかの実施形態において、RC1およびRC2は両方ともC1-4アルキル基である。C1-4アルキル基は無置換の、例えば、メチル、エチル、プロピルであってよい。いくつかの実施形態において、RC1およびRC2は、両方ともメチルである。
【0092】
いくつかの実施形態において、RNはHである。他の実施形態において、RNはC1-4アルキル(例えば、メチル、エチル)であって、無置換であっても、その末端においてカルボキシ、アミノまたはアミド基、さらにはエステル基により置換されていてもよい。アミノ基またはアミド基のアミノ置換基は、それらが結合するN原子と一緒になって、環状であってもよい。アミノまたはアミド基の環状の部分は、好ましくは、C5-7含窒素複素環基、例えば、ピロリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニル、モルホリノであり、それらはすべて上記の通りにさらに置換されていてもよい。特に、置換基としては、ヒドロキシル、置換および無置換C1-4アルキル(例えば、メチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル)およびC5-7ヘテロシクリル(例えば、N-ピペリジニル、モルホリノ)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
いくつかの実施形態において、RC2はHであり、RC1は(上記の通りの)C1-4アルキルであり、RNはHである。これらの実施形態において、化合物は、RC2およびRC1が結合するキラル中心を有する。その化合物は、2種の立体異性体のラセミ混合物、立体異性体の一方もしくは他方が濃縮された混合物、または一方の立体異性体から実質的に単離されたもう一方の立体異性体であってよい。
【0094】
適切な場合には、上記の特定の置換基を互いに組み合わせて採用してもよい。
【0095】
本発明のさらなる態様は、下記の実施例の化合物(化合物6、13、13a、13bおよび15)である。
【0096】
包含される他の形態
上記には、これらの置換基の周知のイオン、塩、溶媒和物、および保護された形態が含まれる。例えば、カルボン酸(-COOH)に言及する場合、そこにはそのアニオン(カルボキシレート)形態(-COO-)、塩または溶媒和物、ならびに通常の保護された形態も含まれる。同様に、アミノ基に言及する場合、そこにはアミノ基のプロトン化された形態(-N+HR1R2)、塩または溶媒和物、例えば、塩酸塩、ならびにアミノ基の通常の保護された形態も含まれる。同様に、ヒドロキシル基に言及する場合、そこにはそのアニオン形態(-O-)、塩または溶媒和物、ならびにヒドロキシル基の通常の保護された形態も含まれる。
【0097】
異性体、塩、溶媒和物、保護された形態、およびプロドラッグ
特定の化合物は、シスおよびトランス型;EおよびZ型;c、t、およびr型;エンドおよびエキソ型;R、S、およびメソ型;DおよびL型;dおよびl型;(+)および(-)型;ケト、エノール、およびエノレート型;シンおよびアンチ型;シンクリナルおよびアンチクリナル型;αおよびβ型;アキシアルおよびエカトリアル型、船、椅子、ねじれ、封筒、および半椅子型;ならびにそれらの組合せを含むがこれらに限定されない一種以上の特定の幾何異性体、光学異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、エピマー、立体異性体、互変異性体、配座異性体、またはアノマーの形態として存在し得る。これ以後、これらを集合的に「異性体」(または「異性体の形態」)と呼ぶ。
【0098】
化合物が結晶の形態である場合、それはいくつかの異なる多形相の形態として存在し得る。
【0099】
下記に互変異性体の形態に関して論じるものを除いて、本明細書において使用される用語「異性体」から特に除外されるのは、構造異性体(すなわち、単なる空間における原子の位置ではなく、原子間の結合において異なる異性体)であることに留意されたい。例えば、メトキシ基(-OCH3)に言及する場合、その構造異性体であるヒドロキシメチル基(-CH2OH)にも言及するものと解釈されるべきでない。同様に、オルト-クロロフェニルに言及する場合、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルにも言及するものと解釈されるべきでない。しかしながら、構造のクラスに言及する場合には、そこには当然そのクラスに属する構造異性体の形態が含まれるであろう(例えば、C1-7アルキルは、n-プロピルおよびイソプロピルを含み;ブチルは、n-、イソ-、sec-、およびtert-ブチルを含み、メトキシフェニルは、オルト-、メタ-、およびパラ-メトキシフェニルを含む)。
【0100】
上記の除外は互変異性体の形態、例えば、下記の互変異性体の対:ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/アシニトロの場合のような、ケト、エノールおよびエノレート型には適用されない。
【0101】
本発明に特に関係するのは、下に示す互変異性体の対:
【化5】

【0102】
である。
【0103】
用語「異性体」には、1種以上の同位体による置換を有する化合物が特に含まれることに留意されたい。例えば、Hは、1H、2H(D)、および3H(T)を含む任意の同位体の形態であってよく;Cは、12C、13C、および14Cを含む任意の同位体の形態であってよく;Oは、16Oおよび18Oを含む任意の同位体の形態であってよく、他も同様である。
【0104】
他に特定しない限り、特定の化合物に言及する場合、そこには前記のような異性体の形態のすべてが含まれ、その(完全なまたは部分的)ラセミ混合物および他の混合物も含まれる。前記のような異性体の形態の調製(例えば不斉合成)および分離(例えば分別結晶化およびクロマトグラフィー手段)の方法は当業者に公知であるか、または本明細書に教示される方法もしくは公知の方法を、公知のように適合させることにより、容易に得られる。
【0105】
他に特定しない限り、特定の化合物に言及する場合、そこには例えば下記で論じるようなそのイオンおよび塩の形態も含まれる。
【0106】
他に特定しない限り、特定の化合物に言及する場合、そこには例えば下記で論じるようなその溶媒和物も含まれる。
【0107】
他に特定しない限り、特定の化合物に言及する場合、そこには例えば下記で論じるようなそのプロドラッグも含まれる。
【0108】
他に特定しない限り、特定の化合物に言及する場合、そこには例えば下記で論じるようなその保護された形態も含まれる。
【0109】
他に特定しない限り、特定の化合物に言及する場合、そこには例えば下記で論じるようなその異なる多形相の形態も含まれる。
【0110】
活性化合物の対応する塩、例えば製薬上許容される塩を調製し、精製し、および/または取り扱うことが好都合であるか、または望ましい場合がある。製薬上許容される塩の例については、Bergeら, “Pharmaceutically Acceptable Salts”, J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に論じられている。
【0111】
例えば、化合物がアニオン性である場合、またはアニオン性になり得る官能基(例えば、-COOHは、-COO-になり得る)を有する場合、好適なカチオンと共に塩が形成され得る。好適な無機カチオンの例としては、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、およびAl3+などの他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)、および置換されたアンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸から誘導されるものである。一般的な第4級アンモニウムイオンの一例は、N(CH3)4+である。
【0112】
化合物がカチオン性である場合、またはカチオン性になり得る官能基(例えば、-NH2は、-NH3+になり得る)を有する場合、好適なアニオンと共に塩が形成され得る。好適な無機アニオンの例としては、以下の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸および亜リン酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な有機アニオンの例としては、以下の有機酸:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール(gycolic)酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、吉草酸、およびグルコン酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な高分子アニオンの例としては、以下の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製し、精製し、および/または取り扱うことが好都合であるか、または望ましい場合がある。本明細書において、用語「溶媒和物」は、通常の意味で使用され、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合体を指す。溶媒が水である場合、溶媒和物は、適宜、水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物等のように呼ばれ得る。
【0114】
化学的に保護された形態の活性化合物を調製し、精製し、および/または取り扱うことが好都合であるか、または望ましい場合がある。本明細書において使用される用語「化学的に保護された形態」は、1個以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている化合物、すなわち、1個以上の反応性官能基が保護基または保護化基(マスクされた基もしくはマスキング基、またはブロックされた基もしくはブロッキング基としても知られる)の形態である化合物を意味する。反応性官能基を保護することにより、保護された基に影響を与えることなく、他の保護されていない反応性官能基が関与する反応をおこなうことができる。保護基は通常次の段階で、実質的に分子の他の部分に影響を与えることなく除去し得る。例えば、“Protective Groups in Organic Synthesis” (T. GreenおよびP. Wuts; 第3版; John Wiley and Sons, 1999年)を参照されたい。
【0115】
例えば、ヒドロキシ基は、エーテル(-OR)またはエステル(-OC(=O)R)として、例えば、t-ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)もしくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルもしくはt-ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)として保護することができる。
【0116】
例えば、アルデヒド基またはケトン基は、それぞれアセタールまたはケタールとして保護することができる。この場合、カルボニル基(>C=O)は、例えば第1級アルコールとの反応により、ジエーテル(>C(OR)2)に変換される。アルデヒド基またはケトン基は、酸の存在下で大過剰の水を用いる加水分解により容易に再生成される。
【0117】
例えば、アミン基は、例えばアミドまたはウレタンとして、例えば、メチルアミド(-NHCO-CH3);ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz)として;t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc);2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)として、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)として、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)として、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)として、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)として、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)として、2-(フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として;または、適切な場合には、N-オキシド(>NO・)として、保護することができる。
【0118】
例えば、カルボン酸基は、エステルとして、例えば、C1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル;t-ブチルエステル);C1-7ハロアルキルエステル(例えば、C1-7トリハロアルキルエステル);トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステル;もしくはC5-20アリール-C1-7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル;ニトロベンジルエステル)として;または、アミドとして、例えば、メチルアミドとして、保護することができる。
【0119】
例えば、チオール基は、チオエーテル(-SR)として、例えば、ベンジルチオエーテル;アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として、保護することができる。
【0120】
活性化合物を、プロドラッグの形態で調製し、精製し、および/または取り扱うことが好都合であるか、または望ましい場合がある。本明細書において使用される用語「プロドラッグ」は、代謝された場合(例えば、in vivoで)、所望の活性化合物を生成する化合物を意味する。典型的には、プロドラッグは不活性であるか、または活性化合物よりも活性が低いが、有利な取り扱い、投与、または代謝特性を提供し得る。
【0121】
例えば、いくつかのプロドラッグは、活性化合物のエステル(例えば、生理的に許容される代謝反応性のエステル)である。代謝の間に、エステル基(-C(=O)OR)が開裂して活性薬物を生成する。このようなエステルは、例えば、親化合物中のカルボン酸基(-C(=O)OH)のいずれかをエステル化することにより形成させることができる。その際、適切な場合には、親化合物中に存在する任意の他の反応性の基をあらかじめ保護した後に、エステル化をおこない、次いで必要に応じて脱保護することができる。このような代謝反応性のエステルの例としては、RがC1-20アルキル(例えば、-Me、-Et);C1-7アミノアルキル(例えば、アミノエチル;2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル;2-(4-モルホリノ)エチル);およびアシルオキシ-C1-7アルキル(例えば、アシルオキシメチル;アシルオキシエチル;例えば、ピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル;1-アセトキシエチル;1-(1-メトキシ-1-メチル)エチル-カルボニルオキシエチル;1-(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシ-カルボニルオキシメチル;1-イソプロポキシ-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシル-カルボニルオキシメチル;1-シクロヘキシル-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシメチル;1-シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;1-(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;および1-(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)であるものが挙げられる。
【0122】
さらなる好適なプロドラッグの形態としては、ホスホン酸塩およびグリコール酸塩が挙げられる。特に、ヒドロキシ基(-OH)は、クロロジベンジルホスファイトと反応させた後、水素化して、ホスホネート基-O-P(=O)(OH)2を形成させることにより、ホスホネートプロドラッグとすることができる。このような基は、代謝中にホスホターゼ酵素により除去されて、ヒドロキシ基を有する活性薬物を生成させることができる。
【0123】
また、いくつかのプロドラッグは、酵素的に活性化されて活性化合物を生成させるか、またはさらに化学反応して活性化合物となる化合物を生成させる。例えば、プロドラッグは糖誘導体もしくは他のグリコシドコンジュゲートであってよく、またはアミノ酸エステル誘導体であってよい。
【0124】
頭字語
便宜上、多くの化学基を、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、tert-ブチル(tBu)、n-ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、およびアセチル(Ac)を含むがこれらに限定されない周知の略号を用いて表す。
【0125】
便宜上、多くの化学化合物を、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(i-PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルまたはジエチルエーテル(Et2O)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(塩化メチレン、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を含むがこれらに限定されない周知の略号を用いて表す。
【0126】
合成
本発明の式I:
【化6】

【0127】
の化合物は、式2:
【化7】

【0128】
[式中、R、R1、RN1、RC1およびRC2は、先に定義した通りであり、OProtは保護されたヒドロキシ基を表す]
の前駆体から合成することができる。式中の種々の置換基は、式Iの化合物について定義されたものと同じであるか、または、それらの定義された基の保護された形態または前駆体であって、所望の化合物を得るにはさらなる変換を必要とするものであり得る。本発明の化合物の合成は、ヒドロキシ保護基の除去により進行し、次いで、標準的技術、例えば、塩基触媒、HBTUカップリングを用いるアミド結合形成をおこなう。
【0129】
式2の化合物は、式3または式4:
【化8】

【0130】
の化合物を、それぞれ式5または6:
【化9】

【0131】
[式中、R、R1、RN1、RC1、RC2およびOProtは、先に定義した通りである]
の化合物とカップリングさせることにより合成することができる。
【0132】
尿素結合形成反応は、標準的な条件下で実施する。式5および6の化合物は、公知の方法により合成し得る(例えば、WO2007/045877の実施例を参照されたい)。
【0133】
RN1がHである式4の化合物は、式7:
【化10】

【0134】
[式中、RおよびR1は、先に定義した通りである]
の化合物から、ニトロ基を還元することにより合成し得る。これは、例えば、鉄粉および塩化アンモニウムを用いて実施し得る。
【0135】
式7の化合物は、式8:
【化11】

【0136】
[式中、RおよびR1は、先に定義した通りである]
の化合物を、ヒドラジンの供給源、例えばヒドラジン水和物と、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成し得る。
【0137】
式8の化合物は、式9:
【化12】

【0138】
[式中、Rは、先に定義した通りである]
の化合物を、式10:
【化13】

【0139】
[式中、R1は、先に定義した通りである]
の化合物と、酢酸ナトリウムの存在下で、高温(例えば、約240℃)で反応させることにより合成し得る。
【0140】
式2:
【化14】

【0141】
[式中、R、R1、RC1、RC2およびOProtは、先に定義した通りであり、RN1はHである]
の化合物はまた、式11:
【化15】

【0142】
[式中、RおよびR1は、先に定義した通りである]
の化合物を、第三級アミン(例えば、トリエチルアミン)により処理した後、
【化16】

【0143】
[式中、RC1、RC2およびOProtは、先に定義した通りである]
およびアジド(例えば、ジフェニルホスフィン酸アジド)と同時に反応させることにより、合成し得る。
【0144】
式11の化合物は、式13:
【化17】

【0145】
[式中、RおよびR1は、先に定義した通りである]
の化合物、もしくは式14:
【化18】

【0146】
[式中、RおよびR1は、先に定義した通りである]
の化合物、または式13の化合物と式14の化合物との混合物を、ヒドラジンの供給源、例えば、ヒドラジン水和物と、場合により塩基、例えばトリエチルアミンの存在下、場合により、溶媒、例えば工業用変性アルコール(industrial methylated spirit)の存在下、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成し得る。
【0147】
式13もしくは式14の化合物、またはそれらの混合物は、式15:
【化19】

【0148】
[式中、RおよびR1は、先に定義した通りである]
の化合物を、ニトリル基を加水分解することができる試薬、例えば水酸化ナトリウムと、溶媒、例えば水の存在下、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成し得る。
【0149】
式15の化合物は、式16:
【化20】

【0150】
[式中、R1は、先に定義した通りである]
の化合物を、式17:
【化21】

【0151】
[式中、Rは、先に定義した通りである]
の化合物と、塩基、例えばナトリウムメトキシドの存在下、溶媒中、例えばメタノール中で、場合により水捕捉剤、例えばプロピオン酸エチルの存在下、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成し得る。
【0152】
式1の化合物はまた、式18:
【化22】

【0153】
[式中、RおよびR1は、先に定義した通りである]
の化合物を、ニトリル基を加水分解することができる試薬、例えば水酸化ナトリウムと、溶媒、例えば水の存在下、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させた後、得られる中間物質を、ヒドラジンの供給源、例えば、ヒドラジン水和物と、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成し得る。
【0154】
式18の化合物は、式19:
【化23】

【0155】
[式中、Rは、先に定義した通りであり、RaはC1-4アルキル基である]
の化合物を、式6の化合物と、塩基、例えばトリエチルアミンまたはリチウムヘキサメチルジシラジドの存在下、溶媒、例えばテトラヒドロフランの存在下、-80℃から使用する溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることにより合成し得る。
【0156】
式19の化合物は、WO 02/26576に記載されたものと同様の方法により合成し得る。
【0157】
式11の化合物は、上に記載したものと同様の方法であって、すべての式におけるニトリル基が、カルボン酸を生成させることが可能な他の基、例えばエステル基もしくはカルボキシアミド基、またはニトリルの前駆体(例えば、ブロモ)に置き換えられている前記方法によって、合成することもできる。
【0158】
使用
本発明は、活性化合物、特にPARPの活性を阻害する活性を有する化合物を提供する。
【0159】
本明細書において使用される用語「活性な」は、PARP活性を阻害することができる化合物を意味し、特に、固有の活性を有する化合物(薬物)ならびにそのような化合物のプロドラッグ(プロドラッグは、それ自体ではほとんどまたは全く固有の活性を示さない)の両方を含む。
【0160】
特定の化合物により提供されるPARP阻害を評価するために便利に使用し得る1つのアッセイを下記の実施例に記載する。
【0161】
本発明はさらに、有効量の活性化合物を、好ましくは製薬上許容される組成物の形態で細胞に接触させることを含む、細胞においてPARPの活性を阻害する方法を提供する。このような方法はin vitroまたはin vivoで実施し得る。
【0162】
例えば、細胞のサンプルをin vitroで増殖させ、活性化合物を前記細胞と接触させ、それらの細胞に対する化合物の効果を観察することができる。「効果」の例として、特定の時間内におこなわれるDNA修復の量を測定し得る。活性化合物が細胞に影響を及ぼすことが見出される場合、これは、同じ細胞型の細胞を有する患者を治療する方法における、化合物の効力の予後マーカーまたは診断マーカーとして使用し得る。
【0163】
本明細書において病態の治療に関連して使用される用語「治療」は、一般にヒトを対象とするか動物(例えば、獣医学への適用)を対象とするかを問わず、何らかの望まれる治療効果、例えば病態の進行の阻害が達成される治療および療法を意味する。治療効果には、進行速度の減少、進行速度の停止、病態の改善、および病態の治癒が含まれる。予防手段としての治療(すなわち、予防)も含まれる。
【0164】
本明細書において使用される用語「補助剤」は、公知の治療手段を併用する活性化合物の使用を意味する。このような手段としては、さまざまな癌のタイプの治療に使用される薬物および/または電離放射線の細胞毒性治療計画が挙げられる。特に、活性化合物は、癌の治療に使用されるトポイソメラーゼ類の毒物(例えば、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン)、公知のアルキル化剤の大部分(例えば、DTIC、テモゾラミド)および白金系薬物(例えば、カルボプラチン、シスプラチン)を含む、多くの癌化学療法治療の作用を増強することがわかっている。
【0165】
活性化合物は、例えば、in vitroにおいて公知の化学療法剤または電離放射線治療に対する細胞の感受性を増大させるために、PARPを阻害するための細胞培養添加剤として使用してもよい。
【0166】
活性化合物はまた、例えば、候補の宿主が当該化合物による治療により効果を得るかどうかを決定するためのin vitroアッセイの一部として使用してもよい。
【0167】
投与
活性化合物または活性化合物を含む医薬組成物は、全身/末梢であるか、望まれる作用の部位であるかを問わず、任意の好都合な投与経路により、被験体に投与することができる。投与経路としては、経口(例えば、摂取による);局所(例えば、経皮、鼻内、眼内、口腔内、および舌下を含む);肺(例えばエアロゾルを用いる、例えば口または鼻を介する吸入または送気治療による);直腸;腟内;非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、鞘内、髄腔内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、角質下、関節内、くも膜下、および胸骨内を含む注射による);デポー製剤の埋め込み(例えば皮下または筋肉内に)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0168】
被験体は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳類、齧歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科(例えば、マウス)、イヌ科(例えば、イヌ)、ネコ科(例えば、ネコ)、ウマ科(例えば、ウマ)、霊長類、サル類(例えば、サルまたは類人猿)、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトであり得る。
【0169】
製剤
活性化合物を単独で投与することも可能であるが、上記で定義された通りの少なくとも1種の活性化合物を、1種以上の製薬上許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に周知の他の物質、および場合により他の治療薬または予防薬と共に含む医薬組成物として、活性化合物を提供することが好ましい。
【0170】
したがって、本発明はさらに、上記で定義された通りの医薬組成物、ならびに少なくとも1種の上記で定義された通りの活性化合物を、1種以上の製薬上許容される担体、賦形剤、緩衝剤、アジュバント、安定剤、または本明細書に記載される通りの他の物質と混合することを含む、医薬組成物を製造する方法を提供する。
【0171】
本明細書において使用される用語「製薬上許容される」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を起こさない、健全な医学的判断の範囲内で、被験体(例えば、ヒト)の組織と接触させて使用するのに適する、妥当な利益/危険の比率の釣り合う、化合物、物質、組成物、および/または剤形を意味する。それぞれの担体、賦形剤等は、製剤の他の成分と共存可能であるという意味でも「許容される」ものでなければならない。
【0172】
好適な担体、希釈剤、賦形剤等は、標準的な薬学の教科書に記載されている。例えば、“Handbook of Pharmaceutical Additives”, 第2版 (M. AshおよびI. Ash編), 2001年 (Synapse Information Resources, Inc., Endicott, New York, USA), “Remington's Pharmaceutical Sciences”, 第20版, Lippincott, Williams & Wilkins, 2000年;および“Handbook of Pharmaceutical Excipients”, 第2版, 1994年を参照されたい。
【0173】
製剤は、適宜、単位用量形態として提供することができ、製薬分野において周知の任意の方法により調製し得る。このような方法は、活性化合物と、1種以上の副成分を構成する担体とを混合する工程を含む。一般的には、製剤は、活性化合物と、液体の担体もしくは微細に粉砕された固体の担体またはその両方とを均一かつ緊密に混合し、次いで必要な場合には生成物を成形することにより、調製される。
【0174】
製剤は、液剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、錠剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、坐剤、膣坐剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤、スプレー剤、ミスト剤、フォーム剤、ローション剤、油剤、ボーラス剤、舐剤、またはエアロゾル剤の形態であり得る。
【0175】
経口投与(例えば、摂取による)に好適な製剤は、それぞれ所定量の活性化合物を含有するカプセル剤、カシェ剤もしくは錠剤などの個別単位として;粉剤もしくは顆粒剤として;水性もしくは非水性液体中の溶液剤もしくは懸濁剤として;または水中油型液体乳剤もしくは油中水型液体乳剤として;ボーラス剤として;舐剤として、またはペースト剤として提供し得る。
【0176】
錠剤は、場合により1種以上の副成分を加えて、通常の手段、例えば圧縮または成形により製造することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの流動性の形態の活性化合物を、場合により1種以上の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アカシアガム、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤または希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);界面活性剤または分散もしくは湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)と混合して、好適な機械で圧縮することにより調製し得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤により加湿されている粉末状の化合物の混合物を、好適な機械で成形することにより製造し得る。錠剤は、場合によりコーティングまたは切込みを施してもよく、また、例えば、所望の放出特性を提供する種々の割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、内部の活性化合物の徐放または制御放出を提供するように製剤してもよい。錠剤は、場合により、胃以外の消化管の部分で放出されるように、腸溶コーティングを施してもよい。
【0177】
局所投与(例えば、経皮、鼻腔内、眼内、口腔内、および舌下)に好適な製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、粉剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、または油剤として製剤し得る。あるいは、製剤は、活性化合物および場合により1種以上の賦形剤または希釈剤を含浸させたバンデージまたは絆創膏などの貼付剤または包帯を含む。
【0178】
口内局所投与に好適な製剤としては、香味を付けた基剤、通常のスクロースおよびアカシアガムまたはトラガカント中に活性化合物を含むロゼンジ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアガムなどの不活性基剤中に活性化合物を含むトローチ剤;および好適な液体担体中に活性化合物を含む洗口剤が挙げられる。
【0179】
また、眼への局所投与に好適な製剤としては、活性化合物が好適な担体、特に活性化合物用の水性溶媒中に溶解または懸濁している点眼剤が挙げられる。
【0180】
担体が固体である経鼻投与に好適な製剤としては、例えば、約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末が挙げられる。これは嗅ぎタバコを吸う方法で、すなわち、鼻の近くに持ち上げた粉末の容器から、鼻腔を通して素早く吸入することにより投与される。例えば鼻腔用スプレーもしくは点鼻薬として投与するための、またはネブライザーによるエアロゾル投与により投与するための、担体が液体である好適な製剤としては、活性化合物の水性または油性の溶液剤が挙げられる。
【0181】
吸入による投与に好適な製剤としては、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適な気体などの好適な噴射剤を用いて、加圧パックからエアロゾルスプレーとして提供されるものが挙げられる。
【0182】
皮膚を介する局所投与に好適な製剤としては、軟膏剤、クリーム剤、およびエマルション剤が挙げられる。軟膏剤として製剤する場合、活性化合物は、場合によりパラフィン系または水混和性軟膏基剤のいずれかと共に使用し得る。あるいは、活性化合物は、水中油型クリーム基剤を用いてクリーム剤として製剤し得る。所望により、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも約30% w/wの多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコールならびにそれらの混合物などの、2個以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含み得る。局所製剤は、望ましくは、皮膚または他の患部を介する活性化合物の吸収または浸透を促進する化合物を含み得る。このような皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連する類似物が挙げられる。
【0183】
局所用乳剤として製剤する場合、油相は場合により単に乳化剤(他にエマルジェントとしても知られる)のみを含んでもよく、または少なくとも1種の乳化剤と、脂肪もしくは油、または脂肪および油の両方との混合物を含んでもよい。好ましくは、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に親水性乳化剤を含む。油および脂肪の両方を含むことも好ましい。また、安定剤(1種または複数種)を含むかまたは含まない乳化剤は、いわゆる乳化ワックスを構成し、そのワックスは、油および/または脂肪と共にいわゆる乳化軟膏基剤を構成し、これがクリーム製剤の油性分散相を形成する。
【0184】
好適なエマルジェントおよびエマルション安定剤としては、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレートおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。医薬エマルション製剤に使用され得る大部分の油に対する活性化合物の溶解度は非常に低い可能性があるので、製剤に好適な油または脂肪の選択は、所望の化粧品特性を達成することに基づく。そこで、クリーム剤は、好ましくは、油っぽくなく、汚れにくく、洗浄可能な製品であって、チューブまたは他の容器からの漏れを防ぐために適度な粘稠度を有するものでなければならない。ジイソアジペート、イソセチルステアレート、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2-エチルヘキシルパルミテート、またはクロダモルCAP(Crodamol CAP)として知られる分枝鎖エステルの混合物などの直鎖もしくは分枝鎖の一または二塩基性アルキルエステルを使用することができ、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、要求される特性に応じて、単独でまたは組合せて使用し得る。あるいは、白色軟パラフィンおよび/もしくは液体パラフィンまたは他の鉱油などの高融点脂質を使用することもできる。
【0185】
直腸投与に好適な製剤は、例えばココアバターまたはサリチレートを含む好適な基剤を用いて坐剤として提供し得る。
【0186】
腟内投与に好適な製剤は、活性化合物に加えて、当技術分野で適切であることが知られている担体を含有する膣坐剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー製剤として提供し得る。
【0187】
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋肉内、静脈内および皮内などへの注射による)に好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、静菌剤、および対象とするレシピエントの血液と製剤とを等張にする溶質を含有し得る、水性および非水性で等張の、発熱物質を含まない無菌注射溶液剤;ならびに、懸濁化剤および増粘剤、ならびに血液成分または1つ以上の器官に化合物をターゲッティングするように設計されているリポソームまたは他の微粒子系を含有し得る、水性および非水性の無菌懸濁剤が挙げられる。このような製剤において使用するのに好適な等張媒体の例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、または乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。典型的には、溶液中の活性化合物の濃度は、約1 ng/ml〜約10μg/ml、例えば、約10 ng/ml〜約1μg/mlである。製剤は、単位用量または複数回用量の密閉容器、例えば、アンプルおよびバイアルに入れて提供されてよく、使用の直前に無菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする、凍結乾燥状態で保存されてもよい。その場で調製する注射用の溶液剤および懸濁剤は、無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製し得る。製剤は、血液成分または1つ以上の器官に活性化合物をターゲッティングするように設計されているリポソームまたは他の微粒子系の形態であってもよい。
【0188】
用量
活性化合物および活性化合物を含む組成物の適切な用量は、患者により異なることが理解されるであろう。最適な用量の決定は、一般に、本発明の治療による、治療効果と何らかのリスクまたは有害な副作用とのレベルのバランスによる。選択される投与レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、投与の時間、化合物の排出速度、治療の継続期間、組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または物質、ならびに患者の年齢、性別、体重、病態、全般的健康状態、および既往歴を含むがこれらに限定されない種々の因子に依存する。化合物の量および投与経路は、最終的には医師の裁量に任されるが、一般に、用量は、実質的に有害な副作用を起こさずに所望の効果を達成する局所濃度を、その作用部位において達成するものである。
【0189】
in vivo投与は、全治療過程を通して、一回の投与で、連続的に、または断続的に(例えば、適切な間隔をあける分割投与で)おこなうことができる。最も効果的な投与手段および用量を決定する方法は当業者に周知であり、治療に使用する製剤、治療の目的、治療される標的細胞、および治療される被験体により異なるであろう。1回または複数回の投与は、治療する医師により選択される用量レベルおよびパターンで実施することができる。
【0190】
一般に、活性化合物の好適な用量は、被験体の体重kgあたり1日約100μg〜約250 mgの範囲である。活性化合物が塩、エステル、プロドラッグ等である場合には、用量は親化合物を基準にして計算されるので、使用される実際の重量は比例して増加する。
【実施例】
【0191】
一般的実験方法
分取HPLC
装置:Waters ZMD LC-MSシステムNo. LD352(エレクトロスプレーイオン化モードで使用)。
【0192】
移動相A:0.1%ギ酸水溶液
移動相B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
カラム:Genesis C18 4μm, 50×4.6 mm
勾配:
【表1】

【0193】
流速:1.0 ml/分
PDAスキャン範囲:210〜400 nm

[実施例1]
【化24】

【0194】
(a) 3-(3-ニトロ-ベンジリデン)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(2)
4,5,6,7-テトラヒドロ-イソベンゾフラン-1,3-ジオン(1)(2.50g、16.4mmol)および3-ニトロフェニル酢酸(2.72g、15.0mmol)を、酢酸ナトリウム(60.0mg、0.750mmol)の存在下で、ウッド合金(Wood’s Alloy)浴を用いて240℃に加熱した。反応混合物が240℃に達した後、追加の酢酸ナトリウム(60.1mg、0.750mmol)を加えた。次に、反応混合物をさらに45分間加熱した後、80℃に冷却した。粘性のガムにエタノール(20ml)を加えて、混合物を30分間スラリー化した。得られた懸濁液を室温に冷却し、濾過した。固体を追加の冷エタノール(2×5ml)によりさらに洗浄し、乾燥して、目的の生成物を幾何異性体の混合物として得た。LC-MSにおいて主ピーク(2.48g)である、粗生成物を取り出した。m/z (LC-MS、ESP)、RT=4.48分(イオン化は観察されなかった)。
【0195】
(b) 3-(3-メチル-ベンジリデン)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(3)
3-(3-ニトロ-ベンジリデン)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(2)(2.48g、13.9mmol)の水(25ml)懸濁液に、ヒドラジン水和物(1.7ml、34.0mmol)を滴下した後、100℃に16時間加熱した。混合物をおよそ5℃に冷却し、得られた懸濁液を濾過して、水(5ml)およびジエチルエーテル(2×5ml)により洗浄した、次に、固体を真空オーブンで一晩乾燥した。LC-MSにおいて主ピーク(2.48g、純度84%)であり、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.55分(M+H 285)。
【0196】
(c) 4-(3-アミノ-ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン(4)
3-(3-メチル-ベンジリデン)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(3)(2.48g、8.720mmol)のエタノール(50ml)および水(50ml)懸濁液に、鉄粉(0.96g、17.2mmol)、塩化アンモニウム(450mg、8.720mmol)を一度に加えた。反応混合物を80℃に3時間加熱した後、室温に冷却した。暗褐色の懸濁液を濾過し、エタノール(2×25ml)によりセライトを通してプラグ(plug)を洗浄した。濾液を減圧濃縮し、淡褐色の泡状物質を得た。LC-MSにおいて主ピーク(1.69g、純度97%)であり、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS、ESP)、RT=2.75分(M+H 256)。
【0197】
(d) 2-{3-[3-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイド}-プロピオン酸エチルエステル(5)
4-(3-アミノ-ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン(4)(0.472mg、1.850mmol)の無水THF(25ml)溶液に、エチル2-イソシアノプロピオネート(266mg、1.850mmol)のTHF(2 ml)溶液を加えた。次に、得られた溶液を4時間攪拌した後、減圧濃縮して褐色のオイルを得た。粗オイルをフラッシュクロマトグラフィー(溶離液4:1、ヘキサン:酢酸エチル)により精製した(Rf =0.14、純粋な酢酸エチル)。LC-MSにおいて主ピーク(7.20g、純度98%);m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.20分(M+H 389.4)。
【0198】
(e) 5-メチル-3-[3-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-イミダゾリジン-2,4-ジオン(6)
2-{3-[3-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイド}-プロピオン酸エチルエステル(5)(0.715g、1.80mmol)の無水DMA(2ml)溶液に、微細な粉末にした水酸化ナトリウム(71mg、1.80mmol)を加えた。次に、反応混合物をあらかじめ50℃に加熱したオイルバスに浸して、10分間加熱した後、HCl(1N、0.5ml)を加えて反応を止めた。次に、反応混合物を減圧濃縮して乾固させた。粗オイルをフラッシュクロマトグラフィー(溶離液4:1、ヘキサン:酢酸エチル)により精製した(Rf = 0.18、純粋な酢酸エチル)。LC-MSにおいて主ピーク (0.25g、純度95%);1H NMR (300 MHz, D6 DMSO δppm 12.61 (s, 1H), 8.41 (s, 1H), 7.40 (dd, J = 11.46, 4.58 Hz, 1H), 7.29-7.12 (m, 2H), 4.32-4.15 (m, 1H), 3.94 (s, 2H), 2.46 (m, 4H), 1.61 (s, 4H), 1.34 (d, J = 6.94 Hz, 3H). M/z (LC-MS, ESP)、RT=3.04分(M+H 353.2)。
【0199】
[実施例2]
【化25】

【0200】
(a) 3-(3-ブロモ-4-フルオロ-ベンジリデン)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(8)
4,5,6,7-テトラヒドロ-イソベンゾフラン-1,3-ジオン(7)(16.7g、109.7mmol)および3-ブロモ-4-フルオロフェニル酢酸(15.0g、64.37mmol)を、酢酸ナトリウム(0.259g、3.160mmol)の存在下で、ウッド合金浴を用いて210℃に4.5時間加熱した。次に、反応混合物をるつぼに注ぎ、冷却して結晶性の固体を得た。固体を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、エタノール(20ml)を加えて摩砕した。次に、得られた懸濁液を濾過し、追加のエタノール(10ml)により洗浄した。次に、固体を乾燥して、目的の生成物を幾何異性体の混合物として得た。LC-MSにおいて主ピーク(20.78g、純度94%)であり、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS、ESP)、RT=4.74分(イオン化は観察されなかった)。
【0201】
(b) 4-(3-ブロモ-4-フルオロ-ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン(9)
3-(3-ブロモ-4-フルオロ-ベンジリデン)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(8)(シス/トランス混合物)(20.78g、64.3mmol)を水(150ml)中に懸濁し、ヒドラジン水和物(12.5ml、257.2mmol)を加えた。反応混合物を85℃に18時間加熱した後、室温に冷却した。ベージュの懸濁液を濾過により単離し、水(1×50ml)、ヘキサン(1×50ml)、およびエーテル(1×25ml)により洗浄した後、真空オーブンで一晩乾燥した。LC-MSにおいて主ピーク(19.1g、純度91%)であり、それ以上の精製は必要なかった。m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.92分(M+H 337および339)。
【0202】
(c) 2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-ベンゾニトリル(10)
4-(3-ブロモ-4-フルオロ-ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン(9)(9.53g、28.2mmol)の無水DMF(95ml)溶液に、シアン化銅(I)(3.5g、42.3mmol)を一度に加えた。混合物を160℃に18時間加熱した。次に反応混合物を冷却し、セライトにより濾過して、メタノール(30ml)により洗浄した。濾液を減圧濃縮して、褐色のオイルを得た。LC-MSにおいて主ピーク(8.01g、純度66%)であり、粗生成物を次の変換に使用した。m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.50分(M+H 284.3)。
【0203】
(d) 2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-安息香酸(11)
粗2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イルメチル)ベンゾニトリル(10)(9.9g、34.9mmol)を水(245ml)中に懸濁し、水酸化ナトリウム(6.98g、174mmol)により処理した。混合物を60℃に18時間加熱した。次に、反応混合物を5℃に冷却し、濃硫酸を沈殿が形成されるまで滴下した(約10ml、pH2)。懸濁液を5℃で10分間撹拌し、濾過した。単離された固体を水(2×8ml)により洗浄し、DCM(20ml)を加えて摩砕した後、乾燥した。LC-MSにおいて単一のピーク(4.48g、純度98%)であり、それ以上の精製をおこなわずに次の反応に使用した。m/z (LC-MS、ESN)、RT=1.96分(M-H 301.3)。
【0204】
(e) 2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイド}-プロピオン酸メチルエステル(12)
2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)安息香酸(11)(0.50g、1.650mmol)のアセトニトリル(2.5ml)懸濁液に、トリエチルアミン(0.46ml、3.31mmol)を加えた。懸濁液は溶解して、褐色の溶液が得られた。次にこれを85℃に加熱した。アセトニトリル(5ml)およびN-メチルピロリジノン(0.5ml)に溶解したD/Lアラニンメチルエステル塩酸塩(2.30g、1.650mmol)を、ジフェニルホスフィン酸アジド(0.357ml、1.650mmol)と同時に反応混合物に加えた。40分間加熱した後、反応混合物を室温に冷却し、減圧濃縮した。次に、粗オイルをフラッシュクロマトグラフィー(溶離液ヘキサン/酢酸エチル、7:13)により精製した(Rf = 0.14)。LC-MSにおいて単一のピーク(0.67g、純度98%);m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.37分(M+H 403.2)。
【0205】
(f) 3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(13)
2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイド}-プロピオン酸メチルエステル(12)(0.425g、1.053mmol)の無水DMA(5ml)溶液に、粉砕した水酸化ナトリウム(0.433mg、1.053mmol)を一度に加えた。次に、反応混合物をあらかじめ50℃に加熱したオイルバス中に10分間入れた後、HCl(2N、約1ml)を加えることにより中和した。次に、混合物を濃縮乾固させ、フラッシュクロマトグラフィー(溶離液、純粋な酢酸エチル)により精製した(Rf = 0.15)。LC-MSにおいて単一のピーク(0.457g、純度99%);1H NMR (300 MHz, D6 DMSO δppm 12.61 (s, 1H), 8.51 (s, 1H), 7.40-7.15 (m, 3H), 4.32 (m, 1H), 3.93 (s, 2H), 2.46 (m, 4H), 1.63 (s, 4H), 1.35 (d, J = 6.94 Hz, 3H). M/z (LC-MS、ESP)、RT=3.28分(M+H 371.1)。
【0206】
[実施例3]
【化26】

【0207】
(a) メチル2-メチル-2-[[3-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]フェニル]カルバモイルアミノ]プロパノエート(14)
4-(3-アミノ-ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン(4)(50 mg、0.195 mmol)の無水DCM(10 ml)溶液に、2-イソシアネート-2-メチル-プロピオン酸メチルエステル(60 mg、0.428 mmol)を加えた。得られた溶液を2日間撹拌し、水(3×10ml)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、減圧濃縮して半結晶性の固体を得た(44 mg)。
【0208】
(b) 5,5-ジメチル-3-[3-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]フェニル]イミダゾリジン-2,4-ジオン(15)
メチル2-メチル-2-[[3-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]フェニル]カルバモイルアミノ]プロパノエート(14)(44mg、0.11 mmol)の無水DMF(2mL)溶液に、微細に粉末化した水酸化ナトリウム(4 mg、0.072 mmol)を加えた。反応混合物をあらかじめ50℃に加熱したオイルバスに5時間浸した後、1M HClを加えて中和した。得られた溶液から分取クロマトグラフィーにより目的の生成物を単離して、固体を得た(3.6mg、純度98%)。M/z (LC-MS、ESP)、RT=7.69分(M+H 367.1)。
【0209】
[実施例4]
3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5 R/S-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(13)(250mg、0.67mmol)の、イソプロピルアルコール(12mL)およびヘキサン(6mL)溶液を、Gilson Prep (200mlヘッド)システムに取り付けたMerck 50mm 20μm Chiralcel ODカラムに通液した(流速(40mL/分) ヘキサン:イソプロピルアルコール50/50の均一濃度溶離液)。フラクションを270nmおよび230nmでモニターした。2つの成分を集め、減圧濃縮して、以下のフラクションを得た。
【0210】
RT= 15.32〜19.56分 フラクションA (125mg)
RT= 33.46〜41.90分 フラクションB (125mg)
分析条件
【表2】

【0211】
単離された化合物は、下表の通りである。
【表3】

【0212】
[実施例5]
阻害作用
化合物の阻害作用を評価するために、以下のアッセイを使用してIC50値を決定した。
【0213】
Hela細胞核抽出物から単離された哺乳類PARPを、96ウェルFlashPlates(商標)(NEN, UK)の中で、Z-緩衝液(25mM Hepes(Sigma);12.5 mM MgCl2(Sigma);50mM KCl(Sigma);1 mM DTT(Sigma);10%グリセロール(Sigma);0.001% NP-40(Sigma);pH 7.4)と共に、さまざまな濃度の前記阻害剤を加えてインキュベートした。すべての化合物は、DMSOにより希釈して、10〜0.01μMの間の最終アッセイ濃度で与え、また、DMSOは各ウェルで1%の最終濃度とした。各ウェルの全アッセイ体積は40μlであった。
【0214】
30℃で10分間インキュベートした後、NAD(5μM)、3H-NADおよび30mer二本鎖DNA-オリゴを含有する10μlの反応混合物を加えることにより、反応を開始した。酵素活性%を計算するために、指定された正および負の対照の反応ウェルを、化合物ウェル(未知試料)と組み合わせて測定した。次に、プレートを2分間振とうして、30℃で45分間インキュベートした。
【0215】
インキュベーションの後、各ウェルに50μlの30%酢酸を加えて反応を止めた。次に、プレートを室温で1時間振とうした。
【0216】
シンチレーション計数のために、プレートをTopCount NXT(商標)(Packard, UK)に移した。記録される値は、各ウェルの30秒計数後のカウント毎分(cpm)である。
【0217】
次に、各化合物の酵素活性%を、下記の等式を用いて計算する。
【数1】

【0218】
IC50値(酵素活性の50%が阻害される濃度)を計算した。これは、通常10μMから0.001μMまでの異なる濃度範囲にわたって決定される。このようなIC50値は、向上した化合物の効力を同定するための比較値として使用される。
【0219】
化合物6は、5 nMの平均IC50を有し、化合物13は、4 nMの平均IC50を有した。
【0220】
化合物13aは、3 nMの平均IC50を有し、化合物13bは、5 nMの平均IC50を有した。
【0221】
化合物15は、28 nMの平均IC50を有した。
【0222】
増強率(Potentiation Factor)
化合物の増強率(PF50)を、対照の細胞増殖のIC50を、+PARP阻害剤の細胞増殖のIC50で割って得られる比として計算する。増殖阻害曲線は、対照細胞および化合物処理細胞のどちらの場合も、アルキル化剤メチルメタンスルホネート(MMS)の存在下で試験したものである。試験化合物は、0.2マイクロモルの一定濃度で使用した。MMSの濃度は、0〜10μg/mlの範囲であった。
【0223】
細胞増殖は、スルホローダミンB (SRB)アッセイ(Skehan, P.ら, (1990) “New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer-drug screening.” J. Natl. Cancer Inst. 82, 1107-1112.)を用いて評価した。2,000個のHeLa細胞を、平底96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェル中に100μlの体積で播種し、37℃で6時間インキュベートした。細胞を、培地単独、または0.5、1もしくは5μMの最終濃度でPARP阻害剤を含有する培地により、培地交換した。細胞をさらに1時間増殖させた後、未処理の細胞またはPARP阻害剤により処理された細胞のいずれにも、さまざまな範囲の濃度(典型的には0、1、2、3、5、7および10μg/ml)のMMSを加えた。PARP阻害剤による増殖の阻害を評価するために、PARP阻害剤のみにより処理された細胞を使用した。
【0224】
細胞をさらに16時間放置した後、培地を交換して、細胞を37℃でさらに72時間増殖させた。次に、培地を除去して、100μlの氷冷10%(w/v)トリクロロ酢酸により細胞を固定した。プレートを4℃で20分間インキュベートした後、水により4回洗浄した。次に、細胞の入った各ウェルを、100μlの0.4%(w/v) SRB(1%酢酸中)により20分間染色した後、1%酢酸により4回洗浄した。次に、プレートを室温で2時間乾燥させた。各ウェルに100μlの10mM Tris塩基を加えることにより、染色細胞の染料を可溶化した。プレートを穏やかに振とうし、室温に30分間放置した後、Microquantマイクロタイタープレートリーダーにより564nmの吸光度を測定した。
【0225】
化合物6は、200nMで20の平均PF50を有し、化合物13は、200nMで57の平均PF50を有した。
【0226】
化合物13aは、30nMで25の平均PF50を有し、化合物13bは、30nMで9の平均PF50を有した。
【0227】
化合物15は、200nMで2の平均PF50を有した。
【0228】
溶解度アッセイ
本発明の化合物の溶解度を評価するために使用し得る典型的なアッセイは、以下の通りである。化合物の溶解度を、水中およびpH 7.4のリン酸緩衝生理食塩水(pbs)中で評価する。サンプルはすべて室温で20時間、溶媒中で(振とうしながら)平衡化する。この時間の後、サンプルを視覚的に観察して、溶解していない固体が存在するか否かを判定する。必要に応じてサンプルを遠心分離または濾過して不溶性の物質を除去し、DSの溶解度を決定するために、水性およびDMSOサンプルをどちらもDMSOにより同じ濃度まで希釈して、溶液を分析する。HPLC(ダイオードアレイ検出器を用いる)により得られるサンプルのピーク面積を、DMSO溶液(サンプルと同じ濃度に希釈したもの)のピーク面積と比較して、最初に溶解に使用したサンプルの重量を考慮に入れて定量化する。サンプルは、試験に使用するレベルではDMSOに完全に可溶性であると仮定する。
【0229】
ピーク面積の比を比較し、元のサンプルの濃度がわかれば、溶解度を計算し得る。
【0230】
サンプルの調製
約1 mgのサンプルを4 mlガラスバイアル中に正確に量り取り、そこに、ピペットを用いて正確に1.0 mlの水、緩衝水溶液またはDMSOを加える。固体の溶解を促進するために、各バイアルを2分間以内で超音波処理する。サンプルを、オービタルシェーカーで振とうしながら、室温に20時間保持する。この時間の後、バイアルを観察して、溶解していない固体が存在するか否かを判定する。必要に応じて、サンプルを遠心分離にかけ、または0.45μmのフィルターにより濾過して、不溶性の物質を除去すべきである。次いで、濾液について、すべてのサンプルをDMSOにより適切に希釈した後、溶液中の化合物の濃度を決定するために分析をおこなう。下記に示す方法を用いて20μlをHPLCにインジェクトする。この際、すべてのサンプルを2回ずつインジェクトする。この方法を用いて決定することができる最大の溶解度は、量り取る重量を、使用する溶媒の体積により割った値であり、名目上1.0 mg/mlである。
【0231】
分析技術
サンプルは、Waters Micromass ZQ装置(または同等のもの)を用いて、典型的には以下の試験パラメーターにより、LC/MSをおこなう。
【0232】
正イオンモードのWaters Micromass ZQ。
【0233】
m/z 100〜800のスキャン。
【0234】
移動相A - 0.1%ギ酸水溶液
移動相B - 0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
カラム - Jones Chromatography Genesis 4μ C18カラム、4.6×50mm
流速 2.0ml/分
注入量 20μlループに30μl注入。
【0235】
勾配 - 95% A/ 5% Bで開始し、4分後に95% Bに上げ、その濃度で4分間保持、次いで開始条件に戻る。(これを必要に応じて修正して、より良いピークの分離を得る)。
【0236】
210〜400nmのPDA検出スキャン
サンプルの定量化
水性希釈液を含有するサンプルバイアルの最初の試験は、化合物がその緩衝液にその濃度で溶解するか否かを示す。それが溶解しない場合、これは、HPLC/MSにより得られる溶液中の濃度に反映されるはずである。溶液が透明である場合、化合物の分解が起こっていない限り、水性溶液の濃度は、DMSO溶液の濃度に近いはずである。これは、クロマトグラム上に見ることができるはずである。
【0237】
サンプルはDMSOに完全に可溶性であり、したがって、そのサンプルから得られるピークサイズは溶解度100%を反映すると仮定する。すべてのサンプルの希釈が同じであったと仮定すると、mg/mlで表される溶解度=(pbs溶液から得られる面積/DMSO溶液から得られる面積)×(DMSO溶液中の元の重量/希釈)である。
【0238】
化合物6は、水に対して0.5 mg/mlの溶解度を有し、化合物13は、水に対して0.9 mg/mlの溶解度を有した。化合物15は、水に対して0.105 mg/mlの溶解度を有した。
【0239】
VC8アッセイ
BRCA2欠損(VC8ハムスター系)細胞およびBRAC2相補(VC8+BAC)細胞における化合物の増殖阻害活性を評価するために、下記のアッセイを使用してGI50値を決定した。
【0240】
500個のVC8細胞または200個のVC8+BAC細胞を、平底96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェル中に90μlの体積で播種し、37℃で4〜6時間インキュベートした。すべての化合物を培地(ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン)により希釈して、0〜300nMの最終濃度となるように細胞に加えた。
【0241】
細胞をさらに48時間放置した後、培地を新しい培地(化合物を含まない)と交換して、細胞を37℃で合計120時間増殖させた。次に、培地を除去して、50μlの氷冷した10% (w/v)トリクロロ酢酸により細胞を固定した。プレートを4℃で30分間インキュベートした後、水により3回洗浄した。次に、細胞の入った各ウェルを、50μlの0.4% (w/v)スルホローダミンB (SRB)(1%酢酸中)により15分間染色した後、1%酢酸により3回洗浄した。次に、プレートを室温で2時間乾燥させた。100μlの10mM Tris塩基を各ウェル中に加えることにより、染色された細胞の染料を可溶化した。次に、プレートを振とうし、Microquantマイクロタイタープレートリーダーにより564nmの吸光度を測定した。
【0242】
GI50を、細胞増殖の50%を阻害するのに必要な化合物のμM濃度として計算した。
【0243】
化合物13は、0.0105μMのVC8に対する平均GI50、および28.97μMのVC8+BACに対するGI50を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
RHは、縮合シクロヘキセン環上の1個以上の場合により存在する置換基を表し;
R1は、Hおよびハロより選択され;
RNは、Hおよび場合により置換されたC1-10アルキルより選択され;かつ
RC1およびRC2は、独立して、H、R、C(=O)ORより選択され、ここで、Rは、場合により置換されたC1-10アルキル、場合により置換されたC5-20アリールまたは場合により置換されたC3-20ヘテロシクリルであり;RC1およびRC2は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、場合により置換されたスピロ縮合C5-7炭素環または複素環を形成してもよい]
の化合物。
【請求項2】
式:
【化2】

で表される、請求項1の化合物。
【請求項3】
RHが、H、ハロ、ニトロ、ヒドロキシ、エーテル、チオール、チオエーテル、アミノ、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールより選択される、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R1が、H、ClおよびFより選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R1が、HおよびFより選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
RC2がHであり、かつRC1がC1-4アルキル基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
RC1がメチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
RNが、HおよびC1-4アルキルより選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
RNがHである、請求項9に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
ヒトまたは動物の体の治療方法に使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
PARPの活性を阻害するための医薬の調製における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
血管疾患;敗血症性ショック;虚血性傷害;神経毒性;出血性ショック;ウイルス感染;またはPARPの活性の阻害により改善される疾患の治療のための医薬の調製における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
癌治療における補助剤として使用するための、または電離放射線もしくは化学療法剤による治療のために腫瘍細胞を増感させるための医薬の調製における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
個体における癌の治療に使用するための医薬の製造における請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、該癌が、HR依存性DNA DSB修復経路が欠損している、前記使用。
【請求項16】
前記癌が、正常な細胞と比較して、HRによるDNA DSBを修復する能力が減少しているかまたは抑止されている1個以上の癌細胞を含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記癌細胞が、BRCA1またはBRCA2欠損表現型を有する、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記癌細胞が、BRCA1またはBRCA2欠損である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記個体が、HR依存性DNA DSB修復経路の構成要素をコードする遺伝子における突然変異に関してヘテロ接合である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記個体が、BRCA1および/またはBRCA2における突然変異に関してヘテロ接合である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、膵臓癌または前立腺癌である、請求項15〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記治療がさらに電離放射線または化学療法剤の投与を含む、請求項15〜21のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2010−539149(P2010−539149A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524565(P2010−524565)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003080
【国際公開番号】WO2009/034326
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】