説明

フタル酸エステル非含有イソシアヌレート調製物

本発明は、イソシアネート基を有するイソシアヌレートおよびフタル酸エステル非含有可塑剤から作られている新規な低モノマー含有率の低粘度高活性調製物、可塑化ポリ塩化ビニルをベースとしたコーティング組成物のための改善された接着性を有する接着促進剤としてのそれの使用、ならびにコーティングおよびコーテッド基材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート基を有するイソシアヌレートおよびフタル酸エステル非含有可塑剤から作られている新規な低モノマー含有率の低粘度調製物、可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)をベースとしたコーティング組成物用の接着促進剤としてのそれの使用、ならびにコーティングおよびコーテッド基材に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上の可塑化PVCの接着能は、可塑化PVCに、イソシアネート基を有する接着促進剤を添加することによって改善され得ることは公知である。一例として、PVCカバリングを備えた合成織物材料を製造することが目的である場合、この種の接着能の改善は重要である。接着促進剤としては、イソシアネート基を有し、ジイソシアネートからのオリゴマー化、特に三量化によって製造され得るイソシアヌレートの使用が好ましい。この目的に一般に用いられるジイソシアネートは、良好な市販性を有し、2,4−ジイソシアナトトルエン(2,4−TDI)および2,6−ジイソシアナトトルエン(2,6−TDI)から主として構成される異性体ジイソシアナトトルエン(TDI)を含む混合物である。これらは容易に、イソシアネート基を有するイソシアヌレートにほとんど完全に変換され得る。作業者の安全および製品の安全は、接着促進剤調製物中のジイシシアネートの残留含有率が、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満に保たれることを要するので、ほぼ完全な変換が必要である。ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)は、同様に容易に入手できるが、あまり適切でなく、TDIに比べて三量化させることがより困難であり、したがって、ジイソシアネートの高い残留含有率をもたらし得るため望ましくない。イソシアネート基を有し、およびMDIに基づくイソシアヌレートは、加えて難溶性を示し、および結晶化する傾向がある。
【0003】
イソシアネート基を有するイソシアヌレートは、それらが可塑剤中で溶液の形態で用いられる場合に、接着促進剤として取り扱いが特に容易である。実用的方法では、イソシアネート基を有し、およびTDIから誘導されるイソシアヌレートが、溶媒として用いられる可塑剤中で同様に製造される。これらの接着促進剤、および可塑剤を含有する接着促進剤調製物は、これらの調製および使用とともに、一例として、(特許文献1(特許文献2))に記載されている。
【0004】
本発明の目的のために、可塑剤は、本質的に硬く、かつ脆いPVCと混合後に、可塑化PVCとして知られる軟らかく、強靭な材料を与える物質である。公知の可塑剤の例は、フタル酸、アジピン酸または安息香酸のエステルである。可塑化PVCは、ときに可塑化PVCの50重量%を超える、大量のこれらの可塑剤を含み得る。使用条件下で、可塑剤は、表面で分離するか、または隣接する材料中に移動し得る。したがって、可塑化PVCが使用される場合、可塑剤による人および環境の汚染の危険がある。これらの問題に照らして、最近、使用される可塑剤が人に無害であり、および生体内蓄積性でないということがますます求められている。
【0005】
(非特許文献1)によれば、例えば、可塑剤フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジブチルおよびフタル酸ベンジルブチルは、玩具またはベビー用品にもはや使用することができず、可塑剤フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルおよびフタル酸ジ−n−オクチルは、小児の口に入り得る玩具またはベビー用品でもはや使用することができない。消費者の多くが、厄介であり理解するのが難しいと考え得るこれらの制限を考慮して、製造者の多くは、可塑化PVCの製造におけるフタル酸エステル含有可塑剤の全面的な廃止に進んでいる。したがって、加工性および使用特性に関してフタル酸エステル含有可塑剤の性能レベルを達成するフタル酸エステル非含有可塑剤に対する要求がある。
【0006】
本発明の目的のために、フタル酸エステル非含有可塑剤は、フタル酸ジアルキルをまったく含まない可塑剤、特に0.1重量%未満のフタル酸ジアルキルを含有する可塑剤である。
【0007】
フタル酸エステル含有可塑剤の廃止は、今や、特に玩具またはベビー用品などのセンシティブな用途のための、可塑剤含有接着促進剤調製物への要求にもなってきている。したがって、フタル酸エステルをまったく含まないが、それにもかかわらず、従来技術のフタル酸エステル含有接着促進剤調製物の良好な接着特性を有する接着促進剤調製物に対する大きな要求がある。さらなる要求は、調製物が、透明で固形物を含有せず、揮発性溶媒をまったく含まず、良好な加工性に必要な23℃で30000mPas未満、好ましくは20000mPas未満の粘度を有することである。ジイソシアネートの残留含有率は、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満であることが意図される。これまで、(特許文献3)さえも、従来技術では、これらの製品特性のすべてのいずれかの組合せについて記載されたものはなかった。
【0008】
したがって、フタル酸ジイソノニルをベースとし、および(特許文献4)に記載された接着促進剤調製物は、センシティブな用途にもはや適さない。(特許文献5)および(特許文献6)では、TDIに基づく、イソシアネート基を有しおよび接着促進剤として適するイソシアヌレートが、任意の所望の溶媒(それらの中にはフタル酸エステル非含有可塑剤がある)中で製造され得ることが主張されている。しかし、以下で示される比較実施例により、フタル酸非含有可塑剤はすべて、記載された要求を満たす接着促進剤調製物を決して与えないことが示される。これは、Mesamoll(登録商標)という商品名で市販されている、フェノールのアルキルスルホン酸エステル(ASE)に基づく、(特許文献3)に記載された可塑剤にも適用される。(特許文献7)には、イソシアネート基を有するイソシアヌレート、を含む接着促進剤として適した溶液が記載されているが、これらは、MDIから製造される。これらの溶液は、上述の理由のために、不適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第2419016A1明細書
【特許文献2】英国特許第1455701A号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102007034977A1号明細書
【特許文献4】国際公開第200570984A1号パンフレット
【特許文献5】独国特許出願公開第2551634A1号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1378529A1号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第3041732A1号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】欧州連合指示書(European Union Directive)2005/84/EC
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、イソシアネート基を有し、およびフタル酸エステル非含有可塑剤を含むが、国際公開第200570984A1号パンフレットのフタル酸エステル含有接着−促進剤調製物のレベルを達成する機械的特性、例えば、結合強度を有するイソシアヌレートの好適な調製物を、接着促進剤として与えることである。その意図は、イソシアネート基を有するイソシアヌレートが、工業的に大規模で入手できるTDI異性体混合物に基づくことである。調製物は、透明であることが意図され、それら粘度は、23℃で30000mPas未満、好ましくは20000mPas未満であることが意図され、遊離TDI(すべて異性体)の含有率は、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満であることが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
A)イソシアネート基を有する、15〜50重量%のイソシアヌレートおよびB)85〜50重量%のモノ安息香酸n−アルキルまたはモノ安息香酸イソアルキルを含み、但し、
i)イソシアネート基を有するイソシアヌレートは、2,4−ジイソシアナトトルエンと2,6−ジイソシアナトトルエンの混合物の三量化によって製造され、および
ii)重量パーセントのすべての合計は100%である
ことを条件とすることを特徴とする調製物は、本目的を達成し、したがって、本発明によって提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の1つの好ましい実施形態において、調製物は、イソシアネート基を有する、20〜35重量%のイソシアヌレートおよび80〜65重量%のモノ安息香酸n−アルキルまたはモノ安息香酸イソアルキル、好ましくは安息香酸n−ノニルまたは安息香酸イソノニルを含む。
【0014】
工業的に大規模で入手でき、2,4−TDIおよび2,6−TDIから本質的になる混合物は、成分A)を製造するために用いられる。この混合物は、65〜95重量%の2,4−ジイソシアナトトルエンおよび5〜35重量%の2,6−ジイソシアナトトルエンを含む異性体ジイソシアナトトルエンの混合物であり、ジアルキルアミノ基を含むフェノール系触媒による触媒作用によって製造される。このTDI異性体混合物は、混合物中に15〜25重量%の2,6−TDIとともに75〜85重量%の2,4−TDIを含むことが好ましい。Bayer MaterialScience AGから商業的に得られる製品Desmodur(登録商標)T80は、好ましく用いられるべきであるこれらのTDI異性体の一例である。
【0015】
成分A)を製造する三量化反応を開始および促進させるための触媒として、少なくとも1種のマンニッヒ塩基を用いることができ、ここで、これらはまた、より高い温度でTDIの選択的取込みをもたらす。この種の触媒系は、フェノール性OH基、および芳香族系に結合したN,N−ジアルキルアミノメチル基(アルキル:C1〜C3−アルキル鎖および/または1〜18個の炭素原子を有するアルキレン鎖を有し、ここで、これらは、隔てるものとして酸素または硫黄を場合によって有する)を有する。
【0016】
これらは、複数の分子にわたって分布した、または1つもしくは複数の芳香族環上に位置した基であり得る。触媒系として用いられる化合物は好ましくは、分子中にヒドロキシル基だけでなく、アミノメチル基も含むものである。
【0017】
芳香族のヒドロキシ基に関してオルト位にC1〜C3−ジアルキルアミノメチル基を有する系を用いることが特に好ましい。
【0018】
触媒として適したマンニッヒ塩基の合成は、一例として、独国特許出願公開第2551634A1号明細書および国際公開第200570984A1号パンフレットに記載されている。好んで用いられるべきマンニッヒ塩基は、フェノール、p−イソノニルフェノールまたはビスフェノールAに基づくものであり、これらは、例えば、独国特許第A2452531号明細書またはSynth.Commun.(1986年)、16、1401〜9頁におけるとおりに、ジメチルアミンおよびホルムアルデヒドとの反応を介して得られる。フェノールまたはビスフェノールAに基づくマンニッヒ塩基が、特に好ましい。
【0019】
マンニッヒ塩基の形態で用いられるべき触媒は、純物質の形態でまたは溶液中で、好ましくは複数の小部分に分けて、または連続的に用いられる。
【0020】
成分A)は、一例として国際公開第200570984A1号パンフレットに記載された公知の方法によってジイソシアネート混合物の三量化を介して製造される。
【0021】
三量化は、可塑剤成分B)の存在下で行われる。三量化反応は、40〜140℃、好ましくは40〜80℃の温度範囲で行われる。反応混合物中の遊離TDIの含有率が1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である場合、三量化は、触媒の熱分解によって、好ましくは触媒毒の添加によって終了させる。その場合に、生成物は、3〜7重量%、好ましくは4.5〜6重量%のイソシアネート基を含む。
【0022】
三量化反応は、少なくとも1種の触媒毒の添加によって最終的に終了させることが好ましい。この目的のために好ましい触媒毒は、プロトン酸、塩化アシルまたはメチル化化合物の群由来のものである。リン酸アルキル、特にリン酸ジブチル、またはトルエンスルホン酸メチルを用いることが特に好ましい。本発明の調製物は、0.02〜4重量%、好ましくは0.1〜2重量%、特に好ましくは0.2〜1重量%の触媒毒を含む。
【0023】
本発明による調製物中で可塑剤として用いられるべき成分B)の安息香酸n−アルキルまたは安息香酸イソアルキルは、好ましくは0.1重量%未満のフタル酸ジアルキルおよび0.1重量%を超える安息香酸n−アルキルまたは安息香酸イソアルキルを含む。モノ安息香酸n−アルキルまたはモノ安息香酸イソアルキルは、安息香酸と、単官能の直鎖または分枝のアルキルアルコール、好ましくはC7−〜C10−アルコールとのエステル化によって製造され得る。
【0024】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、用いられる成分B)は、90重量%を超える安息香酸n−ノニルまたは安息香酸イソノニルを含む。合成に必要とされるC9アルコールは、好ましくはn−ノナノール、メチルイソプロピルペンタノール、メチルプロピルペンタノール、トリメチルヘキサノール、エチルメチルヘキサノール、プロピルヘキサノール、ジメチルヘプタノール、エチルヘプタノール、メチルオクタノールの群由来のノナノール類である。
【0025】
特に好ましい成分B)は、わずかな割合の安息香酸3,5,5−トリメチルヘキサノールが存在することを特徴とする安息香酸n−ノナノールおよび安息香酸イソノナノールの混合物である。
【0026】
極めて特に好ましい成分B)は、10モル%未満の安息香酸3,5,5−トリメチルヘキサノールが存在することを特徴とする、安息香酸n−ノナノールおよび安息香酸イソノナノールの混合物である。
【0027】
1つの好ましい実施形態において、本発明による調製物は、製造方法によって、A)およびB)に加えて、0.01〜2重量%、特に好ましくは0.05〜1重量%のマンニッヒ塩基もしくはその分解生成物および/または0.01〜2重量%の触媒毒も含む。
【0028】
明確にするために、本発明の範囲は、一般用語または好ましい範囲において、本開示に記載される定義およびパラメータのすべての任意の所望の組合せを包含することが留意されるべきである。
【0029】
本発明による調製物は、驚くべき貯蔵寿命を有し、透明で、わずかに黄色がかった色から黄色がかった色の液体であり、これは、何週間もの間の貯蔵後でさえも、結晶化または沈殿物の形成もしくは相分離への傾向をまったく示さない。さらに、それらは、貯蔵後でさえも、遊離TDIの極めて低い含有率を特徴とし、このことは、本発明による調製物の特別の利点であり、その理由は、これが、毒性学的危険性を示す比較的低沸点のジイソシアネートであるからである。
【0030】
接着促進剤として適しており、およびイソシアネート基を有するイソシアヌレートを含み得る調製物は、従来技術において可塑剤中のジイソシアネートの三量化によって最良に製造され、三量化反応の過程は、触媒だけでなく、例えば、用いられる触媒、およびTDIの異性体構成によっても影響され、したがって、具体的に、可塑剤、触媒および最大量の2,6−TDIの、本発明に必須である組合せが、要求された特性を有する接着促進剤調製物を与えることは予想することができていなかった。実際、以下に示される比較実施例1〜6により、本発明の基礎をなす目的は、いずれの所望のフタル酸エステル非含有可塑剤によっても達成され得ないことが示される。
【0031】
しかし、本発明はまた、成分A)を与えるTDI混合物の三量化が、可塑剤B)の存在下および触媒として機能する少なくとも1種のマンニッヒ塩基の存在下で40〜140℃、好ましくは40〜80℃で行われ、反応混合物中の遊離TDIの含有率が、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満になると直ぐに、三量化が、触媒の熱分解によってまたは少なくとも1種の触媒毒の添加によって、触媒の完全または部分的な失活とともに終了することを特徴とする、本発明による調製物を製造する方法を提供する。本発明によれば、三量化を終了させるために触媒毒を用いることが好ましい。触媒毒として、リン酸アルキル、特にリン酸ジブチルまたはトルエンスルホン酸メチルを用いることが特に好ましい。本発明による方法は好ましくは、本発明による調製物を与え、その場合に、これは、3〜7重量%、好ましくは4.5〜6重量%のイソシアネート基を含む。
【0032】
本発明による調製物は、可塑化PVC用の接着促進剤として、特にPVCプラスチゾル用の接着促進添加剤として適する。本発明による調製物は、イソシアネート基に対して反応性の基を有する合成繊維、例えば、ポリアミド繊維またはポリエステル繊維から作られている基材間の接着促進剤として特に有利に使用され、PVCプラスチゾルまたは軟質PVCは溶融する。当然、本発明による溶液は、シート状基材、例えば、箔上の可塑化PVCまたはPVCプラスチゾルの接着を向上させるために使用することもできる。
【0033】
したがって、本発明はまた、可塑化PVCをベースとしたコーティング組成物用の接着促進剤としての本発明による調製物の使用を提供する。
【0034】
本発明による調製物の本発明による使用のための手順の一例では、本発明による調製物は、コーティングされるべき基材上に、印刷され、ナイフ塗布され(doctored)、スクリーン掛けされ(screened)もしくは噴霧され、または浸漬コーティング(dip−coating)により塗布される。製造される品目に応じて、1層または複数層の接着促進剤非含有PVC層が、このように前処理された基材表面に、例えば、プラスチゾルとしてまたは押出しコーティングもしくはホットメルトコーティングによってまたはラミネーションによって適用される。本発明による調製物は、特に好ましくはそれらの適用前にPVCプラスチゾルに添加することもできる。
【0035】
本発明による調製物の使用される量は、通常はコーティング組成物上の可塑剤非含有PVCに基づいて、イソシアネート基を有する、0.5〜200重量%、好ましくは2〜30重量%のイソシアヌレートが存在するようなものである。しかし、本発明による溶液の使用される量は、それぞれの用途分野に適切な任意の所望の他の量であることもできる。
【0036】
最終層の製造、すなわち、接着促進剤のイソシアネート基と基材との反応、およびPVC層のゲル化は、PVC層の構成に応じて、110〜210℃の温度を用いて、従来の様式で適用の種類とは関係なく比較的高い温度で行われる。
【0037】
本発明はさらに、織物または布地用のコーティングおよびコーテッド基材を提供し、ここで、これらは、上記接着促進剤調製物を用いて得られる。本発明による調製物は、可塑化PVCをベースとするコーティング、特に防水布、広告板、空気膜構造およびその他の織物建造物、フレキシブルコンテナ、多角形屋根、天幕、防護衣、コンベヤーベルト、フロックカーペットまたは発泡合成皮革の製造のための接着促進剤として適する。本発明による調製物は、イソシアアネート基に対して反応性の基を有する基材のコーティングにおいて、特にポリエステル繊維またはポリアミド繊維から作られているヤーン、マットおよび布地のコーティングの間に、接着促進添加物として特に良好な適切性を有する。
【0038】
以下の実施例は、本発明のさらなる説明を与えるが、本発明を限定することは意図されない。
【0039】
特に断りのない限り、部およびパーセントのすべては、重量に基づく。
【0040】
製品について決定した特性は、固形分(厚層方法:蓋、1gの試験片、1時間、125℃、対流式オーブン、DIN EN ISO 3251に基づく方法)、23℃での粘度(Haake GmbH、Karlsruhe製VT550 回転粘度計)、および遊離TDI含有率(DIN ISO 55956に従うガスクロマトグラフィー、Hewlett Packard 5890)であった。イソシアネート含有率はEN ISO 11909により決定された。
【0041】
出発原料
Desmodur(登録商標)T80:80重量%の2,4−TDIおよび20重量%の2,6−TDIから作られているTDI異性体混合物、Bayer MaterialScience AG。
【0042】
Vestinol(登録商標)9DINP:フタル酸ジイソノニル、Oxeno GmbH。
【0043】
Vestinol(登録商標)INB:安息香酸イソノニル、Evonik。
【0044】
Benzoflex(登録商標)2088:ジ安息香酸ジエチレングリコール、ジ安息香酸トリエチレングリコールおよびジ安息香酸ジプロピレングリコールの混合物、Velsicol Chemical Corp。
【0045】
Unimoll(登録商標)AGF:アセチル化酢酸グリセロール、Lanxess Deutschland GmbH。
【0046】
Mesamoll(登録商標)II:アルカンスルホン酸フェノール(0.25重量%以下の揮発性パラフィン系化合物を含む)、Lanxess Deutschland GmbH。
【0047】
触媒作製:(独国特許出願公開第2452532A1号明細書に従って類推して):94重量部のフェノールを、692重量部の25%濃度ジメチルアミン水溶液および408重量部の40%濃度ホルムアルデヒド水溶液と、80℃に、2時間加熱した。冷却後、有機相を単離し、90℃および15ミリバールで蒸発により濃縮した。残渣をキシレンに溶解させ、80%のマンニッヒ塩基濃度に調整した。以下の実施例における定量的データは、この触媒溶液に基づく。
【0048】
比較実施例1(本発明によらない)
180重量部のDesmodur(登録商標)T80を、2.9重量部の触媒溶液と一緒に、504重量部のVestinol(登録商標)9DINP中50℃で三量化させた。84時間後、4.7重量部のトルエンスルホン酸メチルを添加することによって反応を中断し、撹拌を60〜70℃で3時間続けた。これにより、4.7重量%のイソシアネート含有率、23℃で5700mPasの粘度および0.16重量%の遊離TDI含有率の透明溶液が得られた。
【0049】
比較実施例2(本発明によらない)
180重量部のDesmodur(登録商標)T80を、1.6重量部の触媒溶液と一緒に、378重量部のVestinol(登録商標)9DINP中55℃で三量化させた。72時間後、2.6重量部のトルエンスルホン酸メチルを添加することによって反応を中断し、撹拌を60〜70℃で3時間続けた。これにより、5.53重量%のイソシアネート含有率、23℃で41400mPasの粘度および0.14重量%の遊離TDI含有率の透明溶液が得られた。
【0050】
比較実施例3(本発明によらない)
180重量部のDesmodur(登録商標)T80を、0.7重量部の触媒溶液と一緒に、415重量部のBenzoflex(登録商標)2088中55℃で三量化させた。84時間後、1.7重量部のトルエンスルホン酸メチルを添加することによって反応を中断し、撹拌を60〜70℃で3時間続けた。これにより、4.8重量%のイソシアネート含有率、23℃で200000mPasを超える粘度および1.09重量%の遊離TDI含有率の透明溶液が得られた。
【0051】
比較実施例4(本発明によらない)
180重量部のDesmodur(登録商標)T80を、2.9重量部の触媒溶液と一緒に、504重量部のMesomoll(登録商標)II中55℃で三量化させた。72時間後、4.7重量部のトルエンスルホン酸メチルを添加することによって反応を中断し、撹拌は60〜70℃で3時間続けた。これにより、4.8重量%のイソシアネート含有率、23℃で11600mPasの粘度および0.25重量%の遊離TDI含有率の透明溶液が得られた。
【0052】
比較実施例5(本発明によらない)
180重量部のDesmodur(登録商標)T80を、1.5重量部の触媒溶液と一緒に、378重量部のMesamoll(登録商標)II中55℃で三量化させた。72時間後、2.6重量部のトルエンスルホン酸メチルを添加することによって反応を中断し、撹拌を60〜70℃で3時間続けた。これにより、5.31重量%のイソシアネート含有率、23℃で300000mPasを超える粘度および0.15重量%の遊離TDI含有率の透明溶液が得られた。
【0053】
比較実施例6(本発明によらない)
180重量部のDesmodur(登録商標)T80を、1.5重量部の触媒溶液と一緒に、378重量部のUnimoll(登録商標)AGF中55℃で三量化させた。72時間後、2.6重量部のトルエンスルホン酸メチルを添加することによって反応を中断し、撹拌を60〜70℃で3時間続けた。これにより、4.9重量%のイソシアネート含有率、23℃で35400mPasの粘度および0.42重量%の遊離TDI含有率の透明溶液が得られた。
【0054】
比較実施例1は、欧州特許出願公開第1711546A1号明細書の実施例2に相当し、本発明による接着促進剤調剤の特性の従来技術との比較を可能にするのに役立つ。比較実施例2は、本発明による可塑剤を使用しない場合、約32重量%へのTDI三量体含有率の増加が、極めて高い粘度増加をもたらすことを示す。本発明によらない比較実施例1〜6によってさらに示されるように、可塑剤の選択は、三量化の結果に決定的な影響を有する。したがって、所望の特性の組合せは、従来技術で記載されたフタル酸エステル非含有可塑剤の使用によって達成することができないか、またはTDI三量体の濃度が約27重量%を超えない場合にのみ、それによって達成することができる。接着促進剤は、それらの高粘度のために加工性を失い得るか、またはそれらのTDI三量体の濃度が低過ぎるために不十分な結合強度を与え得る(以下を参照されたい)。
【0055】
発明実施例1(本発明による)
180重量部のDesmodur(登録商標)T80を、1.5重量部の触媒溶液と一緒に、378重量部のVestinol(登録商標)INB中55℃で三量化させた。72時間後、2.6重量部のトルエンスルホン酸メチルを添加することによって反応を中断し、撹拌を60〜70℃で3時間続けた。これにより、5.43重量%のイソシアネート含有率、23℃で11040mPasの粘度および0.31重量%の遊離TDI含有率の透明溶液が得られた。
【0056】
性能試験および試験結果:
実際条件の良いシミュレーションを与える試験系において、ポリエステル布地に、PVCプラスチゾル/接着促進剤コーティングを施した。次いで、前記コーティングの結合強度を、標準化試験細片について測定した。このために、ドクターを用いて、ポリエステル布地に、接着促進剤含有接着コートおよびその他の点では同一の構成の接着促進剤非含有トップコートを施した。これらのコーティングは、オーブン中でゲル化させ、試験へと渡された。結合強度試験では、2つの試験細片を互いに重ね合わせ(PVC側の上にPVC側)、低圧で押圧し、引張り機を用いて試験した。
【0057】
試験装置:
はかり:精度最小値0.1g
撹拌機:高回転速度撹拌機棒
ラボコーター(Mathis AG Zuerich)製
Ametec LR5 K plus引張試験機
ポリエステル布地:標準ポリエステル 1100dtex L 9/9 Z 60布地
試験は、約40×25cmのサイズである布地の試験片を用いた。
【0058】
PVCプラスチゾルの構成:
70部のVestolit(登録商標)B7021UltraペーストPVC;Vestolit GmbH;Marl
30部のVestolit(登録商標)E7031ペーストPVC;VestolitGmbH;Marl
33部のMesamoll(登録商標)ASEP可塑剤;Lanxess Deutschland GmbH
33部のVestinol(登録商標)9DINP可塑剤;Evonik Oxeno GmbH、Marl
10部のDurcal(登録商標)5チョーク;Omya GmbH;Cologne
2.5部のMark(登録商標)BZ513安定剤;Crompton Vinyl Additives GmbH;Lampertheim
1.5部のKronos(登録商標)2220二酸化チタン;Kronos Titan GmbH;Leverkusen
【0059】
試験片:
第1接着コート 約120g/m 140℃/2分
第2トップコート 約120g/m 140℃/2分
【0060】
試験片は、180℃で2分間押圧し、溶融させた。
【0061】
寸法:幅5cm×長さ25cm(横糸方向)
【0062】
Ametec LR5 K plus引張試験機を用いた試験
【0063】
PVCプラスチゾルは、Drais混合機中水冷しながらおよび真空中で、最大回転速度で2.5時間撹拌することにより、「PVCプラスチゾルの構成」の下での上記出発原料を混合することによって作製した。
【0064】
接着:
次いで、前記試験片を用いて、Lloyd M 5 K引張試験機を用いて結合強度を測定した。得られた結合強度は、裏地から10cmのコーティングを引き剥がすのに必要とされるニュートン単位の力である(剥離試験、活性度(Activity)として表中で示す)。表中に記載した値は、少なくとも3個の別個の測定値の平均を取ることによって得た。
【0065】
発明実施例1についての結果によって示されるように、本発明によるフタル酸エステル非含有接着促進剤調製物の使用は、従来技術のフタル酸エステル含有接着促進剤調製物によって得られたもの(比較実施例1および2)よりも高い結合強度値を与える。比較実施例2、3、5および6の接着促進剤は、これらが、過剰に高い粘度を有したか(比較実施例3および5)、または低い加工性を有した(比較実施例2および6)ことから、さらなる加工に適さず、および比較実施例4を含むすべての場合に、接着は均一なコーティングを与えるのに十分でなかった。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)イソシアネート基を有する、15〜50重量%のイソシアヌレートおよびB)85〜50重量%のモノ安息香酸n−アルキルまたはモノ安息香酸イソアルキルを含み、但し、
i)前記イソシアネート基を有するイソシアヌレートは、2,4−ジイソシアナトトルエンと2,6−ジイシソアナトトルエンの混合物の三量化によって製造され、および
ii)前記重量パーセントのすべての合計は100%である
ことを条件とすることを特徴とする調製物。
【請求項2】
イソシアネート基を有する、20〜35重量%のイソシアヌレートおよび80〜65重量%のモノ安息香酸n−アルキルまたはモノ安息香酸イソアルキルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
前記イソシアネート基を有するイソシアヌレートが、65〜95重量%の2,4−ジイソシアナトトルエンおよび5〜35重量%の2,6−ジイソシアナトトルエンを含む異性体ジイソシアナトトルエンの混合物から、ジアルキルアミノ基を含むフェノール系触媒による触媒作用によって製造されることを特徴とする、請求項1または2に記載の調製物。
【請求項4】
前記モノ安息香酸n−アルキルまたはモノ安息香酸イソアルキルが、90重量%を超える安息香酸n−ノニルまたは安息香酸イソノニルを含むことを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも一項に記載の調製物。
【請求項5】
可塑化ポリ塩化ビニルをベースとしたコーティング組成物用の接着促進剤としての請求項1〜4のいずれか一項に記載の調製物の使用。
【請求項6】
前記コーティング組成物が、基材を製造するために使用されることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
コーテッド基材が、防水布、広告板、空気膜構造およびその他の織物建造物、フレキシブルコンテナ、多角形屋根、天幕、防護衣、コンベヤーベルト、フロックカーペットまたは発泡合成皮革として使用されることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記基材が、織物または布地をベースとした基礎構造を有することを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記布地が、織物ポリエステルの布地または織物ポリアミドの布地であることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
成分A)を与えるTDI混合物の三量化が、可塑剤成分B)の存在下および触媒として機能する少なくとも1種のマンニッヒ塩基の存在下で、40〜140℃の温度範囲で行われ、反応混合物中の遊離TDIの含有率が、1.0重量%未満になると直ぐに、前記三量化が、前記触媒の熱分解によってまたは少なくとも1種の触媒毒の添加によって、前記触媒の完全または部分的な失活とともに終了することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の調製物を製造する方法。
【請求項11】
リン酸アルキル、特にリン酸ジブチルまたはトルエンスルホン酸メチルが、触媒毒として使用されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の調製物を含む、好ましくは、ポリ塩化ビニル用のコーティング組成物。

【公表番号】特表2013−518960(P2013−518960A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551628(P2012−551628)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051612
【国際公開番号】WO2011/095569
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】