説明

フッ素ゴム系粘着性組成物

【課題】 耐熱性・耐溶剤性に優れた粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】 過酸化物架橋不可能なフッ素ゴムポリマー100重量部、化物架橋可能なフッ素ゴムポリマー1〜30重量部及び架橋必要量の過酸化物からなる粘着性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性や耐溶剤性に優れたゴム系粘着材組成物に関するものであって、各種機械、電気・電子部品等の固定、仮固定あるいは表面保護に好適な粘着テープ等に使用される粘着性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは柔軟な支持層と粘着性を持つ粘着層とで形成され、各種機械、部品等の固定や仮固定、あるいは表面保護等に用いられている。支持層は不織布やポリエステル等の各種樹脂が使用され、粘着層を片面あるいは両面に持つ。粘着層はシリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等で形成され、支持層に塗布されて相手材に粘着することで粘着テープとして機能する。
【0003】
製造工程上、粘着テープで電子部品等を基板に仮固定したまま加熱することがある。このような場合、耐熱性を持つ粘着テープを使用する必要がある。従来の粘着剤は耐熱性に劣り、ゴム系粘着剤はほぼ常温域、アクリル系粘着剤は約180℃以下、シリコーン系粘着剤は約200℃以下が使用温度範囲とされている。また、粘着剤の多くは溶剤・薬品に溶解あるいは膨潤してしまうため、溶剤・薬品での洗浄工程がある場合、これらの溶剤・薬品への耐性が低い粘着剤を粘着層とした粘着テープは使用できない。
【0004】
これら粘着剤の中で高温環境下でも使用でき、かつ、溶剤・薬品への耐性が高いものとしてシリコーン系粘着剤が挙げられる。しかし、シリコーン系粘着剤は低分子シロキサンや添加されているシリコーンオイルが加熱によってブリードアウトあるいは揮散して基板等を汚染し、接点障害等を引き起こす可能性が指摘されている。
【0005】
フッ素ゴムは耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性に優れているため、洗浄工程や加熱工程がある場合、粘着剤として使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、過酸化物架橋可能なフッ素ゴムを主成分として、これに過酸化架橋不可能なフッ素ゴムを配合して、粘着力を増加させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−245429
【特許文献2】特開平8−134422
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、フッ素ゴムは粘着性ではあるものの粘着剤として使用するに十分な粘着力を有しておらず、安定した粘着力を発揮させるためには粘着付与剤の添加他で粘着力を増大させる必要があった(例えば、特許文献3参照)。特開平8−134422には、上述したように過酸化物架橋可能なフッ素ゴムを主成分とする粘着剤が記載されているが、過酸化物架橋不可能なフッ素ゴムを主体とした組成物は成形時に発泡して、評価不可能であったことが開示されている。
【特許文献3】特開平10−324864
本発明は耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性に優れたフッ素ゴムを利用して高温下での使用に適し、かつ、溶剤等の洗浄によっても粘着力が低下しない粘着性組成物をより簡便に得ようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは鋭意検討の結果、粘着力の大きい架橋不可能なフッ素ゴムを主成分とし、これに架橋可能なフッ素ゴムを小量配合した組成物を過酸化物架橋することにより、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性に優れると共に実用上十分な粘着力を有する架橋フッ素ゴムが得られることを見出した。すなわち、本発明は、過酸化物架橋不可能なフッ素ゴム100重量部、過酸化物架橋可能なフッ素ゴム1〜30重量部及び架橋必要量の過酸化物からなる粘着性組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着性組成物は各種機械、電気・電子部品の基盤等への仮固定・固定あるいは表面保護に使用される粘着テープ等の粘着層を形成する材料として好適である。このような用途へ使用される粘着テープは、基材あるいは被粘着物に対して十分な粘着力を有し、仮固定あるいは表面保護の必要が無くなった時には基材あるいは被粘着物から容易に剥離することが必要となる。この時、基材あるいは被粘着物に糊残りがあってはならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の粘着性組成物の主成分となる過酸化物架橋不可能なフッ素ゴムとは、炭素−炭素結合からなる主鎖にフッ素が結合し、後述する架橋サイトを有さない化合物である。代表的には、フッ化ビニリデン、テトラフロロエチレン、フッ化プロピレンの化合物の1種又は2種以上との弾性共重合体、及びこれらとプロピレンとの共重合体が挙げられる。過酸化物架橋不可能なフッ素ゴムは単独で粘着性を持ち、粘着層の基材として引張破断強度のような物性が高いことが望ましい。
【0010】
過酸化物架橋可能なフッ素ゴムとは、上記した化合物から得られるフッ素ゴム構造中に導入された二重結合あるいはヨウ素、臭素等の反応性を持つ官能基である架橋サイトを持つフッ素ゴムである。これらの架橋サイト同士が架橋剤によって三次元網目構造をとることで架橋ゴムとなる。過酸化物架橋可能なフッ素ゴムは架橋することで粘着層の機械的特性及び耐溶剤性を上げることを目的に配合され、架橋時に微粘着性を持っていることが望ましい。
【0011】
過酸化物架橋可能なフッ素ゴムの配合量は、主成分である過酸化物架橋不可能なフッ素ゴム100重量部当たり、1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。過酸化物架橋可能なフッ素ゴムの配合量は上記下限より小さいと、架橋物の機械的強度及び耐溶剤性が低下し、その配合量を上記上限より多くすると架橋物の粘着性が低下すると共に、機械的強度及び耐溶剤性のさらなる改善が見られなくなる。
【0012】
本発明における過酸化物としては、それ自体公知の有機過酸化物、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイドを使用することができる。過酸化物の配合量は架橋可能なフッ素ゴムを架橋させることのできる量であればよいが、通常、架橋可能なフッ素ゴム100重量部当たり、1〜1.5重量部である。
【0013】
フッ素ゴムを架橋させることで物性は上がるが、粘着力は低下する傾向を示す。このことを利用して過酸化物架橋可能なフッ素ゴムと過酸化物架橋不可能なフッ素ゴムの配合量を変量することで粘着性組成物の粘着力をコントロールすることができる。
【0014】
本発明の粘着性組成物は必要に応じて公知の充填剤や着色剤を含有することができる。充填剤としてはシリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、フッ素樹脂粉末、カーボンブラック、ベンガラ等が例示される。配合量が多くなると粘着性組成物の柔軟性が低下すると共に粘着性が低下するため、過酸化物架橋不可能なフッ素ゴム及び過酸化物架橋可能なフッ素ゴムの合計100重量部に対して充填剤の配合量は100重量部以下であることが望ましい。
【0015】
本発明の粘着剤組成物の好ましい形態は、この組成物を溶媒に溶解した粘着性組成物溶液である。この溶液は上記各成分を二本ロール・バンバリミキサー・ニーダー等の混練機で混練した後、フッ素ゴムを溶解する公知の溶剤で溶解することによって調製される。これに代えて、上記各成分を混練せずに同様に溶媒に溶解することによって粘着性組成物溶液を調製することもできる。溶媒としては、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。こうして得られた粘着性組成物溶液を支持層となるフィルム上に塗布、溶剤を揮散させた後、加熱することによって粘着性積層体、例えば粘着テープが得られる。
【0016】
さらに、本発明の粘着性組成物は、溶剤を使用せずに、二軸押出機等で混練しながら連続的に支持層に塗布することもできる。この時、粘着剤組成物は外部から与えられる熱と剪断力による発熱とによって溶融状態になるため、溶剤に溶解させなくても容易に連続的な塗布が可能となる。
【0017】
本発明の粘着性組成物は柔軟な支持層に塗布され、粘着テープ等を形成することができる。支持層は耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性に優れたものが望ましく、フィルム状に成型したフッ素系樹脂(例えばPTFE、PFA、FEP、ETFE等)、ポリイミド等の樹脂類、あるいは薄く成型した金属箔が例示される。支持層は表面処理・プライマーの塗布等によって粘着層との密着力を上げることができる。
【実施例】
【0018】
実施例においては、原料となるフッ素ゴムと架橋剤となる過酸化物だけからなり、充填剤を添加しない最も単純な配合により、粘着性組成物の調製及び架橋物の評価を行った。
【0019】
実施例1、2及び比較例1、2
過酸化物架橋不可能なフッ素ゴムと過酸化物架橋可能なフッ素ゴムを表1に従って溶剤に溶解して粘着剤組成物溶液を得た。この粘着剤組成物溶液を支持層となるエチレンーテトラフルオロエチン共重合体(ETFE)フィルムに塗布した後、200℃で3分間加熱架橋して支持層に粘着層が積層した粘着テープを得た。なお、粘着層の厚みは約30μmとなるように調整した。
【0020】
得られた粘着テープについてJIS Z 0237に準じて剥離試験を行い、試験板に対する180度引き剥がし粘着力を測定した。即ち、得られた粘着テープを100mm×25mm×0.2mmのSUS301Hに貼り付け、SUS301Hから試験体を180度の角度で引張速度30mm/minで引き剥がした時の荷重を測定した。結果を表1に示す。
【0021】
表1に示したように、実施例は良好な粘着力を示していることがわかる。また、過酸化物架橋可能なフッ素ゴムを50重量部及び100重量部まで増量した比較例1及び2では、粘着力が次第に低下していることが分かる。
【0022】
また、洗浄工程を想定して粘着面を溶剤(トルエンおよびメタノール)で拭いた後、同様の方法で剥離試験を行ったところ、実施例1、2いずれも粘着力に変化は無いことが確認された。このことは、本発明の粘着性組成物から得られる架橋物が、優れた粘着性と共に良好な耐有機溶剤性を有していることを示している。さらに、再利用を想定し、オーブン中に200℃×12時間静置した試験体の粘着力は加熱していないものとの差は認められなかった。
【0023】
【表1】

【0024】
※1;Aflas(登録商標)150CS(旭硝子(株))
※2;Aflas(登録商標)150L(旭硝子(株))
※3;ジクミルパーオキサイド(工業用グレード)
※4;トリアリルイソシアヌレート(工業用グレード)
※5;酢酸イソアミル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物架橋不可能なフッ素ゴムポリマー100重量部、過酸化物架橋可能なフッ素ゴムポリマー1〜30重量部及び架橋必要量の過酸化物からなる粘着性組成物。
【請求項2】
請求項1記載の粘着性組成物を溶剤に溶解したことを特徴とする粘着性組成物溶液。
【請求項3】
請求項2記載の粘着性組成物溶液を基材に塗布し乾燥した粘着性積層体。
【請求項4】
請求項1記載の粘着性組成物の溶融物を基材に塗布した粘着性積層体。

【公開番号】特開2009−108287(P2009−108287A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306495(P2007−306495)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(595151590)太平化成株式会社 (2)
【出願人】(507226019)MC山三ポリマーズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】