説明

フッ素化組成物及びそれから製造される表面処理

式(A)又は式(B)により表される少なくとも1個の第1の二価単位:


並びに、
ペンダントZ基を含む第2の二価単位、又はチオエーテル結合及び末端Z基を含む一価単位、のうち少なくとも1種を含み、各Z基が独立して−P(O)(OY)及び
−P(O)(OY)からなる群から選択される組成物。Rfは、ペルフルオロポリエーテル基である。Qは、結合、−C(O)−N(R)−、及び−C(O)−O−からなる群から選択される。R’’、R’’’、R及びRは、それぞれ独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される。Xは、アルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンからなる群から選択され、アルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンは、それぞれ所望により少なくとも1個のエーテル結合により中断される。Yは、水素、アルキル、トリアルキルシリル及び対カチオンからなる群から選択される。これらの組成物を用いる表面の処理方法及び、これらの組成物と接触する表面を有する物品が提供される。これらの組成物の製造方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フッ素性化学物質は、種々の材料(例えば、セラミックス、織物及び多孔質石基材)に対して、疎水性、疎油性、及び染み耐性のような特性を提供するために用いられている。影響を受ける具体的な特性は、例えば、フッ素性化学物質の具体的な組成及びフッ素性化学物質で処理される具体的な材料に依存する。
【0002】
従来より、広く用いられている多くのフッ素性化学物質処理は、長鎖ペルフルオロアルキル基(例えば、ペルフルオロオクチル基)を含んでいた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年、ペルフルオロオクチルフッ素化化合物の使用から離れる業界動向が存在し、これが新たな種類のフッ素化表面処理に対する要求を生じさせている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様では、本発明は、式
【0005】
【化1】

【0006】
により表される少なくとも1個の第1の二価単位;並びに、
ペンダントZ基を含む第2の二価単位;又は
チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位であって、各Z基が独立して−P(O)(OY)及び−O−P(O)(OY)からなる群から選択される一価単位、のうち少なくとも1種を含む組成物であって、
式中
各Rfが独立してペルフルオロポリエーテル基であり;
各Qが独立して、結合、
−C(O)−N(R)−、及び−C(O)−O−からなる群から選択され、
R及びRがそれぞれ独立して、水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
各Xが独立して、アルキレン、アリールアルキレン、及びアルキルアリーレンからなる群から選択され、アルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンがそれぞれ所望により少なくとも1個のエーテル結合により中断され、
各Yが独立して、水素、アルキル、トリアルキルシリル及び対カチオンからなる群から選択される、組成物を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は表面を処理する方法であって、表面を本発明による組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、表面を有する物品であって、表面の少なくとも一部が組成物と接触し、組成物が少なくとも1個の式
【0009】
【化2】

【0010】
により表される第1の二価単位;並びに、
ペンダントZ基を含む第2の二価単位、又は
チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位、のうち少なくとも1種
を含み、
各Z基が独立して
−P(O)(OY及び−O−P(O)(OY
(式中、
各Rfは独立してペルフルオロポリエーテル基であり、
各Qは独立して、結合、
−C(O)−N(R)−、及び−C(O)−O−
からなる群から選択され、
R及びRは、それぞれ独立して、水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
各Xが独立して、アルキレン、アリールアルキレン、及びアルキルアリーレンからなる群から選択され、アルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンがそれぞれ所望により少なくとも1個のエーテル結合により中断され、
各Yが独立して、水素、アルキル、対カチオン、及び表面への結合からなる群から選択される)
からなる群から選択される、物品を提供する。
【0011】
前述の態様のいくつかの実施形態では、表面は、金属、金属酸化物、セラミック(すなわち、ガラス、結晶質セラミックス、ガラスセラミックス、及びこれらの組み合わせ)、天然石又はセメント質表面(例えば、グラウト、コンクリート及び加工石)のうち少なくとも1種を含む。前述の態様のいくつかの実施形態では、表面は少なくとも1個の蛇口、蛇口ハンドル、流し、オーブンレンジ、オーブンレンジフード、調理台、床材又は壁装材上にある。
【0012】
前述の態様のいくつかの実施形態では、各第1の二価単位は、式
【0013】
【化3】

【0014】
により表され;
第2の二価単位は、
【0015】
【化4】

【0016】
からなる群から選択される式により表され;
チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位は、式
−S−W−[Z]により表され;
式中、
R’は独立して、水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
Vは所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
Wは、アルキレン、アリールアルキレン及びアリーレンからなる群から選択される二価又は三価連結基であって、アルキレンは所望により少なくとも1個のエーテル結合、エステル結合又はアミド結合により中断され、
各Z基は独立して
−P(O)(OY)及び−O−P(O)(OY)からなる群から選択され、
各Yは独立して水素、アルキル、トリアルキルシリル及び対カチオンからなる群から選択され、
mは1又は2である。
【0017】
本発明による組成物は、1個の(いくつかの実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50個又はそれ以上)の、式
【0018】
【化5】

【0019】
又は、いくつかの実施形態では式
【0020】
【化6】

【0021】
により表される二価単位を含む組成物を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、1個の(いくつかの実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50個又はそれ以上)の、ペンダントZ基を含む第2の二価単位を含む。
【0023】
別の態様では、本発明は式
【0024】
【化7】

【0025】
により表される第1の二価単位;並びに

【0026】
【化8】

【0027】
により表される第2の二価単位、及び
−S−C2t+1及び−S−C2r−Aからなる群から選択される一価単位、又は
−S−C2bOC(O)C2b−P(O)(OY及び
−S−C2b−1[OC(O)C2b−P(O)(OYからなる群から選択される式により表される一価単位、
のうち少なくとも1種
(式中、
R’、R’’及びR’’’は、それぞれ独立して水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、
Vは、所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
tは4〜22の値を有する整数であり、
rは2〜10の値を有する整数であり、
Aは、−OH、−COOY及び−SOからなる群から選択され、
各Yは独立して水素、アルキル及び対カチオンからなる群から選択され、
各bは独立して1〜5(いくつかの実施形態では、2〜3)の整数である)、を含む組成物を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は表面を有する物品であって、表面の少なくとも一部が組成物と接触し、組成物が式
【0029】
【化9】

【0030】
により表される第1の二価単位;並びに

【0031】
【化10】

【0032】
により表される第2の二価単位、及び
−S−C2t+1及び−S−C2r−Aからなる群から選択される一価単位、又は
−S−C2bOC(O)C2b−P(O)(OY及び
−S−C2b−1[OC(O)C2b−P(O)(OYからなる群から選択される式により表される一価単位、
のうち少なくとも1種
(式中、
R’、R’’及びR’’’は、それぞれ独立して水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、
Vは、所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
tは4〜22の値を有する整数であり、
rは2〜10の値を有する整数であり、
Aは、−OH、−COOY及び−SOからなる群から選択され、
各Yは独立して水素、アルキル、対カチオン及び表面への結合からなる群から選択され、
各bは独立して1〜5(いくつかの実施形態では、2〜3)の整数である)、を含む物品を提供する。
【0033】
本発明による組成物は、典型的には、種々の表面に忌避特性を付与して、これらの表面を洗浄する能力を向上させる。例えば、本発明による組成物を金属表面上に用いて、水性沈着物(例えば、鉱質沈着物)を、激しく擦ったり強力な酸性洗浄剤を用いたりする必要なく、拭き取り用品により除去できる耐久性処理を提供することができる。別の例では、本発明による組成物は、典型的には、セメント質表面(例えば、グラウト)に染み剥離特性を付与する。
【0034】
別の態様では、本発明は組成物の製造方法であって、該方法が、式
Rf−C(O)−N(R)−X−O−C(O)−C(R)=CHにより表される少なくとも1種の成分;及び

(YO)−P(O)−C(R’)=CH又は
(YO)−P(O)−O−V−O−C(O)−C(R’)=CHにより表される少なくとも1種の成分を含む成分を反応させる工程を含み、
式中、
各Rfは独立してペルフルオロポリエーテル基であり;
R、R’及びRはそれぞれ独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
各Vは所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
各Yは独立して水素、アルキル、トリアルキルシリル及び対カチオンからなる群から選択される、方法を提供する。
【0035】
本出願では:
用語「a」、「an」及び「the」は、「少なくとも1個の」と互換的に用いられる。
【0036】
特に規定しない限り、「アルキル基」及び接頭語「アルキ−」は、直鎖及び分岐鎖、並びに30個以下の炭素(いくつかの実施形態では、20、15、12、10、8、7、6又は5個以下の炭素)を有する環状基の両方を含む。環状基は、単環式又は多環式であることができ、いくつかの実施形態では、3〜10個の環炭素原子を有する。
【0037】
「アルキレン」は、上記で定義した「アルキル」基の二価形態である。
【0038】
「アリールアルキレン」は、アリール基が結合している「アルキレン」部分を指す。
【0039】
用語「アリール」は、本明細書で使用するとき、炭素環式芳香環、又は、例えば、1、2、又は3個の環を有し、所望により環内に少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、O、S、又はN)を含有する環構造を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル、並びにフリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、ピロリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル及びチアゾリルが挙げられる。
【0040】
「アリーレン」は、上記で定義した「アリール」基の二価形である。
【0041】
「アルキルアリーレン」は、アルキル基が結合している「アリーレン」部分を指す。
【0042】
特に指示しない限り、全ての数の範囲は、それらの端点を含む。
【発明を実施するための形態】
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の実施による及び/又はそれに有用な組成物は、式Iにより表される少なくとも1個の第1の二価単位を含む。
【0044】
【化11】

【0045】
Rfはペルフルオロポリエーテル基である。用語「ペルフルオロポリエーテル」は、少なくとも10個(いくつかの実施形態では、少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は更には20個)の炭素原子及び少なくとも3個(いくつかの実施形態では、少なくとも4、5、6、7、又は更には8個)のエーテル結合を有する化合物又は基を指し、ここで炭素原子上の水素原子はフッ素原子に置換されている。いくつかの実施形態では、Rfは100、110、120、130、140、150、又は更には160個以下の炭素原子及び25、30、35、40、45、50、55、又は更には60個以下のエーテル結合を有する。
【0046】
式Iにより表される組成物は、1個のペルフルオロポリエーテル基又はペルフルオロポリエーテル基の混合物を含有してよい。典型的には、組成物はペルフルオロポリエーテル基の混合物を含有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、Rfは式R−O−(R−O−)(R)−により表され、
式中、Rは1〜10個(いくつかの実施形態では、1〜6、1〜4、2〜4、又は3個)の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり;各Rは独立して1〜4個(すなわち、1、2、3、又は4個)の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;Rは1〜6個(いくつかの実施形態では、1〜4個、又は2〜4個)の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;zは2〜50(いくつかの実施形態では、2〜25、2〜20、3〜20、3〜15、5〜15、6〜10、又は6〜8)の整数である。
【0048】
代表的なR基としては、CF−、CFCF−、CFCFCF−、CFCF(CF)−、CFCF(CF)CF−、CFCFCFCF−、CFCFCF(CF)−、CFCFCF(CF)CF−、及びCFCF(CF)CFCF−が挙げられる。いくつかの実施形態では、Rは、CFCFCF−である。代表的なR基としては、−CF−、−CF(CF)−、−CFCF−、−CF(CF)CF−、−CFCFCF−、−CF(CF)CFCF−、−CFCFCFCF−、及び−CFC(CF−が挙げられる。代表的なR基としては、−CF−、−CF(CF)−、−CFCF−、−CFCFCF−、及びCF(CF)CF−が挙げられる。いくつかの実施形態では、Rは−CF(CF)−である。
【0049】
いくつかの実施形態では、(R−O−)は、−[CFO][CFCFO]−、−[CFO][CF(CF)CFO]−、−[CFO][CFCFCFO]−、−[CFCFO][CFO]−、−[CFCFO][CF(CF)CFO]−、−[CFCFO][CFCFCFO]−、−[CFCFCFO][CFCF(CF)O]−、及び[CFCFCFO][CF(CF)CFO]−により表され、式中i+jは少なくとも3(いくつかの実施形態では、少なくとも4、5、又は6)の整数である。
【0050】
いくつかの実施形態では、Rfは、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、CO(CFCFCFO)CFCF−、及びCFO(CO)CF−からなる群から選択され、式中nは3〜50(いくつかの実施形態では、3〜25、3〜15、3〜10、4〜10、又は更には4〜7)の範囲の平均値を有する。これらのいくつかの実施形態では、RfはCO(CF(CF)CFO)CF(CF)−であり、式中nは4〜7の範囲の平均値を有する。いくつかの実施形態では、Rfは、CFO(CFO)(CO)CF−及びF(CF−O−(CO)(CF−からなる群から選択され、式中x、y及びzはそれぞれ独立して3〜50(いくつかの実施形態では、3〜25、3〜15、3〜10、又は更には4〜10)の範囲の平均値を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、Rfは少なくとも500(いくつかの実施形態では、少なくとも750、又は更には1000)グラム/モルの数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、Rfは6000(いくつかの実施形態では、5000、又は更には4000)グラム/モル以下の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、Rfは750グラム/モル〜5000グラム/モルの範囲の数平均分子量を有する。
【0052】
式Iの二価単位では、Qは結合、
−C(O)−N(R)−、及び−C(O)−O−からなる群から選択され、式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル又はsec−ブチル)である。いくつかの実施形態では、Qは−C(O)−N(R)−である。いくつかの実施形態では、Rは水素、又はメチルである。いくつかの実施形態では、Rは水素である。本明細書に開示する組成物の実施形態では、Qは−C(O)−N(R)−であり、この組成物は、Qが−C(O)−Oである実施形態より加水分解的に安定であることができる。
【0053】
Rは、水素、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はsec−ブチル)である。いくつかの実施形態では、Rは水素又はメチルである。
【0054】
Xはアルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンからなる群から選択され、アルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンはそれぞれ所望により少なくとも1個のエーテル結合で中断される。いくつかの実施形態では、Xはアルキレンである。いくつかの実施形態では、Xはエチレンである。いくつかの実施形態では、Xはメチレンである。
【0055】
本発明による組成物では、1個を超える式Iの第1の二価単位が存在するとき、各Rf、Q、R、R及びX基は独立して選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、式Iの第1の二価単位は式
【0057】
【化12】

【0058】
により表され、
式中、Rf、R、R及びXは上記定義の通りである。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、ペンダントZ基を含む第2の二価単位を含み、式中Zは−P(O)(OY)及び−O−P(O)(OY)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Zは、−P(O)(OY)であり、いくつかの実施形態では、Zは−O−P(O)(OY)である。各Yは独立して水素、アルキル、トリアルキルシリル及び対カチオンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、各Yは水素であり、Z基はホスホン酸基又はリン酸基である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のYはアルキルであり、Z基はリン酸エステル又はホスホン酸エステルである。いくつかの実施形態において、Yは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のYは対カチオンであり、Z基はリン酸塩又はホスホン酸塩である。代表的な対カチオンとしては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム及びリチウム)、アンモニウム、アルキルアンモニウム(例えば、テトラアルキルアンモニウム)、及び正電荷を持つ窒素原子を有する5〜7員複素環基(例えば、ピロリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、イソオキサゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、イソチアゾリウムイオン、オキサジアゾリウムイオン、オキサトリアゾリウムイオン、ジオキサゾリウムイオン、オキサチアゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピペラジニウムイオン、トリアジニウムイオン、オキサジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、オキサチアジニウムイオン、オキサジアジニウムイオン、及びモルホリニウムイオン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のYはトリアルキルシリル(いくつかの実施形態では、トリメチルシリル)である。他の代表的なトリアルキルシリル基としては、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル及びジ−t−ブチルジメチルシリルが挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の実施に有用な組成物は、ペンダントZ基を含む第2の二価単位を含み、式中Zは、−P(O)(OY及び−O−P(O)(OYからなる群から選択される。各Yは独立して、水素、アルキル、対カチオン又は表面への結合からなる群から選択される。各Yは独立してアルキル、対カチオン又は表面への結合からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、Yは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態では、Yは水素である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のYは対カチオンであり、対カチオンはYについて上記で定義したような任意の定義を有してよい。いくつかの実施形態では、Yは表面への結合(例えば、共有結合、水素結合又はイオン結合)である。
【0061】
いくつかの実施形態では、第2の二価単位は式
【0062】
【化13】

【0063】
により表され、
式中R’は水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、各Y又はYは独立して上記の通り定義される。これらの実施形態のいくつかでは、Yは水素であり、R’は水素である。
【0064】
いくつかの実施形態では、第2の二価単位は、式
【0065】
【化14】

【0066】
により表され、
式中、Zは−P(O)(OY)又は−O−P(O)(OY)(いくつかの実施形態では、−O−P(O)(OY))であり、Zは、−P(O)(OY又は−O−P(O)(OY(いくつかの実施形態では、−O−P(O)(OY)であり、式中各Y又はYは独立して上記の通り定義される。Vは所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンである。いくつかの実施形態では、Vは2〜4個(いくつかの実施形態では2個)の炭素原子を有するアルキレンである。R’は水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル又はsec−ブチル)からなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかでは、R’は水素及びメチルからなる群から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の実施による及び/又はそれに有用な組成物は、チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z又はZ基を含む一価単位を含み、ここでZは−P(O)(OY)及び−O−P(O)(OY)からなる群から選択され、Zは−P(O)(OY又は−O−P(O)(OYからなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかでは、チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位は、式−S−W−[Z]により表される。いくつかの実施形態では、チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位は、式−S−W−[Zにより表される。Wは、アルキレン、アリールアルキレン及びアリーレンからなる群から選択される二価又は三価連結基であって、アルキレンは所望により少なくとも1個のエーテル結合、エステル結合又はアミド結合により中断され、mは1又は2である。いくつかの実施形態では、Wは少なくとも1個のエステル結合により中断されているアルキレン(例えば、直鎖又は分岐鎖アルキレン)である。チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位が存在するいくつかの実施形態では、典型的には、これらの一価単位の1個のみが組成物中に存在する。
【0068】
いくつかの実施形態では、チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位は、
−S−C2bOC(O)C2b−P(O)(OY)、及び
−S−C2b−1[OC(O)C2b−P(O)(OY)からなる群から選択される式により表され、
式中各bは独立して1〜5(いくつかの実施形態では2〜3)の整数である。いくつかの実施形態では、一価単位は、−S−C2bOC(O)C2b−P(O)(OY)であり、式中各bは独立して2又は3である。いくつかの実施形態では、一価単位は、−S−C2b−1[OC(O)C2b−P(O)(OY)であり、式中各bは独立して2又は3である。
【0069】
本発明による組成物は、いくつかの実施形態では、ペンダントZ基を含む第2の二価単位と、末端Z基を含む一価単位との両方を有してよく、及び/又は2つの異なる第2の二価単位を有してもよい。これらの実施形態では、各Z、Y、V及びR’は独立して選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式
【0071】
【化15】

【0072】
により表される少なくとも1個の二価単位を含み、
式中、各Rは、独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル又はsec−ブチル)からなる群から選択され、各Rは独立して1〜30個(いくつかの実施形態では、1〜25個、1〜20個、1〜10個、4〜25個、8〜25個、又は更には12〜25個)の炭素原子を有するアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは水素及びメチルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rはヘキサデシル及びオクタデシルからなる群から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式
【0074】
【化16】

【0075】
により表される少なくとも1個の二価単位を更に含む。
【0076】
各Rfは独立して3〜12個(すなわち、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個)の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態では、各Rfは独立して、3〜6個を有するペルフルオロアルキル基(例えば、ペルフルオロ−n−ヘキシル、ペルフルオロ−n−ペンチル、ペルフルオロイソペンチル、ペルフルオロ−n−ブチル、ペルフルオロイソブチル、ペルフルオロ−sec−ブチル、ペルフルオロ−tert−ブチル、ペルフルオロ−n−プロピル又はペルフルオロイソプロピル)である。いくつかの実施形態では、Rfはペルフルオロブチル(例えば、ペルフルオロ−n−ブチル)である。いくつかの実施形態では、Rfはペルフルオロプロピル(例えば、ペルフルオロ−n−プロピル)である。用語「ペルフルオロアルキル基」は、全てのC−H結合が、C−F結合によって置換されているアルキル基に加えて、2個の炭素原子ごとに、水素又は塩素のいずれか一方の1個以下の原子が存在しているという条件で、フッ素原子の代わりに、水素原子又は塩素原子が存在している基を含む。ペルフルオロアルキル基のいくつかの実施形態では、少なくとも1個の水素又は塩素が存在するとき、ペルフルオロアルキル基は少なくとも1個のペルフルオロメチル基を含む。
【0077】
及びRはそれぞれ独立して水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル又はsec−ブチル)である。いくつかの実施形態では、Rはメチル及びエチルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは水素及びメチルからなる群から選択される。
【0078】
各pは独立して2〜11の値を有する整数である(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11)。
【0079】
各qは独立して1〜4の値を有する整数である(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式Iにより表される二価単位及び式IIIaにより表される二価単位を含む。
【0081】
【化17】

【0082】
式Iにより表される二価単位の、式IIIaにより表される二価単位に対する比は、99:1〜1:99(いくつかの実施形態では、95:5〜5:95、90:10〜10:90、85:15〜15:85、80:20〜20:80、75:25〜25:75、又は90:10〜50:50)の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式IIIaにより表される二価単位を含み、式Iにより表される二価単位を含まない。いくつかの実施形態では、式IIIaにより表される二価単位は、式
【0083】
【化18】

【0084】
により表される。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明の実施による及び/又はそれに有用な組成物は、式
【0086】
【化19】

【0087】
により表される二価単位を含む。
【0088】
R’’及びR’’’はそれぞれ独立して水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。いくつかの実施形態では、各R’’は独立して水素又はメチルである。いくつかの実施形態では、R’’’は、メチル又はエチルである。いくつかの実施形態では、組成物は式
【0089】
【化20】

【0090】
により表される第2の二価単位、並びに
−S−C2t+1及び−S−C2r−Aからなる群から選択される一価単位を含む。いくつかの実施形態では、Vは所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンである。いくつかの実施形態では、Vは2〜4個(いくつかの実施形態では2個)の炭素原子を有するアルキレンである。R’は、水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル又はsec−ブチル)からなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかでは、R’は水素及びメチルからなる群から選択される。tは4〜22(いくつかの実施形態では8〜22、又は更には12〜22)の値を有する整数である。rは2〜10(いくつかの実施形態では、2〜6、又は更には2〜4)の値を有する整数である。いくつかの実施形態では、Aは−OH、−COOY及び−SOからなる群から選択され、式中、各Yは独立して水素、アルキル及び対カチオン(例えば、Yの定義について上部に記載したような対カチオン)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Yは1〜4、4〜22、8〜22、又は12〜22個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態では、Yは水素である。いくつかの実施形態では、Aは−OH、−COOY及び−SOからなる群から選択され、式中、各Yは独立して水素、アルキル、対カチオン(例えば、Yの定義について上部に記載したような対カチオン)及び表面への結合からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Yは1〜4、4〜22、8〜22、又は12〜22個の炭素原子を有するアルキルである。いくつかの実施形態では、Yは水素である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のYは対カチオンであり、式中対カチオンはYについて上記で定義したような任意の定義を有してよい。いくつかの実施形態では、Yは表面への結合(例えば、共有結合、水素結合又はイオン結合)である。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式−[CH−C(Cl)]−又は−[CH−CHCl]−により表される少なくとも1個の二価単位を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物(例えば、式Iにより表される二価単位を含むもの)は、−S−C2t+1及び−S−C2r−(s−1)−(A)からなる群から選択される一価単位を含み、式中、tは4〜22の値を有する整数であり;rは2〜10(いくつかの実施形態では2〜6、又は更には2〜4)の値を有する整数であり;sは1〜4の値を有する整数であり;並びにAは−OH、−COOY及び−SOからなる群から選択される(式中、Yは水素、アルキル、及び対カチオン(例えば、Yの定義について上部で記載した対カチオン)からなる群から選択される)。いくつかの実施形態では、Yは4〜22、8〜22、又は12〜22個の炭素原子を有するアルキルである。いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、−S−C2t+1及び−S−C2r−Aからなる群から選択される一価単位を含み、式中、t、r及びAは上記定義の通りである。いくつかの実施形態では、鎖末端基は、−S−C2t+1であり、式中、tは4〜22(いくつかの実施形態では8〜22、又は更には12〜22)の値を有する。
【0093】
いくつかの実施形態では、独立して式Iにより表される第1の二価単位は、組成物の総重量を基準として、25〜99(いくつかの実施形態では、35〜99、50〜99、60〜98、75〜97、又は更には85〜97)重量パーセントの範囲で存在する。
【0094】
いくつかの実施形態では、第2の二価単位は、組成物の総重量を基準として、1〜30(いくつかの実施形態では、2〜30、3〜25、又は更には3〜15)重量パーセントの範囲で存在する。
【0095】
本発明による組成物のいくつかの実施形態では、第1及び第2の二価単位並びに任意の他の二価単位は、ランダムに結合する。
【0096】
本発明による組成物は、例えば、典型的には連鎖移動剤及び反応開始剤の存在下で少なくとも第1及び第2成分を含有する混合物を反応させることにより、調製してよい。用語「反応させる」とは、第1及び第2成分のそれぞれに由来する、少なくとも1個の識別可能な構造要素を含む組成物を形成することを意味する。反応の化学量論に依存して、オリゴマー又はポリマーを形成してよい。典型的には、ポリマー又はオリゴマーは、分子量分布及び組成を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、第1成分は式IIにより表され、
Rf−Q−X−O−C(O)−C(R)=CH II、
式中、Rf、Q、R及びXは、式Iの二価単位について上記で定義した通りである。いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、Rf−C(O)−N(R)−X−O−C(O)−C(R)=CHであり、式中、Rは式Iの化合物について上記で定義した通りである。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2成分は、少なくとも1個の重合可能な二重結合及び少なくとも1個の−P(O)(OY)又は−O−P(O)(OY)基を含み、式中、各Yは独立して水素、アルキル、トリアルキルシリル、及び対カチオンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2成分は、少なくとも1個の
(YO)−P(O)−C(R’)=CH又は
(YO)−P(O)−O−V−O−C(O)−C(R’)=CHであり、
式中、各R’は独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、各Vは独立して、所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンである。いくつかの実施形態では、Vは2〜4個(いくつかの実施形態では2個)の炭素原子を有するアルキレンである。いくつかの実施形態では、R’は水素及びメチルからなる群から選択される。これらの式のいくつかの第2成分は、例えば、市販品(例えば、ビニルホスホン酸及びエチレングリコールメタクリレートホスフェート)から入手することが可能であり又は既知の合成法を用いて調製することもできる。いくつかの実施形態では、第2成分は、ユニケマ(Uniqema)(ニューカッスル(New Castle)、デラウェア州)から、商品名「マキセマル(MAXEMUL)6106」及び「マキセマル6112」として入手可能な二重結合含有ホスフェートである。
【0099】
いくつかの実施形態では、1個を超える式IIの第1成分及び/又は1個を超える式(YO)−P(O)−C(R’)=CH若しくは(YO)−P(O)−O−V−O−C(O)−C(R’)=CHの第2成分の混合物を用いることができる。いくつかの実施形態では、1個の式IIの第1成分及び1個の式(YO)−P(O)−C(R’)=CH又は(YO)−P(O)−O−V−O−C(O)−C(R’)=CHの第2成分を用いることができる。
【0100】
式IIにより表される成分は、例えば既知の方法を用いて調製できる。例えば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを既知の方法を用いて重合させて、フルオロカルボニル基(すなわち、−C(O)F)で、ペルフルオロポリエーテル末端を形成することができる。この物質を真空蒸留して、500(いくつかの実施形態では、600、700、750、800、900、又は更には1000)グラム/モル未満の分子量を有する成分を取り除くことができる。フルオロカルボニル基は、所望により、従来の方法により、カルボキシ又はアルコキシカルボニル基に変換することができる。典型的には、アルコキシカルボニル末端化ペルフルオロポリエーテルへの変換(例えば、式Rf−C(O)−OCHのメチルエステルへの変換)が行われる。
【0101】
式Rf−C(O)−OCHのメチルエステル、式Rf−C(O)−Fの酸フッ化物又は式Rf−C(O)−OHのカルボン酸は、次いで、多数の従来の方法を用いて式IIの化合物に変換することができる。例えば、式Rf−(CO)NHCHCHO(CO)C(R)=CHのペルフルオロポリエーテルモノマーは、まずRf−C(O)−OCHを、例えば、エタノールアミンと反応させて、アルコール末端化Rf−(CO)NHCHCHOHを調製することにより調製でき、これは次いでメタクリル酸、メタクリル酸無水物、アクリル酸又は塩化アクリロイルと反応させて、式IIの化合物(式中、Rはそれぞれメチル又は水素である)を調製することができる。他のアミノアルコール(例えば、式NRHXOHのアミノアルコール)をこの反応順序で用いて、式IIの化合物(式中、Qは−C(O)−N(R)−であり、R及びXは上記定義の通りである)を提供することができる。更なる例では、式Rf−C(O)−OCHのエステル又は式Rf−C(O)−OHのカルボン酸を、従来の方法(例えば、水素化物、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、還元)を用いて、式Rf−CHOHのアルコールに還元することができる。式Rf−CHOHのアルコールを、次いで、塩化メタクリロイルと反応させて、例えば、式Rf−CHO(CO)C(R)=CHのペルフルオロポリエーテルモノマーを提供することができる。好適な反応及び試薬の例は、更に、例えば、欧州特許公開第870 778(A1)号(1998年10月14日公開)及び米国特許第3,553,179号(バートレット(Bartlett)ら)に開示されており、これらの式IIの化合物を調製するための試薬及び反応条件に関する開示は、参考として本明細書に組み込まれる。
【0102】
少なくとも1個の第1成分及び少なくとも1個の第2成分の反応は、典型的には、添加されるフリーラジカル反応開始剤の存在下で行われる。当該技術分野において広く知られかつ使用されているもののようなフリーラジカル反応開始剤を使用して、構成成分の重合を開始させてよい。代表的なフリーラジカル反応開始剤は、米国特許第6,995,222号(バッカニン(Buckanin)ら)に開示されており、この開示は参考として本明細書に組み込まれる。
【0103】
いくつかの実施形態では、式IIの成分と少なくとも1個の式(YO)−P(O)−C(R’)=CH又は(YO)−P(O)−O−V−O−C(O)−C(R’)=CHの成分との反応は、溶媒中で行ってよい。かかる成分は、任意の好適な濃度(例えば、反応混合物の総重量を基準として、約5重量%〜約80重量%)にて、反応媒質中に存在してよい。好適な溶媒の具体例としては、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、グリム、ジグリム及びジイソプロピルエーテル)、エステル(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(例えば、エタノール及びイソプロピルアルコール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン)、ハロゲン化溶媒(例えば、メチルクロロホルム、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、トリクロロエチレン、トリフルオロトルエン、及び例えば3M社(セントポール(St. Paul)、ミネソタ州)から、商品名「HFE−7100」及び「HFE−7200」として入手可能なハイドロフルオロエーテル)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0104】
重合は、有機フリーラジカル反応を実施するのに好適な任意の温度で行うことができる。特定の用途のための温度及び溶媒は、試薬の溶解度、特定の反応開始剤の使用に必要な温度、及び所望の分子量のような考慮すべき事項に基づいて、当業者が選択することができる。全ての反応開始剤及び全ての溶媒に好適な特定の温度を列挙することは現実的ではないが、一般に、好適な温度は、約30℃〜約200℃(いくつかの実施形態では、約40℃〜約100℃、又は更には約50℃〜約80℃)の範囲である。
【0105】
フリーラジカル重合は、連鎖移動剤の存在下で行ってよい。本発明による組成物の調製で用いてよい典型的な連鎖移動剤としては、ヒドロキシル置換メルカプタン(例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、及び3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(すなわちチオグリセロール);アミノ置換メルカプタン(例えば、2−メルカプトエチレンアミン);二官能性メルカプタン(例えば、ジ(2−メルカプトエチル)スルフィド);及び脂肪族メルカプタン(例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン及びオクタデシルメルカプタン)が挙げられる。連鎖移動剤は、典型的には、本発明による組成物中の一価単位になる。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤は脂肪族メルカプタンであり、一価単位は式−S−C2t+1により表され、式中、tは4〜22(いくつかの実施形態では、8〜22、又は更には12〜22)の整数である。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤は、ヒドロキシル置換メルカプタンであり、一価単位は式−S−W−[OH]により表され、式中、W及びmは上記定義の通りである。一価単位が−S−W−[OH]であるとき、それを従来の方法を用いて式−S−W−[Z]の一価単位に変換してよい。例えば、−S−W−[OH]中の少なくとも1個のヒドロキシル基を、高温で2−ホスホノ酢酸又は3−ホスホノプロピオン酸と反応させることができる。反応は、例えば、触媒(例えば、メタンスルホン酸)の存在下で、好適な溶媒(例えば、ケトン又はエーテル)中で行うことができる。開始組成物及び反応化学量論(stoichometry)に依存して、得られる一価単位は少なくとも1個の
−S−C2bOC(O)C2b−P(O)(OY)、−S−C2b−1[OC(O)C2b−P(O)(OY)、又は
−S−C2b−1(OH)[OC(O)C2b−P(O)(OY)]により表してよく、式中、bは上記定義の通りである。
【0106】
例えば、当該技術分野において既知である技術を用いて、反応開始剤の濃度及び活性、式IIの各第1成分の濃度、第2成分(いくつかの実施形態では)、温度、連鎖移動剤の濃度、並びに溶媒の調節により、ポリアクリレートコポリマーの分子量を制御することができる。
【0107】
式IIの第1成分と、式(YO)−P(O)−C(R’)=CH又は
(YO)−P(O)−O−V−O−C(O)−C(R’)=CHの少なくとも1個の第2成分との反応のいくつかの実施形態では、Yはトリアルキルシリルである。これらの実施形態では、塩化トリアルキルシリル(例えば、塩化トリメチルシリル、塩化トリエチルシリル、塩化t−ブチルジメチルシリル及び塩化イソプロピルジメチルシリル)を第1及び第2成分、溶媒、反応開始剤並びに連鎖移動剤と組み合わせることができる。反応の終わりに、反応混合物を水と組み合わせて、Yが水素であるZ基を有する本発明による組成物を提供することができる。あるいは、反応混合物を、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含有する水と組み合わせて、Yが対カチオン(例えば、アンモニウム、ナトリウム又はカリウム)であるZ基を有する組成物を提供することができる。所望により、反応溶媒を、従来の技術を用いて減圧下で取り除くことができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物の製造方法は、水を含む媒質中で行われる。これらの実施形態では、典型的には、共溶媒が用いられる。好適な共溶媒としては、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル)、アルコール(例えば、エタノール及びイソプロパノール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、反応は、乳化剤としてのアニオン性界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、及び例えば、ユニケマ(Uniqema)から商品名「マキセマル(MAXEMUL)6106」及び「マキセマル6112」として入手可能な反応性乳化剤)の存在下で行われる。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式IIの第1成分と、Z基に変換できる官能基を含む少なくとも1個の第2成分(すなわち、−P(O)(OY)又は−O−P(O)(OY)(式中、Yは上記定義の通りである))とを反応させることにより製造できる。例えば、第2成分は、式HO−V−O−C(O)−C(R’)=CHにより表してよく、式中、R’及びVは上記定義の通りである。式IIの第1成分と、第2成分HO−V−O−C(O)−C(R’)=CHとの反応生成物は、式
【0110】
【化21】

【0111】
の二価単位を含み、これは例えば、従来の方法(例えば、高温におけるピロリン酸又はPOClとの反応)を用いて−O−P(O)(OY)に変換できるヒドロキシル基を有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物の製造方法は、他の成分(例えば、モノマー)の組み込みを含む。いくつかの実施形態では、式IIIにより表されるアクリレート又はメタクリレートモノマー
【0113】
【化22】

【0114】
が添加され、式中、Rf、R、R及びpは上記定義の通りである。いくつかの実施形態では、式IVにより表されるアクリレート又はメタクリレート
【0115】
【化23】

【0116】
が添加され、式中、R及びRは上記定義の通りである。いくつかの実施形態では、塩化ビニリデン又は塩化ビニルが添加される。いくつかの実施形態では、式
Rf−(CH−OC(O)−C(R)=CH
のアクリレート又はメタクリレートが添加され、式中、Rf、q及びRは上記定義の通りである。
【0117】
式IIIのフッ素化フリーラジカル重合性アクリレートモノマー、及びそれらの調製方法は、当該技術分野において既知である(例えば、これらそのフリーラジカル重合性モノマー及びそれらの調製方法に関する開示が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許第2,803,615号(アルブレヒト(Albrecht)ら)及び米国特許第6,664,354号(サヴュー(Savu)ら)を参照のこと。)ノナフルオロブタンスルホンアミド基含有構造体の製造方法を用いて、例えば、その開示が、参考として本明細書に組み込まれる、米国特許第2,732,398号(ブライス(Brice)ら)の実施例2及び3に記載されている方法によって製造することができる、ヘプタフルオロプロパンスルホニルフルオライドを出発物質として、ヘプタフルオロプロパンスルホンアミド基を製造することができる。式Vの化合物の製造方法は既知である(例えば、欧州特許第1311637(B1)号(2006年4月5日公開)を参照し、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル2−メチルアクリレートの調製についての開示を本明細書に参考として組み込む)。式Vの他の化合物は、例えば、市販品(例えば、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルアクリレート(ダイキン化成品販売(Daikin Chemical Sales)(大阪、日本))及び3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル2−メチルアクリレート(インドファイン・ケミカル社(Indofine Chemical Co.)(ヒルズバラ(Hillsborough)、ニュージャージー州))から入手可能である。
【0118】
式IVの化合物(例えば、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルメタクリレート)は、例えば、いくつかの化学製品供給業者(例えば、シグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Company)(セントルイス(St. Louis)、ミズーリ州);VWRインターナショナル(VWR International)(ウエストチェスター(West Chester)、ペンシルバニア州);モノマー−ポリマー&ダジャック・ラボズ(Monomer-Polymer & Dajac Labs)(フェスタービル(Festerville)、ペンシルバニア州);アボカド・オーガニクス(Avocado Organics)(ワードヒル(Ward Hill)、マサチューセッツ州);及びチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(バーゼル、スイス))から入手可能であり又は従来の方法により合成してもよい。いくつかの式IVの化合物は、単一化合物の単一異性体(例えば、直鎖異性体)として入手可能である。他の式IVの化合物は、例えば、異性体の混合物(例えば、直鎖及び分岐鎖異性体)、化合物の混合物(例えば、ヘキサデシルアクリレート及びオクタデシルアクリレート)、及びこれらの組み合わせとして入手可能である。
【0119】
他のアクリレート、例えば、シリコーンアクリレート(例えば、信越シリコーンアメリカ社(Shin-Etsu Silicones of America, Inc.)(アルコン(Akron)、オハイオ州)製の商品名「X22−2426」)及びウレタンアクリレート(例えば、サートマー社(Sartomer Company)(エクストン(Exton)、ペンシルバニア州)製の商品名「CN966J75」)を添加してもよい。
【0120】
本発明の方法及び/又は物品のいくつかの実施形態では、本発明による組成物は、表面に適用される、及び/又は、表面に接触する。いくつかの実施形態では、表面は金属(金属及び金属合金を含む)である。金属は、典型的には、室温で固体である。いくつかの実施形態で、金属及び/又は金属合金は、クロム、クロム合金、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、スズ、ステンレス鋼、及び黄銅からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、金属及び/又は金属合金は、金、白金、クロム、アルミニウム、銅、銀、チタン、インジウム、ゲルマニウム、スズ、ニッケル、インジウムスズのうち少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態では、表面はステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、表面はクロム又は酸化クロムのうち少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態では、表面は、金属又は金属酸化物のうち少なくとも1種を含み、化合物は表面上に少なくとも部分的な単層を形成する。いくつかの実施形態では、金属基材の主表面はクロムを含む。金属表面を有する物品は、熱硬化性及び熱可塑性ポリマー、セラミック、磁器、並びに金属化表面を有することができる他の材料が挙げられる、他の材料を含んでよい(例えば、金属表面下に)。金属表面を有する物品の例としては、台所及び浴室の蛇口、タップ、ハンドル、吐水口、流し、排水管、手すり、タオルかけ、カーテン棒、皿洗い機のパネル、冷蔵庫のパネル、料理用レンジ上部、料理用レンジ、オーブン、及び電子レンジのパネル、排気フード、グリル、並びに金属の車輪又は縁が挙げられる。金属表面の処理方法及び/又は本発明の金属表面を含む物品のいくつかの実施形態では、本発明による組成物中のZ基(又はZ基)−は、P(O)(OY)(又は−P(O)(OY)である。
【0121】
金属基材及び金属化された基材は、台所及び浴室、並びに屋外領域を包含する種々の環境で見られ、そこでかかる基材は食品、石鹸、及び鉱物(例えば石灰)のような水性残留物と接触しうる。このような沈着物を、例えば、蛇口、シャワーヘッド、及び手すりから除去することは、しばしば酸性洗浄剤又は洗剤を用いて、激しく擦る必要があることが多く、またこれらの基材の表面の審美的外観及び耐久性に問題が生じることが多い。本発明による組成物、方法及び物品は、典型的には、容易に洗浄できる金属表面を提供し、これにより激しく擦る必要なく、拭き取り用品で水性沈着物(例えば、鉱質沈着物)を除去することができ、この特性は繰り返し拭いても保たれる。本発明による組成物は、金属表面を汚れ耐性にすることができるため、装飾用の金属ストリップ上及び鏡上のような金属表面の光学特性を長く保つことができる。
【0122】
本発明の組成物は、広範な基材に適用することができ、これにより耐久性染み剥離特性を示す物品を得ることができる。これらの基材としては、硬質基材及び繊維質基材が挙げられる。硬質基材としては、剛性及び非剛性基材が挙げられ、セラミック(ガラスを含む)、石工、コンクリート、天然石、人工石、金属、木材、プラスチック及び塗装された表面が挙げられる。繊維基材としては、織布、ニット、及び不織布、テキスタイル、カーペット、革及び紙が挙げられる。基材は平面又は曲面を有することができ、同様に当然粒子状及び繊維質であってもよい。いくつかの実施形態では、基材(硬質基材を含む)は、液体を吸収することができ、したがって多孔質である。このような基材は特に染み及び汚れにさらされるが、かかるコーティング組成物がその多孔質基材表面に浸透することができるので、本発明の化学組成物の利益を享受できる。理論に縛られるものではないが、−OH及び−NHR(式中、RはH又は本発明の化学組成物のZ基に結合できる低級アルキルである)からなる群から選択される求核基を含む基材は、典型的には耐久性を高めると考えられる。この種の基材としては、シリカ質及び金属表面を有するものが挙げられる。
【0123】
本発明による組成物でコーティングすることができる物品の代表的な例としては、眼科メガネで用いられるレンズ、サングラス、光学機器、照明器、時計のガラス;ガラスパネル(例えば、自動車のガラス);プラスチックの窓ガラス;標識;壁紙及びビニル床材のような装飾用表面;複合材又は積層基材(例えば、ホルミカ社(Formica Corporation)(シンシナティ(Cincinnati)、オハイオ州)から商品名「ホルミカ(FORMICA)」として入手可能なシート及び、例えば、パーゴ(Pergo)(ローリー(Raleigh)、ノースカロライナ州)から商品名「パーゴ(PERGO)」として入手可能な床材);セラミックタイル及び備品(流し、シャワー及び便器);天然及び人工石;装飾用及び舗装用石(例えば、大理石、花崗岩、石灰岩及び粘板岩);セメント及び石の歩道及び車道;グラウトを含む粒子又は適用されたグラウトの仕上げ面;木製家具表面(例えば、机の作業面及びテーブルの天板);収納棚の表面;木製の床材、敷板、及び外柵;革;紙;繊維ガラスの織物及び他の繊維含有織物;テキスタイル;及びカーペットが挙げられる。
【0124】
本発明による組成物は、木材表面の光沢のある外観を維持しながら、食品及び飲料の染みに対する耐性を高めることができる。更に、組成物は、飛行機の翼、艇体、釣り糸、医療用表面及び羽目板上に保護コーティングとして適用することができ、食品剥離、離型、接着剤剥離用途で用いることができる。
【0125】
セメント質表面(例えば、グラウト、加工石、石及びコンクリート)の処理方法及び/又は本発明のセメント質表面を含む物品のいくつかの実施形態では、本発明による組成物中のZ基(又はZ’基)は−O−P(O)(OY)(又は−O−P(O)(OY)である。
【0126】
本発明による方法では、表面は、本発明の組成物に接触する。いくつかの実施形態では、組成物は、溶媒又は水のうち少なくとも1種を含む製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、溶媒は、ハイドロフルオロエーテル又は低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ブタノール、sec−ブタノール)のうち少なくとも1種を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、溶媒はハイドロフルオロエーテルである。好適なハイドロフルオロエーテルは、以下の一般式により表すことができ、
【0128】
【化24】

【0129】
式中、aは1〜3の整数であり、Rは、直鎖、分岐鎖、環状又はこれらの組み合わせであり、所望により少なくとも1個のエーテル結合(すなわち、−O−)により中断される、一価、二価又は三価のペルフルオロアルキルであり;Rは、直鎖、分岐鎖、環状又はこれらの組み合わせであり、所望により少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、N、O又はS)を含有するアルキル基である。例えば、ハイドロフルオロエーテルは、メチルペルフルオロブチルエーテル又はエチルペルフルオロブチルエーテルであることができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、製剤は水を含む。これらの実施形態では、製剤はまた溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、製剤が水を含む場合、それは非イオン性又はアニオン性界面活性剤のうち少なくとも1種を更に含む。好適な界面活性剤としては、その界面活性剤に関する記載が、参考として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,995,222号(バッカニン(Buckanin)ら)に記載されているものが挙げられる。
【0131】
典型的には、本発明による製剤は、製剤の全重量を基準にして、少なくとも0.01重量%、0.015重量%、0.02重量%、0.025重量%、0.03重量%、0.035重量%、0.04重量%、0.045重量%、0.05重量%、0.055重量%、0.06重量%、0.065重量%、0.07重量%、0.075重量%、0.08重量%、0.085重量%、0.09重量%、0.095重量%、0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、3重量%、4重量%、又は5重量%、最大で5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、又は10重量%以下の、本発明による少なくとも1種の組成物を含む。例えば、製剤中の組成物の量は、組成物の総重量を基準として、0.01〜10;0.1〜10、0.1〜5、1〜10又は更には1〜5重量%の範囲であってよい。水を含む製剤のいくつかの実施形態では、本発明による組成物は、製剤の総重量を基準として、0.1〜5%、1.5〜5%、2%〜5%、又は0.5〜3%存在する。より少量及び多量の組成物を用いてもよく、いくつかの製剤及び用途によっては、より少量及び多量の組成物が望ましい場合がある。
【0132】
本発明による表面の処理方法のいくつかの実施形態では、組成物は約1〜24時間(いくつかの実施形態では、4〜24時間又は更には8〜24時間)乾燥される。いくつかの実施形態では、乾燥は周囲温度(例えば、15〜35℃)で行われる。いくつかの実施形態では、組成物は高温(例えば、50〜150℃又は更には50℃〜100℃)で乾燥される。理論に縛られるものではないが、乾燥時間中及びその後長期間にわたって、本発明による組成物は、基材と及び/又は化学組成物の分子間で化学結合を形成することができる。
【0133】
本発明による方法では、本発明による組成物の、表面への適用方法のいずれを用いてもよい。有用な適用方法の例としては、噴霧(例えば、噴霧瓶で)、パディング、浸し塗り(すなわち、基材を製剤中に浸漬する)、スピンコーティング、フローコーティング、真空コーティング、塗装及び拭き取り(例えば、スポンジ又は布で)が挙げられる。適切な大きさの平坦基材を処理するとき、ナイフコーティング又はバーコーティングを用いて、基材上の均一なコーティングを確実にすることもできる。
【0134】
コーティング組成物は、任意の望ましい厚さで基材に適用することができる。20(いくつかの実施形態では、30、40又は50)ナノメートルから、5(いくつかの実施形態では、4、3、2又は1)マイクロメートル以下のコーティングは、優れた低表面エネルギー、染み耐性、及び/又は染み剥離性を付与することができる。より厚いコーティング(例えば、1〜5マイクロメートルの範囲)は、比較的高濃度の本発明の化学組成物を含有するコーティング組成物の、単一のより厚い層を基材に適用することにより、得ることができる。より厚いコーティングはまた、比較低濃度の本発明の化学組成物を含有するコーティング組成物の連続層を基材に適用することにより、得ることもできる。後者は、基材にコーティング組成物の層を適用し、次いで連続層の適用前に乾燥させることにより、行うことができる。コーティングの連続層を、次いで、乾燥した層に適用することができる。この手順は、所望のコーティング厚さが得られるまで繰り返すことができる。
【0135】
本発明による組成物に接触している表面を有する、本発明による物品は、典型的には、非染み性、簡単な洗浄方法での染み剥離性、撥油性(例えば、指紋耐性)、石灰沈着物耐性、又は使用からの損耗及び磨耗、洗浄などの要素に起因するすり減りへの耐性の少なくとも1つであることが見出されている。
【0136】
本発明の実施形態及び利点を以下の非限定的な実施例により更に例示するが、これらの実施例の中で挙げた特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するように解釈されるべきではない。
【0137】
特に記載のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部、割合、及び比率は、重量による。
【実施例】
【0138】
以下の実施例では、全ての試薬は、特に断らない限り、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(セントルイス(St. Louis)、ミズーリ州)から入手した。特に断りのない限り、報告される全ての百分率及び比は、重量による。
【0139】
O(CO)CFCFC(O)NHCHCHOC(O)CH=CH(HFPOA)の調製、
O(CO)CFCFCOOCHを、その例の開示が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許第6,995,222号(ブッカニン(Buckanin)ら)の調製例1に記載のように、ガス/液体クロマトグラフィー及びガス/液体クロマトグラフィー/質量分析により測定したとき、0.002%のk=2、5.9%のk=3、25.2%のk=4、27%のk=5、20.7%のk=6、12.4%のk=7、5.4%のk=8、1.8%のk=9及び0.5%のk=10を含有し、クロマトグラフィーのデータから算出したとき1232グラム/モルの数平均分子量を有する混合物として調製した。
【0140】
O(CO)CFCFCOOCHを、その開示が参考として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,094,829号(オーデナート(Audenaert)ら)の16段37〜62行に記載のように、2−アミノエタノールで処理して、CO(CO)CFCFC(O)NHCHCHOHを得た。
【0141】
機械的攪拌機、温度計、及び凝縮器を取り付けた500mLの3つ口フラスコ内で、121.6グラム(0.1モル)のCO(CO)CFCFC(O)NHCHCHOH、60グラムのメチルエチルケトン、60グラムの、3M社(セントポール(St. Paul)、ミネソタ州)から商品名「HFE−7200」として入手したハイドロフルオロエーテル、10.1グラムのトリエチルアミン(0.1モル)、0.01グラムのヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及び0.01グラムのフェノチアジン(phenothazine)を混合した。混合物を氷浴を用いて約5℃に冷却し、10.1グラム(0.11モル)のアクリロクロリドを窒素下で約1時間にわたって添加した。発熱反応が観察され、沈殿物が形成された。温度を25℃に上昇させ、約1時間攪拌した。反応物を50℃に加温し、窒素下で更に1時間攪拌した。得られる混合物を水(200mL)で3回洗浄した。得られる有機溶液を真空下で50℃にて蒸留して、溶媒を取り除き、H及び19F核磁気共鳴分光法により同定された、透明な、黄褐色液体として123.2グラムのHFPOAを得た。
【0142】
(実施例1)
A部
機械的攪拌機、凝縮器及び温度計を取り付けた250mLの3つ口フラスコ内で、52.6グラム(0.04モル)のHFPOA、0.9グラム(0.01モル)の2−メルカプトエタノール、55グラムのメチルイソブチルケトン(MIBK)及び10グラムの「HFE−7200」ハイドロフルオロエーテルを混合した。混合物を脱気し、0.1グラムの2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(デュポン・ケミカル社(Dupont Chemical Co.)(ウィルミントン(Wilmington)、デラウェア州)から商品名「バゾ(VAZO)−67」として入手)を添加した。反応物を窒素下で6時間、65℃に加熱した。更に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(「バゾ(VAZO)−67」(0.05グラム)を添加し、反応を65℃で16時間続けた。
【0143】
B部
機械的攪拌機、ディーン−スターク・トラップ(Dean-Stark trap)凝縮器及び温度計を取り付けた500mLの3つ口フラスコに、53.4グラム(0.01モル)のA部の物質、1.4グラム(0.01モル)の2−ホスホノ酢酸、40グラムのメチルイソブルケトン(MIBK)及び0.5グラムのメタンスルホン酸を添加した。反応物を6時間還流させながら加熱した。この時間中、約1.8グラムの水をディーン−スターク・トラップで回収した。MIBKを真空下で除去した。生成物を、H、19F及び31P核磁気共鳴分光法により分析した。生成物を、評価のためにイソプロパノールで0.1%に希釈した。
【0144】
(実施例2)
2−メルカプトエタノールの代わりに、1.1グラム(0.01モル)の、A部の3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを用いたことを除いて、実施例1に記載のように実施例2を調製した。得られたオリゴマーを、実施例1のB部に記載のように2−ホスホノ酢酸で処理した。生成物を、評価のためにイソプロパノールで0.1%に希釈した。
【0145】
(実施例3)
機械的攪拌機、凝縮器及び温度計を取り付けた250mLの3つ口フラスコ内で、HFPOA(35グラム)、10グラムのオクタデシルメタクリレート(ODMA)、2.5グラムのビニルホスホン酸、2.5グラムのオクチルメルカプタン、20グラムの「HFE−7200」ハイドロフルオロエーテル、及び30グラムのイソプロパノール(IPA)を混合した。真空下で窒素でパージしながら反応混合物を脱気し、0.1グラムの「バゾ(VAZO)−67」2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を添加した。反応物を窒素下で6時間、65℃に加熱した。更に「バゾ(VAZO)−67」2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(0.05グラム)を添加し、反応を65℃で16時間続けた。透明溶液が得られた。ガス/液体クロマトグラフィー分析により証明されたように、約0.1重量%の開始モノマーが残った。生成物を、評価のために「HFE−7200」で0.1%に希釈した。
【0146】
(実施例4及び5)
以下の表1に列挙した量の試薬を用いたことを除いて、実施例3に記載のように実施例4及び5を調製した。これらの反応では、20グラムの「HFE−7200」及び30グラムのIPAを用いた。生成物を、評価のためにイソプロパノールで0.1%に希釈した。
【0147】
【表1】

【0148】
比較例
米国特許公開第2005/0048288号(フリン(Flynn)ら)の実施例2に記載の方法を用いて、以下の式の組成物を調製した。
【0149】
【化25】

【0150】
生成物を評価のためにハイドロフルオロエーテル「HFE−7200」で0.1%に希釈した。
【0151】
実施例1〜5及び比較例の評価
実施例1〜5を試験するために用いた基材は、アイディール・スタンダード(Ideal Standard)(ウィットリヒ(Wittlich)、ドイツ)から入手し、それは表面上に電気めっきされたクロムの層を有する金属製建具であった。
【0152】
10%の水酸化ナトリウム溶液中で、70℃にて15分間、浸漬により基材を洗浄した。基材を水で十分にすすぎ、乾燥させ、アセトン及び3M社から商品名「HFE−7100」として入手したハイドロフルオロエーテルで洗浄した。実施例1、2、4及び5の溶液を、噴霧塗布(2バール及び20mL/分)により基材に適用した。実施例3の溶液を、飽和した紙の拭き取り用品を用いて基材に適用した。基材を室温で乾燥させ、70℃で5分間加熱し、試験前に24時間室温に静置した。オリンパス(Olympus)モデルTGHM角度計(オリンパスアメリカ社(Olympus Corporation of America)(ポンパノビーチ(Pompano Beach)、フロリダ州)から入手)を用いて、実施例1〜5で処理した基材及び未処理の基材上で水及びヘキサデカンに対する静的接触角を測定した。拭き取り用品(3M社から商品名「3M高性能拭き取り用品(3M HIGH PERFORMANCE WIPE)」で200回拭き取ることにより、磨耗試験を実施した。静的接触角を、磨耗試験後に再度測定した。接触角測定では、3回の測定の平均値を度単位で表2(下記)に報告する。
【0153】
【表2】

【0154】
実施例1〜5の溶液で処理した建具及び未処理のディスクの洗浄性は、鉱水(トニッステイナー(Tonissteiner)、ドイツ、から入手)を適用することにより実施した。水を、室温で5×10Pa(0.5bar)にて、基材が完全に覆われるまで噴霧した。基材をオーブン内に70℃で2時間定置し、取り出し、放冷した。基材上に石灰石沈着物が存在していたため、これを続いて、乾燥している拭取り用品で洗浄した。洗浄結果を視覚的に評価し、0(沈着物が視覚的に全く除去されていない)〜10(3回拭き取り後全く目視できる付着が残っていない)の尺度で採点した。この結果を表2(上記)に示す。
【0155】
(実施例6)
フラスコに、34グラムのCO(CO)CFCFC(O)NHCHCHOC(O)C(CH)=CH(HFPOMA)(その例の開示が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許第6,995,222号(ブッカニン(Buckanin)ら)の調製例3に記載のように調製した)、7グラムのオクタデシルメルカプタン、5グラム(23ミリモル)のエチレングリコールメタクリレートホスフェートを充填し、続いて295グラムのテトラヒドロフラン(THF)を充填した。約3分後、5.2グラム(48ミリモル)の塩化トリメチルシリルを添加した。溶液を攪拌し、5分間窒素でパージし、0.4グラムの「バゾ(VAZO)−67」、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を添加した。溶液を60℃で15時間加熱した。この期間後、760グラムの脱イオン水と1.4グラムのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ローディア(Rhodia)(ブルーアイランド(Blue Island)、イリノイ州)から、商品名「DS−10」として入手)との溶液を70℃で添加し、得られた混合物を10分間攪拌した。混合物をビーカーに移動し、超音波処理しながら6分間攪拌した。回転蒸発により、得られたエマルションからTHFを取り除き、安定なエマルションを得た。サンプルを水及びイソプロパノール(IPA)で希釈して、総溶液重量を基準として全体的に10%のIPAを含む3%固体を作製した。
【0156】
(実施例7)
ビーカーに、34グラムのHFPOMA、2.5グラムのエチレングリコールメタクリレートホスフェート、100グラムのTHF、及び200グラムのMIBKを充填した。混合物を60℃に加熱し、393グラムの脱イオン水と0.8グラムの「DS−10」ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとの溶液を60℃で、攪拌しながら添加した。得られたエマルションを5分間超音波処理し、反応フラスコに移動させた。エマルションを5分間窒素でパージし、0.4グラムの過硫酸ナトリウム及び0.4グラムの「バゾ(VAZO)−67」、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を添加した。エマルションを60℃で15時間加熱した。回転蒸発によりTHF及びMIBKを取り除き、安定なエマルションを得た。サンプルを水及びIPAで希釈して、総溶液重量を基準として全体的に10%のIPAを含む3%固体を作製した。
【0157】
(実施例8)
フラスコに、30グラムのHFPOMA、10グラムのN−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエチルメタクリレート(MeFBSEMA)、7.5グラムのオクタデシルアクリレート、2.5グラムのエチレングリコールメタクリレートホスフェート、続いて58グラムのTHF、及び58グラムのIPAを充填した。溶液を攪拌し、5分間窒素でパージし、0.5グラムの「バゾ(VAZO)−67」、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を添加した。溶液を60℃で15時間加熱した。この期間後、283グラムの脱イオン水と1.3グラムの水酸化カリウム(KOH)との溶液を70℃で添加した。得られたエマルションをビーカーに移動し、4分間超音波処理しながら攪拌した。回転蒸発によりTHF及びIPAを取り除き、安定なエマルションを得た。サンプルを水及びIPAで希釈して、総溶液重量を基準として全体的に10%のIPAを含む3%固体を作製した。
【0158】
MeFBSEMAは、B部で、3420kgのN−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエタノール、1.6kgのフェノチアジン、2.7kgのメトキシヒドロキノン、1400kgのヘプタン、980kgのメタクリル酸(アクリル酸の代わりに)、63kgのメタンスルホン酸(トリフルオロメタンスルホン酸の代わりに)、及び7590kgの水を使用したことを除いて、参考として本明細書に組み込まれる米国特許第6,664,354号(サヴュー(Savu))の実施例2、A部及びB部の方法に従って調製した。
【0159】
(実施例9)
A部
丸底フラスコに、1グラムのオクタデシル3−メルカプトプロピオネート(ダウ・ケミカルズ社(Dow Chemical Co.)(ミッドランド(Midland)、ミシガン州)に所有されているハンプシャー・ケミカルズ(Hampshire Chemicals)から入手)、2.5グラムのエチレングリコールメタクリレートホスフェート、6.5グラムのHFPOMA、15グラムのN−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエチルアクリレート(MeFBSEA)、60グラムのMIBK及び15グラムのIPAを添加した。この混合物を、機械的攪拌機を用いてかき混ぜ、50℃に加温した。0.15グラムの「バゾ(VAZO)−67」、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を添加する前に、10分間窒素を混合物中にバブリングし、温度を70℃に上昇させた。反応混合物を窒素下で70℃にて15時間加熱した。赤外分光法(IR)による分析で、重合の完了を示す1637cm−1の不飽和ピークは存在しないことが示された。
【0160】
MeFBSEAは、B部で、4,270kgのN−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエタノール、1.6kgのフェノチアジン、2.7kgのメトキシヒドロキノン、1,590kgのヘプタン、1,030kgのアクリル酸、89kgのメタンスルホン酸(トリフルオロメタンスルホン酸の代わりに)、及び7,590kgの水を使用したことを除いて、参考として本明細書に組み込まれる米国特許第6,664,354号(サヴュー(Savu))の実施例2、A部及びB部の方法に従って製造した。
【0161】
B部
60℃で150グラムの水に1.3グラムのKOHを添加し、KOHが完全に溶解するまで混合物を攪拌した。この溶液に、攪拌しながら、60℃でA部の溶液を添加し、2分間パルスモードで、商品名「ソニファイアー(SONIFIER)450」としてブランソン(Branson)(ダンベリー(Danbury)、コネチカット州)から入手した超音波処理器を用いてブレンドを均質化した。真空下でMIBK及びIPAを蒸発させた。固形分20.8%の青味がかったエマルションを得た。
【0162】
(実施例10)
A部
丸底フラスコに、2グラムのオクタデシル3−メルカプトプロピオネート(ハンプシャー・ケミカルズ(Hampshire Chemicals)から入手)、2グラムのエチレングリコールメタクリレートホスフェート、18グラムのN−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエチルアクリレート(MeFBSEA)、及び3グラムのオクタデシルアクリレート(シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から入手)、40グラムのMIBK及び10グラムのIPAを添加した。この混合物を、機械的攪拌機を用いてかき混ぜ、50℃に加温した。0.15グラムの「バゾ(VAZO)−67」、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を添加する前に、10分間窒素を混合物中にバブリングし、温度を70℃に上昇させた。反応混合物を窒素下で70℃にて15時間加熱した。赤外分光法(IR)による分析で、重合の完了を示す1637cm−1の不飽和ピークは存在しないことが示された。
【0163】
B部
1.3グラムのKOHを2グラムの30%アンモニア溶液(J.T.ベーカー(Baker)(フィリップスバーグ(Phillipsburg)、ニュージャージー州)から入手)に置換したことを除き、実施例9のB部の手順に従った。
【0164】
実施例6〜10の評価
グラウトシーラー(Grout Sealer)の調製及び試験:
水と、TECスペシャルティ・プロダクツ社(TEC Specialty Products, Inc.)(アーリントン(Arlington)、イリノイ州)から商品名「アキュカラー・サンディッド・グラウト(AccuColor Sanded Grout)」として入手した、砂を混ぜたグラウトとを混合し、次いでグラウトを5cm(2インチ)×11cm(4インチ)の裏材板試片(backer board coupon)に適用することにより、製造業者の取扱説明書に従って、グラウトのブランクを調製した。これらのコーティングされた試片を周囲研究室条件(およそ21℃(70°F)及び相対湿度50%)で4日間硬化させた。
【0165】
約3日間でいったんグラウトが乾燥すると、試片を実験用シーラー、並びに2種の市販提供品:TECから商品名「TECガード・オール・インビジブル・ペネトレーティング・シーラー(TEC Guard All Invisible Penetrating Sealer)」として入手したシーラー(比較例2)及びカスタム・ビルディング・プロダクツ(Custom Building Products)(シールビーチ(Seal Beach)、カリフォルニア州)から商品名「タイルラボ・サーフィスガード・ペネトレーティング・シーラー(TileLab SurfaceGard Penetrating Sealer)」として入手したシーラー(比較例3)でコーティングした。染みを適用する前に、これらのシールしたグラウトサンプルを、研究室条件下で18〜20時間乾燥させた。
【0166】
シールしたグラウト試片を、コーヒー(フォルガーズ・クラシック・ロースト・インスタント(Folgers Classic Roast instant))、グレープジュース(ウェルチ(Welch)の100%グレープジュース)及びメルロー(レーブンズウッド・ビンテージブランド(Ravenswood Vintners Blend)2003)のそれぞれ8滴(およそ0.5mL)で汚した。これらの染みを、グラウトを適用しシールした表面上に、1時間放置した。
【0167】
1時間後、洗浄前に残りの染み媒質を紙タオルで拭き取った。洗浄手順には、洗浄剤として、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter and Gamble)(シンシナティ(Cincinnati)、オハイオ州)から商品名「ドーン・ディッシュウォッシング・ソープ(Dawn Dishwashing Soap)」として入手した皿洗い用石鹸を、蒸留水を用いて5%に希釈することにより調製した、皿洗い用石鹸溶液を用いた。各グラウト試片に、0.48グラム(+/−0.01g)の洗浄媒質を噴霧し、次いで手により大きなO−Cel−Oスポンジ(3M社から入手した)で20往復こすった。洗浄時、サンプルを、完全に汚れが取り除かれている場合が5、染み媒質が全く取り除かれていない場合が1である、5段階の視覚的尺度で染みの除去の程度を採点した。
【0168】
実施例6〜10の結果を以下の表3に示す。
【0169】
【表3】

【0170】
本発明の種々の修正及び変更を本発明の範囲及び趣旨を逸脱せずに当業者によって行ってもよい。本発明は本明細書に記載された例示的な実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

により表される少なくとも1個の第1の二価単位;並びに
ペンダントZ基を含む第2の二価単位、又はチオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位、のうち少なくとも1種
を含む組成物であって、
各Z基が独立して
−P(O)(OY)及び−O−P(O)(OY)
(式中、
各Rfは独立してペルフルオロポリエーテル基であり、
各Qは独立して、結合、
−C(O)−N(R)−及び−C(O)−O−からなる群から選択され、
R及びRは、それぞれ独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
各Xは、独立してアルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンからなる群から選択され、アルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンがそれぞれ所望により少なくとも1個のエーテル結合により中断され、
各Yは、独立して水素、アルキル、トリアルキルシリル、及び対カチオンからなる群から選択される)
からなる群から選択される、
組成物。
【請求項2】
前記ペルフルオロポリエーテル基が750グラム/モル〜5000グラム/モルの範囲の数平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
各第2の二価単位が、式
【化2】

(式中、R’は水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される)
により表される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む前記一価単位が、
−S−C2bOC(O)C2b−P(O)(OY);及び
−S−C2b−1[OC(O)C2b−P(O)(OY)
(式中、各bは独立して1〜5の整数である)からなる群から選択される式により表される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
各第2の二価単位が、式
【化3】

(式中、
Vは、所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
R’は、水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される)
により表される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
各第1の二価単位が、式
【化4】

により表され、
各第2の二価単位が、
【化5】

からなる群から選択される式により表され、並びに、
チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む前記一価単位が、式
−S−W−[Z]
により表される
(式中、
R’は、独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
Vは、所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
Wは、アルキレン、アリールアルキレン及びアリーレンからなる群から選択される二価又は三価連結基であって、アルキレンが所望により少なくとも1個のエーテル結合、エステル結合又はアミド結合により中断され、
mは1又は2である)、
請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
−S−C2t+1及び−S−C2r−A
(式中、tは4〜22の値を有する整数であり、
rは2〜10の値を有する整数であり、
Aは−OH、−COOY及び−SO
(式中、Yは、水素、アルキル及び対カチオンからなる群から選択される)からなる群から選択される)
からなる群から選択される一価単位を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】

【化6】

(式中、
各Rfは、独立して3〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立して水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、
各pは、独立して2〜11の値を有する整数であり、
各qは、独立して1〜20の値を有する整数である)
により表される少なくとも1個の二価単位を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
Rfが、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、CO(CFCFCFO)CFCF−、及びCFO(CO)CF
(式中、nは3〜50の範囲の平均値を有する)
からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
Rfが、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−
(式中、nは4〜7の範囲の平均値を有する)
である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】

【化7】

により表される第1の二価単位;並びに

【化8】

により表される第2の二価単位、及び
−S−C2t+1及び−S−C2r−Aからなる群から選択される一価単位、又は
−S−C2bOC(O)C2b−P(O)(OY及び
−S−C2b−1[OC(O)C2b−P(O)(OYからなる群から選択される式により表される一価単位、
のうち少なくとも1種
(式中、
R’、R’’及びR’’’は、それぞれ独立して水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、
Vは、所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
tは、4〜22の値を有する整数であり、
rは、2〜10の値を有する整数であり、
Aは、−OH、−COOY及び−SOからなる群から選択され、
各Yは、独立して水素、アルキル、及び対カチオンからなる群から選択され、
各bは、独立して1〜5の整数である)、
を含む組成物。
【請求項12】
前記組成物が、式
【化9】

により表される第2の二価単位、並びに
−S−C2t+1及び−S−C2r−Aからなる群から選択される一価単位、
を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】

【化10】

(式中、
各Rは、独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
各Rは、独立して1〜30個の炭素原子を有するアルキルである)
により表される少なくとも1個の二価単位を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の前記組成物と溶媒とを含む製剤であって、前記溶媒が低級アルコール又はハイドロフルオロエーテルのうち少なくとも1種を含む製剤。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の前記組成物と水とを含む製剤。
【請求項16】
非イオン性又はアニオン性界面活性剤のうち少なくとも1種を更に含む、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
表面を処理する方法であって、前記表面を請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物又は請求項14〜16のいずれか一項に記載の製剤と接触させる工程を含む方法。
【請求項18】
前記表面が、金属、金属酸化物、セラミック、天然石又はセメント質表面のうち少なくとも1種を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記表面が、クロム又は酸化クロムのうち少なくとも1種を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記表面がステンレス鋼を含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記表面が、蛇口、蛇口ハンドル、流し、オーブンレンジ、オーブンレンジフード、調理台、床材又は壁装材のうちの少なくとも1種上にある、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
表面を有する物品であって、前記表面の少なくとも一部が組成物と接触し、
前記組成物が、式
【化11】

により表される少なくとも1個の第1の二価単位、並びに、
ペンダントZ基を含む第2の二価単位、又はチオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む一価単位、のうち少なくとも1種
を含み、
各Z基が独立して
−P(O)(OY及び−O−P(O)(OY
(式中、
各Rfは、独立してペルフルオロポリエーテル基であり、
各Qは、独立して、結合、
−C(O)−N(R)−、及び−C(O)−O−
からなる群から選択され、
R及びRは、それぞれ独立して、水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
各Xは、独立して、アルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンからなる群から選択され、アルキレン、アリールアルキレン及びアルキルアリーレンがそれぞれ所望により少なくとも1個のエーテル結合により中断され、
各Yは、独立して水素、アルキル、対カチオン及び前記表面への結合からなる群から選択される)
からなる群から選択される、
物品。
【請求項23】
各第1の二価単位が、式
【化12】

により表され、
各第2の二価単位が、
【化13】

からなる群から選択される式により表され、並びに
チオエーテル結合及び少なくとも1個の末端Z基を含む前記一価単位が、式
−S−W−[Z
により表される
(式中、
R’は、独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
Vは、所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
Wは、アルキレン、アリールアルキレン及びアリーレンからなる群から選択される二価又は三価連結基であって、アルキレンが所望により少なくとも1個のエーテル結合、エステル結合又はアミド結合により中断され、
mは1又は2である)、
請求項22に記載の物品。
【請求項24】
表面を有する物品であって、前記表面の少なくとも一部が組成物と接触し、
前記組成物が、式
【化14】

により表される第1の二価単位;並びに、

【化15】

により表される第2の二価単位、及び
−S−C2t+1及び−S−C2r−Aからなる群から選択される一価単位、又は
−S−C2bOC(O)C2b−P(O)(OY及び
−S−C2b−1[OC(O)C2b−P(O)(OYからなる群から選択される式により表される一価単位、
のうち少なくとも1種
(式中、
R’、R’’及びR’’’は、それぞれ独立して水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、
Vは、所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
tは、4〜22の値を有する整数であり、
rは、2〜10の値を有する整数であり、
Aは、−OH、−COOY及び−SOからなる群から選択され、
各Yは、独立して水素、アルキル、対カチオン及び前記表面への結合からなる群から選択され、
各bは、独立して1〜5の整数である)、
を含む物品。
【請求項25】
前記表面が、金属、金属酸化物、セラミック、天然石又はセメント質表面のうち少なくとも1種を含む、請求項22〜24のいずれか一項に記載の物品。
【請求項26】
前記表面が金属又は金属酸化物のうち少なくとも1種を含み、化合物が前記表面上に少なくとも部分的な単層を形成する、請求項22〜25のいずれか一項に記載の物品。
【請求項27】
前記表面が、クロム又は酸化クロムのうち少なくとも1種を含む、請求項22〜26のいずれか一項に記載の物品。
【請求項28】
前記物品が、蛇口、蛇口ハンドル、流し、オーブンレンジ、オーブンレンジフード、調理台、床材又は壁装材のうちの少なくとも1種である、請求項22〜27のいずれか一項に記載の物品。
【請求項29】
前記物品の前記表面がステンレス鋼を含む、請求項22〜28のいずれか一項に記載の物品。
【請求項30】
組成物を製造する方法であって、該方法が、式
Rf−C(O)−N(R)−X−O−C(O)−C(R)=CH
により表される少なくとも1種の成分、及び
式、
(YO)−P(O)−C(R’)=CH又は
(YO)−P(O)−O−V−O−C(O)−C(R’)=CH
により表される少なくとも1種の成分
(式中、
各Rfは、独立してペルフルオロポリエーテル基であり、
R、R’及びRは、それぞれ独立して水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、
各Vは、独立して所望により少なくとも1個のエーテル結合又はアミン結合により中断されるアルキレンであり、
各Yは、独立して水素、アルキル、トリアルキルシリル及び対カチオンからなる群から選択される)、
を含む成分を反応させる工程を含む方法。
【請求項31】
反応が、水を含む媒質中で行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記媒質が乳化剤を更に含む、請求項31に記載の方法。

【公表番号】特表2010−530014(P2010−530014A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511318(P2010−511318)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/065885
【国際公開番号】WO2008/154279
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】