説明

フッ素樹脂被覆物及びその製造方法

【課題】本発明の課題は、従前のフッ素樹脂被覆物よりも摺動性が高く、電子線照射などの滅菌処理が施されてもその摺動性が低下することのないフッ素樹脂被覆物とその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係るフッ素樹脂被覆物は、基材およびフッ素樹脂被膜を備える。フッ素樹脂被膜は、基材に被覆される。そして、このフッ素樹脂被膜には、凹形状の穴痕が形成されている。なお、このフッ素樹脂被覆物において、凹形状の穴痕の平均密度は1個/1cm以上であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従前のフッ素樹脂被覆物よりも優れた摺動性を有する新規なフッ素樹脂被覆物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、フッ素樹脂は、耐化学薬品性、耐候性、電気絶縁性、耐熱性、非粘着性等の優れた特性を有することから、その用途もきわめて広範囲である。フッ素樹脂製品としては、フィルム状、ロッド状、チューブ状などのフッ素樹脂単体の加工品やフッ素樹脂被覆物などがある。フッ素樹脂被覆物としては、被塗装物(基材)、例えば、金属、ガラス繊維・織物、ゴム材料、耐熱性プラスチック材料等にフッ素樹脂被膜を形成したものがある。被塗装物(基材)へのフッ素樹脂被膜の形成は、フッ素樹脂の種類等によって異なるが、通常、被塗装物(基材)にフッ素樹脂分散液を塗布して被塗装物(基材)上にフッ素樹脂分散液塗膜を形成した後、そのフッ素樹脂分散液塗膜を乾燥し、さらに焼成することにより行われている。
【0003】
そして、このようなフッ素樹脂被覆物としては、例えば、炊飯器やホットプレートなどの調理用器物、定着ロールや定着ベルトなどのOA機器、ガイドワイヤーやカテーテルなどの医療部材等が具体的に挙げられる。
【0004】
そして、近年、医療機器や医療器具の分野においてフッ素樹脂の非粘着性(高摺動性)が注目され、フッ素樹脂を被覆した医療機器や医療器具の市場が拡大化している。
ところで、ガイドワイヤーやカテーテル等の医療用器具において、フッ素樹脂の非粘着性や高摺動性が要求されるのは、以下のような理由によるものである。
【0005】
現代医療では、施術時に患者に対する負担をできるだけ軽減するために、従来の切開術式に代わり、体腔内へ直接カテーテル等の医療器具を挿入する方式が採用されている。なお、カテーテルを体腔内に挿入させていく場合、ガイドワイヤーを利用してカテーテルを目的部位まで導く。
【0006】
しかしながら、ガイドワイヤーを体内の細部や細かな血管内に挿入し、ガイドワイヤーに沿ってカテーテルを挿入していく場合、カテーテルとガイドワイヤーとの間隙が狭くなる結果、カテーテルとガイドワイヤーとの摩擦抵抗が高くなり体外からの治療操作が難しくなる場合が多い。さらに血管内では、血液の流れによりガイドワイヤー表面の摩擦抵抗は一層、高くなる。このようにカテーテルの内周面とガイドワイヤーの外表面との摺動性が低下すると、治療の長時間化が懸念される。
【0007】
ところで、本出願人は、上述の問題点を解決する一手法として、Ti−Ni超弾性合金ワイヤーを、多数の突起を有するフッ素樹脂で被覆することを提案している(特開2004−130123号公報参照)。このようなガイドワイヤーは、フッ素樹脂の優れた低摺動特性に加え、接触物との接触面積の減少による動摩擦抵抗の低下により、従来のフッ素樹脂被覆ガイドワイヤーよりも摺動性が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−130123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ガイドワイヤーやカテーテルのような医療部材は、人体に直接挿入するため、通常、電子線照射やガンマー線照射よって滅菌処理が施されている。そして、上述のガイドワイヤーに電子線を照射すると、フッ素樹脂被膜の突起が電子線によって除去されると共にフッ素樹脂被膜が平滑化され、その摺動性が低下しまうという問題があった。
【0010】
本発明の課題は、従前のフッ素樹脂被覆物よりも摺動性が高く、電子線照射などの滅菌処理が施されてもその摺動性が低下することのないフッ素樹脂被覆物とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載のフッ素樹脂被覆物は、基材およびフッ素樹脂被膜を備える。フッ素樹脂被膜は、基材に被覆される。そして、このフッ素樹脂被膜には、凹形状の穴痕が形成されている。
請求項2に記載のフッ素樹脂被覆物は、請求項1に記載のフッ素樹脂被覆物であって、フッ素樹脂被膜は、平滑面と、複数の凹形状の穴痕とが混在している。
【0012】
請求項3に記載のフッ素樹脂被覆物は、請求項1または2に記載のフッ素樹脂被覆物であって、凹形状の穴痕の平均密度は、1個/1cm以上である。なお、凹形状の穴痕の平均密度は、高分子量フッ素樹脂分散液への低分子量フッ素樹脂の粒子の配合割合によって調整することができる。フッ素樹脂被膜の摺動性を高めるためには1cm当たり、5個〜10個程度、その穴痕を存在させるのがより好ましい。
【0013】
請求項4に記載のフッ素樹脂被覆物は、請求項1から3のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物であって、医療用部材として用いられる。なお、医療用部材としては、例えば、カテーテル用医療チューブ、手術用器具、注射針、注射筒、医療用ガイドワイヤー、ステープル、採血用器具、輸血用器具、内視鏡、ピペット、血液ポンプ、手術用糸、人工血管などが挙げられる。また、基材の材質としては、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、セラミックスなどを用いることができる。
【0014】
請求項5に記載のフッ素樹脂被覆物は、請求項4に記載のフッ素樹脂被覆物であって、医療用部材は、医療用ワイヤーである。なお、このように、フッ素樹脂被覆医療用ワイヤーのフッ素樹脂被膜に凹形状の穴痕が形成されていると、血管や、カテーテル中の血液や薬液に浸漬された状態であっても高い摺動性を維持し、施術時間の長時間化等を防止できることが本発明者の検討により明らかとなっている。
【0015】
なお、このようなフッ素樹脂被覆医療用ワイヤーの基材としては、形状がストレート状のものや、先端が先細りのテーパー状のものを好適に利用することができる。材料としては、ステンレスや超弾性合金が好ましい。超弾性合金としては、例えば、Ti−Ni((Ni:49−51atomic%)、Ti−Niに第3元素を添加したものも含む)、Cu−Al−Zn(Al:3−8atomic%、Zn:15−28atomic%)、Fe−Mn−Si(Mn:30atomic%、Si:5atomic%)、Cu−Al−Ni(Ni:3−5atomic%、Al:28−29atomic%)、Ni−Al(Al:36−38atomic%)、Mn―Cu(Cu:5−35atomic%)、Au−Cd(Cd:46−50atomic%)などが挙げられる。なお、これらの超弾性合金は、形状記憶合金としても知られている。そして、これらの超弾性合金の中でもTi−Ni合金が特に好ましい。ワイヤーの太さは、組み合わせて使用されるカテーテルの内径を考慮して選定するのが好ましく、具体的には直径約0.3mm〜約1mm程度のワイヤーがよく利用される。
【0016】
フッ素樹脂被膜層の厚みは、1.0μm以上50μm以下であるのが好ましい。フッ素樹脂被膜層の厚みがこの厚さであれば、医療用ワイヤーの操作性に影響を与えないからである。
請求項6に記載のフッ素樹脂被覆物は、請求項1から5のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物であって、放射線照射滅菌処理がなされている。
【0017】
また、請求項7に記載のフッ素樹脂被覆物は、請求項6に記載のフッ素樹脂被覆物であって、放射線照射滅菌処理は、電子線、ガンマー線照射のいずれかの放射線照射滅菌処理である。特に医療用部材等に用いられるフッ素樹脂被覆物は、あらかじめ、電子線照射またはガンマー線照射などによる滅菌処理が施されているのが好ましい。電子線照射による滅菌処理は、高速でしかも連続して医療用部材等の滅菌処理が可能であり、滅菌処理による残渣物の発生もないため好ましい。なお、フッ素樹脂被覆医療用部材への電子線照射滅菌処理では、10kGy〜100kGyの範囲の照射量でフッ素樹脂被覆医療用部材を照射するのが好ましい。なお、フッ素樹脂は、他の高分子に比べて電子線に対して脆弱であるため、70kGy以下の照射線量で滅菌処理されるのが好ましい。
【0018】
請求項8に記載のフッ素樹脂被覆物は、請求項1から5のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物であって、フッ素樹脂被膜は、親水性コーティングされている。なお、フッ素樹脂被覆物が医療用ワイヤーやカテーテルなどの医療用部材として使用される場合、フッ素樹脂の低摺動特性と共にその表面が親水性であるのが好ましい。
【0019】
ところで、医療現場で利用されている器具、例えば、体腔内部に挿入するガイドワイヤーやカテーテルには、(1)抗血栓や(2)組織内留置中における粘膜損傷や炎症の防止の観点から、血液や、薬液、体液などによる湿潤時においても高い摺動性(潤滑性)を維持することが求められている。親水性コーティング剤としては、ポリオキシエチレン基の繰り返し単位が1〜5である親水性コーティング剤が好ましい。
なお、親水性コーティング剤は、下記一般式(1):
O(CHCHO)nH (1)
(ただし、式中、Rは炭素数8〜22の炭化水素基であり、nは1〜5である)、
または、下記一般式(2):
COO(CHCHO)nH (2)
(ただし、式中、Rは炭素数7〜21の炭化水素基であり、nは1〜5である)、
または、下記一般式(3):
O(CHCH(CH)O)mH (3)
(ただし、式中、Rは炭素数8〜22の炭化水素基であり、mは1〜3である)、
または、下記一般式(4):
COO(CHCH(CH)O)mH (4)
(ただし、式中、Rは炭素数7〜21の炭化水素基であり、mは1〜3である)、
または、下記一般式(5):
O(CHCH(CH)O)s(CHCHO)tH (5)
(ただし、式中、Rは炭素数8〜22の炭化水素基であり、s及びtは1〜5である)、または、下記一般式(6):
COO(CHCH(CH)O)u(CHCHO)vH (6)
(ただし、式中、Rは炭素数7〜21の炭化水素基であり、u及びvは1〜3である)で示される親水性コーティング剤であることが好ましい。
【0020】
なお、これらの親水性コーティング剤の中でも、ポリオキシエチレン(5モル)ソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(4モル)ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(4モル)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルエーテル、ジエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(3モル)オキシプロピレン(2モル)ラウリルエーテル、ジエチレングリコールモノラウリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(3モル)オキシプロピレン(3モル)ミリスチン酸エステル、ジエチレングリコールステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等が好ましく、nが2であるポリエチレングリコールモノオレエート(Polyethlenglycol mono oleate)<CH(CHCH=CH(CHCOO(CHCHO)H>(ジエチレングリコールモノオレエートともいう)やポリオキシエチレンオレイルエーテル(Polyoxyethene oleyl ether)<CH(CHCH=CH(CHO(CHCHO)H>が特に好ましい。なお、これらの親水性コーティング剤は、適宜組み合わせて使用することができる。
【0021】
なお、本実施の形態において、ポリカチオンとしては、四級化されたポリアクリルアミドや、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアリールアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルビニリデン、四級化末端基を有するナフィオン(NAFION)(登録商標)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、並びに四級化された含窒素末端基を有する電解質の合成および天然ポリマー等が挙げられる。なお、これらのポリカチオンは適宜組み合わせて使用することができる。
【0022】
また、本実施の形態において、ポリアニオンとしては、ポリエチレンスルホネート、ポリスチレンスルホネート、ナフィオン、過フッ素酸アイオノマー等が挙げられる。なお、これらのポリアニオンは適宜組み合わせて使用することができる。
【0023】
さらに、親水性コーティング剤は、ポリエチレングリコールモノオレエート(PGO)、及びポリオキシエチレンオレイルエーテル(POO)であるのがより好ましい。特に、フッ素樹脂被膜の疎水面を親水化する場合に優れた効果が発現できるからである。また、親水性コーティング剤は、0.1μm〜2μmの厚みでコーティングすることが好ましい。
【0024】
フッ素樹脂被覆物への親水性コーティング剤のコーティングは、親水性コーティング剤を0.1wt%〜5wt%を含む水溶液に浸漬した後、乾燥することによって実現することができる。また、親水性コーティング剤の水溶液はその温度が60度C±5度Cに保たれていることが好ましい。
【0025】
請求項9に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項1に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、塗布液調製工程、塗布物調製工程、乾燥工程および被覆物作製工程を備える。塗布液調製工程では、高分子量フッ素樹脂分散液中に低分子量フッ素樹脂の粒子が混合されてフッ素樹脂塗布液が調製される。塗布物調製工程では、基材にフッ素樹脂塗布液が塗布されてフッ素樹脂塗布物が得られる。乾燥工程では、フッ素樹脂塗布物が乾燥されて塗布乾燥物が得られる。被覆物作製工程では、塗布乾燥物が高分子量フッ素樹脂分散液中の高分子量フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱焼成されてフッ素樹脂被覆物が得られる。
【0026】
基材へフッ素樹脂塗布液を塗布する方法としては、刷毛塗り、スプレー、ロールコート、スピンコートなどが挙げられる。なお、塗布液の歩留り向上や塗布厚みの均一化のためには浸漬塗布方法が好ましい。
【0027】
また、基材とフッ素樹脂被膜との接着強度を向上させるためには、あらかじめ基材にプライマー溶液を塗布して乾燥することによりプライマー処理基材を調製した後、そのプライマー処理基材にフッ素樹脂塗布液を塗布して乾燥、焼成するのが好ましい。
【0028】
また、被覆物作製工程においては、フッ素樹脂分散液中の高分子量フッ素樹脂の融点よりも高い温度で塗布乾燥物を焼成することが必須条件である。なお、焼成温度は、基材の材質や形状、大きさに依存するが、少なくとも基材の温度が380度Cを超える温度であるのが好ましい。
【0029】
請求項10に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項9に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、滅菌工程をさらに備える。滅菌工程では、フッ素樹脂被覆物が放射線照射滅菌される。
【0030】
請求項11に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項9または10に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、コーティング工程をさらに備える。コーティング工程では、フッ素樹脂被覆物に親水性材料がコーティングされる。
【0031】
請求項12に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項9から11のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、低分子量フッ素樹脂は、数平均分子量が1000以上1000000以下である。なお、低分子量フッ素樹脂のより好ましい数平均分子量は、5万以上70万以下の範囲内である。低分子量フッ素樹脂の数平均分子量が上記の通りであると、低分子量フッ素樹脂を分解温度以上に加熱することによって低分子量フッ素樹脂を気化させることによりフッ素樹脂被膜にクレーター状の穴痕を形成することができる。
【0032】
また、請求項13に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項9から12のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、低分子量フッ素樹脂は、熱分解開始温度が260度C以上370度C以下である。その一方、一般的な高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂の融点は327度Cであり、熱分解開始温度は400度C以上である。つまり、高分子量フッ素樹脂として高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂が利用される場合、低分子量フッ素樹脂と高分子量フッ素樹脂との熱分解開始温度の差を30度C以上確保することができる。このため、例えば、加熱温度を390度C周辺に設定すれば、高分子量フッ素樹脂をほとんど分解することなく、低分子量フッ素樹脂の熱分解を効率的に行うことができ、凹形状の穴痕の形成を容易に行うことができる。
【0033】
また、低分子量フッ素樹脂は、乳化重合により製造したものであってもよく、高分子量フッ素樹脂を放射線照射によって分解して低分子量化したものであってもよく、高分子量フッ素樹脂パウダーを熱分解して低分子量化したものであってもよい。
【0034】
請求項14に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項9から13のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、低分子量フッ素樹脂は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂である。このため、フッ素樹脂の焼成工程では、PFA樹脂やFEP樹脂のように低分子量フッ素樹脂が溶融して流動(流れる)することがなく、且つ、低分子量フッ素樹脂が熱分解温度に達するとスムーズに分解して気化し、残渣がほとんど残らない。なお、低分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂としては、高分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂を電子線照射によって分解して低分子量化すると共に微粒子化したものを用いるのがより好ましい。微粒子化が容易であると共に高分子量フッ素樹脂液への混合分散が容易であるからである。
【0035】
請求項15に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項9から14のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、低分子量フッ素樹脂の粒子は、平均粒子径が0.1μm以上30μm以下である。なお、低分子量フッ素樹脂粒子の平均粒子径は5μm〜20μmの範囲内であるのがより好ましい。クレーター状の穴痕が適度な大きさとなり、フッ素樹脂被膜の摺動性が良好となるからである。
【0036】
次に、請求項16に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項9から15のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、低分子量フッ素樹脂の粒子は、高分子量フッ素樹脂の重量に対して5重量%以上60重量%以下、混合される。低分子フッ素樹脂の混合量が5重量%未満であると凹形状の穴痕の存在密度が小さくなり、摺動性の改善効果が得られず、一方、低分子フッ素樹脂の混合量が60重量%超であると、凹形状の穴痕の存在密度が高くなりすぎ、フッ素樹脂被覆物の機械的特性が低下してしまうからである。なお、低分子量フッ素樹脂の粒子は10重量%以上40重量%以下、混合されるのがより好ましい。
【0037】
請求項17に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法は、請求項9から16のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、高分子量フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)よりなる群から選択される少なくとも一種のフッ素樹脂、または、上記群から選択される少なくとも二種のフッ素樹脂のブレンド物である。なお、本発明において、高分子フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂がより好ましい。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂はフッ素樹脂の中でも特に優れた諸特性を有すると共に、熱分解温度が高く、低分子量フッ素樹脂を混合した場合、熱分解温度の差を大きくとることができ、凹形状の穴痕を明確に形成し易いからである。さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂は、摺動性が高く、不活性であり人体にも安全だからである。なお、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂液としては、数平均分子量が数100万〜1000万のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂の水分散懸濁液(ディスパージョン)等が使用され得る。
【0038】
また、本発明に係るフッ素樹脂被覆物の製造方法では、高分子量フッ素樹脂液中の樹脂固形分濃度は、20重量%以上60重量%以下であるのが好ましい。樹脂固形分濃度がこの範囲内であれば、高分子量フッ素樹脂液に低分子量フッ素樹脂粒子を混合分散させやすいからである。
【0039】
また、低分子量フッ素樹脂粒子の添加量をA、高分子量フッ素樹脂液中の固形分の重量をBとしたとき、[A/(A+B)]×100の値が1重量%〜60重量%であるのが好ましい。フッ素樹脂被膜に好ましい低摩擦性が付与されるからである。
【発明の効果】
【0040】
本発明のフッ素樹脂被覆物は、フッ素樹脂被膜に凹形状の穴痕が形成されているため、被摺動物との接触面積が減少し、フッ素樹脂が本来有する優れた摺動性と相重なってフッ素樹脂単体以上の低摩擦特性を有する。また、本発明のフッ素樹脂被覆物は、電子線照射やガンマー線照射などの滅菌処理が施されてもその摺動性が低下することがない。このため、このフッ素樹脂被覆物は、衛生性および摺動性が高い。
【0041】
さらに、本発明のフッ素樹脂被覆物のフッ素樹脂被膜を親水化処理すると、血液中や水中での動摩擦抵抗値をフッ素樹脂単体の動摩擦特性よりも低下させることができる。また、本発明のフッ素樹脂被覆物の製造方法を利用すれば、高摺動性、耐放射線性および親水性など多くの優れた特性を兼ね備えるフッ素樹脂被覆物を簡単な工程で安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1で得られたフッ素樹脂被覆ワイヤーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】一般的なフッ素樹脂被覆ワイヤーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】突起が形成されたフッ素樹脂被覆ガイドワイヤーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】突起が形成されたフッ素樹脂被覆ガイドワイヤーを電子線照射によって滅菌処理した後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明に係る医療用ワイヤーの動摩擦抵抗値の測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施の形態に係る医療用具には、図1に示されるようにフッ素樹脂被膜に多数の凹形状の穴痕が形成されている。このため、この医療用具は、平滑なフッ素樹脂被覆面に比べ、非常に高い摺動性を有している。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0044】
(1)プライマー塗布ワイヤーの作製
【0045】
長さ2m、直径0.35mmのTi−Ni超弾性合金ワイヤーに、23度Cにおける粘度を110cpに調整したプライマー(デュポン社製855N−003(固形分濃度35重量%))を、乾燥後の塗膜厚さが約1μmになるように浸漬方法によってコーティングした後、Ti−Ni超弾性合金ワイヤー上のプライマーを10分間常温で自然乾燥させた。その後、Ti−Ni超弾性合金ワイヤー上のプライマーをさらに150度Cの温度で30分間加熱乾燥してプライマー塗布ワイヤーを得た。
(2)フッ素樹脂塗布液の調製
【0046】
高分子量フッ素樹脂液(樹脂固形分濃度50重量%の「855N−510」(デュポン社製)(70重量%の高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂と30重量%の高分子量テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂との混合液))に低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子(喜多村社製「KTL−10N」平均粒子径:約10μm)を、高分子量フッ素樹脂液の高分子フッ素樹脂固形分に対して20重量%添加して混合し、フッ素樹脂塗布液(A)を調製した。
(3)フッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)の製作
【0047】
プライマー塗布ワイヤーに対してフッ素樹脂塗布液(A)を、浸漬法によって塗布した後、プライマー塗布ワイヤー上のフッ素樹脂塗布液(A)を常温(25度C)で自然乾燥させた。その後、そのフッ素樹脂塗布液(A)塗布プライマー塗布ワイヤーを450度Cの温度で1分間焼成した。そして、そのフッ素樹脂塗布液(A)塗布プライマー塗布ワイヤーを室温まで冷却してフッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)を作製した。なお、フッ素樹脂被膜の厚さは約5μmであった。
【0048】
このようにして得られたフッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。なお、図1に示される走査型電子顕微鏡写真は倍率200倍で撮影されたものである。図1から明らかなとおり、フッ素樹脂被膜には少なくとも平均1個/1cm以上の密度で凹形状の穴痕が成形されていることが確認された。なお、図1に示される走査型電子顕微鏡写真から、穴痕の形状がクレーター状(円錐形のすり鉢状)であること、穴痕の深さや最外径は大小まちまちであることが判明した。
(4)物性測定
(4−1)乾燥状態でのフッ素樹脂被覆ワイヤーの動摩擦抵抗値の測定
フッ素樹脂被覆ワイヤーの動摩擦抵抗値を、図5に示される摩擦抵抗値測定装置20によって測定した。
【0049】
具体的には、先ず、直径90mmの金属製円形治具13の下半周分にポリエチレン樹脂製チューブ(内径2.0mm、外径3.0mm、長さ200mm)12を接着固定した後、この金属製円形治具13を引張試験機の固定側チャック17に取り付けた。次いで、フッ素樹脂被覆ワイヤー11をポリエチレン樹脂チューブ12に挿入し、フッ素樹脂被覆ワイヤーの一方を引張試験機のクリップ14に固定し、他方はフリーの状態とした。そして、この状態でフッ素樹脂被覆ワイヤー11を50mm/分の速度で鉛直上方(図5の白抜き矢印)に引っ張り上げ、このときの荷重をロードセル15により測定した。つまり、本測定方法では、フッ素樹脂被覆ワイヤー11とポリエチレン樹脂チューブ12との動摩擦抵抗値が測定されることになる。なお、このとき、引張り荷重が小さいほど動摩擦抵抗が小さいことになる。また、本実施の形態では、測定するに際して、フッ素樹脂ワイヤー11の任意の位置から50mm長さに至るまでの動摩擦抵抗値を測定し、その動摩擦抵抗値をチャート用紙に記録した。また、本実施の形態では、複数回、このような測定を繰り返して得られる複数の動摩擦抵抗値の平均値を求め、最終的な動摩擦抵抗値とした。
なお、本実施例において作製されたフッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)の動摩擦抵抗値を測定した結果、平均動摩擦抵抗値は7.95mNであった。
(4−2)低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の数平均分子量の測定
低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の数平均分子量は、標準比重(SSG)(ASTM D4895)の測定値から求めた。
なお、本実施例で使用された低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の数平均分子量は20万であった。
(4−3)低分子量フッ素樹脂の融点および熱分解開始温度の測定
【0050】
低分子量フッ素樹脂の融点および熱分解開始温度は、示差走査熱量測定(DSC60 株式会社島津製作所製)を用いて測定温度範囲25度C〜400度C、昇温速度10度C/分、空気雰囲気の条件下で測定した。
なお、本実施例で使用された低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点は320℃であり、熱分解開始点は360℃であった。
【実施例2】
【0051】
日本電子照射サービス(株)において実施例1で作製したフッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)に30kGyの電子線を照射して滅菌処理を行った。
なお、滅菌処理後の動摩擦抵抗値を測定した結果、その値は8.05mNであった。
【実施例3】
【0052】
高分子量フッ素樹脂液に低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を、高分子量フッ素樹脂液の高分子フッ素樹脂固形分に対して40重量%添加して混合し、フッ素樹脂塗布液(B)を調製した以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂被覆ワイヤー(ロ)を作製した。
【0053】
なお、フッ素樹脂被覆ワイヤー(ロ)の動摩擦抵抗値は7.5mNであった。また、30kGyの電子線を照射して滅菌処理した後のフッ素樹脂被覆ワイヤー(ロ)の動摩擦抵抗値は7.85mNであった。
【実施例4】
【0054】
高分子量フッ素樹脂液としてAD912 ディスパージョン(旭硝子社製)(樹脂固形分濃度60重量%、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂のみ)を用いた以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂被覆ワイヤー(ハ)を作製した。
【0055】
なお、フッ素樹脂被覆ワイヤー(ハ)のフッ素樹脂被膜の厚さは約6μmであった。また、このフッ素樹脂被覆ワイヤー(ハ)の動摩擦抵抗値は70mNであった。
【実施例5】
【0056】
実施例1のフッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)をポリエチレングリコールモノオレエート(PGO)(オキシエチレンの繰り返し単位は2である)の1.0重量%の水溶液に浸漬し、フッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)をその水溶液中で30分静置した後、フッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)を取り出して十分に水洗いして常温で乾燥させた。ポリエチレングリコールモノオレエート(PGO)のコーティング厚みは、0.1μm〜2μmであった。このフッ素樹脂被覆ワイヤー(ニ)の乾燥状態の動摩擦抵抗値は6.0mNであり、湿潤状態での動摩擦抵抗値は5.2mNであった。
【0057】
なお、湿潤状態でのフッ素樹脂被覆ワイヤーの動摩擦抵抗値は、ポリエチレン樹脂製チューブ12の孔内に水を満たした以外、上記(4−1)に示される方法と同様の方法で測定した。
【実施例6】
【0058】
ポリエチレングリコールモノオレエート(PGO)の1.0重量%の水溶液をポリオキシエチレンオレイルエーテル(POO)(オキシエチレンの繰り返し単位は2である)の1.0重量%のPOO水溶液に代えた以外は、実施例5と同様にして実施例1のフッ素樹脂被覆ワイヤー(イ)にポリオキシエチレンオレイルエーテル(POO)をコーティングした。
このフッ素樹脂被覆ワイヤー(ホ)の乾燥状態の動摩擦抵抗値は6.8mNであり、湿潤状態での動摩擦抵抗値は6.1mNであった。
(比較例1)
【0059】
低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を高分子量フッ素樹脂液に添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂被覆ワイヤー(へ)を作製した。
【0060】
本比較例で作製されたフッ素樹脂被覆ワイヤー(へ)の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。なお、図2に示される走査型電子顕微鏡写真は倍率200倍で撮影されたものである。
また、このフッ素樹脂被覆ワイヤー(へ)の乾燥状態での動摩擦抵抗値は11mNであり、湿潤状態の動摩擦抵抗値は9.2mNであった。
(比較例2)
(1)フッ素樹脂被膜に突起を有するフッ素樹脂被覆ワイヤーの作製
【0061】
高分子量フッ素樹脂液(デュポン社製855N−510)に高分子量フッ素樹脂パウダー(デュポン社製MP1300)を、高分子量フッ素樹脂液の高分子フッ素樹脂固形分に対して20重量%添加して混合し、フッ素樹脂塗布液(D)を調製した。
【0062】
次いで、実施例1のプライマー塗布ワイヤーに対してフッ素樹脂塗布液(D)を、浸漬法によって塗布した後、プライマー塗布ワイヤー上のフッ素樹脂塗布液(D)を常温(25度C)で自然乾燥させた。その後、そのフッ素樹脂塗布液(D)塗布プライマー塗布ワイヤーを550度C〜700度Cに設定された焼成炉で1分間焼成した。そして、そのフッ素樹脂塗布液(D)塗布プライマー塗布ワイヤーを室温まで冷却してフッ素樹脂被覆ワイヤー(ト)を作製した。なお、フッ素樹脂被膜の厚さは約5μmであった。なお、本比較例で作製したフッ素樹脂被覆ワイヤー(ト)は特開2004−130123号公報に開示される方法により作製したものである。
【0063】
このようにして得られたフッ素樹脂被覆ワイヤー(ト)の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。図3の走査型電子顕微鏡写真の通り、フッ素樹脂被覆ワイヤー(ト)のフッ素樹脂被膜には突起が形成されている。なお、フッ素樹脂被覆ワイヤー(ト)の乾燥状態での動摩擦抵抗値は7.8mNであった。
【0064】
次に、日本電子照射サービス(株)においてフッ素樹脂被覆ワイヤー(ト)に30kGyの電子線を照射して滅菌処理を行った。電子線照射後のフッ素樹脂被膜では、図4の走査型電子顕微鏡写真に示されるように、突起が崩壊して失われていた。なお、電子線照射後のフッ素樹脂被覆ワイヤー(ト)の動摩擦抵抗値を測定した結果、その値は12.5mNまで上昇していた(つまり、摺動性は低下していた)。
【符号の説明】
【0065】
11 フッ素樹脂被覆ワイヤー
12 ポリエチレン樹脂製チューブ
13 金属製治具
14 チャック
15 引張試験機のロードセル
17 固定チャック
20 動摩擦抵抗値測定装置
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係るフッ素樹脂被覆物は、従前のフッ素樹脂被覆物よりも摺動性が高く、電子線照射などの滅菌処理が施されてもその摺動性が低下することがないという特徴を有し、例えば、医療用ガイドワイヤーや、医療用ワイヤー、内視鏡、カテーテルなどの医療用器具機材、剃刀刃やカッターなどの日用品、厨房機器など、優れた摺動性や低摩擦抵抗値が必要とされる物に好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に被覆されるフッ素樹脂被膜と
を備え、
前記フッ素樹脂被膜には、凹形状の穴痕が形成されている
フッ素樹脂被覆物。
【請求項2】
前記フッ素樹脂被膜は、平滑面と、複数の前記凹形状の穴痕とが混在している
請求項1に記載のフッ素樹脂被覆物。
【請求項3】
前記凹形状の穴痕の平均密度は、1個/1cm以上である
請求項1または2に記載のフッ素樹脂被覆物。
【請求項4】
医療用部材として用いられる
請求項1から3のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物。
【請求項5】
前記医療用部材は、医療用ワイヤーである
請求項4に記載のフッ素樹脂被覆物。
【請求項6】
放射線照射滅菌処理がなされている
請求項1から5のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物。
【請求項7】
前記放射線照射滅菌処理は、電子線およびガンマー線照射のいずれかによる放射線照射滅菌処理である
請求項6に記載のフッ素樹脂被覆物。
【請求項8】
前記フッ素樹脂被膜は、親水性コーティングされている
請求項1から5のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物。
【請求項9】
請求項1に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法であって、
高分子量フッ素樹脂分散液中に低分子量フッ素樹脂の粒子を混合してフッ素樹脂塗布液を調製する塗布液調製工程と、
前記基材に前記フッ素樹脂塗布液を塗布してフッ素樹脂塗布物を得る塗布物調製工程と、
前記フッ素樹脂塗布物を乾燥して塗布乾燥物を得る乾燥工程と、
前記塗布乾燥物を前記高分子量フッ素樹脂分散液中の高分子量フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱焼成して前記フッ素樹脂被覆物を得る被覆物作製工程と
を備えるフッ素樹脂被覆物の製造方法。
【請求項10】
前記フッ素樹脂被覆物を放射線照射滅菌する滅菌工程をさらに備える
請求項9に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法。
【請求項11】
前記フッ素樹脂被覆物に親水性材料をコーティングするコーティング工程をさらに備える
請求項9または10に記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法。
【請求項12】
前記低分子量フッ素樹脂は、数平均分子量が1000以上1000000以下である
請求項9から11のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法。
【請求項13】
前記低分子量フッ素樹脂は、熱分解開始温度が260度C以上370度C以下である
請求項9から12のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法。
【請求項14】
前記低分子量フッ素樹脂は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂である
請求項9から13のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法。
【請求項15】
前記低分子量フッ素樹脂の粒子は、平均粒子径が0.1μm以上30μm以下である
請求項9から14のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法。
【請求項16】
前記低分子量フッ素樹脂の粒子は、前記高分子量フッ素樹脂の重量に対して5重量%以上60重量%以下、混合される
請求項9から15のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法。
【請求項17】
前記高分子量フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)よりなる群から選択される少なくとも一種のフッ素樹脂、または、前記群から選択される少なくとも二種のフッ素樹脂のブレンド物である
請求項9から16のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−234808(P2010−234808A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52348(P2010−52348)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】