説明

フッ素系ゴム組成物の製造方法

【課題】 フッ素系ゴムと添加剤を混練してフッ素系ゴム組成物を製造するに当たり、作業者の熟練を要せず、混練によるゴム質や添加剤の劣化を招くことなく、さらに、フッ素系ゴムと添加剤の混練を高効率かつ均質に行うことのできる、フッ素系ゴム組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法は、密閉装置内において、フッ素系ゴムを温度110〜150℃、圧力7〜20MPaの超臨界流体で膨潤させる工程(a)と、前記膨潤させたフッ素系ゴムと添加剤を温度80〜100℃、圧力7〜15MPaの超臨界流体雰囲気下で混練する工程(b)と、を必須に含む、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系ゴム組成物の製造方法に関し、詳しくは、フッ素系ゴムに架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、過酸化物などの添加剤を浸透・分散させてなるフッ素系ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムと添加剤との混練は、オープンロールなどが使用されていたが、以下のような問題があった。
すなわち、オープンロールなどを使用する場合、作業者の熟練を必要とする点、および、ゴムへの添加物の分散をゴムにせん断力を加えることにより行うために、せん断力やせん断によって発生する熱によりゴムが変質する点、において問題があった。
前者の熟練の問題は、具体的には、以下のことで起きる。まず、添加剤の添加時期を的確に見極めることが必要であるが、熟練度によってこの見極めに差が生じるのである。加えて、開放系での作業となっているが、作業時の温度や湿度条件などによって、混練中の配合成分の飛散減量度合いが変化するため、添加剤を添加するべき時期が日によって変わり、前記の熟練度による差がさらに大きくなることである。
【0003】
開放系で混練する場合、前述のとおり、配合成分が飛散することなどによって、熟練度によるばらつきを助長する問題があるが、この問題以外にも、飛散することによる歩留まりの低下の問題がある。
以上の問題は、添加剤が液状である場合に特に顕著となるため、例えば、液状の添加剤用いる場合には、シリカなどに含浸させて粉末にした上で用いるようにし、フッ素系ゴムとの混練り作業性を改善する技術が知られている。しかし、この方法では、フッ素系ゴム組成物に本来配合する必要のないシリカなどの第3成分の混入を避けられず、配合の自由度を低下させていた。
【0004】
なお、開放系での上記問題を避けるために、密閉系で混練することも従来行われてきたことであるが、混練の際にせん断熱が生じることに変わりなく、長時間の混練で添加剤が分解・変質する問題があった。
ところで、最近、樹脂やゴムと他成分との混練を超臨界流体雰囲気下で行う技術も知られている。例えば、2種以上の熱可塑性樹脂を溶融状態で混合して熱可塑性樹脂組成物を製造するに当たり、熱可塑性樹脂に超臨界二酸化炭素を添加する技術である(特許文献1参照)。樹脂やゴムと他成分との混練を超臨界流体雰囲気下で行うと、超臨界流体によって、樹脂やゴムが膨潤し、その内部に添加剤が浸透し易くなるのである。
【0005】
しかし、他の物質との馴染み性が非常に低いフッ素系ゴムを用いた場合には、上記従来技術における超臨界流体雰囲気下での混練技術では、添加剤との混練を、効率良く、かつ、十分に均質に行うことはできなかった。その理由は以下のとおりである。
フッ素系ゴム組成物は、他の物質との非粘着性に優れるという特性を有するため、この特性を生かした製品が数多く上市されている。この非粘着性は、原材料であるフッ素系ゴムが他の物質との馴染み性が低いことに由来するのであるが、この馴染み性の低さが添加剤との混練の場合に不利益に働き、フッ素系ゴムと添加剤との均一混練を特に難しくしているからである。
【0006】
そして、混練が不均一であれば、得られるフッ素系ゴム組成物の物理的特性の均質性も低下してしまう。
【特許文献1】特開2002−322288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、フッ素系ゴムと添加剤を混練してフッ素系ゴム組成物を製造するに当たり、作業者の熟練を要せず、混練によるゴム質の劣化や添加剤の変質を招くことなく、さらに、フッ素系ゴムと添加剤の混練を高効率かつ均質に行うことのできる、フッ素系ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。そして、従来採用されていた超臨界流体雰囲気下での混練によっては、フッ素系ゴムと添加剤を十分に均質に混練することができなかったのは、フッ素系ゴムを膨潤させるための条件と、フッ素系ゴムと添加剤を混練させる条件を区別することなく一体的に最適条件を模索していたからであり、このような従来常識に対して、本発明者は、均質な混練を実現するためには、膨潤と混練のそれぞれの工程において別々に最適条件を検討する必要があることを見出すとともに、種々検討の結果、前記膨潤と混練それぞれの最適条件をも見出すに至り、その確認を経て、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法は、密閉装置内において、フッ素系ゴムを温度110〜150℃、圧力7〜20MPaの超臨界流体で膨潤させる工程(a)と、前記膨潤させたフッ素系ゴムと添加剤を温度80〜100℃、圧力7〜15MPaの超臨界流体雰囲気下で混練する工程(b)と、を必須に含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法は、密閉装置内で行うため、外部環境(温度、湿度など)による影響を排除することができ、また、配合成分が外部へ飛散することがないので、歩留まりを向上させる利点がある。
また、超臨界流体によってフッ素系ゴムの膨潤が十分に行われた後に、この膨潤を利用して、添加剤との混練性を高めているので、機械的なせん断力のみに頼っていた従来の方法で生じていたような熟練の問題はなく、添加剤はフッ素系ゴムの膨潤後に一挙に投入することができる。従来のごとき監視負担もない。膨潤により十分に可塑化するために、混練の際に大きなせん断力がかかることはなく、ゴム質や添加剤の変質も生じにくい。
【0011】
さらに、膨潤と混練それぞれにおいて最適な条件を適用することで、フッ素系ゴムと添加剤の混練を、高効率かつ均質に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法について具体的に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔フッ素系ゴム〕
本発明の製造方法に使用できるフッ素系ゴムとしては、特に限定されず、例えば、FKM(フッ化ビニリデンとパーフルオロプロペンの共重合体。四フッ化エチレンをターモノマーとするものを含む。)、FFKM(四フッ化エチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルの共重合体)、TFE−P(テトラフルオロエチレン(TFE)とプロピレン(Pの交互共重合体)、FVMQ(フロロシリコーンゴム)などが挙げられるが、FKMやFFKMなどのパーフルオロ系フッ素ゴム、特にFFKMが好適に挙げられる。
【0013】
〔添加剤〕
本発明の製造方法に使用できる添加剤としては、特に限定されず、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加工助剤、受酸剤、充填剤、着色剤などが挙げられる。さらに、ゴム工業で一般的に用いられる老化防止剤、可塑剤などの各種配合剤が適宜添加される。
なお、添加剤としては、いずれとも分類しにくいものもあるため、一つの化合物が重複して記載されている場合がある。
前記加硫剤としては、例えば、過酸化物加硫の場合、t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロビルカーボネート、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレートなどが用いられる。
【0014】
また、ポリオール系加硫の場合には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒロドキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒロドキシフェニル)ブタンなどのポリヒドロキシ芳香族化合物あるいはそれらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などが用いられる。
前記加硫促進剤としては、過酸化物加硫剤を適用した場合には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチルアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどの多官能性不飽和化合物が挙げられる。また、ポリオール系加硫の場合には、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、8−ベンジル−(5,4,0)−ジアザビシクロウンデセニウムクロライド、有機4級ホスホニウム塩、有機4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0015】
前記加工助剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックスなどが挙げられる。
前記受酸剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
前記充填剤としては、カーボンブラック、タルク、クレー、グラファイト、珪酸カルシウムなどが挙げられる。
前記着色剤としては、例えば、無機顔料として、チタン白、酸化亜鉛、リトポン、硫化亜鉛などの白色顔料;べんがら、カドミウム赤、ベニス赤、光明丹などの赤色顔料;カドミウム黄、バリウム黄、ストロンチウム黄、クロム黄などの黄色顔料;群青、紺青、コバルト青などの青色顔料;ビリジアン、酸化クロム、コバルト緑などの緑色顔料;カーボンブラックなどの黒色顔料などが挙げられる。また、有機顔料として、例えば、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGRなどの黄色顔料;レーキレッドC、レーキレッドD、ベンジジンオレンジ、リソールレッド、パーマネントレッド4R、ブリリアントカーミン6B、ピラゾロンレッド、パーマネントカーミンFB、バルカンオレンジなどの赤色顔料;フタロシアニンブルー、ファストスカイブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などが挙げられる。
【0016】
添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上併用しても良い。2種以上の併用では、予め予備混合しておいても良い。
また、固形状の添加剤よりも液状の添加剤のほうが一般に均一な混練が困難であり、本願発明では、このような液状の添加剤を用いても、十分に均一な混練が可能である。したがって、本発明の製造方法は、前記液状の添加剤を用いる場合に、特に好適である。
なお、液状の添加剤は、前記架橋剤、加硫剤、加硫促進剤などに多い。
〔フッ素系ゴム組成物の製造方法〕
フッ素系ゴム組成物は、前記フッ素系ゴムと前記添加剤とを混練して得られる組成物である。
【0017】
本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法に使用できる装置としては、例えば、図1に示すように、恒温槽からなりその内部に混練機11を備える反応部10と、ボンベ20に入れられた気体を冷却して液化させ混練機11に送り込む送液部30と、混練機11からの排気を調節して混練機11内の圧力を制御する背圧制御部40とからなるものが使用できる。
ボンベ20に入れられた気体は、送液部30内において、冷却部31で冷却して液化されたのち、定量ポンプ32により混練機11内に送り込まれる。
混練機11では、恒温槽である反応部10の温調により所望の温度範囲に適宜調整されるとともに、背圧制御部40の作用により所望の圧力範囲に適宜調整され、所望密度の超臨界流体を発生させることが可能となっている。また、混練機11は、フッ素系ゴムや添加剤などの原料を供給するための供給口を備えている。
【0018】
以下では、本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法を、上記図1を参照しつつ、必須工程である工程(a)と工程(b)を中心に説明する。
<工程(a)>
工程(a)は、フッ素系ゴムを超臨界流体で膨潤させる工程である。
工程(a)を行う際には、まず、原料としてフッ素系ゴムのみを混練機11に供給し、次に、超臨界流体の原料となる二酸化炭素などの気体を送液部30内の冷却部31で液化し、その所望量を定量ポンプ32により混練機11内に送り込み、所定圧力、所定温度に調整した混練機11内で、所望時間、超臨界流体によるフッ素系ゴムの膨潤を行う。
【0019】
ここで、超臨界流体とは、それぞれの物質に固有な臨界温度以上でかつ臨界圧力以上にある流体であり、液体に比べ、大きな拡散係数を有している。比較的容易に超臨界流体を作りうる物質としては、二酸化炭素、アンモニア、メタンなどが挙げられるが、特に、臨界点が低くて容易に作ることができ、かつ、安全性も高い点で、二酸化炭素が好ましい。
工程(a)においては、前記超臨界流体の密度が低すぎるとフッ素系ゴムの膨潤が不十分となり、高すぎると過度に膨潤して後述する工程(b)における混練性が低下するため、このような問題の生じない最適な密度の超臨界流体を生じさせるため、温度および圧力が以下の範囲となるようにする。
【0020】
すなわち、温度110〜150℃、圧力7〜20MPaの範囲に設定する。温度や圧力が前記範囲を上回ると超臨界流体の密度が高くなりすぎ、温度や圧力が前記範囲を下回ると超臨界流体の密度が低くなりすぎ、いずれの場合においても、工程(a)における最適な密度の超臨界流体とならず、前述の問題が生じてしまう。温度120〜150℃、圧力10〜20MPaの範囲に設定するのがより好ましい。
膨潤させる時間としては、例えば、0.5〜5時間とすることが好ましく、0.5〜3時間とするのがより好ましい。膨潤時間が前記範囲であれば、膨潤不足や過度の膨潤を避けられる。
【0021】
<工程(b)>
工程(b)は、前記膨潤させたフッ素系ゴムと添加剤を超臨界流体雰囲気下で混練する工程である。
工程(b)は、工程(a)を終えた後の混練機11に、原料としての添加剤を供給し、そののち、混練を所望時間行う。
超臨界流体としては、前記工程(a)と同様のものを用いることができ、同様の理由で、二酸化炭素を用いることが特に好ましい。
工程(b)においては、前記超臨界流体の密度が低すぎると前記工程(a)後の膨潤状態を十分に維持させることができなくなり、フッ素系ゴムの膨潤が不十分となって添加剤の浸透性・分散性が低下し、高すぎると前記工程(a)後の膨潤状態をさらに進行させてしまい、過剰な膨潤により混練性が低下してしまうほか、超臨界流体中への添加剤の溶解度が高くなりすぎて、超臨界流体を系外に排出する段階で、超臨界流体とともに排出されてしまう問題がある。このような問題の生じない最適な密度の超臨界流体を生じさせるため、温度および圧力が以下の範囲となるようにする。
【0022】
すなわち、温度80〜100℃、圧力7〜15MPaの範囲に設定することが好ましい。温度や圧力が前記範囲を上回ると超臨界流体の密度が高くなりすぎ、温度や圧力が前記範囲を下回ると超臨界流体の密度が低くなりすぎ、いずれの場合においても、工程(b)における最適な密度の超臨界流体とならず、前述の問題が生じてしまう。圧力は7〜10MPaの範囲に設定するのがより好ましい。なお、工程(b)における温度条件を設定するに際しては、添加剤の分解温度以下となるようにするのが好ましい。
混練を行うための装置としては、密閉状態で混練可能であれば、従来公知の混練機を用いることができ、例えば、バンバリーミキサー、押出成型機などが挙げられる。なお、フッ素系ゴムは、超臨界流体により膨潤された状態にあるので、混練の際に、過度にせん断力がかかることはなく、せん断による過大な発熱もない。
【0023】
混練させる時間としては、例えば、1〜10時間であれば必要かつ十分であり、1〜7時間がより好ましい。
<その他の工程>
本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法は、上記工程(a)、工程(b)を必須とするが、その他の工程を含んでいても良い。
例えば、上記工程(b)における混練後に超臨界流体を脱気する工程、練り生地を所望の形状に成型する工程などが挙げられる。
超臨界流体を脱気する工程は、混練機11内の圧力を減圧して、超臨界状態から脱した気体を混練機11から脱気させるようにすれば良い。
【0024】
成型工程は、例えば、混練機11として押出成型機を用いるようにすれば、成型のための押出成型機を別途準備する必要がないので、効率的である。
【実施例】
【0025】
以下では、本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法について、実施例を示しながら、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
図1に示す装置を用い、超臨界流体としては超臨界二酸化炭素を用い、フッ素系ゴムとしてはFFKMを100部用い、添加剤としてはTAIC(トリアリルイソシアヌレート)を1部用いた。
(工程(a))
フッ素系ゴムのみを混練機に投入した。つぎに、混練機に超臨界流体を導入し、130℃、20MPaの条件下で3時間かけて、フッ素系ゴムを超臨界流体で膨潤させた。
【0026】
(工程(b))
工程(a)ののち、混練機に添加剤を投入し、温度を90℃、圧力を8.5MPaに変更したのち、この条件下で6.5時間かけて、フッ素系ゴムと添加剤を混練し、フッ素系ゴム組成物を製造した。
〔実施例2〕
工程(a)の条件を150℃、20MPaの条件下で3時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、フッ素系ゴム組成物を製造した。
〔実施例3〕
フッ素系ゴムとしてFKMを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フッ素系ゴム組成物を製造した。
【0027】
〔比較例1〕
工程(a)の条件を70℃、16MPaの条件下で3時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、フッ素系ゴム組成物を製造した。
〔比較例2〕
工程(b)の条件を70℃、8.5MPaの条件下で6.5時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、フッ素系ゴム組成物を製造した。
〔比較例3〕
工程(b)の条件を70℃、8.5MPaの条件下で3時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、フッ素系ゴム組成物を製造した。
【0028】
〔評価〕
各実施例、比較例について、以下の浸透率、分散性を評価した。
<浸透率>
浸透率は、混練機11に投入したフッ素系ゴムと添加剤の合計重量(A)と、混練後のフッ素系ゴム組成物の重量(B)の実測値から、(B)÷(A)×100(%)として算出した。
<分散性>
分散性は、フッ素系ゴム組成物中の添加剤成分の分布を調べることで評価した。
【0029】
具体的には、フッ素系ゴム組成物における任意の複数の部位に対してFT−IR測定を行い、それぞれの部位でフッ素系ゴムの特定の固有ピークと添加剤の特定の固有ピークの強度比を求め、各部位間の強度比のばらつきを標準偏差として算出した。標準偏差が小さいほどばらつきが小さいことを示す。
<結果>
結果は、表1に示すとおりであった。
【0030】
【表1】

【0031】
上記結果から、本発明のフッ素系ゴム組成物の製造方法にかかる実施例1〜3では、高効率かつ均質に混練が行われていることが分かる。
一方、比較例1〜3では、浸透率が低く、処理後に残存する添加剤の再使用が困難であるために経済的にも不利である。また、ばらつきが大きいので、フッ素系ゴム組成物の品質の点でも本実施例1〜3に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のフッ素系ゴム組成物の製造方法は、例えば、作業者の経験に基づき行われてきた従来の手法に代わる、より安定したフッ素系ゴム組成物の製造方法として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかるフッ素系ゴム組成物の製造方法の1実施形態を示す概略図。
【符号の説明】
【0034】
10 反応部
11 混練機
20 ボンベ
30 送液部
31 冷却部
32 定量ポンプ
40 背圧制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉装置内において、フッ素系ゴムを温度110〜150℃、圧力7〜20MPaの超臨界流体で膨潤させる工程(a)と、前記膨潤させたフッ素系ゴムと添加剤を温度80〜100℃、圧力7〜15MPaの超臨界流体雰囲気下で混練する工程(b)と、を必須に含む、フッ素系ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記フッ素系ゴムがパーフルオロ系フッ素ゴムである、請求項1に記載のフッ素系ゴム組成物の処理方法。
【請求項3】
前記工程(a)および工程(b)の少なくともいずれかにおける超臨界流体が超臨界二酸化炭素である、請求項1または2に記載のフッ素系ゴム組成物の処理方法。
【請求項4】
前記添加剤が液状物質である、請求項1から3までのいずれかに記載のフッ素系ゴム組成物の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−90223(P2010−90223A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259890(P2008−259890)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】