説明

フッ酸廃液処理装置およびその方法

【課題】フッ酸廃液から再利用可能なフッ酸含有水を効率良く回収することができるフッ酸廃液処理装置およびその方法を提供する。
【解決手段】フッ酸を含有するフッ酸廃液を処理するフッ酸廃液処理装置であって、フッ酸廃液をイオン交換樹脂に接触させてフッ素イオンを前記イオン交換樹脂に吸着させることにより、フッ酸廃液からフッ素イオンが除去された処理水を生成すると共に、前記イオン交換樹脂に吸着されたフッ素イオンにアルカリ液を接触させることによって前記イオン交換樹脂を再生し、フッ素のアルカリ塩を含む中和液を生成するイオン交換装置10と、イオン交換装置10で生成された中和液を濃縮することによって濃縮中和液と分離水とを生成する濃縮装置30と、濃縮装置30で生成された濃縮中和液を、イオン交換膜を用いてフッ酸含有水、アルカリ含有水および脱塩水に分離する分離装置40とを備えているフッ酸廃液処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ酸廃液を処理するフッ酸廃液処理装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶などの電子部品の製造工程で排出されるフッ酸廃液から再利用可能なフッ酸含有水を回収する方法として、特許文献1に開示されているような方法が知られている。
【0003】
この特許文献1に開示されているフッ酸廃液処理方法は、図5に示すように、中和工手S10と濃縮工程S11と分離工程S12とで構成されている。このフッ酸廃液処理方法によってフッ酸廃液を処理し再利用可能なフッ酸含有水を回収する方法を以下に説明する。まず、中和工程S10において、水酸化カリウム(KOH)をフッ酸廃液に加えて当該フッ酸廃液を中和し、中和塩であるフッ化カリウム(KF)を含む中和液を生成する。次に、濃縮工程S11において、蒸発型濃縮装置を用いて被濃縮処理液である中和液の水分を蒸発させてフッ化カリウム(KF)を高濃度で含む中和液を生成した後、分離工程S12において、バイポーラ膜分離装置により濃縮された中和液をフッ酸含有水、水酸化カリウム水溶液および脱塩水に分離することにより、再利用可能なフッ酸含有水を回収するというものである。
【特許文献1】特開2002−331292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなフッ酸廃液処理方法によりフッ酸廃液から再利用可能なフッ酸含有水を回収する場合、中和処理が施されたフッ酸廃液の全量を濃縮工程において濃縮処理するため、濃縮工程において多大なエネルギーと時間を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、フッ酸廃液から再利用可能なフッ酸含有水を効率良く回収することができるフッ酸廃液処理装置およびその方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、フッ酸を含有するフッ酸廃液を処理するフッ酸廃液処理装置であって、フッ酸廃液をイオン交換樹脂に接触させてフッ素イオンを前記イオン交換樹脂に吸着させることにより、フッ酸廃液からフッ素イオンが除去された処理水を生成すると共に、前記イオン交換樹脂に吸着されたフッ素イオンにアルカリ液を接触させることによって前記イオン交換樹脂を再生し、フッ素のアルカリ塩を含む中和液を生成するイオン交換装置と、前記イオン交換装置で生成された中和液を濃縮することによって濃縮中和液と分離水とを生成する濃縮装置と、前記濃縮装置で生成された濃縮中和液を、イオン交換膜を用いてフッ酸含有水、アルカリ含有水および脱塩水に分離する分離装置とを備えているフッ酸廃液処理装置により達成される。
【0007】
このフッ酸廃液処理装置において、前記濃縮装置で生成された分離水と前記分離装置で生成されたアルカリ含有水及び脱塩水との混合液が貯留される混合槽を更に備えており、前記混合槽に貯留された混合液は、前記イオン交換装置に導入されていることが好ましい。
【0008】
また、前記混合槽には、純水が供給される純水供給手段、および、純水が供給された前記混合液のアルカリ濃度を検出する濃度検出手段が設けられていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の上記目的は、フッ酸を含有するフッ酸廃液を処理するフッ酸廃液処理方法であって、フッ酸廃液をイオン交換樹脂に接触させてフッ素イオンを前記イオン交換樹脂に吸着させることにより、フッ酸廃液からフッ素イオンが除去された処理水を生成し、該処理水を排水処理する処理水排水工程と、前記イオン交換樹脂に吸着されたフッ素イオンにアルカリ液を接触させることによって前記イオン交換樹脂を再生し、フッ素のアルカリ塩を含む中和液を生成する再生工程と、前記再生工程で生成された中和液を濃縮することによって濃縮中和液と分離水とを生成する濃縮工程と、前記濃縮工程で生成された濃縮中和液を、イオン交換膜を用いてフッ酸含有水、アルカリ含有水および脱塩水に分離する分離工程とを備えているフッ酸廃液処理方法により達成される。
【0010】
このフッ酸廃液処理方法において、前記再生工程は、前記濃縮工程で生成された分離水と前記分離工程で生成されたアルカリ含有水及び脱塩水との混合液を、前記イオン交換樹脂の再生に利用する工程を含むことが好ましい。
【0011】
また、前記再生工程は、前記混合液に純水を供給することにより、純水が供給された前記混合液のアルカリ濃度を調整する濃度調整工程を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フッ酸廃液から再利用可能なフッ酸含有水を効率良く回収することができるフッ酸廃液処理装置およびその方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るフッ酸廃液処理装置について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るフッ酸廃液処理装置の概略構成図である。図1に示すように、フッ酸廃液処理装置1は、イオン交換装置10、再生排出液槽20、濃縮装置30、分離装置40および再生液槽50を備えている。
【0014】
イオン交換装置10は、陰イオン交換樹脂からなるイオン交換樹脂層11を内部中央部に備えている。このイオン交換装置10には、フッ酸廃液供給管路61、再生液供給管路62、洗浄液供給管路63、処理水排出管路64、再生排出液管路65および洗浄排出液管路66が接続している。
【0015】
フッ酸廃液供給管路61は、フッ酸廃液をイオン交換装置10に導く管路である。再生液供給管路62は、後述するイオン交換樹脂層11の再生用のアルカリ液を再生液槽50から当該イオン交換装置10に導く管路である。洗浄液供給管路63は、イオン交換樹脂層11の再生処理終了後に当該イオン交換樹脂層11を洗浄する洗浄液を供給する管路である。処理水排出管路64は、フッ酸廃液供給管路61から供給されたフッ酸廃液がイオン交換膜層11を通過した後、外部に排出されるように接続している。再生排出液管路65は、再生液槽50から供給されたアルカリ液がイオン交換膜層11を通過した後、再生排出液槽20に導かれるように接続している。洗浄排出液管路66は、洗浄液供給管路63から供給された洗浄液がイオン交換膜層11を通過した後、再生排出液槽20に導かれるように接続している。
【0016】
再生排出液槽20は、後述するように、再生排出液管路65を介してイオン交換装置10から導かれるフッ素のアルカリ塩を含む中和液と、洗浄排出液管路66を介してイオン交換装置10から導かれるフッ素のアルカリ塩等を含む洗浄液とから構成される中和液を貯留するタンクである。再生排出液槽20には、内部に貯留される中和液を濃縮装置30に導く中和液供給管路67が接続している。
【0017】
濃縮装置30は、再生排出液槽20から供給される中和液の濃縮処理を行い、濃縮中和液と水とを生成する装置である。本実施形態においては、濃縮装置30として蒸発型濃縮装置を採用している。この蒸発型濃縮装置は、再生排出液槽20から導かれる中和液を取り入れて水分を蒸発凝縮させて濃縮中和液を生成する装置であり、図2に示すように、蒸発室31および間接式加熱器32を有する蒸発器33と、凝縮装置34とを備えている。蒸発室31の上部と凝縮装置34とは、水蒸気管路68を介して接続している。
【0018】
蒸発室31内の底部は、中和液供給管路67を介して再生排出液槽20から供給される中和液を貯留する貯留部を構成しており、蒸発室31内の上部には、蒸発室31内の底部に貯留されている中和液を循環ポンプ69a付きの循環管路69を介して後述する伝熱管35の外表面に散布する散布ノズル36が設けられている。
【0019】
循環管路69の途中には、中和液の濃縮処理終了時において、蒸発室31内の底部に溜まった濃縮中和液を分離装置40に導く濃縮液供給管路74が接続している。
【0020】
間接式加熱器32は、蒸発室31内に設けられる複数の伝熱管35と、これら複数の伝熱管35の両端にそれぞれ接続されている第1のヘッダ37a、第2のヘッダ37bとを備えている。第1のヘッダ37aには、伝熱管35の加熱用蒸気を導く蒸気管路70が接続している。また、第2のヘッダ37bには、伝熱管35の熱交換作用により生成した凝縮水を排出するドレン管路71が接続している。
【0021】
凝縮装置34は、冷却水供給管路72から導かれた冷却水によって、蒸発室31から水蒸気管路68を介して導かれた水蒸気を冷却して凝縮水を生成する装置である。冷却水としては、図示しない冷却塔等で冷却された工業用水や冷凍装置で冷却された冷水(チラー水)等を使用できる。また、凝縮装置34には、生成された凝縮水を再生液槽50に導く凝縮水管路73が接続している。
【0022】
分離装置40は、濃縮装置30から濃縮液供給管路74を介して供給された濃縮中和液を分離する装置であり、例えば、バイポーラ膜分離装置である。このバイポーラ膜分離装置は、図3に示すように、一対のアニオン交換膜41及びカチオン交換膜42により中和塩室43を形成し、中和塩室43の反対側においてアニオン交換膜41及びカチオン交換膜42とそれぞれ対向するようにバイポーラ膜44,45を配置することにより構成されており、一対の電極(図示せず)を備える電気透析装置である。中和塩室43は、濃縮装置30の濃縮液排出管路74が一端側に接続されており、中和塩室43を通過後の脱塩水を排出する脱塩水排出管路75を他端側に備えている。アニオン交換膜41とバイポーラ膜44との間、及び、カチオン交換膜42とバイポーラ膜45との間には、純水が供給される純水供給管76が接続している。また、後述するように、この分離装置40の作用により生成されるフッ酸含有水を回収するためのフッ酸含有水排出管路77が接続している。また、分離装置40の作用により生成されるアルカリ含有水および脱塩水は、アルカリ含有水排出管路78および脱塩水排出菅75を介して再生液槽50に導かれる。分離装置40として、本実施形態では1つのセルのみを示しているが、通常は複数のセルが積層されて構成される。
【0023】
再生液槽50は、イオン交換樹脂層11の再生用のアルカリ液を貯留するタンクである。この再生液槽50には、濃縮装置30の作用により生成された凝縮水が導かれる凝縮水管路73が接続している。また、分離装置40の作用により生成されたアルカリ含有水および脱塩水がそれぞれ導かれるアルカリ含有水排出管路78および脱塩水排出管路75が接続している。再生液槽50は、上述の凝縮水、アルカリ含有水および脱塩水の混合液を貯留する混合槽としても機能する。
【0024】
このように構成されたフッ酸廃液処理装置1を用いて、フッ酸廃液を処理し、再利用可能なフッ酸含有水を得る方法を図1の概略構成図および図4のフッ酸廃液処理方法のフローチャートを参照しながら以下に説明する。フッ酸廃液処理方法は、図4に示すように、基本的に処理水排出工程S1と再生工程S2と濃縮工程S3と分離工程S4とにより構成されている。また、本実施形態に係るフッ酸廃液処理装置1においては、再生液槽50に貯留されるアルカリ液として水酸化カリウム(KOH)水溶液を使用し、洗浄液供給管路63から供給される洗浄液として純水を使用する。
【0025】
処理対象となるフッ酸廃液は、例えば電子部品の製造工程でシリコンの酸化被膜を除去するための洗浄工程に使用された後のフッ酸廃液など、半導体や液晶などの製造工程などで排出される20ppm〜500ppm程度の希薄濃度のフッ酸廃液が好適である。
【0026】
まず、イオン交換装置10において処理水排出工程S1が行われる。すなわち、フッ酸廃液をイオン交換装置10に供給し、フッ酸廃液に含まれるフッ素イオン(F)をイオン交換樹脂により吸着除去する。フッ酸廃液供給管路61を介してイオン交換装置10に供給されるフッ酸廃液は、イオン交換樹脂層11を通過した後、処理水排出管路64に導かれる。イオン交換樹脂層11において、フッ酸廃液がイオン交換樹脂と接触することにより、フッ酸廃液に含まれるフッ素イオン(F)は、イオン交換作用によって当該イオン交換樹脂に吸着されてフッ酸廃液から除去される。また、フッ酸廃液に含まれる水素イオン(H)は、イオン交換作用によりイオン交換樹脂から遊離する水酸化イオン(OH)と結合して水となる。このように、イオン交換装置10に導かれたフッ酸廃液は、イオン交換樹脂のイオン交換作用によりフッ素イオン(F)が除去され、例えばフッ酸濃度が1ppm以下のフッ酸をほとんど含まない処理水となって処理水排出菅路64を介して外部に排水処理される。
【0027】
次に、イオン交換樹脂層11がフッ素イオン(F)で飽和し、フッ素イオン(F)の除去ができなくなると、イオン交換樹脂層11の再生を行う(再生工程S2)。再生は、イオン交換樹脂の再生用のアルカリ液である水酸化カリウム(KOH)水溶液を再生液槽50からイオン交換装置10に供給し、イオン交換樹脂層11のイオン交換樹脂に吸着されているフッ素イオン(F)に水酸化カリウム(KOH)水溶液を接触させることにより行う。この再生処理において、水酸化カリウム(KOH)水溶液中のカリウムイオン(K)と、イオン交換樹脂層11に吸着されているフッ素イオン(F)とが結合してなるフッ素のアルカリ塩であるフッ化カリウム(KF)を含む中和液が生成される。フッ化カリウム(KF)は、水によく溶解するため、中和液中においてフッ素イオン(F)およびカリウムイオン(K)の状態で存在する。このようにして生成されたフッ化カリウム(KF)を含む中和液は、再生排出液管路65を介して再生排出液槽20に導かれる。
【0028】
再生工程S2終了後、洗浄液供給管路63を介してイオン交換装置10に供給される洗浄液(純水)をイオン交換樹脂層11に通過させることにより、イオン交換樹脂層11の洗浄を行う。この洗浄工程により、イオン交換装置10に滞留しているフッ化カリウム(KF)や水酸化カリウム(KOH)水溶液を洗い流す。洗浄後の洗浄液は、フッ化カリウム(KF)と水酸化カリウム(KOH)が溶解する中和液となる。洗い流されたフッ化カリウム(KF)と水酸化カリウム(KOH)とを含む洗浄液(中和液)は、洗浄排出液管路66を介して再生排出液槽20に導かれる。
【0029】
次に、再生排出液槽20に貯留されている中和液を濃縮装置に導き、濃縮処理を行う(濃縮工程S3)。濃縮工程S3においては、まず、中和液供給管路67を介して、再生排出液槽20に貯留されるフッ化カリウム(KF)と水酸化カリウム(KOH)とを含む中和液を濃縮装置30の蒸発室31内の底部に供給する。蒸発室31内の底部に収容された中和液(被濃縮処理液)は、循環ポンプ69aの作用により循環管路69を通過して散布ノズル36に供給される。散布ノズル36に供給された中和液は、当該散布ノズル36により間接式加熱器32における各伝熱管35の外表面に散布される。各伝熱管35の外表面に散布された中和液を構成する水の一部は、蒸気管路70を介して第1のヘッダ37aに供給されて各伝熱管35内を挿通する蒸気により加熱されて蒸発し、水蒸気となる。各伝熱管35の外表面において蒸発しなかった中和液は、各伝熱管35の外表面に沿って流下して蒸発室31内の底部に貯留されている中和液に戻り、再び循環管路69を通過して散布ノズル36に供給される。
【0030】
一方、間接式加熱器32における各伝熱管35の外表面で加熱されて生成した水蒸気は、蒸発室31上部に設けられる水蒸気管路68を介して凝縮装置34に導かれ、冷却水管路72から導かれる冷却水で冷却されて凝縮水となる。この凝縮水は、イオン交換樹脂層11を再生するアルカリ液を構成する水として再利用することが可能であり、凝縮水管路73を介して混合槽としても機能する再生液槽50に導かれる。
【0031】
このようなプロセスを連続して行うことにより、蒸発室31内の中和液の水分が除去され、濃縮中和液が生成される。なお、各伝熱管35内を通過する蒸気は、各伝熱管35の外表面に散布される混合液との熱交換により熱を奪われて液化し凝縮水となって伝熱管35内に溜まる。この凝縮水は、蒸気の流れに押されて第2のヘッダ37bの底部に滞留し、ドレン管路71を介して外部に排出される。
【0032】
そして、濃縮装置30において所望の濃度まで濃縮された濃縮中和液を濃縮液供給管路74を介して分離装置40に供給し、当該濃縮中和液をアルカリ含有水、脱塩水およびフッ酸含有水に分離する(分離工程S4)。濃縮液供給管路74を介して分離装置40に供給されたフッ化カリウム(KF)と水酸化カリウム(KOH)とを含む濃縮中和液は、図3に示すように、中和塩室43においてカリウムイオン(K)はカチオン交換膜42を透過し、フッ素イオン(F)はアニオン交換膜41を透過する。一方、純水供給管路76を介して供給された純水は、バイポーラ膜44,45において水素イオン(H)や水酸化イオン(OH)などに解離されて、水酸化イオン(OH)がカリウムイオン(K)と結合して水酸化カリウム(KOH)を含むアルカリ含有水が生成され、水素イオン(H)がフッ素イオン(F)と結合してフッ化水素(HF)を含むフッ酸含有水が生成される。中和塩室43における濃縮中和液は、カリウムイオン(K)およびフッ素イオン(F)が除去されて脱塩水となる。
【0033】
アルカリ含有水およびフッ酸含有水は、それぞれアルカリ含有水排出管路78およびフッ酸含有水排出管路77を介して排出される。中和塩室43を通過してカリウムイオン(K)およびフッ素イオン(F)が除去された後の脱塩水は、脱塩水排出管路75を介して排出される。
【0034】
アルカリ含有水排出管路78を介して排出されたアルカリ含有水は、混合槽としても機能する再生液槽50に導かれてイオン交換樹脂層11の再生用のアルカリ液として再利用することができる。また、脱塩水排出管路75を介して排出された脱塩水は、水酸化カリウム(KOH)を含むアルカリ含有水であり、混合槽としても機能する再生液槽50に導かれてイオン交換樹脂層11の再生用のアルカリ液として再利用することができる。
【0035】
フッ酸含有水排出管路77を介して排出されるフッ酸含有水の濃度は、例えば4%程度であり、金属の酸洗用途など各種用途に再利用することができる。
【0036】
このように、本実施形態に係るフッ酸廃液処理装置1によれば、イオン交換装置10のイオン交換樹脂層11においてフッ酸廃液からフッ素イオン(F)のみを除去し、フッ酸廃液の水分を排水処理した後、この除去したフッ素イオン(F)をイオン交換樹脂層11の再生用のアルカリ液中にフッ素のアルカリ塩として溶解させた中和液を濃縮装置30により濃縮処理するため、濃縮処理に供される被濃縮処理液の量を低減することができる。この結果、濃縮装置30の作動負荷は低減され、濃縮装置30を駆動するのに要するエネルギーを削減できると共に、濃縮処理における処理時間を短縮することができ、フッ酸廃液から再利用可能なフッ酸含有水を効率良く回収することができる。
【0037】
この点に関し、発明者らは、イオン交換装置10にイオン交換樹脂(アンバーライトIRA410)を1200リットル充填したフッ酸廃液処理装置1を用い、フッ素濃度が20ppmである希薄フッ酸廃液の処理を実際に行った。イオン交換装置10に供給されるフッ酸廃水量は、20m/hrである。イオン交換樹脂層11を通過し処理水排出管路64から排出される処理水のフッ素イオン濃度は1ppm以下であった。
【0038】
フッ酸廃水のイオン交換装置10への供給を20時間行った後、イオン交換樹脂層11の再生を行った。再生に用いられるアルカリ液は、1N(1mol/リットル)の水酸化カリウム水溶液であり、5m/hrの割合で36分間再生処理を行った。再生処理終了後、純水による洗浄を12.5m/hrの割合で30分間行った。これらの再生処理及び洗浄処理により、再生排出液槽20に導かれたフッ化カリウムと水酸化カリウムとの中和液の量は10mであり、この中和液のフッ素濃度は1g/リットル、カリウム濃度は11.5g/リットルであった。
【0039】
次に、この中和液(被濃縮処理液)を濃縮装置30によりカリウム基準で1.6N(1.6mol/リットル)まで濃縮した後、分離装置40に供給し、フッ酸含有水、水酸化カリウム水溶液(アルカリ含有水)および脱塩水に分離した。分離装置40に接続されるフッ酸含有水排出管路77から回収されたフッ酸含有水のフッ素濃度は、約4%であり、金属の酸洗用途などの各種用途に再利用可能なフッ酸含有水を得ることができた。
【0040】
このように、イオン交換装置においてフッ酸廃液からフッ素イオンを除去した後、イオン交換樹脂の再生処理にて生成されたフッ素のアルカリ塩を含む中和液を濃縮処理するため、濃縮処理に供される被濃縮処理液の量を大幅に低減することができた。この結果、濃縮装置の駆動に要するエネルギーを削減することができると共に、濃縮処理に要する時間を短縮することができ、効率良くフッ酸廃液の処理を行うことができた。
【0041】
また、本実施形態に係るフッ酸廃液処理装置1によれば、濃縮装置30において生成される凝縮水と、分離装置40において生成されるアルカリ含有水および脱塩水との混合液は、イオン交換樹脂層11の再生用のアルカリ液として再利用することができ、廃棄物を発生させることなくフッ酸廃液の処理を行うことができる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、イオン交換樹脂層11の再生用のアルカリ液として水酸化ナトリウムを採用してもよい。
【0043】
また、本実施形態において、再生液槽50に純水を供給する図示しない純水供給手段を接続すると共に、再生液槽50に貯留されるアルカリ液のアルカリ濃度を検出する濃度検出手段を設ける構成を採用してもよい。このような構成により、分離装置40から供給されるアルカリ含有水及び脱塩水、並びに凝縮装置34から供給される凝縮水から成るアルカリ性の混合液に純水を適宜補給して、当該混合液におけるアルカリ濃度を調整することができる(濃度調整工程)。この結果、イオン交換樹脂層11の再生用のアルカリ液として再利用される上記混合液のアルカリ濃度を、イオン交換樹脂層11の再生に適した濃度に設定することができ、効率良くイオン交換樹脂層11の再生処理を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態において、分離装置40において生成されたフッ酸含有水を回収するフッ酸含有水排出管路77を、例えば、別途設ける濃縮装置に接続して、回収されたフッ酸含有水を再度濃縮するように構成してもよい。このような構成を採用することにより、より濃度の高いフッ酸含有水を得ることができる。
【0045】
また、本実施形態においては、濃縮工程S3において、濃縮装置30として蒸発型濃縮装置を用いて濃縮処理を蒸発法により行うように構成しているが、このような構成に特に限定されるものではなく、例えば、水分子のみを透過する半透膜を用いる逆浸透膜法やイオン交換膜と電気とを利用する電気透析膜法を採用して濃縮処理を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るフッ酸廃液処理装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すフッ酸廃液処理装置を構成する濃縮装置を示す概略構成図である。
【図3】図1に示すフッ酸廃液処理装置を構成する分離装置を示す概略構成図である。
【図4】図1に示すフッ酸廃液処理装置の作動を説明するためのフローチャートである。
【図5】従来のフッ酸廃液処理方法の作動を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1 フッ酸廃液処理装置
10 イオン交換装置
11 イオン交換樹脂層
20 再生排出液槽
30 濃縮装置
31 蒸発室
32 間接式加熱器
33 蒸発器
34 凝縮装置
40 分離装置
41 アニオン交換膜
42 カチオン交換膜
43 中和塩室
44,45 バイポーラ膜
50 再生液槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ酸を含有するフッ酸廃液を処理するフッ酸廃液処理装置であって、
フッ酸廃液をイオン交換樹脂に接触させてフッ素イオンを前記イオン交換樹脂に吸着させることにより、フッ酸廃液からフッ素イオンが除去された処理水を生成すると共に、前記イオン交換樹脂に吸着されたフッ素イオンにアルカリ液を接触させることによって前記イオン交換樹脂を再生し、フッ素のアルカリ塩を含む中和液を生成するイオン交換装置と、
前記イオン交換装置で生成された中和液を濃縮することによって濃縮中和液と分離水とを生成する濃縮装置と、
前記濃縮装置で生成された濃縮中和液を、イオン交換膜を用いてフッ酸含有水、アルカリ含有水および脱塩水に分離する分離装置とを備えているフッ酸廃液処理装置。
【請求項2】
前記濃縮装置で生成された分離水と前記分離装置で生成されたアルカリ含有水及び脱塩水との混合液が貯留される混合槽を更に備えており、
前記混合槽に貯留された混合液は、前記イオン交換装置に導入されている請求項1に記載のフッ酸廃液処理装置。
【請求項3】
前記混合槽には、純水が供給される純水供給手段、および、純水が供給された前記混合液のアルカリ濃度を検出する濃度検出手段が設けられている請求項2に記載のフッ酸廃液処理装置。
【請求項4】
フッ酸を含有するフッ酸廃液を処理するフッ酸廃液処理方法であって、
フッ酸廃液をイオン交換樹脂に接触させてフッ素イオンを前記イオン交換樹脂に吸着させることにより、フッ酸廃液からフッ素イオンが除去された処理水を生成し、該処理水を排水処理する処理水排水工程と、
前記イオン交換樹脂に吸着されたフッ素イオンにアルカリ液を接触させることによって前記イオン交換樹脂を再生し、フッ素のアルカリ塩を含む中和液を生成する再生工程と、
前記再生工程で生成された中和液を濃縮することによって濃縮中和液と分離水とを生成する濃縮工程と、
前記濃縮工程で生成された濃縮中和液を、イオン交換膜を用いてフッ酸含有水、アルカリ含有水および脱塩水に分離する分離工程とを備えているフッ酸廃液処理方法。
【請求項5】
前記再生工程は、前記濃縮工程で生成された分離水と前記分離工程で生成されたアルカリ含有水及び脱塩水との混合液を、前記イオン交換樹脂の再生に利用する工程を含む請求項4に記載のフッ酸廃液処理方法。
【請求項6】
前記再生工程は、前記混合液に純水を供給することにより、純水が供給された前記混合液のアルカリ濃度を調整する濃度調整工程を更に含む請求項5に記載のフッ酸廃液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−341181(P2006−341181A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168526(P2005−168526)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000143972)株式会社ササクラ (138)
【Fターム(参考)】