説明

フライオイル用ろ過装置

【課題】小さな設置スペースで、使用済みのフライオイルのろ過を行うことが可能であり、しかも高温状態のままろ過を行うことが可能な、使用済みフライオイルのろ過装置を提供する。
【解決手段】筒状胴壁20と筒状胴壁20の下端を閉じている底壁22とからなるろ過容器11、および筒状胴壁20の上端に着脱自在に設けられた蓋材13とを有しているフライオイル用ろ過装置において、ろ過容器11の底壁22にはろ液排出用の開口26が形成されており、この底壁22上にろ過シート28が設けられ、蓋材13には、フライヤーに設けられている使用済みフライオイルの排出管に接続され且つ使用済みフライオイルをろ過容器11内に導入するための導入管50が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのフライオイルを再利用するために使用するろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷら油、揚げ油等のように加熱して使用されるフライオイルは、使用後にろ過を行って老化または劣化成分や揚げかすなどの不要成分を除去し、再利用されている。また、使用済みのフライオイルに各種の精製剤を加えて老化または劣化成分などの吸着・除去が行われる場合もあり、このような精製剤も上記のろ過によって取り除かれる。
【0003】
上記のろ過方法として、従来、使用済みのフライオイルを金網およびろ紙を通し、ろ液(再生オイル)を所定の受け器に回収するという方法が一般に採用されている(特許文献1参照)。
【0004】
上記のろ過方法は、例えば柄杓などで使用済みのフライオイルを、金網を通じて供給するものであることから理解されるように、一般に家庭で採用されるものであり、多量にフライオイルを使用する業務用としてはほとんど採用されていない。
【0005】
業務用に使用されるフライオイルのろ過方法の一つである、動力を使用しない重力濾過方式としては、フライオイルが使用されるフライヤー(調理器)の下にフライオイル受け器を設け、この受け器に使用済みのフライオイルを一旦回収し、この受け器に収容された使用済みフライオイルをろ紙を備えたろ過器に導入し、ろ過器から排出されるろ液(再生油)を下方の受け容器に回収するという方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−23652
【特許文献2】特開平7−265610
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2で開示されているろ過方法は多量のフライオイルを使用する業務用には適しているが、使用済みのフライオイルを受ける受け器、ろ過器及び再生油を受ける受け容器の三物品を必須とし、これらの物品はいずれも容積が大きく、このためろ過に必要なスペースが極めて大きく、狭い厨房などでの使用が困難であるという問題があった。
また、受け器に回収された使用済みフライオイルは非常に高温であるため、これをろ過器に導入するには、高温のフライオイルを受け容器からろ過器に人手で移し替える危険作業が必要となっていた。一方、フライオイルが低温になるまで待つには長時間を要し、今度は労働時間が長くなるという問題もあった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、小さな設置スペースで、使用済みのフライオイルのろ過を行うことが可能であり、しかも高温状態のままろ過を行うことが可能な、使用済みフライオイルのろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、筒状胴壁と該筒状胴壁の下端を閉じている底壁とからなるろ過容器、および該筒状胴壁の上端に着脱自在に設けられた蓋材とを有しているフライオイル用ろ過装置において、
前記ろ過容器の底壁にはろ液排出用の開口が形成されており、該底壁上にろ過シートが設けられており、
前記蓋材には、フライヤーに設けられている使用済みフライオイルの排出管が接続され、かつ、使用済みフライオイルを前記ろ過容器内に導入するための導入管が設けられていることを特徴とするフライオイル用ろ過装置が提供される。
本発明のろ過装置においては、前記ろ過シート上にフライオイル精製用粒状物が設けられ、該粒状物が収容されている空間を閉じるようにメッシュ板が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のろ過装置では、使用済みのフライオイルがフライヤー(加熱調理器)から直接ろ過器に供給されるため、このフライオイルが低温に冷却されるまで待機する必要が無く、高温のままろ過を行うことができる。
また、高温のままろ過を行うことができるため、フライオイル中にラードなどの常温固形の成分が含まれている場合にも、何ら支障なくろ過を行うことができる。
さらに、このろ過装置はフライヤーから排出される使用済みフライオイルの受け器を設ける必要が無く、フライヤー本体下部の空きスペースの範囲内で使用可能なため、小さな設置スペースでろ過を行うことが可能であり、狭い厨房でも容易にろ過を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のろ過装置をフライヤー及びろ液受け容器とともに示す概略側面図。
【図2】図1のろ過装置を構成するろ過容器と蓋材とを示す側断面図。
【図3】図1のろ過装置に使用されているろ過容器の上面図。
【図4】図1のろ過装置に使用されている押さえリングの平面図。
【図5】図1のろ過装置に使用されているメッシュ板の平面図。
【図6】図1のろ過装置に使用されている蓋材の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、全体として1で示す本発明のろ過装置は、フライヤー3の下部に配置され、また、このろ過装置1の下側にはろ液受け容器5が配置される。
【0013】
すなわち、フライヤー3では天ぷら油や揚げ油などのフライオイルが収容されてから加熱による調理が行われ、調理後の使用済みフライオイルはフライヤー3の下部に設けられている排出管7から排出される。この排出管7にろ過装置1が接続されており、排出管7から排出された使用済みフライオイルがろ過装置1によってろ過され、そのろ液(再生油)が受け容器5に回収され、再利用に供される。
【0014】
図2及び図3において、図1に示されている本発明のろ過装置1は、ろ過容器11と蓋材13とを備えている。
【0015】
ろ過容器11は、筒状胴壁20と、底壁22とからなっている。筒状胴壁20の上端には蓋材13を安定に保持するために外方に突出した水平フランジ24が適当な間隔で複数形成されている。
また、底壁22にはろ液排出用の開口26が多数形成されている。
【0016】
上記のろ過容器11の内部には、ろ過シート28が底壁22上に配置されている。
【0017】
ろ過シート28は、ろ紙やろ布等の公知のろ過材であってよく、このろ過シート28中には必要により、活性炭等の吸着材が充填されていてもよいし、複数のろ過シートが重ねて配置され、その間に各種吸着材が充填されていてもよい。
【0018】
また、このろ過シート28を安定に位置固定するために、この周縁部は押さえリング30によって押さえつけられている。この押さえリング30は、その外径が筒状胴壁20の内径とほぼ同程度の大きさであり、できるだけ大きな外径のろ過シート28を装填し、その押さえを効果的に行いうるようになっている。また、この押さえリング30の上面には、このリング30の装着及び脱着を容易に行うことができるように、互いに対向する位置に取手32、32が設けられている。図の例では、一方の取手32が棒状であり、他方が逆U字型になっており、これらの取手32,32を手で持って押さえリング30の装着や脱着を容易に行い得るようになっている。
さらに、図4に示されているように、この押さえリング30の内部には、強度を高め且つろ過シート28の押さえを補強するために、ブリッジ34、34が互いに直交するように延びている。
【0019】
図2及び図5を参照して、上述した押さえリング30の上には、メッシュ板36が載置されている。すなわち、ろ過シート28の上には、各種の精製剤粒状物(例えば、使用済みフライオイルに含まれる老化または劣化成分などを吸着・除去するための剤)を設けることができ、このような精製剤粒状物の飛散や拡散を有効に防止することができる。したがって、このメッシュ板の開口の大きさは、使用される精製剤粒状物の通過を抑制しうる程度の大きさである。
尚、上記のような精製剤粒状物の例としては、例えば二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸性白土、活性白土、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、珊瑚粉、珪藻土、活性炭、炭酸マグネシウム等を1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもでき、具体的にはミズカライフ(水澤化学製)、SYLOPUTE(富士シリシア化学製)、トミタFA(富田製薬製)等を挙げることができる。
【0020】
また、上述した押さえリング30及びメッシュ板36がろ過容器11内に安定に保持されるように、筒状胴壁20の内面には複数の突起38が設けられており、この突起38が通るように、押さえリング30及びメッシュ板36には、それぞれ切り欠き40が外周縁に設けられている。また、メッシュ板36の外周縁には、押さえリング30の取手32が通るような切り欠き42も設けられている。すなわち、このろ過容器11の内部にろ過シート28を底壁上に装着した後、押さえリング30を、突起38を通してろ過シート28上に配置し、さらにメッシュ板36を突起38及び取手32を通して押さえリング30上に配置する。
【0021】
さらに、図2と共に図6を参照して、蓋材13の中心部分には、ろ過すべき使用済みフライオイルをろ過容器11内に導入するための導入管50が設けられており、この導入管50の上端には、カップリング51が設けられている。即ち、このカップリング51により、フライヤー3の排出管7に、導入管50が接続される構造となっている。
【0022】
また、蓋材13の外周縁には、適当な間隔で複数の係合用フランジ53が形成されている。この係合用フランジ53は、それぞれが、前述したろ過容器11の筒状胴壁20の上端に形成されている水平フランジ24の間に位置し得るような大きさ及び間隔で形成されているものであり、図2に示されているように、コの字型の断面を有しており、その内部の上方部分(下方部分でもよい)には、シール用のOリング55が設けられている。
【0023】
即ち、上記の蓋材13は、係合用フランジ53が筒状胴壁20の上端から外方に延びている水平フランジ24の間の部分に位置するようにしてろ過容器11に被せられ、次いで、この蓋材13を回転せしめ、係合用フランジ53の凹部内に水平フランジ24を侵入させる。この状態で、上記のシール用のOリング55が蓋材13の内面と密着することとなり、これにより、ろ過容器11内の密封性が確保される。
【0024】
上記のようにして蓋材13がろ過容器11に取り付けられた後は、先に述べたように、カップリング51を用いてフライヤー3の排出管7に蓋材13の導入管50を接続する。このようにして本発明のろ過装置1を配置した後、図1に示されているように、このろ過装置1の下方にろ液受け容器5を配置し、この状態で、排出管7から使用済みフライオイルの排出を開始し、このフライオイルをろ過容器11内に導入し、精製剤粒状物による吸着処理及びろ過シート28を通してのろ過を行い、これにより、老化または劣化成分や揚げかすなどの不要分が除去されたろ液がろ液受け容器5に回収される。このようにしてろ液受け容器5に回収されたろ液は、フライオイルとしてフライヤー3に供給されて再利用されるわけである。
【0025】
上述した本発明のろ過装置1には、使用済みのフライオイルがフライヤー3から直接供給されるため、加熱調理直後の高温の使用済みフライオイルを別の容器等を用いることなく、そのままろ過処理することができる。従って、このフライオイルが低温になるまでの待機時間が全く不要であり、極めて効率的にろ過処理を行うことが可能であり、さらには、フライヤー3の下部にろ過装置1とろ液受け容器5とを配置してろ過を行うことができるため、設置スペースの観点からも、このろ過装置1は業務用として極めて優れている。また、使用済みフライオイルを高温のままろ過処理を行うことができるため、このフライオイル中に常温固体の成分(例えばラード)が含まれているような場合にも、極めて効率よくろ過を行うことができ、このような成分を取り除くことなく、ろ液として回収することもでき、回収されたろ液をそのまま再使用できる。
【0026】
また、ろ過シート28の上部にはメッシュ板36が設けられているため、ろ過シート28上の固形分(精製剤粒状物や揚げかすなど)がろ過容器11の上部に飛散或いは拡散することがなく、このような固形分がフライヤー3中に逆流してしまうなどの不都合も確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:本発明のろ過装置
3:フライヤー
5:ろ液受け容器
7:排出管
11:ろ過容器
13:蓋材
20:胴壁
22:底壁
26:開口
28:ろ過シート
30:押さえリング
36:メッシュ板
50:導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状胴壁と該筒状胴壁の下端を閉じている底壁とからなるろ過容器、および該筒状胴壁の上端に着脱自在に設けられた蓋材とを有しているフライオイル用ろ過装置において、
前記ろ過容器の底壁にはろ液排出用の開口が形成されており、該底壁上にろ過シートが設けられており、
前記蓋材には、フライヤーに設けられている使用済みフライオイルの排出管に接続され且つ使用済みフライオイルを前記ろ過容器内に導入するための導入管が設けられていることを特徴とするフライオイル用ろ過装置。
【請求項2】
前記ろ過シート上にフライオイル精製用粒状物が設けられ、該粒状物が収容されている空間を閉じるようにメッシュ板が設けられている請求項1に記載のフライオイル用ろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−255079(P2011−255079A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133799(P2010−133799)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000193601)水澤化学工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】