説明

フラックス内包カプセル、フラックス内包カプセル付き導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体

【課題】金属層を表面に有する導電性粒子の表面に付着された後、有機液状成分を含む分散媒に分散された場合に、異方性導電材料中に被膜が常温で溶出し、被膜からフラックスが放出され難いフラックス内包カプセルを提供する。
【解決手段】金属層を表面に有する導電性粒子2の表面2aに付着された後、有機液状成分を含む分散媒に分散されて用いられるフラックス内包カプセル1であって、フラックス4と、該フラックス4を内包しており、かつポリマーにより形成されている被膜5とを有し、ポリマーのガラス転移温度が、100℃以上、かつ金属層の融点以下であり、20℃でのポリマーの有機液状成分に対する溶解度が、10重量%以下であるフラックス内包カプセル3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電極間の接続に使用できるフラックス内包カプセル付き導電性粒子を得るのに用いられるフラックス内包カプセル、並びに該フラックス内包カプセルを用いたフラックス内包カプセル付き導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム又は異方性導電シート等の異方性導電材料が広く知られている。これらの異方性導電材料では、ペースト、インク又は樹脂等の分散媒中に、はんだボール等の導電性粒子が分散されている。分散媒中には、通常、有機液状成分が含まれている。
【0003】
異方性導電材料は、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続や、ICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に用いられている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧により導電性粒子の表面を溶融させることにより、上記電極同士を電気的に接続できる。
【0004】
導電性粒子の表面は金属により形成されている。このため、導電性粒子の表面には酸化被膜が形成されやすい。導電性粒子を溶融させて、電極間を接続する際には、酸化被膜は除去されることが好ましい。酸化被膜が除去されなければ、導電性粒子の表面の金属が充分に濡れ拡がらずに、金属と電極とが金属結合により接合されないことがある。このため、電極間の接続抵抗が高くなることがある。
【0005】
従来、電極間の接続の前に、酸化被膜を除去するためのフラックスが電極に塗布されていた。この場合には、フラックスを電極に塗布する作業が必要であった。さらに、酸化被膜を充分に除去するためには、比較的多くのフラックスを電極に塗布しなければならなかった。このため、電極間の接続後に、導電性粒子の表面にフラックスが残りやすかった。従って、電極間の接続抵抗が低くなることがあった。
【0006】
そこで、電極間の接続の前に、フラックスを電極に塗布しなくてもよい導電性粒子が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、導電性粒子と、該導電性粒子の表面に固着されており、かつフラックスを内包している複数のフラックス内包カプセルとを備えるフラックス内包カプセル付き導電性粒子が開示されている。
【特許文献1】特開2003−247083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、フラックス内包カプセル付き導電性粒子を分散媒中に分散させて、異方性導電材料として用いることは特に記載されていない。
【0008】
特許文献1に記載のフラックス内包カプセル付き導電性粒子では、100℃未満の比較的低温で、フラックスを内包している被膜からフラックスが浸み出しやすかった。上記フラックス内包カプセル付き導電性粒子を分散媒に分散させずに、該フラックス内包カプセル付き導電性粒子を用いて電極間を接続した場合、加熱の初期段階で、フラックスが被膜から浸み出しやすかった。さらに、導電性粒子の上方部分に付着したフラックスが、導電性粒子の下方部分に流動することがあった。このため、導電性粒子の上方部分の表面の酸化被膜が除去されないことがあった。この結果、導電性粒子と上方の電極とが、接触しているだけで、金属結合により充分に接合されないことがあった。このため、導電性粒子と上方の電極とを接続するために、上方の電極にフラックスを塗布し、再度加熱及び加圧しなければならないことがあった。
【0009】
本発明の主たる目的は、金属層を表面に有する導電性粒子の表面に付着された後、有機液状成分を含む分散媒に分散された場合に、異方性導電材料中に被膜が常温で溶出し、被膜からフラックスが放出され難いフラックス内包カプセル、並びに該フラックス内包カプセルを用いたフラックス内包カプセル付き導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、金属層を表面に有する導電性粒子の表面に付着された後、有機液状成分を含む分散媒に分散されて、電極間の接続に用いられた場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができるフラックス内包カプセル、並びに該フラックス内包カプセルを用いたフラックス内包カプセル付き導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、金属層を表面に有する導電性粒子の表面に付着された後、有機液状成分を含む分散媒に分散されて用いられるフラックス内包カプセルであって、フラックスと、該フラックスを内包しており、かつポリマーにより形成されている被膜とを有し、前記ポリマーのガラス転移温度が、100℃以上、かつ前記金属層の融点以下であり、20℃での前記ポリマーの前記有機液状成分に対する溶解度が、10重量%以下であることを特徴とする、フラックス内包カプセルが提供される。
【0012】
本発明に係るフラックス内包カプセルのある特定の局面では、前記ポリマーは架橋体である。
【0013】
本発明に係るフラックス内包カプセルの他の特定の局面では、前記金属層の融点が300℃以下であり、前記ポリマーのガラス転移温度が100〜300℃の範囲内にある。
【0014】
本発明に係るフラックス内包カプセル付き導電性粒子は、金属層を表面に有する導電性粒子と、該導電性粒子の表面に付着されており、かつ本発明に従って構成されたフラックス内包カプセルとを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る異方性導電材料は、本発明のフラックス内包カプセル付き導電性粒子と、有機液状成分とを含有することを特徴とする。
【0016】
すなわち、本発明に係る異方性導電材料は、フラックス内包カプセル付き導電性粒子と、有機液状成分とを含有し、前記フラックス内包カプセル付き導電性粒子が、金属層を表面に有する導電性粒子と、該導電性粒子の表面に付着されているフラックス内包カプセルとを備え、前記フラックス内包カプセルが、フラックスと、該フラックスを内包しており、かつポリマーにより形成されている被膜とを有し、前記ポリマーのガラス転移温度が、100℃以上、かつ前記金属層の融点以下であり、20℃での前記ポリマーの前記有機液状成分に対する溶解度が、10重量%以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る接続構造体は、第1の電気的接続対象部材と、第2の電気的接続対象部材と、該第1,第2の電気的接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、前記接続部が、本発明の異方性導電材料を用いて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フラックスを内包している被膜が、ガラス転移温度が上記特定の範囲内にあるポリマーにより形成されており、かつ20℃でのポリマーの上記有機液状成分に対する溶解度が10重量%以下であるため、フラックス内包カプセルが導電性粒子に付着された後、フラックス内包カプセル付き導電性粒子が有機液状成分を含む分散媒に分散された場合に、被膜が有機液状成分中に常温で溶解し難い。このため、電極間の接続の前に、被膜からフラックスが放出されるのを抑制できる。
【0019】
また、本発明では、フラックス内包カプセル付き導電性粒子が有機液状成分を含む分散媒に分散されて、電極間の接続に用いられた場合、被膜が熱により変形し、被膜からフラックスが適度に浸み出す。従って、導電性粒子の表面の酸化被膜を充分に除去できる。このため、導電性粒子と電極とを金属結合により容易に接合でき、かつ電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
(フラックス内包カプセル)
本発明に係るフラックス内包カプセルは、金属層を表面に有する導電性粒子の表面に付着された後、有機液状成分を含む分散媒に分散されて用いられる。
【0022】
フラックス内包カプセルは、フラックスと、該フラックスを内包しており、かつポリマーにより形成されている被膜とを有する。
【0023】
上記フラックスは特に限定されない。上記フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを使用できる。上記フラックスとして、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸又は松脂等が挙げられる。フラックスは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記溶融塩として、塩化アンモニウム等が挙げられる。上記有機酸として、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸又はヒドラジン等が挙げられる。上記松脂として、活性化松脂又は非活性化松脂等が挙げられる。
【0025】
上記フラックスは、松脂であることが好ましく、活性化松脂又は非活性化松脂であることがより好ましい。上記フラックスとして、上記松脂を用いることにより、フラックス内包カプセル付き導電性粒子が電極間の接続に用いられた場合、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0026】
上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。上記フラックスは、ロジン類であることが好ましく、アビエチン酸であることがより好ましい。上記フラックスとして、上記ロジン類を用いることにより、フラックス内包カプセル付き導電性粒子が電極間の接続に用いられた場合、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。
【0027】
フラックスの活性度を調整するために、塩基性有機化合物を被膜に内包させてもよい。上記塩基性有機化合物として、塩酸アニリン又は塩酸ヒドラジン等が挙げられる。
【0028】
上記被膜は、溶剤を内包してもよい。該溶剤として、アセトン、アミルベンゼン、アミルアルコール、ベンゼン、四塩化炭素、エチルアルコール、メチルアルコール、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、トルエン、トリクロロエチレン、テレピン油、キシレン、又は2−メチル2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0029】
また、上記被膜は、界面活性剤を内包してもよい。
【0030】
上記フラックスを内包している被膜は、ポリマーにより形成されている。
【0031】
20℃での上記ポリマーの有機液状成分に対する溶解度は、10重量%以下である。該溶解度が10重量%以下であると、フラックス内包カプセルが付着されたフラックス内包カプセル付き導電性粒子が有機液状成分を含む分散媒に分散されても、被膜が有機液状成分に溶解し難い。このため、被膜からフラックスが放出され難い。
【0032】
20℃での上記ポリマーの有機液状成分に対する溶解度は、5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
【0033】
20℃での上記ポリマーの有機液状成分に対する溶解度は、以下のようにして測定できる。
【0034】
先ず、ポリマー1gを有機液状成分50gに、20℃で24時間浸漬させる。その後、遠心分離し、上澄みを取り除き、ポリマーを取り出す。次に、真空乾燥機を用いて、取り出されたポリマーを乾燥し、浸漬後のポリマーの重量を測定する。得られた測定値から、下記式(X)により、上記溶解度を求めることができる。
【0035】
溶解度(重量%)=(浸漬前のポリマーの重量−浸漬後のポリマーの重量)/(浸漬前のポリマーの重量)×100 ・・・式(X)
上記ポリマーのガラス転移温度は、100℃以上、かつ導電性粒子の表面の金属層の融点(以下、金属層の融点を融点Tm又はTmともいう)以下である。上記ポリマーは、ガラス転移温度が上記特定の範囲内にあれば特に限定されない。
【0036】
上記金属層の融点Tmは、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、さらに260℃以下であることが特に好ましい。上記ポリマーのガラス転移温度は、100〜300℃の範囲内にあることが好ましく、100〜280℃の範囲内にあることがより好ましく、さらに100〜260℃の範囲内にあることが特に好ましい。
【0037】
上記ポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0038】
上記ポリマーとして、ガラス転移温度が100〜Tm℃の範囲内にあるホモポリマー、又はガラス転移温度が100〜Tm℃のコポリマー等が挙げられる。
【0039】
上記ホモポリマーとして、例えば、メタクリル酸メチルホモポリマー(ガラス転移温度105℃)、スチレンホモポリマー(ガラス転移温度100℃)又はメタクリル酸ホモポリマー(ガラス転移温度180℃)等が挙げられる。
【0040】
単独で重合された場合にガラス転移温度が100〜Tm℃のホモポリマーが得られるモノマーを複数種用いて共重合させることにより、上記コポリマーを得ることができる。また、単独で重合された場合にガラス転移温度が100℃未満のホモポリマーが得られるモノマーと、単独で重合された場合にガラス転移温度が100〜Tm℃のホモポリマーが得られるモノマーとを共重合させることにより、上記コポリマーを得ることができる。
【0041】
上記モノマーとして、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルシアン化合物、有機酸ビニル化合物又は芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらのモノマーを重合又は共重合させることにより、上記ポリマーを得ることができる。上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0042】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。上記ビニルシアン化合物として、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。上記有機酸ビニル化合物として、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル等が挙げられる。上記芳香族ビニル化合物として、スチレン、α−メチルスチレン又はビニルナフタレン等が挙げられる。
【0043】
ポリマーのガラス転移温度が100〜Tm℃の範囲内になるように、モノマーが適宜組み合わされて用いられる。
【0044】
また、ポリマーを得る際には、上記モノマーとして、架橋性モノマーを用いてもよい。架橋性モノマーを用いることにより、ポリマーのガラス転移温度を調整できる。単独で重合された場合にガラス転移温度が100℃以下のホモポリマーが得られるモノマーを用いる場合、コポリマーを得る際に用いられる全てのモノマーの合計100重量%中に、架橋性モノマーは1〜20重量%の範囲内で含有されることが好ましい。単独で重合された場合にガラス転移温度が100℃以上のホモポリマーが得られるモノマーを用いる場合、コポリマーを得る際に用いられる全てのモノマー合計100重量%中に、架橋性モノマーは0.1〜10重量%の範囲内で含有されることが好ましい。上記範囲内で架橋性モノマーを含有させることにより、ポリマーのガラス転移温度を100〜Tm℃の範囲内に容易に調整できる。
【0045】
上記架橋性モノマーとして、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼン等が挙げられる。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0046】
上記ポリマーは架橋体であることが好ましい。この場合、電極間の接続の際に、被膜からフラックスをより一層適度に浸み出させることができる。
【0047】
上記ポリマーの架橋体を得る方法として、モノマーの重合の際に、上記架橋性モノマーと、架橋性開始剤とを用いる方法、モノマーの重合の際に、後架橋性官能基を有するモノマーを用いて、ポリマー中に後架橋性官能基を導入し、モノマーの重合後にポリマーを架橋させる方法等が挙げられる。
【0048】
上記架橋性開始剤として、有機過酸化物等が挙げられる。
【0049】
上記後架橋性官能基を有するモノマーとして、ポリ(メタ)アクリル酸又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0050】
また、上記ポリマーとして、ポリ(メタ)アクリル酸又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等を用いることができる。これらのポリマーは、極性が比較的高い。これらのポリマーを用いることにより、有機液状成分に溶けるポリマーの量を少なくすることができる。
【0051】
上記フラックスを被膜により内包する方法は、特に限定されない。この方法として、フラックスを分散させた媒体中で、上記モノマーを重合させる方法等が挙げられる。
【0052】
上記フラックス内包カプセルの形状は、球状であることが好ましい。
【0053】
上記フラックス内包カプセルの平均粒子径は、0.01〜10μmの範囲内にあることが好ましい。フラックス内包カプセルの平均粒子径が大きすぎると、フラックス内包カプセルが導電性粒子に付着されたときに、フラックス内包カプセルが導電性粒子から剥離しやすくなる。フラックス内包カプセルが小さすぎると、フラックス内包カプセルが導電性粒子に付着された場合に、導電性粒子の表面に付着するフラックスが少なすぎることがある。
【0054】
なお、上記フラックス内包カプセルの「平均粒子径」とは、体積平均粒子径を示す。フラックス内包カプセルの平均粒子径は、例えばマイクロトラック(日機装社製)を用いて測定できる。
【0055】
(フラックス内包カプセル付き導電性粒子)
本発明に係るフラックス内包カプセル付き導電性粒子は、金属層を表面に有する導電性粒子と、該導電性粒子の表面に付着されている上記フラックス内包カプセルとを備える。
【0056】
導電性粒子は、表面が金属層により形成されていればよい。導電性粒子は、金属粒子であってもよく、基材粒子の表面が金属層により被覆されている被覆粒子であってもよい。
【0057】
図1に、本発明の一実施形態に係るフラックス内包カプセル付き導電性粒子を断面図で示す。
【0058】
図1に示すように、フラックス内包カプセル付き導電性粒子1は、金属粒子としての導電性粒子2と、該導電性粒子2の表面2aに付着しているフラックス内包カプセル3とを備える。フラックス内包カプセル3は、フラックス4と、該フラックス4を内包している被膜5とを有する。フラックス4は被膜5により被覆されている。
【0059】
上記導電性粒子2を形成するための金属は特に限定されない。該金属として、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、錫、又は錫を含む合金等が挙げられる。なかでも、錫、錫を含む合金、ニッケル、銅又は金が好ましい。
【0060】
上記錫を含む合金は、錫と、銀、銅、亜鉛、ビスマス、インジウム、鉛及びアンチモンからなる群から選択された1種とを含むことが好ましい。上記錫を含む合金の具体例として、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金又は錫−鉛−銀合金等が挙げられる。
【0061】
導電性粒子2の平均粒子径は、1〜1000μmの範囲内にあることが好ましい。上記平均粒子径が、1μmよりも小さいと、電極間の接続信頼性が低下することがある。上記平均粒子径が1000μmを超えると、電極間の間隔が大きくなりすぎることがある。
【0062】
なお、導電性粒子の「平均粒子径」とは、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0063】
上記導電性粒子2の表面2aに、フラックス内包カプセル3を付着させる方法は特に限定されない。この方法として、導電性粒子2とフラックス内包カプセル3とを乾式混合機を用いて混合する方法、又はフラックス内包カプセル3の表面に接着剤を塗布した後、接着剤が塗布されたフラックス内包カプセル3を導電性粒子2の表面2aに接着させる方法等が挙げられる。
【0064】
図2に、本発明の他の実施形態に係るフラックス内包カプセル付き導電性粒子を断面図で示す。
【0065】
図2に示すように、フラックス内包カプセル付き導電性粒子11は、導電性粒子12と、該導電性粒子12の表面12aに付着しているフラックス内包カプセル3とを備える。
【0066】
導電性粒子12は、基材粒子13と、該基材粒子13の表面13aを被覆している金属層14とを有する。
【0067】
基材粒子13として、樹脂粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子又は金属粒子等が挙げられる。
【0068】
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、例えば、ジビニルベンゼン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂又は塩化ビニル樹脂等が挙げられる。上記無機粒子を形成するための無機物として、シリカ又はカーボンブラック等が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子として、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。上記金属粒子を形成するための金属として、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金又はチタン等が挙げられる。
【0069】
基材粒子13の表面13aに金属層14を形成する方法は特に限定されない。金属層14を形成する方法として、例えば、無電解メッキにより金属層14を形成する方法、電気メッキにより金属層14を形成する方法、物理的蒸着により金属層14を形成する方法、金属微粉を基材粒子13の表面13aにコーティングすることにより金属層14を形成する方法、又は金属微粉とバインダーとを含むペーストを基材粒子13の表面13aにコーティングすることにより金属層14を形成する方法等が挙げられる。なかでも、無電解メッキにより金属層14を形成する方法が好適である。
【0070】
上記物理的蒸着により金属層14を形成する方法として、真空蒸着、イオンプレーティング又はイオンスパッタリング等により金属層14を形成する方法が挙げられる。
【0071】
金属層14は、単層により形成されていてもよく、2層以上が積層された複数層により形成されていてもよい。
【0072】
導電性粒子12の金属層14の外表面は、錫又は錫を含む合金により形成されていることが好ましい。この場合には、フラックス内包カプセル付き導電性粒子11が有機液状成分を含む分散媒に分散されて、電極間の接続に用いられた場合に、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。
【0073】
導電性粒子12の平均粒子径は、1〜1000μmの範囲内にあることが好ましい。
【0074】
金属層14の厚みは、0.001〜100μmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜50μmの範囲内にあることがより好ましい。金属層14の厚みが0.001μm未満であると、導電性が不足することがあり、100μmを超えると、基材粒子13と金属層14との熱膨張率の差が大きくなり、基材粒子13から金属層14が剥離しやすくなることがある。
【0075】
(異方性導電材料)
本発明に係る異方性導電材料は、本発明のフラックス内包カプセル付き導電性粒子と、有機液状成分とを含有する。
【0076】
上記有機液状成分は、加熱により硬化されるバインダー樹脂組成物に配合されていることが好ましい。異方性導電材料は、上記有機液状成分を含むバインダー樹脂組成物を含有することが好ましい。異方性導電材料は、分散媒として、上記有機液状成分を含むバインダー樹脂を含有することが好ましい。
【0077】
上記有機液状成分は、20℃で液状の有機化合物である。上記有機液状成分として、導電性粒子が分散される接着剤等に一般的に用いられている有機液状成分を使用できる。
【0078】
上記有機液状成分は、有機溶剤又は有機樹脂であることが好ましい。上記有機樹脂は有機モノマーであることが好ましい。
【0079】
上記有機溶剤として、酢酸エチル、メチルエチルケトン又はトルエン等が挙げられる。
【0080】
上記有機モノマーとして、アクリルモノマー又はエポキシモノマー等が挙げられる。
【0081】
なかでも、上記有機液状成分は、酢酸エチルであることが好ましい。
【0082】
上記バインダー樹脂として、エポキシ樹脂又はポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0083】
上記有機液状成分100重量部に対して、上記フラックス内包カプセル付き導電性粒子は、0.01〜100重量部の範囲内で含有されることが好ましく、0.1〜10重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記フラックス内包カプセル付き導電性粒子の量が上記の範囲内にあることにより、異方性導電材料が電極間の接続に用いられた場合、導電性粒子により電極間を効率的に接続できる。
【0084】
本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。異方性導電材料が、異方性導電フィルムや異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合には、該導電性粒子を含むフィルム状の接着剤に、導電性粒子を含まないフィルム状の接着剤が積層されていてもよい。
【0085】
(接続構造体)
本発明に係る接続構造体は、第1の電気的接続対象部材と、第2の電気的接続対象部材と、該第1,第2の電気的接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備える。接続部が、本発明の異方性導電材料を用いて形成されている。
【0086】
上記第1,第2の電気的接続対象部材は、具体的には、半導体チップ、コンデンサ、又はダイオード等の電子部品や、プリント基板、フレキシブルプリント基板、又はガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0087】
図3(a)〜(c)を参照しつつ、フラックス内包カプセル付き導電性粒子1が有機液状成分を含む分散媒に分散された異方性導電材料を用いて、上記接続構造体を得る各工程の一例を以下説明する。
【0088】
先ず、例えば、フラックス内包カプセル付き導電性粒子1を、有機液状成分を含むバインダー樹脂組成物24に分散させて、異方性導電材料23を用意する。
【0089】
図3(a)に示すように、先ず、第1の電気的接続対象部材の電極21の上面21aに、異方性導電材料23を塗工する。電極21の上面21aには、フラックス内包カプセル付き導電性粒子1が配置される。次に、導電性粒子2の表面2aが溶融する温度に加熱しながら、異方性導電材料23の上方から、図3(a)に矢印Aを付して示す方向に、第2の電気的接続対象部材の電極22を降下させる。また、電極22の下面22aをフラックス内包カプセル付き導電性粒子1に接触させて、加圧する。
【0090】
図3(b)に示すように、加熱及び加圧により、被膜5が変形し、フラックス4が被膜5の外に放出される。放出されたフラックス4は、導電性粒子2の表面2aに付着する。導電性粒子2の表面2aに付着したフラックス4により、導電性粒子2の表面2aの酸化被膜が除去される。
【0091】
また、加熱により、導電性粒子2の表面2aに付着したフラックス4が次第に失活する。有機液状成分を含むバインダー樹脂組成物24は硬化される。そして、図3(c)に示すように、導電性粒子2の下面2bが電極21の上面21aに接合されており、かつ導電性粒子2の上面2cが電極22の下面22aに接合されている接続構造体が得られる。導電性粒子2と電極21,22とは、金属結合により互いに接合される。導電性粒子2の周囲には、バインダー樹脂組成物24の硬化により硬化物層24Aが形成される。
【0092】
従来、はんだボールなどの導電性粒子101が、有機液状成分を含むバインダー樹脂組成物123に分散されている異方性導電材料を用いて、電極間を接続する場合には、図4(a)に示すように、電極121の上面と電極122の下面とに、フラックス111を塗布していた。そして、図4(b)に示すように、加熱及び加圧により、フラックス111を導電性粒子101の表面に付着させていた。この場合には、導電性粒子101の表面にフラックスを充分に付着させるために、フラックス111を比較的多く塗布しなければならなかった。このため、電極間の接続を終えた後、図4(c)に示すように、フラックス111が導電性粒子101の表面に残りやすかった。このため、電極間の接続抵抗が高くなることがあった。
【0093】
図5(a)に示すように、導電性粒子107の表面に、フラックス108を内包する被膜109が付着されている特許文献1に記載のフラックス内包カプセル付き導電性粒子106を、有機液状成分を含むバインダー樹脂組成物に分散させずに、電極121の上面に置き、加熱しながら、電極122を降下させた場合、図5(b)に示すように、加熱の初期段階で、導電性粒子107の上方部分に付着していたフラックス108が、導電性粒子107の下方部分に流動することがあった。この結果、電極間の接続を終えた後、図5(c)に示すように、導電性粒子107と上方の電極122とが、接触しているだけで、金属結合により充分に接合されないことがあった。
【0094】
また、特許文献1に記載の上記フラックス内包カプセル付き導電性粒子106を、有機液状成分を含むバインダー樹脂組成物123に分散させて異方性導電材料を作製した場合、該異方性導電材料を電極121の上面に塗工する前に、有機液状成分110中に被膜109が溶解し、被膜109からフラックス108が放出されることがあった。
【0095】
このため、図6(a)に示すように、異方性導電材料を電極121の上面に塗工した際には、導電性粒子107の表面に、全部又は一部のフラックス内包カプセルが付着していないことがあった。この場合には、図6(b)に示すように、加熱及び加圧の際に、導電性粒子107の表面に、フラックスが付着しないか又は少量しか付着しない。このため、導電性粒子107の表面の金属被膜は充分に除去されない。この結果、電極間の接続を終えた後、図6(c)に示すように、導電性粒子107と下方の電極121及び上方の電極122とが、接触しているだけで、金属結合により充分に接合されないことがあった。
【0096】
本実施形態では、異方性導電材料23中に被膜5が常温(20℃)で溶解し難い。このため、電極間の接続の前に、被膜5からフラックス4が放出されるのを抑制できる。また、電極間の接続の際には、導電性粒子2の表面2aを溶融させる加熱の初期段階で、上記ポリマーにより形成されている被膜5が、熱により急激に変形し難い。従って、時間の経過とともに、被膜5が熱により変形して、被膜5から放出されたフラックス4が導電性粒子2の表面2aに次第に付着する。このため、図3(c)に示すように、導電性粒子2の下面2bが電極21の上面21aに接合されており、かつ導電性粒子2の上面2cが電極22の下面22aに接合されている接続構造体を得ることができる。
【0097】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0098】
(合成例1)
モノマーとしてのイソボルニルメタクリレート(IBX)97重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)3重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1重量部とを均一に溶解し、溶液を得た。得られた溶液に、ラウリル硫酸ナトリウムを溶解した水溶液(ラウリル硫酸ナトリウム濃度0.15重量%)2000重量部を加えて、超音波ホモジナイザーにより乳化し、乳化液を得た。得られた乳化液を、70℃で10時間反応させ、ポリマー分散液を得た。遠心分離機を用いて、得られたポリマー分散液からポリマーを分離した。真空乾燥機を用いて、60℃で12時間かけて分離されたポリマーを乾燥し、ポリマーaを得た。
【0099】
(合成例2)
モノマーを、メタクリル酸(MAA)30重量部と、アクリロニトリル(AN)65重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)5重量部とに変更したこと以外は合成例1と同様にして、ポリマーbを得た。
【0100】
(合成例3)
乾式粉砕器を用いて、ゼラチンを微粉砕し、微粉砕されたゼラチン(ポリマーc)を得た。
【0101】
(合成例4)
モノマーを、ジビニルベンゼン(DVB)100重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、ポリマーdを得た。
【0102】
(合成例5)
モノマーを、アクリル酸エチル(EA)50重量部と、アクリロニトリル(AN)30重量部と、メタクリロニトリル(MAN)20重量部とに変更したこと以外は合成例1と同様にして、ポリマーeを得た。
【0103】
(合成例6)
モノマーを、スチレン(St)99.5重量部と、ジビニルベンゼン(DVB)0.5重量部とに変更したこと以外は合成例1と同様にして、ポリマーfを得た。
【0104】
(ガラス転移温度の評価)
合成例1〜6で得られたポリマーa〜fのガラス転移温度を、示差走査熱量計DSCにより測定した。
【0105】
(溶解度の評価)
(1)20℃でのポリマーの酢酸エチルに対する溶解度
ポリマーa〜f1gを50gの酢酸エチルに、20℃で24時間浸漬させた後、遠心分離し、上澄みを取り除き、ポリマーa〜fを取り出した。その後、真空乾燥機を用いて、取り出されたポリマーa〜fを60℃で24時間乾燥した。酢酸エチルに浸漬する前のポリマーa〜fの重量と、酢酸エチルに浸漬した後の乾燥されたポリマーa〜fの重量とを測定し、上記式(X)から、ポリマーa〜fの酢酸エチルに対する溶解度を求めた。
【0106】
(2)20℃でのポリマーのアミン変性ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3703」、以下エポキシアクリレート3703)に対する溶解度
酢酸エチルをエポキシアクリレート3703に変更したことを除いては、上記(1)20℃でのポリマーの酢酸エチルに対する溶解度の評価と同様にして、ポリマーa〜fのエポキシアクリレート3703に対する溶解度を求めた。
【0107】
結果を下記の表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
(実施例1)
モノマーとしてのイソボルニルメタクリレート(IBX)97重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)3重量部と、フラックスとしてのアビエチン酸50重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1重量部とを均一に溶解し、溶液を得た。得られた溶液に、ラウリル硫酸ナトリウムを溶解した水溶液(ラウリル硫酸ナトリウム濃度0.15重量%)2000重量部を加えて、超音波ホモジナイザーにより乳化し、乳化液を得た。得られた乳化液を、70℃で10時間反応させ、フラックス内包カプセル分散液を得た。遠心分離機を用いて、得られたフラックス内包カプセル分散液からフラックス内包カプセルを分離した。真空乾燥機を用いて、60℃で12時間かけて分離されたフラックス内包カプセルを乾燥し、フラックス内包カプセルA(体積平均粒子径0.3μm)を得た。
【0110】
得られたフラックス内包カプセルA5重量部と、実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)95重量部とを、乾式混合機を用いて混合し、フラックス内包カプセル付き導電性微粒子A−1を作製した。
【0111】
(実施例2)
モノマーを、メタクリル酸(MAA)30重量部と、アクリロニトリル(AN)65重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)5重量部とに変更したこと以外は合成例1と同様にして、フラックス内包カプセルB(体積平均粒子径0.3μm)を作製した。
【0112】
フラックス内包カプセルAを、得られたフラックス内包カプセルBに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子B−1とを作製した。
【0113】
(実施例3)
乾式粉砕器を用いて、ゼラチンを微粉砕し、微粉砕されたゼラチン(ポリマーc)を得た。
【0114】
フラックスとしてのアビエチン酸50重量部をトルエン50重量部に均一に溶解し、溶液を得た。得られた溶液に、ラウリル硫酸ナトリウムを溶解した水溶液(ラウリル硫酸ナトリウム濃度0.15重量%)2000重量部を加えて、超音波ホモジナイザーにより乳化し、乳化液を得た。得られた乳化液に、上記ポリマーcを溶解した水溶液(ポリマーc濃度5重量%)を加え、攪拌した。その後、エタノールを滴下して、フラックス内包カプセル分散液を得た。遠心分離機を用いて、得られたフラックス内包カプセル分散液からフラックス内包カプセルを分離した。真空乾燥機を用いて、60℃で12時間かけて得られたフラックス内包カプセルを乾燥し、フラックス内包カプセルC(体積平均粒子径0.3μm)を得た。
【0115】
フラックス内包カプセルAを、得られたフラックス内包カプセルCに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子C−1を作製した。
【0116】
(比較例1)
モノマーを、ジビニルベンゼン(DVB)100重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセルD(体積平均粒子径0.3μm)を作製した。
【0117】
フラックス内包カプセルAを、得られたフラックス内包カプセルDに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子D−1を作製した。
【0118】
(比較例2)
モノマーを、アクリル酸エチル(EA)50重量部と、アクリロニトリル(AN)30重量部と、メタクリロニトリル(MAN)20重量部とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセルE(体積平均粒子径0.3μm)を作製した。
【0119】
フラックス内包カプセルAを、得られたフラックス内包カプセルEに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子E−1を作製した。
【0120】
(比較例3)
モノマーを、スチレン(St)99.5重量部と、ジビニルベンゼン(DVB)0.5重量部とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセルF(体積平均粒子径0.3μm)を得た。
【0121】
フラックス内包カプセルAを、得られたフラックス内包カプセルFに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子F−1を作製した。
【0122】
(比較例4)
乾式粉砕器を用いて、アビエチン酸を微粉砕し、微粉砕されたフラックスGを作製した。
【0123】
得られたフラックスG5重量部と、実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)95重量部とを、乾式混合機を用いて混合し、フラックス付き導電性粒子G−1を作製した。
【0124】
(比較例5)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)H−1を用意した。
【0125】
実施例1〜3及び比較例1〜5の詳細を下記の表2に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
(評価)
(1)カプセル化
得られたフラックス内包カプセルA〜Fを、透過電子顕微鏡TEMにて観察した。フラックスが被膜に内包されている場合を「○」、フラックスが被膜に内包されていない場合を「×」として、結果を下記の表3に示した。
【0128】
(2)フラックスの保持性
得られたフラックス内包カプセルA〜F及びフラックスG1gを、50gの酢酸エチルに20℃で24時間浸漬させた後、遠心分離し、上澄みを取り除き、フラックス内包カプセルA〜FおよびフラックスGを取り出した。その後、真空乾燥機を用いて、取り出されたフラックス内包カプセルA〜FおよびフラックスGを60℃で24時間乾燥した。
【0129】
酢酸エチルに浸漬する前のフラックス内包カプセルA〜F及びフラックスGの重量Y1と、酢酸エチルに浸漬した後の乾燥されたフラックス内包カプセルA〜F及びフラックスGの重量Y2とを測定し、下記式(Y)により、保持量を求めた。
【0130】
保持量(重量%)=(Y2)/(Y1)×100 ・・・式(Y)
上記保持量の値が、90重量%以上であった場合を「○」、75重量%以上、90重量%未満であった場合を「△」、75重量%未満であった場合を「×」として、酢酸エチル中でのフラックスの保持性を評価し、結果を下記の表3に示した。
【0131】
また、酢酸エチルをエポキシアクリレート3703に変更したことを以外は同様にして、フラックス内包カプセルA〜F及びフラックスGのエポキシアクリレート3703中での保持性を評価した。
【0132】
(3)フラックスの放出性
得られたフラックス内包カプセルA〜F及びフラックスG1gを150℃で30分加熱した後、フラックス内包カプセルA〜F及びフラックスG1gを20℃にした。次に、50gの酢酸エチルに20℃で24時間浸漬させた後、遠心分離し、上澄みを取り除き、フラックス内包カプセルA〜FおよびフラックスGを取り出した。その後、真空乾燥機を用いて、取り出されたフラックス内包カプセルA〜FおよびフラックスGを60℃で24時間乾燥した。
【0133】
150℃で30分加熱する前のフラックス内包カプセルA〜F及びフラックスGの重量Z1と、酢酸エチルに浸漬した後の乾燥されたフラックス内包カプセルA〜F及びフラックスGの重量Z2とを測定し、下記式(Z)により、上記放出量を求めた。
【0134】
放出量(重量%)=(Z1−Z2)/(Z1)×100 ・・・式(Z)
上記放出量の値が、30重量%以上であった場合を「○」、10重量%以上、30重量%未満であった場合を「△」、10重量%未満であった場合を「×」として、酢酸エチル中での放出性を評価し、結果を下記の表3に示した。
【0135】
また、酢酸エチルをエポキシアクリレート3703に変更したこと以外は同様にして、フラックス内包カプセルA〜F及びフラックスGのエポキシアクリレート3703中での放出性を評価した。
【0136】
(4)接続抵抗
フラックス内包カプセル付き導電性粒子A−1〜F−1、フラックス付き導電性粒子G−1又は導電性粒子H−1を、有機液状成分としての酢酸エチルを10重量%含むエポキシ接着剤に混合し、分散し、異方導電性接着剤を調製した。
【0137】
幅200μm、長さ1mm及び高さ0.2μmのアルミニウム電極がL/S20μmとなるように形成されたガラス基板を用意した。幅200μm、長さ1mm及び高さ0.2μmのアルミニウム電極がL/S20μmとなるように形成されたポリイミド基板を用意した。ガラス基板のアルミニウム電極と、ポリイミド基板のアルミニウム電極とに、接続抵抗測定用の引き回し線を引いた。
【0138】
上記ガラス基板の上面の中央の領域に、調製した異方導電性接着剤を塗布した。その後、ガラス基板の電極パターンとポリイミド基板の電極パターンとが互いに対向するように位置合わせをし、ガラス基板上にポリイミド基板を積層し、圧力10N及び温度245℃の条件で15秒間熱圧着し、接続構造体を得た。
【0139】
得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。接続抵抗値が、1Ω以下であった場合を「○」、1Ωを超え、5Ω以下であった場合を「△」、5Ωを超えた場合を「×」として、結果を下記の表3に示した。
【0140】
また、酢酸エチルを10重量%含むエポキシ接着剤を、エポキシアクリレート3703を10重量%含むエポキシ接着剤に変更したこと以外は同様にして、エポキシアクリレート3703を10重量%含むエポキシ接着剤を用いた場合の接続抵抗の評価を行った。
【0141】
【表3】

【0142】
実施例1〜3のフラックス内包カプセル付き導電性粒子A−1〜C−1では、導電性粒子が上方の電極と下方の電極とに接合されていた。
【0143】
比較例1のフラックス内包カプセル付き導電性粒子D−1では、電極間の接続の際にフラックスが浸み出さなかった結果、接続抵抗が高かった。
【0144】
比較例2のフラックス内包カプセル付き導電性粒子E−1では、電極の接続の際に、フラックスが既に放出されていたため、接続抵抗が高かった。
【0145】
比較例3のフラックス内包カプセル付き導電性粒子F−1では、電極の接続の際に、一部のフラックスが放出されていたため、接続抵抗が高かった。
【0146】
比較例4のフラックス付き導電性粒子G−1では、電極の接続の際に、フラックスが被膜に内包されていないため、接続抵抗が高かった。
【0147】
比較例5の導電性粒子H−1では、フラックスを用いていないため、導電性粒子と上方の電極、及び下方の電極とが接合されなかった。このため、接続抵抗が非常に高かった。
【0148】
(比較例6)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子を、実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性微粒子A−2を作製した。
【0149】
(実施例4)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子を、実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子B−2とを作製した。
【0150】
(実施例5)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子を、実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)に変更したこと以外は実施例3と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子C−2を作製した。
【0151】
(比較例7)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子を、実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)に変更したこと以外は比較例1と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子D−2を作製した。
【0152】
(比較例8)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子を、実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)に変更したこと以外は比較例2と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子E−2を作製した。
【0153】
(比較例9)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子を、実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)に変更したこと以外は比較例3と同様にして、フラックス内包カプセル付き導電性粒子F−2を作製した。
【0154】
(比較例10)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子を、実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)に変更したこと以外は比較例4と同様にして、フラックス付き導電性粒子G−2を作製した。
【0155】
(比較例11)
実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子(数平均粒子径5μm)H−2を用意した。
【0156】
実施例4,5及び比較例6〜11の詳細を下記の表4に示す。
【0157】
【表4】

【0158】
(評価)
実施例4,5及び比較例6〜11で得られたフラックス内包カプセル付き導電性粒子A−2〜F−2、フラックス付き導電性粒子G−2及び導電性粒子H−2について、温度160℃の条件で20秒間熱圧着したこと以外は、上記の方法と同様にして接続抵抗を測定した。接続抵抗値が、1Ω以下であった場合を「○」、1Ωを超え、5Ω以下であった場合を「△」、5Ωを超えた場合を「×」として、結果を下記の表5に示した。
【0159】
【表5】

【0160】
実施例4,5のフラックス内包カプセル付き導電性粒子B−2,C−2では、導電性粒子が上方の電極と下方の電極とに接合されていた。
【0161】
比較例6,7のフラックス内包カプセル付き導電性粒子A−2,D−2では、電極間の接続の際にフラックスが浸み出さなかった結果、接続抵抗が高かった。
【0162】
比較例8のフラックス内包カプセル付き導電性粒子E−2では、電極の接続の際に、フラックスが既に放出されていたため、接続抵抗が高かった。
【0163】
比較例9のフラックス内包カプセル付き導電性粒子F−2では、電極の接続の際に、一部のフラックスが放出されていたため、接続抵抗が高かった。
【0164】
比較例10のフラックス付き導電性粒子G−2では、電極の接続の際に、フラックスが被膜に内包されていないため、接続抵抗が高かった。
【0165】
比較例11の導電性粒子H−2では、フラックスを用いていないため、導電性粒子と上方の電極、及び下方の電極とが接合されなかった。このため、接続抵抗が非常に高かった。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るフラックス内包カプセル付き導電性粒子を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係るフラックス内包カプセル付き導電性粒子を示す断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るフラックス内包カプセル付き導電性粒子が有機液状成分を含む分散媒に分散された異方性導電材料を用いて、電極間を接続する各工程の一例を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、従来の導電性粒子が有機液状成分を含む分散媒に分散された異方性導電材料を用いて、電極間を接続する各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、従来のフラックス内包カプセル付き導電性粒子を用いて、電極間を接続する各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、従来のフラックス内包カプセル付き導電性粒子が、有機液状成分を含む分散媒に分散された異方性導電材料を用いて、電極間を接続する各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【符号の説明】
【0167】
1…フラックス内包カプセル付き導電性粒子
2…導電性粒子
2a…表面
2b…下面
2c…上面
3…フラックス内包カプセル
4…フラックス
5…被膜
11…フラックス内包カプセル付き導電性粒子
12…導電性粒子
12a…表面
13…基材粒子
13a…表面
14…金属層
21…電極
21a…上面
22…電極
22a…下面
23…異方性導電材料
24…バインダー樹脂組成物
24A…硬化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層を表面に有する導電性粒子の表面に付着された後、有機液状成分を含む分散媒に分散されて用いられるフラックス内包カプセルであって、
フラックスと、該フラックスを内包しており、かつポリマーにより形成されている被膜とを有し、
前記ポリマーのガラス転移温度が、100℃以上、かつ前記金属層の融点以下であり、
20℃での前記ポリマーの前記有機液状成分に対する溶解度が、10重量%以下であることを特徴とする、フラックス内包カプセル。
【請求項2】
前記ポリマーが架橋体である、請求項1に記載のフラックス内包カプセル。
【請求項3】
前記金属層の融点が300℃以下であり、
前記ポリマーのガラス転移温度が100〜300℃の範囲内にある、請求項1または2に記載のフラックス内包カプセル。
【請求項4】
金属層を表面に有する導電性粒子と、該導電性粒子の表面に付着されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラックス内包カプセルとを備えることを特徴とする、フラックス内包カプセル付き導電性粒子。
【請求項5】
請求項4に記載のフラックス内包カプセル付き導電性粒子と、有機液状成分とを含有することを特徴とする、異方性導電材料。
【請求項6】
第1の電気的接続対象部材と、第2の電気的接続対象部材と、該第1,第2の電気的接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項5に記載の異方性導電材料を用いて形成されていることを特徴とする、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−73394(P2010−73394A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237700(P2008−237700)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】