説明

フラックス回収装置及びフラックス回収方法

【課題】雰囲気ガスからのフラックス成分の回収に伴うエネルギー消費を抑えつつフラックスの回収効率を向上させ、また、メンテナンス間隔を長期間とることができ、メンテナンス作業も簡易なフラックス回収装置及びフラックス回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】はんだ付け装置から排出されたフラックス成分を含む雰囲気ガスが流通する雰囲気ガス導入部と、フラックス回収促進剤を加熱手段により昇華させて、前記雰囲気ガス導入部を通過した雰囲気ガスに、前記昇華したフラックス回収促進剤を供給するフラックス回収促進剤供給部と、前記雰囲気ガスと前記フラックス回収促進剤との混合ガスが流通する、複数の仕切り板と前記仕切り板に設けられた孔部によりラビリンス構造の流路が形成されたフラックス回収部と、前記フラックス回収部を通過した前記混合ガスを外部へ導出する混合ガス導出部と、を備えたことを特徴とするフラックス回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に窒素など不活性ガスの中で、電子部品を搭載した回路基板を加熱してはんだ付けを行うリフロー炉において、不活性ガスの中に含まれるフラックス成分を除去するフラックス回収装置及びフラックス回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々の電子部品が回路基板の表面に搭載されてはんだ付けされたSMD(Surface Mounted Device)が電子機器に広く用いられている。このはんだ付けは、はんだペーストを用いて行う。はんだペーストは、クリーム状のフラックスとはんだ粉末とを混合してペースト状にしたもので、印刷またはディスペンサー等により回路基板のはんだ付け部に塗布し、その上に電子部品を搭載させてからはんだ付け装置で加熱溶融させることにより、回路基板と電子部品を電気的に接続する。
【0003】
はんだペーストのフラックスは、はんだ付けされる金属表面の酸化膜を除去し、また、はんだ付け工程における加熱処理時に金属表面が再酸化するのを防止する。また、はんだペーストのフラックスは、はんだ粉末の表面張力を小さくして濡れを良くする作用がある。はんだペーストのフラックスは、松脂、チキソ剤及び活性剤等の固形成分を溶剤で溶解させてあるため、はんだ付け装置(例えば、リフロー炉)ではんだペーストを加熱溶融させる際に、これらの大部分の成分は気化して蒸気となる。この気化したフラックス成分は、はんだ付け装置の温度の低いところに接触して液化する。液化したフラックス成分は、回路基板上の接点やコネクター等に付着して接点不良を起こしたり、はんだ付け装置の可動部分に付着して動きが妨げられたりするという問題があった。
【0004】
そこで、気化したフラックス成分が冷却されて液化することで回路基板の接点等に付着しないように、不活性ガスを用いた雰囲気中ではんだペーストの加熱溶融を行うにあたり、このフラックス成分が混在した雰囲気ガスを吸引し、雰囲気ガスを冷却・液化することで、雰囲気ガスからフラックス成分を回収するフラックス回収装置がはんだ付け装置に設けられている。
【0005】
フラックス回収装置には、例えば、加熱されている雰囲気ガスの吸引機構と、冷却部である複数本の細いパイプからなる放熱部と、液状フラックス回収容器とを備えているものがある。このフラックス回収装置では、吸引された雰囲気ガスがパイプ内を通過する際に冷却されてフラックス成分が液化し、液状となったフラックス成分が容器内に滴下して回収される。なお、細いパイプを複数本設けるのは、加熱されている雰囲気ガスをそれぞれのパイプに分流させて、雰囲気ガスの放熱効率を高めるためである。
【0006】
しかし、上記した態様の装置の場合、運転当初はパイプの内壁はクリーンな状態であり、放熱効率にも優れるので、フラックスが冷却されて液状となり回収される。しかし、時間の経過とともにロジン等のフラックス成分が細いパイプの内壁に付着していくので、内壁に付着したフラックス成分の断熱効果によりパイプの放熱効率が低下して、雰囲気ガスからのフラックスの回収が不十分になるという問題があった。また、ロジン等のフラックス成分の付着がさらに進むと、最終的にはフラックス成分でパイプが詰まってしまうので、パイプの内壁に付着したフラックスを丁寧に除去しなければならず、煩雑なメンテナンスを頻繁に行う必要があるという問題もあった。
【0007】
また、特許文献1には、フラックス回収箱体内部に蛇行通路を形成することで、蛇行通路の壁面にフラックス成分を衝突させて、この壁面にフラックス成分を付着させ易くしたうえで、フラックス回収箱体を冷却して、気体状のフラックス成分を冷却し、液化物または固化物として雰囲気ガス中のフラックス成分を回収することが記載されている。この場合にも、蛇行通路が固化したフラックス成分ですぐに詰まってしまうので、メンテナンス周期が短くなってしまうという問題があった。また、フラックス回収箱体を冷却するので、フラックス成分の回収に膨大なエネルギーを要するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−179341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、発明者等は、様々な実験から、フラックス成分が含まれている雰囲気ガスに所定の化合物を混合させると、雰囲気ガス中に含まれているフラックス成分を高温のまま粉体として回収できることを見出した。その結果、フラックス成分を含んだ雰囲気ガスの冷却に伴うエネルギー消費を抑え、面倒な粉体状フラックス除去作業の回数を低減できる装置を発明するに至った。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、雰囲気ガスからのフラックス成分の回収に伴うエネルギー消費を抑えつつフラックスの回収効率を向上させ、また、メンテナンス間隔を長期間とることができ、メンテナンス作業も簡易なフラックス回収装置及びフラックス回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、はんだ付け装置から排出されたフラックス成分を含む雰囲気ガスが流通する雰囲気ガス導入部と、フラックス回収促進剤を加熱手段により昇華させて、前記雰囲気ガス導入部を通過した雰囲気ガスに、前記昇華したフラックス回収促進剤を供給するフラックス回収促進剤供給部と、前記雰囲気ガスと前記フラックス回収促進剤との混合ガスが流通する、複数の仕切り板と前記仕切り板に設けられた孔部によりラビリンス構造の流路が形成されたフラックス回収部と、前記フラックス回収部を通過した前記混合ガスを外部へ導出する混合ガス導出部と、を備えたことを特徴とするフラックス回収装置である。
【0012】
フラックス回収促進剤とは、雰囲気ガス中に含まれる気化したフラックス成分を粉体等の固体として回収するのを促進する化合物を示し、雰囲気ガスからフラックス成分を円滑に除去するものである。上記態様では、はんだ付け装置から吸引されたフラックス成分を含む雰囲気ガスに、フラックス回収促進剤供給部にて昇華させたフラックス回収促進剤を供給することにより、雰囲気ガスとフラックス回収促進剤ガスとの混合ガスが作成される。この混合ガスがフラックス回収装置のフラックス回収本体部内に導入されて、フラックス回収本体部内に設けられたラビリンス構造の混合ガス流路、すなわち、フラックス回収部を流通する。混合ガスがフラックス回収部を流通する間に、雰囲気ガスのフラックス成分が昇華したフラックス回収促進剤に接触し、フラックス回収促進剤によりフラックス成分が連鎖的架橋反応を起こして高分子化される。この架橋反応が繰り返されることでフラックス成分の高分子化が起こり、雰囲気ガスからフラックス成分が固体として回収される。この粉体は、フラックス回収部の壁面やフラックス回収本体部の内壁面に付着する。フラックス成分が回収された雰囲気ガスは、混合ガス導出部からフラックス回収装置の外へ排出される。
【0013】
本発明の態様は、前記フラックス回収促進剤が、メラミン、メラミン誘導体、過酸化触媒及びアルカリ性物質からなる群から選択された少なくとも1種の化合物であることを特徴とするフラックス回収装置である。フラックス回収促進剤は常温では固体である。フラックス回収促進剤として、メラミン、メラミン誘導体、過酸化物若しくはアルカリ性物質またはこれらの混合物を用いる。メラミンとメラミン誘導体は、フラックスの構成成分であるアビエチン酸、ピマール酸、デヒドロアビエチン酸などの有機酸と触媒的に架橋反応を起こす性質を有するので、フラックス成分の架橋剤となってフラックスの回収を促進する。アルカリ性物質は、フラックスの構成成分であるアビエチン酸、ピマール酸、デヒドロアビエチン酸などの有機酸と中和反応をすることで、有機酸を捕捉する。さらに、中和反応生成物の分子量は大きくなって分子間力が増し、反応生成物の融点は有機酸より上昇するので、アルカリ性物質はフラックス成分を固体として回収する吸着剤となってフラックスの回収を促進する。
【0014】
本発明の態様は、前記アルカリ性物質が水酸化物であることを特徴とするフラックス回収装置である。
【0015】
本発明の態様は、前記フラックス回収促進剤供給部の加熱手段がヒーターまたは熱せられた不活性ガスを前記フラックス回収促進剤に供給する昇華用不活性ガス導入部であることを特徴とするフラックス回収装置である。常温では固体であるフラックス回収促進剤は、ヒーターまたは不活性ガスの熱風により加熱されて昇華し、昇華したフラックス回収促進剤が雰囲気ガスに供給される。
【0016】
本発明の態様は、前記ラビリンス構造の流路に多孔質体が設置されていることを特徴とするフラックス回収装置である。混合ガスの流れが多孔質体に接触または衝突すると、多孔質体の多孔質構造によって、混合ガスの運動エネルギーが減殺される。混合ガスの運動エネルギーが減殺されると、フラックス成分の架橋による高分子化が促進される。
【0017】
本発明の態様は、前記フラックス回収促進剤供給部と前記フラックス回収部との間及び/または前記混合ガス導出部に、前記混合ガス中のフラックス回収促進剤濃度を測定するための混合ガス採取手段が設けられていることを特徴とするフラックス回収装置である。
【0018】
本発明の態様は、前記フラックス回収部が、前記ラビリンス構造の流路に代えて、前記フラックス成分を遠心分離する遠心分離器を備えたことを特徴とするフラックス回収装置である。
【0019】
本発明の態様は、はんだ付け装置から排出されたフラックス成分を含む雰囲気ガスを、フラックス回収装置の雰囲気ガス導入部に流通させる工程と、フラックス回収促進剤供給部の加熱手段によりフラックス回収促進剤を昇華させて、前記雰囲気ガス導入部を通過した雰囲気ガスに、前記昇華したフラックス回収促進剤を供給する工程と、複数の仕切り板と前記仕切り板に設けられた孔部により形成されたラビリンス構造の流路にて、前記雰囲気ガスと前記フラックス回収促進剤との混合ガスに含まれるフラックス成分を回収する工程と、前記ラビリンス構造の流路を通過した前記混合ガスを、混合ガス導出部から前記フラックス回収装置の外部へ導出する工程と、を有することを特徴とするフラックス回収方法である。
【0020】
本発明の態様は、前記フラックス回収促進剤が、メラミン、メラミン誘導体、過酸化触媒及びアルカリ性物質からなる群から選択された少なくとも1種の化合物であることを特徴とするフラックス回収方法、前記アルカリ性物質が水酸化物であることを特徴とするフラックス回収方法、前記フラックス回収促進剤供給部の加熱手段がヒーターまたは熱せられた不活性ガスを前記フラックス回収促進剤に供給する昇華用不活性ガス導入部であることを特徴とするフラックス回収方法、前記ラビリンス構造の流路に多孔質体が設置されていることを特徴とするフラックス回収方法、前記フラックス回収促進剤供給部と前記ラビリンス構造の流路との間及び/または前記混合ガス導出部に、前記混合ガス中のフラックス回収促進剤濃度を測定するための混合ガス採取手段が設けられていることを特徴とするフラックス回収方法、前記ラビリンス構造の流路に代えて、前記フラックス成分を遠心分離する遠心分離器にて該フラックス成分を回収することを特徴とするフラックス回収方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記態様によれば、気化したフラックス成分が昇華したフラックス回収促進剤に吸着されることにより、雰囲気ガスを高温状態としたままフラックス成分を粉体として回収するので、雰囲気ガスの冷却に伴うエネルギー消費を抑えることができる。また、昇華したフラックス回収促進剤が雰囲気ガス中に供給されるので、フラックスの回収効率が向上する。また、混合ガスの流路は孔部を有する仕切り板を複数用いて形成したラビリンス構造となっているので、固化したフラックス成分が流路に詰まるのを防止できる。このように、固化したフラックス成分が流路に詰まるのを防止でき、さらに放熱効率の良否に関わらずフラックス成分の回収が可能なので、メンテナンス間隔を長期間とることができ、メンテナンス作業も簡易である。
【0022】
本発明の上記態様によれば、フラックス回収促進剤として、メラミン、メラミン誘導体、過酸化触媒若しくはアルカリ性物質またはこれらの混合物を用いることで、気化したフラックス成分を効率よく吸着、回収できる。本発明の上記態様によれば、フラックス回収促進剤供給部の加熱手段としてヒーターまたは熱せられた不活性ガスを前記フラックス回収促進剤に供給する昇華用不活性ガス導入部を用いることで、フラックス回収促進剤の雰囲気ガスへの供給量を容易に調節できる。本発明の上記態様によれば、混合ガス流路に多孔質体を設けることにより、フラックスとフラックス回収促進剤とを含んだ粉体の形成・成長が促進されるので、フラックスの回収効率がより向上する。本発明の上記態様によれば、フラックス回収促進剤供給部と前記フラックス回収部との間及び/または混合ガス導出部に、混合ガス中のフラックス回収促進剤濃度を測定するための混合ガス採取手段を設けることで、フラックス回収促進剤濃度を適値に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態例に係るフラックス回収装置を設置したリフロー装置の概略を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態例に係るフラックス回収装置の側面断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態例に係るフラックス回収装置のフラックス回収部を説明する概略図である。
【図4】フラックス成分が回収される様子を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態例に係るフラックス回収装置の変形例を示す側面断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態例に係るフラックス回収装置の側面断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態例に係るフラックス回収装置のフラックス回収部を説明する概略図である。
【図8】本発明の第2実施形態例に係るフラックス回収装置の変形例を示す側面断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態例に係るフラックス回収装置の側面断面図である。
【図10】(a)図は本発明の第4実施形態例に係るフラックス回収装置の平面断面図、(b)図は本発明の第4実施形態例に係るフラックス回収装置の側面断面図である。
【図11】(a)図は本発明の第4実施形態例に係るフラックス回収装置の変形例を示す平面断面図、(b)図は本発明の第4実施形態例に係るフラックス回収装置の変形例を示す側面断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態例に係るフラックス回収装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態例に係るフラックス回収装置について、図面を用いながら説明する。図1は、はんだ付け装置に本発明の第1実施形態例であるフラックス回収装置1を設置した態様を示している。ここでは、はんだ付け装置としてリフロー装置100を使用した場合を例にとって説明する。
【0025】
図1に示すように、搬送コンベアがリフロー装置100の搬入口101側から搬出口102側へリフロー装置100内部を貫通するように配置されている。配線基板に電子部品を搭載した被加熱物であるワークは、搬送コンベアに載置されて搬入口101からリフロー装置100内へ搬入されて加熱されることにより、はんだ粉とフラックス成分を含んだはんだペーストが溶融し、電子部品が配線基板に電気的に接合される。電気的に接合されたワークは、搬送コンベアにて搬出口102からリフロー装置100外へ搬出される。
【0026】
リフロー装置100は、搬入口101から搬出口102への搬送経路において10個のゾーンZ1〜Z10に分割されている。このうち、搬入口101側から5個までのゾーンZ1〜Z5がプレヒートゾーン、搬出口102側から2個までのゾーンZ9〜Z10が冷却ゾーン、5個のプレヒートゾーンと2個の冷却ゾーンの間の3個のゾーンZ6〜Z8が加熱ゾーンである。プレヒートゾーンは配線基板を所定温度まで加熱するゾーンである。加熱ゾーンは、はんだ粉を完全に溶融させて電子部品を配線基板に電気的に接合するゾーンである。はんだ粉の溶融にあたりフラックス成分は気化して、熱せられた雰囲気ガス中に拡散する。冷却ゾーンは、冷却用ファンを駆動させて加熱されたワークを冷却させるゾーンである。
【0027】
ゾーンZ1〜Z10は、上部炉体103と下部炉体104で構成されている。上部炉体103の内部は雰囲気ガスである不活性ガス(例えば窒素ガス)が充満している。上部炉体103は、ヒーター105と送風機107を有し、雰囲気ガスはヒーター105で所定の温度に熱せられる。ヒーター105で熱せられた雰囲気ガスが、送風機107により搬送コンベアに載置されたワークに対して上側から吹きつけられる。下部炉体104も、上部炉体103と同様の構造であり、ヒーター106で熱せられた雰囲気ガスが、送風機108によりワークに対して下側から吹きつけられる。
【0028】
図1に示すように、本発明の第1実施形態例に係るフラックス回収装置1は、リフロー装置100の加熱ゾーンに相当するゾーンZ6〜Z8に接続される。すなわち、加熱ゾーンに充満した雰囲気ガスは、加熱ゾーンとフラックス回収装置1とを連通した雰囲気ガス導入用パイプ109を介してフラックス回収装置1へ導入される。フラックス回収装置1にてフラックス成分が回収された雰囲気ガスは、フラックス回収装置1と加熱ゾーンとを連通した、雰囲気ガス導入用パイプとは別の雰囲気ガス導出用パイプ110を介して加熱ゾーンへ戻される。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態例に係るフラックス回収装置1について、図2を用いながら説明する。図2に示すように、第1実施形態例に係るフラックス回収装置1は、雰囲気ガス導入用パイプ109と連通した雰囲気ガス導入部20と、雰囲気ガス導入部20の雰囲気ガス流れ下流側に設けられたフラックス回収促進剤供給部10と、フラックス回収促進剤供給部10と連通したフラックス回収本体部30と、前記フラックス回収本体部30の内部に配置されたフラックス回収部31と、フラックス回収本体部30の内部と雰囲気ガス導出用パイプ110とを連通した混合ガス導出部21と、を備えている。
【0030】
フラックス回収促進剤供給部10は、ハウジング11と、ハウジング蓋部12と、ハウジング11内部に装着される網目状のホルダー13と、ホルダー13内に収納された固形状のフラックス回収促進剤14と、ホルダー13内に収納されたフラックス回収促進剤14を加熱する加熱手段と、雰囲気ガス導入用パイプ109を介して加熱ゾーンから流通される雰囲気ガスとフラックス回収促進剤ガスとが混合される管状体の混合ガス生成室16と、を備えている。ハウジング11及びホルダー13は、フラックス回収促進剤14を収容できる内部形状を有する金属製の容器である。加熱手段は、リフロー装置100内部に充満した不活性ガス(すなわち、リフロー装置100の雰囲気ガス)由来の熱せられた不活性ガス(例えば窒素ガス)またはリフロー装置100内部に充満した不活性ガスとは別系統の熱せられた不活性ガス(例えば窒素ガス)をハウジング11内に導入する昇華用不活性ガス導入部15である。この熱せられた不活性ガスは、図示しない熱せられた不活性ガスの供給源と連通した配管を流れ、この配管と連通した昇華用不活性ガス導入部15からハウジング11内へ供給されて、フラックス回収促進剤14の昇華用不活性ガスとして使用される。フラックス回収促進剤14は、ハウジング11に収容された状態で、ハウジング11内を流通する昇華用不活性ガスの熱風が吹き当てられて加熱、昇華される。
【0031】
昇華用不活性ガスの熱風を吹きつけられた固形状のフラックス回収促進剤14は、昇華してフラックス回収促進剤ガスとなり、昇華したフラックス回収促進剤14は、そのままハウジング11内を流通する昇華用不活性ガスに供給される。従って、昇華用不活性ガス導入部15を流れる昇華用不活性ガスの温度は、フラックス回収促進剤14に昇華現象が生じる温度以上に設定する。昇華用不活性ガス導入部15を流れる昇華用不活性ガスの温度は、フラックス回収促進剤14の昇華温度に応じ適宜設定可能であるが、例えば、230〜280℃程度である。また、昇華用不活性ガスの流量は、適宜選択可能であるが、例えば20〜30リットル/minである。また、ハウジング11の内部は、混合ガス生成室16と連通している。従って、生成したフラックス回収促進剤ガスは、昇華用不活性ガスとともにハウジング11内部から混合ガス生成室16へ導入される。
【0032】
一方で、混合ガス生成室16は、雰囲気ガス導入部20と雰囲気ガス導入用パイプ109を介してリフロー装置100の加熱ゾーンとも連通している。フラックス成分を含んだ加熱ゾーンの雰囲気ガスは、雰囲気ガス導入用パイプ109、フラックス回収装置1の雰囲気ガス導入部20の順に流通することで、加熱ゾーンから混合ガス生成室16へ導入される。このように、フラックス回収促進剤ガスとフラックス成分を含んだ雰囲気ガスが、いずれも混合ガス生成室16に流入することで、フラックス成分を含んだ雰囲気ガスにフラックス回収促進剤ガスが供給され、雰囲気ガスとフラックス回収促進剤ガスとの混合ガス(以下、単に、「混合ガス」ということがある。)が生成される。このように、固形状のフラックス回収促進剤14は加熱手段を用いて昇華されるので、安定的かつ定量的昇華が可能であり、フラックス回収促進剤14の雰囲気ガスへの供給量を容易に制御できる。また、加熱手段として熱せられた不活性ガスをハウジング11内に導入する昇華用不活性ガス導入部15を用いることで、加熱によりフラックス回収促進剤14が変形しても、安定的かつ定量的昇華が可能である。
【0033】
図2に示すように、フラックス回収装置1のフラックス回収本体部30の内部には、モーター51で駆動するターボファン50が設けられている。ターボファン50の旋回翼によって、図2の黒矢印に示すように、雰囲気ガスの還流系が生じる。すなわち、ターボファン50を駆動させると、リフロー装置100の加熱ゾーンに充満していた雰囲気ガスが、強制的に、雰囲気ガス導入用パイプ109、フラックス回収装置1、雰囲気ガス導出用パイプ110の順に流されて最終的にリフロー装置100の加熱ゾーンへ戻される。また、ターボファン50によって、上記した雰囲気ガスの還流系が生じるとともに、フラックス回収促進剤ガスが、強制的にハウジング11から混合ガス生成室16へ流される。すなわち、ハウジング11から混合ガス生成室16へのフラックス回収促進剤ガスの流入及びフラックス成分を含んだ雰囲気ガスの加熱ゾーンから混合ガス生成室16への導入は、いずれもフラックス回収装置1に設けられたターボファン50により行なわれる。このように、フラックス回収促進剤ガスがハウジング11から混合ガス生成室16へ積極的に流れることにより、加熱ゾーンから雰囲気ガス導入用パイプ109を通って混合ガス生成室16へ流入した雰囲気ガスに、フラックス回収促進剤ガスが供給される。
【0034】
本発明で使用するフラックス回収促進剤14は、雰囲気ガスに含まれる気化したフラックス成分を粉体等の固体として回収できるものであれば特に限定されず、例えば、メラミン、メラミン誘導体、過酸化触媒及び水酸化物等のアルカリ物質が挙げられる。メラミン誘導体には、イミノ基、メチロール基、メトキシメチル基の官能基を含むアルキル化メラミン等を例示することができ、アルキル化メラミンには、例えば、下記一般式(i)
【0035】
【化1】

【0036】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ相互に独立に、水素、メチロール基またはメトキシメチル基を表す)のものを挙げることができる(尚、メラミンは、R1、R2、R3、R4、R5、R6全て水素原子)。市販されているメラミン誘導体には、例えば、(株)三和ケミカル製の「ニカラックMW−30HM」、「ニカラックMW−390」、「ニカラックMW−100LM」、「ニカラックMX−750LM」等を挙げることができる。
【0037】
また、フラックス回収促進剤14の態様は固体であれば特に限定されず、例えば、粉体状、粒子状でもよく、また、粉体状や粒子状のフラックス回収促進剤をプレス機等で所定形状に成型した固形物としてもよい。上記実施形態例では、取り扱い性を容易化するために、粉体をプレス機で板状に成型したフラックス回収促進剤14を用いている。
【0038】
図2に示すように、混合ガス生成室16にて生成された、雰囲気ガスとフラックス回収促進剤ガスとの混合ガスは、フラックス回収本体部30の上部に配置されたターボファン50により、強制的に、混合ガス生成室16から混合ガス生成室16と連通したフラックス回収本体部30へ導入される。第1実施形態例に係るフラックス回収装置1では、雰囲気ガス導入部20は、フラックス回収本体部30の底面40から離れた位置、すなわち、高い位置に設けられている。
【0039】
フラックス回収本体部30は、平面視矩形状の金属製の箱状体である。箱状体の内部、すなわちフラックス回収本体部30の内部には、雰囲気ガス導入部20と同程度の高さ位置に、雰囲気ガス導入部20と連通した混合ガス受入れ部35が設けられている。相互に対向した2枚の金属製プレート36−1、36−2をフラックス回収本体部30の底面40に対して平行方向に配置することで、混合ガス受入れ部35が形成される。従って、混合ガス受入れ部35の空間はフラックス回収本体部30の底面40に対向するように形成されている。また、相互に対向した金属製プレート36−1、36−2間の間隔を調整することで混合ガス受入れ部35の容積を適宜選択できる。
【0040】
この混合ガス受入れ部35は、さらに、フラックス回収本体部30内部の縦方向の角部に設けられた金属製の導風パイプ37と連通した構造となっている。すなわち、混合ガス受入れ部35は、雰囲気ガス導入部20と導風パイプ37とに連通している。
【0041】
導風パイプ37は、例えば、フラックス回収本体部30の底面40と直交方向の4箇所の角部に、それぞれ1つずつ配置されている。また、導風パイプ37は、フラックス回収本体部30の底面40近くに開口部38が設けられている。従って、図2の黒矢印で示すように、ターボファン50を駆動させると、雰囲気ガスとフラックス回収促進剤ガスとの混合ガスは、混合ガス生成室16からフラックス回収本体部30内部の混合ガス受入れ部35へ流れ、さらに、混合ガス受入れ部35を流通した混合ガスは4本の導風パイプ37の内部へ流れて、それぞれの導風パイプ37の開口部38からフラックス回収本体部30内部へ吹き出される。すなわち、混合ガスは、4本の導風パイプ37によって4本の流れに分割される。従って、混合ガスは、フラックス回収本体部30の底面40付近の4つの角部から分岐して噴出されることとなる。
【0042】
図2に示すように、フラックス回収本体部30には、底面40と混合ガス受入れ部35との間に、フラックス回収本体部30の底面40に対して平行方向に仕切り板32が設けられている。フラックス回収装置1では、複数(図2では3枚)の仕切り板32−1、32−2、32−3が、配置されている。仕切り板32−1、32−2、32−3の材質は、いずれも金属である。3枚の仕切り板32−1、32−2、32−3は、表面が相互に対向するようにほぼ等間隔に並べられている。
【0043】
また、図3に示すように、仕切り板32−1には貫通孔33−1が4個、仕切り板32−2には貫通孔33−2が4個、仕切り板32−3には貫通孔33−3が4個、それぞれ仕切り板32−1、32−2、32−3の中央に対して対称の位置に設けられている。フラックス回収本体部30の底面40付近の開口部38から吹き出された混合ガスは、仕切り板32−1の貫通孔33−1、仕切り板32−2の貫通孔33−2、仕切り板32−3の貫通孔33−3の順に通過しながら底面40から上部のターボファン50の方向へ強制的に流される。すなわち、仕切り板32−1、32−2、32−3の表裏両面と貫通孔33−1、33−2、33−3、それにフラックス回収本体部30の内壁面により、混合ガス流路が形成される。この混合ガス流路が、フラックス回収装置1のフラックス回収部31となる。
【0044】
図3に示すように、3枚の仕切り板32−1、32−2、32−3のうち、少なくとも、隣接した関係にある仕切り板32−1と仕切り板32−2については、4つの貫通孔33−1の配置箇所と4つの貫通孔33−2の配置箇所がそれぞれ相違する。同様に、隣接した関係にある仕切り板32−2と仕切り板32−3についても、4つの貫通孔33−2の配置箇所と4つの貫通孔33−3の配置箇所がそれぞれ相違する。よって、混合ガスの流路はラビリンス構造となっている。従って、混合ガスの流れは、ラビリンス構造を有する混合ガス流路により、仕切り板32−1、32−2、32−3の面への衝突と貫通孔33−1、33−2、33−3の通過を繰り返して、底面40からターボファン50の方向へ蛇行しながら進んでいく。
【0045】
混合ガスがラビリンス構造の混合ガス流路を流れると、混合ガスを冷却しなくてもフラックス成分が仕切り板32−1、32−2、32−3の面に固体状で付着する。これにより、雰囲気ガスからフラックス成分が回収される。これは、混合ガスの流れが仕切り板32−1、32−2、32−3の面に衝突すると、雰囲気ガスに含まれるフラックス成分がフラックス回収促進剤14(例えば、メラミン)の表面と架橋し、気化していたフラックス成分が固体となって、フラックス回収促進剤14とともに仕切り板32−1、32−2、32−3の面や付近のフラックス回収本体部30内壁面に付着するためと考えられる。そして、仕切り板32−1、32−2、32−3への衝突と貫通孔33−1、33−2、33−3の通過を複数回繰り返す(図2では3枚の仕切り板を設けたので3回繰り返す)間に、フラックス成分が仕切り板32−1、32−2、32−3の面や付近のフラックス回収本体部30内壁面に付着していき、高温状態の混合ガスからフラックス成分が回収される。
【0046】
フラックス回収部31にてフラックス成分が回収された混合ガスは、ラビリンス構造の混合ガス流路とフラックス回収本体部30の外側方向に突設された混合ガス導出部21とに連通した中継部39へ流れる。
【0047】
図2に示すように、中継部39の空間は、底部40から最も離れた仕切り板32−3のターボファン側、すなわち、フラックス回収部31の混合ガス流れ下流側に配置されている。また、中継部39は、上記した混合ガス受入れ部35を形成する2枚の金属製プレート36‐1、36‐2により、混合ガス受入れ部35と区分されている。従って、中継部39の空間は、混合ガス受入れ部35を上下から挟むように配置されており、混合ガス受入れ部35の中央部を縦断するように設けられた金属パイプ52により、上下一体の空間が形成されている。また、中継部39にはターボファン50が収容されている。
【0048】
中継部39を流通した混合ガスは、中継部39と連通した混合ガス導出部21を通り、混合ガス導出部21から混合ガス導出部21と連通した雰囲気ガス導出用パイプ110を介してリフロー装置100の加熱ゾーンへ戻される。
【0049】
このように、第1実施形態例のフラックス回収装置1は、フラックス成分の回収にメラミン等のフラックス回収促進剤14を用いるので、フラックス成分の回収効率に優れている。よって、リフロー装置100の冷却ゾーンにおけるフラックス成分のワークへの付着を防止できる。また、雰囲気ガスを強制冷却しなくてもフラックス成分が回収されるので、フラックス回収工程における消費エネルギーを低減できる。さらに、仕切り板32−1、32−2、32−3の貫通孔33−1、33−2、33−3の大きさを適宜設定(例えば、1辺が30〜70mmの正方形)することで、フラックス成分による目詰まりを防止できるので、フラックス回収装置1のメンテナンス周期を大幅に延長できる。
【0050】
ここで、図4を用いて、フラックス成分の回収機構について詳細に説明する。混合ガスの流れが仕切り板32に衝突すると、混合ガスの運動エネルギーが減殺される。すると、まず、混合ガスに含有されている気化していたフラックス回収促進剤14(例えば、メラミンやアルカリ性物質)が仕切り板32の面や本体部30内壁面で核41を形成すると考えられる(図4(a))。
【0051】
これは、例えば、フラックス回収促進剤14としてメラミンを用いる場合、メラミンは昇華性を有するので、混合ガスの運動エネルギーが減殺されると、気体状のメラミンは高温状態であっても直接固体に相変化して粉体状の核41となるためと考えられる。さらに、メラミンは、フラックスの構成成分であるアビエチン酸、ピマール酸、デヒドロアビエチン酸などの有機酸42と触媒的に架橋反応を起こす性質を有するので、メラミンの核41が形成されると、気化していた有機酸42がメラミンの核41と架橋し、メラミン・有機酸吸着体43が形成されると考えられる(図4(b))。そして、メラミンはメラミン・有機酸吸着体43中を拡散する性質を持っているので、粉体状の核41となっていたメラミンはメラミン・有機酸吸着体43の表面側へ移動し(図4(c))、メラミン・有機酸吸着体43の表面側へ移動したメラミンの核41は、さらに、別の有機酸42と架橋する(図4(d))。これを繰り返すことで、混合ガスを強制的に冷却しなくても、仕切り板32の面やフラックス回収本体部30内壁面でフラックス成分を有する粉体44(固体)が成長していくと考えられる。
【0052】
また、例えば、フラックス回収促進剤14としてアルカリ性物質を用いる場合、混合ガスの運動エネルギーが減殺されて高温状態で形成されたアルカリ性物質の核41´は、フラックスの構成成分であるアビエチン酸、ピマール酸、デヒドロアビエチン酸などの有機酸42と中和反応をすることで有機酸42を捕捉し、中和反応生成物であるアルカリ性物質・有機酸吸着体43´を形成すると考えられる。あわせて、アルカリ性物質・有機酸吸着体43´の分子量は大きくなって分子間力が増すことでアルカリ性物質・有機酸吸着体43´の融点は有機酸42より上昇するので、アルカリ性物質・有機酸吸着体43´は粉体44(固体)状で回収されると考えられる。このように、粉体44(固体)状のアルカリ性物質・有機酸吸着体43´に、アルカリ性物質の核41´と気化したフラックス成分がさらに吸着するのを繰り返すことで、混合ガスを強制的に冷却しなくても、仕切り板32の面上やフラックス回収本体部30内壁面でフラックス成分を有する粉体44(固体)が成長していくと考えられる。
【0053】
次に、本発明の第1実施形態例に係るフラックス回収装置1の変形例について、図5を用いながら説明する。なお、図中、第1実施形態例に係るフラックス回収装置1と同じ構成については、同一の符号を用い、説明は省略する。
【0054】
図5に示すように、フラックス回収装置1の変形例であるフラックス回収装置1´では、加熱手段として、昇華用不活性ガス導入部15に代えてヒーター15´を用いている点でフラックス回収装置1と相違する。ヒーター15´は、ハウジング11の内壁面に配置されている。ホルダー13内に収納されたフラックス回収促進剤14は、通電により発熱したヒーター15´によって加熱される。従って、ヒーター15´による加熱温度は、フラックス回収促進剤14に昇華現象が生じる温度以上に設定する。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態例に係るフラックス回収装置2について、図6、7を用いながら説明する。なお、図中、第1実施形態例に係るフラックス回収装置1と同じ構成については、同一の符号を用い、説明は省略する。
【0056】
図6、7に示すように、第2実施形態例に係るフラックス回収装置2は、3枚の仕切り板32−1、32−2、32−3の中央部に、さらに、それぞれ多孔質体支持孔62−1、62−2、62−3が設けられており、該多孔質体支持孔62−1、62−2、62−3に2枚重ねにした多孔質体61が嵌め入れられてフラックス回収部31に多孔質体61が設置されている点、導風パイプ37の開口部がフラックス回収本体部30の底面40近くだけではなく仕切り板32−1、32−2、32−3の間にも形成されるように、導風パイプ37の長手方向にフラックス回収装置1の開口部38よりも長い開口部68が設けられている点で、第1実施形態例に係るフラックス回収装置1と相違する。
【0057】
第2実施形態例に係るフラックス回収装置2は、上記したフラックス回収装置1と同様に、フラックス回収本体部30の底面40と混合ガス受入れ部35との間に、底面40に対して平行方向に仕切り板32が3枚設けられている。そして、3枚の仕切り板32−1、32−2、32−3に設けられた多孔質体支持孔62−1、62−2、62−3は、いずれの仕切り板32−1、32−2、32−3にも、同じ位置に、同一形状、同一寸法で形成されている。また、多孔質体支持孔62−1、62−2、62−3は、2枚重ねにした多孔質体61の断面形状と対応した形状となっている。多孔質体61は仕切り板32−1、32−2、32−3の多孔質体支持孔62−1、62−2、62−3に挿入されて、ラビリンス構造の混合ガス流路を横断するように配置される。混合ガス流路を流れる混合ガスは、仕切り板32−1、32−2、32−3に衝突するだけでなく、多孔質体61の大きな比表面積を有する多孔質構造によって流れを抑制されながら多孔質体61を通過する。よって、多孔質体61によって混合ガスの運動エネルギーはさらに減殺される。すると、混合ガスに含有されているフラックス回収促進剤14は、仕切り板32−1、32−2、32−3やフラックス回収本体部30内壁面だけでなく多孔質体61の表面でも核を形成する。
【0058】
例えば、フラックス回収促進剤14としてメラミンを使用すると、フラックス成分である有機酸42のガスが多孔質体61表面に形成されたメラミンの核41と架橋し、混合ガスを強制的に冷却しなくても、仕切り板32−1、32−2、32−3やフラックス回収本体部30内壁面だけでなく、多孔質体61表面にもフラックス成分を有する粉体44(固体)が成長していく。
【0059】
また、例えば、フラックス回収促進剤14としてアルカリ性物質を使用すると、多孔質体61表面に形成されたアルカリ性物質の核41´は、フラックス成分である有機酸42と中和反応をすることで有機酸42を捕捉すると考えられる。よって、混合ガスを強制的に冷却しなくても、仕切り板32−1、32−2、32−3やフラックス回収本体部30内壁面だけでなく、多孔質体61表面にもフラックス成分を有する粉体44(固体)が成長していく。
【0060】
このように、混合ガスの運動エネルギーが多孔質体61によってさらに減殺されるので、仕切り板32−1、32−2、32−3やフラックス回収本体部30内壁面におけるフラックス回収促進剤14の核の形成も、より容易化されると考えられる。加えて、混合ガスが多孔質体61内部を流通する際に、雰囲気ガスとフラックス回収促進剤ガスとの混合状態が均一化される。従って、フラックス回収部31に多孔質体61を設けることで、フラックス成分の回収効率がさらに向上する。多孔質体の種類は特に限定されないが、例えば、ステンレスウール、セラミックフィルター等を挙げることができる。
【0061】
多孔質体61は、上記のように混合ガス流路を横断するように配置するのに代えて、混合ガスの流れが衝突する仕切り板32−1、32−2、32−3の面に配置してもよく、混合ガス流路を横断するように配置するとともに、混合ガスの流れが衝突する仕切り板32−1、32−2、32−3の面にも配置してもよい。
【0062】
第2実施形態例に係るフラックス回収装置2では、導風パイプ37の開口部68が本体部30の底面40近くだけではなく仕切り板32−1、32−2、32−3の間にも形成されている。つまり、フラックス回収装置2では、導風パイプ37の開口部68が、フラックス回収装置1の開口部38よりも導風パイプ37の長手方向に長い態様となっている。このように、仕切り板32−1、32−2、32−3の間にも開口部68を配置することでターボファン50の負荷を低減できる。また、混合ガスの流れがより分散化されるので、回収されたフラックス成分による多孔質体61や貫通孔33−1、33−2、33−3の目詰まりを確実に防止できる。
【0063】
次に、本発明の第2実施形態例に係るフラックス回収装置2の変形例について、図8を用いながら説明する。なお、図中、第1実施形態例に係るフラックス回収装置1と同じ構成については、同一の符号を用い、説明は省略する。
【0064】
図8に示すように、フラックス回収装置2の変形例であるフラックス回収装置2´では、加熱手段として、昇華用不活性ガス導入部15に代えてヒーター15´を用いている点でフラックス回収装置2と相違する。ヒーター15´は、ハウジング11の内壁面に配置されている。ホルダー13内に収納されたフラックス回収促進剤14は、通電により発熱したヒーター15´によって加熱される。従って、ヒーター15´による加熱温度は、フラックス回収促進剤14に昇華現象が生じる温度以上に設定する。
【0065】
次に、本発明のフラックス回収装置の製造方法例について説明する。まず、フラックス回収本体部30の下部を形成する箱状体の4隅に、開口部38、68が底面40側となるように導風パイプ37を立設する。次に、フラックス回収本体部30の下部内壁面の突起63に仕切り板32−1、32−2、32−3の縁部を載せて、フラックス回収本体部30の下部に仕切り板32−1、32−2、32−3を設置する。このとき、混合ガス流路をラビリンス構造とするために、少なくとも、隣接した関係を有する仕切り板32−1、32−2、32−3同士については、4つの貫通孔33−1、33−2、33−3の位置がいずれも相違するように配置する。なお、フラックス回収部31に多孔質体61を設ける場合には、多孔質体支持孔62−1、62−2、62−3を有する仕切り板32−1、32−2、32−3を用意し、該多孔質体支持孔62−1、62−2、62−3に多孔質体61を差し込む。
【0066】
次に、雰囲気ガス導入部20と混合ガス導出部21と混合ガス受け入れ部35と中継部39とを備えたユニットに、ターボファン50とターボファンの駆動源であるモーター51を取り付ける。このとき、ターボファン50は中継部39に収容する。次に、フラックス回収本体部30の下部に、ターボファン50とモーター51を取り付けた前記ユニットを載置し、ボルトとナット等、所定の固定手段で固定する。最後に、フラックス回収促進剤14をハウジング11に収納したフラックス回収促進剤供給部10を、雰囲気ガス導入部20の雰囲気ガス流れ下流側に、雰囲気ガス導入部20に混合ガス生成室16が連通するよう接続する。
【0067】
次に、上記したフラックス回収装置1、1´、2、2´の使用方法例について説明する。ここでは、フラックス回収促進剤14にメラミンを使用した場合を例にして説明する。
【0068】
フラックス回収装置1、1´、2、2´は、リフロー装置100とは別体であり、リフロー装置100の加熱ゾーン近くに設置する。雰囲気ガス導入用パイプ109を用いて、リフロー装置100の加熱ゾーンとフラックス回収促進剤供給部10の混合ガス生成室16とを連通させる。また、雰囲気ガス導出用パイプ110を用いて、フラックス回収装置1、1´、2、2´の混合ガス導出部21とリフロー装置100の加熱ゾーンを連通させる。次に、フラックス回収促進剤供給部10の昇華用不活性ガス導入部15からハウジング11内へと流れる熱せられた昇華用不活性ガスまたはヒーター15´により、ハウジング11に収納されたメラミンを200〜260℃程度まで加熱し、昇華したメラミンを生成させる。一方で、フラックス回収装置1、1´、2、2´のターボファン50を駆動させて、雰囲気ガス導入用パイプ109を介してリフロー装置100の加熱ゾーンに充満している雰囲気ガスをフラックス回収装置1、2内へ吸引、導入する。このとき、ターボファン50の吸引力により、フラックス回収促進剤供給部10の混合ガス生成室16で、雰囲気ガスとメラミンガスの混合ガスが生成される。
【0069】
混合ガスの流量が例えば1000リットル/min程度となるように、ターボファン50の出力を調整する。また、混合ガスのメラミンガス供給量が2〜50mg/m3、好ましくは10〜20mg/m3となるように、加熱手段の出力(すなわち昇華用不活性ガスの流量(例えば20〜30リットル/min)と温度(例えば230〜280℃)またはヒーター15´の出力)を調整する。混合ガス生成室16で生成された雰囲気ガスとメラミンガスとの混合ガスは、混合ガス受け入れ部35、フラックス回収部31の順に流通し、フラックス回収部31を通過する間に雰囲気ガスからフラックス成分が回収される。フラックス成分が回収された雰囲気ガスは、フラックス回収部31から中継部39、混合ガス導出部21の順に流通し、混合ガス導出部21から雰囲気ガス導出用パイプ110を介してリフロー装置100の加熱ゾーンへ戻される。
【0070】
このとき、フラックス回収促進剤供給部10とフラックス回収部31の間、混合ガス導出部21またはフラックス回収促進剤供給部10とフラックス回収部31の間と混合ガス導出部21との両方の部位に、メラミンガス濃度を測定するために混合ガス採取手段を設けてもよい。混合ガス採取手段には、例えば、蓋部を有するガス採取口を挙げることができる。この場合、ガス採取口の蓋部を開け、ガス採取口からシリンジ等のガス採取器具を用いて混合ガスを採取する。混合ガスを採取後、ガス採取口の蓋部を閉める。GC/MS等の分析機器を用いて、採取した混合ガスに含まれるメラミンガス濃度を測定する。混合ガスの採取は、所定の時間間隔(例えば、数時間間隔)で実施する。メラミンガス濃度の測定結果に応じて、昇華用不活性ガスの流量・温度またはヒーター15´の出力と、ターボファン50の出力を調節することで、フラックス成分回収前の混合ガスへのメラミン供給量を調整し、また、混合ガス導出部21を流れるフラックス成分回収後の混合ガスのメラミン残留濃度を調整する。
【0071】
次に、フラックス回収装置のその他の実施態様例について説明する。なお、以下、図面を用いて説明する場合には、第1実施形態例に係るフラックス回収装置1と同じ構成については、同一の符号を用い、説明は省略する。
【0072】
上記フラックス回収装置1、1´、2、2´では、フラックス回収促進剤供給部10が取り付けられた雰囲気ガス導入部20は、混合ガス受入れ部35を介して導風パイプ37と連通していたが、これに代えて、混合ガス受入れ部35を介さずに、雰囲気ガス導入部20と導風パイプ37とを連通させてもよい。この実施形態例では、導風パイプ37が混合ガス受入れ部ともなっており、混合ガス生成室16で生成した混合ガスが、混合ガス生成室16から直接導風パイプ37内へ流通する。従って、この実施形態例では、フラックス回収本体部30内部に混合ガス受入れ部35を設けなくてもよい。
【0073】
上記フラックス回収装置1、1´、2、2´では、フラックス回収促進剤供給部10はフラックス回収本体部30から外側へ突出した雰囲気ガス導入部20の位置に設けられていたが、これに代えて、図9に示すように、フラックス回収本体部30の内部である混合ガス受け入れ部35に配置したフラックス回収装置3としてもよい。また、フラックス回収装置3のフラックス回収促進剤供給部10は、フラックス回収促進剤とフラックス回収促進剤を収納するハウジングとフラックス回収促進剤を加熱する加熱手段とからなる簡略な構成にしてもよい。
【0074】
従って、この第3の実施形態例に係るフラックス回収装置3では、混合ガス受け入れ部35において、昇華したフラックス回収促進剤が雰囲気ガスに供給されて、混合ガスが生成される。また、フラックス回収装置3では、フラックス回収促進剤の加熱手段としてヒーター15´を使用しているが、熱せられた昇華用不活性ガスをハウジング内に導入する昇華用不活性ガス導入部を使用してもよい。
【0075】
上記フラックス回収装置1、1´、2、2´は、リフロー装置100とは別体であったが、これに代えて、リフロー装置100に内蔵させる態様のフラックス回収装置4としてもよい。この第4の実施形態例に係るフラックス回収装置4は、例えば、リフロー装置100の加熱ゾーンに設けられた上部炉体103の側面部に収納される。
【0076】
図10に示すように、リフロー装置に内蔵されたフラックス回収装置4の基本構造は、上記フラックス回収装置1、1´、2、2´を横にした態様となっている。これは、フラックス回収装置4をリフロー装置100内蔵用にコンパクト化するためである。また、フラックス回収装置4も、図示しないターボファンによって、加熱ゾーンの雰囲気ガスと昇華したフラックス回収促進剤14が、フラックス回収装置4内へ導入される。
【0077】
フラックス回収装置4は、箱状体であるフラックス回収本体部30の内部に混合ガス流路ユニット76が設置されている。混合ガス流路ユニット76は、1つの貫通孔33´−1、33´−2、33´−3、33´−4、33´−5を有する仕切り板32´が、複数枚(図10では、5枚)、フラックス回収本体部30の底面40に対して直交方向に並列に立てられた構造となっている。5枚の仕切り板32´−1、32´−2、32´−3、32´−4、32´−5のうち、少なくとも隣接した仕切り板32´同士については、貫通孔33´−1、33´−2、33´−3、33´−4、33´−5の位置が相違するよう配置され、ラビリンス構造の混合ガス流路を形成している。
【0078】
また、混合ガス流路ユニット76には、横板70が、底面40と反対側の各仕切り板32´端部を覆うように配置されて、蓋部75との間に混合ガス受け入れ部35が形成されている。5枚の仕切り板32´−1、32´−2、32´−3、32´−4、32´−5のうち、雰囲気ガス流れの最上流側に位置する仕切り板32´−1は、仕切り板32´−2、32´−3、32´−4よりも長手方向に長い寸法(フラックス回収本体部30内部の高さと同じ寸法)を有しているので、フラックス回収本体部30内部は、仕切り板32´−1によって左右に分割されている。仕切り板32´−1の外側は混合ガス受け入れ部35となる。そして、仕切り板32´−1には、横板70から突出した位置に混合ガス導入口71が設けられている。この混合ガス導入口71により、横板70と蓋部75との間の混合ガス受け入れ部35と仕切り板32´−1の外側の混合ガス受け入れ部35が空間的に接続されている。また、雰囲気ガス流れの最下流側に位置する仕切り板32´−5も、仕切り板32´‐1と同じ寸法を有しているので、フラックス回収本体部30内部は、仕切り板32´−5によっても左右に分割されている。仕切り板32´−5の外側が中継部39となる。
【0079】
さらに、混合ガス流路ユニット76には、第1孔部72と第2孔部73を有する板74が、横板70に対して直交方向であってフラックス回収本体部30の内壁面に対して面状に接触するよう設置されている。第1孔部72は、雰囲気ガス導入部20に対応する位置であって、雰囲気ガス流れの最上流側に位置する仕切り板32´−1と雰囲気ガス流れの最下流側に位置する仕切り板32´−5との間に設けられている。第2孔部73は、混合ガス導出部21の位置に対応する位置であって、雰囲気ガス流れの最下流側に位置する仕切り板32´−5よりも外側に設けられている。
【0080】
上記した混合ガス流路ユニット76がフラックス回収本体部30に収容されることにより、フラックス回収本体部30の内部に、混合ガス受け入れ部35、ラビリンス構造の混合ガス流路を有するフラックス回収部31及び中継部39が形成される。フラックス回収本体部30の内部は蓋部75により閉鎖空間となっている。フラックス回収装置4でも、必要に応じて、フラックス回収本体部30の底面40や各仕切り板32´に多孔質体61を配置させてもよい。フラックス回収装置4では、フラックス回収本体部30の底面40に多孔質体61を敷いている。
【0081】
また、上記フラックス回収装置4では、フラックス回収促進剤14の加熱、昇華に、熱せられた昇華用不活性ガスをハウジング11内に導入する昇華用不活性ガス導入部15を使用しているが、これに代えて、ヒーターを使用してもよい。
【0082】
上記フラックス回収装置4では、フラックス回収促進剤供給部10はフラックス回収本体部30から外側へ突出した雰囲気ガス導入部20の位置に設けられているが、これに代えて、図11に示すように、フラックス回収本体部30の内部である混合ガス受け入れ部35に配置してもよい。また、フラックス回収装置3のフラックス回収促進剤供給部10は、フラックス回収促進剤とフラックス回収促進剤を収納するハウジングとフラックス回収促進剤を加熱する加熱手段とからなる簡略な構成にしてもよい。
【0083】
従って、この実施形態例に係るフラックス回収装置4´では、混合ガス受入れ部35において、昇華したフラックス回収促進剤が雰囲気ガスに供給される。また、フラックス回収装置4´では、フラックス回収促進剤の加熱手段としてヒーター15´を使用しているが、昇華用不活性ガスをハウジング内に導入する昇華用不活性ガス導入部を使用してもよい。
【0084】
上記各フラックス回収装置では、雰囲気ガス導入部20または混合ガス受入れ部35にフラックス回収促進剤供給部10を設けていたが、これに代えて、フラックス回収本体部30の底部40内壁側にフラックス回収促進剤とヒーターを配置し、ヒーターにてフラックス回収促進剤を加熱、昇華させる態様としてもよい。この場合には、フラックス回収本体部30の底部40において、昇華したフラックス回収促進剤が雰囲気ガスに供給される。
【0085】
上記リフロー装置100では、炉体内部の雰囲気ガスに不活性ガス(例えば窒素ガス)を使用し、またリフロー装置100に接続されるフラックス回収装置では、昇華用不活性ガスとして前記雰囲気ガスと同様に不活性ガス(例えば窒素ガス)を使用していたが、これに代えて、リフロー装置の炉体内部の雰囲気ガスにエアーを使用し、リフロー装置に接続されるフラックス回収装置では、フラックス回収促進剤の加熱、昇華用の熱せられたガスに、前記雰囲気ガスと同種のガスであるエアーや前記雰囲気ガスとは異種のガスである不活性ガス(例えば窒素ガス)を使用してもよい。
【0086】
上記フラックス回収装置1、1´、2、2では仕切り板32を3枚配置したが、仕切り板32の枚数は適宜選択可能であり、2枚でもよく、4枚以上でもよい。また、上記フラックス回収装置1、1´、2、2´では1枚の仕切り板32あたり4個の貫通孔33‐1、33‐2、33‐3を設けたが、1枚の仕切り板に設ける貫通孔の数は適宜選択可能であり、1〜3個でもよく5個以上でもよい。また、フラックス回収効率をより向上させるために、必要に応じて、フラックス回収部31を冷却する冷却ファンをフラックス回収本体部30に設置してもよい。
【0087】
また、第2実施形態例のフラックス回収装置2では、仕切り板32間にも開口部68を設け、さらにフラックス回収部31に多孔質体61を設置したが、これに代えて、フラックス回収部31に多孔質体61を設置せずに、仕切り板32間に開口部を68設ける態様としてもよく、仕切り板32間には開口部68を設けずにフラックス回収部31には多孔質体61を設置する態様としてもよい。
【0088】
また、図12に示すように、ラビリンス構造の混合ガス流路を有するフラックス回収部31に代えて、フラックス成分を遠心分離して回収する遠心分離器80を有するフラックス回収部を備えたフラックス回収装置5としてもよい。つまり、この第5の実施形態例に係るフラックス回収装置5では、フラックス回収機能を有する遠心分離器80に、フラックス回収促進剤14が収容されたフラックス回収促進剤供給部10を設けた形態となっている。遠心分離器80は、サイクロン機構を有する遠心分離器であり、略円筒状のサイクロン外周部81と、このサイクロン外周部81に収容された略円筒状のサイクロン内周部82とで二重管状に形成されている。サイクロン内周部82内の混合ガス流れ下流側には、ターボファン50を保護するためのフィルタ83が設けられている。また、サイクロン外周部81の外壁面には、遠心分離器80内に導入された混合ガスを冷却するための、冷却プレート84が設けられている。
【0089】
フラックス回収促進剤供給部10にて、雰囲気ガス導入部20を流通した雰囲気ガスに昇華したフラックス回収促進剤14が供給されて混合ガスが生成する。生成した混合ガスは、遠心分離器80内に流入し、冷却プレート84によって冷却されながらサイクロン外周部81の内壁とサイクロン内周部82の外壁との間で螺旋状の下向き気流を形成する。この間に冷却されて液化したフラックス成分が遠心分離されてサイクロン外周部81の内壁に付着する。サイクロン外周部81の内壁に付着したフラックス成分は、サイクロン外周部81の内壁に沿って自重落下し、フラックス収容部85に回収される。また、サイクロン内周部82の外壁に付着したフラックス成分は、サイクロン内周部82に沿って自重落下し、同じくフラックス収容部85に回収される。
【0090】
液化したフラックス成分が除去された混合ガスは、サイクロン内周部82の下端部からサイクロン内周部82内へと吸込まれ、混合ガス中に残留したフラックス成分の微粒子がフィルタ83により除去された後、混合ガス導出部21から雰囲気ガス導出用パイプ110を介してリフロー装置へ戻される。フラックス回収装置5では、フラックス回収促進剤14を昇華させるために、昇華用不活性ガス導入部15を使用しているが、これに代えてヒーターを使用してもよい。
【0091】
フラックス回収装置5では、遠心分離器80のサイクロン機構と冷却プレート84による冷却作用によって、高効率のフラックス成分の回収が可能である。
【0092】
また、ラビリンス構造の混合ガス流路を有するフラックス回収部31を備えたフラックス回収装置と、フラックス成分を遠心分離して回収する遠心分離器80を有するフラックス回収部を備えたフラックス回収装置5とを、ともにリフロー装置100に接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のフラックス回収装置及びフラックス回収方法は、雰囲気ガスからのフラックス成分の回収に伴うエネルギー消費を抑えつつフラックスの回収効率を向上させ、また、メンテナンス間隔を長期間とることができ、メンテナンス作業も簡易なので、はんだ付け装置による配線基板への電子部品の実装分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0094】
1、2、3、4、5 フラックス回収装置
10 フラックス回収促進剤供給部
14 フラックス回収促進剤
15 昇華用不活性ガス導入部
15´ ヒーター
20 雰囲気ガス導入部
21 混合ガス導出部
30 フラックス回収本体部
31 フラックス回収部
32、32´ 仕切り板
61 多孔質体
80 遠心分離器
100 リフロー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付け装置から排出されたフラックス成分を含む雰囲気ガスが流通する雰囲気ガス導入部と、
フラックス回収促進剤を加熱手段により昇華させて、前記雰囲気ガス導入部を通過した雰囲気ガスに、前記昇華したフラックス回収促進剤を供給するフラックス回収促進剤供給部と、
前記雰囲気ガスと前記フラックス回収促進剤との混合ガスが流通する、複数の仕切り板と前記仕切り板に設けられた孔部によりラビリンス構造の流路が形成されたフラックス回収部と、
前記フラックス回収部を通過した前記混合ガスを外部へ導出する混合ガス導出部と、を備えたことを特徴とするフラックス回収装置。
【請求項2】
前記フラックス回収促進剤が、メラミン、メラミン誘導体、過酸化触媒及びアルカリ性物質からなる群から選択された少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のフラックス回収装置。
【請求項3】
前記アルカリ性物質が、水酸化物であることを特徴とする請求項2に記載のフラックス回収装置。
【請求項4】
前記フラックス回収促進剤供給部の加熱手段が、ヒーターまたは熱せられた不活性ガスを前記フラックス回収促進剤に供給する昇華用不活性ガス導入部であることを特徴とする請求項1に記載のフラックス回収装置。
【請求項5】
前記ラビリンス構造の流路に、多孔質体が設置されていることを特徴とする請求項1に記載のフラックス回収装置。
【請求項6】
前記フラックス回収促進剤供給部と前記フラックス回収部との間及び/または前記混合ガス導出部に、前記混合ガス中のフラックス回収促進剤濃度を測定するための混合ガス採取手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフラックス回収装置。
【請求項7】
前記フラックス回収部が、前記ラビリンス構造の流路に代えて、前記フラックス成分を遠心分離する遠心分離器を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフラックス回収装置。
【請求項8】
はんだ付け装置から排出されたフラックス成分を含む雰囲気ガスを、フラックス回収装置の雰囲気ガス導入部に流通させる工程と、
フラックス回収促進剤供給部の加熱手段によりフラックス回収促進剤を昇華させて、前記雰囲気ガス導入部を通過した雰囲気ガスに、前記昇華したフラックス回収促進剤を供給する工程と、
複数の仕切り板と前記仕切り板に設けられた孔部により形成されたラビリンス構造の流路にて、前記雰囲気ガスと前記フラックス回収促進剤との混合ガスに含まれるフラックス成分を回収する工程と、
前記ラビリンス構造の流路を通過した前記混合ガスを、混合ガス導出部から前記フラックス回収装置の外部へ導出する工程と、を有することを特徴とするフラックス回収方法。
【請求項9】
前記フラックス回収促進剤が、メラミン、メラミン誘導体、過酸化触媒及びアルカリ性物質からなる群から選択された少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項8に記載のフラックス回収方法。
【請求項10】
前記アルカリ性物質が、水酸化物であることを特徴とする請求項9に記載のフラックス回収方法。
【請求項11】
前記フラックス回収促進剤供給部の加熱手段が、ヒーターまたは熱せられた不活性ガスを前記フラックス回収促進剤に供給する昇華用不活性ガス導入部であることを特徴とする請求項8に記載のフラックス回収方法。
【請求項12】
前記ラビリンス構造の流路に、多孔質体が設置されていることを特徴とする請求項8に記載のフラックス回収方法。
【請求項13】
前記フラックス回収促進剤供給部と前記ラビリンス構造の流路との間及び/または前記混合ガス導出部に、前記混合ガス中のフラックス回収促進剤濃度を測定するための混合ガス採取手段が設けられていることを特徴とする請求項8に記載のフラックス回収方法。
【請求項14】
前記ラビリンス構造の流路に代えて、前記フラックス成分を遠心分離する遠心分離器にて該フラックス成分を回収することを特徴とする請求項8に記載のフラックス回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−33577(P2012−33577A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169843(P2010−169843)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】