説明

フラットパネルディスプレイ部材形成材料

【課題】厚膜形成時においてもクラックが発生せず、かつ透明性・耐熱性・平滑性に優れたFPD部材を、少ない塗工回数で形成可能な材料を提供すること。
【解決手段】(A)シリカ粒子と、(B)下記式(1)で表されるオルガノシランなどと、(C)有機金属化合物とを含有し、かつ前記有機金属化合物(C)を、前記シリカ粒子(A)(但し、固形分換算とする。)と前記シラン化合物(B)(但し、完全加水分解縮合物換算とする。)との合計100重量部に対して、0.0001〜10重量部の範囲で含有することを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
1nSiR24-n ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層および隔壁などのフラットパネルディスプレイ部材を形成するために用いられるフラットパネルディスプレイ部材形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平板状の蛍光表示体として、プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)およびフィールドエミッションディスプレイ(以下「FED」ともいう。)などのフラットパネルディスプレイ(以下「FPD」ともいう。)が注目されている。
【0003】
PDPは、透明電極を有するディスプレイであって、近接して配置された2枚のガラス基板の間に不活性ガス(例:アルゴン、ネオン)を封入し、不活性ガスのプラズマ放電により発生した紫外線を蛍光体に照射することにより、蛍光体を発光させて情報を表示するディスプレイである(図1参照)。一方、FEDは、電界印可によって陰極から真空中に電子を放出させ、その電子を陽極上の蛍光体に照射することにより、蛍光体を発光させて情報を表示するディスプレイである(図2参照)。
【0004】
上記PDPやFEDなどのFPDに用いられる部材(例:誘電体層)を形成する方法としては、無機粉体含有樹脂層を基板上に形成した後、該樹脂層を焼成する方法が知られている。例えば特許文献1では、誘電体層形成用の無機粉体含有樹脂として、ガラス粉末、結着樹脂および溶剤を含有するペースト状組成物が用いられている。
【0005】
最近では、発光効率を向上させるために誘電体層の誘電率を低くすることが求められている。例えば特許文献2および3では、電力消費量の少ない低誘電率の誘電体層を形成するために、ケイ素系材料を用いることが検討されている。
【0006】
特許文献2には、アルコキシド系有機シリコン化合物とSiO2粒子とを含有する混合
物を用いて、PDPを構成する誘電体層を形成する手法が開示されている。前記手法を用いることにより、誘電体層の比誘電率を充分に小さくできると記載されている。
【0007】
特許文献3には、PDPを構成する誘電体層を形成する材料として、−Si−O−結合を有する高分子化合物と易分解性樹脂との混合物が開示されている。前記混合物を用いることにより、誘電率が低く、かつクラックおよび剥離がない誘電体層を形成できると記載されている。また、特許文献3には、任意成分としてシリカや金属アルコキシドなどを用いてよいことも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−102273号公報
【特許文献2】特開2007−299642号公報
【特許文献3】特開2001−135222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、誘電体層の誘電率を低くすることが検討されている。ところが、上記特許文献2および3に記載の材料を用いてFPD部材(例:誘電体層)を形成すると、クラックが発生するという問題がある。特に、他のFPD部材による凹凸パターンが予め形成された基板上に誘電体層を形成する場合には、このようなクラックの発生が顕著となる。
特許文献3には、誘電体層をクラックなく形成できると記載されているものの、その性能は未だ充分ではない。
【0010】
また、FPDは高温条件下で製造されることもあることから、FPD部材には高い耐熱性が要求される。また、FPD前面板に用いられるFPD部材の場合には、透明性および平滑性に優れることが特に要求される。さらに、FPDの生産性の観点から、目的の膜厚を有するFPD部材を、少ない塗工回数で形成することも重要である。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、厚膜形成時においてもクラックが発生せず、かつ透明性・耐熱性・平滑性に優れたFPD部材を、少ない塗工回数で形成可能な材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、誘電体層形成時において、特許文献2ではアルコキシド系有機シリコン化合物とSiO2粒子との反応性が悪
いため、また特許文献3では−Si−O−結合を有する高分子化合物の架橋反応の反応性が悪いため、誘電体層でクラックが多く発生することがわかった。
【0013】
特許文献3には、任意成分としてシリカや金属アルコキシドを用いてもよいことが記載されている。ところが、これらは誘電体層のフィラーとして主に用いられるものであり、上記架橋反応の反応性を向上させるために配合されるものではない。特に金属アルコキシドに関しては、上記架橋反応を触媒するような少量ではなく、フィラーとして多量に配合することを意図していると考えられる。
【0014】
本発明者らは上記の反応性についてさらに検討を進めた。その結果、シリカ粒子およびシラン化合物とともに特定量の有機金属化合物を用いることによって、シリカ粒子とシラン化合物との反応性が格段に向上するため、FPD部材における上記課題(例:クラックの発生)を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明およびその好ましい態様は、以下の[1]〜[6]に関する。
【0015】
[1](A)シリカ粒子と、(B)下記式(1)で表されるオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物、および該オルガノシランの加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物と、(C)有機金属化合物とを含有し、かつ前記有機金属化合物(C)を、前記シリカ粒子(A)(但し、固形分換算とする。)と前記シラン化合物(B)(但し、完全加水分解縮合物換算とする。)との合計100重量部に対して、0.0001〜10重量部の範囲で含有することを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【0016】
1nSiR24-n ・・・(1)
[式(1)中、R1は炭素数1〜8の1価の有機基を示し、R1が複数存在する場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2は炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1
〜6のアシルオキシ基またはハロゲン原子を示し、R2が複数存在する場合はそれぞれ同
一であっても異なっていてもよい。nは0〜3の整数である。]
[2]前記有機金属化合物(C)が、下記式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記[1]に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【0017】
M(OR3r4s ・・・(2)
[式(2)中、Mはジルコニウム、チタン、アルミニウム、マグネシウムまたはナトリウムを示す。R3は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示し、R3が複数存在する場合はそれ
ぞれ同一であっても異なっていてもよい。R4はMに配位可能な配位子を示し、R4が複数存在する場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。rおよびsは、0以上4以下であり、かつ(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす整数である。]
[3]前記シリカ粒子(A)を固形分換算で65重量部以上100重量部未満の範囲で含有し、かつ前記シラン化合物(B)を完全加水分解縮合物換算で0重量部を超えて35重量部以下の範囲で含有する(但し、固形分換算でのシリカ粒子(A)と完全加水分解縮合物換算でのシラン化合物(B)との合計を100重量部とする。)ことを特徴とする前記[1]または[2]に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【0018】
[4](D)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量が10000〜500000であるアクリル系重合体を、さらに含有することを特徴とする前記[1]〜[3]の何れか1項に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【0019】
[5]前記式(2)において、Mがジルコニウム、チタンまたはアルミニウムであることを特徴とする前記[2]に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【0020】
[6]前記式(2)において、R4がケトン類、アルコール類、グリコールエーテル類
、カルボキシ類、アミン類、チオール類およびホスフィン類から選択される少なくとも1種の化合物に由来する配位子であることを特徴とする前記[2]または[5]に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、厚膜形成時においてもクラックが発生せず、かつ透明性・耐熱性・平滑性に優れたFPD部材を、少ない塗工回数で形成可能な材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、交流型のPDPの断面形状を示す模式図である。
【図2】図2は、一般的なFEDの断面形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のFPD部材形成材料について説明する。
【0024】
〔FPD部材形成材料〕
本発明のFPD部材形成材料は、シリカ粒子(A)とシラン化合物(B)と有機金属化合物(C)とを含有する。シラン化合物(B)は、後述する式(1)で表されるオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物、および該オルガノシランの加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物である。前記材料は、有機金属化合物(C)を、シリカ粒子(A)(但し、固形分換算とする。)とシラン化合物(B)(但し、完全加水分解縮合物換算とする。)との合計100重量部に対して、0.0001〜10重量部の範囲で含有する。
【0025】
《シリカ粒子(A)》
本発明のFPD部材形成材料は、シリカ粒子(A)を含有する。
【0026】
シリカ粒子(A)(SiO2粒子)は、例えば以下の形態で使用することができる。
(1)粉体
(2)水に分散した、水系のゾルまたはコロイド
(3)水以外の極性溶媒または非極性溶媒に分散した、溶媒系のゾルまたはコロイド
上記極性溶媒としては、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、メチルイソ
ブチルケトンなどのケトン系溶媒が挙げられ、上記非極性溶媒としては、トルエンなどが挙げられる。
【0027】
溶媒系のゾルまたはコロイドの形態でシリカ粒子(A)を用いる場合には、シリカ粒子(A)の分散性によっては、水、上記極性溶媒または非極性溶媒を用いて、該ゾルまたはコロイドをさらに希釈してもよい。また、シリカ粒子(A)の分散性を向上させるために、シリカ粒子に表面処理を施してもよい。
【0028】
表面が未処理のシリカ粒子(A)としては、日本アエロジル社製の#150、#200、#300などを用いることができ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子(A)としては、日本アエロジル社製のR972、R974、R976、RX200、RX300、RY200S、RY300、R106、東ソー社製のSS50A、富士シリシアのサイロホービック100などを用いることができる。
【0029】
また、水系のゾルまたはコロイド、溶媒系のゾルまたはコロイドの形態でシリカ粒子(A)を用いる場合には、その固形分濃度は、好ましくは0重量%を超えて50重量%以下、より好ましくは0.01〜40重量%である。前記固形分濃度のゾルまたはコロイドを、シラン化合物(B)や有機金属化合物(C)などと混合すればよい。
【0030】
上記(2)および(3)の形態の中では、コロイドの形態のシリカ粒子(A)(コロイダルシリカ)、特に溶媒系のコロイダルシリカを使用すると、FPD部材の透明性および耐熱性がさらに向上するため好ましい。
【0031】
溶媒系のコロイダルシリカとしては、日産化学工業社製のイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒分散コロイダルシリカ、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒分散コロイダルシリカ、トルエンなどの非極性溶媒分散コロイダルシリカなどが挙げられる。
【0032】
コロイダルシリカは、FPD部材形成材料の調製時に添加してもよく、シラン化合物(B)として、後述する(b1)成分の加水分解物または加水分解縮合物(以下、当該加水分解縮合物を単に「縮合物」ともいう。)を用いる場合には、加水分解・縮合時に添加してもよい。
【0033】
<シリカ粒子(A)の粒子径>
シリカ粒子(A)の体積基準での平均粒子径は、好ましくは30〜200nm、より好ましくは50〜150nmである。平均粒子径が前記範囲にあると、成膜時や高温下の使用時にクラックが発生しない、あるいは透明性に優れたFPD部材が得られるという点で好ましい。
【0034】
また、シリカ粒子(A)としては、粒子径が30〜300nmの範囲にある粒子を、体積基準で50%以上含有するシリカ粒子が好ましく、60%以上含有するシリカ粒子がより好ましく、70%以上含有するシリカ粒子がさらに好ましい。
【0035】
粒子径が30nm未満の粒子を多く含むことにより、粒子径が30〜300nmの範囲にある粒子の含有量が体積基準で上記値を下回る場合には、成膜時や高温下の使用時にクラックが発生することがある。一方、粒子径が300nmを越える粒子を多く含むことにより、粒子径が30〜300nmの範囲にある粒子の含有量が体積基準で上記値を下回る場合には、FPD部材の透明性が低下することがある。なお、粒子径が30〜300nmの範囲にある粒子の含有量が体積基準で上記値以上であれば、複数の粒子径分布を有するシリカ粒子を混合して用いてもよい。
【0036】
ここで、シリカ粒子(A)の粒子径分布は、シリカ粒子(A)を有機溶媒へ分散させた状態において、粒度分布測定装置(例:日機装社製のナノトラック粒度分布測定装置 UPA−150)を用いたレーザー回折法によって測定される。
【0037】
《無機粒子》
本発明のFPD部材形成材料は、形成するFPD部材の種類に応じて、シリカ粒子(A)以外の無機粒子を、本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
【0038】
上記無機粒子としては、ZrO2、Al23、AlGaAs、Al(OH)3、Sb25、Si34、Sn−In23、Sb−In23、MgF、CeF3、CeO2、3Al23・2SiO2、BeO、SiC、AlN、Fe、Co、Co−FeOx、CrO2、Fe4N、BaTiO3、BaO−Al23−SiO2、Baフェライト、SmCO5、YCO5、CeCO5、PrCO5、Sm2CO17、Nd2Fe14B、Al43、α−Si、SiN4、C
oO、Sb−SnO2、Sb25、MnO2、MnB、Co34、Co3B、LiTaO3、MgO、MgAl24、BeAl24、ZrSiO4、ZnSb、PbTe、GeSi、
FeSi2、CrSi2、CoSi2、MnSi1.73、Mg2Si、β−B、BaC、BP、TiB2、ZrB2、HfB2、Ru2Si3、TiO3、PbTiO3、Al2TiO5、Zn2SiO4、Zr2SiO4、2MgO2−Al23−5SiO2、Nb25、Li2O−Al2
3−4SiO2、Mgフェライト、Niフェライト、Ni−Znフェライト、Liフェライト、Srフェライトなどからなる無機粒子が挙げられる。
【0039】
上記無機粒子は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記無機粒子としては、上記例示の無機化合物の複合体を挙げることもできる。
【0040】
《シラン化合物(B)》
本発明のFPD部材形成材料は、以下のようなシラン化合物(B)を含有する。本発明のFPD部材形成材料がシラン化合物(B)を含有することで、FPD部材(例:誘電体層)を形成するための成膜時、およびFPD部材(例:誘電体層)が高温下に置かれた時のクラックの発生を抑えることが出来る。
【0041】
シラン化合物(B)は、下記式(1)で表わされるオルガノシラン(以下「(b1)成分」あるいは「オルガノシラン(1)」ともいう。)、(b1)成分の加水分解物、および(b1)成分の縮合物(以下、これらの加水分解物および縮合物をまとめて「(b2)成分」ともいう。)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0042】
1nSiR24-n ・・・(1)
式(1)中、R1は炭素数1〜8の1価の有機基を示し、R1が複数存在する場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2は炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜
6のアシルオキシ基またはハロゲン原子を示し、R2が複数存在する場合はそれぞれ同一
であっても異なっていてもよい。nは0〜3の整数である。
【0043】
本発明において、(b1)成分を構成するオルガノシランは1種であっても2種以上であってもよく、(b2)成分を構成する加水分解物および縮合物は、何れか一方を用いても双方を用いてもよく、また各々1種であっても2種以上であってもよい。
【0044】
<(b1)成分>
(b1)成分を構成するオルガノシランを表す上記式(1)において、R1は炭素数1
〜8の1価の有機基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチ
ル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;
アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基;
ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアネート基などが挙げられる。但し、上記有機基において、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数1〜6のアシルオキシ基を除く。
【0045】
さらにR1としては、これらの有機基の置換誘導体などが挙げられる。前記置換誘導体
の置換基としては、ハロゲン原子、無置換のまたは置換基を有するアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などが挙げられる。但し、R1が前記置換誘導体からなる場合において、該置換誘導体の炭素数は、置換基を構成する
炭素原子を含めて8以下であることが好ましい。
【0046】
また、(b1)成分を構成するオルガノシランを表す上記式(1)において、R2は炭
素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基またはハロゲン原子を示す。
【0047】
2を示す炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロ
ポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基などが挙げられる。
【0048】
2を示す炭素数1〜6のアシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキ
シ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、カプロイルオキシ基などが挙げられる。
【0049】
2を示すハロゲン原子および上記置換誘導体の置換基として例示したハロゲン原子と
しては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0050】
(b1)成分の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類(式(1)においてn=0);
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,
4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類(式(1)においてn=1);
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類(式(1)においてn=2);
メチルトリアセトキシシラン(式(1)においてn=1);
ジメチルジアセトキシシラン(式(1)においてn=2)が挙げられる。
【0051】
<(b2)成分>
(b2)成分は、上述のとおり、(b1)成分の加水分解物および(b1)成分の縮合物を便宜上指す。(b1)成分の加水分解物は、(b1)成分の1種単独の加水分解物であってもよく、2種以上の加水分解物であってもよい。また、(b1)成分の縮合物は、(b1)成分の1種単独の縮合物であってもよく、2種以上の縮合物であってもよい。
【0052】
上記加水分解物は、(b1)成分に含まれる1〜4個の基R2の少なくとも1個が加水
分解されていればよく、例えば、1個の基R2が加水分解されたもの、2個以上の基R2が加水分解されたもの、あるいはこれらの混合物である。
【0053】
上記縮合物は、(b1)成分が加水分解して生成する加水分解物中のシラノール基が縮合して、Si−O−Si結合を形成したものである。また、シラノール基は全て縮合している必要はなく、一部のシラノール基が縮合したもの、大部分または全部のシラノール基が縮合したもの、あるいはこれらの混合物である。
【0054】
(b1)成分の縮合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値で、好ましくは500〜50000、より好ましくは600〜40000である。(b1)成分の縮合物のMwが前記範囲にあると、成膜時や高温下の使用時にクラックの発生を抑制することができる。
【0055】
(b2)成分の市販品としては、例えば三菱化学(株)製の「MKCシリケート」、コルコート社製のエチルシリケート、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のシリコーンレジン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の末端ヒドロキシポリシロキサンレジン(例:商品名「YR3370」、「XC−96−723」、「XF3905」)、信越化学工業(株)製のシリコーンレジン、多摩化学工業社製の「MS51」、チッソ社製のポリジメチルシロキサンを用いることができる。
【0056】
<好ましいシラン化合物(B)>
シラン化合物(B)としては、下記化合物が好ましい。
・テトラエトキシシラン
・テトラエトキシシランの加水分解物および縮合物
・メチルトリメトキシシランの加水分解物および縮合物
・ジメチルジメトキシシランの加水分解物および縮合物
・ジメチルジメトキシシランとメチルトリメトキシシランとの共加水分解物および縮合物
<シリカ粒子(A)およびシラン化合物(B)の含有量>
本発明のFPD部材形成材料において、シリカ粒子(A)およびシラン化合物(B)の好ましい含有量は下記のとおりである。但し、シリカ粒子(A)の含有量は固形分換算で、シラン化合物(B)の含有量は完全加水分解縮合物換算である。
【0057】
本発明のFPD部材形成材料は、シリカ粒子(A)を65重量部以上100重量部未満の範囲で含有し、かつシラン化合物(B)を0重量部を超えて35重量部以下の範囲で含有することが好ましく、シリカ粒子(A)を70〜98重量部の範囲で含有し、かつシラン化合物(B)を2〜30重量部の範囲で含有することがより好ましい。但し、シリカ粒子(A)とシラン化合物(B)との合計を100重量部とする。
【0058】
シリカ粒子(A)とともに上記無機粒子を用いる場合には、本発明のFPD部材形成材料は、シリカ粒子(A)および上記無機粒子を合計で65重量部以上100重量部未満の範囲で含有し、かつシラン化合物(B)を0重量部を超えて35重量部以下の範囲で含有することが好ましく、シリカ粒子(A)および上記無機粒子を合計で70〜98重量部の範囲で含有し、かつシラン化合物(B)を2〜30重量部の範囲で含有することがより好ましい。但し、シリカ粒子(A)と上記無機粒子とシラン化合物(B)との合計を100重量部とする。
【0059】
ここで「完全加水分解縮合物」とは、シラン化合物(B)中に含まれるSi−R2基(
式中、R2は上記式(1)中のR2と同義である。)の全て(100%)が加水分解することによってSi−OH基が形成され、さらに当該Si−OH基が完全に縮合することによってシロキサン構造が形成されたものをいう。
【0060】
シリカ粒子(A)、上記無機粒子およびシラン化合物(B)を上記範囲で用いることにより、耐熱性に優れた塗膜を得ることができる。シラン化合物(B)の含有量が上記範囲を超える場合には、成膜時や高温下の使用時にクラックが発生することがある。
【0061】
《有機金属化合物(C)》
本発明のFPD部材形成材料は、有機金属化合物(C)を含有する。FPD部材形成時に、有機金属化合物(C)はシリカ粒子(A)中のOH基と速やかに反応し、続いて、反応した該化合物(C)とシラン化合物(B)との置換反応が効率よく進行する。このため、シラン化合物(B)を介してシリカ粒子(A)同士の結合が強固となり、膜の強度が向上する、という効果が発現する。有機金属化合物(C)を含有しない系では、FPD部材形成時のシリカ粒子(A)とシラン化合物(B)との反応性が悪いため、膜の強度はそれほど向上しない。
【0062】
有機金属化合物(C)としては、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機スズ化合物などが挙げられる。これらの中では、反応性の面から、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物および有機アルミニウム化合物が好ましく、有機チタン化合物が特に好ましい。
【0063】
有機金属化合物(C)の具体例としては、下記式(2)で表される化合物(以下「有機金属化合物(2)」ともいう。)、1個のスズ原子に炭素数1〜10のアルキル基が1〜2個結合した4価のスズ化合物(以下「有機スズ化合物(a)」ともいう。)、これらの部分加水分解物(具体的には、有機金属化合物(2)の部分加水分解物および有機スズ化合物(a)の部分加水分解物)が挙げられる。
【0064】
有機金属化合物(C)の中では、有機金属化合物(2)が好ましい。また、有機金属化
合物(C)は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0065】
<有機金属化合物(2)>
有機金属化合物(2)は下記式(2)で表される。
【0066】
M(OR3r4s ・・・(2)
式(2)中、Mはジルコニウム、チタン、アルミニウム、マグネシウムまたはナトリウムを示し、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムが好ましく、チタンが特に好ましい。R3は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示し、R3が複数存在する場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R4はMに配位可能な配位子を示し、R4が複数存在する場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。rおよびsは、0以上4以下であり、かつ(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす整数である。
【0067】
上記式(2)において、炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては、アルキル基(例:メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基)、シクロアルキル基(例:シクロヘキシル基)、フェニル基などが挙げられる。
【0068】
上記式(2)において、sが0ではない有機金属化合物を用いてもよい。すなわち、M(OR3tで表される化合物(式中、MおよびR3は上記式(2)中のMおよびR3と同義であり、tはMの原子価を示す。)中の、複数あるOR3の一部または全部が配位子R4で置換された有機金属化合物を用いてもよい。
【0069】
配位子R4としては、アセチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、エチルア
セトアセテート、プロピルアセトアセテート、n−ブチルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテート、アセトン、アセチルアセトン(2,4−ペンタジオン)、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトンなどのケトン類;
メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t―ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどのアルコール類;
メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;
蟻酸、酢酸などのカルボキシ類;トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、ビピリジン、1,10−フェナントロリンなどのアミン類;チオール類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類などに由来する配位子が挙げられる。
【0070】
これらの配位子の中では、ケトン類に由来する配位子が好ましく、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテート、n−ブチルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテートなどに由来する配位子や、アセチルアセトンに由来する配位子であるアセチルアセトナートがより好ましい。また、配位子R4を誘導する上記化
合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0071】
配位子R4を有する有機金属化合物(2)は、M(OR3tで表される化合物と配位子
4を誘導する化合物とを混合・撹拌することによって得ることができる。必要であれば
、混合・攪拌時に20〜80℃に加熱してもよい。
【0072】
有機金属化合物(2)の具体例としては、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;
テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(メチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタンなどの有機チタン化合物;
トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;
マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシドなどのマグネシウムアルコキシドなどの有機マグネシウム化合物;
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのナトリウムアルコキシドなどの有機ナトリウム化合物が挙げられる。
【0073】
有機金属化合物(2)の中では、反応性の面から、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物および有機アルミニウム化合物が好ましく、有機チタン化合物が特に好ましい。また、有機金属化合物(2)は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0074】
<有機スズ化合物(a)>
有機スズ化合物(a)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
・下記式(a−1)〜(a−14)で表される化合物などのカルボン酸型有機スズ化合物
・下記式(b−1)〜(b−9)で表される化合物などのメルカプチド型有機スズ化合物・下記式(c−1)〜(c−3)で表される化合物などのスルフィド型有機スズ化合物
・下記式(d−1)〜(d−4)で表される化合物などのクロライド型有機スズ化合物
・下記式(e−1)〜(e−2)で表される化合物などの有機スズオキサイド
・該有機スズオキサイドとエステル化合物(例:シリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチル)との反応生成物
有機スズ化合物(a)は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0075】
【化1】

【0076】
【化2】

【0077】
【化3】

【0078】
【化4】

【0079】
【化5】

【0080】
<有機金属化合物(C)の含有量>
本発明のFPD部材形成材料は、有機金属化合物(C)を、固形分換算でのシリカ粒子(A)と完全加水分解縮合物換算でのシラン化合物(B)との合計100重量部に対して、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜2重量部、より好ましくは0.01〜2重量部の範囲で含有する。
【0081】
有機金属化合物(C)の含有量が上記範囲にあると、膜の強度が向上するため、クラックの発生が減少するという効果が得られる。一方、有機金属化合物(C)の含有量が上記範囲を上回ると、溶液状態においてゲル物が発生することがあるため、平滑な膜を得られなくなることがある。
【0082】
《アクリル系重合体(D)》
本発明のFPD部材形成材料は、増粘剤としてアクリル系重合体(D)をさらに含有することが好ましい。アクリル系重合体(D)を用いることにより、スリットコーターなどによって成膜する際に、成膜性を向上させることができる。
【0083】
アクリル系重合体(D)のGPCで測定されたポリスチレン換算のMwは、好ましくは10000〜500000、より好ましくは100000〜500000、特に好ましくは200000〜500000である。アクリル系重合体(D)のMwが前記範囲にあると、クラックが発生することなく焼成工程を行える。一方、アクリル系重合体(D)のMwが前記範囲を下回ると、製膜時にはクラックが発生しなくても、焼成時にクラックが発生するという問題がある。
【0084】
本発明のFPD部材形成材料は、固形分換算でのシリカ粒子(A)(上記無機粒子を用いる場合には、シリカ粒子(A)および上記無機粒子)と完全加水分解縮合物換算でのシラン化合物(B)との合計100重量部に対して、アクリル系重合体(D)を0.05〜30重量部の範囲で含有することが好ましく、1〜20重量部の範囲で含有することがより好ましい。
【0085】
アクリル系重合体(D)の含有量が上記範囲を下回ると、成膜後にクラックが発生することがある。一方、アクリル系重合体(D)の含有量が上記範囲を上回ると、焼成後にアクリル系重合体(D)が膜中に残留しやすくなるため、焼成膜が着色しやすくなる。このため、このような焼成膜はFPD部材として不適となりやすい。
【0086】
アクリル系重合体(D)としては、FPD部材形成時の焼成温度(例:400〜650℃)で完全に酸化除去されるアクリル系重合体が好ましく、例えば700℃以下で分解または揮発する(共)重合体(以下「特定重合体」ともいう。)を好適に用いることができる。
【0087】
上記特定重合体としては、下記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(以下「(メタ)アクリレート化合物(3)」ともいう。)の単独重合体、(メタ)アクリレート化合物(3)の2種以上の共重合体、および(メタ)アクリレート化合物(3)と他の共重合性単量体との共重合体が挙げられる。
【0088】
【化6】

【0089】
式(3)中、R5は水素原子またはメチル基を示し、R6は1価の有機基、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、フェノキシアルキル基、アルコキシアルキル基、シクロアルキル基などを示し、より好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基を示す。なお、1価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0090】
(メタ)アクリレート化合物(3)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキ
シポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
【0091】
(メタ)アクリレート化合物(3)の中では、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0092】
(メタ)アクリレート化合物(3)との共重合に供される他の共重合性単量体としては、該(メタ)アクリレート化合物(3)と共重合可能な化合物であれば特に制限はなく、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物などが挙げられる。
【0093】
《アクリル系重合体(D)以外の樹脂》
本発明のFPD部材形成材料は、アクリル系重合体(D)以外に、セルロース誘導体、アルキレングリコールの単独重合体または共重合体((共)重合体)などの樹脂を増粘剤として含有してもよい。
【0094】
セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、2−ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルセルロース、2−ヒドロキシエチル・メチルセルロース、2−ヒドロキシエチル・エチルセルロース、2−ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、2−ヒドロキシプロピル・エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0095】
アルキレングリコールの(共)重合体としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体などが挙げられる。アルキレングリコールの(共)重合体の重量平均分子量は、20万以上であることが好ましく、50万以上であることが特に好ましい。
【0096】
《有機溶剤(E)》
FPD部材形成材料の全固形分濃度および粘度の調整、またはFPD部材の厚みの調整などを目的として、有機溶剤(E)を用いてもよい。また、有機溶剤(E)を用いることによって、FPD部材形成材料の分散安定性および保存安定性をさらに向上させることができる。
【0097】
有機溶剤(E)を使用する場合には、その使用量は所望の条件に応じて適宜設定することができる。具体的には、有機溶剤(E)の使用量は、FPD部材形成材料の全固形分濃度が、好ましくは5〜99重量%、より好ましくは7〜95重量%、特に好ましくは10〜90重量%となる量である。「固形分濃度」とは、FPD部材形成材料中に占める有機溶剤(E)以外の成分の合計濃度を示す。
【0098】
有機溶剤(E)としては、1気圧における沸点が100〜300℃の有機溶剤が好ましく、150〜250℃の有機溶剤が特に好ましい。有機溶剤(E)の沸点が前記範囲を下回ると、塗布作業中に塗布された材料の乾燥が急激に進行しやすくなるため、乾固物が被塗工面に付着したり、塗りムラが発生したりすることがある。一方、有機溶剤(E)の沸点が前記範囲を上回ると、焼成後に膜中に有機溶剤(E)が残留しやすくなるため、塗膜の強度低下や塗膜表面の荒れを引き起こす原因になり得る。
【0099】
有機溶剤(E)としては、アルコール類(例:1価のアルコール、多価アルコール、多価アルコールの誘導体)、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン・アルデヒド類、エステル類などが挙げられる。
【0100】
上記アルコール類としては、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、ターピネオール、
エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
【0101】
上記芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレンなどが挙げられ;上記エーテル類としては、ジエチルアセタール、ジブチルエーテル、ジオキサンなどが挙げられ;上記ケトン・アルデヒド類としては、アセチルアセトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられ;上記エステル類としては、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、乳酸メチル、乳酸エチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0102】
有機溶剤(E)は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0103】
これらの中でも、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0104】
〔FPD部材形成材料の製造方法およびその用途〕
本発明のFPD部材形成材料は、シリカ粒子(A)、シラン化合物(B)および有機金属化合物(C)を充分に混合して調製することができる。上記無機粒子、増粘剤(例:アクリル系重合体(D))および有機溶剤(E)を用いる場合には、例えば、有機溶剤(E
)に、シラン化合物(B)、必要に応じて後述する加水分解・縮合触媒(例:塩基性化合物、酸性化合物、有機金属化合物類)を添加し、これらを充分に混合する。次いで、必要に応じてこの混合物の脱触媒を行い、シリカ粒子(A)、有機金属化合物(C)、上記無機粒子および増粘剤(例:アクリル系重合体(D))をこの混合物中に分散させる。このようにして、FPD部材形成材料を調製することができる。
【0105】
このとき、シリカ粒子(A)および上記無機粒子などの分散性に応じて、ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、プロペラミキサー、ハイシェアミキサー、ペイントシェーカーなどの公知の分散機を用いることが好ましい。高分散の微粒子分散体ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)を特に好適に用いることができる。
【0106】
本発明のFPD部材形成材料は、誘電体層、隔壁、電極、蛍光体およびカラーフィルターなどのFPD部材の形成材料として用いられ、誘電体層の形成材料として特に好ましく用いられる。
【0107】
〔FPD部材の製造方法〕
上記FPD部材形成材料を基板上に塗布して成膜することにより、FPD部材を得ることができる。具体的には、FPD部材の製造方法は、上記FPD部材形成材料を基板上に塗布して塗膜を形成する工程、該塗膜を乾燥して膜形成材料層を基板上に形成する工程、該膜形成材料層を焼成する工程を有する。また、FPD部材の種類に応じて塗膜を所定の形状にパターニングしてもよい。
【0108】
《塗膜の形成および膜形成材料層の形成》
FPD部材形成材料を基板上に塗布する方法としては、例えば、刷毛、ロールコーター、バーコーター、フローコーター、遠心コーター、超音波コーター、(マイクロ)グラビアコーターなどを用いて塗布する方法、ディップコート法、流し塗り法、スプレー法、スクリーン印刷法、電着法、蒸着法などの方法を利用することができる。
【0109】
本発明のFPD部材形成材料が流動性を有する場合には、スクリーン印刷法などによって該形成材料を基板(例:ガラス基板)上に塗布し、塗膜を乾燥することにより、膜形成材料層を形成することができる。塗膜の乾燥条件は、例えば40〜150℃で1〜60分間とされる。
【0110】
本発明のFPD部材形成材料を用いて成膜することにより、1回塗りの場合には乾燥膜厚が0.05〜40μm程度、2回塗りの場合には乾燥膜厚が0.1〜80μm程度の膜形成材料層を形成することができる。このように厚膜形成時においても、本発明ではクラックの発生を防止することができる。従って、所望の厚みを有するFPD部材を少ない塗工回数で得ることができる。
【0111】
「1回塗り」とは、FPD部材形成材料を基板上に塗布する際に、FPD部材形成材料の塗布操作およびこれによって得られた塗膜の乾燥処理を1サイクルとして、このサイクルを1回のみ実施することを意味する。「2回塗り」とは、前記サイクルを2回繰り返して実施することを意味する。
【0112】
《膜形成材料層の焼成》
上記のようにして形成された膜形成材料層を焼成することによって、該膜形成材料層に含まれる有機物質(例:有機溶剤)が分解・除去されると共に、シリカ粒子(A)などが焼結する。焼成温度は例えば400〜650℃であり、焼成時間は例えば1〜360分である。以上のようにして、FPD部材を得ることができる。
【0113】
〔オルガノシラン(1)の加水分解・縮合反応〕
上述のオルガノシラン(1)の加水分解・縮合反応の具体例を以下に示す。
【0114】
《加水分解・縮合触媒》
オルガノシラン(1)の加水分解・縮合を実施する際には、通常は加水分解・縮合触媒が用いられる。前記加水分解・縮合触媒としては、塩基性化合物、酸性化合物、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて「有機金属化合物類」ともいう。)などが挙げられる。
【0115】
なお、加水分解・縮合触媒の中には有機金属化合物(C)に分類されるものもある。本発明のFPD部材形成材料の調製時には、加水分解・縮合触媒を充分に除去したうえでオルガノシラン(1)の加水分解物または縮合物を用いるか、あるいはこの加水分解・縮合触媒の残渣を有機金属化合物(C)の一部として用いればよい。
【0116】
<塩基性化合物>
上記塩基性化合物としては、アンモニア(アンモニア水溶液を含む)、有機アミン化合物、アルカリ金属の水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド(例:ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)などが挙げられる。
【0117】
上記有機アミン化合物の具体例としては、アルキルアミン、アルコキシアミン、アルカノールアミン、アリールアミン、他の有機アミン化合物(例:テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジン)が挙げられる。
【0118】
上記アルキルアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアミンが挙げられる。
【0119】
上記塩基性化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0120】
上記塩基性化合物の中では、アンモニアおよび有機アミン化合物が好ましく、有機アミン化合物がより好ましく、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジンが特に好ましい。
【0121】
<酸性化合物>
上記酸性化合物としては、有機酸および無機酸を用いることができる。上記酸性化合物の中では、有機酸が好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、酢酸が特に好ましい。
【0122】
<有機金属化合物類>
上記有機金属化合物類としては、下記式(4)で表される化合物(以下「有機金属化合物(4)」ともいう。)などの金属キレート化合物、1個のスズ原子に炭素数1〜10のアルキル基が1〜2個結合した4価のスズ化合物(以下「有機スズ化合物(b)」ともいう。)、有機金属化合物(4)または有機スズ化合物(b)の部分加水分解物などが挙げられる。
【0123】
−有機金属化合物(4)−
有機金属化合物(4)は下記式(4)で表される。
【0124】
M(OR10r(R11COCHCOR12s ・・・(4)
式(4)中、Mはジルコニウム、チタン、アルミニウムまたはナトリウムを示し、R10およびR11はそれぞれ独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表し、R12は炭素数1〜6の1価の炭化水素基または炭素数1〜16のアルコキシ基を示し、rおよびsは、0以上4以下であり、かつ(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす整数である。
【0125】
上記式(4)において、炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。
【0126】
上記式(4)において、炭素数1〜16のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられる。
【0127】
−有機スズ化合物(b)−
有機スズ化合物(b)としては、カルボン酸型有機スズ化合物、メルカプチド型有機スズ化合物、スルフィド型有機スズ化合物、クロライド型有機スズ化合物、有機スズオキサイド、該有機スズオキサイドとエステル化合物との反応生成物が挙げられる。これらの具体例としては、<有機スズ化合物(a)>の欄に記載した化合物を挙げることができる。
【0128】
<加水分解・縮合触媒の使用量>
上記加水分解・縮合触媒の使用量は、完全加水分解縮合物換算でのオルガノシラン(1)100重量部に対して、通常は0.001〜20重量部、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。
【0129】
ここで「完全加水分解縮合物」とは、オルガノシラン(1)中に含まれるSi−R2
の全て(100%)が加水分解することによってSi−OH基が形成され、さらに当該Si−OH基が完全に縮合することによってシロキサン構造が形成されたものをいう。
【0130】
《加水分解反応・縮合反応》
上記加水分解・縮合を実施する際には、通常はオルガノシラン(1)に水を添加して、該オルガノシラン(1)を加水分解・縮合させる。上記加水分解・縮合反応は有機溶媒中で実施することが好ましい。
【0131】
<水>
添加される水の量は、完全加水分解縮合物換算でのオルガノシラン(1)100重量部に対して、通常は10〜500重量部、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜100重量部である。水の添加量が前記範囲にあると、加水分解・縮合反応が充分に進行するとともに、反応後に除去する水の量が少ないため好ましい。
【0132】
<有機溶媒>
上記有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類(例:トルエン、キシレン)、エーテル類、ケトン類(例:メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類などを用いることができる。
【0133】
上記エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ノルマルプロピル、乳酸イソプロピル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルが挙げられる。
【0134】
上記有機溶媒は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0135】
上記有機溶媒の中では、加水分解・縮合反応を促進する観点から、アルコール類以外の有機溶媒が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンがより好ましい。
【0136】
<反応条件>
上記加水分解・縮合反応の温度は、好ましくは10〜100℃、より好ましくは15〜80℃、特に好ましくは20〜70℃である。反応時間は、好ましくは0.3〜48時間、より好ましくは0.5〜24時間、特に好ましくは1〜12時間である。
【0137】
また、シリカ粒子(A)や上記無機粒子の存在下にオルガノシラン(1)の加水分解・縮合を実施してもよい。特に、コロイダルシリカの存在下にオルガノシラン(1)の加水分解・縮合を実施する場合には、コロイダルシリカ製造時に使用される酸が残存していれば、この酸が加水分解触媒としても働く。このため、上記加水分解・縮合触媒の添加量を必要に応じて低減してもよい。
【0138】
<水洗・中和>
オルガノシラン(1)の加水分解・縮合反応により得られた加水分解物・縮合物に対しては、貯蔵安定性の点から、加水分解・縮合反応後に脱触媒工程として水洗を行うことが好ましい。
【0139】
また、加水分解・縮合触媒として上記塩基性化合物を使用した場合には、反応後に酸性化合物による中和処理を行った上で、水洗を行うことがより好ましい。中和処理に使用する酸性化合物としては、上記酸性化合物を用いることができる。
【0140】
上記酸性化合物の使用量は、加水分解・縮合反応に使用した塩基性化合物1規定に対し、通常は0.5〜2規定、好ましくは0.8〜1.5規定、さらに好ましくは0.9〜1.3規定である。水洗時に水層へ抽出され易い点から、水溶性の酸性化合物を使用することが好ましい。酸性化合物を水に溶解して使用する場合には、酸性化合物の使用量は、水100重量部に対して、好ましくは0.5〜100重量部、より好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。
【0141】
加水分解物・縮合物に対して中和処理を実施した後に、該加水分解物・縮合物の溶液を充分に攪拌・混合して静置し、水相と有機溶媒相との相分離を確認した後、下層の水分を除去する。
【0142】
中和処理後の水洗に使用される水量は、使用したオルガノシラン(1)(完全加水分解縮合物換算)100重量部に対して、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部である。
【0143】
水洗は、水を添加して充分に攪拌した後、静置し、水相と有機溶媒相との相分離を確認後、下層の水分を除去することにより行う。水洗回数は好ましくは1回以上、さらに好ましくは2回以上である。その後、溶媒を留去してオルガノシロキサン(1)の加水分解物または縮合物を得る。
【実施例】
【0144】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に
断りのない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
【0145】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
下記条件にて、重量平均分子量(Mw)を測定した。
・測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法
・標準物質:ポリスチレン
・装置:東ソー(株)製、商品名:HLC−8020
・カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL 2本、TSK gel G2000HXLを順次連結したもの
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・サンプル濃度:0.7wt%
・注入量:70μL
・流速:1mL/min
<光学特性>
下記実施例および比較例で得られた組成物を乾燥膜厚が15μmになるように石英ガラス上に塗布して塗膜を形成した。この塗膜を100℃で20分間乾燥した後、オーブンを用いて500℃で1時間焼成することによって硬化膜(焼成膜)を作製した。スガ試験機社製のヘイズ試験器(タッチパネル式ヘーズコンピューター HZ−2S)を用いて前記硬化膜の透過率を測定し、下記基準で評価した。
A:透過率が80%を超える。
B:透過率が70%以上80%以下。
C:透過率が70%未満。
【0146】
<電極上におけるクラック性>
下記実施例および比較例で得られた組成物を、上面幅100μm・底面幅80μm・高さ12μmの形状を有する逆テーパー型銀電極が設けられた基板上に、100μmのアプリケーターを用いて塗布して塗膜を形成した。この塗膜を100℃で20分間乾燥した後、オーブンを用いて500℃で1時間焼成することによって硬化膜(焼成膜)を作製した。この硬化膜を2cm四方に切断し、電子顕微鏡を用いて600倍の倍率でその表面を観察した。表面クラックの発生の有無を確認し、下記基準で評価した。
◎:試験片の全体において電極脇に発生するクラックが0本〜4本
○:試験片の全体において電極脇に発生するクラックが5本〜10本
(実用上問題のない程度のレベルとみなすことができる。)
△:試験片の全体において電極脇に発生するクラックが11本〜20本
(実用上問題がでる可能性があるレベルとみなすことができる。)
×:試験片の全体において電極脇に発生するクラックが21本以上
<平滑性>
下記実施例および比較例で得られた組成物を乾燥膜厚が15μmになるように石英ガラス上に塗布して塗膜を形成した。この塗膜を100℃で20分間乾燥した後、オーブンを用いて500℃で1時間焼成することによって硬化膜(焼成膜)を作製した。目視および顕微鏡を用いて前記硬化膜の表面を観察し、下記基準で評価した。
◎:顕微鏡で観察を行っても膜表面の凹凸が見られない。
○:目視ではわからない膜表面の凹凸が顕微鏡では観察できる。
△:目視でも膜表面に凹凸があることを観察できる。
×:凝集物が引きずられたような筋状の凹凸が観察できる
[実施例1]
シリカ粒子(A):体積基準での平均粒子径が80nmの粉体状のシリカ粒子98部とシラン化合物(B):テトラエトキシシランの4〜5量体(多摩化学工業社製MS51)2部とアクリル系重合体(D):ランダム共重合体9.0部とを、有機溶剤(E):2−エチル−1−ヘキサノール227部とエチレングリコールモノブチルエーテル6部とから
なる混合溶剤に混合・撹拌して、混合物を得た。
【0147】
有機金属化合物(C):テトラ−i−プロポキシチタン0.833部と2,4−ペンタジオン0.558部とを予め混合・撹拌したものを、さらに上記混合物に混合・撹拌して組成物(1)を得た。組成物(1)を用いて上記評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0148】
ここで、上記ランダム共重合体は、イソブチルメタクリレート(i−BMA)とヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)とのランダム共重合体(i−BMA/HPMA=80/20(重量比)、重量平均分子量:40万、表1ではpoly(i−BMA)80−(HPMA)20共重合体と示す。)である。
【0149】
[実施例2〜17、比較例1〜7]
実施例1において、表1または2に記載の組成に従って組成物を調製したこと以外は実施例1と同様にして、組成物(2)〜(17)、比較組成物(1)〜(7)を得た。これらの組成物を用いて上記評価を行った。評価結果を表1または2に示す。
【0150】
なお、表中の略称などは下記のとおり。
TEOS:テトラエトキシシラン
MS51:テトラエトキシシランの4〜5量体(多摩化学工業社製)
MTMS:メチルトリメトキシシラン
MTMSの縮合物:Mw=5000
XC−96−723:Mw=700のポリジメチルシロキサン(MOMENTIVE社製)
XF3905:Mw=23000のポリジメチルシロキサン(MOMENTIVE社製)
FM9915:Mw=4000のポリジメチルシロキサン(チッソ社製)
ALCH−TR:アルミニウムトリスエチルアセトアセテート(川研ファインケミカル)ZC−150:ジルコニウムテトラアセチルアセトナート(マツモト交商)
配位子(R4)を誘導する化合物は配位子交換のために使用された化合物であり、該化
合物とテトラ−i−プロポキシチタンとを混合・攪拌することにより、この配位子交換を行った。
【0151】
【表1】

【0152】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明によれば、厚膜形成時においてもクラックが発生せず、かつ透明性・耐熱性・平滑性に優れたFPD部材を、少ない塗工回数で形成可能な材料を提供することができる。
【符号の説明】
【0154】
101・・・ガラス基板
102・・・ガラス基板
103・・・隔壁
104・・・透明電極
105・・・バス電極
106・・・アドレス電極
107・・・蛍光体
108・・・誘電体層
109・・・誘電体層
110・・・保護膜
111・・・隔壁
201・・・ガラス基板
202・・・ガラス基板
203・・・絶縁層
204・・・透明電極
205・・・エミッタ
206・・・カソード電極
207・・・蛍光体
208・・・ゲート
209・・・スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリカ粒子と、
(B)下記式(1)で表されるオルガノシラン、
該オルガノシランの加水分解物、および
該オルガノシランの加水分解縮合物
からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物と、
(C)有機金属化合物と
を含有し、かつ
前記有機金属化合物(C)を、前記シリカ粒子(A)(但し、固形分換算とする。)と前記シラン化合物(B)(但し、完全加水分解縮合物換算とする。)との合計100重量部に対して、0.0001〜10重量部の範囲で含有する
ことを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
1nSiR24-n ・・・(1)
[式(1)中、R1は炭素数1〜8の1価の有機基を示し、R1が複数存在する場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2は炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1
〜6のアシルオキシ基またはハロゲン原子を示し、R2が複数存在する場合はそれぞれ同
一であっても異なっていてもよい。nは0〜3の整数である。]
【請求項2】
前記有機金属化合物(C)が、下記式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
M(OR3r4s ・・・(2)
[式(2)中、Mはジルコニウム、チタン、アルミニウム、マグネシウムまたはナトリウムを示す。R3は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示し、R3が複数存在する場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R4はMに配位可能な配位子を示し、R4が複数存在する場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。rおよびsは、0以上4以下であり、かつ(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす整数である。]
【請求項3】
前記シリカ粒子(A)を固形分換算で65重量部以上100重量部未満の範囲で含有し、かつ前記シラン化合物(B)を完全加水分解縮合物換算で0重量部を超えて35重量部以下の範囲で含有する(但し、固形分換算でのシリカ粒子(A)と完全加水分解縮合物換算でのシラン化合物(B)との合計を100重量部とする。)ことを特徴とする請求項1または2に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【請求項4】
(D)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量が10000〜500000であるアクリル系重合体を、さらに含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【請求項5】
前記式(2)において、Mがジルコニウム、チタンまたはアルミニウムであることを特徴とする請求項2に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。
【請求項6】
前記式(2)において、R4がケトン類、アルコール類、グリコールエーテル類、カル
ボキシ類、アミン類、チオール類およびホスフィン類から選択される少なくとも1種の化合物に由来する配位子であることを特徴とする請求項2または5に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−48933(P2011−48933A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194301(P2009−194301)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】