説明

フリップチップ構造の電気素子

本発明は、熱拡散係数αを有する支持体基板(1)およびこの支持体基板上にバンプ(31〜34)を介して固定されたフリップチップ構造のチップ(2)を有する電気素子に関する。チップ(2)は第1の方向xにおいて熱拡散係数αを有し、ここで第1の拡散差はΔα=|α−α|である。さらにチップ(2)は第2の方向xにおいて熱拡散係数αを有し、ここで第2の拡散差はΔα=|α−α|である。Δxは第1の方向xでの各端部バンプ(31,32)の中心(310,320)間の距離である。Δxは第2の方向xでの各端部バンプ(33,34)の中心(330,340)間の距離である。ここでΔα>ΔαのときΔx<Δxが相当し、Δα<ΔαのときΔx>Δxが相当する。これにより、温度変化があった場合に端部バンプへ作用するせん断応力が最小化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体基板上に固定されたフリップチップ構造のチップを備えた電気素子に関する。
【0002】
素子構造体によって覆われたチップ面は、結晶軸に依存する方向で相互に異なる熱拡散係数α,αを有する。これは特に、圧電基板を備え、物理特性に関して異方性を有する表面波チップにおいて顕著である。チップの熱拡散係数α,αは通常は下方の支持体基板の熱拡散係数αよりも大きい。したがって、温度変化があった場合、チップの長さの変化は支持体基板の長さの変化よりも大きくなる。
【0003】
チップははんだ付け接合部すなわちバンプを介して機械的に支持体基板に固定されている。当該のはんだ付け接合部には機械的な負荷がかかる。この負荷はチップの熱拡散係数と支持体基板の熱拡散係数との差Δα=|α−α|またはΔα=|α−α|によって生じる。チップの熱拡散と支持体基板の熱拡散とに差があると、特に外側のバンプに対して、せん断応力F(F,F)から強い負荷が生じる。Fは第1の方向xへの力の成分である。Fは第2の方向xへの力の成分である。
【0004】
ここで本発明の課題は、最も外側のバンプにできるだけ小さいせん断応力しか作用しないフリップチップ構造の電気素子を提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1の特徴部分に記載された構成を有する電気素子によって解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0006】
第1の方向xでの各端部バンプの中心間の距離は例えば第1の温度TのもとではLであり、第2の温度TのもとではLである。端部バンプによって定義されるチップ領域の第1の方向xでの線形の熱拡散係数ΔL=|L−L|はΔL=αΔTであり、ここでΔT=|T−T|である。このとき当該の方向でΔLに比例するせん断応力成分Fが生じる。本発明では、せん断応力成分Fができる限り小さく維持されることが目標とされる。与えられた熱拡散係数を考慮して、最大の熱拡散係数を有する方向での端部バンプ間の距離が最小の熱拡散係数を有する方向での端部バンプ間の距離よりも小さくなるように、バンプ配列が工夫される。
【0007】
本発明は、支持体基板上にバンプを介して固定されたフリップチップ構造のチップを備えた電気素子に関する。支持体基板は熱拡散係数αを有し、チップは第1の方向xにおいて熱拡散係数αを有し、第1の拡散差はΔα=|α−α|であり、第2の方向xにおいて熱拡散係数αを有し、第2の拡散差はΔα=|α−α|である。
【0008】
第1の方向xの端部バンプの中心をx軸線へ直交射影して得られる距離はΔxである。第2の方向xの端部バンプの中心をx軸線へ直交射影して得られる距離はΔxである。ここでΔα>ΔαのときΔx<Δxが相当し、Δα<ΔαのときΔx>Δxが相当する。こうしたバンプ配列により、温度変化があった場合に端部バンプへ作用するせん断応力が最小化される。
【0009】
第1の方向xとして、有利には、素子が最大の拡散差Δαを有する方向が設定される。第2の方向xとして、有利には、素子が最小の拡散差Δαを有する方向が設定される。
【0010】
有利には、距離Δx,Δxは、せん断応力Fの成分F,Fがほぼ等しくなるように、相互に相対的に選定される。
【0011】
軸線およびx軸線は、チップ下方面に配置された2次元空間に相応する座標系{x,x}を定義する。
【0012】
x軸線およびy軸線は交差するチップエッジに沿って配向されている。チップエッジは有利には直角に構成されている。つまり第1のチップエッジ線と第2のチップエッジ線とは垂直に交わっている。x軸線およびy軸線は、直角なチップエッジにおいて、直交座標系{x,y}を定義する。例えば第1のチップエッジ線はx軸線に沿って配向されており、第2のチップエッジ線はy軸線に沿って配向されている。
【0013】
一般に、x軸線、y軸線、x軸線およびx軸線は相互に任意の角度をなすように配向することができる。少なくとも1つの軸線(x軸線またはx軸線)はx軸線またはy軸線に対して平行に延在してよいが、このことは必要条件ではない。座標系{x,x}、場合により直交座標系は座標系{x,y}に一致しうる。また座標系{x,x}は、図11に示されているように、座標系{x,y}に対して角度β2>0だけ回転されることもある。さらに座標系{x,x}は、図12に示されているように、相互に90°をなすx軸線およびx軸線から角度β1だけ偏差して斜交することもある。
【0014】
有利には、チップ下方面ではそれぞれのチップエッジに対して平行にバンプ列が配置される。有利な実施形態では、複数のバンプが第1のチップエッジ線に対して平行に第1の方向xで、および/または、第2のチップエッジ線に対して平行に第2の方向yで、一列に配置される。有利には、各バンプはチップ下方面の中央に一列に配置される。各バンプは4つのチップエッジ線に沿ってチップエッジの周囲の縁領域に配置することもできる。
【0015】
有利には、バンプ列は最大拡散差を有する第1の方向xに沿って配向される。第1の方向xの同じ列に配置された端部バンプ間の距離は、有利には、第2の方向xの同じ列に配置された端部バンプ間の距離よりも小さい。
【0016】
有利な実施形態では、一列になった複数のバンプは第1の方向xおよび/または第2の方向xに沿って配置される。
【0017】
有利な実施形態では、全てのバンプが最小拡散差を有する第2の方向xに対して平行な2つの列として配置される。2つの列のあいだの距離はΔxである。距離Δxは、この場合、同じ列の端部バンプの中心間を測定した列の長さよりも小さい。チップエッジの長さはバンプ配列に適合化され、チップの縁領域において相互に平行な列が構成されるようにされる。このとき有利には、チップの端部バンプはチップ面のコーナーに向かって配向される。この場合、第1の方向xの第1のチップエッジ線は第2の方向xの第2のチップエッジ線よりも短く選定されている。
【0018】
チップ下方面は少なくとも1つの方向x,y,xまたはxにおいて幅広の縁領域と中央領域とに分割される。ここで各縁領域の幅は、有利には、バンプの断面積またはバンプの断面積の2倍を上回る。各バンプはこの実施形態では中央領域のみに配置されている。幅広の縁領域はバンプを有さない。
【0019】
一般に、支持体基板の熱拡散係数αはαおよび/またはαよりも小さい。支持体基板の基本材料の熱拡散係数は所定の限界値内で例えば添加物質または充填物質を添加することにより変更して、特に高めることができる。これにより支持体基板の基本材料の熱拡散係数は熱拡散係数αおよび/またはαに適合化される。ここでできるだけ小さい拡散差Δα,Δαを達成したい。例えば、支持体基板の材料は、α=αまたはα=α、つまりΔα=0ないしはΔα=0が相当するように選定される。
【0020】
本発明の有利な実施形態では、例えばΔα=0,Δα>0が相当する。このケースでは、有利には、各バンプは第2の方向xに沿って一列に、つまりΔx=0が相当するように配置される。
【0021】
バンプ列とは、各バンプが或る一方向で一列に配置され、バンプの中心が当該の方向に沿った1本の線上に配列された状態を云うものであると理解されたい。
【0022】
有利には、バンプ列はx方向で見てチップ下方面の中央に配置されている。このようにバンプを配置する場合、チップは支持体基板に対して第1の方向xのみで安定化されており、チップ下方面は支持体基板の表面に対してほぼ平行に延在する。チップと支持体基板とのあいだに例えばスペーサが設けられており、有利には、このスペーサは第1の方向xに沿ってチップの縁領域に配置されている。
【0023】
有利な実施形態では、支持体基板の材料は係数αがαとαとのあいだに存在するように選定される。このとき、α>αのケースまたはα<αのケースがありうる。係数αは有利には小さいほうの熱拡散係数へ適合化されるので、α=min{α,α}が相当する。ただし係数αを大きいほうの熱拡散係数へ適合化し、α=max{α,α}が相当するようにしてもよい。
【0024】
有利には、各バンプ(端部バンプまたは通常のバンプ)は、最小拡散差αmin=min{α,α}を有する方向に大きなバンプ間隔が生じるように、チップ下方面に配置される。バンプの高さおよび径は有利には小さく、例えば<100μmまたは<50μmである。
【0025】
チップ下方面および支持体基板の上方面にはバンプに固定に接続されたコンタクト面UBM(Under Bump Metallization)が設けられる。本発明の有利な実施形態では、温度変化があった場合に強い負荷のかかる端部バンプに対して、負荷の小さい通常のバンプよりも大きなコンタクト面が設けられる。この実施形態では、有利には、チップ下方面のうちバンプによって覆われた中央部分の面積が小さく保たれる。
【0026】
素子構造体は有利にはチップ下方面に配置される。ただし素子構造体を少なくとも部分的にチップ内部に配置することもできる。
【0027】
以下に、図面を参照しながら実施例に基づき本発明を詳しく説明する。図は本発明の種々の実施例を示しているが、概略的であって縮尺通りではないことに注意されたい。同一または同様の機能を有する部分には同一の参照記号を付してある。図1には、支持体基板上に固定されたフリップチップ構造のチップを備えた電気素子について、チップ下方面に対する横断方向での断面図が示されている。図2,図3には本発明の第1の実施例のバンプ列を備えたチップ下方面の平面図が示されている。図4〜図7には、バンプ列および活性の素子構造体を備えた領域と第1の方向に沿った幅広の縁領域とに分割されたチップ下方面の平面図が示されている。図8には、バンプを有さない周囲の幅広の縁領域を備えたチップ下方面の平面図が示されている。図9には、一方向に端部バンプを有し、当該の方向にバンプ列を有さないチップ下方面の平面図が示されている。図10には本発明の第2の実施例のバンプ列を備えたチップ下方面の平面図が示されている。図11,図12には、直交座標系(図8)および斜交座標系(図9)すなわち{x,x}のx軸線およびx軸線へバンプ中心が射影される様子が示されている。図13には、端部バンプおよび通常バンプに対応する種々の大きさのコンタクト面を有するチップ下方面の平面図が示されている。
【0028】
図1には支持体基板1およびこの支持体基板にバンプ31,32を介して固定されたチップ2を備えた素子の概略的な断面図が示されている。チップは例えばその下方面に、音波で動作する素子構造体を有する。音響表面波で動作する素子構造体をチップ下方面に配置する実施例は図4〜図7に示されている。
【0029】
図4〜図7にはそれぞれ2つの音響トラックを有するフィルタが示されている。上方の第1の音響トラックおよび下方の第2の音響トラックは複数の変換器711〜713,721〜723と境界部のリフレクタとを有している。第1の音響トラックに配置された変換器711はフィルタの入力変換器として用いられ、第2の音響トラックに配置された変換器721はフィルタの出力変換器として用いられる。変換器711〜723は1つの音響トラックから他の音響トラックへ電気信号を入出力する結合型変換器である。
【0030】
入力変換器711は入力ゲートに接続されており、出力変換器721は出力ゲートに接続されている。入力変換器または出力変換器の電気端子は図4,図5では各音響トラックの異なる側に配置されている。入力変換器711または出力変換器721は、図4では、線路を介して、端部バンプ31または32と、2つのトラックのあいだの中央付近に配置された別のバンプとに接続されている。入力変換器711または出力変換器721は、図5では、端部バンプ34または31と、2つのトラックのあいだの中央付近に配置された別のバンプとに接続されている。
【0031】
種々のトラックの結合型変換器712,722,713,723は相互に導電接続され、アースバンプに接続される。アースバンプは図4では端部バンプ33,34であり、図5では端部バンプ32,33である。
【0032】
図6,図7では、入力変換器711および出力変換器721が列状に導電接続された部分変換器711a,711bおよび721a,721bの2つずつに分割されている。入力ゲートおよび出力ゲートに接続されたバンプは外側のバンプ列に配置されている。
【0033】
図6では、結合型変換器に接続されたアースバンプは外側のバンプ列に配置されている。図7では、結合型変換器に接続されたアースバンプは音響トラック間に配置されている。
【0034】
図6の実施例では、入力ゲートに接続されたバンプがx軸線に沿って配向されたバンプ列として配置されている。このバンプ列は音響トラックの左方および右方に存在する。同様のことが出力ゲートに接続されたバンプについても相当する。
【0035】
すなわち、バンプ列は最大拡散差を有する方向に沿って配向されている。第1の方向xの列に配置された端部バンプ間の距離(バンプ31,32間の距離またはバンプ33,34間の距離)は、第2の方向xの列に配置された端部バンプ間の距離よりも小さい。
【0036】
図7の実施例では、入力ゲートに接続されたバンプがx軸線に沿って配向された第1のバンプ列として配置されている。この第1のバンプ列は第1の音響トラックの上方に存在する。結合型変換器に接続されたアースバンプ31,32はx軸線に沿って配向された第2のバンプ列として配置されている。この第2のバンプ列は2つの音響トラック間に存在する。出力ゲートに接続されたバンプはx軸線に沿って配向された第3のバンプ列として配置されている。この第3のバンプ列は第2の音響トラックの下方に存在する。この場合も、第1の方向xの第2のバンプ列に配置された端部バンプ31,32間の距離は、第2の方向xのバンプ列の端部バンプ33,34間の距離よりも小さい。
【0037】
図1に示された支持体基板1は複数の誘電層11〜13を有しており、これらの誘電層間に図示されていないパターニングされた金属層および埋め込まれた素子構造体が配置されている。金属層は相互に電気的に接続されるほか、支持体基板1の下方に配置された外部コンタクト18と、支持体基板1の上方に配置された端子面19とにスルーコンタクト17を介して接続される。
【0038】
チップは、有利には、音波で動作する素子構造体を下方面に有するが、このことは図示されていない。チップ2は端子面29を有し、この端子面はバンプ31,32を介して支持体基板の端子面19に電気的に接続されている。チップ下方面は第1の方向xで見て、バンプ31,32の配置された中央領域20と、バンプのない幅広の縁領域21,22とに分割されている。
【0039】
図2〜図12にはチップ2の下方面のバンプの新規な配列が示されている。各バンプは図では丸印によって表されている。端部バンプは参照番号31〜34で表されている。図3〜図7では、チップ下方面が複数の領域に分割されることが一点鎖線51,52によって表されている。
【0040】
軸線xは第1のチップエッジ線に沿って配向されている。軸線yは第2のチップエッジ線に沿って配向されている。第1の方向xは図2〜図10の実施例ではx軸線に平行である。第2の方向xは図2〜図10の実施例ではy軸線に平行である。つまり第1のチップエッジ線は第1の方向xに平行であり、第2のチップエッジ線は第2の方向xに平行に配向されている。
【0041】
第1の方向xの端部バンプ31,32は相互に値Δxだけ離れている。第2の方向xの端部バンプ、すなわち図2,図3,図5,図6,図8,図10では31,33、図4,図7,図9では33,34は、相互に値Δxだけ離れている。各バンプ間の距離とは、バンプ31〜34の中心から中心までを測定したものである。
【0042】
図2,図3では、第1の方向xの端部バンプ31,32または33,34の中心をつなぐ第1の接続線41は第1の方向xに対して平行に配向されている。図2,図3では、第2の方向xの端部バンプ31,33または32,34の中心をつなぐ第2の接続線42は第2の方向xに対して平行に配向されている。このことは、相応の端部バンプが各方向x,xに平行に延在する列として配置されるということを意味する。
【0043】
一般的なケースでは、例えば図9に示されているように、第1の方向xまたは第2の方向xに関して、端部バンプが列状に配置されていない。この場合、各バンプの接続線41,42はそれぞれの方向に平行には延在していない。本発明では、図11,図12に示されているように、全バンプの中心310,320,330,340が第1の方向xおよび第2の方向xに垂直に射影される。射影線はそれぞれの方向に対して垂直に延在する。バンプ中心を各軸線へ射影した点は参照番号311,321,331,341で表されている。最も外側の点、すなわち第1の方向xの点311,321および第2の方向xの点331,341がそれぞれの方向の端部バンプに相応する。
【0044】
図2,図3,図5では、第1の方向xの端部バンプ31,32は第1のチップエッジ線に対して平行に延在する最も外側の列に配置されている。図2,図3では、第1の方向xの端部バンプ31,32は、第1のチップエッジ線に沿って延在する縁領域に、第1のチップエッジ線に対して平行に延在する線に沿って配置されている。
【0045】
軸線に射影された点31,33または32,34は図2,図3,図5では相互に一致する。x軸線に射影された点31,32または33,34も相互に一致する。したがって図2,図3,図5では、4つのバンプ31〜34の全てが第1の方向xおよび第2の方向xの端部に存在することになる。
【0046】
図7では、図2,図3,図5とは異なり、端部バンプ31,32が第1のチップエッジ線に対して平行な第1の方向xの中央列に配置されている。外側に配置されたバンプのx軸線への射影はここでは中央列に配置されたバンプのx軸線の射影のあいだに存在する。したがって中央列に配置されたバンプ31,32間の距離は外側の列に配置されたバンプ間の距離よりも大きい。ここでは当該のバンプ31,32が第1の方向xでの端部バンプとなる。バンプ31,32は第1の方向xに関して外側の列に存在しないので、第2の方向xで見ると端部バンプとはならない。
【0047】
図2〜図10の実施例では、第1の拡散差Δαは第2の拡散差Δαよりも大きい。相応に、大きい拡散差を有する方向xの距離Δxは、本発明によれば、小さい拡散差を有する方向の距離Δxよりも小さく選定されている。図3,図5,図7において、チップ下方面は第1の方向xに沿って内部にバンプを有する中央領域20とバンプを有さない2つの幅広の縁領域21,22とに分割されている。
【0048】
図5,図7には、第1のチップエッジ線または第1の方向xに平行に、各列それぞれ2つずつバンプを有する3つのバンプ列が配置されている。2つの外側の列のバンプ中心間の距離は距離Δxに相応する。図6には、第2のチップエッジ線または第2の方向xに平行に、各列それぞれ2つずつバンプを有する3つのバンプ列が配置されている。2つの外側の列のバンプ中心間の距離は距離Δxに相応する。
【0049】
チップの断面積は第1の方向xではa、第2の方向xではbである。図2,図9ではa<bであり、図3ではa>bであり、図4〜図8ではa=bである。
【0050】
小さな拡散差Δαを有する第2の方向xでの断面積bを大きくするチップ面の構成は、特にスペースを節約して利用できる点で有利である。
【0051】
図3には、大きな拡散差Δαを有する第1の方向xでの断面積aを大きくしたチップ面が示されている。ただし距離Δxは当該の方向でのせん断応力成分を小さく保つために小さく選定されている。第1の方向xで見て、チップ面は中央領域20と2つの幅広の縁領域21,22とに分割されている。幅広の縁領域21,22の幅cはバンプの断面積を上回る。全てのバンプが中央領域20に配置されている。幅広の縁領域21,22はバンプを有さない。
【0052】
図8では、チップ下方面が中央領域20と周囲の幅広の縁領域21とに分割されている。チップ2の幅広の縁領域21はバンプを有さない。全てのバンプ31〜33がチップ下方面の中央領域20に配置されている。縁領域21の第1の方向xでの幅は第2の方向xでの幅より大きい。縁領域21の第2の方向xでの幅はバンプの断面積を上回り、バンプの断面積の2倍にほぼ等しくなる。縁領域21の第1の方向xでの幅はバンプの断面積の2倍を著しく上回る。この実施例ではΔα>Δαが相当する。したがって第1の方向xでの端部バンプ31,32間の距離Δxは第2の方向xの端部バンプ31,33間の距離Δxよりも小さく選定されている。
【0053】
図10には、Δα=0かつΔα>0の実施例が示されている。全てのバンプは第2の方向xに平行に延在する唯一の列として配置されており、Δα=0が相当する。バンプ列は第1の方向xで見てチップ下方面の中央に配置されている。チップはスペーサ81,82を介して支持体基板に対して第1の方向xで安定化されており、チップ下方面は支持体基板の表面に対してほぼ平行に延在する。スペーサ81,82は第1の方向xに沿ってチップの縁領域に配置されている。スペーサ81,82はこの実施例ではチップまたは支持体基板に固定に接合されている。別の実施例としてスペーサ81,82をチップおよび支持体基板の双方に固定に接合することもできる。
【0054】
第1の方向xに関するバンプ列の位置は第2のチップエッジ線に対する中央からシフトされてもよい。
【0055】
図11には、チップエッジ線によって定義された座標系{x,y}に対して角度β2だけ回転された座標系{x,x}が示されている。図12には、異方性の熱拡散特性を有するチップが示されている。ここで最大拡散差を有する第1の方向xと最小拡散差を有する第2の方向xとは相互に垂直ではなく、角度β1<90°をなしている。x軸線およびx軸線はチップエッジ線に対して斜めに延在している。
【0056】
図13には、本発明の実施例として、端部バンプ31〜34および通常バンプ35,36に対して異なる大きさのコンタクト面の設けられたチップ下方面が示されている。強い負荷を受ける端部バンプ31〜34に対しては大きなコンタクト面91〜94が設けられており、小さい負荷しか受けない通常バンプ35,36に対しては小さなコンタクト面95,96が設けられている。
【0057】
図示されていない支持体基板には、バンプの形態ごとに異なる大きさのコンタクト面に対して、相応のコンタクト面が対向して形成される。各バンプはチップおよび支持体基板のコンタクト面に固定に接続される。
【0058】
本発明は、ここに示した実施例、材料または素子の数に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】チップ下方面に対する横断方向での断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例のバンプ列を備えたチップ下方面の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施例のバンプ列を備えたチップ下方面の平面図である。
【図4】バンプ列を備えた領域と第1の方向に沿った幅広の縁領域とに分割されたチップ下方面の平面図である。
【図5】バンプ列を備えた領域と第1の方向に沿った幅広の縁領域とに分割されたチップ下方面の平面図である。
【図6】バンプ列を備えた領域と第1の方向に沿った幅広の縁領域とに分割されたチップ下方面の平面図である。
【図7】バンプ列を備えた領域と第1の方向に沿った幅広の縁領域とに分割されたチップ下方面の平面図である。
【図8】バンプ列を備えた中央領域と周囲の幅広の縁領域とを備えたチップ下方面の平面図である。
【図9】一方向に端部バンプを有し、当該の方向にバンプ列を有さないチップ下方面の平面図である。
【図10】本発明の第2の実施例のバンプ列を備えたチップ下方面の平面図である。
【図11】直交座標系(図8)のx軸線およびx軸線へバンプ中心が射影される様子を示す図である。
【図12】斜交座標系のx軸線およびx軸線へバンプ中心が射影される様子を示す図である。
【図13】端部バンプおよび通常バンプに対応する種々の大きさのコンタクト面を有するチップ下方面の平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 支持体基板、 11〜13 誘電層、 17 スルーコンタクト、 18 外部コンタクト、 19 支持体基板の端子面、 2 チップ、 20 チップ下方面の中央領域、 21,22 チップ下方面の幅広の縁領域、 29 チップの端子面、 31〜34 端部バンプ、 310,320,330,340 バンプ中心、 311,321 バンプ中心310,320のx軸線への正射影、 331,341 バンプ中心330,340のx軸線への正射影、 35,36 第2のバンプ、 41,42 バンプ間の接続線、 51,52 中央領域と縁領域との分離線、 711 入力変換器、 721 出力変換器、 712,713,721,723 結合変換器、 81,82 スペーサ、 91〜96 コンタクト面UBM、 x,y チップエッジに平行に延在する座標軸線、 x 第1の方向、 Δx バンプ中心310,320のx軸線への正射影による距離、 x 第2の方向、 Δx バンプ中心330,340のx軸線への正射影間の距離、 β1 座標軸線x,xのなす角度、 β2 座標軸線x,xのなす角度、 a 第1の方向xでのチップの線形寸法、 b 第2の方向xでのチップの線形寸法、 c 縁領域の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱拡散係数αを有する支持体基板(1)および該支持体基板上にバンプ(31〜34)を介して固定されたフリップチップ構造のチップ(2)を有する
電気素子において、
チップ(2)は第1の方向xにおいて熱拡散係数αを有し、ここで第1の拡散差はΔα=|α−α|であり、さらに第2の方向xにおいて熱拡散係数αを有し、ここで第2の拡散差はΔα=|α−α|であり、素子は第1の方向xに最大拡散差Δαを有し、第2の方向xに最小拡散差Δαを有し、Δxは第1の方向xの各端部バンプ(31,32)の中心(310,320)の接続線(41)を平行に延在するx軸線上に正射影したものに相応する第1の距離であり、Δxは第2の方向xの各端部バンプ(33,34)の中心(330,340)の接続線(42)を平行に延在するx軸線上に正射影したものに相応する第2の距離であり、各バンプはΔx<Δxが相当するように配置されている
ことを特徴とする電気素子。
【請求項2】
Δα=0,Δα>0が相当する、請求項1記載の素子。
【請求項3】
各バンプ(31〜34)は第2の方向xに沿った1個のバンプ列として配置されており、Δx=0である、請求項2記載の素子。
【請求項4】
バンプ列は第1の方向xで見てチップ下方面の中央に配置されている、請求項3記載の素子。
【請求項5】
チップ(2)は支持体基板(1)に対して第1の方向xで安定化されており、チップ下方面は支持体基板(1)の表面に対してほぼ平行に延在する、請求項3または4記載の素子。
【請求項6】
チップ(2)と支持体基板(1)とのあいだにスペーサ(81,82)が設けられている、請求項5記載の素子。
【請求項7】
スペーサ(81,82)は第1の方向xに沿ってチップ(2)の縁領域(21,22)に配置されている、請求項6記載の素子。
【請求項8】
支持体基板(1)の材料はα≧α≧αが相当するように選定されている、請求項1記載の素子。
【請求項9】
支持体基板(1)の材料は基本材料および混合される充填物質であり、混合物の熱拡散係数は基本材料の熱拡散係数よりも大きい、請求項8記載の素子。
【請求項10】
少なくとも2つのバンプ(31,32)は第1の方向xに沿った線上に配置されている、請求項1,2,8または9記載の素子。
【請求項11】
少なくとも2つのバンプ(31,33)は第2の方向xに沿った線上に配置されている、請求項1,2,8または9記載の素子。
【請求項12】
チップ下方面は中央領域と縁領域(21,22)とに分割されており、各縁領域(21,22)の幅(c)はバンプの断面積を上回り、ここでチップ(2)は縁領域にバンプを有さない、請求項1から11までのいずれか1項記載の素子。
【請求項13】
チップ(2)は第1の方向xで中央領域と縁領域(21,22)とに分割されており、各縁領域(21,22)の幅(c)はバンプの断面積を上回り、ここでチップ(2)は縁領域にはバンプを有さない、請求項1から11までのいずれか1項記載の素子。
【請求項14】
各縁領域(21,22)の幅(c)はバンプの断面積を少なくとも係数2だけ上回る、請求項12または13記載の素子。
【請求項15】
チップ下方面には各バンプ(31〜36)に固定に接続されたコンタクト面(91〜96)が設けられており、ここで端部バンプ(31〜34)に対しては大きなコンタクト面(91〜94)が設けられており、通常のバンプ(35,36)に対しては小さなコンタクト面が設けられている、請求項1から14までのいずれか1項記載の素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−508739(P2008−508739A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524192(P2007−524192)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006165
【国際公開番号】WO2006/015642
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】