説明

フリーボールベアリングおよびベアリングユニット

【課題】運搬室内の汚染を引き起こさずに主球の回転を抑制できるフリーボールベアリングおよびベアリングユニットの提供。
【解決手段】球受け部23を有する本体20と、複数の受け球41と、受け球41を介して半球状凹面21に回転自在に支持された主球42と、主球突出用開口部31が形成されたハウジング30と、半球状凹面21と主球42との間に挿入されて受け球41の移動を規制することで主球42の回転抵抗を増大させる押さえ片55を有する受け球押さえリング50と、ハウジング30内に移動可能に設けられた可動体60と、可動体60を弾性付勢する付勢手段61と、可動体60を受け球押さえリング50に連結する駆動力伝達部71と、を備えたフリーボールベアリング110。可動体60は、押さえ片55が受け球の移動を規制する位置と、前記付勢力に抗して前記規制を解除する位置とを切り替え可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーボールベアリングおよびベアリングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
フリーボールベアリングを用いた搬送テーブルや位置決め用テーブルを用いると、搬送物を任意の水平方向に移動及び回転でき、この際の搬送物に対する摩擦抵抗を極めて小さくできる。このためフリーボールベアリングは、厳格な傷付き防止あるいは高い位置決め精度の確保を必要とする製造工程に採用されている(例えば特許文献1)。
この例としては、基板の加工ライン(成膜、レジスト塗布、露光、エッチング等)があり、具体的な搬送物は、FPD(フラットパネルディスプレイ)のディスプレイ用マザーガラス等のガラス基板、半導体素子や半導体パッケージ等の電子部品用のシリコン基板(ウェハ)が例示できる。
フリーボールベアリングは、このような処理において、基板の処理を行う真空装置の処理室(処理チャンバ)や、真空装置の入口付近に基板の位置決めを行うために設置されるロードロックチャンバといった真空チャンバ(真空室)、あるいは、クリーンルーム内で使用できる。この場合、フリーボールベアリングはワーク(物品、搬送品)の搬送、支持、位置決めに好適に用いることができる。
【0003】
ところで、フリーボールベアリングを用いた搬送テーブルは、例えば、鋼板の製造ラインや加工ライン、建材の製造ライン、段ボール詰めされた搬送物の搬送ライン等にも広く用いられている。
このような搬送設備にあっては、搬送中の物品の移動を停止あるいは減速させるために、フリーボールベアリングとは別に、物品を衝突させるストッパ、クッション、物品を接触させるガイド部材などを設けることがある。
近年では、フリーボールベアリング自体に、主球の回転を抑制する回転抑制部材が内蔵され、制動力を与えることが可能な構成が提案されている(例えば特許文献2)。このようなフリーボールベアリングを用いた搬送設備は、ストッパ、クッション、ガイド部材等を不要にできる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−322894号公報
【特許文献2】特開2004−19877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、主球に直接接触する回転抑制部材を用いる構成では、摩擦による主球の損耗がおこり、この結果生じるパーティクルがチャンバやクリーンルームなどの運搬室内に飛散する問題がある。
本発明は、前記課題に鑑みて、運搬室内の汚染を引き起こさずに主球の回転を抑制できるフリーボールベアリングおよびベアリングユニットの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフリーボールベアリングは、半球状凹面を内面とする球受け用凹所が形成された球受け部を有する本体と、前記本体の前記半球状凹面に配された複数の受け球と、前記受け球よりも大径に形成され前記受け球を介して前記半球状凹面に回転自在に支持された主球と、前記本体の前記球受け部を取り囲むように設けられ、前記主球の一部を突出させる主球突出用開口部が形成されたハウジングと、前記半球状凹面と前記主球との間に挿入されて前記受け球の移動を規制することで前記主球の回転抵抗を増大させる押さえ片を有する受け球押さえリングと、前記ハウジング内に、前記主球突出方向およびその反対の方向に移動可能に設けられた可動体と、前記可動体を、前記主球突出方向とは反対の方向に弾性付勢する付勢手段と、前記可動体を前記受け球押さえリングに連結して、前記可動体に加えられた駆動力を前記受け球押さえリングに伝達する駆動力伝達部と、を備え、前記付勢手段は、前記付勢力によって、前記押さえ片が受け球の移動を規制する位置に前記可動体を配置することができ、前記可動体は、前記押さえ片が受け球の移動を規制する位置と、前記付勢力に抗した前記主球突出方向の移動によって前記規制が解除される位置とを切り替え可能である。
本発明のフリーボールベアリングは、半球状凹面を内面とする球受け用凹所が形成された球受け部を有する本体と、前記本体の前記半球状凹面に配された複数の受け球と、前記受け球よりも大径に形成され前記受け球を介して前記半球状凹面に回転自在に支持された主球と、前記本体の前記球受け部を取り囲むように設けられ、前記主球の一部を突出させる主球突出用開口部が形成されたハウジングと、前記ハウジング内に、前記主球突出方向およびその反対の方向に移動可能に設けられた可動体と、前記可動体を、前記主球突出方向とは反対の方向に弾性付勢する付勢手段と、前記可動体を前記ハウジングに連結して、前記可動体に加えられた駆動力をハウジングに伝達する駆動力伝達部と、を備え、前記ハウジングには、前記半球状凹面と前記主球との間に挿入されて前記受け球の移動を規制することで前記主球の回転抵抗を増大させる押さえ片が形成され、前記付勢手段は、前記付勢力によって、前記押さえ片が受け球の移動を規制する位置に前記可動体を配置することができ、前記可動体は、前記押さえ片が受け球の移動を規制する位置と、前記付勢力に抗した前記主球突出方向の移動によって前記規制が解除される位置とを切り替え可能である。
本発明のフリーボールベアリングは、前記付勢手段が複数設けられ、これら複数の付勢手段が、前記可動体の中央から外れた位置に、前記可動体の周方向に均等に設けられている構成とすることができる。
本発明のフリーボールベアリングは、前記付勢手段が前記可動体の中央に1つのみ設けられている構成とすることができる。
本発明のベアリングユニットは、前記フリーボールベアリングと、前記フリーボールベアリングを支持する支持体と、前記フリーボールベアリングの本体を前記球受け部高さ方向に移動させる昇降機構とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、押さえ片によって、球受け用凹所からのパーティクルの飛散を抑制することができる。また、押さえ片が受け球に作用することによって、間接的に主球の回転抵抗が制御されるため、主球が損耗せず、このような損耗に伴うパーティクルの飛散が起こらない。従って、パーティクルの飛散による汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る第1実施形態のベアリングユニットのフリーボールベアリングを示す部分断面図である。
【図2】図1のフリーボールベアリングの動作を示す部分断面図である。
【図3】図1のベアリングユニットを基板位置決め用テーブルに適用した真空装置の一例を説明する平面図である。
【図4】図3の基板処理設備の支持テーブル(位置決め用テーブル)を説明する正面図である。
【図5】図3の基板処理設備の支持テーブル(位置決め用テーブル)を説明する平面図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態のベアリングユニットのフリーボールベアリングを示す部分断面図である。
【図7】図6のフリーボールベアリングの動作を示す部分断面図である。
【図8】本発明に係る第3実施形態のベアリングユニットのフリーボールベアリングを示す部分断面図である。
【図9】図8のフリーボールベアリングの動作を示す部分断面図である。
【図10】図8のフリーボールベアリングのA−A断面図である。
【図11】フリーボールベアリングの昇降機構を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態(本実施形態のベアリングユニット100、フリーボールベアリング110、支持テーブル89)について、図1〜図5を参照して説明する。
以下の説明においては、主球がケースから突出する方向を上(先端側)、主球の突出方向の反対方向を下(基端側)と定義する。また、主球の中心を通り、主球の突出方向に平行な軸をユニット中心軸とする。径方向においてこのベアリングの中心軸に近づく方向を内側、中心軸から遠ざかる方向を外側とする。
【0010】
ベアリングユニット100は、図3〜図5に示すように、ディスプレイ用マザーガラス、シリコン基板(ウェハ)などといった基板1(被支持物)を精密に位置決めするための基板位置決め用テーブル89(支持テーブル。以下、単に位置決め用テーブルとも言う)を含む。
台板89a(支持体)上(図4において台板89aの上側)の複数箇所には、フリーボールベアリング110が突設されている。
【0011】
図3に示すように、位置決め用テーブル89は、プロセス設備80を構成する真空装置81に設けられているロードロックチャンバ82、トランスファーチャンバ83、処理室といった真空チャンバ(真空室)内に設置される。本実施形態においては、一例として、位置決め用テーブル89がロードロックチャンバ82内に設置される場合について説明する。
【0012】
真空装置81は、基板1に膜付け、レジスト塗布、露光、エッチングといった処理を行うための複数(図示例では3つ)の処理室84a、84b、84c(処理チャンバ)と、ロードロックチャンバ82と、トランスファーチャンバ83とを具備する。
符号85aはロードロックチャンバ82に設けられている大気ゲート、符号85bはロードロックチャンバ82とトランスファーチャンバ83との間を開閉するゲート(以下、中間ゲートとも言う)、85c、85d、85eは、第1〜3処理室84a、84b、84cとトランスファーチャンバ83との間を開閉するゲート(以下、処理チャンバゲートとも言う)である。トランスファーチャンバ83内には、基板1を移動するためのロボット86(基板移送装置。以下、真空ロボットとも言う)が設置されている。ロードロックチャンバ82内の位置決め用テーブル89と処理室84a、84b、84cとの間の基板1の移送は、この真空ロボット86によって行われる。
ロードロックチャンバ82、トランスファーチャンバ83、処理室84a、84b、84cは、本実施形態の真空室に相当する。また、真空装置81全体も本実施形態に係る真空室に相当する。
【0013】
プロセス設備80は、真空装置81の外に設置されているカセット87及びロボット88(基板移送装置。以下、大気ロボットとも言う)と、上述の真空装置81とを具備する。
大気ロボット88は、例えば基板1をXYZ方向に移動可能な可動アーム88aによって搬送する。ロボット88の構成はこれに限定されず、真空装置にて使用される周知のものを採用できる。また、真空装置81内の真空ロボット86も真空装置にて使用される周知のものを採用できる。
【0014】
大気ロボット88は、カセット87から取り出した基板1の真空装置81への搬入、及び真空装置81での処理の完了した基板1の真空装置81からの搬出を行う。
大気ロボット88による真空装置81への基板1の搬入では、真空装置81における基板1の搬入出口を開閉する大気ゲート85aを開放し(中間ゲート85bは閉じておく)、基板1をロードロックチャンバ82内の位置決め用テーブル89上に載せる。
【0015】
位置決め用テーブル89の台板89a上に搬入された基板1は、台板89a上の多数箇所に突設されているフリーボールベアリング110の上部に突出している主球42(図1参照。後述)上に載置された状態で水平支持される。そして、この状態にて、図5に示すように、基板位置決め用テーブル89に設けられている位置決め装置のL字形の一対の位置決め部材89bが、矩形板状の基板1の4隅の角部のうち対角線上に位置するひと組の角部に当接して、基板1を両側から挟み込むことで基板1の位置決めがなされる。
図5中矢印Gに示すように、一対の位置決め部材89bは、位置決め装置に設けられている駆動装置によって移動されて互いの間隔方向の距離が可変である。一対の位置決め部材89bは、基板1を両側から挟み込んで位置決めした後、互いに離隔するように移動されて、基板1の次の搬送動作の障害にならない位置に待避される。
なお、位置決め装置としては、上述の構成のものに限定されず、例えば、2本の平行板の間に基板を挟み込む第1位置決め装置と、この第1位置決め装置とは向きが90度異なる2本の平行板の間に基板を挟み込む第2位置決め装置とからなる構成等、周知のものを採用できる。
【0016】
大気ロボット88が位置決め用テーブル89上に基板1が載置された後、大気ゲート85aを閉じてロードロックチャンバ82内を減圧する。これとともに、位置決め用テーブル89上での基板1の位置決めを行う。そして減圧完了後に中間ゲート85bを開放して、位置決め用テーブル89上にて位置決め完了済みの基板1を真空ロボット86によって複数の処理室84a〜84cのいずれかに搬入して処理を行う。なお、ロードロックチャンバ82内の減圧開始は、位置決め用テーブル89上における基板1の位置決め開始の前、位置決め完了後、位置決め動作中のいずれのタイミングであっても良い。中間ゲート85bはロードロックチャンバ82とトランスファーチャンバ83との間での基板1の移送時のみ開放する。
【0017】
基板1の処理は、膜付け等の処理工程に従い、処理室から取り出した基板1を別の処理室に搬入(あるいは、元の処理室に搬入する)して進行させる。基板1の処理室に対する搬入出は真空ロボット86によって行う。
なお、処理室から取り出した基板1を別の処理室に搬入(あるいは、元の処理室に搬入)する場合、処理室から取り出した基板1を、一旦、位置決め用テーブル89での位置決めを経てから、別の処理室に入れる。
処理工程が完了したら、真空ロボット86が基板1を処理室から取り出してロードロックチャンバ82内の位置決め用テーブル89上に載置する。このとき中間ゲート85bは開放し、大気ゲート85aは閉じておく。この後、中間ゲート85bを閉じてロードロックチャンバ82内の大気圧への昇圧及び位置決め用テーブル89上での基板1の位置決めを行う。この後、大気ゲート85aを開放して大気ロボット88によって基板1を真空装置81外に搬出する。
【0018】
次に、ベアリングユニット100について説明する。
図1に示すように、このベアリングユニット100は、位置決め用テーブル89の台板89a(ベアリング取付板、ベアリング支持体)の複数箇所に取り付けられたフリーボールベアリング110を有する。
【0019】
フリーボールベアリング110は、球受け部23を有する本体20と、球受け部23の半球状凹面21に配された複数の受け球41と、受け球41を介して半球状凹面21に回転自在に支持された主球42と、本体20の球受け部23を囲むハウジング30と、ハウジング30内に設けられた受け球押さえリング50と、ハウジング30内に設けられた可動部材60(可動体)と、可動部材60を下方に弾性付勢するスプリング61と、駆動力伝達部71とを備えている。
【0020】
本体20は、半球状凹面21を内面とする球受け用凹所22が形成されたブロック状(具体的には円柱状)の球受け部23を有する。
多数の受け球41は、球受け部23の半球状凹面21に配される。
主球42は、受け球41よりも大径とされており、受け球41を介して半球状凹面21に回転自在に支持される。
受け球41は、主球42の回転に伴って半球状凹面21に沿って転動し、受け球41相互の位置関係が循環する。つまり、主球42を回転させると、主球42に接触している受け球41が主球42に従動回転し、半球状凹面21を転動し移動する。その結果、半球状凹面21内側にて受け球41の循環が生じる。
【0021】
ハウジング30は、ベース40と、本体20の球受け部23を取り囲むリング状のキャップ33とを備えている。
キャップ33は、主球突出用開口部31が形成されているリング状の蓋板部33aと、その外周縁から垂下する側壁部33bとを有する構成であり、蓋板部33aによって球受け部23の球受け用凹所22の開口部の周囲の端面(先端面23b)を覆うように設けられている。
キャップ33は、側壁部33bの内周面に形成されたねじ部33cを、ベース40の側壁部40bの外周面に形成されたねじ部40dに嵌合させることによってベース40に装着される。
【0022】
主球突出用開口部31の内径は、主球42の直径より小さくされて主球42の脱落を阻止でき、しかも主球42の一部を外方(図1において上方)に突出させるよう設定されている。
主球突出用開口部31の内径は、主球42が受け球41に支持された状態(半球状凹面21に接触した受け球41に主球42が支持された状態)において、主球突出用開口部31の内周面と主球42との間に、主球42の遊動を可能にするクリアランスCが確保されるよう設定される。
【0023】
ベース40は、略円板状の天板部40aと、天板部40aの周縁から垂下する略円筒状の側壁部40bと、側壁部40bの下端から径方向外側に延出するフランジ40cを有する。
ベース40の内部(天板部40aと側壁部40bに囲まれた空間)は、円筒形のシリンダ空間45とされている。本実施形態では、シリンダ空間45は、球受け部23の基端側に、球受け部23と同軸となるように形成されている。
天板部40aには、駆動力伝達部71が挿通する1または複数の貫通孔43がユニット中心軸方向に沿って形成されている。
フランジ40cには、固定部材(図示略)が挿通する挿通孔40eが形成されており、フランジ40cは前記固定部材によって台板89aに固定することができる。
【0024】
受け球押さえリング50は、本体リング53と、基端側リング部54と、本体リング53から突出した押さえ片55とを具備する。
本体リング53は板状に形成され、キャップ33の蓋板部33aと球受け部23の先端面23bとの間(内側空間11)に配置されている。
基端側リング部54は、本体リング53の外周縁部に、本体リング53から下方に突出して設けられている。
押さえ片55は、本体リング53の内周縁部の全周にわたって下方に突設され、本体20の半球状凹面21と主球42との間に挿入して受け球41を押さえ込むことができる。
受け球押さえリング50は、球受け部23とハウジング30との間に確保された内側空間11内で、球受け用凹所22の深さ方向(図1において上下方向;主球42が突出する方向)に移動可能である。
受け球押さえリング50と球受け部23外面との間、あるいは受け球押さえリング50とハウジング30内面との間などには、受け球押さえリング50の移動抵抗を低減する潤滑用のグリスは使用しない。これは、グリスから放出されるアウトガスによるチャンバ内の汚染を回避するためである。
【0025】
本体20、ハウジング30、受け球41及び主球42、受け球押さえリング50としては、金属製のもの、プラスチック製のもの等を採用できる。
また、基板1が主球42に接触したときに基板1に帯電している静電気によるスパークの発生を防止する点で、主球42が10〜1010Ω/□(オーム・パー・スクウェア)の表面抵抗率を持つように導電性(狭義の導電性)ないし半導電性樹脂で構成し、さらに、この主球42と接するグランド用通電部を設けてもよい。
主球42を形成する導電性樹脂材料としては、ベース樹脂に導電性金属フィラーを分散混入したものや、ベース樹脂に帯電防止ポリマーを添加したものなどを採用できる。
ベース樹脂としては、POM(ポリアセタール)、PAI(ポリアミドイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PI(ポリイミド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、メラミン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂(アラミド樹脂)等を採用できる。また、LCP(液晶ポリマー)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、その他の樹脂も用いることができる。特に、真空装置内の環境に対する特性安定性等の点で、ベスペル(全芳香族ポリイミド樹脂であるデュポン社の登録商標)やPBIが好適である。
本体20やハウジング30、受け球押さえリング50についても同様の導電性樹脂材料によって形成したものを採用可能である。
また、被搬送物の重量や特性によっては、主球42、受け球41、および本体20等をステンレスなどの金属で構成することもできる。
【0026】
可動部材60は、略円板状に形成され、シリンダ空間45内でユニット中心軸方向(図1において上下方向)に移動可能である。
可動部材60の上面には、スプリング61が嵌合する嵌合凹部62が形成されている。
可動部材60には、駆動力伝達ロッド71aが挿通する1または複数の貫通孔63が形成されている。貫通孔63は、可動部材60の周方向に間隔をおいて複数形成するのが好ましい。貫通孔63は2以上、好ましくは3以上形成することができる。
【0027】
駆動力伝達部71(連結部材)は、可動部材60を受け球押さえリング50に連結して、可動部材60に加えられた駆動力を受け球押さえリング50に伝達するものであって、駆動力伝達ロッド71aと、駆動力伝達ロッド71aが挿通する略円筒形のカラー71bとを有する。
駆動力伝達ロッド71aの上端部は、受け球押さえリング50(具体的には基端側リング部54)の固定孔部54aに挿入され、固定孔部54aの内面にネジ止めなどにより固定されている。このため、駆動力伝達部71は受け球押さえリング50と一体的に上下動可能となっている。
受け球押さえリング50に駆動力伝達ロッド71aを固定する構造はネジ止めに限らず、埋め込み固定(インサートモールド成形)や溶接等も可能である。
【0028】
カラー71bはベース40の天板部40aの貫通孔43に挿通している。カラー71bの下端部に形成された段部71dは、可動部材60の貫通孔63の上部開口の周縁部に当接可能である。
駆動力伝達ロッド71aの下端部には、可動部材60からの抜け止めのため、ロッド71aより径が大きい抜け止め部71cが形成されている。
駆動力伝達ロッド71aは可動部材60の貫通穴63に挿通している。
駆動力伝達部71は、ベース40の天板部40aの貫通孔43内で長さ方向に摺動可能であり、可動部材60と一体的に上下動可能である。
【0029】
スプリング61(付勢手段)としては、コイルスプリングが好適である。なお、スプリング61としては、板ばね等も採用可能である。
スプリング61は、上端61aが天板部40aの下面40dに当接し、下端61bが嵌合凹部62の底面に当接しており、可動部材60を下方に弾性付勢することによって、可動部材60に連結された受け球押さえリング50を下方に付勢する。
スプリング61は複数使用するのが好ましく、これら複数のスプリング61は、可動部材60の中央から外れた位置に、可動部材60の周方向に均等に配置するのが好適である。
この構成によって、可動部材60の動作を安定化することができる。
【0030】
図1に示す状態では、可動部材60は、スプリング61の付勢力によって比較的下方に位置している。このため、可動部材60に連結された受け球押さえリング50も比較的下方に位置している。以下、この受け球押さえリング50の位置を移動規制位置ということがある。
この状態では、押さえ片55は、球受け部23の球受け用凹所22の開口部側から半球状凹面21と主球42との間に挿入されて、受け球41の移動を規制するため、球受け部23の受け球41の回転が抑制されて、主球42の回転抵抗が増大する。
【0031】
押さえ片55が受け球41の移動を規制する位置(移動規制位置)は、球受け用凹所22の開口部よりも下方(球受け用凹所22の底部側)の位置である上、球受け用凹所22の開口部付近の内面と主球42との間を押さえ片55がほぼ塞いだ状態になっているため、この位置にて押さえ片55と受け球41との接触によって生じたパーティクルの球受け用凹所22からの飛散は生じにくい。
【0032】
図2に示すように、押上げシャフト72によってスプリング61の弾性力に抗して可動部材60を上方に押圧し、可動部材60をスプリング61の付勢力に抗して押し上げると、スプリング61が圧縮され、これに連動して駆動力伝達部71とともに受け球押さえリング50が上昇し、押さえ片55は受け球41に対し上方に離間した位置に移動する。
この状態では、受け球41の移動規制が解除されるため、主球42の回転抵抗は比較的小さくなる。以下、この受け球押さえリング50の位置を待機位置ということがある。
【0033】
受け球押さえリング50が待機位置にあるとき、押さえ片55は、球受け用凹所22からの受け球41の飛び出しを防止可能な位置に配置される。
このため、この待機位置にあっても、球受け用凹所22の開口部付近の内面と主球42との間を押さえ片55がほぼ塞いだ状態となるため、押さえ片55は球受け用凹所22からのパーティクルの飛散を抑える機能を果たす。
図2に示す状態では、可動部材60は天板部40aの下面40dに当接しており、さらなる上方移動は規制された状態にある。受け球押さえリング50も上方移動が規制されるため、受け球押さえリング50に過大な力が加えられて破損が生じるのを防止できる。
【0034】
押上げシャフト72を下降させると、スプリング61の付勢力によって可動部材60が下降するとともに受け球押さえリング50も下降し、押さえ片55が主球42との間に挿入されて受け球41の移動を規制するため、主球42の回転抵抗が再び増大する。
【0035】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る第2実施形態のベアリングユニット200について、図6および図7を参照して説明する。なお、第1実施形態との共通部分については同じ符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、ベアリングユニット200は、位置決め用テーブル89の台板89aに取り付けられたフリーボールベアリング210を有する。
【0036】
フリーボールベアリング210は、球受け部123を有する本体120と、球受け部123の半球状凹面21に配された複数の受け球41と、受け球41を介して半球状凹面21に回転自在に支持された主球42と、本体120の球受け部123を囲むハウジング130と、ハウジング130内に設けられた可動部材160(可動体)と、可動部材160を下方に弾性付勢するスプリング161と、駆動力伝達部171とを備えている。
【0037】
ハウジング130は、本体120の球受け部123を取り囲むリング状のキャップ133を有する。
キャップ133は、主球突出用開口部131が形成されているリング状の蓋板部133aと、その外周縁から垂下する側壁部133bと、側壁部133bから下方に突出して形成された押さえ片155とを有する。
押さえ片155は、本体120の半球状凹面21と主球42との間に挿入して受け球41を押さえ込むことができる。
【0038】
本体120は、半球状凹面21を内面とする球受け用凹所22が形成されたブロック状(具体的には円柱状)の球受け部123と、ベース140とを有する。
ベース140は、球受け部123から径方向外側に延出する延出部140aと、延出部140aの周縁から垂下する略円筒状の側壁部140bとを有する。
延出部140aには、駆動力伝達部171が挿通する1または複数の貫通孔143がユニット中心軸方向に沿って形成されている。
側壁部140bの内部は、円筒形のシリンダ空間145とされている。側壁部140bには、固定部材146が挿通する挿通孔140cが形成されており、側壁部140bは固定部材146によって台板89aに固定される。
【0039】
可動部材160は、略円板状に形成され、シリンダ空間145内でユニット中心軸方向(図6において上下方向)に移動可能である。
可動部材160の上面には、スプリング161が嵌合する嵌合凹部162が形成されている。
可動部材160には、駆動力伝達ロッド171aが挿通する1または複数の貫通孔163が形成されている。
【0040】
駆動力伝達部171(連結部材)は、可動部材160をキャップ133に連結し、可動部材160に加えられた駆動力をキャップ133に伝達するものであって、駆動力伝達ロッド171aと、駆動力伝達ロッド171aが挿通する略円筒形のカラー171bとを有する。
駆動力伝達ロッド171aの上端部は、キャップ133(具体的には側壁部133b)の固定孔部133c内面にネジ止めなどにより固定されている。このため、駆動力伝達部171はキャップ133と一体的に上下動可能となっている。
駆動力伝達ロッド171aの下端部には抜け止め部171cが形成されている。
駆動力伝達部171は、ベース140の延出部140aの貫通孔143に対し長さ方向に摺動可能であり、可動部材160と一体的に上下動可能である。
【0041】
スプリング161(付勢手段)は、上端161aが球受け部123下面123aに形成された嵌合凹部123bの天面に当接し、下端161bが嵌合凹部162の底面に当接しており、可動部材160を下方に弾性付勢することによって、可動部材160に連結されたキャップ133を下方に付勢する。
この例では、スプリング161は、可動部材160の中央位置に1つのみ設けられている。この構成によって、構造を簡略化し、組立の容易化、製造コスト削減を図ることができる。
【0042】
図6に示す状態では、可動部材160は、スプリング161の付勢力によって比較的下方に位置しているため、可動部材160に連結されたキャップ133も比較的下方に位置している(移動規制位置)。
この状態では、押さえ片155は、球受け部123の球受け用凹所22の開口部側から半球状凹面21と主球42との間に挿入されて、受け球41の移動を規制するため、球受け部123の受け球41の回転が抑制されて、主球42の回転抵抗が増大する。
【0043】
図7に示すように、押上げシャフト72によってスプリング161の弾性力に抗して可動部材160を押し上げると、これに連動して駆動力伝達部171とともにキャップ133が上昇し、押さえ片155は受け球41に対し上方に離間した位置(待機位置)に移動する。この状態では、受け球41の移動規制が解除されるため、主球42の回転抵抗は比較的小さくなる。
押上げシャフト72を下降させると、スプリング161の付勢力によって可動部材160が下降するとともにキャップ133も下降し、押さえ片155が半球状凹面21と主球42との間に挿入されて受け球41の移動を規制するため、主球42の回転抵抗が再び増大する。
【0044】
(第3実施形態)
以下、本発明に係る第3実施形態のベアリングユニットのフリーボールベアリング310について、図8および図9を参照して説明する。なお、第1実施形態との共通部分については同じ符号を付して説明を省略する。
図8は、本実施形態のフリーボールベアリング310を示す部分断面図であり、図9は、フリーボールベアリングの動作を示す部分断面図であり、図10は、図8のA−A断面図である。
【0045】
図8に示すように、フリーボールベアリング310は、球受け部223を有する本体220と、球受け部223の半球状凹面21に配された複数の受け球41と、受け球41を介して半球状凹面21に回転自在に支持された主球42と、本体220の球受け部23を囲むハウジング230と、ハウジング230内に設けられた受け球押さえリング250と、ハウジング230内に設けられた可動部材260(可動体)と、可動部材260を下方に弾性付勢するスプリング261と、駆動力伝達部271と、可動部材260を上下方向に移動させる移動部材280と、を備えている。
【0046】
本体220は、半球状凹面21を内面とする球受け用凹所22が形成されたブロック状(具体的には円柱状)の球受け部223を有する。
ハウジング230は、ベース240と、本体220の球受け部223を取り囲むリング状のキャップ233と、ベース240を保持する保持部290とを備えている。
キャップ233は、主球突出用開口部231が形成されているリング状の蓋板部233aと、その外周縁から垂下する側壁部233bとを有する。
キャップ233は、側壁部233bの内周側に形成された嵌合凹部233cに、ベース240に形成された嵌合凸部240cが嵌合することによってベース240に装着される。
【0047】
ベース240は、略円板状の天板部240aと、天板部240aの周縁から垂下する略円筒状の側壁部240bとを有する。
側壁部240bの内部は、円筒形のシリンダ空間245とされている。
天板部240aには、駆動力伝達部271が挿通する1または複数の貫通孔243がユニット中心軸方向に沿って形成されている。
【0048】
受け球押さえリング250は、板状の本体リング253と、本体リング253の内周縁部から突出した押さえ片255とを具備する。
【0049】
可動部材260は、略円板状に形成され、シリンダ空間245内で上下方向に移動可能である。
可動部材260の上面には、スプリング261が嵌合する嵌合凹部262が形成されている。
可動部材260には、駆動力伝達ロッド271aが挿通する貫通孔263が形成されている。
可動部材260には、可動部材260を貫通する通気口260cを形成することによって、シリンダ空間245内での可動部材260の移動が容易になる。
【0050】
駆動力伝達部271(連結部材)は、可動部材260を受け球押さえリング250に連結して、可動部材260に加えられた駆動力を受け球押さえリング250に伝達するものであって、駆動力伝達ロッド271aと、駆動力伝達ロッド271aが挿通する略円筒形のカラー271bとを有する。
駆動力伝達ロッド271aは、受け球押さえリング250(具体的には本体リング253)の挿通孔253aに挿通し、抜け止め部271cによって受け球押さえリング250に対して位置決めされ、受け球押さえリング250と一体的に上下動可能となっている。
カラー271bはベース240の天板部240aの貫通孔243に挿通している。
駆動力伝達ロッド271aの下端部は可動部材260の固定孔部260aに挿入され、固定孔部260aの内面にネジ止めなどにより固定されている。このため、駆動力伝達部271は可動部材260と一体的に上下動可能となっている。
【0051】
スプリング261(付勢手段)は、上端261aが天板部240aの下面240dに当接し、下端261bが嵌合凹部262の底面に当接しており、可動部材260を下方に弾性付勢することによって、可動部材260に連結された受け球押さえリング50を下方に付勢する。
図10に示すように、スプリング261は複数使用するのが好ましく、これら複数のスプリング61は、可動部材260の中央から外れた位置に、可動部材260の周方向に均等に配置するのが好適である。この構成によって、可動部材260の動作を安定化することができる。
【0052】
保持部290は、略円板状の底板部291と、その周縁から上方に延出する側壁部292と、底板部291の中央部から下方に延出する筒状軸部293とを備えている。
保持部290は、側壁部292の内周面に形成されたねじ部292aを、ベース240の側壁部240bの外周面に形成されたねじ部240cに嵌合させることによってベース240に装着される。
筒状軸部293の外周面には雄ねじ293aが形成されており、支持体(図示略)のねじ部(図示略)に螺着可能である。
側壁部292には、側壁部292を貫通する通気口292bを形成することによって、シリンダ空間245内での可動部材260の移動が容易になる。
【0053】
移動部材280は、筒状軸部293内に軸方向(ユニット中心軸方向)に沿って形成された挿通孔293bに挿通している。
移動部材280は、本体部281と、本体部281の上端から上方に延出する固定部282と、本体部281の下端に形成されたヘッド部283とを有する。
固定部282は、可動部材260の固定孔部260bに挿入され、固定孔部260bの内面にネジ止めなどにより固定されている。このため、本体部281は可動部材260と一体的に上下動可能となっている。
【0054】
図8に示す状態では、可動部材260は、スプリング261の付勢力によって比較的下方に位置しているため、可動部材260に連結された受け球押さえリング250も比較的下方に位置している(移動規制位置)。
この状態では、押さえ片255は、球受け部23の球受け用凹所22の開口部側から半球状凹面21と主球42との間に挿入されて、受け球41の移動を規制するため、球受け部223の受け球41の回転が抑制されて、主球42の回転抵抗が増大する。
【0055】
図9に示すように、移動部材280によって、スプリング261の弾性力に抗して可動部材260を押し上げると、これに連動して駆動力伝達部271とともに受け球押さえリング250が上昇し、押さえ片255は受け球41に対し上方に離間した位置(待機位置)に移動する。
この状態では、受け球41の移動規制が解除されるため、主球42の回転抵抗は比較的小さくなる。
図9に示す状態では、ヘッド部283の上面が筒状軸部293の下端部293cに当接して、移動部材280の上方移動が規制されている。
【0056】
可動部材260が下降すると、受け球押さえリング50も下降し、押さえ片55が主球42との間に挿入されて受け球41の移動を規制するため、主球42の回転抵抗が再び増大する。
【0057】
図11および図12は、本発明に係るベアリングユニットの一例を示すものである。
このベアリングユニットは、複数のフリーボールベアリング310と、フリーボールベアリング310を支持する支持体300と、支持体300が固定される支持テーブル310と、支持体300に挿通する押上げシャフト72を昇降する昇降機構320とを備えている。
昇降機構320は、例えばエアシリンダなどの駆動部321と、駆動部321により昇降する昇降シャフト322と、昇降シャフト322の上端部に設けられた第1基台部323とを備えている。第1基台部323には、押上げシャフト72の基端部が固定される。符号324は、昇降シャフト322上部を収納するベローズであり、ベローズ324の下端は、支持板330に設けられた第2基台部325に取り付けられる。
支持体300には、筒状軸部293が挿入される挿入孔301が形成されており、筒状軸部293は、挿入孔301の内面のねじ部に螺着される。
昇降機構320は、昇降シャフト322を昇降することによって、押上げシャフト72を昇降し、フリーボールベアリング310の本体220を高さ方向に移動させることができる。
支持テーブル310は、図示しない昇降機構によって昇降可能である。
【0058】
このベアリングユニットは、次のような使用方法が可能である。
図11に示すように、基板1(被支持物)を載置テーブル340上に載置した状態から、支持テーブル310を上昇させると、フリーボールベアリング310が通過口340aを通って載置テーブル340上に突出し、基板1が主球42上に載置された状態となる。
昇降機構320により昇降シャフト322および押上げシャフト72の高さ位置を調整して受け球押さえリング250を移動規制位置に配置すれば(図8参照)、主球42の回転抵抗は大きくなり、基板1の位置ずれを防止できる。このため、基板1を安定的に保持できる。
受け球押さえリング250を待機位置に配置すれば(図9参照)、主球42の回転抵抗は小さくなり、基板1は、主球42上で容易に移動可能となる。
【0059】
このように、このベアリングユニットでは、昇降機構320により押上げシャフト72の高さ位置を調整することによって、必要な操作に応じて主球42の回転抵抗を調整することができるため、基板1の搬送をスムーズに、かつ正確に行うことができる。
【0060】
本発明に係るフリーボールベアリングは、移動規制時に主球を回転しないように固定する使用方法も可能である。
本発明に係るフリーボールベアリングは、例えば、ディスプレイ用マザーガラス、シリコン基板(ウェハ)などといった基板を精密に位置決めするための基板用位置決めテーブル(支持テーブル)に好適に用いることができる。
本発明は、例えば半導体基板やプリント配線基板に対する加工、電子部品の実装、フラットパネルの製造、半導体素子や半導体パッケージ等の電子部品の製造の他、食品や医薬品の製造等、クリーンルーム内での物品の搬送(例えば搬送装置の一部としての使用)、位置決め等に幅広く使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、押さえ片によって、球受け用凹所からのパーティクルの飛散を抑制することができる。また、押さえ片が受け球に作用することによって、間接的に主球の回転抵抗が制御されるため、主球が損耗せず、このような損耗に伴うパーティクルの飛散が起こらない。従って、パーティクルの飛散による汚染を防止することができる。
【符号の説明】
【0062】
110、210、310・・・フリーボールベアリング、20、120、220・・・本体、21・・・半球状凹面、23、123、112・・・球受け部、30、130、230・・・ハウジング、31、131、231・・・主球突出用開口部、41・・・受け球、42・・・主球、50、150、250・・・受け球押さえリング、52、152、252・・・押さえ片、60、160、260・・・可動部材(可動体)、61、161、261・・・スプリング(付勢手段)、71、171、271・・・駆動力伝達部(連結部材)、300・・・支持体、320・・・昇降機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球状凹面(21)を内面とする球受け用凹所(22)が形成された球受け部(23)を有する本体(20)と、
前記本体の前記半球状凹面に配された複数の受け球(41)と、
前記受け球よりも大径に形成され前記受け球を介して前記半球状凹面に回転自在に支持された主球(42)と、
前記本体の前記球受け部を取り囲むように設けられ、前記主球の一部を突出させる主球突出用開口部(31)が形成されたハウジング(30)と、
前記半球状凹面と前記主球との間に挿入されて前記受け球の移動を規制することで前記主球の回転抵抗を増大させる押さえ片(55)を有する受け球押さえリング(50)と、
前記ハウジング内に、前記主球突出方向およびその反対の方向に移動可能に設けられた可動体(60)と、
前記可動体を、前記主球突出方向とは反対の方向に弾性付勢する付勢手段(61)と、
前記可動体を前記受け球押さえリングに連結して、前記可動体に加えられた駆動力を前記受け球押さえリングに伝達する駆動力伝達部(71)と、を備え、
前記付勢手段は、前記付勢力によって、前記押さえ片が受け球の移動を規制する位置に前記可動体を配置することができ、
前記可動体は、前記押さえ片が受け球の移動を規制する位置と、前記付勢力に抗した前記主球突出方向の移動によって前記規制が解除される位置とを切り替え可能であることを特徴とするフリーボールベアリング(110)。
【請求項2】
半球状凹面(21)を内面とする球受け用凹所(22)が形成された球受け部(123)を有する本体(120)と、
前記本体の前記半球状凹面に配された複数の受け球(41)と、
前記受け球よりも大径に形成され前記受け球を介して前記半球状凹面に回転自在に支持された主球(42)と、
前記本体の前記球受け部を取り囲むように設けられ、前記主球の一部を突出させる主球突出用開口部(131)が形成されたハウジング(130)と、
前記ハウジング内に、前記主球突出方向およびその反対の方向に移動可能に設けられた可動体(160)と、
前記可動体を、前記主球突出方向とは反対の方向に弾性付勢する付勢手段(161)と、
前記可動体を前記ハウジングに連結して、前記可動体に加えられた駆動力をハウジングに伝達する駆動力伝達部(171)と、を備え、
前記ハウジングには、前記半球状凹面と前記主球との間に挿入されて前記受け球の移動を規制することで前記主球の回転抵抗を増大させる押さえ片(155)が形成され、
前記付勢手段は、前記付勢力によって、前記押さえ片が受け球の移動を規制する位置に前記可動体を配置することができ、
前記可動体は、前記押さえ片が受け球の移動を規制する位置と、前記付勢力に抗した前記主球突出方向の移動によって前記規制が解除される位置とを切り替え可能であることを特徴とするフリーボールベアリング(210)。
【請求項3】
前記付勢手段が複数設けられ、
これら複数の付勢手段は、前記可動体の中央から外れた位置に、前記可動体の周方向に均等に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のフリーボールベアリング。
【請求項4】
前記付勢手段が前記可動体の中央に1つのみ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のフリーボールベアリング。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフリーボールベアリングと、前記フリーボールベアリングを支持する支持体(300)と、前記フリーボールベアリングの本体を前記球受け部高さ方向に移動させる昇降機構(320)とを備えていることを特徴とするベアリングユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−21556(P2012−21556A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158651(P2010−158651)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(599012765)株式会社井口機工製作所 (9)
【Fターム(参考)】