説明

フルオロポリマーの製造方法

少なくとも2つのフルオロ界面活性剤の組み合わせが分散剤として用いられるフルオロポリマーの製造のための乳化重合法が開示される。少なくとも1つのフルオロ界面活性剤はパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシスルフィネートである。少なくとも1つの他のフルオロ界面活性剤は、カルボン酸、その塩、スルホン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのフルオロ界面活性剤:1)パーフルオロ脂肪族スルフィネートならびに2)カルボン酸、スルホン酸、カルボン酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテルが用いられるフルオロポリマーの製造のための乳化重合法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化および溶液重合法による、熱可塑性およびエラストメリックの両方の、フルオロポリマーの製造は、当該技術分野で周知であり;例えば米国特許第4,214,060号明細書;同第4,281,092号明細書;同第4,380,618号明細書;同第4,524,197号明細書;同第5,789,508号明細書;同第6,774,764 B2号明細書を参照されたい。一般に、フルオロポリマーは、水溶性重合開始剤および比較的大量の界面活性剤が用いられる乳化重合法で製造される。
【0003】
Morganら(米国特許第6,395,848 B1号明細書)は、少なくとも2つのフルオロ界面活性剤の組み合わせを利用する水性分散法を開示している。少なくとも1つの界面活性剤は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)カルボン酸、スルホン酸もしくはそれらの塩であり、少なくとも1つの界面活性剤は、フルオロアルキルカルボン酸、スルホン酸もしくはそれらの塩、またはフルオロアルコキシアリールスルホン酸もしくはその塩である。この方法によって製造された幾つかのフルオロポリマーは、生じた分散系から単離することが困難である可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、生じたフルオロポリマーが溶液から容易に単離されるフルオロポリマーの製造のための乳化重合法を提供する。本方法は、フルオロポリマーの水性分散系を得るために開始剤および分散剤を含む水性媒体中で少なくとも1つのフルオロモノマーを重合させる工程であって、前記分散剤が、少なくとも2つのフルオロ界面活性剤の組み合わせであり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1つがパーフルオロ脂肪族スルフィネートであり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1つが、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸およびスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテルである工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、フルオロポリマーを製造するための乳化重合法であって、前記フルオロポリマーが熱可塑性フルオロポリマーまたはフルオロエラストマーのどちらかである方法を指向する。「熱可塑性フルオロポリマー」とは、結晶性または半結晶性のフルオロポリマーを意味する。「フルオロエラストマー」とは、非晶質のエラストメリックフルオロポリマーを意味する。フルオロポリマーは、部分フッ素化されていてもまたは過フッ素化されていてもよい。
【0006】
本発明の方法によって製造されるフルオロポリマーは、少なくとも1つのフルオロモノマーの共重合単位を含む。「フルオロモノマー」とは、少なくとも35重量パーセント(重量%)フッ素を含有する重合性モノマーを意味する。かかるモノマーには、フッ素含有オレフィンおよびフッ素含有ビニルエーテルが含まれるが、それらに限定されない。
【0007】
本発明によって製造される熱可塑性フルオロポリマーは、ホモポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレンもしくはポリフッ化ビニリデン)または20重量%以下の第2の(異なる)フルオロモノマー、炭化水素オレフィンもしくは後者の組み合わせを含有するコポリマーであってもよい。かかるコポリマーには、THV、FEPおよびPFAが含まれるが、それらに限定されない。
【0008】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーは、フルオロエラストマーの重量を基準にして、25〜70重量パーセントの、フッ化ビニリデン(VF2)またはテトラフルオロエチレン(TFE)であってもよい第1フルオロモノマーの共重合単位を含有する。フルオロエラストマー中の残りの単位は、フルオロモノマー、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記第1モノマーとは異なる、1つ以上の追加の共重合モノマーからなる。
【0009】
本発明によれば、フッ素含有オレフィンには、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(1−HPFP)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびフッ化ビニルが含まれるが、それらに限定されない。
【0010】
本発明に用いられるフッ素含有ビニルエーテルには、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルが含まれるが、それらに限定されない。モノマーとしての使用に好適なパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)には、式
【0011】
【数1】

【0012】
(式中、Rf'および
【0013】
【数2】

【0014】
は、2〜6個の炭素原子の異なる線状もしくは分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10であり、Rfは、1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
のものが含まれる。
【0015】
好ましいクラスのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルには、式
CF2=CFO(CF2CFXO)nf (II)
(式中、XはFまたはCF3であり、nは0〜5であり、そしてRfは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
の組成物を含む。
【0016】
最も好ましいクラスのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルには、nが0または1であり、そしてRfが1〜3個の炭素原子を含有するそれらのエーテルが含まれる。かかる過フッ素化エーテルの例には、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)およびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)が挙げられる。他の有用なモノマーには、式
CF2=CFO[(CF2mCF2CFZO]nf (III)
(式中、Rfは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、m=0または1、n=0〜5、そしてZ=FまたはCF3である)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましいメンバーは、式中RfがC37であり、m=0、そしてn=1であるものである。
【0017】
追加のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーには、式
CF2=CFO[(CF2CF{CF3}O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2p]Cx2x+1 (IV)
(式中、mおよびnは独立して=0〜10、p=0〜3、そしてx=1〜5である)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましいメンバーには、式中n=0〜1、m=0〜1、そしてx=1である化合物が含まれる。
【0018】
有用なパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の他の例には、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1 (V)
(式中、n=1〜5、m=1〜3、そして式中、好ましくは、n=1である)
が挙げられる。
【0019】
PAVEの共重合単位が本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在する場合、PAVE含有率は一般に、フルオロエラストマーの総重量を基準にして、25〜75重量パーセントの範囲である。パーフルオロ(メチルビニル)エーテルが使用される場合、フルオロエラストマーは好ましくは、30〜60重量%共重合PMVE単位を含有する。
【0020】
本発明の方法によって製造されるフルオロポリマーに有用な炭化水素オレフィンには、エチレンおよびプロピレンが含まれるが、それらに限定されない。炭化水素オレフィンの共重合単位が本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在する場合、炭化水素オレフィン含有率は一般に4〜30重量パーセントである。
【0021】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーはまた、任意選択的に、1つ以上の硬化部位モノマーの単位を含んでもよい。好適な硬化部位モノマーの例には、i)臭素含有オレフィン、ii)ヨウ素含有オレフィン、iii)臭素含有ビニルエーテル、iv)ヨウ素含有ビニルエーテル、v)ニトリル基を有するフッ素含有オレフィン、vi)ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル、vii)1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP)、viii)パーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテル、およびix)非共役ジエンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0022】
臭素化硬化部位モノマーは、他のハロゲン、好ましくはフッ素を含有してもよい。臭素化オレフィン硬化部位モノマーの例は、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF2CF2Br、ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB)、ならびに臭化ビニル,1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、臭化パーフルオロアリル、4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロブテン−1、4−ブロモ−1,1,3,3,4,4−ヘキサフルオロブテン、4−ブロモ−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン、6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン、4−ブロモパーフルオロブテン−1および臭化3,3−ジフルオロアリルなどの他のものである。本発明で有用な臭素化ビニルエーテル硬化部位モノマーには、2−ブロモ−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルおよびCF2BrCF2O−CF=CF2などのクラスCF2Br−Rf−O−CF=CF2(Rfはパーフルオロアルキレン基である)のフッ素化化合物、ならびにCH3OCF=CFBrまたはCF3CH2OCF=CFBrなどのグラスROCF=CFBrまたはROCBr=CF2(式中、Rは低級アルキル基またはフルオロアルキル基である)のフルオロビニルエーテルが含まれる。
【0023】
好適なヨウ化硬化部位モノマーには、式:CHR=CH−Z−CH2CHR−I(式中、Rは−Hまたは−CH3であり、Zは線状もしくは分岐の、任意選択的に1つまたは複数のエーテル酸素原子を含有するC1〜C18の(パー)フルオロアルキレン基、または米国特許第5,674,959号明細書に開示されているような(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)のヨウ化オレフィンが含まれる。有用なヨウ化硬化部位モノマーの他の例は、米国特許第5,717,036号明細書に開示されているように、式:I(CH2CF2CF2nOCF=CF2およびICH2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF=CF2など(式中、n=1〜3である)の不飽和エーテルである。加えて、ヨードエチレン、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)、3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン、2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン、2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)プロパン、2−ヨードエチルビニルエーテル、3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−ヨードペンテン、およびヨードトリフルオロエチレンをはじめとする好適なヨウ化硬化部位モノマーが米国特許第4,694,045号明細書に開示されている。ヨウ化アリルおよび2−ヨード−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルもまた有用な硬化部位モノマーである。
【0024】
有用なニトリル含有硬化部位モノマーには、下に示される式
CF2=CF−O(CF2n−CN (VI)
(式中、n=2〜12、好ましくは2〜6である)
CF2=CF−O[CF2−CF(CF3)−O]n−CF2−CF(CF3)−CN (VII)
(式中、n=0〜4、好ましくは0〜2である)
CF2=CF−[OCF2CF(CF3)]x−O−(CF2n−CN (VIII)
(式中、x=1〜2、そしてn=1〜4である)、および
CF2=CF−O−(CF2n−O−CF(CF3)CN (IX)
(式中、n=2〜4である)
を有するものが含まれる。式(VIII)を有するものが好ましい。特に好ましい硬化部位モノマーは、ニトリル基とトリフルオロビニルエーテル基とを有する過フッ素化ポリエーテルである。最も好ましい硬化部位モノマーは、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN (X)
すなわちパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)または8−CNVEである。
【0025】
非共役ジエン硬化部位モノマーの例には、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、3,3,4,4−テトラフルオロ−1,5−ヘキサジエン、ならびにカナダ国特許第2,067,891号明細書および欧州特許第0784064A1号明細書に開示されているものなどの他のものが挙げられるが、それらに限定されない。好適なトリエンは8−メチル−4−エチリデン−1,7−オクタジエンである。
【0026】
上にリストされた硬化部位モノマーのうちで、フルオロエラストマーが過酸化物で硬化させられる状況のための、好ましい化合物には、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB);4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB);ヨウ化アリル;ブロモトリフルオロエチレンおよび8−CNVEなどのニトリル含有硬化部位モノマーが含まれる。フルオロエラストマーがポリオールで硬化させられるとき、2−HPFPすなわちパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルが好ましい硬化部位モノマーである。フルオロエラストマーがテトラアミンで硬化させられるとき、ビス(アミノフェノール)またはビス(チオアミノフェノール)、ニトリル含有硬化部位モノマー(例えば8−CNVE)が好ましい硬化部位モノマーである。フルオロエラストマーがアンモニアまたは硬化温度でアンモニアを放出する化合物(例えば尿素)で硬化させられるとき、ニトリル含有硬化部位モノマー(例えば8−CNVE)が好ましい硬化部位モノマーである。
【0027】
硬化部位モノマーの単位は、本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在するとき、典型的には0.05〜10重量%(フルオロエラストマーの総重量を基準にして)、好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.05〜3重量%のレベルで存在する。
【0028】
本発明の方法によって製造されてもよい具体的なフルオロエラストマーには、i)フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレン;ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレン;iii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iv)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;v)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vi)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vii)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン;viii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびエチレン;ix)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;x)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xi)テトラフルオロエチレン、プロピレンおよびフッ化ビニリデン;xii)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニル)エーテル;xiii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン);xiv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;ならびにxvi)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルの共重合単位を含むものが含まれるが、それらに限定されない。
【0029】
さらに、ヨウ素含有末端基、臭素含有末端基またはそれらの混合物は任意選択的に、フルオロエラストマーの製造中の連鎖移動剤または分子量調整剤の使用の結果としてフルオロエラストマーポリマー鎖端の1つまたは両方に存在する可能性がある。用いられるとき、連鎖移動剤の量は0.005〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%の範囲のフルオロエラストマー中のヨウ素または臭素レベルをもたらすように計算される。
【0030】
連鎖移動剤の例には、ポリマー分子の一端または両端に結合ヨウ素の組み込みをもたらすヨウ素含有化合物が挙げられる。ヨウ化メチレン;1,4−ジヨードパーフルオロ−n−ブタン;および1,6−ジヨード−3,3,4,4,テトラフルオロヘキサンがかかる試剤を代表する。他のヨウ素化連鎖移動剤には、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン;1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン;1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン;1,2−ジ(ヨードジフルオロメチル)−パーフルオロシクロブタン;モノヨードパーフルオロエタン;モノヨードパーフルオロブタン;2−ヨード−1−ヒドロパーフルオロエタンなどが含まれる。欧州特許出願公開第0868447A1号明細書に開示されているシアノ−ヨウ素連鎖移動剤もまた含まれる。ジヨウ素化連鎖移動剤が特に好ましい。
【0031】
臭素化連鎖移動剤の例には、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン;1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン;1−ヨード−2−ブロモ−1,1−ジフルオロエタンおよび米国特許第5,151,492号明細書に開示されているなどの他のものが挙げられる。
【0032】
本発明の方法での使用に好適な他の連鎖移動剤には、米国特許第3,707,529号明細書に開示されているものが含まれる。かかる試剤の例には、イソプロパノール、マロン酸ジエチル、酢酸エチル、四塩化炭素、アセトンおよびドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0033】
硬化部位モノマーおよび連鎖移動剤は、ニートでまたは溶液として反応器に加えられてもよい。重合の開始近くに反応器中へ導入されることに加えて、連鎖移動剤量は、製造中のフルオロエラストマーの所望の組成、使用中の連鎖移動剤、および全反応時間に依存して、全重合反応期間の全体にわたって加えられてもよい。
【0034】
本発明の乳化重合に用いられる分散剤は、少なくとも2つのフルオロ界面活性剤の組み合わせである。少なくとも1つのフルオロ界面活性剤はパーフルオロ脂肪族スルフィネートである。本スルフィネートは、式Rf−SO2M(式中、Rfはパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基である)を有する。本スルフィネートはまた、式Rf'−(SO2M)n(式中、Rf'は多価、好ましくは二価パーフルオロ基であり、nは2〜4の整数、好ましくは2である)を有してもよい。好ましくはパーフルオロ基はパーフルオロアルキレン基である。一般にRfおよびRf'は、1〜20個の炭素原子、好ましくは4〜10個の炭素原子を有する。Mは1の原子価を有するカチオン(例えばH+、Na+、K+、NH4+など)である。かかるフルオロ界面活性剤の具体的な例には、C49−SO2Na;C613−SO2Na;C817−SO2Na;C612−(SO2Na)2;およびC37−O−CF2CF2−SO2Naが挙げられるが、それらに限定されない。
【0035】
少なくとも1つの他のフルオロ界面活性剤は、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸およびスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテル(PFPE)である。本発明に使用されるパーフルオロポリエーテルは、分子の主鎖において酸素原子が1〜3個の炭素原子を有する飽和フルオロカーボン基によって分離されている任意の鎖構造を有することができる。2つ以上のタイプのフルオロカーボン基が分子中に存在してもよい。代表的な構造は繰り返し単位
(−CFCF3−CF2−O−)n (XI)
(−CF2−CF2−CF2−O−)n (XII)
(−CF2CF2−O−)n−(CF2−O−)m (XIII)
(−CF2CFCF3−O−)n−(CF2−O−)m (XIV)
を有する。
【0036】
これらの構造は、J.Appl.Polymer Sci.57(1995),797ページにKasaiによって議論されている。そこに開示されているように、かかるPFPEは、一端にまたは両端にカルボン酸基もしくはその塩(「カルボキシル基」)を有することができる。かかる構造はまた、一端でのまたは両端でのスルホン酸基でも可能である。「スルホン酸」基は、酸としてかもしくはそのイオン塩として存在してもよい。加えて、両端に酸官能性を持ったPFPEは、一端にカルボン酸基を、他端にスルホン酸基を有してもよい。PFPEスルホン酸は、140℃でジメチルホルムアミド中の相当するPFPEカルボン酸カリウムの溶液中にSO2をバブリングさせ、引き続き抽出およびイオン交換による酸形態への変換によって製造される。構造XIを有するPFPEは、DuPontから入手可能である。構造XIIを有するPFPEは、ダイキン工業株式会社から入手可能である。PFPE−XIIIおよびXIVは、Solvay Solexisから入手可能である。本発明に有用なPFPEは、これらの会社から入手可能な特定のPFPEに限定されない。モノカルボキシルまたはモノスルホン酸PFPEについては、分子の他端は通常過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有してもよい。本発明に使用することができる一端にまたは両端にカルボキシルまたはスルホン酸基を有するPFPEは、少なくとも2個のエーテル酸素、より好ましくは少なくとも4個のエーテル酸素、さらにより好ましくは少なくとも6個のエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも1つ、より好ましくはかかるフルオロカーボン基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも50%は、2または3個の炭素原子を有する。同様に、好ましくは、PFPEは合計少なくとも9個の炭素原子を有し、それによって上記の繰り返し単位構造におけるnおよびn+mの最小値は少なくとも3である。分子量は、PFPEが室温で普通液体であるように十分に低い。一端または両端にカルボキシルまたはスルホン酸基を有する2つ以上のPFPEを使用することができるが、普通はたった1つのかかるPFPEが用いられる。
【0037】
本発明の方法に用いられる全フルオロ界面活性剤の量(すなわちパーフルオロ脂肪族スルフィネートの量、プラスPFPEの量、プラス存在する任意の追加のフルオロ界面活性剤)は、典型的な範囲内である。従って、全界面活性剤の量は、重合に使用される水の総重量を基準にして、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは0.05〜3重量%であることができる。本発明の重合法に用いられてもよい界面活性剤の濃度は、各界面活性剤の臨界ミセル濃度(c.m.c.)より上または下であってもよい。c.m.c.は、異なる界面活性剤について異なる。当業者が理解するように、所与のレベルの分散安定性を達成するために必要とされる界面活性剤の量は、一定の粒度で製造されるべきポリマーの量と共に増加するであろう。安定性のために必要とされる界面活性剤の量はまた、製造される一定ポリマーで減少する粒径と共に、全表面積がこれらの条件下に増加するので、増加する。これは本発明の方法について幾つかの場合に観察され、それは一般に、カルボキシルまたはスルホン酸末端を有するPFPEの不存在下に実施される類似の方法より小さい分散粒子をもたらす。かかる場合に、全界面活性剤が増やされないならば、得られた分散系は室温で不安定であり、ゲルを形成し得る。しかしながら、本発明の分散系は依然として室温で、それらの全界面活性剤レベルからおよびそれらの小さい分散粒度で予期されるよりも安定である。意外にも、室温で不安定である生成分散系は、反応器中の少量の凝塊で判断されるように、重合に用いられる高温では安定であるように思われる。「凝塊」は、重合中に水性分散系から分離し得る非水湿潤性ポリマーである。形成される凝塊の量は、分散系安定性の指標である。
【0038】
カルボキシルまたはスルホン酸末端を有するPFPEは、分散剤において多量に存在してもよいが、かかる化合物は高価である。全フルオロ界面活性剤のうち、カルボキシルまたはスルホン酸末端基を有するPFPEは好ましくは少量で、すなわち、重量で全フルオロ界面活性剤の半分未満で存在する。カルボキシルまたはスルホン酸末端を有するPFPEの量は、全フルオロ界面活性剤の重量を基準にして、より好ましくは25重量%以下、最も好ましくは15重量%以下である。一般に、存在するカルボキシルまたはスルホン酸末端を有するPFPEの量は、全フルオロ界面活性剤の重量を基準にして、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%である。使用されるカルボキシルまたはスルホン酸末端基を有するPFPEの量は、望まれる効果(すなわち、粒度)のレベルに依存するであろう。意外にも、単独での、例えば、多くとも1つのエーテル結合を有する(ポリエーテルではない)フルオロ界面活性剤の不存在下でのカルボキシルまたはスルホン酸末端を有するPFPEの使用は、多くとも1つのエーテル結合を有するフルオロ界面活性剤の単独での使用と比較して改善された結果をもたらさない。すなわち、フルオロ界面活性剤の少なくとも1つがパーフルオロポリエーテルカルボン酸もしくはスルホン酸またはその塩であり、フルオロ界面活性剤の少なくとも1つがパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシスルフィネートである、少なくとも2つのフルオロ界面活性剤の組み合わせの使用は、どちらかのタイプの界面活性剤単独の使用と比べて、相乗効果を重合プロセスに与える。
【0039】
本明細書で用いるところでは、「フルオロ界面活性剤の組み合わせ」は、「組み合わせ」の成分が重合の間ずっと反応器中に存在することを意味する。成分は、時間を変えるなど、別々に導入することができ、それらはそのように組み合わせられてもよいが、反応器中への導入前に物理的に組み合わせられる必要はない。フルオロ界面活性剤のすべては、重合が始められる前に反応器に加えられてもよいか、または添加は、反応器プレチャージと、その後の添加、典型的には粒子核生成のほとんど起こった後との間に分割することができる。PFPEの添加は好ましくはプレチャージによる。
【0040】
本発明の乳化重合法は連続、セミバッチ式またはバッチ式プロセスであってもよい。
【0041】
本発明のセミバッチ式乳化重合プロセスでは、所望の組成のガス状モノマー混合物(初期モノマー装入物)が、水性媒体プレチャージを含有する反応器中へ導入される。反応器は典型的には、蒸気空間が残るように、水性媒体で完全には満たされない。水性媒体は、上に議論されたようなタイプ、すなわちカルボキシルまたはスルホン酸末端基を有するPFPE、パーフルオロ脂肪族スルフィネート、およびそれらの混合物の少なくとも1つのフルオロ界面活性剤分散剤を含む。任意選択的に、水性媒体は、重合反応のpHを調節するためのリン酸塩または酢酸塩緩衝剤などの、pH緩衝剤を含有してもよい。緩衝剤の代わりに、NaOHなどの、塩基がpHを調節するために使用されてもよい。一般に、pHは、製造中のフルオロエラストマーのタイプに依存して、1〜7(好ましくは3〜7)に調節される。あるいはまた、またはさらに、pH緩衝剤または塩基が、単独でまたは重合開始剤、液体硬化部位モノマー、連鎖移動剤、もしくはフルオロ界面活性剤などの他の原料と組み合わせてのどちらかで、重合反応の全体にわたって様々な時間に反応器に加えられてもよい。たった1つのタイプのフルオロ界面活性剤が反応器プレチャージ中に存在する場合、他のタイプのフルオロ界面活性剤は反応中に加えられる。同様に任意選択的に、初期水性媒体は、水溶性の無機過酸化物重合開始剤を含有してもよい。
【0042】
初期モノマー装入物は、TFEまたはVF2のどちらかのある量の第1フルオロモノマーを含有する。熱可塑性コポリマーまたはフルオロエラストマーが製造されている場合、初期モノマー装入物はまた、第1モノマーとは異なる1つ以上の追加のモノマーを含有する。初期の装入物に含有されるモノマー混合物の量は、0.5〜10MPaの反応器圧力をもたらすように設定される。
【0043】
モノマー混合物は水性媒体中に分散され、そして、任意選択的に、連鎖移動剤がまた、反応混合物が典型的には機械撹拌によってかき混ぜられながら、この時点で加えられてもよい。初期ガス状モノマー装入物において、各モノマーの相対的な量は、反応速度論によって決定され、共重合モノマー単位の所望の比を有するフルオロエラストマーをもたらすように設定される(すなわち非常に遅く反応するモノマーは、製造されるフルオロエラストマーの組成物中に望まれるより他のモノマーに対して高い量で存在しなければならない)。
【0044】
セミバッチ式反応混合物の温度は25℃〜130℃、好ましくは50℃〜100℃の範囲に維持される。重合は、開始剤が熱分解するか、還元剤と反応するかのいずれかを経て、生じたラジカルが分散されたモノマーと反応するときに開始する。
【0045】
ガス状のモノマーと任意選択の硬化部位モノマーとの追加量(追加フィード)は、調節された温度で一定の反応器圧力を維持するために、重合の間中調節された速度で加えられる。追加フィード中に含有されるモノマーの相対的な比は、生じるフルオロポリマー中の共重合モノマー単位の所望の比とおよそ同じものであるように設定される。フルオロエラストマー製造の場合には、追加フィードは、モノマー混合物の総重量を基準にして、25〜70重量パーセントの、TFEまたはVF2のどちらかの第1モノマーと、第1モノマーとは異なる合計75〜30重量パーセントの1つ以上の追加のモノマーとを含有する。連鎖移動剤はまた、任意選択的に、重合のこの段階中の任意の時点で反応器中へ導入されてもよい。追加のフルオロ界面活性剤および重合開始剤もまた、この段階中に反応器にフィードされてもよい。形成されるポリマーの量は、追加モノマーフィードの累積量におよそ等しい。当業者は、初期装入物の組成が正確には、選択された最終フルオロポリマー組成について必要とされるものではないので、または追加フィード中のモノマーの一部が、反応せずに、既に形成されたポリマー粒子中へ溶解する可能性があるので、追加フィード中のモノマーのモル比が、生じたフルオロポリマー中の所望の(すなわち選択された)共重合モノマー単位組成のそれと必ずしも正確に同じものではないことを認めるであろう。2〜30時間の範囲の重合時間が典型的にはこのセミバッチ式重合プロセスで用いられる。
【0046】
本発明の連続乳化重合プロセスは、以下のやり方においてセミバッチ式プロセスとは異なる。反応器は、蒸気空間が全くないように水性媒体で完全に満たされる。ガス状モノマーと、水溶性モノマー、連鎖移動剤、緩衝剤、塩基、重合開始剤、界面活性剤等々の他の原料の溶液とは、一定の速度で別個の流れで反応器にフィードされる。フィード速度は、反応器中の平均ポリマー滞留時間が概して0.2〜4時間であるように調節される。短い滞留時間が反応性モノマーについて用いられるが、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルなどの低い反応性のモノマーはより多くの時間を必要とする。連続プロセス反応混合物の温度は、25℃〜130℃、好ましくは70℃〜120℃の範囲に維持される。
【0047】
本発明の方法において、重合温度は25℃〜130℃の範囲に維持される。温度が25℃より下である場合、重合の速度が商業規模で効率的な反応にとって余りにも遅く、一方温度が130℃より上である場合、重合を維持するために必要とされる反応器圧力が実用的であるには余りにも高い。
【0048】
重合圧力は、0.5〜10MPa、好ましくは1〜6.2MPaの範囲に調節される。セミバッチ式プロセスでは、所望の重合圧力は初期には、初期装入物中のガス状モノマーの量を調節することによって達成され、反応が開始した後は、圧力は追加ガス状モノマーフィードをコントロールすることによって調節される。連続プロセスでは、圧力は、分散系排出ラインでの背圧調整器を用いて調節される。重合圧力は、それが1MPaより下である場合、重合反応系中のモノマー濃度が満足できる反応速度を得るには余りにも低いので、上記の範囲に設定される。加えて、分子量は十分には増加しない。圧力が10MPaより上である場合、必要とされる高圧装置のコストが非常に高い。
【0049】
形成されるフルオロポリマーの量は、装入される追加フィードの量におよそ等しく、水性媒体の100重量部当たり10〜30重量部のフルオロポリマーの範囲に、好ましくは20〜25重量部のフルオロポリマーの範囲にある。フルオロポリマーの形成度は、それが10重量部未満である場合、生産性が望ましくもなく低く、一方それが30重量部より上である場合、固形分が満足できる撹拌にとって余りにも高くなるので、上記の範囲に設定される。
【0050】
本発明で重合を開始させるために使用されてもよい水溶性過酸化物には、例えば、過硫酸水素のアンモニウム、ナトリウムまたはカリウム塩が含まれる。レドックス型開始においては、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤が過酸化物に加えて存在する。これらの水溶性過酸化物は、単独でまたは2つ以上のタイプの混合物として使用されてもよい。使用される量は、一般にポリマーの100重量部当たり0.01〜0.4重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で選択される。重合中にフルオロエラストマーポリマー鎖端の幾らかは、これらの過酸化物の分解によって発生した断片でキャップされる。
【0051】
任意選択的に、フルオロポリマーゴムまたは小片は、分散系への凝固剤の添加によって本発明の方法によって製造されたフルオロポリマー分散系から単離されてもよい。当該技術分野で公知の任意の凝固剤が使用されてもよい。好ましくは、分散系に含有される界面活性剤と水溶性塩を形成する凝固剤が選ばれる。さもなければ、沈澱する界面活性剤塩が単離されるフルオロエラストマー中に同伴されることになり、その結果ビスフェノール型硬化剤でのフルオロエラストマーの硬化を妨害する可能性がある。
【0052】
一般的な凝固剤には、アルミニウム塩(例えば硫酸カリウムアルミニウム)、カルシウム塩(例えば硝酸カルシウム)またはマグネシウム塩(例えば硫酸マグネシウム)が含まれるが、それらに限定されない。かかる短鎖界面活性剤とのカルシウム、マグネシウム、または一価のカチオンの塩は水溶性であり、従ってフルオロエラストマーから容易に除去可能である。
【0053】
本発明の方法によって製造されるフルオロポリマーは、シール、ワイヤコーティング、チューブ材料およびラミネートを含む多くの工業用途で有用である。
【実施例】
【0054】
試験方法
ムーニー(Mooney)粘度、ML(1+10)は、1分の予熱時間および10分の回転子操作時間を用いて、149℃でL(大きい)タイプの回転子を使ってASTM D1646に従って測定した。
【0055】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、それらに限定されない。
【0056】
本発明の乳化重合法での使用に好適なパーフルオロ脂肪族スルフィネートは、次の手順によって製造した。
【0057】
パーフルオロオクチルスルフィネート[C817−SO2Na]の製造:
温度プローブ、機械撹拌機および冷却器を備えた1Lの3口フラスコを一晩にわたり窒素流れ下に放置した。フラスコに1−ヨードパーフルオロオクタン(136.5g、0.25モル)、引き続き重炭酸ナトリウム(21g、0.25モル)を装入した。混合物を、脱酸素蒸留水(100mL)を加える前に5分間撹拌した。機械撹拌機で撹拌しながら、亜ジチオン酸ナトリウム(52.25g)を30〜40分の期間にわたってゆっくり加えた。混合物は発泡し、温度は約32℃に上昇した。亜ジチオン酸ナトリウムすべての添加後に、アセトニトリル(75mL)を導入した。泡形成および幾らかの発熱が再び観察された。反応混合物を周囲温度で一晩にわたり撹拌するに任せ、次に75℃に追加の3時間加熱した。反応混合物を冷却し、濾過した。濾過した固体(約134グラム)をおよそ700mLのアセトンに溶解させた。幾つかのスクープのカーボンブラックを加え、溶液を数時間撹拌した。室温での濃縮(すなわちロータリーエバポレーターでの溶媒の除去)および濾過後に、約69gの白色固体生成物を回収した。反応混合物からの濾液をさらに濃縮して約62グラムの物質を得て、それをアセトンおよびカーボンブラックで同様に処理した。乾燥後に、追加の41gの生成物を得た。全収率は約86%であった。19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−82.1(m,3F),−122.9(m,6F),−123.6(s,br,4F),−127.1(s,2F),−132.7(s,2F)。
【0058】
パーフルオロヘキシルスルフィネート[C613−SO2Na]の製造:
機械攪拌機、冷却器および温度プローブを備えた丸底フラスコに、窒素の流れ下に1−ヨードパーフルオロヘキサン(100g、0.22モル)、重炭酸ナトリウム(18.8g、0.22モル)、および脱酸素蒸留水(93mL)を加えた。撹拌しながら、亜ジチオン酸ナトリウム(46.1g、0.26モル)をゆっくり加えた。反応混合物は発泡し、発熱し、それは温度を約32℃に上昇させた。反応液は黄色がかった色になり始めた。亜ジチオン酸ナトリウムすべての添加後に、アセトニトリル(72mL)を次に加えた。反応混合物を70℃〜75℃に4〜5時間加熱し、反応混合物はより深い黄色に変わった。冷却後に、反応混合物を濾過し、集めた固体を酢酸エチルに溶解させた。有機溶液を分液漏斗で分離し、脱酸素水で2回洗浄した。溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、高真空下にさらに乾燥させた。所望の生成物を白色固体として得た(83グラム、91.2%収率)。19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−82.2(m,3F),−123.2(m,2F),−123.7(m,2F),−124.0(m,2F),−127.2(s,2F),−132.6(s,2F)。
【0059】
他のパーフルオロアルキルおよびパーフルオロアルコキシスルフィネートを類似の手順によって製造した。
【0060】
パーフルオロブチルスルフィネート[C49−SO2Na]:
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−82.5(m,3F),−124.5(m,2F),−127.5(m,2F),−131.4(s,br,2F)。
【0061】
1,6−パーフルオロヘキシルジスルフィネート[C612−(SO2Na)2]:
19F−NMR(376.89MHz,D2O):−122.5(m,4F),−122.8(m,4F),−130.3(m,4F)。
【0062】
3−オキサ−パーフルオロヘキシルスルフィネート[C37−O−CF2CF2−SO2Na]:
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−83.5(m,3F),−83.8〜−85.3(m,4F),−131.1(s,br,2F),−135.7(s,br,2F)。
【0063】
実施例1
およそ67.2/32.1/0.7のモル比でテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、およびパーフルオロ−8(シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)(8CNVE)の共重合モノマーを含有するパーフルオロエラストマーを次の通り製造した:3つの水性流れをそれぞれ連続的に、81cm3/時(hr)の速度で1リットルの機械撹拌される、水ジャケット付きの、ステンレススチールオートクレーブにフィードした。第1流れは、3リットルの脱イオン水中の13.4gの過硫酸アンモニウムおよび188.7gのリン酸水素二ナトリウムからなった。2つの他の流れはそれぞれ、3リットルの脱イオン水中の45gのパーフルオロ−n−ヘキシルスルフィネートおよび6.75gのKrytox(登録商標)157FSLオイル(DuPontから入手可能な)からなった。ダイアフラム圧縮機を用いて、TFE(59.6g/時)とPMVE(66.7g/時)との混合物を一定速度でフィードした。反応の全体にわたって温度を85℃に、圧力を4.1MPa(600psi)に、およびpHを7.2に維持した。ポリマーエマルジョンを、レットダウン弁を用いて連続的に取り出し、未反応モノマーをガス抜きした。ポリマーを60℃の温度で、先ずエマルジョンの1リットル当たり8リットルの脱イオン水の速度で脱イオン水でそれを希釈し、引き続きエマルジョンの1リットル当たり320cm3の硫酸マグネシウム溶液(脱イオン水の1リットル当たり100gの硫酸マグネシウム七水和物)を添加することによってエマルジョンから単離した。生じたスラリーを濾過した。1リットルのエマルジョンから得られたポリマー固形分を、8リットルの脱イオン水に60℃で再分散させた。濾過後に、湿った小片を強制エアオーブン中70℃で48時間乾燥させた。ポリマー収量は、反応器運転の1時間当たり76gであった。ポリマー組成は、43.6重量%PMVE、1.84重量%8CNVEであり、残りがテトラフルオロエチレンであった。このポリマーは、30℃で100gのFlutec(登録商標)PP−11(F2 Chemicals Ltd.(Preston,UK))中0.1gポリマーの溶液で測定されて0.52の固有粘度を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーの水性分散系を得るために開始剤および分散剤を含む水性媒体中で少なくとも1つのフルオロモノマーを重合させる工程を含む、フルオロポリマーの製造のための乳化重合法であって、前記分散剤が、少なくとも2つのフルオロ界面活性剤の組み合わせであり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1つがパーフルオロ脂肪族スルフィネートであり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1つが、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸およびスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテルである方法。
【請求項2】
前記パーフルオロ脂肪族スルフィネートが式Rf−SO2M(式中、Rfは、1〜20個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基であり、Mは1の原子価を有するカチオンである)のものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Rfが4〜10個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パーフルオロ脂肪族スルフィネートが式C49−SO2Na;C613−SO2Na;C817−SO2Na;およびC37−O−CF2CF2−SO2Naのものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パーフルオロ脂肪族スルフィネートが式Rf'−(SO2M)n(式中、Rf'は1〜20個の炭素原子を含有する多価パーフルオロ基であり、Mは1の原子価を有するカチオンであり、nは2〜4の整数である)のものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
f'が4〜10個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキレン基である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パーフルオロ脂肪族スルフィネートが式C612−(SO2Na)2のものである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パーフルオロポリエーテルが前記分散剤の25重量%以下の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記パーフルオロポリエーテルが前記分散剤の1重量%〜15重量%の量で存在する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーがフルオロエラストマーである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フルオロポリマーが熱可塑性フルオロポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのフルオロモノマーが、フッ素含有オレフィンおよびフッ素含有ビニルエーテルからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記フッ素含有オレフィンが、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレンおよびフッ化ビニルからなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フッ素含有ビニルエーテルがパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記フルオロポリマーがフルオロエラストマーであり、前記少なくとも1つのフルオロモノマーが、フッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記フルオロエラストマーが、i)フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレン;ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレン;iii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iv)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;v)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vi)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vii)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン;viii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびエチレン;ix)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;x)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xi)テトラフルオロエチレン、プロピレンおよびフッ化ビニリデン;xii)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニル)エーテル;xiii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン);xiv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;ならびにxvi)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルからなる群から選択される共重合単位を含むポリマーである請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503298(P2011−503298A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533265(P2010−533265)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082751
【国際公開番号】WO2009/062002
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】