説明

フルピルチンの注射用医薬形

本発明は、フルピルチン含有凍結乾燥物、非経口投与可能な医薬組成物を製造するためのその使用、これらのフルピルチン含有非経口投与可能な医薬組成物を製造するための方法、フルピルチン含有凍結乾燥物を製造するための方法およびその方法を用いて製造されたフルピルチン含有医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルピルチン含有凍結乾燥物、非経口的に投与されるべき医薬組成物を製造するための凍結乾燥物の使用、非経口投与されるべきフルピルチン含有医薬組成物を製造するための方法、フルピルチン含有凍結乾燥物の製造方法ならびに凍結乾燥物を用いて製造されたフルピルチン含有医薬組成物に関する。
【0002】
フルピルチン(Katadolon(R);2−アミノ−3−カルブエトキシアミノ−6−(4−フルオルベンジルアミノ)−ピリジン=2−アミノ−3−エトキシカルボニルアミノ−6−(p−フルオルベンジルアミノ)−ピリジン)は、中枢作用性の非アヘン剤鎮痛薬である。フルピルチン、特にそのマレイン酸塩の形は、長年に亘って、たとえば神経痛、摩耗によって誘発される関節障害の痛み、頭痛および術後の痛みを治療するために使用されてきた。DE4122166A1によれば、フルピルチンはさらに筋肉痙攣に起因するかまたは筋肉痙攣の結果として生ずる疾病または病理学的症候群を克服するための薬剤として使用することができる。さらにDE4327516によれば、大脳虚血および神経変性障害の治療のためのフルピルチンの使用が記載されている。DE19541405A1では、血液細胞系の障害に付随して生じる疾病の予防および治療のためのフルピルチンの使用が開示されている。さらにDE10048969A1では、耳鳴り治療のためのフルピルチンの使用が記載されている。フルピルチンおよびその生理学的に使用可能な塩の製造は、DE1795858C2、DE3133519C2およびDE3416609A1に記載されている。
【0003】
フルピルチンは、主に経口投与される。たとえば、DE9321574U1には、たとえば錠剤、顆粒剤またはペレット剤の形での医薬配合物が記載されており、この場合、これらはフルピルチンマレエートを作用物質として含有するものである。DE4319649A1から、制御された作用物質放出を有する固体のフルピルチン含有経口投与形が公知である。
【0004】
しかしながら、フルピルチンの良好な鎮痛作用に基づいて、迅速な局所または全身的作用を達成するためにフルピルチンの非経口投与が要求されている。しかしながら、これは、フルピルチン、たとえばその生理学的に有効な塩が、水性溶液中および多くの生理学的認容性の有機溶剤中でほとんど溶解しないことが、妨げとなる。
【0005】
DE3416609A1では、注射可能なフルピルチングルコネート溶液の形での医薬組成物が記載されており、この場合、これは、適した溶剤を用いて製造する。溶剤として、特にポリエチレングリコールと水との混合物またはグリコフルオールと水との混合物を使用する。しかしながら、記載された注射用溶液は、重大な欠点を有する。それというのも、ポリエチレングリコール/水−またはグリコフルオール/水−混合物を用いて製造された、フルピルチングルコネート溶液は、極めて高張性であり、筋内注射での使用にのみ適しているためである。3.2〜3.6の相対的に低いpH値および使用された賦形剤、たとえばナトリウム二亜硫酸塩およびプロピレングリコールにより、適用部位に刺激を与えることについても知られている。さらに、記載されたフルピルチングルコネート溶液は、十分な生理学的安定性を有するものではなく、それというのも、極めて制限された期間に亘ってのみ安定であるためであり、かつ、ほんの数週間経過後には沈殿が生じ、完成した製剤の安定性は顕著に制限される。さらに、フルピルチン溶液の生理学的安定性は、大いに貯蔵温度に左右されることが明らかになった。沈殿は、低温で顕著に早く生じるため、貯蔵安定性を改善するためには、フルピルチン溶液の貯蔵の際には、最低温度20℃を保つことは必要不可欠である。好ましくは、このような注射用溶液を含むアンプルは、25℃〜30℃の温度で貯蔵しなければならないが、実際には、ほとんどこの温度で貯蔵されることはない。
【0006】
したがって、本発明の基礎となる技術的課題は、フルピルチン含有医薬組成物を製造するための手段および方法を提供することであり、この場合、これらの組成物は、非経口投与に適しており、かつ技術水準から公知の非経口医薬組成物の欠点を示すことなく、すなわち、特に適用の際に副作用、たとえば刺激を誘発することなく、さらに十分に長い期間に亘って生理学的および化学的に安定である。
【0007】
本発明は、前記技術的課題を、非経口的に投与される医薬組成物を製造に使用することができる、作用物質フルピルチンを塩基の形または生理学的認容性の塩の形で含有する凍結乾燥物を提供することにより解決したものである。
【0008】
本発明によれば驚くべきことに、フルピルチン注射用溶液の取り扱いおよび貯蔵に関する技術水準から公知の欠点および問題は、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物を用いて、非経口投与のための液体配合物を製造する場合には、完全に取り除かれることを見いだした。したがって、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物の再構成は、有利には、極めて透明なフルピルチン溶液を導くものであって、この場合、これらは、典型的な注射溶液で、フルピルチン溶解させるやいなや沈殿するのに対し、長時間に亘っても安定であり、かつ沈殿を生じることはない。したがって、これらの安定性に基づいて、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物を用いて製造されたフルピルチン溶液は、非経口的投与、特に注射用−または点滴用溶液としての使用に有利である。
【0009】
本発明によるフルピルチン凍結乾燥物の他の驚くべき利点は、純粋な水性媒体の液体投与形を製造するために使用できることからなる。市販のフルピルチン注射用溶液を製造の際には、純粋な水性媒体は使用できず、高い割合の有機溶剤、たとえばプロピレングリコールを有する溶剤系を使用するのに対して、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、水性系において優れた溶解性を有することから、溶解のために有機溶剤または溶解介在物質を使用しなくてもよい。本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、さらに凍結乾燥物の溶解の際に熱を必要とすることがないといった利点を有し、それというのも、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、すでに室温において極めて迅速に溶液になるためである。
【0010】
他の利点は、本発明による凍結乾燥物を任意に再構成および/または希釈することができることである。したがって、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、筋内または静脈内注射用溶液を製造するのと同様に、点滴用溶液を調製するのに使用することもできる。これに関しては、再構成された水性製剤を添加剤として、通常使用される点滴溶液に使用することができる。使用のこれらの形は、他の治療手段との組合せで全身的沈痛効果を必要とする患者のために有利である。本発明による凍結乾燥物は、特徴的な方法で、極めて迅速に溶解することから、本発明による凍結乾燥物は、使用直前に再構成することができる。
【0011】
本発明に関して「凍結乾燥物」とされる物質は、冷凍した状態で、高い真空下で乾燥させることによって、凍結した状態で蒸発した溶液を除去することによって得られるものであると理解される。この方法で得られた凍結乾燥物は、極めて多孔性であり、かつ元々の体積を維持する。物質の物質交替機能、酵素機能および/または生物学的活性機能は乾燥凍結後においても維持される。
【0012】
本発明に関して「医薬組成物」または「医薬」とは、診断、治療および/または予防の目的のために使用され、すなわち、ヒトおよび動物の体の健康を促進または回復させる混合物であると理解され、この場合、これらは少なくとも1個の天然または合成方法により製造された、治療効果を惹起する作用物質を含有するものである。
【0013】
医薬組成物は、通常専門分野で使用される添加物、たとえば安定化剤、加工助剤、離型剤、乳化剤、デタージェント、抗酸化剤、ケーク形成剤(kuchenbildende Mittel)または他の医薬組成物を製造するため、特に、液体投与形を製造するために使用される物質を含有する。
【0014】
本発明の好ましい実施態様は、本発明によって製造される医薬組成物が、非経口的投与のための液体医薬組成物であることである。
【0015】
「非経口的」に投与される投与形または医薬組成物とは、殺菌済み医薬組成物であると理解され、この場合、これらは胃腸経路を回避して投与されるものであると理解される。特に経口投与に対する、非経口的投与の利点は、特に、極めて迅速な作用発現が可能であること、たとえば吐き気または胃腸刺激といった副作用を本質的に回避すること、作用物質が胃腸で不活性化されることがないこと、さらに、一般に胃腸経路から吸収が不十分とされる作用物質を投与することができること、投与された作用物質の血中含量の概算が可能であること、および、いわゆるファーストパスエファクトを回避することから成る。
【0016】
非経口的に投与される医薬組成物は、特に注射用および点滴用溶液である。「注射」または「注射用溶液」とは、少ない容量、特に1〜20mlの容量の、溶液、懸濁液またはエマルションを有する製剤である。「点滴」または「点滴用溶液」の場合には、100mlを上廻る量で適用される。よく知られた非経口投与方法としては、静脈内注射(i.v.)、筋内注射(i.m.)および皮下注射(s.c.)である。静脈内投与は、作用物質の迅速な供給および投与が可能であり、この場合、他の非経口投与では、組織刺激的に作用する。筋内および皮下注射の場合には、等水性および等張性を考慮しなけばならず、さもなけば、不耐性の局所的徴候が生じうるためである。
【0017】
したがって本発明によれば、本発明による凍結乾燥物を用いて製造された非経口投与のため医薬組成物は、注射用溶液または点滴用溶液であると理解される。
【0018】
本発明によれば、本発明による凍結乾燥物の形でのフルピルチンは、塩基または生理学的に認容性の塩であってもよく、その際、本発明の好ましい実施態様においては、本発明による凍結乾燥物は、少なくとも100mgのフルピルチンを含有するものであって、その際、これらの数的データはフルピルチン塩基に基づくものである。
【0019】
フルピルチンの「生理学的に認容性の塩」は、特に酸付加塩として存在するこのような塩を意味し、かつ、その治療的効果および致死的効果に関してのフルピルチン塩の感受性曲線の十分に大きい幅によって特徴付けられる、治療指数を示すものであると理解される。
【0020】
生理学的に認容性のフルピルチン塩を製造するのに適した酸の例は、ハロゲン水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、脂肪族、脂環式、芳香族またはヘテロ環式系の有機モノ−、ジ−またはトリ−カルボン酸ならびにスルホン酸を含む。適した酸に関する好ましい例は蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノサリチル酸、エンボニック酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、ハロゲンベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸および塩酸である。本発明によれば、特に好ましくは生理学的に認容性のフルピルチン塩を製造するために、グルコン酸を使用する。
【0021】
したがって、本発明の好ましい実施態様において、生理学的に認容性のフルピルチン塩は、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピルビン酸塩、フェニル酢酸塩、安息香酸塩、エンボイック酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、エチレンスルホン酸塩、ハロゲンベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸塩またはフルピルチン塩化物である。本発明の特に好ましい実施態様において、生理学的に認容性のフルピルチン塩は、フルピルチングルコネートである。
【0022】
さらに本発明によれば、フルピルチン凍結乾燥物は、生理学的に認容性のフルピルチン塩の酸部分を、100mgのフルピルチンに対して60〜650mg、好ましくは200〜400mgの量で含有する。
【0023】
本発明の好ましい実施態様において、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、さらに少なくとも1個のケーク形成剤を含有する。「ケーク形成剤」または「充填剤」としては、材料の凍結乾燥中および/または凍結乾燥後に、極めて大きい内表面を有する有孔のケークの形成をサポートするものであると理解される。好ましい実施態様において、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、ケーク形成剤としてマンニトール、サッカロースまたはグリシンを含有する。本発明によれば、特にケーク形成剤は、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物中で、フルピルチン100mgに対して10mg〜1000mg、好ましくは30mg〜300mgの量で含有するものと理解される。
【0024】
本発明の他の好ましい実施態様は、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物が、付加的に少なくとも1個の抗酸化剤を有することである。「抗酸化剤」は、物質、特に作用物質の酸化を遅らせるか、あるいは、阻止することができる賦形剤であると解される。抗酸化剤は、ラジカル捕捉剤、可酸化性物質または相乗剤であってもよい。有機化合物の酸化の際には、しばしばラジカル中間産物が生じる。立体障害フェノール基を有する賦形剤は、これらの中間産物に水素ラジカルを簡単に移し、それ自体を安定した分子を形成させる。これによって酸化連鎖反応が中断される。ラジカル捕捉剤は特に非水性の、親油性の系において使用する。これとは対照的に水性系においては、優先的に可酸化性物質を使用し、その際、それぞれ保護すべき物質が、特定の電気的酸化ポテンシャルを有するといった事実を利用する。使用される抗酸化剤は、保護すべき物質よりも顕著に低い酸化ポテンシャルを有する。したがって、酸素の導入の際に、抗酸化剤は、保護すべき物質よりも容易に酸化する。同時に、可酸化性物質はプロトン供与体として作用し、これにより安定化される。これらの製薬学的に使用可能な物質は特に、標準的酸化ポテンシャル−0.04Vを有するアスコルビン酸である。亜硫酸水素塩および亜硫酸塩は、標準的酸化ポテンシャル+0.12Vを有する。相乗剤としては、抗酸化作用をすでに酸化した賦形剤分子を再生することによって、痕跡量の重金属を錯化することによって、酸化の中間工程として過酸化物を分解することによってか、あるいは、酸化遅延するpH値に調整することによってサポートする賦形剤である。
【0025】
本発明の好ましい実施態様は、本発明による凍結乾燥物が、抗酸化剤として亜硫酸水素ナトリウムまたはアルコルビン酸を含有するものである。本発明によれば、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、フルピルチン100mgに対して0.5mg〜10mg、特に好ましくは2mg〜5mgの量の抗酸化剤を含有する。
【0026】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、付加的に、少なくとも1種のデタージェントを含有する。本発明に関して、「デタージェント」とは、有機表面活性物質を意味するものと解され、この場合、これらはアニオン、カチオン、両性イオンまたは非イオン性で形成されるものであってもよい。デタージェントは、界面活性剤とも呼称される。薬学においては、カチオン性界面活性剤は、主に保存剤または殺菌剤として使用される。界面活性剤は、さらにW/O−またはO/W−乳化剤、架橋剤、溶解促進剤、起泡安定化剤または消泡剤として使用されてもよい。定められた課題のためのデタージェントの選択は、デタージェントとして使用される化合物の親水基および親油基の化学的構造にしたがって調整され、それというのも、これらの構造は、存在する相に対するアフィニティーを決定するものであるためであり、また同様にHLBによって調整されるが、しかしながら、さらに溶融−または凝固温度によって、および粘度によって調整される。
【0027】
好ましい実施態様において、本発明による凍結乾燥物はデタージェントとしてポリビニルピロリドンを含有する。ポリビニルピロリドンとは、ビニルピロリドンの重合生成物である。商業的には、種々の分子量または分子鎖を有する一連の画分である。ポリビニルピロリドンの優れた性質は、水と同様に極性有機溶剤、たとえばアルコール、グリコール等中での良好な溶解性である。本発明によれば、特に、デタージェント、特にポリビニルピロリドンは、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物中で、フルピルチン100mgに対して10mg〜150mg、好ましくは10mg〜50mgの量で含有する。
【0028】
同様に本発明は、非経口投与可能な医薬組成物を製造するための、フルピルチン含有凍結乾燥物の使用に関する。これに関して本発明は、非経口投与可能な医薬組成物を製造するための凍結乾燥物を、この凍結乾燥物を水性媒体および/または有機溶剤中で溶解することによって、非経口投与可能な組成物を得るために使用することができる。本発明によれば、特に凍結乾燥物は室温であっても溶解する。水性媒体としては、本発明によれば、好ましくは水、特に好ましくは注射用水を使用する。本発明の他の好ましい実施態様において、水性媒体として適した緩衝溶液が使用される。他の実施態様において、非経口投与のための医薬組成物を製造するための凍結乾燥物を、水−溶剤−混合物中に溶解する。
【0029】
同様に本発明は、非経口投与可能なフルピルチン含有医薬組成物を製造するための方法に関し、その際、本発明によるフルピルチン含有凍結乾燥物は、水性媒体および/または有機溶剤中で溶解され、かつすぐに使用可能な液体医薬組成物が得られる。
【0030】
好ましくは、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は、室温であっても溶解する。特に好ましい実施態様において、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物は水中、特に注射用水中で溶解する。しかしながら、フルピルチン凍結乾燥物はさらに緩衝溶液または水−溶剤−混合物中で溶解させることもできる。
【0031】
溶解に使用される水性媒体の体積によって、得られる溶液の等張性を調整することができる。製造すべき非経口医薬組成物を投与前に、どのように凍結乾燥物を再構成するか、および場合によっては希釈することができるかどうかについて判断することができる。したがって、本発明による凍結乾燥物から、筋内注射または静脈注射用のものを製造することもできる。再構成された水性製剤は、さらに通常の点滴溶液のための添加剤として使用することができる。
【0032】
したがって本発明によれば、本発明による方法を用いて製造された、非経口投与のための医薬組成物は注射用溶液であり、製造された注射用溶液を、静脈に適用する場合には、本発明によれば、好ましくは100mgのフルピルチンを含有する本発明による凍結乾燥物を、3〜20ml、好ましくは9〜15mlの注射用水、緩衝溶液または水/溶剤−混合物中で溶解させる。製造された注射用溶液を筋内に適用する場合には、本発明によれば、好ましくは100mgのフルピルチンを含有する本発明による凍結乾燥物は、3mlの注射用水、緩衝溶液または水/溶剤−混合物中で溶解させる。本発明の他の好ましい実施態様において、非経口投与可能な医薬組成物は点滴用溶液である。
【0033】
同様に本発明の方法は、本発明によるフルピルチン含有凍結乾燥物を製造するための方法に関し、この場合、この方法は、
a)フルピルチン塩基を水性媒体に添加し、かつ溶解することによって、フルピルチン溶液を製造し、かつ、
b)得られるフルピルチン溶液を凍結乾燥させること、を含む。
【0034】
さらに本発明によれば、第1の工程において最初に塩基の形のフルピルチンを水性媒体中で溶解する。製造されたフルピルチン凍結乾燥物が、フルピルチン塩基のみを含有する場合には、フルピルチン塩基は、好ましくは水中、特に注射用水中で溶解させる。製造されたフルピルチン凍結乾燥物が、生理学的に認容性のフルピルチン塩を含有する場合には、フルピルチン塩基は、適切な酸の水性溶液中で溶解させ、その際、酸は、グルコン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノサリチル酸、エンボイック酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、ハロゲンベンゾスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸および塩酸である。好ましい実施態様においては、製造された凍結乾燥物は、フルピルチングルコネートを含有する。したがって、フルピルチングルコネートを含有する凍結乾燥物を製造するために、フルピルチン塩基は、グルコン酸溶液中に溶解させる。
【0035】
本発明の好ましい実施態様において、フルピルチン塩基を溶解させるのに使用される水性媒体、たとえば水または酸溶液は、フルピルチン塩基の添加前に、温度を室温を上廻るよう加熱し、この温度を維持する。加熱後にのみ、フルピルチンを加熱された水性媒体に添加し、そこで溶解させる。好ましい実施態様において、水性媒体を30℃〜90℃の温度、好ましくは70℃で加熱する。本発明によればさらに、フルピルチンを撹拌しながら、好ましくは加熱された水性媒体中に添加する。その後にこの溶液を、フルピルチンが完全に溶解するまで撹拌した。
【0036】
さらに本発明によれば、このようにして製造されたフルピルチン溶液を、その後に濾過する。これに関して、特に好ましくは、孔幅0.2μmを有するフィルターを使用する。その後に好ましくは、濾過されたフルピルチン含有溶液を、凍結乾燥容器中に充填し、この場合、これはその後に、凍結乾燥器栓(Gefriertrockungsstopfen)を取り付ける。フルピルチン溶液は、凍結乾燥容器を−45℃にすることで凍結させる。
【0037】
本発明によれば、実際の凍結乾燥に関しては、主乾燥および後乾燥を含む。好ましい実施態様において、主乾燥は−37℃〜−23℃の温度および10〜100mバールの圧力で実施する。したがって、好ましい実施態様において、後乾燥は27℃の温度および0.0001mバールの圧力で実施する。凍結乾燥後に、凍結乾燥器はNで放圧する。フルピルチン凍結乾燥物含有容器の無菌的密閉は、その後に好ましくは、窒素雰囲気下でおこなう。
【0038】
同様に本発明は、非経口投与のための液体医薬組成物に関し、この場合、本発明によるフルピルチン凍結乾燥物により得ることができる。
【0039】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。
【0040】
実施例
例1:フルピルチン含有凍結乾燥物の製造
グルコン酸−d−ラクトン 7.81gを、水70ml中に溶解し、その後に70℃で加熱した。この温度で撹拌しながら、フルピルチン3.33gを添加し、かつ完全に溶解するまで撹拌した。このようにして得られた混合物を、孔幅0.2μmを有するフィルターにより濾過した。濾過後に、溶液を凍結乾燥容器中に装填し、かつ適した凍結乾燥器栓を取り付けた。内容物を凍結させるために、この容器を−45℃に置いた。凍結乾燥工程の主乾燥は、−37℃〜−23℃で、かつ100〜10mバールで実施した。その後に後乾燥を27℃で、0.0001mバールで実施した。乾燥後に、凍結乾燥器をNで放圧した。その後に容器を窒素雰囲気下で密閉した。
【0041】
例2:フルピルチン含有凍結乾燥物の製造
グルコン酸−d−ラクトン 7.81gを、水70ml中に溶解し、その後に70℃で加熱した。この温度で撹拌しながら、マンニトール4.0gおよびフルピルチン3.33gを添加し、かつこれらが完全に溶解するまで撹拌した。このようにして得られた混合物を、孔幅0.2μmを有するフィルターにより濾過した。濾過後に、溶液を凍結乾燥容器中に装填し、かつ適した凍結乾燥器栓を取り付けた。内容物を凍結させるために、この容器を−45℃に置いた。凍結乾燥工程の主乾燥は−37℃〜−23℃で、かつ100〜10mバールで実施した。その後に後乾燥を27℃で、0.0001mバールで実施した。乾燥後に、凍結乾燥器をNで放圧した。その後に容器を窒素雰囲気下で密閉した。
【0042】
例3:フルピルチン含有凍結乾燥物の製造
グルコン酸−d−ラクトン 7.81gを、水70ml中に溶解し、かつ70℃で加熱した。この温度で撹拌しながら、サッカロース7.5g、ポリビニルピロリドン0.4g(MG 約11500;Kollidon PF17; BASF)およびフルピルチン3.33gを添加した。溶液は、これらが完全に溶解するまで撹拌した。このようにして得られた混合物を、孔幅0.2μmを有するフィルターにより濾過した。濾過後に、溶液を凍結乾燥容器中に装填し、かつ適した凍結乾燥器栓を取り付けた。内容物を凍結させるために、この容器を−45℃に置いた。凍結乾燥工程の主乾燥は−37℃〜−23℃で、100〜10mバールで実施した。その後に後乾燥を27℃で、0.0001mバールで実施した。乾燥後に、凍結乾燥器をNで放圧した。その後に容器を窒素雰囲気下で密閉した。
【0043】
例4:フルピルチン凍結乾燥物の組成
1個の容器は:
フルピルチン 100.00mg
グルコン酸 257.85mg
マンニトール 300.00mg
を含有する。
【0044】
例5:フルピルチン凍結乾燥物の組成
1個の容器は:
フルピルチン 100.00mg
グルコン酸 257.85mg
サッカロース 225.00mg
ポリビニルピロリドン(Kollidon 17PF, BASF) 12.00mg
を含有する。
【0045】
例6:フルピルチン凍結乾燥物の組成
1個の容器は:
フルピルチン 100.00mg
グルコン酸 257.85mg
マンニトール 120.00mg
亜硫酸水素ナトリウム 4.50mg
を含有する。
【0046】
例7:フルピルチン凍結乾燥物の組成
1個の容器は:
フルピルチン 100.00mg
グルコン酸 257.85mg
マンニトール 207.00mg
を含有する。
【0047】
例8:液体医薬組成物の製造
例7で記載された凍結乾燥物の容器に、注射用水3mlを添加した。時々方向転換させることにより、約1分間の後に透明な溶液が得られた。溶液は980mオスモル/kgで、顕著に高張であった。
【0048】
例9;液体医薬組成物の製造
例7からの凍結乾燥物の容器に、注射用水9mlを添加した。時々撹拌しながら約1分間後に透明な溶液が得られた。溶液は、305mオスモル/kgで、ほぼ等張であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用物質フルピルチンを塩基の形または生理学的に認容性の塩として含有し、かつ、非経口的に投与される医薬組成物を製造するために使用することができる、凍結乾燥物。
【請求項2】
少なくともフルピルチン100mgを含有する、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項3】
生理学的に認容性の塩が、フルピルチン酸付加塩である、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項4】
塩の酸成分が、グルコン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノサリチル酸、エンボニック酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、ハロゲンベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、スルファニル酸および塩酸から成る群から選択される、請求項3に記載の凍結乾燥物。
【請求項5】
塩の酸成分を、フルピルチン100mgに対して60mg〜650mgの量で含有する、請求項3または4に記載の凍結乾燥物。
【請求項6】
塩の酸成分を、フルピルチン100mgに対して200mg〜400mgの量で含有する、請求項5に記載の凍結乾燥物。
【請求項7】
付加的に、少なくとも1種のケーク形成剤を含有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の凍結乾燥物。
【請求項8】
ケーク形成剤がマンニトール、サッカロースまたはグリシンである、請求項7に記載の凍結乾燥物。
【請求項9】
ケーク形成剤を、フルピルチン100mgに対して10mg〜1000mgの量で含有する、請求項7または8に記載の凍結乾燥物。
【請求項10】
ケーク形成剤を、フルピルチン100mgに対して30mg〜300mgの量で含有する、請求項9に記載の凍結乾燥物。
【請求項11】
付加的に少なくとも1種の抗酸化剤を含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の凍結乾燥物。
【請求項12】
抗酸化剤が、亜硫酸水素ナトリウムまたはアスコルビン酸である、請求項11に記載の凍結乾燥物。
【請求項13】
抗酸化剤を、フルピルチン100mgに対して0.5mg〜10mgの量で含有する、請求項11または12に記載の凍結乾燥物。
【請求項14】
抗酸化剤を、フルピルチン100mgに対して2mg〜5mgの量で含有する、請求項13に記載の凍結乾燥物。
【請求項15】
付加的にデタージェントを含有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の凍結乾燥物。
【請求項16】
デタージェントがポリビニルピロリドンである、請求項15に記載の凍結乾燥物。
【請求項17】
デタージェントを、フルピルチン100mgに対して10mg〜150mgの量で含有する、請求項15または16に記載の凍結乾燥物。
【請求項18】
デタージェントを、フルピルチン100mgに対して10mg〜50mgの量で含有する、請求項17に記載の凍結乾燥物。
【請求項19】
非経口的に投与される医薬組成物が、注射用溶液または点滴用溶液である、請求項1から18までのいずれか1項に記載の凍結乾燥物。
【請求項20】
非経口的に投与される医薬組成物を製造するための、請求項1から19までのいずれか1項に記載のフルピルチン凍結乾燥物の使用。
【請求項21】
凍結乾燥物を水性媒体および/または有機溶剤中に溶解し、かつ非経口的に投与される医薬組成物が得られる、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
凍結乾燥物を、注射用水中に溶解する、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
凍結乾燥物を、緩衝溶液中に溶解する、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
凍結乾燥物を、水/溶剤−混合物中に溶解する、請求項21に記載の使用。
【請求項25】
室温で凍結乾燥物を溶解する、請求項21から24までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
請求項1から19までのいずれか1項に記載のフルピルチン含有凍結乾燥物を、水性媒体および/または有機溶剤中に溶解し、かつすぐに使用可能な液体医薬組成物が得られる、非経口投与のためのフルピルチン含有医薬組成物の製造方法。
【請求項27】
凍結乾燥物を、注射用水中に溶解する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
凍結乾燥物を、緩衝溶液中に溶解する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
凍結乾燥物を、水/溶剤−混合物中に溶解する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
凍結乾燥物を室温で溶解する、請求項26から29までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
非経口投与のための医薬組成物が、注射用溶液である、請求項26から30までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
注射用溶液が静脈内投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
静脈内投与可能な注射用溶液を製造するために、凍結乾燥物を3〜20ml、好ましくは9〜15mlの注射用水中に溶解する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
注射用溶液が、筋内投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
筋内投与可能な注射用溶液を製造するために、凍結乾燥物を3mlの注射用水中に溶解する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
非経口投与のための医薬組成物が、点滴用溶液である、請求項26から30までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
a)フルピルチン塩基を水性媒体に添加し、かつ溶解させることによって、フルピルチン溶液を製造し、
b)得られたフルピルチン溶液を凍結乾燥する、
ことを含む、請求項1から19までのいずれか1項に記載のフルピルチン含有凍結乾燥物の製造方法。
【請求項38】
フルピルチン溶液を水中で製造する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
フルピルチン溶液を酸水溶液中で製造する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
酸溶液を、グルコン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノサリチル酸、エンボイック酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、ハロゲンベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、スルファニル酸および塩酸から成る群から選択された酸を、水中で溶解することによって製造する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
フルピルチン塩基を溶解するのに使用される水性媒体を、室温を上廻る温度に加熱し、かつ、その後にフルピルチン塩基を添加する、請求項38から40までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
水性媒体を30℃〜90℃で加熱する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
水性媒体を70℃に加熱する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
フルピルチン塩基を、撹拌しながら、好ましくは加熱された水性媒体中に添加し、かつその中で撹拌しながら溶解させる、請求項37から43までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
製造されたフルピルチン溶液を凍結乾燥前に濾過する、請求項37から44までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
濾過のために、0.2μmの孔幅を有するフィルターを使用する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
フルピルチン溶液を、濾過後に凍結乾燥容器に装填し、その後に、これに凍結乾燥器栓を取り付ける、請求項37から46までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
フルピルチン溶液を−45℃に置く、請求項37から47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
凍結乾燥が、主乾燥および後乾燥を包含する、請求項37から48までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
主乾燥を、−37℃〜−23℃の温度および10〜100mバールの圧力で実施する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
27℃の温度および0.0001mバールの圧力で、後乾燥を実施する、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
凍結乾燥後に、凍結乾燥物を含有する容器を、窒素雰囲気下に密閉する、請求項37から51までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
請求項1から19までのいずれか1項に記載のフルピルチン含有凍結乾燥物を溶解することによって製造可能な、非経口投与のための液体フルピルチン含有医薬組成物。

【公表番号】特表2007−506660(P2007−506660A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515943(P2006−515943)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006449
【国際公開番号】WO2004/112754
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(502037111)アーヴェーデー.ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】