説明

フレキシブルプリント基板用ベースフィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の製造方法及び電子機器

【課題】接着強度が高く、高精細の電気的接続を可能とする、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム、それを用いたフレキシブルプリント基板とその製造方法及びそれらを用いた電子機器を提供する。
【解決手段】電極が形成される主面に、算術平均粗さRaが1.2μm〜20μmの第1の凹凸が設けられたことを特徴とするフレキシブルプリント(FPC)基板用ベースフィルム。主面に第1の凹凸が設けられたベースフィルムと、前記主面の上に形成され前記第1の凹凸を反映した第2の凹凸を表面に有する電極と、を備えたことを特徴とするFPC基板。主面に第1の凹凸を有するベースフィルムの前記主面に、前記第1の凹凸を反映した第2の凹凸を表面に有する電極を形成することを特徴とするFPC基板の製造方法。上記のFPC基板と、前記FPC基板に接続された電子部品と、を備えたことを特徴とする電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の製造方法及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ、ゲーム機器などの各種の電子機器の多くに、フレキシブルプリント基板(FPC: Flexible Printed Circuit)が用いられている。これら電子機器の小型化の要求に伴い、FPCの接続ピッチの高精細化の要求が高まっている。
FPCの端子電極と電子部品の端子電極とを異方性導電シートにより接続した場合、接続ピッチの高精細化に限界がある。これに対し、特許文献1では、異方性導電シートを用いず、FPCの端子電極の表面の凸部が電子部品の端子電極と接触して電気的接続を行い、FPCの端子電極の表面の凹部に接着剤を介在させると共に、FPC端面と電子部品端面の接合部をフィレット状の接着樹脂で補強することによって、FPCの端子電極と電子部品の端子電極とを接着し、接続ピッチを高精細化する技術が提案されている。しかし、この場合、FPCのベースフィルムの表面の粗さには注意が払われておらず、FPCの電極表面の凹凸は、意図しない粗さ、すなわち0.2マイクロメートル以下の凹凸であり、また凹凸は制御されていない。その結果、凹部に介在する接着剤の量が微量であり、また、接着剤の量が制御されないため、接着力が弱く、また、接着力にばらつきがあり、実用的ではなかった。これに対し、フィレット部の面積を拡大することで接着力を向上させることも考えられるが、これは、FPCが使用される電子機器の小型化に反するものであった。また、フィレット部はFPCの端面と電子部品の端面を接着するものであり、これら端面の位置は両端子電極の接触面から離れているため、フィレット部の面積の拡大による接着強度の改善は、やはり不十分であった。
【0003】
また、特許文献2には、FPCのベースフィルム上の電極層の剥離を防止するために、ベースフィルムと電極層の間に熱可塑性ポリイミド層を設け、熱可塑性ポリイミド層と電極層との界面に粗さRaが0.1〜1.0μmである凹凸を、熱可塑性ポリイミド層の熱変形により形成する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平7−170047号公報
【特許文献2】特開2004−128365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の課題に基づいたものであり、その目的は、接着強度が高く、高精細の電気的接続を可能とする、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム、それを用いたフレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の製造方法及びそれらを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、電極が形成される主面に、算術平均粗さRaが1.2μm〜20μmの第1の凹凸が設けられたことを特徴とするフレキシブルプリント基板用ベースフィルムが提供される。
【0006】
本発明の他の一態様によれば、主面に第1の凹凸が設けられたベースフィルムと、前記主面の上に形成され前記第1の凹凸を反映した第2の凹凸を表面に有する電極と、を備えたことを特徴とするフレキシブルプリント基板が提供される。
【0007】
本発明の他の一態様によれば、主面に第1の凹凸を有するベースフィルムの前記主面に、前記第1の凹凸を反映した第2の凹凸を表面に有する電極を形成することを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の一態様によれば、上記のフレキシブルプリント基板と、前記フレキシブルプリント基板に接続された電子部品と、を備えたことを特徴とする電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着強度が高く、高精細の電気的接続を可能とする、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム、それを用いたフレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の製造方法及びそれらを用いた電子機器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の構成を例示する模式断面図である。
図1(a)は、第1の実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルムを表しており、図1(b)は、それを用いたフレキシブルプリント基板を表している。
図1(a)に表されるように、本実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルム110は、表面(第1の主面)112に第1の凹凸118を有している。第1の凹凸118は、第1の凹部114と第2の凸部116とからなっている。
この第1の凹凸118は、算術平均粗さRaが1.2μm〜20μmとされている。
【0011】
また、第1の凹凸は、例えば、研削法、エッチング法、レーザ加工法などにより、ベースフィルム110の第1の主面の上に設けることができる。なお、ベースフィルム110には、例えば、ポリイミド等が用いられるが、これに限らず、耐熱性、耐薬品性、絶縁性が高い各種の材料が使用できる。
【0012】
また、図1(b)に表されるように、本実施形態のフレキシブルプリント基板10は、ベースフィルム110の第1の主面112の上に電極120を有している。そして、電極120の表面(第2の主面)122は、ベースフィルム110の第1の主面112の第1の凹凸118を反映した第2の凹凸128を有している。第2の凹凸128は、第2の凹部124と第2の凸部126とからなっている。第2の凹凸128は、第1の凹凸118を反映しているので、電極120の表面(第2の主面)122の第2の凹部124と第2の凸部126とは、それぞれ、ベースフィルム110の表面(第1の主面)112の第1の凹部114と第1の凸部116とに対応している。すなわち、ベースフィルム110の第1の主面112が凹となっている部分では、電極120の第2の主面122も凹となっており、ベースフィルム110の第1の主面112が凸となっている部分では、電極120の第2の主面122も凸となっている。
【0013】
そして、第2の凹凸128は第1の凹凸118を反映しているので、第2の凹凸128の算術平均粗さRaは、第1の凹凸118の算術平均粗さRaと実質的に同様とすることができる。ただし、第2の凹凸128が第1の凹凸118を反映していれば、第2の凹凸128の算術平均粗さRaは第1の凹凸118の算術平均粗さRaと異なっていても良い。例えば、第2の凹凸128の算術平均粗さRaは第1の凹凸118の算術平均粗さRaより小さくても良い。すなわち、上記のように、第2の凹凸128と第1の凹凸118において、第1、第2の凹部114、124、第1、第2の凸部116、126の位置関係が、それぞれ、実質的に一致している構造とすることができる。
【0014】
また、第1の凹凸118を反映した第2の凹凸を有する電極120は、例えば、ベースフィルム110の第1の主面112の上に、例えば、シード層となる薄膜をスパッタし、その後フォトリソグラフィ法によって所定形状のレジストを形成し、その後、メッキ法によって電極120を選択的に設け、レジストを剥離し、シード層を除去することによって設けることができる。このように、例えば、スパッタとメッキ法によれば、第1の凹凸118を反映して電極120の層を設けることができ、第2の凹凸128は第1の凹凸118を反映した形状となる。ただし、電極120を設ける方法は上記に限定されず、第1の凹凸118を反映した第2の凹凸128が得られる方法であれば各種の方法を用いることができる。
【0015】
以下、本実施形態のフレキシブルプリント基板10と電子部品との接続について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板と電子部品との接続状態を例示する模式断面図である。
図2(a)は、フレキシブルプリント基板と電子部品の端子部の接続状態を例示しており、図2(b)と図2(c)は、それぞれ、図2(a)の電極部410と電極間隙部420を拡大して示している。なお、図2は、図1に表されたベースフィルムとフレキシブルプリント基板を上下逆にして表している。
【0016】
図2(a)に表されるように、電子部品210の電子部品表面212には、回路電極220が設けられており、回路電極220と、フレキシブルプリント基板10の電極120とが対向するように組み立てられ、電子部品210とフレキシブルプリント基板10とは、例えば絶縁性樹脂からなる接着剤310で接着される。以下、電極部410と電極間隙部420における、電極120と回路電極220の配置状態及び接着剤310の配置状態について説明する。
【0017】
図2(b)に表されるように、電極部410においては、電極120の凸部126は、電子部品210の回路電極220と接しており、これにより、電極120と回路電極220の電気的接続が実現される。また、電極120の凹部124と回路電極220との間には、凹部124によって空間が形成され、その空間に充分の量の接着剤310が充填され、接着剤310によって電極120と回路電極220とは強固に接着される。
また、図2(c)に表されるように、電極間隙部420においては、ベースフィルム110と電子部品210との間に接着剤310が挟持され両者は強固に接着される。なお、この際、ベースフィルム110と電子部品210の間隙は、電極120と回路電極220の厚み分だけ大きくなっており、その間に接着剤310が挟持され接着力はより強固になっている。
【0018】
なお、電子部品210の電子部品表面212と回路電極220の回路電極表面222とには、通常、凹凸は形成されず、表面の形状は制御されていない。このため、電子部品表面212と回路電極表面222とは、意図しない凹凸や傷を有する場合もあるが、略平滑面(例えば、算術平均粗さRaが0.2μm程度以下)である。従って、図2においては、電子部品表面212と回路電極表面222とが、略平滑面(意図しない凹凸や傷も含む)である場合として例示されている。
【0019】
次に、比較例について説明する。
(第1の比較例)
図3は、第1の比較例のフレキシブルプリント基板の構成を例示する模式断面図である。
図3(a)は、第1の比較例のフレキシブルプリント基板用ベースフィルムを表しており、図3(b)は、それを用いたフレキシブルプリント基板を表している。
図3(a)に表されるように、第1の比較例のフレキシブルプリント基板用ベースフィルム610の第1の主面612には、特に意図した凹凸は設けられていない。すなわち、第1の主面612には、ベースフィルムを形成した際に発生する意図しない第1の凹凸618があるだけであり、例えば算術平均粗さRaは0.2μm程度以下となっている。
【0020】
また、図3(b)に表されるように、第1の比較例のフレキシブルプリント基板60は、このベースフィルム610の第1の主面612の上に電極620を有している。そして、電極620の第2の主面622には、特に凹凸は形成されていない。この場合、電極620の第2の主面622には、意図しない第2の凹凸628があるが、一般に算術平均粗さRaは0.2μm程度と非常に小さい凹凸となっている。なお、これらベースフィルム610の第1の凹凸618と、電極620の第2の凹凸628とは、共に意図しないものであるので、両者の凹部同士、凸部同士の位置は一致していない。
【0021】
以下、第1の比較例のフレキシブルプリント基板60と電子部品との接続について説明する。
図4は、第1の比較例のフレキシブルプリント基板と電子部品との接続状態を例示する模式断面図である。
図4(a)は、フレキシブルプリント基板と電子部品の端子部の接続状態を例示しており、図4(b)と図4(c)は、それぞれ、図4(a)の電極部410と電極間隙部420を拡大して示している。なお、図4は、図3に表されたベースフィルムとフレキシブルプリント基板を上下逆にして表している。
図4(a)に表されるように、電子部品210の回路電極220と、第1の比較例のフレキシブルプリント基板60の電極620とが対向するように組み立て、両者は接着剤310で接着されている。
【0022】
図4(b)に表されるように、電極部410においては、電極620の表面には、意図しては凹凸が設けられておらず、算術平均粗さが小さい意図しない第2の凹凸628のみがある。このため、電極620の第2の主面622と回路電極220の回路電極表面222とはランダムに接触し電気的接続が行われる。この時、電極620の第2の主面622と回路電極220の回路電極表面222とは、一般の略平滑面であるため、両者の空間部(隙間)は小さく、接着剤310がほとんど介在できない。このため、接着力が弱い。また、電極620の第2の主面622と回路電極220の回路電極表面222の凹凸は制御されているものではないため、空間(隙間)は変動する。このため、その間に介在する接着剤の量も変動し、結果として接着力が大きく変動する。
図2(c)に表されるように、電極間隙部420においては、ベースフィルム610と電子部品210との間に接着剤310が挟持され、両者は第1の実施例と同様に接着される。
従って、第1の比較例では、第1の実施形態に比べて、電極部410における接着力が著しく低く、また大きく変動する。フレキシブルプリント基板の端子ピッチの高精細化に伴い、電極間隙部420での接着より電極部410での接着の重要性が増す。このため、第1の比較例は、特に端子ピッチが高精細のフレキシブルプリント基板としては、実用的ではない。
【0023】
(第2の比較例)
図5は、第2の比較例のフレキシブルプリント基板の構成を例示する模式断面図である。
図5(a)は、第2の比較例のフレキシブルプリント基板用ベースフィルムを表しており、図5(b)は、それを用いたフレキシブルプリント基板を表している。
図5(a)に表されるように、第2の比較例のフレキシブルプリント基板用ベースフィルム710の第1の主面712には、特に意図した凹凸は設けられていない。すなわち、第1の主面712には、ベースフィルムを形成した際に発生した意図しない第1の凹凸718があるだけであり、一般に算術平均粗さRaは0.2μm程度以下となっている。
【0024】
また、図5(b)に表されるように、第2の比較例のフレキシブルプリント基板70は、このベースフィルム710の第1の主面712の上に電極720を有している。そして、電極720の第2の主面722には、第2の凹凸728が設けられている。この場合、第2の凹凸728は、例えば、算術平均粗さRa=1.2〜20μmとすることができるが、第2の凹凸728は、第1の凹凸718を反映していない。
【0025】
電極720の第2の主面722の第2の凹凸728は、ベースフィルム710の第1の主面712の上に、略平滑面の電極720を設けた後、電極720の第2の主面722の形状を凹凸にすることで設けることができる。
例えば、ベースフィルム710の第1の主面712上に、例えば、シード層となる薄膜をスパッタし、その後フォトリソグラフィ法によって所定形状のレジストを形成し、その後、メッキ法によって電極を選択的に設け、レジストを剥離し、シード層を除去することによって表面が略平滑な電極720を設けた後、電極720の表面を砥石などによって研削することにより、第2の凹凸728を設けることができる。このようにして、電極720の表面に、例えば算術平均粗さRa=1.2〜20μmの第2の凹凸728を設けることができるが、電極層の層厚は変動し、また傷が入ることもあり、結果として電極の抵抗値が変動したり断線するなどの問題があり、使えない。
また、上記の他、ベースフィルム710の第1の主面712の上に略平滑面の電極720を設けた後、電極720の第2の主面722をエッチングやレーザ加工することによって、電極720の第2の主面722に、例えば算術平均粗さRa=1.2〜20μmの第2の凹凸728を設けることもできる。しかし、この場合も、略平滑面の第2の主面722の上に、凹凸を形成するため、やはり、電極層の層厚は変動し、結果として電極の抵抗値が変動したり断線するなどの問題があり、使えない。
このように、意図しない小さい粗さの凹凸しか表面に有しない略平滑面のベースフィルムの上に電極を形成した後、電極表面に凹凸を設ける方法では、電極層の厚さが変動し、電極の抵抗値が変動したり、電極表面に傷が入り断線の問題があり実用的ではなかった。
【0026】
これに対し、本実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルム110とフレキシブルプリント基板10は、ベースフィルム110の第1の主面112に第1の凹凸118が設けられており、そして、電極120の第2の主面122に、第1の凹凸118を反映した第2の凹凸128が設けられている。従って、電極120の電極層の層厚は安定しており、電極の抵抗値が変動したり、断線の問題は無い。
このように、本実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルム110とフレキシブルプリント基板10は、電極の抵抗値や断線の問題も無く、接着強度が高く、高精細の電気的接続を可能とする。これにより、小型で信頼性の高い電子機器を提供できる。
【0027】
なお、本実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルム110の第1の凹凸118(及びそれが反映されたフレキシブルプリント基板10の第2の凹凸128)の算術平均粗さRaは、フレキシブルプリント基板の接続ピッチ、電極部410と電極間隙部420の面積比率、電極120と回路電極220の厚さ、接着剤310の接着強度と弾性率、等によって、実用的に要求される接着強度と接続電気抵抗値に基づいて、適切に設定される。すなわち、算術平均粗さRaが大きいと、電極120と回路電極220の接触面積が減少し、接続電気抵抗が上昇するが、接着剤が介在する空間が増大し、接着強度は増大する傾向となる。また、算術平均粗さRaが小さいと、電極120と回路電極220の接触面積が増加し、接続電気抵抗が低下するが、接着剤が介在する空間は減少し、接着強度は低下する傾向となる。
【0028】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板と電子部品との接続状態を例示する模式断面図である。
図6は、電子部品210の電子部品表面212と、フレキシブル基板10の電極120との接触状態を例示している。図6に表したように、電子部品表面212は略平滑面であり、電子部品表面212の凹凸の高さ(深さ)213は、1.0μm以下である。この時、この略平滑面に対して充分な空間を保持して接触するためには、フレキシブルプリント基板10の電極120の第2の凹凸128の高さ(深さ)123は、電子部品212の凹凸の高さ213の最大値の2倍以上が望ましい。すなわち、第2の凹凸128の凹凸の高さは2μm以上が望ましく、従って、第2の凹凸128の算術平均粗さRaは1.0μm以上が望ましい。そして、第2の凹凸128を形成する際の忠実再現性を考慮すると、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム110の第1の凹凸118の算術平均粗さRaの下限は、1.2μmとすることが望ましい。
【0029】
また、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム110の変形等によって第1の凹凸118の凹凸同士が接触し、凹凸が壊れてしまわないように、第1の凹凸118の高さは、第1の凹凸118のピッチの2倍以下とすることが望ましい。この観点で、第1の凹凸118の算術平均粗さRaの上限は、20μmとすることが望ましい。
一方、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム110の第1の凹凸118(及びそれが反映されたフレキシブルプリント基板10の第2の凹凸128)のピッチは、少なくともフレキシブルプリント基板の接続ピッチに対して同等以下と設定される必要がある。これを考慮すると、実用的には、第1の凹凸のピッチは、フレキシブルプリント基板の端子の接続ピッチの4分の1程度以下と設定される。フレキシブルプリント基板の端子の接続ピッチの最小値は、80μm前後であることが多い。この観点でも、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム110の第1の凹凸118の算術平均粗さRaの上限は、20μmとすることが望ましい。
【0030】
また、第1の凹凸118(及び第2の凹凸128)の粗さは、第1の凹凸118(及び第2の凹凸128)の硬度や弾性率、及び、フレキシブルプリント基板110の電極120と電子部品210の回路電極220とを圧着する際の加圧力、加圧温度、加圧時間などに基づいて適正に設定される。すなわち、フレキシブルプリント基板110と電子部品210とを圧着する際に、第1の凹凸118(及び第2の凹凸128)が塑性変形または弾性変形することを考慮して、第1の凹凸118(及び第2の凹凸128)の算術平均粗さRaを適正に設定することができる。
【0031】
なお、フレキシブルプリント基板において、ベースフィルム上の電極が剥がれることを防止するために、ベースフィルムと電極の間に熱可塑性ポリイミド層を設け、熱可塑性ポリイミド層と電極層との界面に粗さRaが0.1〜1.0μmである凹凸を、熱可塑性ポリイミド層の熱変形により形成する方法がある。この場合、電極の密着力を上げることが目的であり、熱可塑性ポリイミド層と電極層の界面の面積を増加させるために、比較的粗さの小さい凹凸が設けられている。界面の凹凸が小さいと、電極表面の凹凸も小さい(一般的には、界面の凹凸より電極表面の凹凸の方が小さい)。従って、この方法では、フレキシブルプリント基板の電極と電子部品の回路電極との接着力を増加することができない。また、この方法で電極表面の凹凸を大きくしようとすると、熱可塑性ポリイミド層の熱変形を大きくせざるを得ず、電極層にクラックが入り、また剥離が発生してしまうという問題があった。
【0032】
これに対し、本発明の実施形態のフレキシブルプリント基板10は、第1の凹凸118が予め設けられたベースフィルム110の上に、第1の凹凸118を反映した第2の凹凸128を有する電極120を設けるので、電極120のクラックや剥離のおそれが無く、電極120と回路電極220とを強固に接着でき、高精細の電気的接続を可能とする。これにより、小型で信頼性の高い電子機器を提供できる。
【0033】
なお、上記の実施形態の説明では、電子部品210の電子部品表面212や回路電極220の回路電極表面222が略平滑面である場合について説明したが、これに限らず、本実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルム110とフレキシブルプリント基板10は、電子部品210の電子部品表面212や回路電極220の回路電極表面222が凹凸面であったり、傷があった場合にも有効である。すなわち、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム110の表面に凹凸が無い場合、あるいは、フレキシブルプリント基板10電極120の表面に凹凸が無い場合に比べ、本実施形態のように、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム110の表面に凹凸があり、それが反映された凹凸がフレキシブルプリント基板10の電極120にあると、接続相手である電子部品210の電子部品表面212や回路電極220の回路電極表面222とが凹凸面であったり、傷を有していた場合も、接着剤310の量が安定し、より高い接着強度とより高い信頼性が得られる。
【0034】
次に、第2の実施の形態について説明する。
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルムの構造を例示する模式図である。
【0035】
図7(a)に表されるように、第2の実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルム110は、第1の主面112に第1の凹凸118を有する。第1の凹凸118は第1の凹部114と第1の凸部116とからなり、ランダムな凹凸である。この凹凸は、例えば、ベースフィルム110の第1の主面112を砥石や微粒子などによって研削することにより、設けることができる。また、第1の凹凸118は、算術平均粗さRaが1.2μm〜20μmとされている。そして、算術平均粗さRaは、砥石や微粒子の粗さや研削圧力や研削速度、研削回数等によって制御できる。
【0036】
また、図7(b)に表されるように、第1の凹凸118を矩形状とすることもできる。このような矩形の凹凸は、例えば、ベースフィルム110に感光性レジスト設け、所定形状のマスクを介して感光性レジストを露光・現像した後、ベースフィルム110をエッチングすることによって設けることができる。また、例えば、ベースフィルム110の上に感光性のポリイミドを塗布した後、所定形状のマスクを介して感光性ポリイミドを露光・現像することによって設けることができる。この時、マスクの形状によって、凹部114と凸部116の比率や大きさ、配列を制御できる。また、ベースフィルムのエッチング時間などのエッチング条件や感光性ポリイミドの膜厚などによって、凹凸118の深さが制御できる。これらによって、第1の凹凸118の算術平均粗さRaを所定の値に制御することができる。
【0037】
また、図7(c)に表されるように、第1の凹凸118を波状とすることもできる。このような波状の凹凸は、上記のマスクの設計、現像・露光、エッチング条件等を制御することによって設けることができる。すなわち、第1の凹凸118のステップ形状は、図7(b)に表される矩形状から、図7(c)に表される波状まで、その中間の形状も含めて各種の制御ができる。
【0038】
さらに、図7(d)に表されたように、第1の凹凸118を三角波状とすることもできる。このような三角波状の凹凸は、例えば、ベースフィルム110の第1の主面112をレーザ加工することによって設けることができる。なお、レーザ加工によれば、加工条件を制御することによって、図7(b)や図7(c)に表された矩形や波状の凹凸の形成も可能である。
【0039】
なお、上記の矩形状、波状、三角波状の凹凸は、溝と山のように連続した凹凸とすることもできるし、穴や突起のように離散的な凹凸とすることもできる。
【0040】
このような各種形状の第1の凹凸118を有するベースフィルム110の第1の主面112の上に電極120を設けることによって、第1の凹凸118を反映した第2の凹凸128を有するフレキシブルプリント基板10を作製することができる。
このような第2の実施形態のフレキシブルプリント基板10は、電極120に第1の凹凸118を反映した第2の凹凸128が設けられているので、クラックや剥離も無く、電極120と電子部品210の回路電極220とを強固に接着でき、高精細の電気的接続を可能とする。これにより、小型で信頼性の高い電子機器を提供できる。
【0041】
なお、例えば、図7(a)に表されたように、第1の凹凸118(及びそれを反映する第2の凹凸128)の形状や配置がランダムであると、フレキシブルプリント基板10の端子部と電子部品210の回路電極220の端子のピッチによっては、電気的接続の抵抗値にムラが発生することがあるが、第1の凹凸118(及びそれを反映する第2の凹凸128)の形状や配置に所定の規則性を持たせることで、これを防止することができる。
【0042】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施形態のフレキシブルプリント基板の製造方法について説明する。
図8は、第3の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の製造方法を例示するフローチャート図である。
図8に表されたように、第3の実施形態のフレキシブルプリント基板の製造方法では、まず、ベースフィルム110の第1の主面に第1の凹凸118を形成する(ステップS110)。そして、その上に電極120を形成する(ステップS120)。これにより、第1の凹凸118を反映した第2の凹凸128を電極120の第2の主面122に設けることができる。
なお、ベースフィルム110として、第1の主面に第1の凹凸118を有するものが得られれば、第1の凹凸118を形成するステップS110の工程は省略され、電極120を形成するステップS120の工程のみを行う。
【0043】
一例をより詳細に説明する。
図9は、第3の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の製造方法を例示するフローチャート図である。
図9に表されたように、第3の実施形態のフレキシブルプリント基板の製造方法では、まず、ベースフィルム110の第1の主面に第1の凹凸118を形成する(ステップS210)。これには、すでに説明したように、砥石や微粒子などによる研削法、エッチング法、感光性ポリイミド法、レーザ加工法等を用いることができる。また、これら以外にも、所定の粒径を有する粒子をベースフィルムに混合させる方法、粒子を混合した樹脂をベースフィルムに塗布する方法、ベースフィルム成型時に型押しする方法、突起となる樹脂をインクジェット法などでベースフィルム上に部分的に設ける方法など各種の方法を用いることができる。
【0044】
その後、ベースフィルム110の第1の主面112上にシード層を設ける(ステップS220)。これには、例えば、スパッタ法など各種の方法を用いることができる。また、シード層の材料としては、例えば、ニッケル、クロム、またはこれらの混合物などを使用することができる。
その後、例えばフォトリソグラフィ法によって所定形状のレジストを形成する(ステップS230)。この他、インクジェット法などによって所定形状のレジストを設けることができる。
その後、メッキ層を設ける(ステップS240)。メッキ層の材料としては、銅が例示できる。この他、各種の金属を使用することができる。また、メッキ層の上に金や錫などの各種の酸化防止膜を設けることもできる。
その後、レジストを除去する(ステップS250)。
その後、シード層を除去する(ステップS260)。
【0045】
このようにして、第1の凹凸118を反映して電極120の層を設けることができ、第2の凹凸128は第1の凹凸118を反映した形状となる。
【0046】
このようにして作製されたフレキシブルプリント基板10は、接着強度が高く、高精細の電気的接続を可能とする。これにより、小型で信頼性の高い電子機器を提供できる。
【0047】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る電子機器を例示するイメージ図である。
図10は、電子機器の一例として、携帯電話を例示したものである。携帯電話800の画面部810と操作部820とがヒンジ部830により接合されており、このヒンジ部830によって画面部810は所望の角度に保持されるようになっている。このヒンジ部830に、フレキシブルプリント基板が用いられており、画面部810の角度を任意に変えながら、画面部810と操作部820の電気的接続を可能としている。そして、上記第1、第2の実施形態のフレキシブルプリント基板10を用いることによって、接着強度が高く、高精細の電気的接続を可能であり、小型で信頼性の高い携帯電話を実現できる。
この他、上記の実施形態のフレキシブルプリント基板10を、例えば、パーソナルコンピュータの画面部のヒンジ部や各種の回路基板の接続部に用いることができる。これにより、小型で信頼性の高いパーソナルコンピュータが実現できる。この他、上記の実施形態のフレキシブルプリント基板10を用いてカメラやゲーム機器等の小型で信頼性の高い携帯電子機器が実現できる。
【0048】
なお、上に述べた各種の実施形態の説明において、接着剤310としては、紫外線硬化型樹脂、熱効果型樹脂など各種のものを使用することができ、例えば、エポキシ系樹脂が例示できる。
【0049】
なお、上に述べた実施形態のフレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の製造方法及び電子機器において、フレキシブルプリント基板の端子部と電子部品の端子部との接続部に、フィレット状の接着剤を設けることを併用しても良い。
【0050】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、フレキシブルプリント基板用ベースフィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の製造方法及び電子機器を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0051】
その他、本発明の実施の形態として上述したフレキシブルプリント基板用ベースフィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の製造方法及び電子機器を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全てのフレキシブルプリント基板用ベースフィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の製造方法及び電子機器も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0052】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の構成を例示する模式断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板と電子部品との接続状態を例示する模式断面図である。
【図3】第1の比較例のフレキシブルプリント基板の構成を例示する模式断面図である。
【図4】第1の比較例のフレキシブルプリント基板と電子部品との接続状態を例示する模式断面図である。
【図5】第2の比較例のフレキシブルプリント基板の構成を例示する模式断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板と電子部品との接続状態を例示する模式断面図である。
【図7】第2の実施形態のフレキシブルプリント基板用ベースフィルムの構造を例示する模式図である。
【図8】第3の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図9】第3の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図10】第4の実施形態に係る電子機器を例示するイメージ図である。
【符号の説明】
【0054】
10、60、70 フレキシブルプリント基板
110、610、710 ベースフィルム
112、612、712 第1の主面
114、714 第1の凹部
116、716 第1の凸部
118、618、718 第1の凹凸
120、620、720 電極
122、622、722 第2の主面
124、724 第2の凹部
126、726 第2の凸部
128、628、728 第2の凹凸
210 電子部品
212 電子部品表面
220 回路電極
222 回路電極表面
310 接着剤
410 電極部
420 電極間隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が形成される主面に、算術平均粗さRaが1.2μm〜20μmの第1の凹凸が設けられたことを特徴とするフレキシブルプリント基板用ベースフィルム。
【請求項2】
主面に第1の凹凸が設けられたベースフィルムと、
前記主面の上に形成され前記第1の凹凸を反映した第2の凹凸を表面に有する電極と、
を備えたことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
前記第1の凹凸の算術平均粗さRaは、1.2μm〜20μmであることを特徴とする請求項2記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項4】
前記第1の凹凸は、形状または配列の少なくともいずれかに規則性を有することを特徴とする請求項2または3に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項5】
主面に第1の凹凸を有するベースフィルムの前記主面に、前記第1の凹凸を反映した第2の凹凸を表面に有する電極を形成することを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項6】
前記ベースフィルムの前記主面に前記第1の凹凸を形成する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5記載のフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1の凹凸を、研削、エッチング、レーザ加工の内から選ばれた少なくともいずれかにより形成することを特徴とする請求項6記載のフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項8】
前記電極を、メッキ法を含む方法により形成することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載のフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項9】
請求項2〜4のいずれか1つに記載のフレキシブルプリント基板と、
前記フレキシブルプリント基板に接続された電子部品と、
を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−123843(P2009−123843A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294841(P2007−294841)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】