説明

フレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の製造方法

【課題】発熱性の電子部品で発生する熱を効率よく放熱させることができ、しかも容易に製造し得るフレキシブルプリント配線板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品の実装位置に対応する位置に開口部11aを有する絶縁性シート11と、絶縁性シート11の上面及び下面にそれぞれ積層された第1および第2の熱伝導性シート12A、12Bと、第1の熱伝導性シート12Aの上面に形成された電子部品が接続される回路パターン13と、第1の熱伝導性シート12Aの上面の開口部11aに対応する位置に形成された第1の放熱用ランド14Aと、第2の熱伝導性シート12Bの下面の開口部11aに対応する位置に形成された第2の放熱用ランド14Bとを具備し、開口部11aに、第1および第2の熱伝導性シート12A、12Bが埋入されて熱伝導経路15が形成されているフレキシブルプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱性の電子部品の実装に有用な熱伝導性の良好なフレキシブルプリント配線板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード等の発熱性の電子部品を実装したフレキシブルプリント配線板を組み込んだ電子機器は、ビデオカメラ装置の液晶表示用光源をはじめ種々知られている。このような電子機器においては、電子部品自身の破損や特性低下を防止するだけでなく、周辺部への熱の影響を抑えるため、電子部品で発生した熱を速やかに外部に放熱する必要がある。このため、従来より、様々な放熱技術が提案されている。
【0003】
例えば、発光ダイオードを実装するフレキシブルプリント配線板の裏面に放熱部材を配置し、これらに貫通孔を設けるとともに、この貫通孔に熱伝導性の高い接着性充填剤を充填した、液晶表示用光源の放熱構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)、また、発光ダイオード等の発光素子を実装するフレキシブルプリント配線板の裏面に放熱部材を配置するとともに、フレキシブルプリント配線板に貫通孔を設け、この貫通孔にAgペースト等の熱伝導性部材を充填することにより、発光素子と放熱部材と熱的に接続した発光装置(例えば、特許文献2参照。)、さらには、電子部品が接続される導体回路層と、放熱部材と、これらを連結する貫通孔と、貫通孔に設けられた熱伝導部材とを備え、この熱伝導部材を介して導体回路層と放熱部材を連結した構造のフレキシブルプリント回路板(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの技術は、いずれもフレキシブルプリント配線板を加工した後に、貫通孔を穿設し、この貫通孔に熱伝導性の良好な材料を埋設乃至配置するものであるため、電子機器の製造工程が煩雑となり、したがって製品価格も高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−162626号公報
【特許文献2】特開2007−287751号公報
【特許文献3】特開2009−88571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発熱性の電子部品で発生する熱を効率よく放熱させることができ、しかも容易に製造し得るフレキシブルプリント配線板、及びそのようなフレキシブルプリント配線板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、電子部品を実装するためのフレキシブルプリント配線板であって、前記電子部品の実装位置に対応する位置に開口部を有する絶縁性シートと、前記絶縁性シートの上面及び下面にそれぞれ積層された第1および第2の熱伝導性シートと、前記第1の熱伝導性シートの上面に形成された前記電子部品が接続される回路パターンと、前記第1の熱伝導性シートの上面の前記開口部に対応する位置に形成された第1の放熱用ランドと、前記第2の熱伝導性シートの下面の前記開口部に対応する位置に形成された第2の放熱用ランドと、を具備し、前記絶縁性シートの開口部に、前記第1および第2の熱伝導性シートが埋入されて熱伝導経路が形成されており、この熱伝導経路を介して前記第1の放熱ランドと前記第2の放熱用ランドとが熱的に接続されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、電子部品を実装するためのフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、前記電子部品の実装位置に対応する位置に開口部を有する絶縁性シートの一方の面に、第1の熱伝導性シートを介して、一方の面に前記電子部品が接続される回路パターンと、前記開口部に対応する位置に第1の放熱用ランドを形成した第1の転写部材を、回路パターンとおよび第1の放熱用ランド形成面を絶縁性シート側に向けて積層するとともに、他方の面に、第2の熱伝導性シートを介して、一方の面に前記開口部に対応する位置に第2の放熱用ランドを形成した第2の転写部材を、前記第2の放熱用ランド形成面を絶縁性シート側に向けて積層し、加熱加圧して、前記絶縁性シートと、前記第1及び第2の熱伝導性シートと、前記回路パターンと、前記第1および第2の放熱用ランドとを一体化した後、前記第1および第2の転写部材を除去することを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実装される発熱性の電子部品で発生する熱を効率よく放熱させることができ、しかも容易に製造し得るフレキシブルプリント配線板、及びそのようなフレキシブルプリント配線板を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を示す断面図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示すフレキシブルプリント配線板の絶縁性シートを示す部分平面図である。
【図4】図1に示すフレキシブルプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
【図5】図1に示すフレキシブルプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
【図6】図1に示すフレキシブルプリント配線板の使用形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、それらの図面は図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に何ら限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の構成を示す断面図であり、図2はその一部を拡大して示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10は、電子部品の搭載位置に対応する位置に開口部11aを有する絶縁性シート11の上面及び下面に2枚の熱伝導性シート(第1の熱伝導性シート12A及び第2の熱伝導性シート12B)を積層し、上側の第1の熱伝導性シート12Aの上面(電子部品実装面)に回路パターン13及び放熱ランド(第1の放熱ランド14A)を形成し、さらに、下側の第2の熱伝導性シート12Bの下面に放熱ランド(第2の放熱ランド14B)を形成するとともに、これらを加熱加圧して一体化させた構造を有する。
【0014】
第1の放熱ランド14A及び第2の放熱ランド14Bは、いずれも絶縁シート11の開口部11aに対応する位置に設けられており、加熱加圧によってそれぞれ第1の熱伝導性シート12A及び第2の熱伝導性シート12Bを絶縁性シート11の開口部11aに押し入れる。これにより、絶縁性シート11の開口部11aに、第1の熱伝導性シート12A及び第2の熱伝導性シート12Bからなる、第1の放熱ランド14Aと第2の放熱用ランド14Bとを熱的に接続する熱伝導経路15が形成されるとともに、第1の放熱ランド14A自身、また、第2の放熱ランド14B自身が、それぞれ第1の熱伝導性シート12A及び第2の熱伝導性シート12Bに埋設される。なお、加熱加圧によって、回路パターン13もまた第1の熱伝導性部材12Aに埋設される。
【0015】
絶縁性シート11としては、例えば、柔軟性に優れた樹脂材料からなるフィルム、繊維材料からなるシート等が使用される。具体的には、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等の、フレキシブルプリント配線板用として従来より一般に使用されている樹脂フィルムが使用される。また、繊維材料からなるシートとしては、ガラス繊維やアラミド繊維等の織布もしくは不織布、またはこれらの織布もしくは不織布にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させたプリプレグ等が使用される。絶縁性シート11の厚さは、特に制限はなく、用途等に応じて適宜決定されるが、通常、5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。開口部11aは、このような絶縁性シート11に、例えば、打ち抜き治具(ビク型)による打ち抜き加工によって形成することができる。
【0016】
第1の熱伝導性シート12A及び第2の熱伝導性シート12Bを構成する熱伝導性シートとしては、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)エラストマーおよび(E)無機充填剤を含有する熱伝導性樹脂組成物からなるものが使用される。
【0017】
(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば分子構造、分子量等に制限されることなく使用される。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格等を含有する多官能型エポキシ樹脂等が使用される。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
(B)成分のエポキシ樹脂硬化剤としては、上記(A)成分のエポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものであれば、特に制限されることなく使用される。具体的には、ジシアンジアミド、芳香族ジアミンなどのアミン系硬化剤;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤等が使用される。といった、通常、エポキシ樹脂硬化剤として使用されている化合物が使用できるこれらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
(C)成分も硬化促進剤としては、上記(A)成分のエポキシ樹脂の硬化促進剤として一般に使用されているものであれば、特に制限されることなく使用される。具体的には、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン化合物等が使用される。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
(D)成分のエラストマーとしては、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム等の各種合成ゴム;ゴム変性の高分子量化合物、高分子量エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリイミド樹脂、変性ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等が使用される。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
(D)成分の含有量は、組成物全体の3〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が、3質量%未満であると、絶縁性シート11等に対する接着力やシート状に成形した際の取り扱い性等が不良をなる。また、(D)成分の含有量が、50質量%を超えると、耐熱性および熱伝導率等が低下する。
【0022】
(E)成分の無機充填剤としては、公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、アルミナ(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化ケイ素(SiO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)等が使用される。これらのなかでも、熱伝導率の高い窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナの使用が好ましい。無機充填剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
(E)成分の含有量は、組成物全体の30〜85質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。(E)成分の含有量を30質量%以上とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。また、(E)成分の含有量を85質量%未満とすることにより、熱伝導性シートが脆くなるのを抑制して、絶縁性シート11等に対する接着力の低下を防止することができる。
【0024】
(E)成分の無機充填剤の形状は、凝集粒状、つまり実質的に球状であることが好ましい。2種以上混合して使用する場合には、少なくとも1種は凝集粒状であることが好ましい。また、(E)成分の無機充填剤の粒度は、JIS K3362で規定される標準篩分け機械による篩分け方法によって測定される粒度から求められる重量平均粒径D50が1〜30μmであることが好ましい。(E)成分を、上述した形状や粒径とすることにより、対向して配置された第1及び第2の放熱ランド14A、14B間のより良好な熱的接合が可能となる。
【0025】
上述したように、(E)成分は、凝集粒状であることが好ましいことから、凝集粒状である窒化ホウ素を含有することが好ましい。窒化ホウ素の含有量は、組成物全体の20〜70質量%が好ましく、25〜65質量%がより好ましい。窒化ホウ素の含有量を20質量%以上とすることにより、熱伝導率をより向上させることができる。具体的には、熱伝導性シートの熱伝導率を1.5W/m・K以上とすることができる。また、窒化ホウ素の含有量を70質量%未満とすることにより、熱伝導性シートが脆くなるのを抑制して、絶縁性シート11等に対する接着力の低下を防止することができる。
【0026】
なお、熱伝導性樹脂組成物には、必要に応じてレベリング剤、老化防止剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、酸化防止剤等を添加することができる。
【0027】
熱伝導性シートは、上記の(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)エラストマー、(E)無機充填剤、及び必要に応じて配合される各種成分を十分に混合して熱伝導性樹脂組成物を調製し、この熱伝導性樹脂組成物をさらに有機溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材上に、常法により、塗布、乾燥することによって製造することができる。
【0028】
熱伝導性樹脂組成物を溶解または分散させる有機溶媒としては、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノアセテートのようなエステル類、プロパノールやブタノールのようなアルコール類、トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミドのようなアミド類等が使用される。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
なお、熱伝導性シートの厚さは、絶縁性シート11の開口部11a内に、第1の放熱ランド14Aと第2の放熱ランド14Bとを熱的に接続する熱伝導経路15を形成可能であればよいが、良好な熱伝導性を得る観点からは、前述の(E)成分の無機充填剤が接触状態になるような厚さであることが好ましい。また、取り扱い性の観点からは、5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜60μmの範囲であることがより好ましい。
【0030】
第1の熱伝導性シート12A上面の回路パターン13および第1の放熱ランド14A、並びに第2の熱伝導性シート12B下面の第2の放熱ランド14Bは、後述するように、転写基材に回路パターン13および第1の放熱ランド14A、あるいは第2の放熱ランド14Bとなる金属層をパターン形成し、これを熱伝導性シートに転写する、いわゆる転写法によって形成される。転写基材に金属層を形成する方法としては、転写基材に金属箔を貼着した後、エッチング処理を施し所定のパターンに形成する方法を用いることができるが、特に、このような方法に限定されるものではなく、例えば、パターンめっき法や金型による抜き加工等により形成してもよい。回路パターン13が微細な場合には、パターンめっき法を用いることが好ましい。金属箔としては、電気伝導率および熱伝導率の高い銅箔が好ましい。銅箔は、フレキシブルプリント配線板に一般に使用されているものであれば特に制限なく使用される。一般には、厚さが18〜70μmのものが使用される。
【0031】
エッチング処理によりパターン形成する場合、転写基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が使用される。具体的には、マスタックPC−801(藤森工業(株)製 商品名)、パナプロテクトET−50B、パナプロテクトET−K50B(以上、パナック工業(株)製 商品名)等の高耐熱再剥離フィルム等が好ましく使用される。フィルムの厚さは、25〜200μmであることが好ましく、取り扱い性の観点からは、25〜100μmであることがより好ましい。
【0032】
このような転写基材への金属箔の貼着は、例えば、ロール式ラミネート機を用いて行うことができる。この場合、ロール温度は、常温が好ましく、ロール圧力は、0.1〜1.0MPaが好ましい。転写基材に金属箔を貼着した後、銅箔表面に印刷法または写真法によりエッチングレジスト層を形成し、常法により金属箔の不要部分をエッチングして所望のパターンの金属層を形成する。転写基材と金属箔との接着力は、1.5〜20.0N/mとすることが好ましく、2.0〜15.0N/mとすることがより好ましい。接着力が1.5N/m未満では、エッチング時に金属層が転写基材から剥離するおそれがある。また、接着力が20.0N/mを超えると、転写後の転写基材の剥離が困難になるおそれがある。
【0033】
また、パターンめっき法を用いる場合、転写基材としては、金属基材、特にステンレス基材の使用が好ましい。ステンレスとしては、SUS304、SUS301の使用が好ましく、特に、SUS301が、めっきの密着性に優れることから好ましい。ステンレス基材を用いる場合、その厚さは、50〜200μmであることが好ましく、取り扱い性の観点からは、100μm程度がより好ましい。
【0034】
金型による抜き加工を用いる場合、転写基材としては、エッチング法と同様、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が使用され、具体的には、マスタックPC−801(藤森工業(株)製 商品名)、パナプロテクトET−50B、パナプロテクトET−K50B(以上、パナック工業(株)製 商品名)等の高耐熱再剥離フィルム等が好ましく使用される。フィルムの厚さは、75〜200μmであることが好ましく、取り扱い性の観点からは、75〜100μmであることがより好ましい。
【0035】
転写基材と金属層との密着強度は、1.5〜20.0N/mとすることが好ましく、2.0〜15.0N/mとすることがより好ましい。密着強度が1.5N/m未満では、転写時等において転写基材と金属層とが剥離するおそれがある。また、密着強度が20.0N/mを超えると、転写後の転写基材の剥離が困難になるおそれがある。
【0036】
次に、本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10の製造方法の一例を、図3乃至図5を用いて説明する。図3は、本製造方法に使用される絶縁シートを示す平面図であり、図4および5は、本製造方法の工程を示す断面図である。
【0037】
本方法においては、図3に示すように、絶縁性シート11を用意し、この絶縁性シート11の所定の位置、つまり電子部品の搭載位置に対応する位置に、打ち抜き治具(ビク型)を用いるプレス打ち抜き加工等によって開口部11aを形成する。
【0038】
また、図4に示す工程にしたがって、転写基材(第1の転写基材)21A上に、回路パターン13及び第1の放熱ランド14Aとなる転写パターン(第1の転写パターン)22Aを形成する。
【0039】
すなわち、まず、図4(a)に示すように、転写基材21A上に銅箔等の金属箔23をロール式ラミネート機(図示なし)により貼着する。貼着は、ロール温度が常温で、ロール圧力が0.1〜1MPaの条件で行うことが好ましい。次に、図4(b)に示すように、金属箔23上に、印刷法または写真法によりエッチングレジスト層24を形成した後、図4(c)に示すように、このエッチングレジスト層24をマスクとして金属箔23の不要部分をエッチング除去する。その後、図4(d)に示すように、エッチングレジスト層24を除去する。これにより、表面に第1の転写パターン22Aが形成された第1の転写基材21Aが得られる。
【0040】
図示を省略したが、同様にして、転写基材(第2の転写基材)上に、第2の放熱ランド14Bとなる転写パターン(第2の転写パターン)を形成する。
【0041】
次に、図5(a)に示すように、開口部11aを形成した絶縁性シート11の上下両面に、それぞれ熱伝導性シート(第1の熱伝導性シート12A及び第2の熱伝導性シート12B)を介して、表面に第1の転写パターン22Aが形成された第1の転写基材21A、及び表面に第2の転写パターン22Bが形成された第2の転写基材21Bを、位置合わせしつつ積層し、プレス機で加熱加圧して、図5(b)に示すような、積層体30を得る。プレス機による加熱加圧は、積層した材料の両面に、ステンレス鋼等からなる金属板(図示せず)及び熱板(図示せず)をこの順で重ね合わせ、積層材料をこれらの金属板及び熱板を介して厚さ方向に加熱加圧することにより行う。その際、金属板と積層材料との間に、クラフト紙等のクッション材を介挿させると、積層材料をより均一に加熱加圧することができ、加熱加圧時の積層材料の損傷等を防止することができる。なお、プレス条件としては、温度、時間および圧力をそれぞれ100〜180℃、10〜100分、5〜50MPaとすることが好ましい。
【0042】
次いで、図5(c)に示すように、積層体30から第1の転写基材21Aおよび第2の転写基材21Bを剥離する。これにより、図1に示したような、絶縁性シート11の開口部11aに、第1の熱伝導性シート12Aおよび第2の熱伝導性シート12Bからなる、第1の放熱ランド14Aと第2の放熱用ランド14Bとを熱的に接続する熱伝導経路15が形成されたフレキシブルプリント配線板10が得られる。
【0043】
フレキシブルプリント配線板10の表面、すなわち、第1の熱伝導性シート12Aの上面には、その後、図5(d)に示すように、電子部品が搭載される第1の放熱ランド14A部分と、回路パターン13の電子部品の電極が接続される部分を除いて、カバーレイフィルム16が接着される。カバーレイフィルム16には、絶縁性シート11に使用されるものと同様の樹脂フィルムが使用される。
【0044】
次に、このようにして得られたフレキシブルプリント配線板10の使用形態について説明する。
【0045】
図6は、フレキシブルプリント配線板10の使用形態の一例を示した断面図である。図6に示すように、電子部品31は、フレキシブルプリント配線板10の第1の放熱ランド14A上に搭載されるとともに、ワイヤ32により回路パターン13に電気的に接続されている。そして、フレキシブルプリント配線板10の裏面、すなわち、第2の熱伝導性シート12Bの下面には、アルミ合金や銅合金等の熱伝導性材料からなる平板状の放熱部材33が、熱伝導性接着剤等により固着されている。なお、図6では、1個の電子部品31のみを実装した例を示している。
【0046】
フレキシブルプリント配線板10に実装された電子部品31で発生した熱は、第1の放熱ランド14A、熱伝導経路15、及び第2の放熱ランド14Bを介して、放熱部材33へと効率よく伝導され、放熱される。特に、熱伝導経路15を構成している第1及び第2の熱伝導性シート12Bに含まれる高熱伝導性の無機充填剤が接触状態で存在している場合には、熱伝導性のより良好な熱伝導経路15が形成されるため、電子部品31で発生した熱をより効率よく放熱させることができる。なお、このような第1の放熱ランド14Aから熱伝導経路15への熱の伝導、熱伝導経路15から第2の放熱ランド14Bへの熱の伝導は、液晶パネルの透明電極とドライバICとのACF接合による電気伝導と同様の原理によるものである。
【0047】
このように本実施形態のフレキシブルプリント配線板10は、発熱性の電子部品で発生する熱を効率よく放熱部材へ伝導させ、放熱させることができ、しかも、簡便な工程で容易に製造することができる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されるものでないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範囲内で各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は「質量部」を示すものとする。
【0050】
(実施例1)
[熱伝導性シートの作成]
ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製 商品名 JER YX4000H;エポキシ当量195)23部、ジシアンジアミド1.2部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.05部、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン(株)製 商品名 ニポール1072)10質量部、窒化ホウ素(電気化学工業(株)製 商品名 SGPS;重量平均粒径12μmの凝集粒状粒子)25部およびアルミナ40部を、メチルエチルケトン/ジメチルホルムアミド=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解もしくは分散させ、これを、片面に離型剤を付与した厚さ38μmのポリエステルフィルムの離型剤付与面に塗布し、150℃で3分間乾燥させた後、ポリエステルフィルムから剥離して、厚さ30μm、熱伝導率2W/m・Kの熱伝導性シートを作成した。
【0051】
[転写パターンの形成]
厚さ50μmのPETフィルム(パナック工業(株)製 商品名 パナプロテクトET−50B)上に、厚さ35μmの銅箔(三井金属鉱業(株)製 商品名 HTE−06−35)を、ラミネータを用いて、ロール温度常温、圧力0.5MPaの条件で貼り付け、銅箔シートを得た。次いで、この銅箔シートの銅箔上にエッチングレジスト層を形成し、エッチング処理を行った後、エッチングレジスト層を除去して、回路パターン及び第1の放熱ランドとなる転写パターンを形成した。
同様にして銅箔シートを得、さらに、この銅箔シートの銅箔上に、第2の放熱ランドとなる転写パターンを形成した。
【0052】
[絶縁性シートの作成]
厚さ7.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製 商品名 カプトン30EN)に、ビク型を用いて、3cm×3cmの開口部を形成した。
【0053】
[フレキシブルプリント配線板の製造]
上記絶縁性シートの上下両面に、それぞれ上記熱伝導性シートを介して、転写パターンを形成した2枚のフィルムを転写パターン形成面を熱伝導性シートに向けて積層し位置合わせした後、温度160℃、圧力2.5MPa、時間50分の条件で、プレス成形した。プレス成形の際、クッション材として190g/mのクラフト紙を4枚使用した。次いで、その両面にレジスト層を形成して、厚さ約100μmのフレキシブルプリント配線板を製造した。
【0054】
(実施例2)
絶縁性シートとして、厚さ7.5μmのポリイミドフィルムに代えて、厚み30μmのガラスクロス(旭シュエーベル(株)製 商品名 ガラスクロスA1020)を使用した以外は実施例1と同様にして、厚さ100μmのフレキシブルプリント配線板を製造した。
【0055】
(比較例)
片面銅張フレキシブル基板(京セラケミカル(株)製 商品名 TLF−521MWT35/12;銅厚35μm、ポリイミドフィルム厚12μm)にエッチング法により回路を形成した後、その回路形成面にカバーレイフィルム(京セラケミカル(株)製 商品名 TFA−577KHL−1230を接着して、厚さ100μmのフレキシブルプリント配線板を製造した。
【0056】
上記のようにして得られた実施例1、2及び比較例のフレキシブルプリント配線板の特性を下記に示す方法で評価した。
すなわち、フレキシブルプリント配線板をアルミ合金からなる放熱板上に載置した後、表面に形成された、導体幅2mm、全長20mmの狭隘部を略中間部に有する、導体幅10mmの線路導体に、10Aの電流を3分間通電し、前記狭隘部表面における温度の上昇(Δt)を調べた。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、実施例のフレキシブルプリント配線板は熱伝導性が良好で、発生した熱を放熱板へ効率よく伝導させ、放熱させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0059】
10…フレキシブルプリント配線板、11a…開口部、12A…(第1の)熱伝導性シート、12B…(第2の)熱伝導性シート、13…回路パターン、14A…(第1の)放熱ランド、14B…(第2の)放熱ランド14B、15…熱伝導経路、21A…(第1の)転写基材、21B…(第2の)転写基材、22A…(第1の)転写パターン、22B…(第2の)転写パターン、23…金属箔、31…電子部品、33…放熱部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装するためのフレキシブルプリント配線板であって、
前記電子部品の実装位置に対応する位置に開口部を有する絶縁性シートと、
前記絶縁性シートの上面及び下面にそれぞれ積層された第1および第2の熱伝導性シートと、
前記第1の熱伝導性シートの上面に形成された前記電子部品が接続される回路パターンと、
前記第1の熱伝導性シートの上面の前記開口部に対応する位置に形成された第1の放熱用ランドと、
前記第2の熱伝導性シートの下面の前記開口部に対応する位置に形成された第2の放熱用ランドと、
を具備し、
前記絶縁性シートの開口部に、前記第1および第2の熱伝導性シートが埋入されて熱伝導経路が形成されており、この熱伝導経路を介して前記第1の放熱ランドと前記第2の放熱用ランドとが熱的に接続されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記第1及び第2の放熱ランドは、それぞれ、その少なくとも一部が前記第1及び第2の熱伝導性シート12B内に埋設されていることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記熱伝導性シートは、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)全体の3〜50質量%の量のエラストマー、および(E)全体の30〜85質量%の量の無機充填剤を含む熱伝導性樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1または2記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記(E)無機充填剤は、窒化ホウ素、窒化アルミニウムおよびアルミナから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項3記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記熱伝導性シートは、熱伝導率が1.5W/m・K以上である請求項1乃至4のいずれか1項記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
電子部品を実装するためのフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
前記電子部品の実装位置に対応する位置に開口部を有する絶縁性シートの一方の面に、第1の熱伝導性シートを介して、一方の面に前記電子部品が接続される回路パターンと、前記開口部に対応する位置に第1の放熱用ランドを形成した第1の転写部材を、回路パターンとおよび第1の放熱用ランド形成面を絶縁性シート側に向けて積層するとともに、他方の面に、第2の熱伝導性シートを介して、一方の面に前記開口部に対応する位置に第2の放熱用ランドを形成した第2の転写部材を、前記第2の放熱用ランド形成面を絶縁性シート側に向けて積層し、加熱加圧して、前記絶縁性シートと、前記第1及び第2の熱伝導性シートと、前記回路パターンと、前記第1および第2の放熱用ランドとを一体化した後、前記第1および第2の転写部材を除去することを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
加熱加圧によって、前記絶縁シートの開口部に前記第1および第2の熱伝導性シートが埋入されて熱伝導経路が形成されることを特徴とする請求項6記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−210877(P2011−210877A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75994(P2010−75994)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】