説明

フレキシブル配線基板の熱圧着装置

【課題】加熱圧着接合時におけるフレキシブル配線基板の接続端子列部における端子アレイ方向の伸びを調整し、モバイル機器のファインピッチ接続端子列との導通接合においてもフレキシブル配線基板の熱膨張による導通接続不良を発生させないフレキシブル配線基板の熱圧着装置を提供する。
【解決手段】押圧ヘッド7は、基台ブロック71の加圧方向Pに向ける表面7111の中央に凸設されたセンタ凸部712を挟んでその両側に、複数の押圧シート板721が加圧方向Pに対し夫々角度θ、−θだけ傾斜させて立てた状態で重畳されてなる一対の押圧シート束72a、72bが配置され、これら押圧シート束72a、72bが一対の保持板73、73と一対の保持ブロック74、74及び前記センタ凸部712により挟持されて、構成されている。押圧シート束72a、72bの夫々の押圧面7a、7bは、研磨処理により平坦面に仕上げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板を他の回路基板に導通接合するための熱圧着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルや有機エレクトロルミネッセンス表示パネル等の画像表示パネルを用いる画像表示モジュールは、適用機器の小型薄型化に有利であるという利点から、近年、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistance)等のモバイル機器のディスプレイとして多用されている。これらモバイル機器のディスプレイとして用いられる画像表示モジュールは、画面サイズが小さく且つ高精細であるため、駆動信号供給用配線の接続端子の配設ピッチも高度にファイン化している。
【0003】
一方、上述したようなモバイル機器の画像表示モジュールと外部駆動制御回路基板とを電気接続する配線部材としては、薄型化に有利なフレキシブル配線基板が多用されている。このフレキシブル配線基板と画像表示モジュールとのファインピッチ化した接続端子同士を作業性良く導通接合する接合部材としては、異方性導電接着材が好適に用いられている。
【0004】
異方性導電接着材は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性バインダ樹脂中に平均粒径が5μm程度の導電性粒子を分散混合させた材料をフィルム状に成形したものである。導通接合工程においては、画像表示モジュールの接続端子列部に前記異方性導電接着材を介してフレキシブル配線基板の接続端子列部を位置合わせを行いつつ載置し、フレキシブル配線基板の接続端子列部に所定の温度に加熱した熱圧着ヘッドを直接又は特許文献1に示されるように異方性導電接着材の付着を防止するためのシート等を介して間接に当接させて加圧し、両接続端子間に導電性粒子を挟持した状態で熱硬化性バインダ樹脂を硬化させて両接続端子列部を固着する。
【0005】
【特許文献1】特開平9−162544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した導通接合工程においては、フレキシブル配線基板の接続端子列部が加熱されて膨張し接続端子並設方向(以下、端子アレイ方向という)への伸びが発生するため、対応する接続端子同士の位置にずれが生じる。接続端子列がファインピッチ化したモバイル機器の画像表示モジュールとフレキシブル配線基板との導通接合においては、前記フレキシブル配線基板の熱膨張による接続端子の位置ずれが導通接続不良をより引き起こし易い。
【0007】
本発明の目的は、加熱圧着接合時におけるフレキシブル配線基板の接続端子列部における端子アレイ方向の伸びを調整し、モバイル機器のファインピッチ接続端子列との導通接合においてもフレキシブル配線基板の熱膨張による導通接続不良の発生を有効に防止できるフレキシブル配線基板の熱圧着装置を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱圧着装置は、複数の配線が形成されるとともに各配線の第1接続端子が第1のピッチで並設されて第1の接続端子列が形成された回路基板に、複数の配線が形成されるとともに各配線の第2接続端子が前記第1のピッチに対応した第2のピッチで並設されて第2接続端子列が形成されたフレキシブル配線基板を、熱硬化性のバインダ樹脂中に導電性粒子が分散混合されてなる異方性導電接着材を介して加熱しつつ加圧し、互いに対応する前記第1接続端子と前記第2接続端子間に前記導電性粒子を挟持させて両接続端子を導通接続するフレキシブル配線基板の熱圧着装置であって、前記フレキシブル配線基板の前記第2接続端子列が形成された接続端子列部の前記第2接続端子列が形成された表面とは反対側の裏面を加熱しつつ加圧する押圧ヘッドを備え、前記押圧ヘッドは、複数枚の高熱伝導性弾性材料からなる薄肉板材が加圧方向に対し傾斜させて重ね合わされるとともに、同じ角度で重ね合わされた薄肉板材の束の先端面が押圧面を形成してなり、前記押圧面を、前記フレキシブル配線基板の接続端子列部裏面に、前記薄肉板材の重ね合わせ方向を前記第2接続端子の並設方向に平行に沿わせて、直に当接させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフレキシブル配線基板の熱圧着装置によれば、加圧方向に対し同じ角度で傾斜させて重ね合わされた複数枚の高熱伝導性弾性材料からなる薄肉板材の束の先端面を、押圧ヘッドの押圧面としてフレキシブル配線基板の接続端子列部に直に当接させるから、前記先端面が当接する接続端子列部裏面と平行な方向に薄肉板材の傾斜角度に応じて押圧力の分力が作用し、この分力がフレキシブル配線基板における接続端子列部の加熱による伸長を抑制し或いは助長する。その結果、加熱圧着接合時におけるフレキシブル配線基板の接続端子列部の熱膨張による端子アレイ方向の伸び量が適正に調整され、異方性導電接着材を介して熱圧着により導通接合されるフレキシブル配線基板と回路基板との対応する接続端子同士がファインピッチ化されていても常に確実に導通接続される。
【0010】
本発明のフレキシブル配線基板の熱圧着装置は、前記第2のピッチが前記第2接続端子列全体にわたり一定である場合には、前記薄肉板材が加圧方向に対し互いに反対側へ同じ大きさの角度で傾斜させて重ね合わせられ、これら重ね合わされた薄肉板材の一対の束の各先端面が一対の押圧面を形成する構成とすることが好ましく、そのうちの第2接続端子列全体にわたり一定である前記第2のピッチが前記第1接続端子列の第1のピッチと同じである場合は、前記薄肉板材の一対の束が夫々の先端部を互いに加圧先端側に向かって近接させて傾斜している構成とすることがより好ましい。これにより、ともに同じ一定のピッチで並設された第1接続端子列と第2接続端子列の対応する接続端子同士を列全体にわたってずれることなく確実に導通接続することができる。
【0011】
また、第2接続端子列全体にわたり一定である前記第2のピッチが前記第1接続端子列の第1のピッチに対し所定の割合で縮小されている場合は、前記薄肉板材の一対の束が夫々の先端部を互いに加圧先端側に向かって離隔させて傾斜している構成とすることが好ましく、このように構成された押圧ヘッドは、第2接続端子列の熱膨張による伸長する割合が見込みよりも小さい場合に用いられ、第2接続端子列の伸長を見込んだ割合に達するまで助長し、対応する接続端子同士を列全体にわたって確実に導通接続することができる。
【0012】
さらに、本発明のフレキシブル配線基板の熱圧着装置においては、前記薄肉板材として、厚さtが、
5μm≦t≦500μm
の金属板を用いることが好ましく、これにより、熱効率を低下させることなくフレキシブル配線基板を介して異方性導電接着材を加熱できると共に、加圧する際に先端部が撓んでフレキシブル配線基板の伸長を調整する力つまりフレキシブル配線基板との当接面に平行な分力を増幅させ、より有効な伸びに対する調整効果が得られる。
【0013】
またさらに、本発明のフレキシブル配線基板の熱圧着装置においては、薄肉板材の傾斜角度θを、
1°≦θ≦30°
とすることが好ましく、これにより、フレキシブル配線基板に対して共に必要かつ十分な押圧導通効果と伸長調整効果の双方が得られる。
【0014】
加えて、本発明は、前記第1接続端子が配設された回路基板が一対の基板間に液晶が挟持されてなる液晶表示パネルの一方の基板である場合に好適に適用され、その結果、液晶表示パネルのファインピッチ化された接続端子に対しても、フレキシブル配線基板の対応する接続端子を異方性導電接着材を介した熱圧着接合により常に高い精度で正確に導通接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一実施形態としての熱圧着装置により製造された液晶表示モジュールを示す斜視図で、図2の(a)は前記熱圧着装置とそれによる製造工程を示す側面図で、(b)はその熱圧着部を示す平面図、図3の(a)は本実施形態の熱圧着装置における押圧ヘッド先端面を示した平面図で、(b)はその押圧ヘッドによる熱圧着状態を示す模式的拡大断面図、(c)は(b)におけるQ部を拡大して示した部分説明図、及び、図4(a)〜(d)は、本実施形態の前記押圧ヘッドの組立て手順を示す段階別説明図である。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態の熱圧着装置により製造される液晶表示モジュールにおける液晶表示パネル1は、電極(不図示)が形成された一対の矩形をなすガラス基板11、12を、それぞれの電極形成面を対向させて枠状シール材(不図示)により所定の間隙を保って接合し、枠状シール材で囲まれたガラス基板11、12の各対向面(以下、内面という)間に液晶(不図示)を封入して、構成されている。そして、ガラス基板11、12の各外面には、前偏光板13と後偏光板(不図示)がそれぞれ貼着されている。なお、本実施形態の液晶表示モジュールは単純マトリクス型液晶表示モジュールであり、ガラス基板11、12の対向させた各内面にはそれぞれ、互いに平行な複数の走査電極(不図示)と、これらに直交する互いに平行な複数の表示電極(不図示)とが配設されている。
【0017】
一対のガラス基板11、12のうちの片側のガラス基板12には、一縁辺をガラス基板11の対応する縁端面よりも外側へ突出させて、突出縁部121が形成されている。この突出縁部121の表面(内面の延長面)には、各電極に信号電圧を供給するリード配線14a、14bが配設されており、それらのうちの中央部に配設されているリード配線14aは各表示電極を延出させた表示リード配線である。また、両サイドに分割配設されているリード配線14bは走査リード配線であり、対向側基板11に配設されている走査電極の各端子電極(不図示)とこれらに対応する走査リード配線14bとは、図示されていない基板間導通部材により導通接続されている。
【0018】
突出縁部121の略中央部には、液晶駆動回路素子としてのドライバチップ2がCOG(Chip On Glass)方式により搭載されている。すなわち、ドライバチップ2の搭載エリア周縁にリード配線14a、14bの各接続端子(不図示)及びドライバチップ2に各種駆動制御信号を入力する入力配線15の一方の各接続端子(不図示)が並設され、これら接続端子と対応するドライバチップの突起電極端子(不図示)とが、異方性導電接着材3により導通接続されている。
【0019】
異方性導電接着材3は、熱硬化性バインダ樹脂としてのエポキシ樹脂中に平均粒径が約5μm程度の導電性粒子を分散混合してなり、搭載エリア上に異方性導電接着材3を介して載置されたドライバチップ2に所定温度に加熱された熱圧着ヘッドを所定の圧力で圧接させることにより、対応する接続端子と突起電極端子とが間に導電性粒子を挟持し導通接続された状態で熱硬化性樹脂が硬化し固着される。
【0020】
突出縁部121の先端部には、図2(b)に示されるように、入力配線15の他方の各接続端子151が並設されている。これら接続端子151には、外部駆動制御回路基板(不図示)と液晶表示パネル1を配線接続するフレキシブル配線基板4における対応する配線41の接続端子411が、異方性導電接着材5を介して導通接続されている。
【0021】
この異方性導電接着材5も、図3(b)に示されるように、前述した異方性導電接着材3と同様に、熱硬化性バインダ樹脂としてのエポキシ樹脂51中に平均粒径が略5μm程度の導電性粒子52を分散混合した材料を、細長いテープ状に成形したものである。図2(b)に示されるように、その異方性導電接着材5の長さLa は、接合作業性の面から、導通接続すべき液晶表示パネル1とフレキシブル配線基板4の各接続端子列の長さL1 、L2 よりも充分に大きい寸法に設定される。
【0022】
ここで、上記異方性導電接着材5を使用しフレキシブル配線基板4を液晶表示パネル1に熱圧着接合するための熱圧着装置について説明する。
【0023】
本実施形態の熱圧着装置は、図2(a)に示されるように、大略、ワークとしての液晶表示パネル1が載置される作業台6と、これに対して昇降自在に設置された押圧ヘッド7からなる。作業台6の液晶表示パネル1が載置される載置面61には、段差611が形成されており、この段差611はワークとしての液晶表示パネル1の位置決めを行う際の基準となる。
【0024】
押圧ヘッド7は、図4(a)〜(d)の組立て手順説明図にも示されるように、基台ブロック71と、基台ブロック71の加圧方向Pに向ける表面に立てて重ね合わせた複数の押圧シート板721からなる一対の押圧シート束72a、72b、重ね合わせた押圧シート板721の各側端面を両側から支持する一対の保持板73、73、及び重ね合わせた押圧シート板721を重畳方向へ互いに反対側から支持する一対の保持ブロック74、74からなる。
【0025】
基台ブロック71は、図4(a)に示されるように、細長直方体状をなす基台部711と、その中央に凸設されたセンタ凸部712からなる。基台部711にはヒータ(不図示)が内蔵されている。
【0026】
センタ凸部712は横断面が等脚台形の先細状ブロック体をなし、基台部711の加圧方向Pに向ける表面7111の中央に、その幅全長にわたり凸設されている。センタ凸部712の一対の傾斜側面7121、7121の基台部表面7111の法線方向(ヘッド加圧方向P)に対する各傾斜角度の大きさθは、
1°≦θ≦30°
の範囲内において、次に述べる押圧シート板721の材質や肉厚、ワークとしてのフレキシブル配線基板4の材質や配線ピッチ等に応じて最適な角度に設定される。
【0027】
基台ブロック71の表面7111には、図4(c)に示されるように、多数枚の押圧シート板721が立てた状態で重畳配置されている。これら押圧シート板721は、センタ凸部712を挟んでその両側に夫々同じ数だけ同じ大きさの角度で傾斜させて配置され、一対の押圧シート束72a、72bが形成されている。
【0028】
各押圧シート板721は、高熱伝導性の弾性材料を用いて、肉厚tが
5μm≦t≦500μm
程度の薄肉シート板に形成されている。高熱伝導性弾性材料としては、ステンレス、バネ用燐青銅、べリリウム銅等が好適に用いられる。本実施形態の押圧シート板721は、肉厚が80μmのステンレス薄板を用いて形成されている。
【0029】
傾斜させて重畳配置された各押圧シート板721は、夫々の両側端面を一対の保持板73、73により、各押圧シート束72a、72bの最も外側(センタ凸部712側を内側とした場合の)の押圧シート板721a、721bを一対の保持ブロック74、74によりセンタ凸部712に向けて、それぞれ支持された状態で保持されている。そして、保持ブロック74、74の各内端面741もセンタ凸部712の対応する傾斜側面7121の傾斜角度θ、−θと同じ角度で傾斜する端面に夫々形成されている。これにより、センタ凸部712とその両側に対向配置される一対の保持ブロック74、74により挟持される押圧シート束72a、72bの各押圧シート板721は、夫々が同じ角度θ、−θで傾斜するとともに互いに密着した状態で束ねられている。
【0030】
各押圧シート束72a、72bの加圧方向Pに向いた先端面7a、7bは、ワークとしてのフレキシブル配線基板4に圧接させる押圧面となり、これら押圧面7a、7bは束ねられた押圧シート板721の各先端面が連なって形成されている。本実施形態における押圧面7a、7bは、図4(d)に示されるように平坦面に研磨加工されている。なお、押圧面7a、7bは、平坦面に限定されるものではなく、例えばワークのフレキシブル配線基板4の硬度が大きい場合は、押圧シート板721を束ねたままの状態の凹凸面であってもよい。
【0031】
押圧面7a、7b間には、間隙7cが確保されている。この間隙7cの幅wは、押圧面7a、7bをワークのフレキシブル配線基板4に圧接させた際に生じる各押圧シート板721の先端部の撓み量に応じて最適に設定されるべきもので、本実施形態では数μm程度に設定されている。
【0032】
各押圧面7a、7bは、図2(b)に示されるように、細長い長方形をなし、その長さ方向をフレキシブル配線基板4の端子アレイ方向Xt に平行に沿わせて、フレキシブル配線基板4における接続端子411が並設された接続端子列部の裏面(接続端子411が形成された面を表面とする)に直に当接させる。これら押圧面7a、7bの長さLh (図3(a)参照)は、それらの合計長さ2Lh と上述した間隙7cの幅wを合わせた長さLH が、前述した異方性導電接着材5の長さLa よりも大きくなるように、設定される。
【0033】
上述のように構成された本実施形態の押圧ヘッド7は、図4(a)〜(d)に示される手順に従い容易に組立てられる。
【0034】
先ず、図4(b)に示されるように、基台ブロック71の両側面に一対の保持板73をボルト75を使って取り付ける。次に、図4(c)に示されるように、所定枚数の押圧シート板721をセンタ凸部712の両側の一対の保持板73に挟まれた保持スペースS1 、S2 内に夫々配置する。押圧シート板721を所定数づつ配置した後は、各保持スペースS1 、S2 の空いた端部に保持ブロック74を夫々設置する。この場合、各保持ブロック74は、取付けボルト76による締付けを緩めてヘッド長さ方向Xh (押圧シート板721の重畳方向)に適量だけ遊動可能に設置されており、所定枚数の押圧シート板721を配置した後に各保持ブロック74をセンタ凸部712に向けて移動させ、押圧シート束72a、72bをがたつき無く確実に挟持させる。これにより、各押圧シート板721が互いに密着して角度θで傾いた押圧シート束72a、72bが得られる。この後、図4(d)に示されるように、各押圧シート721の先端面を基台ブロック表面7111に平行な一つの平面に揃えて研磨し、平坦な押圧面7a、7bを夫々形成する。これにより、本実施形態の押圧ヘッド7が完成する。
【0035】
次に、上述のように構成された本実施形態の熱圧着装置により実施される熱圧着工程について説明する。
【0036】
図2(a)に示すように、先ず、ドライバチップ2がCOG方式により搭載された液晶表示パネル1を、作業台6上に段差611を基準として位置合わせを行い載置する。
【0037】
次に、図2(b)に示されるように、異方性導電接着材5を、液晶表示パネル1の突出縁部121における入力配線15の接続端子151が並設された先端部に、その長さ方向を接続端子151の端子アレイ方向Xt に平行に沿わせて載置する。
【0038】
次いで、フレキシブル配線基板4における配線41の一方の接続端子411が並設された端部を、各接続端子411と液晶表示パネル1側の対応する接続端子151とを対面させる配置で異方性導電接着材5上に位置合わせを行いつつ載置する。この位置合わせに際しては、フレキシブル配線基板4と液晶表示パネル1の対応する各両側部に配設されているそれぞれのアライメントマーク(不図示)をカメラ等で認識しつつ整合させることにより、正確な位置合わせを容易に実施することができる。なお、本実施形態では、作業台6に段差611を設けてあるから、その段差上位面612に異方性導電接着材5上にセットされたフレキシブル配線基板4の他端部(熱圧着接合する端部とは反対側端部)を載置することができ、これにより、位置合わせして載置されたフレキシブル配線基板4の位置ずれが防止される。
【0039】
上述の状態下において、図2(a)に示されるように、押圧面7a、7bを所定温度に加熱した押圧ヘッド7を下降させ、押圧面7a、7bをフレキシブル配線基板4の接続端子列部の裏面に所定の圧力で所定時間圧接させる。このとき、図3(b)に示されるように、加圧方向Pに対して夫々角度θ、−θだけ傾いた押圧面7a、7bを構成する各押圧シート板721が、先端部を撓ませて各先端面をフレキシブル配線基板4に圧接するから、フレキシブル配線基板4の裏面に沿って作用する夫々の分力p1a、p1bが増大すると共にフレキシブル配線基板4に対して垂直に作用する分力p2a、p2bは減少し、さらに、分力p2a、p2bは各押圧シート板721自体の撓みに対する弾発力により緩和される。
【0040】
これにより、加熱されたフレキシブル配線基板4の矢印Aで示される熱膨張による面方向の伸びが、増大された上記分力p1a、p1bにより有効に抑制される。すなわち、図3(c)に示されるように、各押圧シート板721は夫々密着重畳されているだけで接着されていないから、夫々の撓んだ先端部間には僅かな隙間が発生し、これらの隙間にフレキシブル配線基板4の加熱膨張分が前記分力p1a、p1bにより伸長が抑制されるために微細な皺rとなって入り込み、その結果、押圧ヘッド7により加熱押圧される接続端子列部全体としての伸びが抑制される。
【0041】
また、フレキシブル配線基板4に対して垂直に作用する分力p2a、p2bは、各押圧シート板721の先端部が撓むことにより減少するだけでなく、撓みに対する弾発力により緩和されるから、各押圧シート板721の先端面が圧接することにより軟化したフレキシブル配線基板4を損傷する不具合が有効に防止される。
【0042】
以上のように、本実施形態の熱圧着装置によれば、複数の高熱伝導性弾性材料からなる押圧シート板721を加圧方向Pに対し互いに反対側へ夫々同じ大きさの角度θだけ押圧先端側をヘッド中心側に傾けて重畳設置し、束ねられた各押圧シート板721の先端面からなる一対の押圧面7a、7bを、所定温度に加熱するとともにフレキシブル配線基板4の接続端子列部の裏面に所定の圧力で直に圧接させるから、押圧力Pの当接面に平行な分力p1a、p1bが各押圧シート板721の先端部が撓むことにより増大されてフレキシブル配線基板4に当接し、フレキシブル配線基板4の熱膨張による伸長を抑制することにより、撓んだ各押圧シート板721の先端部間に生じた微細間隙にフレキシブル配線基板4の伸長した部分が皺となって入り込む。その結果、押圧面7a、7bが圧接するフレキシブル配線基板4の接続端子列部全体の長さ方向(端子アレイ方向)の伸びが有効に吸収されて接続端子の位置ずれが解消され、液晶表示パネル1側の接続端子がファインピッチ並設されている場合でも、常に対応する接続端子同士を確実に導通接続することができる。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態について、図5に基づき説明する。なお、上記実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
上記実施形態においては、押圧ヘッド7の一対の押圧シート束72a、72bの各押圧シート板721を押圧先端側に向かって先端部を内側に傾けたが、本実施形態の熱圧着装置は、それら押圧シート板721を逆に外側(ヘッド中心側とは反対側)へ同じ大きさの角度θだけ傾けたもので、その他の構成は略同じある。
【0045】
すなわち、押圧ヘッド8の基台ブロック81における基台部811の加圧方向Pに向ける表面8111には、その長さ方向Xh の中心にセンタ凸部812が凸設され、このセンタ凸部812の一対の傾斜側面8121が夫々押圧先端側に向かって外側に傾いている。従って、そのセンタ凸部812とで複数の押圧シート板821を挟持する一対の保持ブロック84の各内側面841も、対向する傾斜側面8121と平行に先端側に向かって外側に傾斜させてある。
【0046】
上述のように構成された押圧ヘッド8によれば、押圧面8a、8bをフレキシブル配線基板に圧接させることにより生じる押圧力の押圧面8a、8bに沿った夫々の分力の方向が、加熱されて膨張するフレキシブル配線基板の伸長を助長する方向となる。従って、本実施形態の熱圧着装置は、熱膨張による伸長を見込んで予め接続端子ピッチを例えば0.1%程度縮めたフレキシブル配線基板の熱圧着接合において、用途や異方性導電接着材の材質の変更に伴なう圧着条件の変更或いは環境条件等の変化によって熱膨張による伸び量が見込みよりも少なくなり、熱膨張による伸びを助長する必要が生じた場合に、有効に用いられる。
【0047】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態における押圧ヘッドの押圧面は、押圧シート板の各先端面を研磨して平坦に揃えただけであるが、この平坦押圧面に異方性導電接着材のバインダ樹脂に対する離型性に優れた例えばフッ素系コーティング材料からなるオーバコート層を被着してもよい。これにより、加熱押圧されてフレキシブル配線基板の側部から食み出した異方性導電接着材の押圧面への固着が確実に防止され、熱圧着工程の作業性が向上する。
【0048】
また、上記実施形態においては、複数の押圧シート板を基台ブロックのセンタ凸部を挟んでその両側に同じ数だけ同じ角度で傾斜させて重畳配置したが、これに限らず、ワークのフレキシブル配線基板における接続端子の並設ピッチが変化する場合は、そのピッチが変化する境界を挟んでその両側にピッチの大きさと接続端子列の長さに応じて押圧シート板の厚さや枚数及び傾斜角度を最適に設定すればよい。
【0049】
加えて、本発明のフレキシブル配線基板の熱圧着装置は、液晶表示モジュールにおけるフレキシブル配線基板の熱圧着接合に限らず、有機EL表示モジュール等の他の種々の画像表示モジュールにおけるフレキシブル配線基板の熱圧着接合にも有効に適用されることは、勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態としての熱圧着装置により製造される液晶表示モジュールを示す斜視図である。
【図2】(a)は上記熱圧着装置によるフレキシブル配線基板の熱圧着工程を示す側面図で、(b)はその熱圧着接合部を拡大して示す平面図である。
【図3】(a)は上記熱圧着装置における押圧ヘッド先端面を示す平面図で、(b)はその押圧ヘッドによる熱圧着状態を拡大して示した模式的断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、夫々、上記熱圧着装置における押圧ヘッドの組立て手順を示す各段階毎説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態としての押圧ヘッドを示す一部分解正面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 液晶表示パネル
11、12 ガラス基板
14a、14b リード配線
15 入力配線
151 接続端子(液晶表示パネル側)
2 ドライバチップ
3、5 異方性導電接着材
4 フレキシブル配線基板
41 配線
411 接続端子(フレキシブル配線基板側)
6 作業台
7、8 押圧ヘッド
7a、7b、8a、8b 押圧面
71、81 基台ブロック
721、821 押圧シート板
73、83 保持板
74、84 保持ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線が形成されるとともに各配線の第1接続端子が第1のピッチで並設されて第1の接続端子列が形成された回路基板に、複数の配線が形成されるとともに各配線の第2接続端子が前記第1のピッチに対応した第2のピッチで並設されて第2接続端子列が形成されたフレキシブル配線基板を、熱硬化性のバインダ樹脂中に導電性粒子が分散混合されてなる異方性導電接着材を介して加熱しつつ加圧し、互いに対応する前記第1接続端子と前記第2接続端子間に前記導電性粒子を挟持させて両接続端子を導通接続するフレキシブル配線基板の熱圧着装置であって、
前記フレキシブル配線基板の前記第2接続端子列が形成された接続端子列部の前記第2接続端子列が形成された表面とは反対側の裏面を加熱しつつ加圧する押圧ヘッドを備え、
前記押圧ヘッドは、複数枚の高熱伝導性弾性材料からなる薄肉板材が加圧方向に対し傾斜させて重ね合わされるとともに、同じ傾斜角度で重ね合わされた薄肉板材の束の先端面が押圧面を形成してなり、
前記押圧面を、前記フレキシブル配線基板の接続端子列部裏面に、前記薄肉板材の重ね合わせ方向を前記第2接続端子の並設方向に平行に沿わせて、直に当接させることを特徴とするフレキシブル配線基板の熱圧着装置。
【請求項2】
前記第2のピッチは前記第2接続端子列全体にわたり一定であり、前記薄肉板材は加圧方向に対し互いに反対側へ同じ大きさの角度で傾斜させて重ね合わされ、これら重ね合わされた薄肉板材の一対の束の各先端面が一対の押圧面を形成していることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線基板の熱圧着装置。
【請求項3】
前記第2のピッチは前記第1接続端子列の第1のピッチと同じであり、前記薄肉板材の一対の束は、夫々の先端部を互いに加圧先端側に向かって近接させて傾斜していることを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル配線基板の熱圧着装置。
【請求項4】
前記第2のピッチは前記第1接続端子列の第1のピッチに対し所定の割合で縮小されており、前記薄肉板材の一対の束は、夫々の先端部を互いに加圧先端側に向かって離隔させて傾斜していることを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル配線基板の熱圧着装置。
【請求項5】
前記薄肉板材は、厚さtが、
5μm≦t≦500μm
の金属板であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかの請求項に記載のフレキシブル配線基板の熱圧着装置。
【請求項6】
前記薄肉板材の傾斜角度θは、
1°≦θ≦30°
であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかの請求項に記載のフレキシブル配線基板の熱圧着装置。
【請求項7】
前記第1接続端子が配設された回路基板は、一対の基板間に液晶が挟持されてなる液晶表示パネルの一方の基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかの請求項に記載のフレキシブル配線基板の熱圧着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−165345(P2007−165345A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355581(P2005−355581)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】