フロントシートのロック部構造
【課題】 部品点数を減らして、車体重量を軽減するとともに、シートロック金具の取付部の強度を大きくすることができるフロントシートのロック部構造を提供する。
【解決手段】 フロントシートの下方にエンジンを搭載し、フロントシートの下側にエンジンの整備・点検用の開口を設けた車両のフロントシートを固定するフロントシートのロック部構造において、車体のフロアから上方に立ち上がり、かつ車両の左右方向に延びるエンジンルームパネル6と、エンジンルームパネル6の両側に取付けられ、車両の前後方向に延びるエンジンルームサイドパネル7,8とでエンジンルームを構成し、前記エンジンルームパネル6と前記エンジンルームサイドパネル7,8とを重ね合わせて接合するとともに、この接合部16の重ね合わせ部分にフロントシートのロック部材18を取付けた構造。
【解決手段】 フロントシートの下方にエンジンを搭載し、フロントシートの下側にエンジンの整備・点検用の開口を設けた車両のフロントシートを固定するフロントシートのロック部構造において、車体のフロアから上方に立ち上がり、かつ車両の左右方向に延びるエンジンルームパネル6と、エンジンルームパネル6の両側に取付けられ、車両の前後方向に延びるエンジンルームサイドパネル7,8とでエンジンルームを構成し、前記エンジンルームパネル6と前記エンジンルームサイドパネル7,8とを重ね合わせて接合するとともに、この接合部16の重ね合わせ部分にフロントシートのロック部材18を取付けた構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントシートの下部にエンジンルームを配置した自動車のフロントシートのロック部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9及び図10は、キャブオーバ車のシート取付部を示す。シート取付部は、図示しないフロントフロアパネルの後端部から上方に突出したエンジンルームパネル51が設けられ、エンジンルームパネル51には、その前面にエンジンルームフロントパネル52が配設されている。エンジンルームフロントパネル52は、その左右両端部でエンジンルームサイドパネル53,54と、接合部57,58で連結されている。エンジンルームサイドパネル53,54の後部にはエンジンルームリヤパネル55が接合され、エンジンルーム開口56が形成されている。このエンジンルーム開口56は、エンジンの整備、点検などのためのサービス開口として使用されている。
【0003】
エンジンルームパネル51の上部には、左右一対のフロントシート59が配設されている。フロントシート59のシートクッション(図示せず)の下部には、各々フロントシート59の両側部に左右シートレールアッシ60,61が取付けられている。シートレールアッシ60,61の前端部には、図11に示すようにシートブラケット62が取付けられ、フロントシート59の後端部には、ヒンジ金具63がエンジンルームリヤパネル55に取付けられている。このヒンジ金具63のヒンジ軸64を中心にして、フロントシート59を後方に向けて回動することができる。
【0004】
前記シートブラケット62は、シートレールアッシ60,61の車両前方の先端部下側に取付けられ、前端側をエンジンルームフロントパネル52の前面上端部から下方に延ばし、その先端部を上方に湾曲させたフック68が形成されている。その一方、エンジンルームフロントパネル52には、図11に示すシートロック金具66の取付部69が設けられている。シートロック金具66の取付部69には、図12に示すように、補強板65が取付けられている。また、シートロック金具66は、接合部57,58よりも車両の内側に取付けられ、その枠材67がフック68に引っ掛けられることにより、フロントシート59がエンジンルームパネル51に固定される。
【特許文献1】実開昭63−119180号公報
【特許文献2】実開平2−122859号公報
【特許文献3】特開2000−16345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、エンジンルームパネル51にフロントシート59が回動可能に取付けられている。このフロントシート59を固定するために、シートロック金具66がエンジンルームフロントパネル52に取付けられるが、フロントシート59を固定することから補強板65を追加している。この補強板65がコストアップと車体重量の要因となっていた。また、補強板65のレイアウト上、シートレールアッシ61とシートロック金具66の取付部69が車幅方向にずらして配置されているため、シートブラケット62の形状が大きくなるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、部品点数を減らして、車体重量を軽減するとともに、シートロック金具の取付部の強度を向上することができるフロントシートのロック部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、フロントシートの下方にエンジンを搭載し、フロントシートの下側にエンジンの整備・点検用の開口を設けた車両のフロントシートを着脱自在に固定するフロントシートのロック部構造において、車体のフロアから上方に立ち上がり、かつ車両の左右方向に延びるエンジンルームパネルと、エンジンルームパネルの両側に取付けられ、車両の前後方向に延びるエンジンルームサイドパネルとでエンジンルームを構成し、前記エンジンルームパネルと前記エンジンルームサイドパネルとを重ね合わせて接合するとともに、この接合部の重ね合わせ部分にフロントシートのロック部材を取付けたことにある。
また、本発明は、前記エンジンルームサイドパネルの端部を車両内方に屈曲させ、座席の前後位置調整を可能とするスライドレールの近傍で前記エンジンルームパネルに接合させたことにある。
さらに、本発明は、前記エンジンルームパネルおよび前記エンジンルームサイドパネルの上端には、それぞれ前記開口側に屈曲したフランジが設けられ、ロック部材が取付けられた重ね合わせ部分に連続してこのフランジ同士も重ねられて接合されていることにある。
またさらに、本発明は、前記座席のロック部材を車両の中央側と側方側に設け、車両の中央側のロック部材を固定する溶接ナットを前記エンジンルームパネルに固定し、前記エンジンルームパネルと前記エンジンルームサイドパネルの接合部分を、前記エンジンルームパネルがエンジンルーム側に位置するようにして重ね合わせ、前記エンジンルームパネルに、側方側となる前記ロック部材を固定するための溶接ナットが取付けられていることにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、重ね合わされて剛性のある部分にロック部材を取付けることが可能となり、別途補強部材(リンフオース等)を必要とせず、コストダウンと軽量化ができる。
また、本発明は、剛性のある重ねあわされた接合部を、スライドレール近傍に設定することが可能となり、シート側のブラケット(ロックの相手部材)を小さくすることが可能となる。さらに、前記エンジンルームサイドパネルの端部を車両内方に屈曲させることによって、その形状からロック部材の近傍のサイドパネルの強度を向上させることができる。
また、本発明は、前記エンジンルームパネルおよび前記エンジンルームサイドパネルの上端には、それぞれ前記開口側に屈曲したフランジが設けられ、ロック部材が取付けられた重ね合わせ部分に連続してこのフランジ同士も重ねられて接合されていることから、接合部の屈曲によってロック部材の取り付け部分の剛性が向上する。
さらに、本発明は、フロントシートの固定のためにロック部材が車両の中央側と側方側に設けられ、ロック部材同士の取付位置精度が要求されるが、同一のエンジンルームフロントパネルに溶接ナットが取付けられているので、位置精度が向上する。また、エンジンルームサイドパネルの取付精度に特に注意を払う必要がなくなり、組付け性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のフロントシートのロック部構造の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係わるフロントシートのロック部構造を採用した自動車のシートの周辺部、図2はシート取付部の前側斜視図、図3はシート取付部の後側斜視図、図4は、シート取付部の正面図、図5はシート取付部の平面図である。
図1に示すように、車両1の前部には、フロントシート2の前部に位置するフロントフロアパネル3と、その後部に位置するリヤフロアパネル4を設け、これらのフロアパネル3,4の間には、上方に突出しエンジンルームを形成するエンジンルームパネルユニット5が接合されている。エンジンルームパネルユニット5は、図6に示すように前側下端部がフロントフロアパネル3に接合され、車両1の幅方向に延出されたエンジンルームフロントパネル6と、その左右両端部に接合され、車両1後方側に延出されたエンジンルームサイドパネル7,8と、エンジンルームサイドパネル7,8の後端側に接合されているエンジンルームリヤパネル9を備えている(図5参照)。
【0009】
エンジンルームフロントパネル6は、エンジンルームサイドパネル7,8に対しての厚肉のパネルが用いられる。エンジンルームフロントパネル6とエンジンルームサイドパネル7,8の接合部16は、図7に示すように、エンジンルームサイドパネル8(7)側がエンジンルームフロントパネル6の前面に重ねて接合されている。
エンジンルームパネルユニット5は、エンジンルームの前面壁、エンジンルームサイドパネル7はエンジンルームの側壁を主に形成するが、その接合部分およびその近傍は、車両の前後方向に対して斜めに傾斜されている。
エンジンルームパネルユニット5は、エンジンルームフロントパネル6の上端に、車体の後方側に突出するフランジ6aを形成し、エンジンルームサイドパネル7,8の上端に、車幅方向内側に突出するフランジ7a,8aをそれぞれ形成している。そして、これらのフランジ6a,7a.8aとエンジンルームリヤパネル9によって、フロントシート2下部側の開口23を形成している。この開口23の直下には図示しないエンジンが搭載されている。
【0010】
エンジンルームパネルユニット5の上部に配設されているフロントシート2は、シートバック10とシートクッション11で構成されている。シートクッション11の下面には、図4及び図5に記載されているシートレールアッシ12,13(図8参照)が取付けられている。シートレールアッシ12,13は、フロントシート2の前後方向における位置調整を行う部材である。なお、説明の便宜上右側のフロントシート2及びその取付部について説明する。一対のシートレールアッシ12,13は、シートクッション11の下側の左右両側部において、車体の前後方向に延在させている。そして、これらのシートレールアッシ12,13の前端部には、シートブラケット14,15が取付けられている。
【0011】
車両の中央側に位置するシートブラケット14は、その前端部が、エンジンルームパネルユニット5の天井壁5aと前壁5bとで形成される屈曲(角)部で、下側に折り曲げられており、かつ、その先端部を上方に湾曲させてフック14aを形成している。一方、車両の外側に位置するシートブラケット15は、エンジンルームパネルユニット5の接合部16付近に配置され、接合部16が位置するエンジンルームパネルユニット5の上記天井壁5aと前壁5bとの屈曲部で下側に折り曲げられており、かつ、その先端部を上方に湾曲させてフック15aを形成している。
【0012】
エンジンルームパネルユニット5の前壁5bには、図2に示すように、シートブラケット14,15に対応するシートロック金具17,18が取付けられている。シートロック金具17,18はエンジンルームパネルユニット5の前壁5bに形成された貫通孔20a,20bにボルト21a,21bおよび溶接ナット(後述する)を介して固定されている。一方のシートロック金具17は前壁5bに形成された貫通孔20aにボルト21aと溶接ナット(図示せず)によって取り付けられている。
また、他方のシートロック金具18は、エンジンルームパネルユニット5の前壁5bの接合部16に形成された貫通孔20bにボルト21aを介して取付けられている。すなわち、図7に示すように、エンジンルームフロントパネル6の上側にエンジンルームサイドパネル8を重ね合わせ、さらに、その上面にシートロック金具18を重ね合わせている。そして、接合部16に貫通孔20bを形成し、接合部16の裏側に位置するエンジンルームフロントパネル6に溶接ナット19を取付け、ボルト21bと溶接ナット19によってシートロック金具18を接合部16に取付けている。
シートロック金具17,18は、枠材17a,18aを設け、枠材17a,18aはシートブラケット14,15のフック14a,15aに引っ掛けて係止できる。
シートレールアッシ12,13の後端側には、フロントシート2を回動自在に取付けることができるヒンジ金具22が取付けられ、ヒンジ金具22はエンジンルームリヤパネル9の後面9aにボルト24によって固定される。ヒンジ金具22には、カバー25が装着される。
【0013】
このような構成により、フロントシート2は、シートロック金具17,18の枠材17a,18aをシートブラケット14,15のフック14a,15aに引っ掛けて係止させることによって、エンジンルームパネルユニット5に固定できる。また、フロントシート2の着座状態の姿勢から、シートバック10の回転軸10aを軸心としてシートバック10を前方側aに回動し、フロントシート2を折り畳むことができる。そして、フロントシート2を折り畳んだままの姿勢で、ヒンジ金具22のヒンジ軸22aを軸心として、シートクッション11の前端側を、図8に示すように上方側bに回動して開口23を開放することができる。
【0014】
本実施の形態では、エンジンルームフロントパネル6とエンジンルームサイドパネル7,8を重ねあわせた剛性のある接合部16にシートロック金具18を取付けることが可能となった。よって、従来のように、別途補強部材(リンフオース等)を必要とせず、コストダウンと車両の軽量化ができるとともに、フロントシート2の取り付け剛性が向上するので、乗員の快適性が向上する。なお、車体の中央側に配置したシートロック金具17の取り付け位置には接合部が存在していないので、補強部材を必要とする。つまり、シートロック金具17は、エンジンルームフロントパネル6の裏側に溶接ナットが取り付けられた補強部材を取り付け、エンジンルームフロントパネル6および補強部材に設けられた貫通孔20a、ボルト21aと、溶接ナットによってエンジンルームフロントパネル6に取付けている。
シートロック金具18を固定した接合部16を、シートレール13近傍に設定したので、それらの距離が短くなり、シートブラケット15の形状を小さくすることが可能となる。
【0015】
フロントシート2の着座状態で、乗員によってフロントシート2が受ける力は、シートレールアッシ12,13を介して車体に伝達される。シートロック金具17,18のうちの一方のシートロック金具18を、シートレールアッシ13の延長線上の前方となるエンジンルームフロントパネル6とエンジンルームサイドパネル7,8を重ねあわせた剛性のある接合部16に設定することで、シートブラケット15やシートレールアッシ13に無理なモーメント(シートレールアッシ13をねじる方向のモーメント)が掛からないことから、シートブラケット15やシートレールアッシ13の強度および、その取付強度を低減することができる。
【0016】
エンジンルームフロントパネル6の左右端部、およびエンジンルームサイドパネル7,8は、エンジンルームの側壁を主に形成するが、その接合部16の付近は、車両の前後方向に対して、斜めになるように形成している。これによって、開口23及びエンジンルームは狭くなるが、エンジンルームの剛性は向上する。斜めに形成しているので、シートレールアッシ12,13の近傍に、シートロック金具17,18が配置できる。また、エンジンルームフロントパネル6の前壁5bの左右端部、およびエンジンルームサイドパネル7,8にかけて車両の側方になるほど車両の後方側となる傾斜面に形成されている(図5参照)ことで、エンジンルームの角部分を切り欠いた形状となることから、シートレールアッシ13の近傍に、シートロック金具18が配置できる。また、足の通過が容易となるため、車両への乗員の乗降性が向上する。
さらに、エンジンルームフロントパネル6の方がエンジンルームサイドパネル7,8に比べて厚いことから、このような厚く強度の大きな部材に、強度の必要なエンジンルームサイドパネル7,8を取付けることによって、エンジンルームサイドパネル7,8の負担を軽減している。これによって、エンジンルームサイドパネル7,8は、厚さの薄いものによって、形成できる。
【0017】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的思想に基づいて、変形及び変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、フロントシート2を回動させて、開口23を開放するようにしたが、取り外し式のフロントシートであってもよい。等、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態によるフロントシートのロック部構造を採用している自動車のシート周辺の斜視図である。
【図2】図1に示すフロントシートの前部の取付状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示すフロントシートの後部の取付状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示すフロントシートを前部から見た正面図である。
【図5】図1のフロントシートを外した状態のエンジンルームパネル部の平面図である。
【図6】図5のエンジンルームパネルのエンジンルームフロントパネルとエンジンルームサイドパネルの分解平面図である。
【図7】図4のB−B線断面図である。
【図8】図1に示すフロントシートの側面図である。
【図9】従来例によるフロントシートのロック部構造の正面図である。
【図10】従来例によるシート取付構造のフロントシートを除いた状態の平面図である。
【図11】従来例によるシート取付構造のフロントシートを固定するためのシートロック金具の斜視図である。
【図12】図9のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 車両
2 フロントシート
5 エンジンルームパネルユニット
6 エンジンルームフロントパネル(エンジンルームパネル)
6a,7a,8a フランジ
7,8 エンジンルームサイドパネル
11 シートクッション
12,13 シートレールアッシ
14,15 シートレールブラケット
16 接合部
17,18 シートロック金具(ロック部材)
19 溶接ナット
22 ヒンジ金具
23 開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントシートの下部にエンジンルームを配置した自動車のフロントシートのロック部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9及び図10は、キャブオーバ車のシート取付部を示す。シート取付部は、図示しないフロントフロアパネルの後端部から上方に突出したエンジンルームパネル51が設けられ、エンジンルームパネル51には、その前面にエンジンルームフロントパネル52が配設されている。エンジンルームフロントパネル52は、その左右両端部でエンジンルームサイドパネル53,54と、接合部57,58で連結されている。エンジンルームサイドパネル53,54の後部にはエンジンルームリヤパネル55が接合され、エンジンルーム開口56が形成されている。このエンジンルーム開口56は、エンジンの整備、点検などのためのサービス開口として使用されている。
【0003】
エンジンルームパネル51の上部には、左右一対のフロントシート59が配設されている。フロントシート59のシートクッション(図示せず)の下部には、各々フロントシート59の両側部に左右シートレールアッシ60,61が取付けられている。シートレールアッシ60,61の前端部には、図11に示すようにシートブラケット62が取付けられ、フロントシート59の後端部には、ヒンジ金具63がエンジンルームリヤパネル55に取付けられている。このヒンジ金具63のヒンジ軸64を中心にして、フロントシート59を後方に向けて回動することができる。
【0004】
前記シートブラケット62は、シートレールアッシ60,61の車両前方の先端部下側に取付けられ、前端側をエンジンルームフロントパネル52の前面上端部から下方に延ばし、その先端部を上方に湾曲させたフック68が形成されている。その一方、エンジンルームフロントパネル52には、図11に示すシートロック金具66の取付部69が設けられている。シートロック金具66の取付部69には、図12に示すように、補強板65が取付けられている。また、シートロック金具66は、接合部57,58よりも車両の内側に取付けられ、その枠材67がフック68に引っ掛けられることにより、フロントシート59がエンジンルームパネル51に固定される。
【特許文献1】実開昭63−119180号公報
【特許文献2】実開平2−122859号公報
【特許文献3】特開2000−16345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、エンジンルームパネル51にフロントシート59が回動可能に取付けられている。このフロントシート59を固定するために、シートロック金具66がエンジンルームフロントパネル52に取付けられるが、フロントシート59を固定することから補強板65を追加している。この補強板65がコストアップと車体重量の要因となっていた。また、補強板65のレイアウト上、シートレールアッシ61とシートロック金具66の取付部69が車幅方向にずらして配置されているため、シートブラケット62の形状が大きくなるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、部品点数を減らして、車体重量を軽減するとともに、シートロック金具の取付部の強度を向上することができるフロントシートのロック部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、フロントシートの下方にエンジンを搭載し、フロントシートの下側にエンジンの整備・点検用の開口を設けた車両のフロントシートを着脱自在に固定するフロントシートのロック部構造において、車体のフロアから上方に立ち上がり、かつ車両の左右方向に延びるエンジンルームパネルと、エンジンルームパネルの両側に取付けられ、車両の前後方向に延びるエンジンルームサイドパネルとでエンジンルームを構成し、前記エンジンルームパネルと前記エンジンルームサイドパネルとを重ね合わせて接合するとともに、この接合部の重ね合わせ部分にフロントシートのロック部材を取付けたことにある。
また、本発明は、前記エンジンルームサイドパネルの端部を車両内方に屈曲させ、座席の前後位置調整を可能とするスライドレールの近傍で前記エンジンルームパネルに接合させたことにある。
さらに、本発明は、前記エンジンルームパネルおよび前記エンジンルームサイドパネルの上端には、それぞれ前記開口側に屈曲したフランジが設けられ、ロック部材が取付けられた重ね合わせ部分に連続してこのフランジ同士も重ねられて接合されていることにある。
またさらに、本発明は、前記座席のロック部材を車両の中央側と側方側に設け、車両の中央側のロック部材を固定する溶接ナットを前記エンジンルームパネルに固定し、前記エンジンルームパネルと前記エンジンルームサイドパネルの接合部分を、前記エンジンルームパネルがエンジンルーム側に位置するようにして重ね合わせ、前記エンジンルームパネルに、側方側となる前記ロック部材を固定するための溶接ナットが取付けられていることにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、重ね合わされて剛性のある部分にロック部材を取付けることが可能となり、別途補強部材(リンフオース等)を必要とせず、コストダウンと軽量化ができる。
また、本発明は、剛性のある重ねあわされた接合部を、スライドレール近傍に設定することが可能となり、シート側のブラケット(ロックの相手部材)を小さくすることが可能となる。さらに、前記エンジンルームサイドパネルの端部を車両内方に屈曲させることによって、その形状からロック部材の近傍のサイドパネルの強度を向上させることができる。
また、本発明は、前記エンジンルームパネルおよび前記エンジンルームサイドパネルの上端には、それぞれ前記開口側に屈曲したフランジが設けられ、ロック部材が取付けられた重ね合わせ部分に連続してこのフランジ同士も重ねられて接合されていることから、接合部の屈曲によってロック部材の取り付け部分の剛性が向上する。
さらに、本発明は、フロントシートの固定のためにロック部材が車両の中央側と側方側に設けられ、ロック部材同士の取付位置精度が要求されるが、同一のエンジンルームフロントパネルに溶接ナットが取付けられているので、位置精度が向上する。また、エンジンルームサイドパネルの取付精度に特に注意を払う必要がなくなり、組付け性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のフロントシートのロック部構造の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係わるフロントシートのロック部構造を採用した自動車のシートの周辺部、図2はシート取付部の前側斜視図、図3はシート取付部の後側斜視図、図4は、シート取付部の正面図、図5はシート取付部の平面図である。
図1に示すように、車両1の前部には、フロントシート2の前部に位置するフロントフロアパネル3と、その後部に位置するリヤフロアパネル4を設け、これらのフロアパネル3,4の間には、上方に突出しエンジンルームを形成するエンジンルームパネルユニット5が接合されている。エンジンルームパネルユニット5は、図6に示すように前側下端部がフロントフロアパネル3に接合され、車両1の幅方向に延出されたエンジンルームフロントパネル6と、その左右両端部に接合され、車両1後方側に延出されたエンジンルームサイドパネル7,8と、エンジンルームサイドパネル7,8の後端側に接合されているエンジンルームリヤパネル9を備えている(図5参照)。
【0009】
エンジンルームフロントパネル6は、エンジンルームサイドパネル7,8に対しての厚肉のパネルが用いられる。エンジンルームフロントパネル6とエンジンルームサイドパネル7,8の接合部16は、図7に示すように、エンジンルームサイドパネル8(7)側がエンジンルームフロントパネル6の前面に重ねて接合されている。
エンジンルームパネルユニット5は、エンジンルームの前面壁、エンジンルームサイドパネル7はエンジンルームの側壁を主に形成するが、その接合部分およびその近傍は、車両の前後方向に対して斜めに傾斜されている。
エンジンルームパネルユニット5は、エンジンルームフロントパネル6の上端に、車体の後方側に突出するフランジ6aを形成し、エンジンルームサイドパネル7,8の上端に、車幅方向内側に突出するフランジ7a,8aをそれぞれ形成している。そして、これらのフランジ6a,7a.8aとエンジンルームリヤパネル9によって、フロントシート2下部側の開口23を形成している。この開口23の直下には図示しないエンジンが搭載されている。
【0010】
エンジンルームパネルユニット5の上部に配設されているフロントシート2は、シートバック10とシートクッション11で構成されている。シートクッション11の下面には、図4及び図5に記載されているシートレールアッシ12,13(図8参照)が取付けられている。シートレールアッシ12,13は、フロントシート2の前後方向における位置調整を行う部材である。なお、説明の便宜上右側のフロントシート2及びその取付部について説明する。一対のシートレールアッシ12,13は、シートクッション11の下側の左右両側部において、車体の前後方向に延在させている。そして、これらのシートレールアッシ12,13の前端部には、シートブラケット14,15が取付けられている。
【0011】
車両の中央側に位置するシートブラケット14は、その前端部が、エンジンルームパネルユニット5の天井壁5aと前壁5bとで形成される屈曲(角)部で、下側に折り曲げられており、かつ、その先端部を上方に湾曲させてフック14aを形成している。一方、車両の外側に位置するシートブラケット15は、エンジンルームパネルユニット5の接合部16付近に配置され、接合部16が位置するエンジンルームパネルユニット5の上記天井壁5aと前壁5bとの屈曲部で下側に折り曲げられており、かつ、その先端部を上方に湾曲させてフック15aを形成している。
【0012】
エンジンルームパネルユニット5の前壁5bには、図2に示すように、シートブラケット14,15に対応するシートロック金具17,18が取付けられている。シートロック金具17,18はエンジンルームパネルユニット5の前壁5bに形成された貫通孔20a,20bにボルト21a,21bおよび溶接ナット(後述する)を介して固定されている。一方のシートロック金具17は前壁5bに形成された貫通孔20aにボルト21aと溶接ナット(図示せず)によって取り付けられている。
また、他方のシートロック金具18は、エンジンルームパネルユニット5の前壁5bの接合部16に形成された貫通孔20bにボルト21aを介して取付けられている。すなわち、図7に示すように、エンジンルームフロントパネル6の上側にエンジンルームサイドパネル8を重ね合わせ、さらに、その上面にシートロック金具18を重ね合わせている。そして、接合部16に貫通孔20bを形成し、接合部16の裏側に位置するエンジンルームフロントパネル6に溶接ナット19を取付け、ボルト21bと溶接ナット19によってシートロック金具18を接合部16に取付けている。
シートロック金具17,18は、枠材17a,18aを設け、枠材17a,18aはシートブラケット14,15のフック14a,15aに引っ掛けて係止できる。
シートレールアッシ12,13の後端側には、フロントシート2を回動自在に取付けることができるヒンジ金具22が取付けられ、ヒンジ金具22はエンジンルームリヤパネル9の後面9aにボルト24によって固定される。ヒンジ金具22には、カバー25が装着される。
【0013】
このような構成により、フロントシート2は、シートロック金具17,18の枠材17a,18aをシートブラケット14,15のフック14a,15aに引っ掛けて係止させることによって、エンジンルームパネルユニット5に固定できる。また、フロントシート2の着座状態の姿勢から、シートバック10の回転軸10aを軸心としてシートバック10を前方側aに回動し、フロントシート2を折り畳むことができる。そして、フロントシート2を折り畳んだままの姿勢で、ヒンジ金具22のヒンジ軸22aを軸心として、シートクッション11の前端側を、図8に示すように上方側bに回動して開口23を開放することができる。
【0014】
本実施の形態では、エンジンルームフロントパネル6とエンジンルームサイドパネル7,8を重ねあわせた剛性のある接合部16にシートロック金具18を取付けることが可能となった。よって、従来のように、別途補強部材(リンフオース等)を必要とせず、コストダウンと車両の軽量化ができるとともに、フロントシート2の取り付け剛性が向上するので、乗員の快適性が向上する。なお、車体の中央側に配置したシートロック金具17の取り付け位置には接合部が存在していないので、補強部材を必要とする。つまり、シートロック金具17は、エンジンルームフロントパネル6の裏側に溶接ナットが取り付けられた補強部材を取り付け、エンジンルームフロントパネル6および補強部材に設けられた貫通孔20a、ボルト21aと、溶接ナットによってエンジンルームフロントパネル6に取付けている。
シートロック金具18を固定した接合部16を、シートレール13近傍に設定したので、それらの距離が短くなり、シートブラケット15の形状を小さくすることが可能となる。
【0015】
フロントシート2の着座状態で、乗員によってフロントシート2が受ける力は、シートレールアッシ12,13を介して車体に伝達される。シートロック金具17,18のうちの一方のシートロック金具18を、シートレールアッシ13の延長線上の前方となるエンジンルームフロントパネル6とエンジンルームサイドパネル7,8を重ねあわせた剛性のある接合部16に設定することで、シートブラケット15やシートレールアッシ13に無理なモーメント(シートレールアッシ13をねじる方向のモーメント)が掛からないことから、シートブラケット15やシートレールアッシ13の強度および、その取付強度を低減することができる。
【0016】
エンジンルームフロントパネル6の左右端部、およびエンジンルームサイドパネル7,8は、エンジンルームの側壁を主に形成するが、その接合部16の付近は、車両の前後方向に対して、斜めになるように形成している。これによって、開口23及びエンジンルームは狭くなるが、エンジンルームの剛性は向上する。斜めに形成しているので、シートレールアッシ12,13の近傍に、シートロック金具17,18が配置できる。また、エンジンルームフロントパネル6の前壁5bの左右端部、およびエンジンルームサイドパネル7,8にかけて車両の側方になるほど車両の後方側となる傾斜面に形成されている(図5参照)ことで、エンジンルームの角部分を切り欠いた形状となることから、シートレールアッシ13の近傍に、シートロック金具18が配置できる。また、足の通過が容易となるため、車両への乗員の乗降性が向上する。
さらに、エンジンルームフロントパネル6の方がエンジンルームサイドパネル7,8に比べて厚いことから、このような厚く強度の大きな部材に、強度の必要なエンジンルームサイドパネル7,8を取付けることによって、エンジンルームサイドパネル7,8の負担を軽減している。これによって、エンジンルームサイドパネル7,8は、厚さの薄いものによって、形成できる。
【0017】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的思想に基づいて、変形及び変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、フロントシート2を回動させて、開口23を開放するようにしたが、取り外し式のフロントシートであってもよい。等、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態によるフロントシートのロック部構造を採用している自動車のシート周辺の斜視図である。
【図2】図1に示すフロントシートの前部の取付状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示すフロントシートの後部の取付状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示すフロントシートを前部から見た正面図である。
【図5】図1のフロントシートを外した状態のエンジンルームパネル部の平面図である。
【図6】図5のエンジンルームパネルのエンジンルームフロントパネルとエンジンルームサイドパネルの分解平面図である。
【図7】図4のB−B線断面図である。
【図8】図1に示すフロントシートの側面図である。
【図9】従来例によるフロントシートのロック部構造の正面図である。
【図10】従来例によるシート取付構造のフロントシートを除いた状態の平面図である。
【図11】従来例によるシート取付構造のフロントシートを固定するためのシートロック金具の斜視図である。
【図12】図9のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 車両
2 フロントシート
5 エンジンルームパネルユニット
6 エンジンルームフロントパネル(エンジンルームパネル)
6a,7a,8a フランジ
7,8 エンジンルームサイドパネル
11 シートクッション
12,13 シートレールアッシ
14,15 シートレールブラケット
16 接合部
17,18 シートロック金具(ロック部材)
19 溶接ナット
22 ヒンジ金具
23 開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントシートの下方にエンジンを搭載し、フロントシートの下側にエンジンの整備・点検用の開口を設けた車両のフロントシートを着脱自在に固定するフロントシートのロック部構造において、車体のフロアから上方に立ち上がり、かつ車両の左右方向に延びるエンジンルームパネルと、エンジンルームパネルの両側に取付けられ、車両の前後方向に延びるエンジンルームサイドパネルとでエンジンルームを構成し、前記エンジンルームパネルと前記エンジンルームサイドパネルとを重ね合わせて接合するとともに、この接合部の重ね合わせ部分にフロントシートのロック部材を取付けたことを特徴とするフロントシートのロック部構造。
【請求項2】
前記エンジンルームサイドパネルの車体前部側の端部を車両内方に屈曲させ、座席の前後位置調整を可能とするスライドレールの近傍で前記エンジンルームパネルに接合させたことを特徴とする請求項1に記載のフロントシートのロック部構造
【請求項3】
前記エンジンルームパネルおよび前記エンジンルームサイドパネルの上端には、それぞれ前記開口側に屈曲したフランジが設けられ、ロック部材が取付けられた重ね合わせ部分に連続してこのフランジ同士も重ねられて接合されていることを特徴とする請求項1に記載のフロントシートのロック部構造。
【請求項4】
前記座席のロック部材を車両の中央側と側方側に設け、車両の中央側のロック部材を固定する溶接ナットを前記エンジンルームパネルに固定し、前記エンジンルームパネルと前記エンジンルームサイドパネルの接合部分を、前記エンジンルームパネルがエンジンルーム側に位置するようにして重ね合わせ、前記エンジンルームパネルに、側方側となる前記ロック部材を固定するための溶接ナットが取付けられていることを特徴とする請求項1に記載のフロントシートのロック部構造。
【請求項1】
フロントシートの下方にエンジンを搭載し、フロントシートの下側にエンジンの整備・点検用の開口を設けた車両のフロントシートを着脱自在に固定するフロントシートのロック部構造において、車体のフロアから上方に立ち上がり、かつ車両の左右方向に延びるエンジンルームパネルと、エンジンルームパネルの両側に取付けられ、車両の前後方向に延びるエンジンルームサイドパネルとでエンジンルームを構成し、前記エンジンルームパネルと前記エンジンルームサイドパネルとを重ね合わせて接合するとともに、この接合部の重ね合わせ部分にフロントシートのロック部材を取付けたことを特徴とするフロントシートのロック部構造。
【請求項2】
前記エンジンルームサイドパネルの車体前部側の端部を車両内方に屈曲させ、座席の前後位置調整を可能とするスライドレールの近傍で前記エンジンルームパネルに接合させたことを特徴とする請求項1に記載のフロントシートのロック部構造
【請求項3】
前記エンジンルームパネルおよび前記エンジンルームサイドパネルの上端には、それぞれ前記開口側に屈曲したフランジが設けられ、ロック部材が取付けられた重ね合わせ部分に連続してこのフランジ同士も重ねられて接合されていることを特徴とする請求項1に記載のフロントシートのロック部構造。
【請求項4】
前記座席のロック部材を車両の中央側と側方側に設け、車両の中央側のロック部材を固定する溶接ナットを前記エンジンルームパネルに固定し、前記エンジンルームパネルと前記エンジンルームサイドパネルの接合部分を、前記エンジンルームパネルがエンジンルーム側に位置するようにして重ね合わせ、前記エンジンルームパネルに、側方側となる前記ロック部材を固定するための溶接ナットが取付けられていることを特徴とする請求項1に記載のフロントシートのロック部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−45278(P2007−45278A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230332(P2005−230332)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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