説明

ブラシレスモータ駆動回路

【課題】電源電圧が変化しても、出力電圧を適切な電圧にクランプすることができるようにする。
【解決手段】プリドライバ回路によって、駆動用電圧生成回路14のHブリッジ回路26のPMOSトランジスタM11、M13及びNMOSトランジスタM12、M14をオンオフさせて、電源電圧から、ブラシレスモータ駆動用の電圧を生成し、ブラシレスモータのコイル12に印加する。第1クランプ回路32によって、出力端子28における出力電圧が、電源電圧に対応する電圧以下となるように、接地側のNMOSトランジスタM12をオンオフさせる。第2クランプ回路34によって、出力端子30における出力電圧が、電源電圧に対応する電圧以下となるように、接地側のNMOSトランジスタM14をオンオフさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラシレスモータ駆動回路に係り、特に、ブラシレスモータの巻き線への出力電圧をクランプするクランプ回路を備えたブラシレスモータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータ駆動回路のクランプ回路が知られている(例えば、特許文献1)。例えば、図5に示すように、3相モータ回路では、チェナーダイオードのチェナー降伏電圧を利用したクランプ回路が知られている。この回路では、コンプリメンタリー出力のPMOSトランジスタM11とNMOSトランジスタM12を用いて、モータを駆動している。
【0003】
この回路では、例えば、モータへの電流通電の相切り替え時において、PMOSトランジスタM11とNMOSトランジスタM12とが共にオフする条件で、出力電圧にキックバック電圧が発生する。このとき、出力電圧が、Vz(チェナーダイオードのチェナー降伏電圧)+VF(ダイオードの順方向電圧約0.7V)になると、チェナーダイオードZD1とダイオードZD2が導通する。また、これらのダイオードが導通することにより、NMOSトランジスタM12のゲートに、閾値電圧を超えた電圧が供給される。
【0004】
NMOSトランジスタM12のゲート電圧の閾値電圧をVgsとすると、出力電圧が、Vgs+Vz(チェナーダイオードのチェナー降伏電圧)+VF(ダイオードの順方向電圧約0.7V)になると、出力電圧がこの電圧より大きくならないように、NMOSトランジスタM12が、モータからの電圧を吸収する。従って、この回路の出力電圧は、Vgs+Vz+VF(≒10V)付近でクランプされる。
【0005】
また、2相半波モータの出力回路が知られている(例えば、特許文献2)。図6に示すように、この回路は、バイポーラトランジスタを用いた出力回路であり、エミッタ接地でモータをドライブする回路である。この出力トランジスタTr1、Tr2がオフした瞬間より、この出力電圧は電源電圧以上の電圧を発生してしまうが、これを防止するため、出力とベースの間にチェナーダイオードZDが挿入されている。図7に示すように、出力電圧が、Vz(チェナーダイオードのチェナー降伏電圧)+2×VF(ダイオードの順方向電圧約0.7V)になると、オフしたトランジスタTr1、Tr2がオンし、出力電圧を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4084117号公報
【特許文献2】特許第2771605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1、2に記載の技術では、モータの電源電圧が変化した場合でもクランプ電圧は一定であるため、クランプ電圧の設定に柔軟性がなく、例えば、設定されたクランプ電圧が電源電圧より大きくなってしまうと、電源に電流が回生され、電源電圧が変動してしまう、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、電源電圧が変化しても、出力電圧を適切な電圧にクランプすることができるブラシレスモータ駆動回路を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係るブラシレスモータ駆動回路は、一端が、ブラシレスモータが有する巻き線の一端に接続された出力端子に接続され、かつ、他端が接地された接地側スイッチング素子を含むスイッチング素子群を備え、前記スイッチング素子群がオンオフすることにより、電源電圧から、前記ブラシレスモータ駆動用の電圧を生成し、前記巻き線に印加する駆動用電圧生成回路と、前記駆動用電圧生成回路のスイッチング素子群をオンオフさせる駆動制御回路と、前記出力端子における出力電圧及び前記電源電圧に基づいて、前記出力電圧が、前記電源電圧に対応する電圧以下となるように前記接地側スイッチング素子をオンオフさせるクランプ回路とを含んで構成されている。
【0010】
本発明に係るブラシレスモータ駆動回路によれば、駆動制御回路によって、駆動用電圧生成回路のスイッチング素子群をオンオフさせて、電源電圧から、ブラシレスモータ駆動用の電圧を生成し、ブラシレスモータの巻き線に印加する。また、クランプ回路によって、出力端子における出力電圧及び電源電圧に基づいて、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧以下となるように接地側スイッチング素子をオンオフさせる。
【0011】
このように、クランプ回路によって、出力端子における出力電圧及び電源電圧に基づいて、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧以下となるようにクランプすることにより、電源電圧が変化しても、出力電圧を適切な電圧にクランプすることができる。
【0012】
本発明に係る駆動用電圧生成回路は、スイッチング素子群として、ソース端子から電源電圧が供給されるP型MOSFET及びソース端子が接地されたN型MOSFETを直列に接続し、かつ、P型MOSFET及びN型MOSFETの接続点を出力端子と接続したインバータ回路を含み、クランプ回路は、出力電圧及び電源電圧を入力とし、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧であるときに、N型MOSFETをオンさせることができる。
【0013】
本発明に係る駆動用電圧生成回路は、スイッチング素子群として、ドレイン端子から電源電圧が供給される第1のN型MOSFET及びソース端子が接地された第2のN型MOSFETを直列に接続し、第1のN型MOSFET及び第2のN型MOSFETの接続点を出力端子と接続した直列回路を含み、クランプ回路は、出力電圧及び電源電圧を入力とし、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧であるときに、第2のN型MOSFETをオンさせることができる。
【0014】
上記のインバータ回路を含む駆動用電圧生成回路を、インバータ回路及び出力端子を各々2つ含み、一方のインバータ回路における接続点が接続された一方の出力端子を、巻き線の一端に接続し、他方のインバータ回路における接続点が接続された他方の出力端子を、巻き線の他端に接続したHブリッジ回路とし、クランプ回路は、一方のインバータ回路に対して、一方の出力端子における出力電圧及び電源電圧を入力とし、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧であるときに、一方のインバータ回路のN型MOSFETをオンさせ、他方のインバータ回路に対して、他方の出力端子における出力電圧及び電源電圧を入力とし、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧であるときに、他方のインバータ回路のN型MOSFETをオンさせることができる。
【0015】
上記の直列回路を含む駆動用電圧生成回路を、直列回路及び出力端子を各々2つ含み、一方の直列回路における接続点が接続された一方の出力端子を、巻き線の一端に接続し、他方の直列回路における接続点が接続された他方の出力端子を、巻き線の他端に接続したHブリッジ回路とし、クランプ回路は、一方の直列回路に対して、一方の出力端子における出力電圧及び電源電圧を入力とし、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧であるときに、一方の直列回路の第2のN型MOSFETをオンさせ、他方の直列回路に対して、他方の出力端子における出力電圧及び電源電圧を入力とし、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧であるときに、他方の直列回路の第2のN型MOSFETをオンさせることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のブラシレスモータ駆動回路によれば、クランプ回路によって、出力端子における出力電圧及び電源電圧に基づいて、出力電圧が、電源電圧に対応する電圧以下となるようにクランプすることにより、電源電圧が変化しても、出力電圧を適切な電圧にクランプすることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置の駆動用電圧生成回路の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置の駆動用電圧生成回路及びクランプ回路の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置の駆動用電圧生成回路及びクランプ回路の構成を示す回路図である。
【図5】従来例におけるモータ駆動回路のクランプ回路の構成を示す回路図である。
【図6】従来例における2相半波モータの出力回路の構成を示す回路図である。
【図7】従来例における2相半波モータの出力回路の入力電圧及び出力電圧の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置10は、ブラシレスモータ内に設けられた、発生する磁界により回転子を回転させるためのコイル12と、コイル12に印加する駆動用電圧を生成する駆動用電圧生成回路14と、駆動用電圧生成回路14のMOSFETをオンオフさせる駆動制御回路としてのプリドライバ回路16と、駆動用電圧生成回路14内に設けられた後述するクランプ回路のスイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御回路18と、プリドライバ回路16の動作及びスイッチング制御回路18の動作を制御する制御回路20とを備えている。
【0020】
図2に示すように、駆動用電圧生成回路14は、PMOSトランジスタM11とNMOSトランジスタM12とを直列に接続した第1インバータ回路22と、PMOSトランジスタM13とNMOSトランジスタM14とを直列に接続した第2インバータ回路24とを用いて構成されたHブリッジ回路26を備えている。PMOSトランジスタM11、M13のソース端子は、電源VDDに接続されており、NMOSトランジスタM12、M14のソース端子は、接地されている。第1インバータ回路22のPMOSトランジスタM11及びNMOSトランジスタM12の接続点は、出力端子28を介して、コイル12の一端に接続され、第2インバータ回路24のPMOSトランジスタM13及びNMOSトランジスタM14の接続点は、出力端子30を介して、コイル12の他端に接続されている。なお、NMOSトランジスタM12、14が、接地側スイッチング素子に相当する。
【0021】
PMOSトランジスタM11とNMOSトランジスタM14とがオンすることによって、電源VDDからの電源電圧をコイル12に通電する。PMOSトランジスタM13とNMOSトランジスタM12とがオンすることによって、電源VDDからの電源電圧をコイル12に逆方向から通電する。上記の電源供給を交互に行って、駆動用電圧生成回路14は、単相全波モータ駆動回路として動作する。
【0022】
駆動用電圧生成回路14は、電源VDDからの電源電圧と出力端子28における出力電圧とが入力され、これらをモニターしながら、出力電圧が、電源電圧に対して近傍の電圧(電源電圧に対応する電圧)以下となるように、NMOSトランジスタM12をオンオフさせる第1クランプ回路32と、電源VDDからの電源電圧と出力端子30における出力電圧とが入力され、これらをモニターしながら、出力電圧が、電源電圧に対して近傍の電圧(電源電圧に対応する電圧)以下となるように、NMOSトランジスタM14をオンオフさせる第2クランプ回路34とを更に備えている。
【0023】
次に、第1クランプ回路32及び第2クランプ回路34の具体的な回路構成について説明する。
【0024】
図3に示すように、第1クランプ回路32は、抵抗素子R22、PMOSトランジスタM24、抵抗素子R21、及びNMOSトランジスタM23を直列に接続した回路と、抵抗素子R23、PMOSトランジスタM25、及びダイオードD21を直列に接続した回路とを含んで構成されている。
【0025】
抵抗素子R22の一端は、電源VDDに接続され、他端が、PMOSトランジスタM24のソース端子に接続されている。抵抗素子R21の一端は、PMOSトランジスタM24のゲート端子に接続され、他端が、NMOSトランジスタM23のドレイン端子に接続されている。PMOSトランジスタM24のゲート端子とドレイン端子とが接続されている。NMOSトランジスタM23のソース端子が接地されている。
【0026】
抵抗素子R23の一端は、出力端子28に接続され、他端が、PMOSトランジスタM25のソース端子に接続されている。ダイオードD21のアノード端子が、PMOSトランジスタM25のドレイン端子に接続され、カソード端子が、NMOSトランジスタM12のゲート端子に接続されている。PMOSトランジスタM25のゲート端子が、PMOSトランジスタM24のドレイン端子に接続されている。
【0027】
第2クランプ回路34は、抵抗素子R33、PMOSトランジスタM35、及びダイオードD31を直列に接続した回路を含んで構成されている。抵抗素子R33の一端は、出力端子30に接続され、他端が、PMOSトランジスタM35のソース端子に接続されている。ダイオードD31のアノード端子が、PMOSトランジスタM35のドレイン端子に接続され、カソード端子が、NMOSトランジスタM14のゲート端子に接続されている。PMOSトランジスタM35のゲート端子が、第1クランプ回路32のPMOSトランジスタM24のドレイン端子に接続されている。
【0028】
また、PMOSトランジスタM11のゲート端子は、プリドライバ回路16の第1のプリドライバ40の出力端子に接続され、NMOSトランジスタM12のゲート端子は、プリドライバ回路16の第2のプリドライバ42の出力端子に接続されている。
【0029】
PMOSトランジスタM13のゲート端子は、プリドライバ回路16の第3のプリドライバ44の出力端子に接続され、NMOSトランジスタM14のゲート端子は、プリドライバ回路16の第4のプリドライバ46の出力端子に接続されている。
【0030】
プリドライバ回路16の第1のプリドライバ40は、例えばインバータ回路で構成され、制御回路20からの制御信号に応じて、PMOSトランジスタM11をオンオフさせるために、パルス波形の駆動信号を出力する。また、プリドライバ回路16の第2のプリドライバ42は、PMOSトランジスタM21及びNMOSトランジスタM22を直列に接続したインバータ回路で構成され、制御回路20からの制御信号に応じて、NMOSトランジスタM12をオンオフさせるために、第1のプリドライバ40と同様に、パルス波形の駆動信号を出力する。
【0031】
また、プリドライバ回路16の第3のプリドライバ44は、例えばインバータ回路で構成され、制御回路20からの制御信号に応じて、PMOSトランジスタM13をオンオフさせるために、パルス波形の駆動信号を出力する。また、プリドライバ回路16の第4のプリドライバ46は、PMOSトランジスタM31及びNMOSトランジスタM32を直列に接続したインバータ回路で構成され、制御回路20からの制御信号に応じて、NMOSトランジスタM14をオンオフさせるために、第3のプリドライバ44と同様に、パルス波形の駆動信号を出力する。
【0032】
NMOSトランジスタM23のゲート端子は、スイッチング制御回路18の出力端子に接続され、スイッチング制御回路18からの駆動信号に応じて、NMOSトランジスタM23がオンオフする。
【0033】
次に、第1の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置10の動作について説明する。まず、制御回路20によって、プリドライバ回路16から駆動信号を出力させるように制御信号を出力する。プリドライバ回路16の第1のプリドライバ40〜第4のプリドライバ46から、ハイレベルとローレベルとからなるパルス波形の駆動信号が出力される。
【0034】
これらの駆動信号によって、PMOSトランジスタM11及びNMOSトランジスタM14のオン状態と、PMOSトランジスタM13及びNMOSトランジスタM12のオン状態とが交互に繰り返されるように、PMOSトランジスタM11、M13及びNMOSトランジスタM12、M14をオンオフして、上述したように、コイル12に対して、双方向の電流が交互に供給される。
【0035】
PMOSトランジスタM13からNMOSトランジスタM12に電流通電が行われているときに、コイル12に通電する電流方向を切り替えるために、PMOSトランジスタM13とNMOSトランジスタM12とを共にオフさせると、PMOSトランジスタM11、M13、及びNMOSトランジスタM12、M14が、オフとなる状態が生じる。その状態が生じると、例えば、NMOSトランジスタM12のドレイン電圧(出力電圧)が急劇に上昇する。
【0036】
出力電圧をクランプするクランプ回路がない構成である場合には、出力電圧が電源電圧より大きくなると、PMOSトランジスタM11の寄生ダイオードを通して電源VDDに電流が回生し、電源電圧にリップルを生じさせてしまう。
【0037】
本実施の形態では、PMOSトランジスタM11、M13とNMOSトランジスタM12、M14とがオフ状態であるときに、制御回路20によって、スイッチング制御回路18からハイレベルの駆動信号を出力させ、NMOSトランジスタM23をオンさせる。
【0038】
これによって、PMOSトランジスタM24のゲート端子が、抵抗素子R21及びPMOSトランジスタM23を介して接地されるため、トランジスタM24がオンする。抵抗素子R21、R22、及びPMOSトランジスタM24によって、PMOSトランジスタM25、M35のゲート電圧がバイアスされる。
【0039】
この状態において、出力端子28における出力電圧が、電源電圧に対して近傍の電圧になると、PMOSトランジスタM25がオンし導通するため、抵抗素子R23を介して、NMOSトランジスタM12のゲート電圧をバイアスする。これによって、NMOSトランジスタM12がオンし導通する。そして、コイル12からのモータ電流を、電源VDD側でなく、NMOSトランジスタM12を介して接地側に流すことができ、出力電圧を、電源電圧以下の所定電圧(電源電圧に近い電圧)にクランプすることができる。
【0040】
また、PMOSトランジスタM11からNMOSトランジスタM14に電流通電が行われているときに、コイル12に通電する電流方向を切り替えるために、PMOSトランジスタM11とNMOSトランジスタM14とを共にオフさせると、PMOSトランジスタM11、M13、及びNMOSトランジスタM12、M14が、共にオフとなる状態が生じる。
【0041】
上述したように、PMOSトランジスタM11、M13とNMOSトランジスタM12、M14とがオフ状態であるときに、制御回路20によって、スイッチング制御回路18からハイレベルの駆動信号を出力させ、NMOSトランジスタM23をオンさせる。これによって、トランジスタM24がオンし、抵抗素子R21、R22、及びPMOSトランジスタM24によって、PMOSトランジスタM25、M35のゲート電圧がバイアスされる。
【0042】
この状態において、出力端子30における出力電圧が、電源電圧以下の近傍の電圧になると、PMOSトランジスタM35がオンし導通するため、抵抗素子R33を介して、NMOSトランジスタM14のゲート電圧をバイアスする。これによって、NMOSトランジスタM14がオンし導通する。そして、コイル12からのモータ電流を、電源VDD側でなく、NMOSトランジスタM14を介して接地側に流すことができ、出力電圧を、電源電圧以下であって、かつ、電源電圧に近い電圧にクランプすることができる。
【0043】
また、電源電圧が変化しても、以上のように動作することにより、出力端子28又は30における出力電圧を、変化後の電源電圧以下であって、かつ、電源電圧に近い電圧にクランプすることができる。
【0044】
以上説明したように、第1の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置によれば、クランプ回路によって、出力端子における出力電圧及び電源電圧を入力とし、出力電圧が、電源電圧に対応する近傍電圧であるときに、接地側のNMOSトランジスタをオンさせることにより、出力電圧を電源電圧の近傍にクランプすることができるため、電源電圧が変化しても、出力電圧を適切な電圧にクランプすることができる。
【0045】
また、電源電圧によらず、出力電圧が電源電圧程度にクランプされるため、電源へ回生電流が流れず、電源のリップル成分をなくすことができる。
【0046】
次に、第2の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動回路について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0047】
第2の実施の形態では、ハイサイド側パワートランジスタとしてNMOSトランジスタを用いている点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0048】
図4に示すように、第2の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置の駆動用電圧生成回路214は、NMOSトランジスタM41とNMOSトランジスタM12とを直列に接続した第1直列回路222と、NMOSトランジスタM43とNMOSトランジスタM14とを直列に接続した第2直列回路224とを用いて構成されたHブリッジ回路226を備えている。
【0049】
NMOSトランジスタM41、M43のドレイン端子は、電源VDDに接続されており、NMOSトランジスタM12、M14のソース端子は、接地されている。第1直列回路222のNMOSトランジスタM41及びNMOSトランジスタM12の接続点は、出力端子28を介して、コイル12の一端に接続され、第2直列回路224のNMOSトランジスタM43及びNMOSトランジスタM14の接続点は、出力端子30を介して、コイル12の他端に接続されている。
【0050】
NMOSトランジスタM41とNMOSトランジスタM14とがオンすることによって、電源VDDからの電源電圧をコイル12に通電する。NMOSトランジスタM43とNMOSトランジスタM12とがオンすることによって、電源VDDからの電源電圧をコイル12に逆方向から通電する。上記の電源供給を交互に行うことにより、駆動用電圧生成回路214は、単相全波モータ駆動回路として動作する。
【0051】
第1クランプ回路32及び第2クランプ回路34の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0052】
また、NMOSトランジスタM41のゲート端子は、プリドライバ回路16の第1のプリドライバ240の出力端子に接続されている。第1のプリドライバ240は、ハイサイド側パワートランジスタとしてNMOSトランジスタM41のゲート電圧を得るためのブートストラップ回路を用いて構成されている。
【0053】
また、NMOSトランジスタM43のゲート端子は、プリドライバ回路16の第3のプリドライバ244の出力端子に接続されている。第3のプリドライバ244は、ハイサイド側パワートランジスタとしてN型MOSトランジスタM43のゲート電圧を得るためのブートストラップ回路を用いて構成されている。
【0054】
次に、第2の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置の動作について説明する。まず、制御回路20によって、プリドライバ回路16から駆動信号を出力させるように制御信号を出力する。プリドライバ回路16の第1のプリドライバ240〜第4のプリドライバ46から、ハイレベルとローレベルとからなるパルス波形の駆動信号が出力される。
【0055】
これらの駆動信号によって、NMOSトランジスタM41及びNMOSトランジスタM14のオン状態と、NMOSトランジスタM43及びNMOSトランジスタM12のオン状態とが交互に繰り返されるように、NMOSトランジスタM41、M12、M43、M14をオンオフして、上述したように、コイル12に対して、双方向の電流を交互に供給する。
【0056】
NMOSトランジスタM43からNMOSトランジスタM12に電流通電が行われているときに、コイル12に通電する電流方向を切り替えるために、NMOSトランジスタM43とNMOSトランジスタM12とを共にオフさせると、NMOSトランジスタM41、M12、M43、M14がオフとなる状態が生じる。その状態が生じると、NMOSトランジスタM12のドレイン電圧が急劇に上昇する。
【0057】
ここで、NMOSトランジスタM41、M12、M43、M14がオフ状態であるときに、制御回路20によって、スイッチング制御回路18からハイレベルの駆動信号を出力させ、NMOSトランジスタM23をオンさせる。
【0058】
これによって、PMOSトランジスタM24のゲート端子が、抵抗素子R21及びPMOSトランジスタM23を介して接地されるため、PMOSトランジスタM24がオンする。抵抗素子R21、R22、及びPMOSトランジスタM24によって、PMOSトランジスタM25、M35のゲート電圧がバイアスされる。
【0059】
この状態において、出力端子28における出力電圧が、電源電圧以下の近傍の電圧になると、PMOSトランジスタM25が導通するため、抵抗素子R23を介して、NMOSトランジスタM12のゲート電圧をバイアスする。これによって、NMOSトランジスタM12がオンし導通する。そして、コイル12からのモータ電流を、NMOSトランジスタM12を介して接地側に流すことができ、出力電圧を、電源電圧以下であって、かつ、電源電圧に近い電圧にクランプすることができる。
【0060】
また、NMOSトランジスタM41からNMOSトランジスタM14に電流通電が行われているときに、コイル12に通電する電流方向を切り替えるために、NMOSトランジスタM41とNMOSトランジスタM14とを共にオフさせると、NMOSトランジスタM41、M12、M43、M14が、共にオフとなる状態が生じる。
【0061】
上述したように、NMOSトランジスタM41、M12、M43、M14がオフ状態であるときに、制御回路20によって、スイッチング制御回路18からハイレベルの駆動信号を出力させ、NMOSトランジスタM23をオンさせる。また、トランジスタM24がオンし、抵抗素子R21、R22、及びPMOSトランジスタM24によって、PMOSトランジスタM25、M35のゲート電圧がバイアスされる。
【0062】
この状態において、出力端子30における出力電圧が、電源電圧以下の近傍の電圧になると、PMOSトランジスタM35が導通するため、抵抗素子R33を介して、NMOSトランジスタM14のゲート電圧をバイアスする。これによって、NMOSトランジスタM14が導通する。そして、コイル12からのモータ電流を、NMOSトランジスタM14を介して接地側に流すことができ、出力電圧を、電源電圧以下であって、かつ、電源電圧に近い電圧にクランプすることができる。
【0063】
また、電源電圧が変化しても、以上のように動作することにより、出力端子28又は30における出力電圧を、変化後の電源電圧以下であって、かつ、電源電圧に近い電圧にクランプすることができる。
【0064】
以上説明したように、第2の実施の形態に係るブラシレスモータ駆動装置によれば、クランプ回路によって、出力端子における出力電圧及び電源電圧を入力とし、出力電圧が、電源電圧に対応する近傍電圧であるときに、接地側のNMOSトランジスタをオンさせることにより、出力電圧を電源電圧の近傍にクランプすることができるため、電源電圧が変化しても、出力電圧を適切な電圧にクランプすることができる。
【0065】
また、電源電圧によらず、出力電圧が電源電圧程度にクランプされるため、電源へ回生電流が流れず、電源のリップル成分をなくすことができる。
【0066】
なお、上記の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、インバータ回路を用いたHブリッジ回路、又はNMOSトランジスタの直列回路を用いたHブリッジ回路を用いて、ブラシレスモータ駆動用電圧を生成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の回路構成により、駆動用電圧を生成してもよい。この場合にも、出力端子の電圧と電源電圧をクランプ回路に入力し、出力電圧が電源電圧の近傍になるときに、接地側のスイッチング素子をオンさせて、モータからの電圧を接地側に逃がすようにクランプ回路を構成すればよい。
【0067】
また、PMOSトランジスタやNMOSトランジスタを用いたスイッチング素子群によって、駆動用電圧生成回路を構成した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、バイポーラトランジスタやサイリスタを用いたスイッチング素子群によって、駆動用電圧生成回路を構成してもよい。
【0068】
また、クランプ回路の回路構成が、上記の実施の形態のものに限定されるものではない。例えば、第1クランプ回路及び第2クランプ回路における電源電圧の入力を共通とせずに、第2クランプ回路においても、第1クランプ回路と同様に、電源電圧を入力させるように構成しても良い。この場合には、第1クランプ回路の抵抗素子R22、PMOSトランジスタM24、抵抗素子R21、及びPMOSトランジスタM23の直列回路と同様の回路を、第2クランプ回路にも設ければよい。
【符号の説明】
【0069】
10 ブラシレスモータ駆動装置
12 コイル
14、214 駆動用電圧生成回路
16 プリドライバ回路
18 スイッチング制御回路
20 制御回路
22 第1インバータ回路
24 第2インバータ回路
26、226 Hブリッジ回路
28、30 出力端子
32 第1クランプ回路
34 第2クランプ回路
222 第1直列回路
224 第2直列回路
M11、M13 PMOSトランジスタ
M12、M14、M41、M43 NMOSトランジスタ
VDD 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が、ブラシレスモータが有する巻き線の一端に接続された出力端子に接続され、かつ、他端が接地された接地側スイッチング素子を含むスイッチング素子群を備え、前記スイッチング素子群がオンオフすることにより、電源電圧から、前記ブラシレスモータ駆動用の電圧を生成し、前記巻き線に印加する駆動用電圧生成回路と、
前記駆動用電圧生成回路のスイッチング素子群をオンオフさせる駆動制御回路と、
前記出力端子における出力電圧及び前記電源電圧に基づいて、前記出力電圧が、前記電源電圧に対応する電圧以下となるように前記接地側スイッチング素子をオンオフさせるクランプ回路と、
を含むブラシレスモータ駆動回路。
【請求項2】
前記駆動用電圧生成回路は、前記スイッチング素子群として、ソース端子から電源電圧が供給されるP型MOSFET及びソース端子が接地されたN型MOSFETを直列に接続し、かつ、前記P型MOSFET及び前記N型MOSFETの接続点を前記出力端子と接続したインバータ回路を含み、
前記クランプ回路は、前記出力電圧及び前記電源電圧を入力とし、前記出力電圧が、前記電源電圧に対応する電圧であるときに、前記N型MOSFETをオンさせる請求項1記載のブラシレスモータ駆動回路。
【請求項3】
前記駆動用電圧生成回路は、前記スイッチング素子群として、ドレイン端子から電源電圧が供給される第1のN型MOSFET及びソース端子が接地された第2のN型MOSFETを直列に接続し、前記第1のN型MOSFET及び前記第2のN型MOSFETの接続点を前記出力端子と接続した直列回路を含み、
前記クランプ回路は、前記出力電圧及び前記電源電圧を入力とし、前記出力電圧が、前記電源電圧に対応する電圧であるときに、前記第2のN型MOSFETをオンさせる請求項1記載のブラシレスモータ駆動回路。
【請求項4】
前記駆動用電圧生成回路を、前記インバータ回路及び前記出力端子を各々2つ含み、一方のインバータ回路における前記接続点が接続された一方の出力端子を、前記巻き線の一端に接続し、他方のインバータ回路における前記接続点が接続された他方の出力端子を、前記巻き線の他端に接続したHブリッジ回路とし、
前記クランプ回路は、前記一方のインバータ回路に対して、前記一方の出力端子における出力電圧及び前記電源電圧を入力とし、前記出力電圧が、前記電源電圧に対応する電圧であるときに、前記一方のインバータ回路のN型MOSFETをオンさせ、前記他方のインバータ回路に対して、前記他方の出力端子における出力電圧及び前記電源電圧を入力とし、前記出力電圧が、前記電源電圧に対応する電圧であるときに、前記他方のインバータ回路のN型MOSFETをオンさせる請求項2記載のブラシレスモータ駆動回路。
【請求項5】
前記駆動用電圧生成回路を、前記直列回路及び前記出力端子を各々2つ含み、一方の直列回路における前記接続点が接続された一方の出力端子を、前記巻き線の一端に接続し、他方の直列回路における前記接続点が接続された他方の出力端子を、前記巻き線の他端に接続したHブリッジ回路とし、
前記クランプ回路は、前記一方の直列回路に対して、前記一方の出力端子における出力電圧及び前記電源電圧を入力とし、前記出力電圧が、前記電源電圧に対応する電圧であるときに、前記一方の直列回路の第2のN型MOSFETをオンさせ、前記他方の直列回路に対して、前記他方の出力端子における出力電圧及び前記電源電圧を入力とし、前記出力電圧が、前記電源電圧に対応する電圧であるときに、前記他方の直列回路の第2のN型MOSFETをオンさせる請求項3記載のブラシレスモータ駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−226778(P2010−226778A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67882(P2009−67882)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】