説明

ブラシ洗浄方法、半導体の製造方法及びブラシ洗浄装置

【課題】ウエハに付着した不純物を取り除くために用いるブラシをきれいに保つことを目的とする。
【解決手段】ブラシ洗浄装置16は、上部の開いた筒状の囲い23の内壁に、噴射口24を設けている。この噴射口24は、超音波振動子25を備えた給水管26が接続し、超音波振動子25の振動によって超音波が与えられた水を吹き出す。この水は、超音波によっていわゆるキャビテーションを起こしており、この水をブラシ部17に吹き付けることでブラシ毛の汚れを洗い流すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造方法に関し、特にウエハの洗浄に用いたブラシを洗浄するブラシ洗浄方法、及びそれに用いるブラシ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程には、外径150mm〜300mmの円盤形状のシリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)上に、同一のデバイスを複数形成するウエハ処理(いわゆる「前工程」)が含まれる。このウエハ処理には、ウエハに付着した不純物を取り除いて歩留まりを良くするためのウエハ洗浄工程が組み込まれている。このウエハ洗浄としては、ウエハをブラッシングにより洗浄するブラシスクラビング方式が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
このブラシスクラビング方式によってウエハを洗浄する場合、ブラシにはウエハから転移した不純物が付着するため、その都度ブラシを洗浄してきれいに保つ必要があり、ブラシに純水を吹き付けるなどして不純物を取り除いていた。
【特許文献1】特開平11−168079号公報
【特許文献2】特開2004−273530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、純水の吹付けなどによるブラシの洗浄では、ブラシに転移して付着した不純物を十分に取り除くことはできず、そのブラシを用いたウエハのブラッシングでは、ウエハに不純物を再付着させたりウエハに傷を付けたりすることとなり、歩留まりの向上に限界があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、ウエハに付着した不純物を取り除くために用いるブラシをきれいに保つことのできるブラシ洗浄装置、並びにブラシ洗浄方法、及びそれを製造工程に組み込んだ半導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のブラシ洗浄方法は、上記課題を解決するためのものであり、ウエハをブラッシングにより洗浄するウエハ洗浄が終了した後に、そのウエハ洗浄に用いたブラシをウエハ上から退避させて洗浄するブラシ洗浄方法であって、ブラシに対して超音波を与えた水を吹き付けて、ブラシ毛の汚れを洗い流すことを特徴とする。
【0007】
または、ウエハをブラッシングにより洗浄するウエハ洗浄が終了した後に、そのウエハ洗浄に用いたブラシをウエハ上から退避させて洗浄するブラシ洗浄方法であって、洗浄用容器に溜めた水にブラシを浸し、その水に超音波を与えてブラシ毛の汚れを洗い流すことを特徴とする。
【0008】
なお、洗浄用容器に溜めた水を所定時間毎に入れ替えることが好ましい。
【0009】
本発明の半導体の製造方法は、製造工程に上記ブラシ洗浄方法を組み込んでいる。
【0010】
本発明のブラシ洗浄装置は、ウエハの洗浄に用いたブラシを洗浄するブラシ洗浄装置であって、ブラシをウエハ上から退避させるブラシ移動手段と、ウエハ上から退避されたブラシに向けて水を吹き出す放水手段と、ブラシに向けて吹き出す水に超音波を与える超音波振動子と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
または、ウエハの洗浄に用いたブラシを洗浄するブラシ洗浄装置であって、水を溜める洗浄用容器と、ブラシをウエハ上から退避させてそのブラシを洗浄用容器に溜めた水に浸すブラシ移動手段と、洗浄用容器に溜めた水に超音波を与える超音波振動子と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
なお、洗浄用容器に給水する給水手段と、洗浄用容器から排水する排水手段と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のブラシ洗浄方法によれば、ブラシに対して超音波を与えた水を吹き付けて、ブラシ毛の汚れを洗い流すことより、そのブラシによってウエハをブラッシングしてもウエハに不純物を再付着させたりウエハに傷を付けたりすることはなく、半導体の製造において歩留まりの向上につながる。
【0014】
または、洗浄用容器に溜めた水にブラシを浸し、その水に超音波を与えてブラシ毛の汚れを洗い流すことより、その洗浄に用いる装置の構造を複雑にすることなく、且つ水の使用量を少なくして上記と同様の効果を得ることができる。
【0015】
また、洗浄用容器に溜めた水を所定時間毎に入れ替えることより、不純物が洗浄用容器内に溜まることはなく、ブラシの洗浄効果を一定に保つことができる。
【0016】
本発明の半導体の製造方法によれば、製造工程に上記ブラシ洗浄方法を組み込んでいることより、歩留まり良く半導体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、半導体の製造方法について図1の半導体の製造工程図を用いて説明する。半導体の製造工程は、周知であるように、ウエハに処理を施して回路形成を行う前工程と、そのウエハからチップを切り出しパッケージ化する後工程との2つに大きく分けることができる。前工程は、基板工程(S1)、配線工程(S2)及びウエハ検査工程(S3)から構成される。
【0018】
各工程において処理が施されるウエハは、高純度単結晶シリコンのインゴットを外径150mm〜300mmの円盤形状に切り落とすことで準備される。そのウエハに対して、先ず、基板工程(S1)において成膜やフォトリソグラフィやイオン注入を行う。さらに、配線工程(S2)において配線構造を形成する。以上により、ウエハ上に同一のデバイスが複数形成されることとなる。最後に、ウエハ検査工程(S3)において各デバイスに電気を通して機能特性の良否を判定する。なお、各工程(S1、S2)に純水などを用いてウエハを洗浄するウエハ洗浄工程を組み込み、不純物による歩留まりの低下を抑えている。
【0019】
後工程は、ダイシング工程(S4)、マウンティング工程(S5)、ボンディング工程(S6)、モールド工程(S7)、リード加工工程(S8)、マーキング工程(S9)、及びチップ検査工程(S10)から構成される。
【0020】
先ず、ダイシング工程(S4)においてウエハをデバイスごとに切断してチップにする。切断には、ダイヤモンド粒子が貼付した円形刃などが用いられる。続いて、マウンティング工程(S5)においてチップをフレームに固定し、ボンディング工程(S6)においてチップをフレームに電気的に接続する。そして、モールド工程(S7)においてチップをフレームと一緒に樹脂で封止する。さらに、リード加工工程(S8)においてリード(導線)を成型し、マーキング工程(S9)においてパッケージ表面に製品情報などをマークする。最後に、チップ検査工程(S10)においてパッケージ化されたチップに電気を通して機能特性を調べる。このように、前工程及び後工程を経ることで半導体は製造される。
【0021】
以下、前工程に組み込むウエハ洗浄工程に用いる第1実施形態のウエハ洗浄装置について図面を参照しながら説明する。図2に示すように、ウエハ洗浄装置11は、ウエハ12に付着した不純物を取り除くための装置であり、ウエハ12をブラッシングするブラシ装置13と、ウエハ12を支持して回転させる支持台14と、ウエハ12に純水を吹き付けるノズル15と、ブラシ装置13を洗浄するブラシ洗浄装置16とから構成される。
【0022】
ブラシ装置13は、多数のブラシ毛が鉛直下方に向けて植設され、その鉛直軸回りに回転するブラシ部17と、ブラシ部17を先端に備えたアーム18と、アーム18を支持台14とブラシ洗浄装置16との間を旋回させる旋回軸19と、旋回軸19の回転を支持する軸受け20と、から構成される。旋回軸19は、旋回の他に、上下方向の伸縮をしてブラシ部17の高さを調節する。
【0023】
支持台14は、その鉛直軸回りに回転する円柱形状の台座21と、台座21上面に複数設けられ、ウエハ12の裏面に吸着してウエハ12を固定する支持部材(図示せず)とから構成されている。ウエハ12を支持台14に固定して、支持台14を回転させて且つブラシ装置13のアーム18を旋回させることでウエハ12の表面(おもて面)全体をブラッシングすることができる。
【0024】
ブラシ洗浄装置16は、図3にも示すように、上部の開いた筒状の囲い23の内壁に、噴射口24を備えている。この噴射口24は、超音波振動子25を備えた給水管26が接続し、超音波振動子25の振動によって超音波が与えられた水を吹き出す。超音波が与えられた水は、いわゆるキャビテーションを起こしている。キャビテーションとは、与えられる超音波により圧力変動を起こし、溶け込んでいた空気が低圧力になった際に気泡として発生し、その気泡が圧力変動により潰れて大きな圧力を生じさせる現象のことをいう。この水をブラシ部17に吹き付けることでブラシ毛の汚れを洗い流すことができる。また、囲い23には排水管27が接続し、水を排出するので囲い23の内側に水を溜めることはない。
【0025】
以下、ブラシ洗浄装置16の作用について説明する。ウエハ12のブラッシングを終えたブラシ部17のブラシ毛には、ウエハ12から転移した不純物が付着している。そのブラシ部17をブラシ洗浄装置16の囲い23の内側に移動させる。そして、ブラシ部17に対して噴射口24から超音波を与えた水を吹き付ける(図2、3)。この水は、超音波によって気泡を生じたキャビテーションを起こしており、純水の場合と比べて不純物を確実に洗い流すことができ、ブラシ部17をきれいに保つことができる。
【0026】
以下、第2実施形態のウエハ洗浄装置について図面を参照しながら説明する。図4に示すように、ウエハ洗浄装置28は、ウエハ12に付着した不純物を取り除くための装置であり、ウエハ12をブラッシングするブラシ装置13と、ウエハ12を支持して回転させる支持台14と、ウエハ12に純水を吹き付けるノズル15と、ブラシ装置13を洗浄するブラシ洗浄装置29とから構成される。
【0027】
ブラシ洗浄装置29は、図5にも示すように、上部の開いた筒状の水を溜める容器30に、超音波振動子31を備えている。また、容器30の上方には水を注ぐための給水管32が設けられている。超音波振動子31は、振動することで容器30に溜められた水33に超音波を与える。超音波が与えられた水33は、いわゆるキャビテーションを起こしている。ブラシ部17を容器30に溜めた水33に浸し、その水33に超音波振動子31によって超音波を与えることで、ブラシ毛の汚れを洗い流すことができる。また、容器30には排水管34が接続し、排水管34の先に設けられているバルブ(図示せず)を開くことで、容器30内の水33を排出することができる。なお、第1実施形態のウエハ洗浄装置11と同じ構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
以下、ブラシ洗浄装置29の作用について説明する。ウエハ12のブラッシングを終えたブラシ部17のブラシ毛には、ウエハ12から転移した不純物が付着している。そのブラシ部17をブラシ洗浄装置16の容器30に溜まった水33に浸す。そして、超音波振動子31を振動させてブラシ部17を浸した水33に超音波を与える(図4、5)。この水は、超音波によって気泡を生じたキャビテーションを起こしており、純水の場合と比べて不純物を確実に洗い流すことができ、ブラシ部17をきれいに保つことができる。ブラシ部17の洗浄が終わると、バルブを開いて排水管34から水33を排出し、バルブを閉じた後に給水管32から新たな水33を注いで、容器30内の水33を入れ替える。これにより、容器30内に不純物が溜まることはなく、ブラシ部17の洗浄効果を一定に保つことができる。
【0029】
なお、上記各実施形態において、ウエハ12の表面(おもて面)をブラッシングする場合を例に説明したが、これに限定されるのではなく、ウエハ12の裏面をブラッシングするのでも構わない。この場合、ウエハ12の支持台への固定は、ウエハ12の側部を保持するようにして、表面(おもて面)に傷が付かないようにする必要がある。
【0030】
なお、上記第2実施形態において、ブラシ部17の洗浄が終わる毎に容器30内の水を入れ替える場合を例に説明したが、これに限定されるのではなく、1回のブラシ部17の洗浄途中において複数回入れ替えを行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】半導体の製造工程図である。
【図2】本発明の第1実施形態のブラシ洗浄装置を組み込んだウエハ洗浄装置の外観斜視図である。
【図3】第1実施形態のブラシ洗浄装置の横断面図である。
【図4】第2実施形態のブラシ洗浄装置を組み込んだウエハ洗浄装置の外観斜視図である。
【図5】第2実施形態のブラシ洗浄装置の横断面図である。
【符号の説明】
【0032】
11、28 ウエハ洗浄装置
12 ウエハ
13 ブラシ装置
14 支持台
15 ノズル
16、29 ブラシ洗浄装置
17 ブラシ部
18 アーム
19 旋回軸
20 軸受け
21 台座
23 囲い
24 噴射口
25、31 超音波振動子
26、32 給水管
27、34 排水管
30 容器
33 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハをブラッシングにより洗浄するウエハ洗浄が終了した後に、前記ウエハ洗浄に用いたブラシを前記ウエハ上から退避させて洗浄するブラシ洗浄方法において、
前記ブラシに対して超音波を与えた水を吹き付けて、ブラシ毛の汚れを洗い流すことを特徴とするブラシ洗浄方法。
【請求項2】
ウエハをブラッシングにより洗浄するウエハ洗浄が終了した後に、前記ウエハ洗浄に用いたブラシを前記ウエハ上から退避させて洗浄するブラシ洗浄方法において、
洗浄用容器に溜めた水に前記ブラシを浸し、前記水に超音波を与えてブラシ毛の汚れを洗い流すことを特徴とするブラシ洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄用容器に溜めた前記水を所定時間毎に入れ替えることを特徴とする請求項2記載のブラシ洗浄方法。
【請求項4】
前記ブラシは、多数のブラシ毛が鉛直下方に向けて植設され、鉛直軸回りに回転する回転ブラシであることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか記載のブラシ洗浄方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれか記載のブラシ洗浄方法を製造工程に組み込んだ半導体の製造方法。
【請求項6】
ウエハの洗浄に用いたブラシを洗浄するブラシ洗浄装置において、
前記ブラシをウエハ上から退避させるブラシ移動手段と、
前記ウエハ上から退避された前記ブラシに向けて水を吹き出す放水手段と、
前記ブラシに向けて吹き出す前記水に超音波を与える超音波振動子と、を備えたことを特徴とするブラシ洗浄装置。
【請求項7】
ウエハの洗浄に用いたブラシを洗浄するブラシ洗浄装置において、
水を溜める洗浄用容器と、
前記ブラシをウエハ上から退避させて前記ブラシを前記洗浄用容器に溜めた前記水に浸すブラシ移動手段と、
前記洗浄用容器に溜めた前記水に超音波を与える超音波振動子と、を備えたことを特徴とするブラシ洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄用容器に給水する給水手段と、前記洗浄用容器から排水する排水手段と、を備えたことを特徴とする請求項7記載のブラシ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−317703(P2007−317703A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142595(P2006−142595)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】