説明

ブラシ状プローブ及び電気的処理装置

【課題】表面が平坦でない電極や傷つきやすい電極や可撓性のある電極もしくは電極支持体に対して、表面を傷つけずに電気的に確実に接触させる。
【解決手段】本発明のブラシ状プローブは、導電性を有し電気的処理対象物の電極に臨ませて配設されるプローブ基材と、当該プローブ基材に複数植毛されて前記電極に接触される可撓性を有する導電性線材とを備え、前記各導電性線材を一方向に傾斜させるように、前記プローブ基材を前記相手側電極に対して斜めに移動させながら、前記各導電性線材を相手側電極に接触させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の短絡部除去等のために太陽電池の電極に電気的に接触されるブラシ状プローブ及び電気的処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルの製造段階において電極層、光電変換層などの成膜時に層内、あるいは層間などにパーティクルが混入したり、ピンホールが生じたりさまざまの構造欠陥から上下の電極が局所的に短絡することがある。また、基板上に光電変換層を積層形成した後、レーザー光線でスクライブ溝を形成して多数の太陽電池セルに分割する際に、このスクライブ溝形成が不完全のため局所的短絡が発生することもある。
【0003】
このような欠陥は、太陽電池セルの発電能力の低下や太陽電池パネル全体の光電変換効率の低下をもたらすため、これら短絡等の構造欠陥部分を検出して除去することにより、個々の太陽電池セルの発電能力を修復し、太陽電池パネル全体の発電効率を回復する必要がある。そのために太陽電池セルの光電変換層を挟んだ上下の電極間に逆バイアス電圧を印加し、短絡部に電流によりジュール熱を生じさせて短絡部の欠陥を焼損することにより除去する。具体的には、ガラス等の光透過性基板を表面とする太陽電池の裏面電極が露出している、スクライブ溝を挟んで互いに隣接する2つの太陽電池セルの裏面電極にそれぞれ接触するプローブを介して、各太陽電池セル間に逆バイアス電圧を印加することで、短絡部等の欠陥を除去する。一般的に太陽電池セルに設けられた金属銀や金属アルミニウムなどが用いられる裏面電極は塗布や蒸着などにより薄膜として設けられているため、その長手方向に抵抗を持ち、所定の逆バイアス電圧が印加されても太陽電池セル間に存在する短絡部の位置によっては裏面電極の抵抗による電圧損失によって短絡部に充分な逆バイアス電圧が印加されない事がある。そのためいかなる位置に短絡部があろうとも略同レベルの逆バイアス電圧が印加されるように、特許文献5のごとく裏面電極の長手方向に沿って、略等間隔に複数の電圧印加用プローブが配置されることが提案されている。しかしながら、1枚の太陽電池パネルの大きさは、縦横共に1m強の長さを有するものが一般的であり、したがって太陽電池セルの長手方向の長さも同様であり、このセルに接触するために配置されるプローブの最も離間しているプローブ間の距離も太陽電池パネルの大きさに応じ、この例では略1mにも及ぶこととなる。
【0004】
図1において、逆バイアス電圧を印加すべき対象の太陽電池セル1に対し、複数のプローブピンが配置されたプローブユニット2が長手方向に傾斜していた場合の各プローブピン例えば3a、3bの太陽電池パネル1への接触は、最下に位置するプローブピン3aが最初に接触してから時間をおいて、最上に位置するプローブピン3bが遅れて接触する。この時最下に位置するプローブピン3aが最初に接触してからも、プローブユニット2には3a以外の全てのプローブピン、特に最上に位置するプローブピン3bが接触するまで依然として下降を続けており、最初に太陽電池セル表面に接触した、最下に位置するプローブピン3aなどは太陽電池パネル1に対し非垂直に角度を以って接触しているため、継続するプローブユニット2の下降動作により破損し、あるいはその力で撓むことになる。破損を免れたとしても角度を以って非垂直に接触したプローブピン3aは、それよりも上方側に位置するプローブピン例えば3bが接触するまでプローブユニット2が下降を続けており、その過程で、プローブユニット2が太陽電池パネル1の平面に倣って平行状態になろうとすることで、このプローブピン3bの接触点を基点として、プローブピン3aに偶力を与える。このような偶力の作用による撓みの是正時に、プローブピン3aの先端は接触している太陽電池セルの裏面電極表面を擦り、損傷を与えることになる。
【0005】
このような複数のプローブピンを用いず電極に接触させる方法としては、例えば特許文献1の太陽電池の製造装置がある。この太陽電池の製造装置では、複数並んだ帯状の太陽電池セルの長手方向の全域に接することの出来るような電極を介して、隣接する太陽電池セル間に逆バイアス電圧を印加する。前記電極としては、ローラ状の電極が用いられている。このローラ状電極は、駆動装置で帯状の太陽電池セルの長手方向に回転接触しながら電圧印加を行う。
【0006】
また、特許文献1には、太陽電池セルに導電性のブラシを電極として用いる例も開示されている。この電極は、駆動装置で帯状の太陽電池セルの長手方向に亘って摺動しながら電圧印加を行う。
【0007】
また、特許文献2には、回転ブラシを用いた装置が記載されている。この回転ブラシは、回転しながらカードに接触して除電する方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、静電潜像の静電コントラストを調整するためのブラシ帯電器が開示されている。この特許文献3ではブラシ帯電器をドラム状感光体の表面に接触または非接触で近接させるなどの方法で、電圧印加を行い静電潜像の静電コントラストを調整するものである。
【0009】
また、特許文献4には、トナーを定着させるための定着ローラと、この定着ローラに接触する加圧ローラと、前記加圧ローラの表面に付着したトナーをクリーニングするクリーニング部材とを備え、前記クリーニング部材として除電用のブラシを用いたものが記載されている。これらは全ては特許文献5と同様、より改良された形で、対象物への均一の電圧印加を目的として用いられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−21437号公報
【特許文献2】実開平6−83351号公報
【特許文献3】特開昭57−178267号公報
【特許文献4】特開平5−40432号公報
【特許文献5】特開平10−4202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したような従来の装置では、次のような問題がある。
【0012】
特許文献1で開示された方法では、フィルム状太陽電池等の可撓性のある太陽電池では、ローラ状電極が接触すると、太陽電池が撓んだり歪んだりしてしまう。このために接触圧を低減すると、電気的接触が不確実になってしまう。
【0013】
また、被接触電極の表面が、平坦でない場合は、ローラ状電極が場所によって点接触になったり接触不良を起こしたりする。
【0014】
また、軟材料による電極表面への損傷がローラ状電極の接触回動によって増大する懸念がある。
【0015】
また、ブラシを電極として用いる場合、電極表面を摺動しながら電気的に接触するブラシの先端が凹凸を有する電極表面では均一な接触が確保出来ず、不連続の接触による電気ノイズが発生して検査精度の悪化を招いたり、放電劣化を生じたり、軟材料による電極表面へブラシが刺創するなどの問題を生ずる。
【0016】
また、特許文献2では、回転ブラシを除電のために使用しているが、この回転ブラシを用いて相手側電極に検査信号やバイアス電圧を印加する場合は、前記特許文献1と同様である。即ち、ブラシはその先端が電極の表面を摺動しながら電圧を印加するが、電極の表面の凹凸によって、ブラシ先端が均一に定常的に接触されず、電気ノイズが発生して検査精度の悪化を招いたり放電劣化を生じたり、接触不良を惹起する懸念がある。
【0017】
また、特許文献3及び特許文献4も同様の問題を生ずる。
【0018】
本発明は、特に可撓性のある電極に対しての確実な電気的接触を行ない、また表面に凹凸形状を有し、あるいは損傷を受けやすい軟材料からなる電極に対しても表面に損傷を与えることなく電気的接触を確実に行うことができるブラシ状プローブ及び電気的処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明のブラシ状プローブは、相手側電極に対して電圧印加や電流測定等によって電気的処理を行うために相手側電極に電気的に接触するプローブであって、導電性を有し電気的処理対象物の電極に臨ませて配設されるプローブ基材と、当該プローブ基材に複数植毛されて前記電極に接触される可撓性を有する導電性線材とを備え、前記各導電性線材を一方向に傾斜させるように、前記プローブ基材を前記相手側電極に対して斜めに移動させながら、前記各導電性線材を相手側電極に接触させることを特徴とする。
【0020】
本発明の電気的処理装置は、前記ブラシ状プローブを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
前記ブラシ状プローブの各導電性線材が、一方向に傾斜した状態で電極に接触するため、表面が平坦でない電極や傷つきやすい軟材料からなる電極に対しても、表面に損傷を与えることなく電気的接触を確実に行うことができる。また、可撓性のある電極に対しても電気的接触を確実に行うことができる。さらにその接触を安定的に維持した状態で検査を行ない、あるいは電圧を印加するので電極に対する導電性ブラシの接触状態が変化することがないので、接触が変動することによる電気ノイズの発生や放電スパークなどを防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のプローブを示す側面図である。
【図2】本発明を適用した太陽電池短絡部除去装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明を適用したブラシ状プローブを示す斜視図である。
【図4】本発明を適用したブラシ状プローブを太陽電池セルの電極に接触させる動作を示す説明図である。
【図5】本発明を適用したブラシ状プローブを配列方向に移動させて太陽電池セルの電極に接触させた状態を示す説明図である。
【図6】本発明を適用したブラシ状プローブを長手方向に移動させて太陽電池セルの電極に接触させた状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第1変形例に係るブラシ状プローブを示す側面図である。
【図8】本発明の第2変形例に係るブラシ状プローブを示す正面図である。
【図9】本発明の第3変形例に係るブラシ状プローブを示す正面図である。
【図10】本発明の第4変形例に係るブラシ状プローブを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用したブラシ状プローブを適用した電気的処理装置について、添付図面を参照しながらその態様と効果を説明する。前記電気的処理装置として、ここでは太陽電池短絡部除去装置を例に説明する。
【0024】
本発明のブラシ状プローブを適用した太陽電池短絡部除去装置を、薄膜太陽電池に適用した一実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
実施形態の太陽電池短絡部除去装置は、薄膜太陽電池が短絡部を有するものか否かを判別すると共に、短絡部を有している場合に、逆バイアス電圧を印加して短絡部を除去するものである。図2は、太陽電池短絡部除去装置の概略構成を示すブロック図である。図2において、太陽電池短絡部除去装置30は、短絡部除去対象太陽電池搬送機構20、プローブユニット21、太陽電池セルの搬送方向先端側から数えて第1番目、第3番目、第5番目など奇数位置のセルと、同様に第2番目、第4番目、第6番目など偶数位置のセルを選択する切り替えスイッチ(以下奇偶切替スイッチ群と呼ぶ)24、奇数位置用の短絡部除去制御部25、偶数位置用の短絡部除去制御部26、及び、情報処理部27を有する。プローブユニット21は、複数のブラシ状プローブ22と、全てのブラシ状プローブ22を取り付けているプローブユニット基板23とを有する。
【0026】
短絡部除去対象太陽電池搬送機構20は、例えば、搬送モータや搬送コンベア等からなり、情報処理部27の制御下で、薄膜太陽電池パネル1Bを短絡部除去処理位置まで搬送して短絡部除去を行ない、短絡部除去処理の終了後に、薄膜太陽電池パネル1Bを次工程へ搬送するものである。
【0027】
プローブユニット21は、情報処理部27の制御下で、太陽電池パネル1Bに対し相対的に上下動可能なものである。プローブユニット21は、短絡部除去対象太陽電池搬送機構20が薄膜太陽電池パネル1Bを短絡部除去処理位置へ搬入しているときなどにおいては、太陽電池パネル1Bに対して相対的に上方の待機位置にあり、薄膜太陽電池パネル1Bの搬送に支障しない。プローブユニット21は、短絡部除去処理時に、薄膜太陽電池1Bに相対的に下降接近してブラシ状プローブ22を薄膜太陽電池パネル1Bの裏面電極に電気的に接続させるものである。
【0028】
ブラシ状プローブ22は、短絡部除去処理時に、全てのブラシ状プローブ22はいずれか1つの太陽電池セル6の裏面電極と電気的に接続される。ブラシ状プローブ22の具体的構成は後述する。なお、図2においては、図示の簡略化のために、太陽電池セル6の積層構造の図示を省略しており、また、太陽電池セル6,6間の直列接続構造の図示も省略している。
【0029】
太陽電池セルのガラス基板側透明電極と一方の側の隣接した太陽電池セルの裏面電極は電気的に接続されているので、奇数位置用の短絡部除去制御部25はそれぞれ、薄膜太陽電池パネル1Bの搬送方向先端側から数えて奇数番目(例えば6−1)の位置の太陽電池セル6の裏面電極とその次の偶数番目(例えば6−2)の位置の太陽電池セル6の裏面電極との間に逆バイアス電圧を印加して該奇数番目の位置(例えば6−1)の太陽電池セル、あるいは該奇数番目(例えば6−1)の太陽電池セルとその次の偶数番目(例えば6−2)の太陽電池セルの間のスクライブ溝の短絡部を除去するものである。すなわち、例えば奇数位置用の1番目の短絡部除去制御部25−1は、薄膜太陽電池パネル1Bの搬送方向先端側から数えて第1番目の位置の太陽電池セル6−1の裏面電極と第2番目の位置の太陽電池セル6−2の裏面電極との間に逆バイアス電圧を印加して短絡部を除去するものである。同様に偶数位置用の短絡部除去制御部26は、薄膜太陽電池パネル1Bの搬送方向先端側から数えて偶数番目(例えば6−2)の位置の太陽電池セル6の裏面電極とその次の奇数番目(例えば6−3)の位置の太陽電池セル6の裏面電極との間に逆バイアス電圧を印加して該偶数番目の位置(例えば6−2)の太陽電池セル、あるいは該偶数番目(例えば6−2)の太陽電池セルとその次の奇数番目(例えば6−3)の太陽電池セルの間のスクライブ溝の短絡部を除去するものである。すなわち、例えば偶数位置用の1番目の短絡部除去制御部26−1は、薄膜太陽電池パネル1Bの搬送方向先端側から数えて第2番目の位置の太陽電池セル6−2の裏面電極と第3番目の位置の太陽電池セル6−3の裏面電極との間に逆バイアス電圧を印加して短絡部を除去するものである。
【0030】
各短絡部除去制御部25,26は、短絡部が存在するか否かを確認した後に、短絡部を除去するものである。短絡部が存在するか否かの確認は、後述するように、所定の逆バイアス電圧を印加した際に流れる電流に基づいて判断する。そのため、各短絡部除去制御部25,26は、逆バイアス電圧の印加構成に加え、逆バイアス電圧印加時に流れる電流の検出構成も備えている。
【0031】
奇偶切替スイッチ群24は、情報処理部27の制御下で、ブラシ状プローブ22を奇数位置用の短絡部除去制御部25に接続させる状態と、ブラシ状プローブ22を偶数位置用の短絡部除去制御部25に接続させる状態とを切り替えるものである。
【0032】
情報処理部27は、まず、奇数位置用の短絡部除去制御部25による短絡部除去処理を実行させ、その後、偶数位置用の短絡部除去制御部26による短絡部除去処理を実行させる。各奇数位置用の短絡部除去制御部25による短絡部除去処理は順次平行して実行される。例えば、奇数位置用の1番目の短絡部除去制御部25−1が、第1番目の位置の太陽電池セル6−1と、第1番目の位置の太陽電池セル6−1と第2番目の位置の太陽電池セル6−2との間のスクライブ溝とを対象とした短絡部除去処理を実行し、次いで第2番目の短絡部除去制御部25−2が、第3番目の位置の太陽電池セル6−3と、第3番目の太陽電池セルと第4番目の位置の太陽電池セル6−4との間のスクライブ溝を対象とした短絡部除去処理を実行する如きである。各偶数位置用の短絡部除去制御部26による短絡部除去処理も、同様な方法で順次平行して実行される。ここでは、奇数位置を先行して該除去処理をすることを述べたが、奇数位置と偶数位置との短絡部除去を交互に実行するようにしても良い。また電源その他に充分な準備が出来、特定のセル間への逆バイアスの印加が他のセルに影響を与えないように電気的に隔離するならば、同時に複数のセルへの短絡部除去処理も実行できる。
【0033】
情報処理部27には、薄膜太陽電池1BのI−V特性から得られた短絡部除去に必要な電圧が入力されるようになされている。情報処理部27は、この入力された太陽電池短絡部除去電圧を、各ブラシ状プローブ22を介して、各太陽電池セル6の裏面電極5に印加して、短絡部を除去する。
【0034】
前記ブラシ状プローブ22は、図3に示すように、プローブ基材31と、導電性線材32とを備えて構成されている。
【0035】
プローブ基材31は、植毛された導電性線材32を介して、電気的処理対象物である太陽電池セル6の裏面電極5に電気的に接触される部材である。ここではプローブ基材31は、導電性を有する平板材で構成され、植毛されたすべての導電性線材32と電気的に導通している。プローブ基材31は、四角形の平板状に形成されて、太陽電池セル6の裏面電極5に対向して配設されている。プローブ基材31は、導電性部材で構成されたり、表面に導電性部材をコーティングしたりして導電性を持たせている。
【0036】
導電性線材32は、プローブ基材31にほぼ均一に複数植毛されて前記裏面電極5に電気的に接触される線材である。なお、導電性線材32は、プローブ基材31に不均一に植毛される場合でも本発明を適用することができる。
【0037】
図4,5において導電性線材32は、弾性及び可撓性を有する線材で構成され、前記裏面電極5に対し矢印で示すように柔軟に撓ませながら接触させる。各導電性線材32は、すべて一方向に傾斜させられた状態になるよう前記裏面電極5の表面に接触することで、裏面電極5の表面に傷をつけ、あるいは刺創など損傷を与えることを防いでいる。即ち、導電性線材32を有するプローブ基材31を単純に傾斜させただけの状態で接触させても、導電性線材32の一部は裏面電極5の表面に垂直に近い角度で接触する可能性があるため、裏面電極5の表面への損傷等は避けられない。したがって各導電性線材32が矢印に示すように柔軟に撓ませられながら前記裏面電極5の表面に、一方向に傾斜した状態で接触するようにプローブ基材31を動作させることで、各導電性線材32が前記裏面電極5の表面に、損傷を与えることなく弱い圧力で確実に接触するようになる。
【0038】
さらに、前記裏面電極5の表面に反りや凹凸があっても、導電性線材32の先端が、その反りや凹凸に沿って撓むことが出来、かつ弾性によって弱い力で確実に押し付けて、前記裏面電極5の表面を傷つけずに、かつ確実に電気的接触を実現出来る。そして、すべての導電性線材32が一方向に傾斜した状態で撓むことで、全体として面接触に近い状態で接触するようになる。即ち、各導電性線材32の先端が、反りや凹凸のある面に追従して凹部にも凸部にも同様に接触して、全体として面接触に近い状態で接触する。
【0039】
導電性線材32としては、例えば、公知の可撓性の導電性繊維材料が使用可能である。この可撓性の導電性繊維材料の例としては、レーヨン繊維内にカーボン、グラファイト等を一様に分散させたもの等がある。この材料は、ある程度の弾性も有するため、柔軟に撓んで反りや凹凸に沿って曲がり、前記裏面電極5の表面全面に、弱い圧力で確実に接触出来る。
【0040】
次に、ブラシ状プローブ22の、軟材料からなる裏面電極5への接触動作について図4〜7により説明する。図5に示すように、ブラシ状プローブ22は、そのプローブ基材31を、複数の太陽電池セル6,6の配列方向(図4の左右方向)にやや傾斜させて、この配列方向に斜めに移動させながら、すべての導電性線材32を、一方向に傾斜した状態で裏面電極5に接触させる。これにより導電性線材32は各裏面電極に対しほとんど圧力を与えることなく柔軟に接触され電極5の表面への損傷を避け得る。なお、導電性線材32は数が多いので、一部の導電性線材32が一方向に傾斜しない場合もあり得るが、各導電性線材32の高さを揃えて、各導電性線材32の先端が裏面電極5に接触する高さを合わせることで、一方向に傾斜しない導電性線材32をほぼ又は完全に無くすることができる。
【0041】
また、裏面電極が比較的硬質の材料からなる場合、プローブ基材31を、水平に保った状態で接触させることも出来る。この場合、プローブ基材31を、太陽電池セル6に対し相対的に水平に保った状態で、配列方向に斜め下方に移動させながら接触させる。これによりプローブ基材31が保持する導電性線材32を、接触動作により一方向に傾斜、撓ませつつ裏面電極5に接触させる。
【0042】
さらに、装置構成上プローブ基材31を、その長手方向(前記配列方向と直行する方向)に移動させながら接触させることも出来る。この場合は、図6に示すように、プローブ基材31を、長手方向にやや傾斜させて、この長手方向に斜め下方に移動させながら、すべての導電性線材32を、一方向に傾斜させて、その状態で裏面電極5に接触させる。
【0043】
また前述の接触動作と同様に、プローブ基材31を、水平に保った状態で接触させることも可能である。この場合は、プローブ基材31を、水平に保った状態で、長手方向に斜めに移動させながら、すべての導電性線材32を一方向に傾斜させて、その状態で裏面電極5に接触させる。
【0044】
プローブ基材31の移動が停止した時点では、プローブ基材31は裏面電極5と平行になるように配設されて静止した状態になる。この静止した状態で、各導電性線材32は、一方向に傾斜した状態で導電性線材32の先端が撓まされ裏面電極5の表面に沿って接触される。
【0045】
前記プローブ基材31を、前記配列方向又は長手方向に傾斜させて、移動させる装置としては、公知の装置、方法を用いることができる。例えば、前記配列方向又は長手方向に配設されたレールに装着されたスライダーに前記プローブ基材31を取り付けて、プローブ基材31を配列方向又は長手方向に移動させる。また、前記レールを前記配列方向又は長手方向と直行する方向でかつ水平方向に延びる回転軸を中心に回動可能に支持する回動機構を備え、この回動機構で、前記レールを介してプローブ基材31の傾斜及び移動を調整する。
【0046】
このように、各導電性線材32が、前記裏面電極5の表面に、柔軟に撓みながら斜めに接触するため、裏面電極5に反りや凹凸等があるような平面性に劣る前記裏面電極5に対応することができる。即ち、各導電性線材32が、柔軟に撓みながら前記裏面電極5の表面に斜めに接触して静止することで、各導電性線材32の先端が裏面電極5の表面の反りや凹凸等にそれぞれ追従して変形するため、裏面電極5の表面が平坦でなくても、確実に電気的接触をさせることができる。この接触を安定的に維持した状態で検査を行ない、あるいは電圧を印加するので電極に対する導電性ブラシの接触状態が変化することがなく接触が変動することによる電気ノイズの発生や放電スパークなどを防ぐことが出来る。
【0047】
これにより、前記裏面電極5の表面に反りや凹凸等があっても、接触不良がなく、各導電性線材32の先端が、裏面電極5の表面の反りや凹凸等に沿って面接触に近い状態で接触して、確実に電気的接触をさせることができる。
【0048】
さらに、各導電性線材32は、柔軟に撓みながら前記裏面電極5に接触し、かつ静止した状態で斜めに接触することで、各導電性線材32が前記裏面電極5の表面に、弱い圧力で確実に接触することができるため、フィルム状太陽電池基板等のように、可撓性の基板の電池に対しても、確実に電気的接触をさせることができる。
【0049】
また、各導電性線材32は、その毛倒れ方向を一方向に揃えることで、隣の太陽電池セルの裏面電極5への接触を防止することができる。
【0050】
また、裏面電極5が、軟材料で構成される電極であっても、各導電性線材32が前記軟材料で構成される電極5の表面に、弱い圧力で確実に接触するので、表面を損傷することなく電気的接触を確実に行うことができる。
【0051】
[第一の変形例]
前記実施形態では、各導電性線材32を裏面電極5の表面に接触させるときに、プローブ基材31を斜めに移動させる等により、導電性線材32を、すべて一方向に傾斜した状態で静止して相手側の裏面電極5に接触させるように構成したが、図7に示すように、導電性線材33をプローブ基材34の下面全面、一部、もしくは一列に、一方向に傾斜した状態で植毛するようにしてもよい。このとき、傾斜させた方向の端部(図7中の右端部)付近の導電性線材33のブラシ長を他より短くすることで、プローブ基材34の端部を超えないようにする。このことで導電性線材33が隣接する太陽電池セルの裏面電極5などに接触するのを防止出来る。
【0052】
このような傾斜して植毛された導電性線材33を有するプローブ基材34を用いる方法では、例えば図6に示したようにプローブ基材34を必ずしも斜めに移動させる必要はなく、裏面電極5の表面に垂直方向から近接させて導電性線材33を接触させることが出来る。この場合も前記実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0053】
[第二の変形例]
また、前記実施形態では、プローブ基材31を平板状の部材で構成したが、図8に示すように、円筒状の柱体の、少なくとも表面が導電性のローラでプローブ基材36を構成してもよい。導電性線材37は、前記円筒状のプローブ基材36の外側面全面に植毛される。
【0054】
これにより、前記実施形態と同様にして、該導電性ローラからなるプローブ基材36を傾斜させて移動させる等により、裏面電極5の表面に導電性線材37を接触させる。なお、導電性線材37を裏面電極5の表面に接触させる際には、プローブ基材36は裏面電極5の表面の損傷を避けるために回転させる事は避けるべきである。そのための固定部材などの設置は有効である。また導電性線材37は、上述した変形例のように、すべて一方向に傾斜した状態で植毛するようにする。
【0055】
この構成により、使用頻度に応じて導電性線材37が劣化したり毛倒れを生じたりした場合は、導電性ローラからなるプローブ基材36を適宜回転させて、新しいブラシ植毛面を裏面電極5の接触に用いることで、裏面電極5に接触する導電性線材37を接触不良や特性劣化のない良好な状態に保つことができ、常に安定した特性を保つことができる。この結果、前記実施形態同様の作用、効果を避けるために得られる。
【0056】
また、前記導電性ローラからなるプローブ基材36は、円筒状に限らず、多角形筒状の柱体にしてもよい。即ち、図9に示すように、プローブ基材38を六角形筒状の柱体に形成してもよい。また、五角形以下や七角形以上の多角形筒状にしてもよい。使用頻度、導電性線材39の劣化の程度、電極の大きさ等の諸条件に応じて、適宜選択する。導電性線材39は、上述した変形例1のように、すべて一方向に傾斜した状態で植毛し、さらに同様に端部のブラシ長をプローブ基材の端面を超えないようにすることで他の電極などとの接触を防ぐことが出来る。
【0057】
[第三の変形例]
また、前記実施形態等では、導電性線材32,33,37として直線状の線材を用いたが、中途で折り曲げられたL字型またはカーブしたJ字型にした線材を用いてもよい。即ち、ブラシ状プローブを、図10に示すように、プローブ基材40と、導電性線材41とから構成して、導電性線材41を、略直線部42と、傾斜線部43とで略L字型に構成する。略直線部42は略垂直にプローブ基材40に植毛され、プローブ基材40への植毛面の反対側に傾斜線部43を有する。そしてこの傾斜線部43が弾性的に撓んで裏面電極5の表面に接触する。傾斜線部43は、その長さに応じて裏面電極5の表面の湾曲や凹凸に沿って接触する。裏面電極5の表面の局面等形状が既知であれば、それに合わせて傾斜線部43のブラシ長等を調整することでより確実な表面追随性と接触が確保される。図10ではL字型の変形例を示したが、J字型のブラシ形状の変形例も同様の効果を得ることが出来る。
【0058】
[第四の変形例]
また、よりしなやかな接触のために、導電性線材32,33,37の弾性や形状を線材の特定部分によって変えることも出来る。たとえば、プローブ基材40側と裏面電極5の接触する先端側のブラシ径を変化させ、あるいは材料を変更、複合化するなどによりブラシの各部で異なる弾性調整を行うなどである。このことにより可撓性のある電極面に対して電気的接触を確実に行うことができるとともに、表面が平坦でない電極面や軟材料からなる電極面に対しても、表面を損傷することなく電気的接触を確実に行うことができる。
【0059】
[他の変形例]
本発明のブラシ状プローブ及び電気的処理装置は、電池短絡部除去装置に適用する以外に、可撓性、表面が非平面、軟表面、などの電極に対してもその表面に損傷を与えることなく電気的接触を確実に行う電気的処理装置全てに用いることができる。
【0060】
また、前記実施形態では、電気的処理装置として、逆バイアス電圧を相手側の電極に印加して短絡部を除去する太陽電池短絡部除去装置を例に説明したが、本発明は、電圧を印加する装置に限らず、電流を測定する装置等の種々の装置に適用することができる。即ち、相手側電極に対して、損傷を与えず確実に電気的接触を行って、電圧印加や電流測定等によって電気的処理をする電気的処理装置すべてに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
20:短絡部除去対象電池搬送機構、21:プローブユニット、22:ブラシ状プローブ、23:プローブユニット基板、24:奇偶切替スイッチ群、25:短絡部除去制御部、26:短絡部除去制御部、27:情報処理部、30:電池短絡部除去装置、31:プローブ基材、32:導電性線材、33:導電性線材、34:プローブ基材、36:プローブ基材、37:導電性線材、38:プローブ基材、39:導電性線材、40:プローブ基材、41:導電性線材、42:支柱部、43:傾斜線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側電極に対して電圧印加や電流測定等によって電気的処理を行うために相手側電極に電気的に接触するプローブであって、
導電性を有し電気的処理対象物の電極に臨ませて配設されるプローブ基材と、
当該プローブ基材に複数植毛されて前記電極に接触される可撓性を有する導電性線材とを備え、
前記各導電性線材を一方向に傾斜させるように、前記プローブ基材を前記相手側電極に対して斜めに移動させながら、前記各導電性線材を相手側電極に接触させることを特徴とするブラシ状プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシ状プローブにおいて、
前記プローブ基材を、前記相手側電極に対して斜めに移動させて静止させることで、前記各導電性線材を一方向に傾斜させた状態で相手側電極に接触させることを特徴とするブラシ状プローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブラシ状プローブにおいて、
前記プローブ基材が、前記電気的処理対象物の電極を覆う導電性平板材で構成され、
前記導電性線材が、前記プローブ基材の下側面全面に植毛されたことを特徴とするブラシ状プローブ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のブラシ状プローブにおいて、
前記プローブ基材が、前記電気的処理対象物の電極を覆う断面円形状又は断面多角形状の導電性ローラで構成され、
前記導電性線材が、前記プローブ基材の外側面全面に植毛されたことを特徴とするブラシ状プローブ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブラシ状プローブにおいて、
前記導電性線材が前記プローブ基材に、一方向に傾斜した状態で植毛されたことを特徴とするブラシ状プローブ。
【請求項6】
相手側電極にプローブを電気的に接触させて電圧印加や電流測定等の電気的処理を行う電気的処理装置であって、
前記プローブとして請求項1乃至5のいずれか1項に記載のブラシ状プローブを用いたことを特徴とする電気的処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−196789(P2011−196789A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63007(P2010−63007)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000153018)株式会社日本マイクロニクス (349)
【Fターム(参考)】