説明

ブレーキブースターユニット

【課題】複数系統のブレーキブースターを車両に容易に組み付けるための手段を提供する。
【解決手段】ブレーキブースターユニット11は、相互に独立して動作する複数系統のブレーキブースターを含む。そして、各々のブレーキブースターは、ピストンが摺動可能に収納された本体部13の筐体の少なくとも一部が一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数系統のブレーキブースターを含むブレーキブースターユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小さな踏力で大きな制動力を得るために、一般的な自動車にはブレーキ倍力装置(ブレーキブースター)が搭載されている。一例として、特許文献1,2には、従来の液圧式ブレーキ倍力装置の構成例が開示されている。
【0003】
また、例えば、トラックを含む大型車両の場合には、前輪のブレーキ系統および後輪のブレーキ系統のそれぞれにブレーキブースターが配置されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−128952号公報
【特許文献2】特開平3−7652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、大型車両において複数のブレーキブースターを用いる場合、個々のブレーキブースターを別々に車体に組み付けるため、車両の製造工程で作業が煩雑となる点で改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、複数系統のブレーキブースターを車両に容易に組み付けるための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一の態様のブレーキブースターユニットは、相互に独立して動作する複数系統のブレーキブースターを含む。そして、各々のブレーキブースターは、パワーピストンが摺動可能に収納された本体部の筐体の少なくとも一部が一体化されている。
【0008】
上記の一の態様において、ブレーキブースターは、それぞれ並列して配置されていてもよい。
【0009】
上記の一の態様において、ブレーキブースターは液圧を用いて動作するものであってもよい。そして、各々のブレーキブースターに液体を供給するタンクが、筐体に固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
一の態様のブレーキブースターユニットは、各々のブレーキブースターにおける本体部の筐体が一体化されているので、複数系統のブレーキブースターを車両に容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態のブレーキブースターユニットの構成例を示す斜視図
【図2】第1実施形態のブレーキブースターユニットの構成例を示す斜視図
【図3】第1実施形態のブレーキブースターユニットの構成例を示す平面図
【図4】第1実施形態のブレーキブースターの構成例を示す概略図
【図5】第1実施形態のブレーキブースターユニットの取付例を示す図
【図6】比較例のブレーキブースターの取付例を示す図
【図7】第2実施形態のブレーキブースターユニットの構成例を示す斜視図
【図8】他のブレーキブースターユニットの構成例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態の説明>
図1、図2は、第1実施形態のブレーキブースターユニットの構成例を示す斜視図である。また、図3は、第1実施形態のブレーキブースターユニットの構成例を示す平面図である。第1実施形態のブレーキブースターユニット11は、例えばトラック等の大型車両に実装されるものであって、2つのブレーキブースター12が一体化されている。
【0013】
第1実施形態において、個々のブレーキブースター12は前輪のブレーキ系統および後輪のブレーキ系統にそれぞれ対応し、2つのブレーキブースター21は相互に独立して動作する。第1実施形態のブレーキブースター12は、空気圧を油圧に変換するとともに、圧縮空気による倍力作用をもつハイドロリックエアサーボである。
【0014】
図4は、第1実施形態のブレーキブースター12の構成例を示す概略図である。ブレーキブースター12は、本体部13と、オイルシリンダー部14とを有している。なお、図4において、本体部13は図中左側に配置され、オイルシリンダー部14は図中右側に配置されている。
【0015】
ブレーキブースターの本体部13は円筒形に構成され、その内部にはパワーピストン15、ピストンロッド16、スプリング17が収納されている。パワーピストン15は、本体部13の内径と略等しい外径に形成されており、本体部13の軸方向(図中左右方向)に摺動可能に構成されている。本体部13の内部空間は、パワーピストン15により2つの部屋に区切られている。図4の説明では、本体部13内の左室を第1室と称し、本体部13内の右室を第2室と称する。なお、本体部13には、ブレーキバルブ(不図示)からの圧縮空気を第1室に引き込むエア供給口18が形成されている。
【0016】
また、パワーピストン15の第2室側にはピストンロッド16が固定されている。このピストンロッド16の先端は、オイルシリンダー部14と接触している。また、第2室の内部には、パワーピストン15を第1室の方向(図中左側)に付勢するスプリング17が配置されている。
【0017】
オイルシリンダー部14は、車両のホイールシリンダ(不図示)と接続されており、ピストンロッドの図中右方向の押し込みによって内部に充填されたブレーキオイルを加圧する。
【0018】
ここで、車両に組み付けられた状態でのブレーキブースター12の動作を簡単に説明する。運転者がブレーキベダル(不図示)を踏むと、ブレーキバルブからの空気は第1室に送られる。そして、パワーピストン15で倍力された力が図中右方向に作用する。また、ピストンロッド16の先端はオイルシリンダー部14と接触しているので、ピストンロッド16はオイルシリンダー部14を図中右方向に押し込む。オイルシリンダー部14は内部のブレーキオイルを加圧し、ホイールシリンダに圧力が伝達される。これにより、倍力された空気圧は油圧に変換されて各ホイールシリンダに送られることとなる。
【0019】
一方、運転手がブレーキベダルを放しているときは、本体部13の第1室および第2室はいずれも大気圧となる。また、本体部13のパワーピストン15はスプリング17によって第1室の方向に付勢される。よって、この場合には、ピストンロッド16がオイルシリンダー部14を押し込まないので、オイルシリンダー部14の油圧でホイールシリンダが加圧されることはない。
【0020】
図1−図3に戻って、第1実施形態のブレーキブースターユニット11において、2つのブレーキブースター12は、縦方向(長手方向)の位置を揃えて横方向に並列して配置されている。また、2つのブレーキブースター12の本体部筐体は一体化されている。そのため、第1実施形態のブレーキブースターユニット11の外形は、1つの本体部筐体から2本のオイルシリンダー部14が突出した形状となっている。また、各々のオイルシリンダー部14には、本体部筐体の付近にそれぞれ給油口19が設けられている。
【0021】
なお、ブレーキブースターユニット11の本体部筐体には、オイルシリンダー部14の付近に、ボルトを締結するためのフランジ20が筐体周方向に設けられている。また、ブレーキブースターユニット11の本体部筐体には、各ブレーキブースター用のエア供給口18が設けられている。
【0022】
図5は、第1実施形態のブレーキブースターユニット11の取付例を示す図である。第1実施形態のブレーキブースターユニット11は、本体部筐体のフランジ20を、本体部筐体の左右両側に配置される2つのブラケット21にボルトで締結することで車両に取り付けられる。
【0023】
第1実施形態のブレーキブースターユニット11は、2つのブレーキブースター12を一体化したものであるので、2つのブレーキブースター12を別々に取り付ける場合と比べて車両への組付作業が容易となる。また、第1実施形態のブレーキブースターユニット11は、縦方向の位置を揃えて2つのブレーキブースター12を横方向に並列したサイズであるため、脱着時に必要となる縦方向のスペース(XL1)を比較的小さくできる。
【0024】
一方、図6は、比較例として従来のブレーキブースター31の取付例を示す図である。従来の車両では、フレーム32の両側から2つのブレーキブースター31を対向させて固定していた。そのため、比較例では、脱着時に必要となるスペース(XL2)が上記のXL1よりも大きくなる。また、比較例では、2つのブレーキブースター31を別々に取り付ける必要があり、組付時の作業性が悪いことが分かる。
【0025】
<第2実施形態の説明>
図7は、第1実施形態の変形例である第2実施形態のブレーキブースターユニット11の構成例を示す斜視図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通の構成には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0026】
第2実施形態でのブレーキブースターユニット11は、各々のオイルシリンダー部14に対してブレーキオイルを供給するオイルタンク22が本体部筐体に固定されている。これにより、第2実施形態の構成では、第1実施形態とほぼ同様の効果を享受できるとともに、ブレーキブースター12およびオイルタンク22をまとめて車両に取り付けることができるので、製造工程での作業性をより向上させることができる。
【0027】
<実施形態の補足事項>
上記実施形態では、2つのブレーキブースターを、縦方向の位置を揃えて横方向に並列するように一体化したブレーキブースターユニットの例を説明したが、本発明の構成は上記実施形態の例に限定されるものではない。
【0028】
例えば、図8に示すように、2つのブレーキブースター12を逆向きにして横方向に並列配置し、本体部筐体のフランジ20で2つのブレーキブースターを一体化する構成としてもよい。
【0029】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図する。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
11…ブレーキブースターユニット、12…ブレーキブースター、13…本体部、14…オイルシリンダー部、15…パワーピストン、16…ピストンロッド、17…スプリング、18…エア供給口、19…給油口、20…フランジ、21…ブラケット、22…オイルタンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に独立して動作する複数系統のブレーキブースターを含み、
各々の前記ブレーキブースターは、パワーピストンが摺動可能に収納された本体部の筐体の少なくとも一部が一体化されているブレーキブースターユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキブースターユニットにおいて、
前記ブレーキブースターは、それぞれ並列して配置されているブレーキブースターユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のブレーキブースターユニットにおいて、
前記ブレーキブースターは液圧を用いて動作し、
各々の前記ブレーキブースターに液体を供給するタンクが、前記本体部筐体に固定されているブレーキブースターユニット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−121465(P2011−121465A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280435(P2009−280435)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】