説明

ブレーキ圧調整装置

【課題】 ブレーキ操作時の動作レスポンス向上を行うことのできる容易な構成のブレーキ圧調整装置を提供する。
【解決手段】 マスタシリンダ16に接続されたリザーブタンク18には、当該リザーブタンク18内の圧力調整を行う圧力調整室20が接続されている。この圧力調整室20には、インテークマニホールド22の負圧を導入する圧導入管24が接続され、インテークマニホールド22の負圧の変化により、圧力調整室20内の調圧ピストン56が動作する。スロットルバルブ48の動作によりインテークマニホールド22内の負圧が高くなると、圧力調整室20内の負圧も高くなり調圧ピストン56をリザーブタンク18側へ突出し、リザーブタンク18を予圧する。この予圧によりマスタシリンダ16を介してブレーキ装置14が予圧され、ブレーキパッド14bとブレーキディスク14aとの間のギャップが詰めれら、ブレーキ操作時の動作レスポンスが向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ調圧装置、特に、ブレーキの動作レスポンスを向上することのできるブレーキ圧調整装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるブレーキ装置としては、ディスクブレーキやドラムブレーキなどがあり、通常油圧によりブレーキ装置内のシリンダを駆動することにより制動力を発生させている。例えば、ディスクブレーキの場合、油圧駆動するシリンダにより開閉動作する一対のブレーキパッドにより車輪と共に回転するブレーキディスクを把持して制動力を確保する。また、ドラムブレーキの場合は、油圧駆動するホイールシリンダにより拡開動作するブレーキシューを車輪と共に回転する回転ドラムの内壁面に押圧することにより制動力を確保している。
【0003】
したがって、ディスクブレーキにおいては、制動時にブレーキディスクをしっかり把持し、ドラムブレーキにおいては、回転ドラムをしっかり押圧することが要求される。一方、非制動時には、ブレーキディスクや回転ドラムからブレーキパッドやブレーキシューが完全に離間した状態、すなわちギャップを形成した状態になることが要求される。このような挟持または押圧状態と、離間状態とを明確にすることにより、制動操作時には良好な制動力を確保し、非制動時にはブレーキの引き摺りや鳴きを防止すると共に、良好な燃費特性を確保可能なブレーキ装置を構成している。
【0004】
しかし、上述のように、非制動時にブレーキパッドやブレーキシューとの間にギャップを確保しておくと、運転者が制動を行おうとしてブレーキペダルを踏み込んだ場合に、実際の制動力が発生するまでに僅かな遅れが発生する。つまり、ギャップが存在するため動作油が流れシリンダのピストンを動かし、ブレーキパッドやブレーキシューがブレーキディスクや回転ドラムに密着し制動力を発生するために時間が必要になる。この時間は、例えば、0.1秒程度であり、この間、車両は無制動で走行することになる。従来この時間を含めて安全に制動停止ができるように制動力の確保が行われている。
【0005】
しかし、このような無制動状態は低減することが望ましい。そこで、例えば、特許文献1には、アクセルペダルが踏み込まれていない場合に、ブレーキパッドなどの摩擦係合部材がブレーキディスクなどのブレーキ回転体に近接した位置、望ましくはほぼ接触したい状態になるまで油圧を増圧しておく技術が記載されている。
【特許文献1】特開2003−252189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の技術によれば、アクセルペダルの踏み込み解除をセンサで検出し、その信号を制御部に供給すると共に、アキュムレータなどの圧力源から供給される圧力を増圧弁などを制御してブレーキ装置のシリンダに提供することにより、ブレーキ操作時の動作レスポンス向上を行っている。しかし、このような方法に限らず、他の方法により同様なブレーキ操作時の動作レスポンス向上を行うことが、制動システムのさらなる改良のために望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、従来にない手段により摩擦係合部材とブレーキ回転体との間のギャップを埋め、ブレーキ操作時の動作レスポンス向上を行うことのできる容易な構成のブレーキ圧調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るブレーキ圧調整装置は、ブレーキ装置のブレーキシリンダに油圧を供給し摩擦係合部材とブレーキ回転体との接離動作を行わせるマスタシリンダと、マスタシリンダに対し、動作油の出し入れを行いマスタシリンダ内の油圧状態を調整するリザーブタンクと、リザーブタンク内の圧力状態を調整する圧力調整室と、アクセルペダルの操作に基づき変化するインテークマニホールド内の圧力を圧力調整室に導く圧導入管と、を含み、圧力調整室は、圧導入管により導かれたインテークマニホールド内の圧力により駆動してリザーブタンクの圧力調整を行う調圧ピストンを含むことを特徴とする。
【0009】
例えば、アクセルペダルが踏み込まれていない場合、スロットルバルブは閉じられ、インテークマニホールド内の負圧は高くなる。このインテークマニホールドの負圧は、圧導入管を介して圧力調整室に導かれるので、この負圧により圧力調整室の調圧ピストンを駆動することができる。例えば、調圧ピストンの前側の圧力室に負圧が導入されれば、負圧が高くなると、その圧力室を縮小させる方向に調圧ピストンを移動することができる。つまり、調圧ピストンを圧力調整室から突出駆動することができる。そして、突出する調圧ピストンまたはその接続物をリザーブタンク内に侵入させることにより、リザーブタンク内の圧力を増加させ、マスタシリンダを加圧することができる。一方、アクセルペダルが踏み込まれた場合スロットルバルブは開かれ、インテークマニホールド内の負圧は低くなる。例えば、圧導入管により調圧ピストンの前側の圧力室に負圧が導入されていれば、負圧が低くなると、その圧力室を拡大させる方向に調圧ピストンは移動可能となる。つまり、調圧ピストンを圧力調整室に引き込み駆動することができる。その結果、リザーブタンク内の圧力を減少させ、マスタシリンダの加圧を解放することができる。したがって、インテークマニホールド内の負圧の変化を利用し予圧を発生させてブレーキ装置のブレーキシリンダを駆動し、摩擦係合部材とブレーキ回転体との間のギャップの大きさを調整することが可能となり、ブレーキ操作時の動作レスポンス向上を行うことができる。
【0010】
また、上記構成において、調圧ピストンは、圧導入管によって導かれる圧力に対して調圧力を微調整する調整手段を有することができる。ここで調整手段とは、例えば、圧力調整室内で、調圧ピストンを常時引き込み方向に付勢するスプリングや弾性体などの付勢手段とすることができる。
【0011】
この態様によれば、インテークマニホールド内の負圧が低いとき、つまりアクセルペダルが踏み込まれ制動が要求されていない場合には、調圧ピストンは圧力調整室に引き込まれ、リザーブタンクの内の圧力を減少させマスタシリンダを加圧を解放し、摩擦係合部材とブレーキ回転体との間のギャップを維持するように復帰する。その結果、非制動時に摩擦係合部材とブレーキ回転体とが接触することが抑制され、引き摺りや鳴き現象を防止することができる。
【0012】
また、上記構成において、圧導入管は、管路中で平行に配置された逆止弁および絞りノズルを含むことができる。
【0013】
この態様によれば、調圧ピストンの動作スピードを突出時と引き込み時で変化させることが可能となり、アクセルペダルの操作に対し必要以上に頻繁に調圧ピストンが移動することを抑止することが可能となり、調圧ピストンのシール部材の摩耗低減や振動抑制にも寄与することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インテークマニホールド内の負圧の変化を利用しマスタシリンダに接続されたリザーブタンクの圧力状態を変化させてブレーキ装置のブレーキシリンダを駆動し、摩擦係合部材とブレーキ回転体との間のギャップの大きさを調整することが可能となり、ブレーキ操作時の動作レスポンス向上を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態におけるブレーキ圧調整装置は、インテークマニホールド内に発生する負圧をリザーブタンクに接続された圧力調整室に導き、リザーブタンク内の圧力を調整することにより、マスタシリンダの圧力状態を調整する。そして、圧力状態が調整されたマスタシリンダにより、例えばディスクブレーキのシリンダを駆動し、摩擦係合部材であるブレーキパッドとブレーキ回転体であるブレーキディスクとの間のギャップの大きさを調整して、ブレーキ操作時の動作レスポンス向上を行うものである。なお、本実施形態では、ブレーキ装置の一例としてディスクブレーキを示して説明する。
【0017】
以下、図1を用いて、具体的な構造を説明する。図1は、本実施形態のブレーキ圧調整装置10の構成概念図を示している。上述したように、本実施形態のブレーキ圧調整装置10では、インテークマニホールド内に発生する負圧を利用するため、一例としてフューエルインジェクション12の概略構成の一部を合わせて図示している。
【0018】
本実施形態のブレーキ圧調整装置10は、車両に搭載されたブレーキ装置14に油圧を供給するマスタシリンダ16と、マスタシリンダ16に対し、動作油(ブレーキオイル)の出し入れを行いマスタシリンダ内の油圧状態を調整するリザーブタンク18と、リザーブタンク18内の圧力状態を調整する圧力調整室20と、フューエルインジェクション12のインテークマニホールド22内の圧力を圧力調整室20に導く圧導入管24などで構成されている。
【0019】
ブレーキ装置14は、車両の前輪および後輪にそれぞれ搭載されている。ブレーキ装置14は、車輪と共に回転するブレーキディスク14aにブレーキパッド14bを押圧しブレーキディスク14aを制動することにより車輪自体を制動するものである。ブレーキ装置14内部には、油圧駆動のシリンダが内蔵され、マスタシリンダ16から供給される油圧により、一対のブレーキパッド14bを閉動作させブレーキディスク14aを挟持する。
【0020】
図1に示すマスタシリンダ16は、タンデムタイプであり、独立した二つの油圧系統を持ち、いずれか一方の系統に不具合が生じた場合でも残りの一方の系統により制動動作を行わせるものである。マスタシリンダ16の内部には、プライマリーピストン26aとセカンダリーピストン26bが収納されている。セカンダリーピストン26bは前後両端からリターンスプリング28により支持されている。また、それぞれのリターンスプリング28の収まっている部分が圧力室を形成し、ブレーキ装置14に動作油を送出する送出口30a,30bと、動作油の補給口、すなわちリターンポート32a,32bが形成されている。プライマリーピストン26a側の送出口30aには、リア(R)側のブレーキ装置14が接続され、セカンダリーピストン26b側の送出口30bには、フロント(F)側のブレーキ装置14が接続されている。
【0021】
マスタシリンダ16の静止状態、すなわち、ブレーキペダル34が踏み込み操作されていない場合、プライマリーピストン26aの左側ピストンカップ35aとセカンダリーピストン26bの左側ピストンカップ35bは、それぞれ、リザーブタンク18に連通したリターンポート32a,32b、インレットポート36a,36bとの間の位置にある。
【0022】
一方、ブレーキペダル34が踏み込まれると、プライマリーピストン26aが前進してリターンポート32aを閉鎖しプライマリーピストン26aの圧力室を密閉し、セカンダリーピストン26bとの間の動作油を圧縮する。この油圧でセカンダリーピストン26bを押すと共に、リア系統のブレーキ装置14に油圧を供給し制動動作させる。また、プライマリーピストン26aの油圧によって押されたセカンダリーピストン26bは、リターンポート32bを閉鎖しセカンダリーピストン26bの圧力室を密閉し、セカンダリーピストン26b前部の動作油を圧縮しフロント系統のブレーキ装置14に油圧を供給し制動動作させる。
【0023】
ブレーキペダル34の踏み込みを解放すれば、リターンスプリング28によってプライマリーピストン26aとセカンダリーピストン26bは初期状態に戻され、各ピストン前部の油圧は低下し、ブレーキ装置14のブレーキパッド14bが解放される。
【0024】
リザーブタンク18には、所定量の動作油が収納され、必要に応じて、プライマリーピストン26aとセカンダリーピストン26bの圧力室に出し入れできるようになっている。例えば、ブレーキパッド14bが摩耗した場合、その摩耗した容積分だけ油圧系統に動作油を補充しないとブレーキペダル34の遊びが増えてしまう。プライマリーピストン26aとセカンダリーピストン26bが初期位置にある場合、各圧力室とリザーブタンク18とは連通している。前述したように、プライマリーピストン26aとセカンダリーピストン26bとが押され始めると、リターンポート32a,32bが塞がれ圧力室は密閉され圧力を発生する。一方、プライマリーピストン26aとセカンダリーピストン26bが戻されると、リザーブタンク18との通路が繋がり、ブレーキパッド14bの摩耗した分の容積はリザーブタンク18から動作油がインレットポート36a,36bを通って流れ込み、補充されブレーキペダル34の遊び調整が行われる。また、リザーブタンク18は、ブレーキを操作しないときに温度変化により動作油に体積変化が生じた場合、すなわち油圧系統の圧力変化が生じた場合に、この変化を吸収する働きを有する。
【0025】
フューエルインジェクション12の制御部(ECU)38は、冷却水温、大気温、排気ガスの状態などを各種センサ40から取得すると共に、吸気管の一部に配置されたエアフローメータ42からエアの流量を取得し、インジェクタ44に対して燃料噴射時間の長短を指示する。
【0026】
エアフローメータ42を通過した空気は、アクセルペダル46の踏み込み操作により開閉動作するスロットルバルブ48により流量の調整が行われ、必要な量の空気が燃焼室を有する気筒シリンダ50に導かれる。スロットルバルブ48の下流側がインテークマニホールド22となり、周知のように、スロットルバルブ48が開閉状態により、インテークマニホールド22内の負圧状態が変化する。すなわち、運転者がアクセルペダル46の踏み込みを解除しスロットルバルブ48が全閉状態のときに最も負圧が高くなり、アクセルペダル46を踏み込み、車両の加速状態、または巡航走行状態でスロットルバルブ48が開動作するほど負圧が低くなる。
【0027】
なお、インジェクタ44には、ガソリンなどの燃料を収納したフューエルタンク52が接続され、フューエルポンプ54により燃料が圧送され、インジェクタ44でほぼ一定の圧力で燃料を噴射するようになっている。
【0028】
本実施形態において、インテークマニホールド22と圧力調整室20とは、圧導入管24で接続され、インテークマニホールド22内の負圧状態が直接的に圧力調整室20に作用するようになっている。圧力調整室20は、大気開放された第1圧力室20aと調圧ピストン56を介して第1圧力室20aと仕切られた第2圧力室20bとで構成されている。圧導入管24は、例えば第2圧力室20bに接続されている。また、本実施形態においては、第2圧力室20bには、スプリング58が挿入され、調圧ピストン56を定常状態では、第1圧力室20a側に付勢している。なお、調圧ピストン56は、大径側56a、小径側56bそれぞれにシール部材60a,60bが配置され、第2圧力室20bの気密が維持できるようになっている。
【0029】
このように構成されるブレーキ圧調整装置10の動作を以下に説明する。
【0030】
車両が走行状態などのときで、アクセルペダル46が踏み込み操作、すなわちアクセルオンされている場合、スロットルバルブ48が開動作を行い、空気を積極的に吸い込む状態となるので、インテークマニホールド22内の負圧は低下する。例えば、−266.644〜66.661hPa(−200〜+50mmHg)になる。この場合、圧力調整室20の第2圧力室20bに導入される負圧も低下する。一方、調圧ピストン56は、このアクセルペダル46の開動作時の負圧状態で、スプリング58の付勢力により第1圧力室20a側に付勢され、例えば図1のような位置に存在するように調整されている。この調整状態は、調圧ピストン56がリザーブタンク18の内部圧力を増加させない位置、または、誤差範囲内の増加にとどまり、実質的にリザーブタンク18を予圧しない位置に調圧ピストン56が停止するように調整されている。
【0031】
このように、アクセルペダル46が踏み込み操作され、少なくとも車両が加速状態または巡航走行状態にあり、制動力を必要としない状態においては、インテークマニホールド22内の負圧状態は低下し、圧力調整室20の調圧ピストン56はリザーブタンク18を予圧しない状態に維持される。その結果、マスタシリンダ16はブレーキ装置14のブレーキパッド14bに対して油圧を提供することなく、ブレーキディスク14aとブレーキパッド14bとの間には所定量のギャップが維持される。したがって、ブレーキ装置14のブレーキパッド14bは引き摺りを生じることなく、良好な制動待機状態を維持することができる。
【0032】
一方、アクセルペダル46の踏み込み操作が解除された場合、例えば、ブレーキペダル34を操作しようとして足を離した場合、すなわちアクセルオフの場合には、スロットルバルブ48は閉じられ、インテークマニホールド22内の負圧は高くなる。例えば、−599.949〜−799.932hPa(−450〜−600mmHg)になる。この場合、圧力調整室20の第2圧力室20bに導入される負圧も高くなる。したがって、調圧ピストン56がスプリング58の付勢力に逆らい第2圧力室20bを圧縮する方向に移動する。その結果、調圧ピストン56の小径側56bがリザーブタンク18側に突出しリザーブタンク18の空間容積を減少させ、リザーブタンク18を予圧状態に移行させる。リザーブタンク18で増加した圧力は、リターンポート32a,32bを介して送出口30a,30bに伝達され、ブレーキ装置14を予圧する。すなわち、ブレーキパッド14bがブレーキディスク14aを挟持する方向に移動し、定常時ブレーキディスク14aとブレーキパッド14bとの間に形成されている所定量のギャップを詰める方向に自動的に移行する。
【0033】
その結果、運転者がブレーキペダル34を踏み込み、制動を行おうとした場合、ブレーキディスク14aとブレーキパッド14bとの間のギャップは、インテークマニホールド22の負圧により行われた予圧により事前に減少、または消滅するので、運転者がブレーキペダル34を踏み込み、マスタシリンダ16を動作させた場合、迅速に制動力を発生させることが可能になり、ブレーキ操作時の動作レスポンスを向上することができる。
【0034】
なお、インテークマニホールド22の負圧上昇に伴うブレーキパッド14bの移動量は、負圧が最も高い状態で、運転者に違和感を与えない程度にブレーキディスク14aとブレーキパッド14bとが接触していることが望ましい。ただし、接触しない場合でも従来確保されていたギャップより間隔が詰まっていればブレーキ操作時の動作レスポンス向上に寄与することができる。また、予圧の量は、スプリング58のばね定数を変化することにより容易に微調整を行うことができる。
【0035】
このように、本実施家形態によれば、インテークマニホールド22の負圧により調圧ピストン56を機械的に動作させる完全なメカニカル構造で構成されているため、センサなどの信号の供給やバルブの電子的な制御を必要とせず、シンプルな構成により従来と同様な効果を得ることができる。
【0036】
なお、アクセルペダル46がオンされると、インテークマニホールド22内の負圧は直ちに増加するため、調圧ピストン56はスプリング58の付勢力によりリザーブタンク18側から待避するので、リザーブタンク18の予圧は解除される。また、マスタシリンダ16を介したブレーキ装置14の予圧も解除される。したがって、車両が加速を開始した場合には、ブレーキディスク14aとブレーキパッド14bとの間のギャップは定常状態に復帰し、ブレーキパッド14bの引き摺りや鳴き現象は抑制される。
【0037】
このように、本実施形態のブレーキ圧調整装置10によれば、ブレーキ装置14により制動力を発生させるために運転者がアクセルペダル46から足を離した時点で、ブレーキペダル34の操作に先行して、リザーブタンク18を介してマスタシリンダ16の予圧を開始し、ブレーキ装置14のブレーキディスク14aとブレーキパッド14bとの間のギャップを詰める動作を容易な構成に機械的に行う。その結果、ブレーキペダル34の操作に基づく制動力の発生を迅速に行うことができる。また、再度加速を行うためにアクセルペダル46を踏み込んだ場合、リザーブタンク18を介したマスタシリンダ16の予圧は解除され、ブレーキ装置14のブレーキディスク14aとブレーキパッド14bとの間のギャップが確保されるので、ブレーキパッド14bの引き摺りや鳴きなどの現象を確実に抑制することができる。
【0038】
ところで、車両の走行中、速度の微調整のために通常アクセルペダル46のオン・オフ操作は頻繁に行われる。上述したように、インテークマニホールド22内の負圧状態は、アクセルペダル46の操作に基づくスロットルバルブ48の開閉動作により変化するため、圧力調整室20の調圧ピストン56が必要以上に頻繁に往復移動してしまう場合がある。この場合、シール部材60a,60bの摩耗を促進してしまったり、調圧ピストン56の動作による振動の発生など好ましくない状況を招く場合がある。
【0039】
そこで、本実施形態においては、図2に示すように、圧導入管24に当該圧導入管24の管路中で平行に逆止弁62および絞りノズル64を配置している。例えば、インテークマニホールド22内の負圧が高くなった場合、逆止弁62が開き圧力調整室20へ負圧を導入する。したがって、ブレーキパッド14bがブレーキディスク14aから離れている場合には、迅速にブレーキパッド14bとブレーキディスク14aとの間のギャップが詰まる方向にブレーキパッド14bを移動させることができる。一方、インテークマニホールド22内の負圧が低下した場合には、逆止弁62は、スプリングなどにより閉じたままであり、絞りノズル64を介してゆっくりと圧力調整室20内の負圧が低下するようになる。つまり、スプリング58による調圧ピストン56の復帰がゆっくりとなり、リザーブタンク18の予圧の解放がゆっくりとなる。したがって、前述のように速度調整などで、スロットルバルブ48の開閉を頻繁に行う場合でも、スロットルバルブ48の開閉頻度に対して調圧ピストン56の移動頻度を低減させることが可能になり、シール部材60a,60bの摩耗や調圧ピストン56の移動による振動などを抑制することが可能になる。
【0040】
なお、上述のように圧導入管24に逆止弁62と絞りノズル64を配置する場合、ブレーキパッド14bとブレーキディスク14aとの間のギャップが詰まった状態が長くなるが、前述のように、ブレーキパッド14bとブレーキディスク14aとが接触している状態は、運転者に違和感を与えない程度であり、ブレーキパッド14bやブレーキディスク14aの摩耗や引き摺りによる燃費の低下などは測定誤差範囲内に収まる程度である。なお、前述のようにギャップを詰めるのみで、完全に接触させないようにすることもブレーキ装置の動作レスポンス向上には好適である。
【0041】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。図1および図2に示す構成は、あくまで概念的な機能を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能である。例えば、インテークマニホールドに対する圧導入管の接続位置は任意であり、負圧の変化を圧力調整室へスムーズに伝達できる位置であれば何処でもよい。また、本実施形態では、ブレーキ装置として、ディスクブレーキを一例として示したが、ドラムブレーキでも同様にインテークマニホールドの負圧によりブレーキシューと回転ドラムとの間のギャップを詰めることが可能であり、本実施形態と同様な効果を得ることができる。また、マスタシリンダの一例としてタンデムタイプを示したが、シングルタイプでも適用可能であり本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態においては、圧力調整室の第1圧力室を大気開放状態にして、負圧が低下した場合の調圧ピストンの復帰はスプリングを用いて行う構成を説明したが、同様な機能を実現できるものであればスプリング以外の弾性体もりよう可能でする。また、第1圧力室を密閉状態として、インテークマニホールドの負圧の変化のみので調圧ピストンを移動させる構成としてもよい。この場合、スプリングを省略したり、ばね定数の小さなものに変更することもできる。また、本実施形態においては、調圧ピストンを直接リザーブタンク内に侵入させる例を説明したが、調圧ピストンにより接続された部品をリザーブタンクに侵入させて圧力調整を行うようにしても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態に係るブレーキ圧調整装置を説明する説明図である。
【図2】本実施形態に係るブレーキ圧調整装置の圧導入管に配置する逆止弁と絞りノズルを説明する説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10 ブレーキ圧調整装置、12 フューエルインジェクション、14 ブレーキ装置、14a ブレーキディスク、14b ブレーキパッド、16 マスタシリンダ、18 リザーブタンク、20 圧力調整室、20a 第1圧力室、20b 第2圧力室、22 インテークマニホールド、24 圧導入管、34 ブレーキペダル、46 アクセルペダル、48 スロットルバルブ、56 調圧ピストン、58 スプリング、62 逆止弁、64 絞りノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ装置のブレーキシリンダに油圧を供給し摩擦係合部材とブレーキ回転体との接離動作を行わせるマスタシリンダと、
前記マスタシリンダに対し、動作油の出し入れを行いマスタシリンダ内の油圧状態を調整するリザーブタンクと、
前記リザーブタンク内の圧力状態を調整する圧力調整室と、
アクセルペダルの操作に基づき変化するインテークマニホールド内の圧力を前記圧力調整室に導く圧導入管と、
を含み、
前記圧力調整室は、圧導入管により導かれたインテークマニホールド内の圧力により駆動して前記リザーブタンクの圧力調整を行う調圧ピストンを含むことを特徴とするブレーキ圧調整装置。
【請求項2】
前記調圧ピストンは、前記圧導入管によって導かれる圧力に対して調圧力を微調整する調整手段を有することを特徴とする請求項1記載のブレーキ圧調整装置。
【請求項3】
前記圧導入管は、管路中で平行に配置された逆止弁および絞りノズルを含むことを特徴とするブレーキ圧調整装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−175924(P2006−175924A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369317(P2004−369317)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】