説明

ブレーキ液圧制御装置

【課題】液圧ユニットのブラケットへの支持箇所を減らし、振動を抑制することのできるブレーキ液圧制御装置を提供する。
【解決手段】アンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニット10を備え、車体60,61に取付けられるブレーキ液圧制御装置70において、液圧ユニット10の第1の面30dに略垂直に形成された第2の面30eを支持する第1支持部42と、第1の面30d及び第2の面30eの各々と略垂直に形成された第3の面30bを支持する第2支持部43と、第1支持部42及び第2支持部43が取付けられるブラケット41とを備え、車体60に固定するための第1固定部41gを有する第2板部41bと、車体61に固定するための第2固定部41fを有する第3板部41cとを有し、第1固定部41gと第2固定部41fと液圧ユニット10の重心とが略一直線上に位置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットをモータサイクルの車体に取付けるためのブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を液圧回路で制御して、アンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットを備え、モータサイクルの車体に取付けられるブレーキ液圧制御装置が知られている。この種のブレーキ液圧制御装置では、例えば、液圧ユニットを支持するために3箇所以上のねじ等による支持部を設けることによって、液圧ユニットをブラケットへ取付け、ブラケットの下部に形成された多数のボルト孔を介して車体に取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ブレーキ液圧制御装置の車体への取付スペースは限定される傾向にあり、特にモータサイクル車両は、液圧ユニットの取付スペースが非常に少ない場合が多い。このため、上述した構成では、取付作業を行うためのスペースの確保が困難なため、出来る限り液圧ユニットのブラケットへの支持箇所及びブラケットの車体への固定個所を減らすことが望ましい。
【0004】
このため、図6に示すように、液圧ユニット110の下面130e及び一方の側面130bをそれぞれ1つの支持部142,143で支持し、液圧ユニット110のモータ107の真下に設けられた一対の固定部141fでブラケット141を車体に固定するブレーキ液圧制御装置170が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−370635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなブレーキ液圧制御装置では、ブラケットと車体側固定部とは、モータの軸心方向に対して垂直な面で接して固定されている。この固定方法では、モータの軸心方向の振れは大きくなる傾向にあり、衝撃や劣化によりマウントラバーやブラケット等のマウント部品に悪影響を与えてしまう恐れがあった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、液圧ユニットのブラケットへの支持箇所を減らすことができるとともに、好ましくない振動を抑制することのできるブレーキ液圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の面にモータが取付けられて制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を制御してアンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットを備え、モータサイクルの車体に取付けられるブレーキ液圧制御装置において、前記液圧ユニットの前記第1の面に略垂直に形成された第2の面を支持する第1支持部と、前記液圧ユニットの前記第1の面及び前記第2の面の各々と略垂直に形成された第3の面を支持する第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部が取付けられるブラケットとを備え、前記ブラケットは、前記第1支持部が取付けられる第1板部と、前記第1板部に対して略垂直に設けられ、前記第2支持部が取付けられるとともに、前記車体に固定するための第1固定部を有する第2板部と、前記第1板部に対して屈曲するように設けられ、前記車体に固定するための第2固定部を有する第3板部とを有し、前記第1固定部と前記第2固定部と前記液圧ユニットの重心とが略一直線上に位置することを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記第1固定部は、前記第2支持部よりも前記第3板部から離れて位置してもよい。前記第2固定部は、前記第1支持部よりも前記第2板部から離れて位置してもよい。前記第1固定部及び前記第2固定部の少なくとも一方は、貫通孔であってもよい。前記第3板部は、前記第1板部に対して略垂直に屈曲するように設けられていてもよい。前記液圧ユニットが取付けられたときに、前記第1支持部は、前記液圧ユニットの重心を通る線と前記第2の面とが略垂直になる位置で前記液圧ユニットを支持してもよい。前記液圧ユニットを前記車体に取付けたときに、前記第1支持部は、前記液圧ユニットの重心の直下近傍で前記液圧ユニットを支持してもよい。前記液圧ユニットを前記車体に取付けたときに、前記第2支持部は、前記液圧ユニットの重心を通る水平線上近傍で前記液圧ユニットを支持してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、液圧ユニットのブラケットへの支持箇所を減らすことができるとともに、好ましくない振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ用油圧回路を示す回路図である。
【図2】液圧ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図3】ブレーキ液圧制御装置を示す斜視図である。
【図4】ブレーキ液圧制御装置を示す分解斜視図である。
【図5】ブラケットを示す斜視図である。
【図6】従来技術によるブレーキ液圧制御装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るブレーキ用油圧回路を示す回路図である。なお、上記及び下記説明において上方及び下方とは、それぞれ、車両上方及び車両下方を指すものとする。
【0013】
図1に示すブレーキ用油圧回路100は、例えば、自動二輪車両に搭載されるものであり、周知のアンチロックブレーキ制御用の油圧回路に適用されている。ここで、アンチロックブレーキ制御(いわゆるABS制御)とは、例えば、車両制動時において、ブレーキ液圧を断続的に減少させて、車輪のロック状態を抑制するような制御を指す。なお、アンチロックブレーキ制御の作動原理、及び基本的な制御手法等については、当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【0014】
ブレーキ用油圧回路100は、前輪に対する制動力を発生させるための前輪用ディスクブレーキ装置(制動部)111の前輪用マスタシリンダ(Front M/C)101、前輪用リザーバタンク102及び前輪用ホイールシリンダ(Front W/C)103と、後輪に対する制動力を発生させるための後輪用ディスクブレーキ装置(制動部)116の後輪用マスタシリンダ(Rear M/C)104、後輪用リザーバタンク105及び後輪用ホイールシリンダ(Rear W/C)106と、液圧ユニット10とを備えている。
【0015】
液圧ユニット10は、前輪用及び後輪用マスタシリンダ101、104と、前輪用及び後輪用ホイールシリンダ103、106との間に設けられている。また、液圧ユニット10は、前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して、及び/又は、後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して、上述のアンチロックブレーキ制御を行う。
【0016】
前輪用マスタシリンダ101には、第1配管107を介して前輪用リザーバタンク102が接続されている。また、前輪用マスタシリンダ101には、第2配管108、液圧ユニット10及び第3配管109を介して、前輪用ホイールシリンダ103が接続されている。
【0017】
前輪用マスタシリンダ101は、例えば、車両のハンドルレバー110により駆動されると、液圧ユニット10を介して、前輪用ホイールシリンダ103に対するブレーキ液圧を発生させる。また、前輪用ホイールシリンダ103は、供給されるブレーキ液圧に応じて前輪用ディスクブレーキ装置111を駆動し、前輪を制動させる。
【0018】
後輪用マスタシリンダ104には、第4配管112を介して後輪用リザーバタンク105が接続されている。また、後輪用マスタシリンダ104には、第5配管113、ブレーキ液制御装置10及び第6配管114を介して、後輪用ホイールシリンダ106が接続されている。
【0019】
後輪用マスタシリンダ104は、例えば、車両のフットペダル115により駆動されると、液圧ユニット10を介して、後輪用ホイールシリンダ106に対するブレーキ液圧を発生させる。また、後輪用ホイールシリンダ106は、供給されるブレーキ液圧に応じて後輪用ディスクブレーキ装置116を駆動し、後輪を制動させる。
【0020】
次に、本実施形態に係る液圧ユニット10について、詳細に説明する。
液圧ユニット10は、前輪用EV電磁弁1、前輪用AV電磁弁2、後輪用EV電磁弁3、後輪用AV電磁弁4、前輪用ポンプ5、後輪用ポンプ6、モータ7および電子制御ユニットであるECU8(図2参照)を有している。
【0021】
前輪用EV及びAV電磁弁1、2と、後輪用EV及びAV電磁弁3、4とは、例えば、周知の2位置型電磁弁である。また、通常状態、すなわちアンチロックブレーキ制御が行われていない状態において、前輪用EV電磁弁1及び後輪用EV電磁弁3は、開状態となり、前輪用AV電磁弁2及び後輪用AV電磁弁4は、閉状態となる。また、前輪用ポンプ5及び後輪用ポンプ6は、モータ7により駆動される構成となっている。各電磁弁1、2、3、4及びモータ7は、ECU8に接続されており、このECU8からの制御信号に基づいて、駆動制御される。
【0022】
液圧ユニット10は、前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液が流動するための前輪用流路11と、後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液が流動するための後輪用流路21とを含んでいる。
【0023】
前輪用流路11において、第1流路11aの一端側が、第2配管108に接続されており、第1流路11aの他端側が前輪用EV電磁弁1に接続されている。第2流路11bの一端側が前輪用EV電磁弁1に接続されており、第2流路11bの他端側が第3配管109に接続されている。第1流路11aには第3流路11cの一端側が接続されており、第3流路11cの他端側が前輪用ポンプ5の吐出側に接続されている。第4流路11dの一端側が前輪用ポンプ5の吸引側に接続されており、第4流路11dの他端側が前輪用AV電磁弁2に接続されている。前輪用ポンプ5は、第4流路11d側から第3流路11c側へ、すなわち、前輪用ホイールシリンダ103側から前輪用マスタシリンダ101側へ、ブレーキ液を流動させる。第4流路11dには、ブレーキ液の圧力を減圧するアキュムレータ9が接続されている。第2流路11bには第5流路11eの一端側が接続されており、第5流路11eの他端が前輪用AV電磁弁2に接続されている。第2流路11bには、前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を検出するための圧力センサ13が設けられている。
【0024】
一方、後輪用流路21において、上述した前輪用流路11と略同様に、第1流路21aの一端側が第2配管113に接続されており、第1流路21aの他端側が後輪用EV電磁弁3に接続されている。第2流路21bの一端側が後輪用EV電磁弁3に接続されており、第2流路21bの他端側が第3配管114に接続されている。第1流路21aには、第3流路21cの一端が接続されており、第3流路21cの他端が後輪用ポンプ6の吐出側に接続されている。第4流路21dの一端側が後輪用ポンプ6の吸引側に接続されており、第4流路21dの他端側が後輪用AV電磁弁4に接続されている。後輪用ポンプ6は、第4流路21d側から第3流路21c側へ、すなわち、後輪用ホイールシリンダ106側から後輪用マスタシリンダ104側へ、ブレーキ液を流動させる。第4流路21dには、ブレーキ液の圧力を減圧するアキュムレータ12が接続されている。第2流路21bには、第5流路21eの一端が接続されており、第5流路21eの他端が後輪用AV電磁弁4に接続されている。
【0025】
なお、前輪用及び後輪用EV電磁弁1、3には、チェック弁がそれぞれ併設されており、前輪用及び後輪用ポンプ5、6の吐出側には、絞り弁がそれぞれ設けられている。また、前輪用及び後輪用EV電磁弁1、3の前後と、前輪用及び後輪用ポンプ5、6の前と、前輪用及び後輪用AV電磁弁2、4の前とには、図示せぬフィルタが1つずつ設けられている。
【0026】
図2は、液圧ユニットの構成を示す分解斜視図である。
液圧ユニット10は、ハウジング30と、第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aと、ブレーキ液圧を検出する圧力センサ13と、ブレーキ液を加圧する一対のピストン5a、5bと、第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aを駆動制御するECU8と、ピストン5a、5bを駆動するモータ7と、ブレーキ液圧を減圧する一対のアキュムレータ9、12とを備えている。
【0027】
ハウジング30は、例えば、アルミニウム等の金属からなり、略直方体形状のブロックに形成されている。また、ハウジング30は、ECU取付面30a、側面(第3の面)30b、側面30c、ECU取付面30aの裏面側に形成されたモータ取付面(第1の面)30d(図4参照)、下面(第2の面)30e、及び上面30fを有している。ECU取付面30a及びモータ取付面30dは、略正方形状に形成されている。
【0028】
また、ハウジング30の内部には、上述の前輪用流路11と後輪用流路21とからなる流路が形成されている。また、第1乃至上面30a〜30fには、それぞれ前輪用及び後輪用流路11、21に連通する複数の取付穴31a〜31pが形成されている。各取付穴31a〜31d内には、第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aが挿入され、取付けられている。
【0029】
ECU8は、コイルユニット8aと、ECUハウジング8bと、コイルユニット8aを駆動制御するための電子基板(PCB)8cと、この電子基板8cを覆うECUカバー8dとを有している。ECU8は、ECU取付面30aを覆うようにして取付けられている。なお、ECUハウジング8bの一方側(例えば、ハウジング30の側面30c側)には、電子基板8cに接続するためのコネクタ8eが設けられている。また、電子基板8cには、主として、マイクロコンピュータが構成されている。
【0030】
コイルユニット8aは、第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aを駆動するための4つのコイルを内蔵している。各コイルは、第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aに対応する位置に配設されている。第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aの各々の一端は、対応するコイルの内部に挿入され、各コイルにより駆動制御される。例えば、ECU8は、対応するコイルを励磁させることで、第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aを図中X1方向又は図中X2方向へ駆動制御することができる。これにより、第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aは、コイルユニット8aにより駆動制御され、前輪用流路11及び後輪用流路21を、連通状態あるいは遮断状態に切り替えられるようになっている。
【0031】
ECU8は、例えば、車輪速センサ(不図示)により検出された前輪及び後輪の回転速度と、圧力センサ13により検出されたブレーキ液の圧力とに基づいて、第1乃至第4切替弁本体1a、2a、3a、4aを駆動制御することで、アンチロックブレーキ制御を行うことができる。
【0032】
なお、上記前輪用EV電磁弁1(図1参照)は、第1切替弁本体1aとコイルユニット8aとから構成されており、上記前輪用AV電磁弁2(図1参照)は、第2切替弁本体2aとコイルユニット8aとから構成されている。また、上記後輪用EV電磁弁3(図1参照)は、第3切替弁本体3aとコイルユニット8aとから構成されており、上記後輪用AV電磁弁4(図1参照)は、第4切替弁本体4aとコイルユニット8aとから構成されている。
【0033】
圧力センサ13は、例えば、前輪用マスタシリンダ103(図1参照)へ供給されるブレーキ液の圧力を検出している。圧力センサ13の一端側は、第1乃至4切替弁本体1a、2a、3a、4aの取付穴31a〜31dの略中心に形成された取付穴31jに挿入されている。また、圧力センサ13の他端側の接続部13aは、ECU8の電子基板8cに接続されている。なお、上記取付穴31a〜31dの中心は、ECU取付面30aの中心と略一致している。換言すれば、第1乃至4切替弁本体1a、2a、3a、4aの取付穴31a〜31dは、ECU取付面30a上において、例えば、略正方形状をなし、その対角線の交点が上記中心と一致している。
【0034】
上述の如く、圧力センサ13がハウジング30のECU取付面30aの略中心に配設され、このECU取付面30aに対してECU8が取付けられ、圧力センサ13の接続部13aとECU8とが接続されている。これにより、圧力センサ13とECU8とが良好に接続される。
【0035】
一対のピストン5a、5bは、側面30b、30cに形成された取付穴31e、31f内にそれぞれ挿入されており、ハウジング30の中心方向へ移動可能である。また、各ピストン5a、5bは、中心方向へ往復動することで、ブレーキ液を加圧するようになっている。
【0036】
モータ7は、モータ本体7aと、モータ本体7aに連結され回転駆動する駆動軸7bと、駆動軸7bに連結された偏芯カム7cとを有している。モータ本体7aは、ハウジング30のモータ取付面30dに取付けられている。また、駆動軸7b及び偏芯カム7cは、ハウジング30のモータ取付面30dに形成された図示せぬ取付穴内に回転可能に挿入されている。
【0037】
一対のピストン5a、5bは、バネ部材等によりハウジング30の中心方向に押し付けられており、その先端部は、モータ7の偏芯カム7cの外周面に接している。したがって、モータ7の偏芯カム7cが回転駆動すると一対のピストン5a、5bが往復運動を行う、いわゆるプランジャ型ポンプが構成される。なお、上記前輪用ポンプ5(図1参照)及び後輪用ポンプ6(図1参照)は、一対のピストン5a、5b及びモータ7の偏芯カム7c等により構成されている。
【0038】
一対のアキュムレータ9、12は、本体9a、12a及びカバー9b、12bを有し、ブレーキ液を一時的に貯留するようになっている。
また、ハウジング30の上面30f及び側面30cに形成された取付穴31v、31w、31x、31yには、一対のポンプ60a、60b、61a、61bがそれぞれ設けられている。
【0039】
図3は、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す斜視図である。図4は、ブレーキ液圧制御装置を示す分解斜視図である。また、図5は、ブラケットを示す斜視図である。
【0040】
ブレーキ液圧制御装置70は、図3に示すように、ブラケット41、第1支持部42及び第2支持部43からなる液圧ユニット支持構造40を備えている。液圧ユニット10は、液圧ユニット支持構造40に取付けられ、この液圧ユニット支持構造40を介して車体に取付けられる。第1支持部42及び第2支持部43は、ブラケット41に設けられている。第1支持部42は、液圧ユニット10のモータ取付面30dに略垂直な下面30eを支持する。一方、第2支持部43は、液圧ユニット10のモータ取付面30d及び下面30eの各々と略垂直に形成された側面30bを支持する。
【0041】
ブラケット41は、図4に示すように、板形状に形成され、液圧ユニット10が取付けられたときに液圧ユニット10の下面30eと対向する第1板部41aを備えている。この第1板部41aは、略中央に第1支持部42が組み込まれて設けられるための第1孔部41dが第1板部41aの厚さ方向に貫通して形成されている。なお、第1孔部41dは、液圧ユニット10がブラケット41に取付けられたときに、第1孔部41dの軸心が液圧ユニット10の重心近傍を通る位置に形成されている。すなわち、第1支持部42は、液圧ユニット10の重心の直下近傍で液圧ユニット10を支持している。
【0042】
また、ブラケット41の第2板部41bは、第1板部41aから離れる側の端部に、第2支持部43が組み込まれて設けられるための第2孔部41eが第2板部41bの厚さ方向に貫通して形成されている。第2孔部41eは、液圧ユニット10がブラケット41に取付けられたときに、第2孔部41eの軸心が液圧ユニット10の重心近傍を通る位置に形成されている。すなわち、第2支持部43は、液圧ユニット10の重心を通る水平線上近傍で液圧ユニット10を支持している。
【0043】
第2板部41bは、さらに、第1板部41aから離れる側の端部に、車体にブラケット41を固定するための第1固定孔41g(第1固定部)が第2板部41bの厚さ方向に貫通して形成されている。これにより、液圧ユニット支持構造40のブラケット41は、第2板部41bがボルト等によって車体に設けられた車体側固定ブラケット60(図3参照)に固定されることにより、ブレーキ液圧制御装置70が車体に取付けられるようになっている。
【0044】
一方、ブラケット41は、第1板部41aの一端辺であって、液圧ユニット10が取付けられたときに第1支持部42に対してモータ取付面30d側となる位置で、モータ7から離れる側に略垂直に屈曲された第3板部41cが形成されている。この第3板部41cは、第2板部41bから離れる側の端部近傍に、車体にブラケット41を固定するための第2固定孔41f(第2固定部)が第3板部41cの厚さ方向に貫通して形成されている。これにより、液圧ユニット支持構造40のブラケット41は、第3板部41cがボルト等によって車体に設けられた車体側固定ブラケット61(図3参照)に固定されることにより、ブレーキ液圧制御装置70が車体に取付けられるようになっている。なお、第2固定孔41fは、第1支持部42よりも第2板部41bから離れて位置しており、第1固定孔41gは、第2支持部43よりも第3板部41cから離れて位置している。
【0045】
本実施形態では、第1固定孔41gと第2固定孔41fと液圧ユニット10の重心Gとが、図5に示すように、略一直線上に位置するようになっている。すなわち、第1固定孔41g内の任意の位置と第2固定孔41f内の任意の位置とを結んだ仮想線L上に液圧ユニット10の重心Gが位置するようになっている。
【0046】
第1支持部42及び第2支持部43は、図4に示すように、マウントラバー44、カラー46、ワッシャ48及びボルト50を備えている。
マウントラバー44は、弾力性を有した振動吸収部材であり、軸心方向の中央近傍がくびれた円筒形状にゴム製材料で形成されている。マウントラバー44は、くびれた部分の外径がブラケット41の第1孔部41d及び第2孔部41eの内径と略同じ大きさに形成されている。これにより、マウントラバー44は、ブラケット41の第1孔部41dまたは第2孔部41eに組み込まれたときに、くびれた部分の両側が第1板部41aまたは第2孔部41eを両側から挟み込むようにして固定される。マウントラバー44は、くびれた部分を境に両側の外径が異なっており、液圧ユニット支持構造40に液圧ユニット10が取付けられたときに、外径が大きい側が液圧ユニット10側となるようにブラケット41に組み込まれている。
【0047】
カラー46は、図4に示すように、カラー部46aと座面部46bが一体に設けられている。なお、これらカラー部46aと座面部46bとは別体に設けられていてもよい。
カラー部46aは、円柱形状に形成され、マウントラバー44の内径と略同じ大きさの外径を有しており、軸線方向の長さもマウントラバー44の内周面の軸線方向長さと略同じ長さに形成されている。これにより、カラー部46aは、マウントラバー44内にほとんど隙間を有しないで嵌め込まれるようになっている。
【0048】
座面部46bは、マウントラバー44全体の外径と略同じ直径で形成されてカラー部46aの一端に設けられている。これにより、座面部46bは、液圧ユニット支持構造40に組み込まれた状態で、マウントラバー44の端面の略全面と広範囲で接するようになっている。一方、座面部46bは、液圧ユニット10が液圧ユニット支持構造40に取付けられたときに、マウントラバー44と接する面の裏面が、液圧ユニット10の下面30e及び側面30bに面接触により広範囲で接するようになっている。
【0049】
ワッシャ48は、外径がマウントラバー44全体の外径と略同じ大きさに形成されるとともに、内径がボルト50の直径と略同じ大きさに形成されている。
ボルト50は、ねじ部がワッシャ48及びカラー46を貫通し、ヘッド部がワッシャ48を貫通しないように形成されている。液圧ユニット支持構造40に液圧ユニット10が取付けられる際に、ボルト50は、ワッシャ48、カラー46の順に貫通して、液圧ユニット10の下面30eまたは側面30bに形成されたねじ穴30g,30hにねじ込まれてねじ止めされるようになっている。このとき、ボルト50は、図4に示すように、モータ7の回転軸7b(図2参照)の軸心に対して略垂直な方向に液圧ユニット10にねじ込まれる。すなわち、液圧ユニット支持構造40に液圧ユニット10が取付けられたときに、液圧ユニット10は、下面30e及び側面30bがカラー46、ワッシャ48及びボルト50に固定され、弾力性を有するマウントラバー44を介してブラケット41に支持される。このとき、第1支持部42は、液圧ユニット10の重心を通る線と下面30eとが略垂直になる位置で液圧ユニット10を支持している。これにより、液圧ユニット支持構造40は、ブラケット41の第1板部41aを水平にして液圧ユニット10を支持する場合に、カラー46の座面部46bは、液圧ユニット10の下面30eと接する接触面内に液圧ユニット10の重心の直下が位置するようになっている。一方、第2支持部43は、液圧ユニット10がブラケット41に取付けられたときに、液圧ユニット10の側面30bの平面部分とマウントラバー44とが接する接触面内に液圧ユニット10の重心を通る水平線が位置するようになっている。これにより、液圧ユニット支持構造40は、ブラケット41の第1板部41aを水平にして液圧ユニット10を支持する場合に、第2支持部43は、液圧ユニット10の重心を通る水平線上近傍で液圧ユニット10を支持している。
【0050】
本実施形態では、ブレーキ液圧制御装置70は、液圧ユニット10のモータ取付面30dに略垂直に形成された下面30eを支持する第1支持部42と、モータ取付面30d及び下面30eの各々と略垂直に形成された側面30bを支持する第2支持部43と、第1支持部42及び第2支持部43が取付けられるとともに、第2板部41bに形成された第1固定孔41g及び第3板部41cに形成された第2固定孔41fを有するブラケット41とを備え、第1固定孔41gと第2固定孔41fと液圧ユニット10の重心とが略一直線上に位置するように設けられている。これにより、ブレーキ液圧制御装置70は、液圧ユニット10を2つの支持部42,43だけでしっかりと支持できるとともに、ブラケット41をしっかりと車体側固定ブラケット60,61に固定することができる。このため、ブレーキ液圧制御装置70は、液圧ユニット10の車体への支持箇所を減らすことができるとともに、好ましくない振動を抑制することができる。
【0051】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記実施形態では、第3板部41cは、第1板部41aに対して略垂直に屈曲するように設けられているが、これに限定されず、第1板部41に対して斜めに屈曲していてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ブラケット41の第1固定部及び第2固定部を貫通孔としているが、これに限定されず、ブレーキ液圧制御装置のブラケットを車体に固定できれば、突起等のその他の構造を有していてもよい。
【符号の説明】
【0053】
7 モータ
7a モータ本体
7b 回転軸
7c 偏芯カム
8 ECU
10 ブレーキ液圧制御装置(液圧ユニット)
30 ハウジング
30a ECU取付面
30b 側面(第3の面)
30c 側面
30d モータ取付面(第1の面)
30e 下面(第2の面)
30f 上面
30g ねじ穴
30h ねじ穴
40 液圧ユニット支持構造
41 ブラケット
41a 第1板部
41b 第2板部
41c 第3板部
41d 第1孔部
41e 第2孔部
41f 第1固定孔(第2固定部)
41g 第2固定孔(第1固定部)
42 第1支持部
43 第2支持部
44 マウントラバー
44a くびれ部
44b フランジ部
44c 頭部
46 カラー
46a カラー部
46b 座面部、
47 カラー
48 ワッシャ
50 ボルト
60 車体側固定ブラケット
61 車体側固定ブラケット
70 ブレーキ液圧制御装置
100 ブレーキ用油圧回路
111 前輪用ディスクブレーキ装置(制動部)
116 後輪用ディスクブレーキ装置(制動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面にモータが取付けられて制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を制御してアンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットを備え、モータサイクルの車体に取付けられるブレーキ液圧制御装置において、
前記液圧ユニットの前記第1の面に略垂直に形成された第2の面を支持する第1支持部と、
前記液圧ユニットの前記第1の面及び前記第2の面の各々と略垂直に形成された第3の面を支持する第2支持部と、
前記第1支持部及び前記第2支持部が取付けられるブラケットとを備え、
前記ブラケットは、前記第1支持部が取付けられる第1板部と、前記第1板部に対して略垂直に設けられ、前記第2支持部が取付けられるとともに、前記車体に固定するための第1固定部を有する第2板部と、前記第1板部に対して屈曲するように設けられ、前記車体に固定するための第2固定部を有する第3板部とを有し、
前記第1固定部と前記第2固定部と前記液圧ユニットの重心とが略一直線上に位置することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第1固定部は、前記第2支持部よりも前記第3板部から離れて位置することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第2固定部は、前記第1支持部よりも前記第2板部から離れて位置することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第1固定部及び前記第2固定部の少なくとも一方は、貫通孔であることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第3板部は、前記第1板部に対して略垂直に屈曲するように設けられたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記液圧ユニットが取付けられたときに、前記第1支持部は、前記液圧ユニットの重心を通る線と前記第2の面とが略垂直になる位置で前記液圧ユニットを支持することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記液圧ユニットを前記車体に取付けたときに、前記第1支持部は、前記液圧ユニットの重心の直下近傍で前記液圧ユニットを支持することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記液圧ユニットを前記車体に取付けたときに、前記第2支持部は、前記液圧ユニットの重心を通る水平線上近傍で前記液圧ユニットを支持することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−106519(P2012−106519A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254803(P2010−254803)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】