説明

ブレーキ装置および車椅子

【課題】レバーの揺動に応じて回転される車輪を制止するためのブレーキパッドを容易に交換することができるブレーキ装置および車椅子を提供する。
【解決手段】車輪駆動装置が用いられる車椅子において、レバーの一端部に固定されてフレームに対して回転可能なカップ体30に、車輪と対向する側に突出する摩擦部材365を有するブレーキパッド36が、カップ体30の周壁32における車輪16と対向する端面34に設けられる。そして、ブレーキパッド36は、カップ体30が車輪とレバーとの間で固定された状態で、当該カップ体30に対して外周側から着脱自在なカートリッジ状に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の回転によって走行する移動体に用いられ、当該車輪に対してレバーを傾斜させることによって当該車輪の回転を制止させることが可能なブレーキ装置、および、このブレーキ装置を備える車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手動式の車椅子は、車輪と一体的に構成された環状のリムが車輪の外側に設けられている。介護者がいない場合、車椅子の着座者は、このリムを回転させることによって車椅子を走行させる。ところが、このようにして車椅子を走行させるためには上半身に大きな負荷が発生する。とくに、砂利道や水を含んだ軟らかい地面上を走行するときは、その負荷は多大なものとなり、よほどの体力がなければ車椅子を走行させることが困難となる。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1では、車椅子に座りながら自ら容易に走行可能な手動式の車椅子が開示されている。この車椅子は、座部の両側にフレームに対して回転自在な複数の車輪が配置されており、これらの車輪の略中心部を支点として車輪の回転方向に揺動可能なレバーが設けられている。そして、着座者が自らの手でレバーを前後方向に移動させることによって走行可能に構成されている。
【0004】
さらに、特許文献1に記載の車椅子では、レバーにおける車輪側の一端部に略円形のカップ体が固定されており、このカップ体にはブレーキパッドが設けられている。そして、着座者がレバーを車輪に対して近づけると、カップ体に設けられたブレーキパッドが車輪のディスクに当接して、車輪の回転を抑制することができるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特許第3689101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の車椅子では、車輪のディスクに当接したブレーキパッドが有する摩擦部材(例えば、ゴム部材)から生じる摩擦によって車輪の回転を抑制している。しかしながら、このブレーキパッドが有する摩擦部材は、その使用に応じて徐々に磨耗してしまう。よって、車椅子のブレーキング性能を維持して安全性を確保するためには、磨耗したブレーキパッドを適宜交換する必要があった。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の車椅子のように、ブレーキパッドがカップ体に一体に固定されていると、カップ体に対してブレーキパッドを着脱する作業(ブレーキパッドを交換する作業)が困難であるという問題があった。
【0008】
また、ブレーキパッド全体をカップ体から着脱するのではなく、磨耗した摩擦部材のみを交換することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の車椅子では、車輪の径内側に設けられた略円筒状部材(ボス)の内部に、ブレーキパッドから車輪側に突出した摩擦部材が収容されている。このように、ブレーキパッドが有する摩擦部材を被覆するように構成したのは、雨等によって水分がブレーキパッドに付着して車椅子のブレーキング性能が劣化することを防止するためである。このような構成により、カップ体が車輪に対して取り付けられた状態ではブレーキパッドの摩擦部材は外部に露出しないため、当該摩擦部材を交換する場合にはカップ体を車輪からその都度取り外す必要があり、作業者の手間と労力を軽減させることができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、レバーの揺動に応じて回転される車輪を制止するためのブレーキパッドを容易に交換することができるブレーキ装置および車椅子を提供することを目的とする。
【0010】
なお、本発明を適用できる移動体は、電気的駆動手段を伴うことなく例えば手動で車輪を回転させる非電動式の移動体であって、自走式の車椅子の他、例えば自転車に代表される非電動式の二輪車、非電動式の三輪車およびこれらを模した玩具等が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明において、以下の特徴は単独で、若しくは、適宜組合わされて備えられている。
【0012】
前記課題を解決するための本発明に係るブレーキ装置は、少なくとも車輪を回転自在に支持するフレームを有する移動体に用いられ、前記車輪の回転方向と略同一方向に向けて往復して揺動可能なレバーが前記車輪の略中心から当該車輪の径外側に向けて延在して設けられるブレーキ装置であって、盆状または椀状に形成された略円形の部材であって、前記車輪と前記レバーとの間であって且つ当該レバーの一端部に固定して設けられると共に、当該車輪の中心を略回転中心として前記フレームに対して回転可能な回転体と、前記回転体に固定されるとともに、前記レバーの揺動と連動して当該レバーの揺動方向と同一方向に回動可能な可動部と、前記可動部を回動可能に軸支するとともに、前記車輪の略中心部を貫通して前記移動体のフレームに固定される軸部材と、前記車輪の側部に対する距離が変位可能であると共に、前記回転体の外周縁部における前記車輪と対向する側部に設けられ、当該回転体から前記車輪と対向する側に突出する摩擦部材を有するブレーキ部材と、を備えており、前記ブレーキ部材が、前記回転体が前記車輪と前記レバーとの間であって且つ当該レバーの一端部に固定された状態で、当該回転体に対して外周側から着脱自在なカートリッジ状に構成されたことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、本発明に係るブレーキ装置が少なくとも車輪を回転自在に支持するフレームを有する移動体に用いられた場合、レバーの一端部に固定されてフレームに対して回転可能な回転体には、車輪と対向する側に突出する摩擦部材を有するブレーキ部材が、回転体の外周縁部における車輪と対向する側部に設けられる。そして、ブレーキ部材は、回転体が車輪とレバーとの間で固定された状態で、当該回転体に対して外周側から着脱自在なカートリッジ状に構成される。従って、回転体が車輪に対して取り付けられた状態のまま、当該回転体に対して外周側からブレーキ部材を着脱可能である。
【0014】
前記課題を解決するための本発明に係る車椅子は、座部を有するフレームに回転自在に支持され、前記座部を挟む両側に少なくとも一つずつ配置される複数の車輪と、前記複数の車輪のうち少なくとも一つの車輪に、当該車輪の略中心から当該車輪の径外側に向けて延在して設けられるとともに、当該車輪の回転方向と略同一方向に向けて往復して揺動可能なレバーと、盆状または椀状に形成された略円形の部材であって、前記車輪と前記レバーとの間であって且つ当該レバーの一端部に固定して設けられると共に、当該車輪の中心を略回転中心として前記フレームに対して回転可能な回転体と、前記回転体に固定されるとともに、前記レバーの揺動と連動して当該レバーの揺動方向と同一方向に回動可能な可動部と、前記可動部を回動可能に軸支するとともに、前記車輪の略中心部を貫通して前記フレームに固定される軸部材と、前記車輪の側部に対する距離が変位可能であると共に、前記回転体の外周縁部における前記車輪と対向する側部に設けられ、当該回転体から前記車輪と対向する側に突出する摩擦部材を有するブレーキ部材と、を備えており、前記ブレーキ部材が、前記回転体が前記車輪と前記レバーとの間であって且つ当該レバーの一端部に固定された状態で、当該回転体に対して外周側から着脱自在なカートリッジ状に構成されたことを特徴とする。
【0015】
上記構成の車椅子によれば、レバーの一端部に固定されてフレームに対して回転可能な回転体には、車輪と対向する側に突出する摩擦部材を有するブレーキ部材が、回転体の外周縁部における車輪と対向する側部に設けられる。そして、ブレーキ部材は、回転体が車輪とレバーとの間で固定された状態で、当該回転体に対して外周側から着脱自在なカートリッジ状に構成される。従って、回転体が車輪に対して取り付けられた状態のまま、当該回転体に対して外周側からブレーキ部材を着脱可能である。
【0016】
また、本発明に係るブレーキ装置または車椅子において、車輪の径内側には略円筒状のボス部材が設けられるとともに、ブレーキ部材が有する摩擦部材のうちで少なくとも回転体から突出した部分がボス部材の内部に収容されている。そして、回転体を車輪との距離が小さくなる方向に移動させたとき、ブレーキ部材の摩擦部材がボス部材の内部で車輪の側部に当接する。これによれば、回転体が車輪側に移動されると、ボス部材の内部で車輪の側部に当接するブレーキ部材の摩擦部材が生じる摩擦力によって、車輪の回転が制止される。
【0017】
また、本発明に係るブレーキ装置または車椅子において、回転体にはその外周面に沿って切欠部が形成されており、ブレーキ部材は回転体の切欠部に嵌め込まれる側とは反対側の面が湾曲形成されている。これによれば、ブレーキ部材が回転体の切欠部に嵌め込まれると、当該ブレーキ部材の外周面が回転体の外周縁部と略面一となる。
【0018】
また、本発明に係るブレーキ装置または車椅子において、ブレーキ部材は回転体の切欠部に嵌め込まれる側に略有底箱状の収容部が形成されており、この収容部の内部には車輪側に向けて突出するように摩擦部材が嵌着されている。これによれば、ブレーキ部材が回転体の切欠部に嵌め込まれると、収容部の内部に嵌着された摩擦部材が車輪側に向けて突出するように配置される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、回転体が車輪に対して取り付けられた状態のまま、当該回転体に対して外周側からブレーキ部材を着脱可能である。すなわち、回転体に設けられたブレーキ部材を交換する場合には、その都度回転体を車輪から取り外す手間を生じることなく、ブレーキ部材を着脱することができる。これにより、レバーの揺動に応じて回転される車輪を制止するためのブレーキ部材を容易に交換することができる。
【0020】
また、請求項2および請求項6に記載の発明によれば、回転体を車輪側に移動させることで、ボス部材の内部で車輪の側部に当接するブレーキ部材の摩擦部材にて生じる摩擦力によって、車輪の回転を制止することができる。そのため、回転体が固定されたレバーを車輪側に移動させるという簡易な操作で、車輪の回転を任意に制止することができる。さらに、ブレーキ部材の摩擦部材は、カップ体およびボス部材の内部に収容されている(言い換えれば、カップ体およびボス部材によって被覆されている)ので、雨等による水分が摩擦部材に付着することに起因するブレーキング性能の劣化を抑制することができる。
【0021】
また、請求項3および請求項7に記載の発明によれば、ブレーキ部材を回転体の切欠部に嵌め込むことで、ブレーキ部材を回転体に対して正確な取り付け部位に位置決めすることができるので、ブレーキ部材の交換作業が容易である。さらに、ブレーキ部材を回転体の切欠部に嵌め込むと、当該ブレーキ部材の外周面が回転体の外周面と略面一となるので、回転体が有する略円形の外観を損なうことがない。
【0022】
また、請求項4および請求項8に記載の発明によれば、ブレーキ部材を回転体の切欠部に嵌め込むことで、収容部の内部に嵌着された摩擦部材が車輪側に向けて突出するように配置されるので、ブレーキ部材の摩擦部材を回転体内における適切な位置に設けることが容易である。また、ブレーキ部材の摩擦部材は収容部内に嵌着されているので、ブレーキ部材から磨耗した摩擦部材のみを交換するのも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るブレーキ装置、および、このブレーキ装置が取り付けられた車椅子の好適な実施形態の例について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態では、車椅子に設けられた車輪を駆動させるための車輪駆動装置を、本発明に係るブレーキ装置として実装した場合を例示する。なお、本実施形態において、車椅子が前進する場合における車輪の回転方向をX方向、車椅子が後退する場合における車輪の回転方向をY方向と称する。
【0024】
まず、本実施形態における車輪駆動装置10を具備した車椅子1の概要について、図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る車輪駆動装置を具備した車椅子の一例を示す外観斜視図である。なお、車椅子1に具備された車輪駆動装置10が、本発明の「ブレーキ装置」に相当する。
【0025】
図1に示すように、この車椅子1は、着座者が着座可能な座部12と、車椅子1の骨格をなすフレーム14とを備えている。更に、従来の一般的な車椅子に見られる背もたれ部26およびキャスター28をも備えている。なお、座部12および背もたれ部26は、フレーム14に支持されている。
【0026】
座部12の両側には、フレーム14に対して回転自在な二つの車輪16が設けられている。更に、この二つの車輪16の各々に対応して、車輪駆動装置10が車輪16に対して座部12の反対側にそれぞれ設けられている。
【0027】
この車輪駆動装置10には、車輪16の略中心からこの車輪16の径外側に向けて延在し、且つ車椅子1に対して揺動自在な手動式のレバー22が設けられている。なお、レバー22は、着座者が把持部24を把持しつつX方向およびY方向に移動(揺動または旋回と称することもできる)させることができるように、車輪16の径外側まで延在している。
【0028】
そして、車椅子1の着座者が、X方向またはY方向に向けてレバー22を移動させると、このレバー22に対応する車輪16を、後述する力伝達機構66(図2および図6参照)を介して、この車輪16の径方向の中心O(以下、「車輪16の中心O」と称する。)を略回転中心として回転させることができる。
【0029】
なお、この明細書において、「略」とは、実質的であることを意味する。例えば、「車輪16の中心Oを略回転中心として回転させる」は、厳密な意味での車輪16の中心Oのみでなく、実質的に車輪16の中心Oを回転中心として回転させる場合も含む。
【0030】
次に、車輪駆動装置10について、図2〜図4を参照しつつ説明する。図2は、本発明に係る車輪駆動装置の一例を示す外観斜視図である。図3を参照しつつ説明する。図3は、図1に示される車輪からレバーを取り外した場合の一例を示す斜視図である。図4は、カップ体および制限機構の配置関係の一例を示す拡大斜視図である。
【0031】
図2および図3に示すように、この車輪駆動装置10は、車輪16とレバー22との間であって且つ車輪16の略中央部に、レバー22に固定されたカップ体(回転体)30が設けられている。このカップ体30は、車輪16の中心Oを通過し且つX方向およびY方向と直交する中心線Lを略回転中心として、フレーム14に対して回転可能となっている。
【0032】
そして、このカップ体30の内部には、フレーム14に固定された固定部44およびカップ体30に固定されたハブ(可動部)52が設けられている。そして、固定部44およびハブ52が、車輪16の径内側に設けられて、レバー22のX方向およびY方向への移動範囲を制限する制限機構として機能する。
【0033】
図4に示すように、固定部44は、ベース板46と、このベース板46から立設し且つベース板46と一体的な軸部材50とを有しており、軸部材50が車輪16(図1および図3参照)と略同心となるように、フレーム14(図1および図3参照)に固定される。そして、ベース板46の一方の端部には被当接部47が形成されており、この被当接部47は軸部材50が立設した側と同じ側にベース板46から突出している。また、この被当接部47には、径内側に貫通すると共に雌ネジが形成された孔(図示外)が形成されており、この孔(図示外)には、ボルト49が螺合している。
【0034】
一方、ハブ52は、一方の端部54に略T字が形成されており、略中央部には、円板状に形成された円板部60を有している。この円板部60から一方の端部54にかけては、第1当接部58が形成されている。また、円板部60から他方の端部56にかけては第2当接部59が形成されている。更に、第2当接部59近傍の円板部60には、径外側に突出した凸部62が形成されており、更に、凸部62と第2当接部59との間には、径内側に凹んだ凹部64が形成されている。なお、図示しないが、ハブ52の略中央部には、固定部44(図4参照)の軸部材50が貫通可能な貫通孔が形成されている。
【0035】
なお、ハブ52は、一方の端部54がカップ体30に支持され、他方の端部56がカップ体30に対してX方向およびY方向に略直交する方向に若干移動できるように、後述するコイルバネ40によって保持されている。そして、軸部材50が、ハブ52の略中央部に形成された前述の貫通孔に貫通されることで、被当接部47がハブ52の円板部60の径外側に配置されている。
【0036】
ここで、この車輪駆動装置10を車椅子1に取り付けるときは、先ず、軸部材50を、車輪16の中央部に形成された貫通孔161に貫通させる。なお、車輪16の中央部には、この車輪16と同心となるように後述の第4ギヤ86が取り付けられているので、軸部材50は、貫通孔161および第4ギヤ86の中央部に形成された貫通孔861の両方に貫通させる。
【0037】
貫通孔861,161を貫通して軸部材50は、フレーム14に支持される。より具体的には、フレーム14に固定された固定プレート112に、軸部材固定部114によって軸部材50が固定される。また、貫通孔161の内側には軸受が設けられているので、車輪16は軸部材50に回転自在に支持されることとなる。即ち、車輪16は、軸部材50を介してフレーム14に回転自在に支持される。
【0038】
さらに、軸部材固定部114には、軸部材50を誘導するための軸部材誘導孔116が形成されている。例えば、軸部材50を多角柱とし、軸部材誘導孔116の内側を、軸部材50に対応する多角孔とすることによって、軸部材50を、軸部材誘導孔116に容易に導くことが可能となる。このように、軸部材50を貫通孔861,161に貫通させてフレーム14に支持させるだけで、車輪駆動装置10を車椅子1に容易に取り付けることが可能となる。
【0039】
ここで、着座者が、レバー22(図1等参照)をX方向またはY方向に移動させた場合における上記制限機構の作用について説明する。
【0040】
着座者が、レバー22をX方向に移動させると、それに伴ってカップ体30およびハブ52がX方向に回転する。このとき、固定部44はフレーム14に対してX方向およびY方向に回転しないように固定されているので、被当接部47に対して第1当接部58が当接する。これにより、レバー22のX方向の移動が制限される。
【0041】
一方、着座者が、レバー22をY方向に移動させると、X方向に移動させた場合と同様の原理により、被当接部47に対して第2当接部59が当接する。これにより、レバー22のY方向の移動が制限される。このようにして、X方向およびY方向のいずれの方向についても、レバー22の移動範囲が、中心線Lを略回転中心として約180度の範囲で制限される。
【0042】
更に、本実施形態では、被当接部47の内側に突出するようにボルト49のねじ込み量を調整することによって、固定部44とハブ52とを保持することが可能となる。
【0043】
即ち、ボルト49が被当接部47の内側に突出した場合において、着座者がレバー22をY方向に向けて移動させたとき、被当接部47と第2当接部59とが当接するよりも先に、被当接部47から内側に突出したボルト49と凸部62とが当接する。そして、着座者が、レバー22を更にY方向に移動させると、被当接部47が径外側に弾性変形し、被当接部47が凹部64に配置される。このとき、ボルト49と凹部64とが係合することによって、カップ体30およびハブ52は、固定部44に対してX方向およびY方向への回転が制限される。
【0044】
このようにして、ハブ52に形成された凹部64において固定部44とハブ52とが保持されて、固定部44とカップ体30とが固定される。ひいてはフレーム14に対してレバー22が固定される。
【0045】
次に、カップ体30の詳細な構成について、図4を参照しつつ説明する。
【0046】
図4に示すように、カップ体30は、その周縁部に周壁32が形成された椀状または盆状の形状をなす。そして、カップ体30の凹面38には、ハブ52の他方の端部56に対して付勢するコイルバネ40が設けられている。なお、コイルバネ40は、ハブ52の他方の端部56に対して付勢することができる弾性部材であればこれに限られるものではなく、例えば板バネであっても良い。
【0047】
さらに、カップ体30の周壁32においては、車輪16と対向する端面34側にブレーキパッド36が設けられている。このブレーキパッド36は、車輪16と対向する側に突出する摩擦部材(例えば、ゴム部材などの弾性体)を有するブレーキ部材であるが、詳細は後述する。
【0048】
ところで、本実施形態では、車輪16の径内側に、当該車輪16と略同軸をなす略円筒状のボス18が設けられている。すなわち、ボス18の軸線が車輪16の中心Oを通る軸線と略一致するように、ボス18が車輪16から側面に向けて突設されている(図3参照)。
【0049】
そして、カップ体30は、少なくとも端面34が円筒状のボス18の内径側に位置して、周壁32の端面34と車輪16のボス18の凹面20(図3参照)とが対向するように配置されている。なお、通常時は、コイルバネ40の付勢力によって、カップ体30の周壁32の端面34と車輪16のボス18の凹面20との間には間隙が形成されている。また、ボス18が有する内径はカップ体30(周壁32)の外径よりも若干大きくなっている。すなわち、カップ体30はボス18の凹面20に対して近接又は離間可能であり、またカップ体30はボス18に対して回転または傾斜することが可能である。
【0050】
このような構成のもと、着座者がコイルバネ40の付勢力に対抗してレバー22を自側に傾けると、カップ体30と車輪16の側面(即ちボス18の凹面20)との距離が小さくなる方向にカップ体30が移動し、ブレーキパッド36とボス18の凹面20とが当接する。言い換えれば、ブレーキパッド36はカップ体30に連動して、車輪16の側部(ボス18の凹面20)に対する距離が変位可能となっている。
【0051】
そして、着座者がレバー22を更に強く自側に傾けることによって、ブレーキパッド36(詳細には、ブレーキパッド36が有する摩擦部材)がカップ体30の周壁32の端面34と車輪16のボス18の凹面20とによって押圧されて、車輪16の回転速度が抑制される。
【0052】
次に、力伝達機構66の構成および作用の詳細について、図2および図5を参照しつつ説明する。図5(a)は、力伝達機構の正面図であり、図5(b)は、図5(a)に示されるA部の詳細図である。
【0053】
図2および図5(a)に示すように、力伝達機構66は、カップ体30と車輪16との間に配置されている。すなわち、力伝達機構66は、第1ギヤ80、第2ギヤ82、第3ギヤ84、第4ギヤ86、内側レース68および楔締要素69を備えている。第1ギヤ80は、略円形の中空部801を有しており、固定部44に固定して取り付けられる第2ギヤ82と螺合するように配置されている。また、第3ギヤ84が、第2ギヤ82と同心であって且つ第2ギヤ82と一体的に重ね合わせて配置されている。さらに、第4ギヤ86が、第1ギヤ80と同心であって且つ第3ギヤ84と螺合するように配置されている。この第4ギヤ86は、車輪16に固定される。
【0054】
これにより、第1ギヤ80が回転するとこれに螺合する第2ギヤ82が回転する。そして、第2ギヤ82が回転するとこれと一体的である第3ギヤ84が回転する。さらに、第3ギヤ84が回転するとこれに螺合する第4ギヤ86が回転する。第4ギヤ86は車輪16に固定されているので、第1ギヤ80が回転すると、この回転力が、第2ギヤ82、第3ギヤ84および第4ギヤ86を介して車輪に伝達される。
【0055】
そして、第1ギヤ80の中空部801には内側レース68および楔締要素69が配置される。より具体的には、第1ギヤ80の径内側に楔締要素69が配置され、さらにこの楔締要素69の径内側に内側レース68が配置される。即ち、楔締要素69は、第1ギヤ80と内側レース68との間に配置されることとなる。
【0056】
また、内側レース68の中心Oには、軸部材50が内側レース68に対して回転自在に貫通している。ここで、内側レース68は、ハブ52の円板部60と同心であって且つハブ52と一体的に固定して取り付けられているので、レバー22を揺動させるとハブ52の回転に伴って回転する。
【0057】
一方、軸部材50は車椅子1のフレーム14に固定される。即ち、車輪駆動装置10が車椅子1に取り付けられた場合、レバー22を揺動させると内側レース68が軸部材50に対して回転することとなる。
【0058】
そして、図5(b)に示すように、内側レース68には、大径角部70a,70bおよび最小径部72が交互に形成されている。内側レース68の外周面と第1ギヤ80の内周面との間の距離は、大径角部70a,70bが形成された部位における距離σ1が最も小さく、最小径部72が形成された部位における距離σ2が最も大きい。
【0059】
また、内側レース68と第1ギヤ80との間には複数個のローラ74が配置されている。各ローラ74の外径rは、距離σ1よりも大きく、かつ距離σ2よりも小さい。なお、各ローラ74は、着座者によって、X方向側の大径角部70aとY方向側の大径角部70bとの間の任意の位置に配置可能に構成されている。
【0060】
各ローラ74の間には支持部材76が配置されている。各ローラ74の両側には押さえバネ78が配置されている。この押さえバネ78は、各ローラ74を内側レース68の側に向けて付勢している。
【0061】
ここで、力伝達機構66の作用について、図5(b)を参照しつつ説明する。
【0062】
各ローラ74が最小径部72の近傍に配置されているとき、着座者が、X方向およびY方向のいずれの方向にレバー22(図1等参照)を移動させても、ハブ52および内側レース68が第1ギヤ80に対して空転する。距離σ2が各ローラ74の外径より大きいからである。
【0063】
各ローラ74がX方向側の大径角部70aの近傍に配置されているとき、着座者が、X方向にレバー22を移動させても、ハブ52および内側レース68が第1ギヤ80に対して空転する。X方向側の大径角部70aから最小径部72にかけて、内側レース68の外周面と第1ギヤ80の外周面との距離が次第に大きくなっているからである。
【0064】
一方、Y方向にレバー22を移動させると、ローラ74の楔締め効果により、ハブ52、内側レース68および第1ギヤ80が一体となってY方向に回転する。最小径部72からY方向側の大径角部70bにかけて、内側レース68の外周面と第1ギヤ80の外周面との距離が次第に小さくなっているからである。これにより、内側レース68の回転力が各ギヤを介して車輪16(図1等参照)に伝達されて、車輪16がレバー22の回転方向と同じY方向に回転する。
【0065】
各ローラ74がY方向側の大径角部70bの近傍に配置されているときは、各ローラ74がX方向側の大径角部70aに配置されている場合と動作が逆になるものの、同様の作用を奏する。即ち、着座者がX方向にレバー22を移動させると、ハブ52、内側レース68および第1ギヤ80が一体となってX方向に回転し、Y方向にレバー22を移動させると、ハブ52および内側レース68が第1ギヤ80に対して空転する。
【0066】
なお、各ローラ74の配置位置については、着座者が、レバー22に設けられた操作部90を周方向(α方向またはβ方向)に操作することによって決めることができる(図2参照)。
【0067】
また、ハブ52および内側レース68が第1ギヤ80に対して空転するとき、内側レース68と第1ギヤ80との間に間隙が形成されているので、内側レース68が第1ギヤ80に対して無段で空転する。即ち、着座者は、力伝達機構がラチェットタイプである場合のような衝撃を受けることがない。
【0068】
次に、ブレーキパッド36の構成および作用の詳細について、図6〜図8を参照しつつ説明する。図6は、ブレーキパッドの詳細を示す拡大斜視図である。図7は、カップ体の詳細を示す斜視図である。図8は、カップ体の詳細を示す背面図である。
【0069】
図6に示すように、ブレーキパッド36は、その長手方向が緩やかに湾曲するように曲げ形成された細長板状の基板部360を有し、その長手方向の両端縁部361には、基板部360の平面に対して略垂直に貫通したネジ孔362が各々形成されている。また、この湾曲形成された基板部360における椀状の凹みが形成された面に対して、車輪16と対向する方向に開口する有底箱状の収容部363が形成されている。
【0070】
この収容部363は、基板部360において椀状の凹みが形成された面から、両端縁部361の近傍で略垂直にそれぞれ立設される2つの側壁3631と、2つの側壁3631の上端縁部から各々延設されて基板部360と略平行をなす側壁3632とを有する。そして、基板部360,側壁3631,側壁3632とで形成された筒状体の一端側の開口部を塞ぐとともに、当該収容部363の底部をなす底壁3633を有する。
【0071】
そして、収容部363の内部(すなわち、基板部360,側壁3631,側壁3632,底壁3633により囲繞された空間内)には、開口部364から略四角柱状をなす摩擦部材365が嵌め込まれている。この摩擦部材365は、例えば、NBRなどが加工形成された弾性体(ゴム部材)である。この摩擦部材365は、収容部363の内部に嵌め込まれた場合に、その表面が外部に突出する程度の高さ(厚み)を有している。
【0072】
なお、収容部363の外部に突出する表面には、数箇所(ここでは、3箇所)の切れ込み部3651が形成されている。この複数の切れ込み部3651は、摩擦部材365の表面が車輪16のボス18の凹面20に当接された場合に、当該車輪16の回転をより効率的に制止させるためのブレーキ溝として機能する。
【0073】
ここで、ブレーキパッド36の着脱方法(交換方法)およびブレーキパッド36の作用について説明する。
【0074】
図7及び図8に示すように、カップ体30の周壁32には、車輪16と対向する端面34に沿って、ブレーキパッド36が外周側から着脱される切欠部321が形成されている。なお、本実施形態では、レバー22を挟んで各々対向する位置で位相が略120度異なるように2つの切欠部321が形成されており、各切欠部321にブレーキパッド36が各々着脱可能となっている。
【0075】
ところで、カップ体30の切欠部321は、ブレーキパッド36の基板部360と略同一の大きさ及び形状となるように形成されている。また、カップ体30の周壁32の厚みは、ブレーキパッド36の基板部360の厚みと略等しい。そのため、ブレーキパッド36が切欠部321は取り付けられた場合でも、カップ体30の外周面に隙間や凹凸が生じないようになっている。
【0076】
そして、この切欠部321の両端縁部に沿って、2つの板状の被係着部371が設けられている。2つの被係着部371は、その上面の一部が周壁32の内側面に固定されて、その上面の残りが切欠部321に向けて突出するように取り付けられている。そして、各被係着部371において切欠部321に突出した部位が、ブレーキパッド36の端縁部361と各々重ね合わされる受け面として機能し、当該受け面となる部分にはそれぞれネジ孔372が形成されている。ただし、ブレーキパッド36の収容部363が切欠部321からカップ体30の内部に配置される際の妨げとならないように、2つの被係着部371の間に形成される隙間は収容部363の長手方向の大きさよりも広くなっている。
【0077】
そして、カップ体30に対してブレーキパッド36を取り付ける場合は、まずブレーキパッド36をカップ体30に対して外周側から近接させて、収容部363を内側にして当該ブレーキパッド36を切欠部321に嵌め込む。これにより、ブレーキパッド36の両端縁部361は2つの被係着部371にそれぞれ重ね合わされる。また、先述のように、この切欠部321はブレーキパッド36の基板部360と略同一形状および大きさであるため、基板部360が切欠部321と一致するように嵌め込むだけで、ブレーキパッド36のカップ体30に対する正確な位置決めがなされる。
【0078】
これにより、ブレーキパッド36の両端縁部361が重ね合わされた両被係着部371では、各端縁部361のネジ孔362と各被係着部371のネジ孔372とが連通する。そして、これら連通した2つのネジ孔362,372に対してカップ体30の外周側から係止ネジ380を各々羅合させることにより、カップ体30に対してブレーキパッド36が一体に固定される。そして、カップ体30の内径側において、収容部363に収容された摩擦部材365が、車輪16に対して対向する方向に突設するように配置される。
【0079】
このように、ブレーキパッド36をカップ体30の切欠部321に嵌め込むことで、ブレーキパッド36をカップ体30に対して正確な取り付け部位に位置決めすることができると同時に、収容部363の内部に嵌着された摩擦部材365が車輪16側に向けて突出するように適切に配置されるため、ブレーキパッド36の交換作業が容易である。また、ブレーキパッド36の外周面がカップ体30の周壁32と略面一となるので、カップ体30が有する略円形の外観を損なうことがない。
【0080】
そして、レバー22が車輪16側に所定量傾斜すると、これに連動してカップ体30も所定量傾斜するので、ブレーキパッド36の摩擦部材365が車輪16のボス18の凹面20に当接することで車輪16の回転速度が抑制される。すなわち、カップ体30が固定されたレバー22を車輪16側に移動させるという簡易な操作で、車輪16の回転を任意に制止することができる。
【0081】
一方、カップ体30からブレーキパッド36を取り外す場合は、上記と逆の手順を行えばよい。すなわち、カップ体30の外周側から2つの係止ネジ380を各々2つの連通するネジ孔362,372から取り外したのちに、ブレーキパッド36の切欠部321に対する嵌め込み状態を解除することで、当該ブレーキパッド36をカップ体30から外周側に取り外せばよい。
【0082】
なお、カップ体30から取り外されたブレーキパッド36について、磨耗した摩擦部材365のみを交換することができる。すなわち、ブレーキパッド36の収容部363に嵌め込まれた磨耗した摩擦部材365を新しい摩擦部材365に取り替えればよいため、当該ブレーキパッド36を再利用するのも容易である。
【0083】
このように、上記構成に係るブレーキパッド36では、カップ体30が車輪16に対して取り付けられた状態のままであっても、カップ体30の外周側から係止ネジ380を用いてカップ体30に取り付け、または、取り外しすることができる。また、ブレーキパッド36の端縁部361とカップ体30の被係着部371とを各々の接合面とすることで、カップ体30とブレーキパッド36との接合部位に段差や凹凸が生じないようにすることができる。
【0084】
ところで、本実施形態では、カップ体30に対してブレーキパッド36を取り付けられると、カップ体30に外圧が加えられていない状態(すなわち、カップ体30が車輪16の側面(ボス18の凹面20)と略平行な状態)では、ブレーキパッド36の摩擦部材365のうちで収容部363から突出した部分は、ボス18の内部に収容される。このように、ブレーキパッド36の摩擦部材365は、カップ体30およびボス18の内部に収容される(言い換えれば、カップ体30およびボス18によって被覆される)ので、雨等による水分が摩擦部材365に付着することに起因するブレーキング性能の劣化を抑制することができる。
【0085】
一方で、摩擦部材365がカップ体30およびボス18によって被覆されていると、カップ体30の外周側からブレーキパッド36を交換する場合に、摩擦部材365のうちで収容部363から突出した部分がボス18に引っかかってしまい、交換作業の妨げとなることがある。そこで、カップ体30に対してブレーキパッド36を着脱する場合には、レバー22を車輪16とは反対側に傾斜させることが望ましい。すなわち、着座者等がレバー22を自側とは反対側に押すことで、カップ体30と車輪16の側面(即ちボス18の凹面20)との距離が大きくなる方向にカップ体30が移動し、ブレーキパッド36がボス18から離間する。これにより、ボス18によって被覆されていた摩擦部材365の突出部分が、ボス18の外部に露出されることになるため、カップ体30の外周側からブレーキパッド36を着脱する場合でも、摩擦部材365の突出部分が作業の妨げとなることはない。
【0086】
以上のように、本実施形態の車輪駆動装置10は、車輪16の回転によって走行する車椅子1に用いられものであって、レバー22が車輪16の略中心から当該車輪16の径外側に向けて延在して設けられる。そして、当該レバー22を車輪16に対して揺動させることによって当該車輪16を回転させることが可能である。さらに、当該レバー22を車輪16に対して傾斜させることによって当該車輪16の回転を制止させることが可能である。
【0087】
より詳細には、レバー22の一端部に固定されてフレーム14に対して回転可能なカップ体30には、車輪16と対向する側に突出する摩擦部材365を有するブレーキパッド36が、カップ体30の周壁32における車輪16と対向する端面34に設けられる。そして、ブレーキパッド36は、カップ体30が車輪16とレバー22との間で固定された状態で、当該カップ体30に対して外周側から着脱自在なカートリッジ状に構成される。従って、カップ体30が車輪16に対して取り付けられた状態のまま、当該カップ体30に対して外周側からブレーキパッド36を着脱可能である。
【0088】
よって、カップ体30に設けられたブレーキパッド36を交換する場合には、その都度カップ体30を車輪16から取り外す手間を生じることなく、ブレーキパッド36を着脱することができる。そのため、レバー22の揺動に応じて回転される車輪16を制止するためのブレーキパッド36を容易に交換することができる。
【0089】
なお、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が可能である。
【0090】
例えば、カップ体30に設けられるブレーキパッド36の形状,位置,大きさ,数量などは適宜変更可能である。具体的には、カップ体30に対してブレーキパッド36を1つのみ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。また、ブレーキパッド36を複数設ける場合には、各ブレーキパッド36が同一のものである必要はなく、異なる形状や大きさなどで構成されていてもよい。
【0091】
また、ブレーキパッド36に具備される摩擦部材365についても、その形状,大きさ,材質などは適宜変更可能である。すなわち、本実施形態では摩擦部材365として弾性体(ゴム部材)を例示したが、車輪16の回転を好適に制止できるのであれば、摩擦部材365として金属製の摩擦体などを用いてもよい。
【0092】
また、カップ体30に対するブレーキパッド36の取付け構造は、カップ体30が車輪16に対して取り付けられた状態のままでブレーキパッド36を着脱できるのであれば、上記に示したものに限定されないことはいうまでもない。例えば、カップ体30の外周側から係脱可能な止め金具によって、ブレーキパッド36をカップ体30に着脱できるようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態において、車椅子1は全体の骨格をなすフレーム14に着座可能な座部12が支持され、この座部12の挟む両側にフレーム14に対して回転自在な車輪16が一つずつ配置されている場合を例示した。しかし、車輪16の数はこれに限られず、例えば、座部12を挟む両側に二つずつの車輪が一対となって配置されていてもよい。
【0094】
さらに、本実施形態に係る車椅子1は、一つの車輪16に対して車輪駆動装置10が一つずつ設けられているが、これに限られず、いずれか一方の車輪16についてのみ車輪駆動装置10が設けられていてもよい。この場合、座部12を挟む両側の車輪16を連結することによって、車輪駆動装置10が設けられた側の車輪16を駆動輪、他の車輪16を従動輪とすることが好ましい。これにより、座部12を挟む両側の車輪16のうちいずれか一方の車輪16についてのみ車輪駆動装置10を設けた場合であっても、車椅子1を前進または後退させることが可能となる。
【0095】
また、本実施形態では、車椅子1を駆動させる車輪駆動装置10を本発明の「ブレーキ装置」として実装した場合を例示したが、本発明の「ブレーキ装置」は車輪に対してレバーを傾斜させることによって当該車輪の回転を制止させることができればよい。そのため、例えば駆動機構(力伝達機構66など)を具備しない車輪駆動装置10のように、車輪を回転させる動力を供給しないものであっても、本発明の「ブレーキ装置」として適用することができる。
【0096】
また、上述の実施形態において、「レバー22」は、車輪16を回転させるといった機能は同じであるものの、一般的に「アーム」や「ハンドル」と称される場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る車輪駆動装置を具備した車椅子の一例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明に係る車輪駆動装置の一例を示す外観斜視図である。
【図3】図1に示される車輪からレバーを取り外した場合の一例を示す斜視図である。
【図4】カップ体および制限機構の配置関係の一例を示す拡大斜視図である。
【図5】図5(a)は、力伝達機構の正面図であり、図5(b)は、図5(a)に示されるA部の詳細図である。
【図6】ブレーキパッドの詳細を示す拡大斜視図である。
【図7】カップ体の詳細を示す斜視図である。
【図8】カップ体の詳細を示す背面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 車椅子
10 車輪駆動装置
12 座部
14 フレーム
16 車輪
18 ボス
20 凹面
22 レバー
30 カップ体
32 周壁
34 端面
36 ブレーキパッド
44 固定部
46 ベース板
47 被当接部
50 軸部材
52 ハブ
66 力伝達機構
321 切欠部
360 基板部
361 端縁部
362 ネジ孔
363 収容部
364 開口部
365 摩擦部材
371 被係着部
372 ネジ孔
380 係止ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車輪を回転自在に支持するフレームを有する移動体に用いられ、前記車輪の回転方向と略同一方向に向けて往復して揺動可能なレバーが前記車輪の略中心から当該車輪の径外側に向けて延在して設けられるブレーキ装置であって、
盆状または椀状に形成された略円形の部材であって、前記車輪と前記レバーとの間であって且つ当該レバーの一端部に固定して設けられると共に、当該車輪の中心を略回転中心として前記フレームに対して回転可能な回転体と、
前記回転体に固定されるとともに、前記レバーの揺動と連動して当該レバーの揺動方向と同一方向に回動可能な可動部と、
前記可動部を回動可能に軸支するとともに、前記車輪の略中心部を貫通して前記移動体のフレームに固定される軸部材と、
前記車輪の側部に対する距離が変位可能であると共に、前記回転体の外周縁部における前記車輪と対向する側部に設けられ、当該回転体から前記車輪と対向する側に突出する摩擦部材を有するブレーキ部材と、を備えており、
前記ブレーキ部材が、前記回転体が前記車輪と前記レバーとの間であって且つ当該レバーの一端部に固定された状態で、当該回転体に対して外周側から着脱自在なカートリッジ状に構成されたことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記車輪の径内側には、当該車輪と略同軸をなす略円筒状のボス部材が設けられるとともに、
前記ブレーキ部材が有する摩擦部材のうちで少なくとも前記回転体から突出した部分が、前記ボス部材の内部に収容されており、
前記回転体を当該車輪との距離が小さくなる方向に移動させたとき、当該ブレーキ部材の摩擦部材が当該ボス部材の内部で当該車輪の側部に当接して、当該車輪の回転が制止されることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記回転体は、当該回転体の外周縁部に沿って前記ブレーキ部材を外周側から嵌め込み可能な切欠部が形成されており、
前記ブレーキ部材は、前記回転体の切欠部に嵌め込まれると当該回転体の外周面と略面一となるように、当該回転体の切欠部に嵌め込まれる側とは反対側の面が湾曲形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記ブレーキ部材は、当該回転体の切欠部に嵌め込まれる側に、前記車輪と対向する方向に向けて開口する略有底箱状の収容部が形成されており、
前記ブレーキ部材の収容部の内部には、当該収容部から前記車輪側に向けて突出するように前記摩擦部材が嵌着されたことを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
座部を有するフレームに回転自在に支持され、前記座部を挟む両側に少なくとも一つずつ配置される複数の車輪と、
前記複数の車輪のうち少なくとも一つの車輪に、当該車輪の略中心から当該車輪の径外側に向けて延在して設けられるとともに、当該車輪の回転方向と略同一方向に向けて往復して揺動可能なレバーと、
盆状または椀状に形成された略円形の部材であって、前記車輪と前記レバーとの間であって且つ当該レバーの一端部に固定して設けられると共に、当該車輪の中心を略回転中心として前記フレームに対して回転可能な回転体と、
前記回転体に固定されるとともに、前記レバーの揺動と連動して当該レバーの揺動方向と同一方向に回動可能な可動部と、
前記可動部を回動可能に軸支するとともに、前記車輪の略中心部を貫通して前記フレームに固定される軸部材と、
前記車輪の側部に対する距離が変位可能であると共に、前記回転体の外周縁部における前記車輪と対向する側部に設けられ、当該回転体から前記車輪と対向する側に突出する摩擦部材を有するブレーキ部材と、を備えており、
前記ブレーキ部材が、前記回転体が前記車輪と前記レバーとの間であって且つ当該レバーの一端部に固定された状態で、当該回転体に対して外周側から着脱自在なカートリッジ状に構成されたことを特徴とする車椅子。
【請求項6】
前記車輪の径内側には、当該車輪と略同軸をなす略円筒状のボス部材が設けられるとともに、
前記ブレーキ部材が有する摩擦部材のうちで少なくとも前記回転体から突出した部分が、前記ボス部材の内部に収容されており、
前記回転体を当該車輪との距離が小さくなる方向に移動させたとき、当該ブレーキ部材の摩擦部材が当該ボス部材の内部で当該車輪の側部に当接して、当該車輪の回転が制止されることを特徴とする請求項5に記載の車椅子。
【請求項7】
前記回転体は、当該回転体の外周縁部に沿って前記ブレーキ部材を外周側から嵌め込み可能な切欠部が形成されており、
前記ブレーキ部材は、前記回転体の切欠部に嵌め込まれると当該回転体の外周面と略面一となるように、当該回転体の切欠部に嵌め込まれる側とは反対側の面が湾曲形成されたことを特徴とする請求項5または6に記載の車椅子。
【請求項8】
前記ブレーキ部材は、当該回転体の切欠部に嵌め込まれる側に、前記車輪と対向する方向に向けて開口する略有底箱状の収容部が形成されており、
前記ブレーキ部材の収容部の内部には、当該収容部から前記車輪側に向けて突出するように前記摩擦部材が嵌着されたことを特徴とする請求項7に記載の車椅子。













【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−95879(P2008−95879A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279784(P2006−279784)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(505320399)アバンテ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】