説明

ブレーキ試験装置

【課題】厚みを容易に変更することができ、かつ、ブレーキパッドからの押圧力によって厚みが変更されることのないブレーキ試験装置。
【解決手段】板状の制動対象と、制動対象に当接して摩擦力を付与するブレーキパッドを有する制動装置の制動対象の代替となるブレーキ試験装置1であって、互いに平行に配置された一対の板状台座6,7であって、対向する二面6a,7aのうち少なくとも一面に板状台座の一端に向かって面同士の距離が漸次大きくなるように形成された斜面21,22,23,24が形成され、対向する二面が接近及び離間する方向に移動自在に構成された一対の板状台座と、斜面と斜面に対向する面との間に形成された楔形状隙間に挿入される楔形状のクサビ部材8,9と、クサビ部材を挿入方向及びその反対方向に駆動する駆動機構と、一対の板状台座が互いに接近する方向に付勢するバネ付ワイヤ28とを備えることを特徴とするブレーキ試験装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の制動対象と、この制動対象に当接して摩擦力を付与するブレーキパッドとからなる制動装置の、制動対象の代替となるブレーキ試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、例えば鉄道車両用のディスクブレーキ装置71では、台車枠に支持されたキャリパ72によって保持されるブレーキパッド73を車輪74とともに回転するディスク75の両面部に対面するように配置しており、ブレーキパッド73をディスク75に当接させ摩擦力を付与することによって制動力を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のディスクブレーキ装置においては、ディスクの摩耗の進行によりブレーキパッドとディスクとの間の隙間が広がることを防止するために、自動隙間調整機構が組み込まれているものが一般的である(例えば、特許文献2参照)。
自動隙間調整機構は、隙間の広がりによってブレーキパッドのストロークが大きくなった場合、ブレーキパッドの初期ストローク位置(制動動作前の位置)をディスクに近づけることで隙間を一定に保つ機構である。
【0004】
ところで、自動隙間調整機構を備えたディスクブレーキ装置を試験する際は、試験の効率化のために、鉄道車両にディスクブレーキ装置を搭載する前に、ディスクブレーキ装置単体で試験を実施することがある。この場合、制動対象となる車輪及びディスクの代替となる試験部材を用いることが一般的である。
【0005】
図6に示すように、試験部材101は、押付力を測定するためのロードセルを備えた試験台102と、車輪とディスクの厚さを模擬するためのブロック103とから構成されている。一方キャリパ72には、複数枚のシム板104が装着されており、シム板104を増減することでブレーキパッド73及びディスク75の厚さの摩耗を模擬している。
【0006】
また、図7に示すように、ブレーキパッド73及びディスク75の厚さを模擬するために、ロードセルを備えた試験台106にエアーシリンダー107を設けることで、想定した摩耗に応じて厚さを調整可能な試験部材105も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−257578号公報
【特許文献2】特開昭59−192666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の試験部材のうち、シム板を用いる形式のものは、摩耗を模擬するためにシム板を抜き差しする必要があるために、試験に手間が掛かるという問題がある。また、車輪及びディスクの代替となる試験台の厚さの変更ができないため、様々な種類のディスクに対応することが難しいという問題がある。
また、エアーシリンダーを用いる形式のものは、作動流体である空気が圧縮性を有するため、押付面に押圧力を加えた際、厚さを保持できないという問題がある。
【0009】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、厚みを容易に変更することができ、かつ、ブレーキパッドからの押圧力によって厚みが変更されることのない試験部材を備えたブレーキ試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係るブレーキ試験装置は、板状の制動対象と、前記制動対象に当接して摩擦力を付与するブレーキパッドを有する制動装置の前記制動対象の代替となるブレーキ試験装置であって、互いに平行に配置された一対の板状台座であって、対向する二面のうち少なくとも一面に前記板状台座の一端に向かって面同士の距離が漸次大きくなるように形成された斜面が形成され、対向する二面が接近及び離間する方向に移動自在に構成された一対の板状台座と、前記斜面と該斜面に対向する面との間に形成された楔形状隙間に挿入される楔形状のクサビ部材と、前記クサビ部材を挿入方向及びその反対方向に駆動する駆動機構と、前記一対の板状台座が互いに接近する方向に付勢する付勢機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、駆動機構を駆動して一対の板状台座の間にクサビ部材を挿入し、クサビ部材が付勢力に逆らって板状部材の斜面を押し、対向する二面を離間させることによって一対の板状台座同士の距離が大きくなる。これにより、試験部材としての厚みを容易に変更することができる。
また、ブレーキ試験装置の板状部材同士の距離、即ちブレーキ試験装置の厚さは、クサビ部材によって支持される構造であるため、ブレーキパッドからの押圧力によって厚さが変更されることを防止することができる。
【0012】
また、上記ブレーキ試験装置において、前記斜面は、前記一対の板状台座の対向する二面に互いに対称形状となるように設けられており、前記クサビ部材は、一対の前記斜面の間に形成された楔形状隙間に挿入される楔形状とされていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、ブレーキ試験装置の外形を構成する一対の板状部材の両方がクサビ部材に対して相対的に移動する部材として利用されるため、ブレーキ試験装置をより小型化することができる。
【0014】
また、上記ブレーキ試験装置において、前記駆動機構は、前記クサビ部材の挿入方向と平行に配置され、外周面にネジ溝が形成されたネジ軸と、前記ネジ軸を回転させる駆動装置とを備え、前記クサビ部材には、前記ネジ軸に螺合する雌ネジ孔であって、前記ネジ軸の回転により前記クサビ部材を前記ネジ軸上において往復動させる雌ネジ孔が設けられていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、ネジ軸とこのネジ軸と螺合する雌ネジ孔との組み合わせを採用したことによって、クサビ部材の位置保持が容易となると共に、大きな押圧力に抗してクサビ部材を移動させることができる。
【0016】
また、上記ブレーキ試験装置において、前記斜面は、前記一対の板状台座の対向する二面の両端に互いに対称形状となるように設けられていると共に、前記クサビ部材は、前記一対の板状台座の両端における一対の前記斜面の間に形成された楔形状隙間に対応して一つずつ設けられ、一対の前記クサビ部材が互いに接近する方向に挿入される楔形状とされている
構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、対向するクサビ部材が、一対の板状台座に加えられる力を均等に支持するため、よりブレーキパッドの押付力に対する剛性の高いブレーキ試験装置を提供することができる。
【0018】
また、上記ブレーキ試験装置において、前記駆動機構は、前記クサビ部材の挿入方向と平行に配置され、外周面にネジ溝が形成されたネジ軸と、前記ネジ軸を回転させる駆動装置とを備え、前記一対のクサビ部材には、前記ネジ軸に螺合する雌ネジ孔であって、前記ネジ軸の回転により前記クサビ部材を前記ネジ軸上において往復動させる雌ネジ孔が設けられ、一方のクサビ部材に対応するネジ溝は、他方のクサビ部材に対応するネジ溝に対して逆ねじとされていることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、ネジ軸とこのネジ軸と螺合する雌ネジ孔との組み合わせを採用したことによって、クサビ部材の位置保持が容易となると共に、大きな押圧力に抗してクサビ部材を移動させることができる。
【0020】
また、上記ブレーキ試験装置において、前記一対の板状台座のうち少なくとも一方の板状台座の更に外側に設けられ、前記板状台座と平行に配置された載荷板と、前記板状台座と前記載荷板との間に設けられたロードセルとを備えることが好ましい。
【0021】
載荷板を介してロードセルによって、ブレーキパッドの押付力を測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、駆動機構を駆動して一対の板状台座の間にクサビ部材を挿入し、クサビ部材が付勢力に逆らって板状部材の斜面を押し、対向する二面を離間させることによって一対の板状台座同士の距離が大きくなる。これにより、試験部材としての厚みを容易に変更することができる。
また、ブレーキ試験装置の板状部材同士の距離、即ちブレーキ試験装置の厚さは、クサビ部材によって支持される構造であるため、ブレーキパッドからの押圧力によって厚さが変更されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る試験装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る試験装置の側面図である。
【図3】試験装置とディスクブレーキ装置との組み合わせを上方から視た概略図である。
【図4】試験装置の動作を説明する図であり、厚み変更前後を示す図である。
【図5】ディスクブレーキ装置の概略図である。
【図6】従来のディスクブレーキ装置の試験部材を説明する概略図である。
【図7】従来のディスクブレーキ装置の試験部材を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る試験装置1は、ベース部2と、ベース部2の上面に固定された可動ロードセル部3と、可動ロードセル部3と隣り合う位置に固定され、駆動機構5を構成する電動機4とから構成されている。この試験装置1は、図3に示すように、例えば鉄道車両のディスクブレーキ71の試験に使用されるもので、可動ロードセル部3の押付面16,17がディスクブレーキ71のライニング72に対面するように配置して、可動ロードセル部3をディスクブレーキ71の制動対象である車輪と、この車輪と一体とされたディスクの代替として使用するものである。
【0025】
可動ロードセル部3は、接近及び離間するように構成された第一板状台座6及び第二板状台座7と、これら第一板状台座6と第二板状台座7との間の隙間に打ち込まれるように挿入されることによって、これら第一板状台座6と第二板状台座7とを離間させる上クサビ8及び下クサビ9と、上クサビ8及び下クサビ9を上下方向に移動可能に支持する直動ガイド部10とを主な構成要素として備えている。
【0026】
また、第二板状台座7の更に外側には、載荷板11が配置されている。載荷板11は、第一板状台座7及び第二板状台座8と平行に配置されている。第一板状台座7と載荷板11は、ディスクブレーキ51のライニング52が当接する面である押付面16,17を有している。
【0027】
なお、以下の説明においては、図1及び図2の上下方向を上下方向Zと呼び、図1の左右方向を左右方向X、図2の左右方向を前後方向Yと呼ぶ。また、図1の直動ガイド部10の中心線を含み、紙面方向に延在する面を中心面Pと呼ぶ。
【0028】
ベース部2は、可動ロードセル部3及び電動機4を支持するための部位であり、その上面を構成する上壁12に電動機4と可動ロードセル部3とを設置している。また、ベース部2の上壁12には、第一板状台座6及び第二板状台座7のスライド移動をガイドするための一対のローラーガイド13が取り付けられている。
【0029】
電動機4は、電気エネルギーによって出力軸15を回転させる電気モーターであり、出力軸15が下方向を向くようにベース部2の上壁12に取り付けられている。本実施形態の電動機4としては、ステッピングモーターが採用されている。
【0030】
第一板状台座6及び第二板状台座7は、中心面Pに平行に、かつ、互いに平行に設けられた板状部材である。第一板状台座6及び第二板状台座7の互いに対向する面とは反対側の面は、中心面Pと平行な略平坦な面とされ、第一板状台座6の面はディスクブレーキ装置のライニングが当接する押付面16とされている。
【0031】
第一板状台座6及び第二板状台座7の上下方向下端の前後方向両側には、ブラケット19が設けられている。即ち、ブラケット19は第一板状台座6の前面及び後面、及び第二板状台座7の前面及び後面、計4つ設けられている。
4つのブラケット19の各々には、前後方向即ち中心面Pに直交する方向に突出するローラー軸20が2つ設けられている。
【0032】
各々のローラー軸20にはローラーフォロア18が取り付けられている。即ち、第一板状台座6及び第二板状台座7の下端には複数のローラーフォロア18が設けられており、このローラーフォロア18がベース部2の上壁12に取り付けられているローラーガイド13に案内されることで、第一板状台座6及び第二板状台座7が左右方向に移動自在とされている。ローラーフォロア18は、外周面を接触相手に接触させることで回転するベアリングである。
【0033】
ローラーガイド13は、ベース部2の上面の前後方向両端において左右方向に延在するレール形状の部材である。各々のローラーガイド13には、ローラーフォロア18を左右方向に移動自在に収容する溝条14が形成されている。
【0034】
次に、第一板状台座6及び第二板状台座7と、第一板状台座6及び第二板状台座7に形成されている斜面21,22,23,24について説明する。
第一板状台座6及び第二板状台座7の対向する面6a,7aの上部及び下部には、中心面Pに対して傾斜する斜面21,22,23,24が形成されている。第一板状台座6の上部に形成された第一上斜面21と、第二板状台座7の上端に形成された第二上斜面22とは、互いに対向し、中心面Pに対して対称形状に、かつ、上方に向かって互いの距離が漸次大きくなるように形成されている。
【0035】
同様に、第一板状台座6の下部に形成された第一下斜面23と、第二板状台座7の下部に形成された第二下斜面24とは、互いに対向し、中心面Pに対して対称形状に、かつ、下方に向かって互いの距離が漸次大きくなるように形成されている。
即ち、第一上斜面21と第二上斜面22との間、及び第一下斜面23と第二下斜面24との間には、楔形状の隙間が形成されている。
【0036】
また、第一板状台座6及び第二板状台座7の前後方向Yに面する両側面であって、第一板状台座6及び第二板状台座7の側面の上方及び下方には、前後方向Yに突出するバネ取付軸26,27が取り付けられている。バネ取付軸26,27は、第板状台座6と第二板状台座7とで、前方向に計4本(第一板状台座6と第二板状台座7にそれぞれ2本)、後方向に計4本が突出しており、前後方向から視て、4本のバネ取付軸が略矩形を描くように配置されている。
【0037】
前方向に突出する4本のバネ取付軸26、及び、後方向に突出する4本のバネ取付軸27には、4本のバネ取付軸26,27を一周するようにバネ付ワイヤ28が取り付けられている。バネ付ワイヤ28は、2本のワイヤと2つの引張コイルバネとから構成されており、ワイヤと引張コイルバネとが交互に接続され、環状を成している。バネ付ワイヤ28は、第一板状台座6と第二板状台座7とが最も接近した状態において、所定の張力が発生するような長さに設定されている。
【0038】
載荷板11は、第二板状台座7の更に外側に配置された板状部材である。載荷板11は、左右方向Xから視て第二板状台座7と略同形状とされており、第二板状台座7に対して接近・離間可能なように、第二板状台座7にブラケット29,30を介して取り付けられている。
【0039】
第二板状台座7と載荷板11との間には、4つのロードセル31が設置されている。ロードセル31は、押付力を電気信号に変換して出力するセンサーである。ロードセル31は、第二板状台座7の斜面22,24とは反対側の面7bに形成されている取付穴31aに、その入力部が面7bより突出するように埋め込まれている。載荷板11は、押付面17とは反対側の面11aがロードセル31の入力部に接するように配置されている。
載荷板11が押圧力を受けると、押圧力はロードセル31に伝達され、押圧力を測定することが可能となる。
【0040】
以上の構成により、中心面Pに対して略対称形状に形成された第一板状台座6と第二板状台座7とは、平行を保ったまま離間、及び接近するように、スライド自在とされ、かつ、バネ付ワイヤ28の付勢力によって、常に接近する方向に付勢される。即ち、第一板状台座6の押付面16と載荷板11の押付面17とは平行を保ったまま離間、及び接近が可能である。
【0041】
次に、第一板状台座6と第二板状台座7の斜面同士の間に形成された楔形状の隙間に挿入されるクサビ8,9と、このクサビ8,9の上下方向Zの移動を案内する直動ガイド部
10について説明する。
【0042】
ベース部2には、上クサビ8及び下クサビ9を上下方向に移動させるための案内部である直動ガイド部10が、ベース部2より上方に延在するように設けられている。直動ガイド部10は、上下方向に延在する一対のガイド棒33と、一対のガイド棒33に平行に設けられ、かつ、一対のガイド棒33の間であって各々のガイド棒33から等距離間隔をおいて設けられているネジ軸34と、一対のガイド棒33及びネジ軸34とを上端で支持する支持板35とから構成されている。
【0043】
ガイド棒33は、断面円形の長尺軸であって、上クサビ8及び下クサビ9に設けられたガイド孔47(後述する)に挿入され、上クサビ8及び下クサビ9を上下方向に案内する。
ネジ棒34は、ガイド棒33と略等しい直径を有する長尺軸である。ネジ棒34は、上端及び下部がベアリング36,37によって支持されており、軸回りに回転自在とされている。また、ネジ棒34は、右ねじの台形ねじが形成されている右ネジ棒38と、左ねじの台形ねじが形成されている左ネジ棒39とから構成されている。具体的には、ネジ棒34の全長のうち、上方の半分が右ネジ棒38であり、下方の半分が左ネジ棒39である。右ネジ棒38と左ネジ棒39とは連結部材40で連結されている。
【0044】
また、ネジ棒34は、ベース部2の上壁12を貫通してベース部2の内部まで延在しており、ベース部2の内部であってネジ棒34の下部には、第二プーリー42が取り付けられている。
【0045】
上クサビ8は、ネジ棒34の上半分を構成する右ネジ棒38に螺合するように取付られており、下クサビ9は、ネジ棒34の下半分を構成する左ネジ棒39に螺合するように取り付けられている。
【0046】
上クサビ8は、第一板状台座6及び第二板状台座7との間に挿入される楔形状を有する部材であり、図1に最もよく示されているように、下方に向かうに従って、左右方向Xの幅が漸次小さくなるような直方体形状を有している。詳しくは、ガイド棒33(ネジ棒34)の軸方向と直交する面である、上面44及び下面45と、各板状台座6,7の上斜面21,22と面接触する楔斜面46とから構成されている。
【0047】
上クサビ8には、上面44から下面まで貫通する2つのガイド孔47が形成されている。同様に、2つのガイド孔47の間には、上面44から下面45まで貫通するネジ棒ガイド孔48が形成されている。ネジ棒ガイド孔48の上端には、その内周面にネジ棒34の右ネジ棒38に対応する台形ネジ(雌ねじ孔)が形成されているフランジナット49が取り付けられている。
【0048】
上クサビ8は、このガイド孔47及びネジ棒ガイド孔48に、ガイド棒33及びネジ棒34が挿入されることによって、直動ガイド部10に取り付けられている。
また、第一板状台座6、及び第二板状台座7は、上クサビ8の左右方向X両側方に、かつ、上クサビ8の楔斜面46が、第一板状台座6の上斜面21,22に面接触するように配置されている。ここで、バネ付ワイヤ28の付勢力によって、第一板状台座6及び第二板状台座7は、常に接近する方向に付勢されているため、上斜面21,22によって上クサビ8のネジ軸34の軸回りの回転が規制される。
【0049】
下クサビ9は、上クサビ8と上下方向に対称形状であり、フランジナット50に形成されている台形ネジが左ネジ棒に対応する形状となっていること以外は、上クサビ8と同様の構成とされている。
即ち、ネジ軸34と、上クサビ8及び下クサビ9とは、台形ネジを利用した直動機構を構成している。
【0050】
電動機4は、出力軸15がネジ軸34と平行、かつ、下方向を向くようにベース部2の上壁12に固定されている。電動機4の出力軸は、ベース部2の上壁12を貫通しており、出力軸15の先端(下端)には、ネジ軸34の下部に取り付けられている第二プーリー42と同じ高さとなるように、第一プーリー41が取り付けられている。
【0051】
第一プーリー41と第二プーリー41にはタイミングベルト51が架けられており、電動機4の出力軸15が回転することにより、タイミングベルト51を介してネジ軸34が回転する。
【0052】
駆動機構5は、電動機4、第一プーリー41、第二プーリー42、タイミングベルト51、ネジ軸34、フランジナット49,50によって構成されており、この駆動機構5によって上クサビ8及び下クサビ9が上下方向に移動する。
【0053】
次に、本実施形態の試験装置1の作用について説明する。図3は、試験装置1とディスクブレーキ71との組み合わせを上方から視た概略図である。
試験装置1によって試験されるディスクブレーキ71は、図示しない取付台に固定されている。ディスクブレーキ71は、試験装置1の可動ロードセル部3が一対のライニング72の間に位置するように配置される。具体的には、可動ロードセル部3の押付面16,17がライニング72に面するように配置される。
【0054】
次に、電動機4を駆動させることで、第一プーリー41、タイミングベルト51、及び第二プーリー42を介してネジ軸34を回転させる。ネジ軸34が回転すること、及び、
板状台座6,7によってクサビ8,9の回転が規制されていることによって、上クサビ8が下方に、下クサビ9が上方に移動する。
【0055】
これにより、上クサビ8及び下クサビ9は、第一板状台座6及び第二板状台座7との間に挿入され、上斜面21,22、及び下斜面23,24は離間する方向に押圧力を受ける。これにより、第一板状台座6と第二板状台座7とは離間する方向に移動し、押付面16と押付面17との距離が大きくなる。即ち、可動ロードセル部3の左右方向Xの幅が大きくなる。
また、この際、ロードセル31によって、ディスクブレーキ71より加えられる押付力を測定することができる。
【0056】
上記実施形態によれば、電動機4を駆動して一対の板状台座6,7の間にクサビ8,9を挿入し、クサビ8,9が付勢力に逆らって板状部材6,7の斜面21,22,23,24を押し、対向する二面6a,7aを離間させることによって一対の板状台座6,7同士の距離が大きくなる。これにより、可動ロードセル部3の厚みを容易に変更することができる。
【0057】
また、可動ロードセル部3の板状部材6,7同士の距離、即ち可動ロードセル部3の厚さは、クサビ8,9によって支持される構造であるため、ブレーキパッド73からの押圧力によって厚さが変更されることを防止することができる。
【0058】
また、可動ロードセル部3の外形を構成する一対の板状部材6,7の両方がクサビ8,9に対して相対的に移動する部材として利用されるため、可動ロードセル部3をより小型化することができる。
【0059】
また、クサビ8,9を駆動する機構として、ネジ軸34とこのネジ軸34と螺合する雌ネジ孔との組み合わせを採用したことによって、クサビ8,9の位置保持が容易となると共に、大きな押圧力に抗してクサビ8,9を移動させることができる。
また、上下方向に対向するクサビ8,9が、一対の板状台座6,7に加えられる力を均等に支持するため、よりブレーキパッド73の押付力に対する剛性を高くすることができる。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、斜面21,22,23,24は板状台座6,7の上端及び下端に設ける必要はなく、板状台座6,7の上端のみに設ける構成としてもよい。
さらに、斜面21,22,23,24を対向する面6a,7aの一方のみに設け、他方を平面としてもよい。この場合、クサビ8,9もこの形状に対応し、楔斜面を片側のみに設ける構成とする。
【0061】
また、上記実施形態においては、ロードセル31は、可動ロードセル部3の一方の側に設ける構成にしたが、ロードセル31を両側に設ける構成としてもよい。
また、ロードセル31及び載荷板11は必ずしも設ける必要はなく、可動ロードセル部3にかかる押付力を測定する必要がなければ、省略することが可能である。
【0062】
さらに、駆動機構5を構成する直動機構は、ネジ軸34及びこのネジ軸34に対応するフランジナット49,50に形成された台形ネジに限ることはない。即ち、電動機4の駆動によってクサビ8,9を移動させることができればよく、例えば、ボールネジ、
リニアモータ機構、ピストンシリンダ機構等を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…試験装置 3…可動ロードセル部(ブレーキ試験装置) 4…電動機(駆動装置) 5…駆動機構 6…第一板状台座 6a…面 7…第二板状台座 7a…面 8…上クサビ(クサビ部材) 9…下クサビ(クサビ部材) 11…載荷板 16…押付面 17…押付面 21…第一上斜面 22…第二上斜面 23…第一下斜面 24…第二下斜面 26…バネ取付軸 27…バネ取付軸 28…バネ付ワイヤ(付勢機構) 31…ロードセル 34…ネジ軸 38…右ネジ棒 39…左ネジ棒 41…第一プーリー 42…第二プーリー 46…楔斜面 49…フランジナット(雌ネジ孔) 50…フランジナット(雌ネジ孔) 51…タイミングベルト 71…ディスクブレーキ(制動装置) 73…ブレーキパッド 74…車輪(制動対象) 75…ディスク(制動対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の制動対象と、
前記制動対象に当接して摩擦力を付与するブレーキパッドを有する制動装置の前記制動対象の代替となるブレーキ試験装置であって、
互いに平行に配置された一対の板状台座であって、対向する二面のうち少なくとも一面に前記板状台座の一端に向かって面同士の距離が漸次大きくなるように形成された斜面が形成され、対向する二面が接近及び離間する方向に移動自在に構成された一対の板状台座と、
前記斜面と該斜面に対向する面との間に形成された楔形状隙間に挿入される楔形状のクサビ部材と、
前記クサビ部材を挿入方向及びその反対方向に駆動する駆動機構と、
前記一対の板状台座が互いに接近する方向に付勢する付勢機構とを備えることを特徴とするブレーキ試験装置。
【請求項2】
前記斜面は、前記一対の板状台座の対向する二面に互いに対称形状となるように設けられており、
前記クサビ部材は、一対の前記斜面の間に形成された楔形状隙間に挿入される楔形状とされていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、
前記クサビ部材の挿入方向と平行に配置され、外周面にネジ溝が形成されたネジ軸と、
前記ネジ軸を回転させる駆動装置とを備え、
前記クサビ部材には、前記ネジ軸に螺合する雌ネジ孔であって、前記ネジ軸の回転により前記クサビ部材を前記ネジ軸上において往復動させる雌ネジ孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ試験装置。
【請求項4】
前記斜面は、前記一対の板状台座の対向する二面の両端に互いに対称形状となるように設けられていると共に、
前記クサビ部材は、前記一対の板状台座の両端における一対の前記斜面の間に形成された楔形状隙間に対応して一つずつ設けられ、一対の前記クサビ部材が互いに接近する方向に挿入される楔形状とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーキ試験装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、
前記クサビ部材の挿入方向と平行に配置され、外周面にネジ溝が形成されたネジ軸と、
前記ネジ軸を回転させる駆動装置とを備え、
前記一対のクサビ部材には、前記ネジ軸に螺合する雌ネジ孔であって、前記ネジ軸の回転により前記クサビ部材を前記ネジ軸上において往復動させる雌ネジ孔が設けられ、
一方のクサビ部材に対応するネジ溝は、他方のクサビ部材に対応するネジ溝に対して逆ねじとされていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のブレーキ試験装置。
【請求項6】
前記一対の板状台座のうち少なくとも一方の板状台座の更に外側に設けられ、前記板状台座と平行に配置された載荷板と、
前記板状台座と前記載荷板との間に設けられたロードセルとを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のブレーキ試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92425(P2013−92425A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233968(P2011−233968)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(594034832)東北交通機械株式会社 (7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】