説明

ブロックマット及びブロックマット製造方法

【課題】護岸工事等でブロックマットを敷設する際に、現場でのブロックマットの製造が可能であり、かつコンクリートの強度を低下させることなく、植生や魚群の生息場所を設ける。
【解決手段】河川等の護岸ブロック敷設工事現場に、折り畳まれた型枠26を必要な護岸ブロック10の数分だけ運搬し、その現場で、幌布製で折り畳まれた型枠を立体化し、所定の補強(塩化ビニール30の挿入、線材32の掛止等)を施した後、生コン(硬化前のコンクリート12)を流し込むため、型枠どおりにコンクリート12が硬化する。その後、塩化ビニール30及び線材32を排除することで(型枠26はそのまま)、護岸ブロック10を完成させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海岸に敷設され、特に護岸として用いられる護岸ブロック等のブロックマット及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川の浸食防止、流砂防止等のために、多くの河川においてブロックマット(護岸ブロック)を用いた護岸工事が行われている。 近年では、護岸の強度確保を短時間にかつ低コストで実施することが要請されており、これに対応してコンクリートを使用した護岸整備が進んでいる。これに併せ、環境への配慮を必要となっている。
【0003】
このため、特許文献1では、コンクリートに空隙を設けることで、表面部に植生を容易にすることが開示されている。
【0004】
コンクリートは硬化前に所定の型枠に流し込むことで、容易に所望の形状に製作することが可能であるが、その反面、少数の型枠を使い回すことによって製作した多数のブロックマットを、現場まで運搬しなければならない。言い換えれば、必要ブロックマット数:型枠が1:1に近い割合で型枠を現場で準備するのは現実的に不可能であり、現場での生コン作業は不可能となっている。
【0005】
ここで、特許文献2では、布製の型枠にコンクリートを流し込み、消波ブロックを製作することが開示されている。
【特許文献1】特開平6−108437号公報
【特許文献2】実開平7−017820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンクリートに空隙を設ける構造では、強度に影響を及ぼすことになり、空隙の量に制限があるため、所望の植生の実現にならない場合がある。
【0007】
また、布製の型枠を用いた消波ブロックでは、「布袋の強化を図るため布ベルトにて周面を緊締しておくとよい。」とあるのみで、布製の型枠の強度に関して詳細な記載がない。また、布ベルトがどのように補強するかの記載もなく、実用性に乏しく、当業者が実施する程度に記載されていない。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、護岸工事等でブロックマットを敷設する際に、現場でのブロックマットの製造が可能であり、かつコンクリートの強度を低下させることなく、植生や魚群の生息場所を設けることができるブロックマット及びその製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、河川や海岸に敷設されるブロックマットであって、外壁層となる表層部、前記表層部の形状の基準となる基部、前記表層部と基部との間に掛け渡され表層部と基部との間が所定の距離になると突っ張ることで、当該表層部における基部からの距離を所定の距離に保持する保持部を備え、それぞれ折り畳み可能な材質で生成された型枠部材と、硬化前に、前記型枠部材における前記芯部と表層部との間に流し込まれ、前記型枠部材により設定された形状で硬化するコンクリートと、を有することを特徴としている。第1の発明によれば、型枠部材が折り畳み可能であり、かつ所定の強度を持たせることができる。
【0010】
第1の発明において、前記表層部には、補強板が取り付けられていることを特徴としている。前記補強板は好適には天然素材を板状に成形したものから構成される。天然素材としては、ヤシ素材等が適用可能である。
【0011】
また、第1の発明において、前記型枠部材が、少なくともコンクリートと接触する面に防水加工が施された布製であることを特徴としている。前記布の種類が、幌布であることを特徴としている。
【0012】
さらに、第1の発明において、前記基部が、筒状の内壁層を形成することを特徴としている。前記筒状の内壁層に形成された基部には、前記コンクリートが流し込まれる際に、筒体が挿入され、かつ、この筒体から放射状に前記表層部に向けて線材が張り巡らされることを特徴としている。
【0013】
第2の発明は、外壁層となる表層部、前記表層部の形状の基準となる基部、前記表層部と基部との間に掛け渡され表層部と基部との間が所定の距離になると突っ張ることで、当該表層部における基部からの距離を所定の距離に保持する保持部を備え、それぞれ折り畳み可能な材質で生成された型枠部材を用いて、河川や海岸に敷設されるブロックマットを製造するためのブロックマット製造方法であって、前記型枠部材を、折り畳み状態から展開することで立体化する第1の工程と、立体化したときの表層部に沿って補強板をあてがう第2の工程と、基部に芯材を立設させ、当該芯材の上端と周囲の表層部との間に線材を掛け渡す第3の工程と、前記表層部と基部との間の空間に硬化前のコンクリートを流し込む第4の工程と、前記コンクリートが硬化した後、前記芯材と線材を取り除く第5の工程と、を有している。
【0014】
第2の発明によれば、現場でのブロックマットの製造が可能であり、かつ補強板を含む型枠部材が、植生や魚群の生息場所となり得るため、コンクリートの強度を低下させることなく、環境保護が可能となる。ブロックマットの中央部に配置した前記芯材を取り除いた事によってブロックマットに形成された孔部がブロックマットの浮力を軽減し、海岸では波力等に対して、河川では流速等に対してブロックが安定的に海岸、河川岸に固定することができる。
【0015】
第2の発明において、前記基部が筒状の内壁層とされ、前記芯材が前記内壁層よりも内側に収容され、前記表層部に加わるコンクリートの圧力を、前記線体を介して支持する塩化ビニールパイプであることを特徴としている。
【0016】
また、第2の発明において、前記補強板が、天然素材であり板状の生成したことを特徴としている。天然素材としては、ヤシ素材等が適用可能である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した如く本発明では、護岸工事等でブロックマットを敷設する際に、現場でのブロックマットの製造が可能であり、かつコンクリートの強度を低下させることなく、植生や魚群の生息場所を設けることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明のブロックマットを河川の護岸として適用した護岸ブロック10が示されている。護岸ブロック10は、硬化したコンクリート12と、このコンクリート12の中心部に設けられた円孔14の内周面を被覆する内壁層16と、コンクリート12の外周の縦壁面を被覆する外壁層18と、コンクリート12の底面を被覆する床底層20とを備えている。外壁層18には、天然素材であるヤシ繊維で形成された補強板22が設けられている。この補強板22は、外壁層18に設けられたベルト層24によって保持されている。
【0019】
上記構成の護岸ブロック10の外形寸法は、全量が2トンタイプのものでは、平面視で縦×横が1300〜1600mm×1300〜1600mm、高さが350〜450mm程度となっており、敷設する河川の状況によって異なる。すなわち、敷設する面が傾斜角度、面積、水面との相対位置、直線性等によって、護岸ブロック10はその形状が異なるが、標準的なサイズは上記のとおりである。
【0020】
これに対して本実施の形態では、河川当の敷設工事現場において、生コンを型枠26(図2参照)に流し込み、この型枠26を含め護岸ブロック10としている。すなわち、前述したコンクリート12以外の内壁層16、外壁層18、床底層20、補強部材22、ベルト層24が全て図2に示す型枠26を構成する部品である。
【0021】
その内、補強部材22を除く、内壁層16、外壁層18、床底層20、ベルト層24は、幌布製であり、予め縫製によって袋状に形成されている。但し、布製であるため、縫製後であっても折り畳むことが可能となっている。
【0022】
このため、河川等における護岸ブロック敷設工事に必要な数だけの型枠26を製造し、折り畳んだ状態で現場へ運搬することができる。
【0023】
なお、型枠26は、織物であり、その織り方は、目地を細かくすることで、少なくとも、生コン(硬化前のコンクリート)がしみだしてこないようにする。好適には、防水加工が施される。
【0024】
図2は、型枠26の折り畳みを解除して立体的に構成した状態、かつコンクリート12(図1参照)の流し込み前の状態を示している。
【0025】
内壁層16と外壁層18との間には、帯状部材28が掛け渡されている。この帯状部材28も幌布製であり、内壁層16と外壁層18とのそれぞれに対して縫製処理されている。帯状部材28は、平面視において、内壁層16からほぼ均等の角度(約45°)で放射状に外壁層18へと延設されている。また、側面視では同一平面視上位置において、上下2枚構造となっている。前記角度は帯状部材の数によっても適宜決定される。
【0026】
この帯状部材28は、硬化前のコンクリート12(図1参照)が流し込まれると、このコンクリート12に埋没することになるが、硬化前においてコンクリート12が外壁層18に対して与える圧力によって緊張し、内壁層16との距離を保持する役目を有している。この帯状部材28の緊張によって、コンクリート12が硬化するまで外壁層18の変形が抑制されることになる。
【0027】
また、コンクリート12を流し込む前においては、内壁層16の内側に、筒体である塩化ビニールパイプ30が挿入され、中心部に立設している。
【0028】
この塩化ビニールパイプ30は、内壁層16が流し込まれたコンクリート12によって潰されることを抑止するものであり、内壁層16を基部として維持することができるようになっている。
【0029】
さらに、この塩化ビニールパイプ30の上端部30Aの周縁と、外壁層18の上端部18Aとの間は、線材32が張り巡らされている。また、この線材32は、前記帯状部材28による外壁層18のコンクリート12からの圧力維持の補助的な役目も有する。
【0030】
上記のような準備(幌布製の型枠26の立体化、並びに塩化ビニールパイプ30の内壁層16への挿入、線材32の外壁層18への掛止め)が完了した時点で、生コン(硬化前のコンクリート12)は、内壁層16と外壁層18と床底層20との間に空間に流し込まれる。
【0031】
以下に本実施の形態の作用を説明する。図3及び図4に従い、護岸ブロック10の製造手順を説明する。図3(A)は、折り畳まれた型枠26の内壁層16と外壁層18とを立設された状態であり、この状態で帯状部材28が緊張した状態で内壁層16と外壁層18との間の距離が決まる。なお、図3(A)では、立体形状が保持されているが、実際には、幌布製であり、この状態で維持することはできない。
【0032】
次に、図3(B)に示される如く、内壁層16の内側に塩化ビニールパイプ30を挿入して立設する。この塩化ビニールパイプ30の挿入によって、内壁層16はその円筒形状が維持される。なお、この図3(B)の状態で外壁層18は立設しているが、実際にはこの状態では外壁層18は自立することはできない。
【0033】
図4(A)では、外壁層18に補強部材22を装填する。この補強部材22は、外壁層18とベルト層24との間に差し込むことで装填が完了する。この補強部材の装填により外壁層18が自立が可能となる。
【0034】
最後に、図4(B)に示される如く、塩化ビニールパイプ30を上端部30Aと、外壁層18の上端部18Aとに複数の線材32を掛け渡す。この掛け渡しは、線材32の両端にフック等を取り付けることで掛止可能である。
【0035】
線材32の長さ寸法は、掛止が完了した時点で、外壁層18が、ほぼ鉛直方向に立設した状態となるように設定する。この寸法設定は、例えば、前述してフックの取り付け位置を調整可能としておけば、容易に所望の寸法とすることができる。
【0036】
この図4(B)の状態で、生コン(硬化前のコンクリート12)を流し込む。このコンクリート12の流し込みにより、内壁層16及び外壁層18には、コンクリート12から圧力が加えられる。
【0037】
このとき、内壁層16は、塩化ビニールパイプ30が挿入されているため、これ以上潰れることはなく、現在の円筒形状が維持される。
【0038】
一方、外壁層18は、帯状部材28が突っ張り、かつ線材32が緊張することで、コンクリート12の圧力に耐え、図4(B)の状態を維持することができる。
【0039】
流し込んだコンクリート12が硬化した後、線材32が取り除かれ、かつ塩化ビニールパイプ30は取り外され、護岸ブロック10の完成品(図1参照)となる。
【0040】
完成品の護岸ブロック10では、帯状部材28は、コンクリート12に埋没する。また、補強部材22は、ヤシ繊維であるため、護岸ブロック10として河川に敷設されることで、植生や魚群の生息場所となり得る。
【0041】
以上説明したように本実施の形態では、河川等の護岸ブロック敷設工事現場に、折り畳まれた型枠26を必要な護岸ブロック10の数分だけ運搬し、その現場で、幌布製で折り畳まれた型枠を立体化し、所定の補強(塩化ビニール30の挿入、線材32の掛止等)を施した後、生コン(硬化前のコンクリート12)を流し込むため、型枠どおりにコンクリート12が硬化する。その後、塩化ビニール30及び線材32を排除することで(型枠26はそのまま)、護岸ブロック10を完成させることができる。
なお、本実施の形態では、型枠の素材として、幌布を用いたが、その理由は、幌布には防水性があり、かつ強度も他の布材よりも優れている事及び、天然素材であることから素材が経年変化により腐食等を起こした際に、有害物等を流出する事が無いためである。所定の強度が維持され、かつ防水性、折り畳み可能であれば、別の素材であってもよい。また、環境の状況によっては、無機繊維、有機繊維等限定されるものではなく、必要最小限の機能を単独で、或いは二次的な加工によって備えていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施の形態に係る護岸ブロックであり、(A)は平面図、(B)は側面断面図である。
【図2】本実施の形態に係る立体的に展開したときの型枠であり、(A)は平面図、(B)は側面断面図である。
【図3】本実施の形態に係る護岸ブロックの製造手順の前半を示し、(A)は型枠の立体的展開状態、(B)は内壁層への塩化ビニール挿入状態を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る護岸ブロックの製造手順の後半を示し、(A)は外壁層への補強部材装填状態、(B)は塩化ビニールパイプと外壁層との間への線材の掛止状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
10 護岸ブロック(ブロックマット)
12 コンクリート
14 円孔
16 内壁層(基部)
18 外壁層(表層部)
18A 上端部
20 床底層
22 補強板(補強部材)
24 ベルト層
26 型枠(型枠部材)
28 帯状部材(保持部)
30 塩化ビニールパイプ(筒体)
30A 上端部
32 線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川や海岸等の護岸必要領域に敷設されるブロックマットであって、
外壁層となる表層部、前記表層部の形状の基準となる基部、前記表層部と基部との間に掛け渡され、前記表層部と基部との間が所定の距離になると張力に基づく抵抗を発揮して、当該表層部における基部からの距離を所定の距離に保持する保持部を備え、それぞれ折り畳み可能な材質で生成された型枠部材と、
硬化前に、前記型枠部材における前記芯部と表層部との間に流し込まれ、前記型枠部材により設定された形状で硬化するコンクリートと、
を有するブロックマット。
【請求項2】
前記表層部には、補強板が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のブロックマット。
【請求項3】
前記補強板が、天然素材であり、板状の生成したことを特徴とする請求項2記載のブロックマット。
【請求項4】
前記型枠部材が、少なくともコンクリートと接触する面に防水加工が施された布製であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載のブロックマット。
【請求項5】
前記布の種類が、幌布であることを特徴とする請求項4記載のブロックマット。
【請求項6】
前記基部が、筒状の内壁層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項記載のブロックマット。
【請求項7】
前記筒状の内壁層に形成された基部には、前記コンクリートが流し込まれる際に、筒体が挿入され、かつ、この筒体から放射状に前記表層部に向けて、金属又はプラスチック等からなる線材が張り巡らされることを特徴とする請求項6記載のブロックマット。
【請求項8】
外壁層となる表層部、前記表層部の形状の基準となる基部、前記表層部と基部との間に掛け渡され表層部と基部との間が所定の距離になると突っ張ることで、当該表層部における基部からの距離を所定の距離に保持する保持部を備え、それぞれ折り畳み可能な材質で生成された型枠部材を用いて、河川や海岸に敷設されるブロックマットを製造するためのブロックマット製造方法であって、
前記型枠部材を、折り畳み状態から展開することで立体化する第1の工程と、
立体化したときの表層部に沿って補強板をあてがう第2の工程と、
基部に芯材を立設させ、当該芯材の上端と周囲の表層部との間に線材を掛け渡す第3の工程と、
前記表層部と基部との間の空間に硬化前のコンクリートを流し込む第4の工程と、
前記コンクリートが硬化した後、前記芯材と線材を取り除く第5の工程と、
を有するブロックマット製造方法。
【請求項9】
前記基部が筒状の内壁層とされ、前記芯材が前記内壁層よりも内側に収容され、前記表層部に加わるコンクリートの圧力を前記線体を介して支持する塩化ビニールパイプであることを特徴とする請求項8記載のブロックマット製造方法。
【請求項10】
前記補強板が、天然素材であり、板状の生成したことを特徴とする請求項8又は請求項9記載のブロックマット製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−196164(P2008−196164A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31133(P2007−31133)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(591283855)三基ブロック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】