説明

ブロック状物の水中投入方法、水中構造物の構築方法及びブロック状物

【課題】 水底に基礎マウンド等を構築するために水中に投入したブロック状物が目標地点に確実に到達できるようにしたブロック状物の水中投入方法及び水中構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】 このブロック状物の水中投入方法は、複数のブロック状物21を連結部材22によりルーズに連結して水中に投入するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底に所定形状の基礎マウンド等の水中構造物を形成するためにブロック状物を水中に投入するブロック状物の水中投入方法及び水中構造物の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚礁の構築等のために、運搬したブロック等を海中に直投することにより、海底に所定形状の基礎マウンドを築造する工事が行われている。即ち、従来は、全開式の運搬船等を使用し、GPS等を利用した位置決め後に、ブロック等を直投または自然落下させることにより、海底に基礎マウンドを築造する工事を実施していた。運搬船等においては、GPS、方位検出器等を利用することで精度良く位置出しを行うことは可能であったが、次のような問題点があった。
【0003】
(1)ブロックの直投後は、現場海域の潮流等に左右されるため、ブロックは海中で拡散する傾向があり、深度が深くなるほど顕著である。このため、ブロックを目標地点に確実に着地させることが困難である。
【0004】
(2)ブロックは着底部でその着地位置のばらつきが大きいので、実投入量が予定数量をオーバーしてしまい、このため施工費がアップしてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、水底に基礎マウンド等の水中構造物を構築するために水中に投入したブロック状物が目標地点に確実に到達できるようにしたブロック状物の水中投入方法及び水中構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によるブロック状物の水中投入方法は、複数のブロック状物を連結部材によりルーズに連結して水中に投入することを特徴とする。
【0007】
このブロック状物の水中投入方法によれば、ロープ等の連結部材でルーズに連結された複数のブロック状物は、水中を落下するとき、個々のブロック状物が互いに相手側の回転を牽制することで拡散する方向への落下を抑制するので、塊となって落下する場合に比べてブロック状物の拡散を極力防止することができる。このため、水中に投入したブロック状物を目標地点に確実に到達させることができる。
【0008】
また、上記ブロック状物の水中投入方法において、ブロック状物に連結部材を接続するための接続部を設けることが好ましい。なお、ブロック状物は2個または3個ルーズに連結することが好ましい。
【0009】
本発明による水中構造物の構築方法は、上述のブロック状物の水中投入方法により前記ブロック状物を水中に投入することで水底に水中構造物を構築することを特徴とする。この水中構造物の構築方法によれば、ブロック状物により水底に水中構造物を効率的に構築でき、また、複雑な形状の水中構造物も構築可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブロック状物の水中投入方法及び水中構造物の構築方法によれば、水中に投入したブロック状物を目標地点に確実に到達させることができる。このため、ブロック状物により水底に基礎マウンド等の水中構造物を効率的に構築でき、また、ブロック状物の実投入量の管理がし易くなり、施工費のコストダウンに寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態による水中投入方法の際に用いることのできる2個のブロックを連結した例を概略的に示す斜視図である。図2は本実施の形態による水中投入方法の際に用いることのできる3個のブロックを連結した別の例を概略的に示す斜視図である。
【0012】
図1の例は、略正立方体状のコンクリート製のブロック11と12をロープ16でルーズに連結したものである。ロープ16を接続するためのリング状に構成された接続部11a、12aがそれぞれブロック11、12の一面に固定されている。2個のブロック11、12が接続部11a、12aでロープ16でルーズに連結されている。
【0013】
図2の例は、略正立方体状のコンクリート製のブロック11と12と13をロープ16、17でルーズに連結したものである。ロープ16を接続するためのリング状に構成された接続部11a、12a、13aがそれぞれブロック11、12、13の一面に固定されている。ブロック11、12が接続部11a、12aでロープ16でルーズに連結され、ブロック12、13が接続部12a、13aでロープ17でルーズに連結されることで、3個のブロック11、12、13がルーズに連結されている。
【0014】
なお、ブロックは4個またはそれ以上それぞれをルーズに連結してもよいことは勿論である。また、ロープ16,17は、適度な強度のある各種の柔軟性のあるものを使用できる。
【0015】
また、本実施の形態において、複数のブロックをルーズに連結するとは、水中を落下するとき、個々のブロックが互いにロープで連結されていることで各ブロックの回転が抑制されながら、あたかも各ブロックが単独で落下できるような関係になっていればよい程度の意味であり、これにより、ブロックの拡散を抑制できる。
【0016】
次に、ブロックを運搬し海中に投入するための運搬船について図3を参照して説明する。図3は、運搬船の上面図(a)、要部側面図(b)、及び要部正面図(c)である。
【0017】
図3(a)のように、岸壁にて、運搬船20の船倉20a内に多数のブロック21を積み込んで設置する。ブロック21は2個ずつ図1と同様にロープ22でルーズに連結されている。図3(c)のように、ブロック支持用ワイヤーロープ31の一端を支柱32に固定し他端をターンバックル33aを介して固定部33に接続することでブロック21を支持し、更に、図3(b)のようにブロック21をワイヤーロープ35にて大回しし、船倉20aをオープンした時の落下防止用としている。図3(b)のように、ワイヤーロープ35の一端部を船倉20a内の固定部20bに固定し、他端部は可動部20cに接続している。ブロック投入のとき、可動部20cを動作させることで、ワイヤーロープ35を切り離す構造としている。
【0018】
図4は図3の運搬船20から海中に投入されたブロックの落下の様子を模式的に示す図である。
【0019】
図4のように、運搬船20が例えば基礎マウンドを構築する所定の海域に移動してから、図3(b)の可動部20cを動作させてワイヤーロープ35を切り離すことで、船底から多数のブロック21を海底Gに向けて投入する。
【0020】
2個ずつロープ22でルーズに連結されたブロック21は、海中を落下するとき、各ブロック21が互いに相手側の回転を牽制し拡散する方向への落下を抑制するので、塊となって落下する場合に比べて、海流等があってもブロック21の拡散を極力防止することができ、ブロック21の到達地点が大きくばらつくことがない。例えば、水深90m、60m×60mの広さの図4のような基礎マウンドMを海底Gに構築可能である。
【0021】
本実施の形態のブロック投入方法によれば、海中に投入したブロック21を目標地点に確実に到達させることができるため、ブロック21により海底Gに基礎マウンドMを効率的に構築できる。
【0022】
また、ブロックの拡散程度を極力抑えることにより、ブロックの投入量を適正にできるので、施工費のコストダウンに寄与できる。また、複雑な形状の基礎マウンドの築造にも対応できる。また、使用するロープ等は特殊品でないため施工性に優れている。
【実施例】
【0023】
上述のブロック水中投入方法に関し、実海域を想定した縮尺モデルにて室内実験を行いその有効性を確認した。
【0024】
全開式運搬船を使用しブロックを直投した場合の拡散程度を把握するために、実際の約1/20のモデルとし、水槽を使用して模型実験を実施した。
【0025】
ブロックの大きさを、実際は1.6m×1.6m×1.6mとし、この大きさに対して8cm×8cm×8cmとした。このブロック2個を図5のように中央部分の孔を通してひもでルーズに連結した。ブロックの比重・材質は実際のものとほぼ同じである。
【0026】
水槽の水深を3.7m程度とし、水槽内の水流はない状態で実験を行った。実験時には、実際の施工条件に類似した条件とするために、運搬船の開閉角度に合わせて模型をセットし、投入個数を6個投入および4個投入を1セットとし合計5セット(個数で2×25組=50個)の投入を行った。さらに模型の向きも変化させ合計4パターン行った。
【0027】
また、拡散程度を極力抑える方法を検討するために、ブロック3個をひもでルーズに連結した場合の投入実験も行った。
【0028】
図6に水槽底面における各ブロック(2個連結)の着地位置を示す。中心位置からの距離でブロック着地位置の拡散の度合いを標準偏差により評価すると、ブロック2個の場合で約26cmであり、ブロック3個の場合で約36cmであった。
【0029】
比較例として、ブロックをひもで連結しない以外は、上記の条件と同一にして同様の実験を行った。図7に水槽底面における各ブロックの着地位置を示す。
【0030】
比較例のひもで連結しない個々のブロックを投入する従来方法によれば、拡散程度の評価を標準偏差で評価すると、1σで74cm〜88cm程度に拡散した(図7では、σ=83.3cm)。これに対し、本実施例では、標準偏差で評価するとブロック2個の場合で約26cmであり、ブロック3個の場合で約36cmであったので、ひもでブロックをルーズに連結した実施例では、連結せずに個々のブロックを投入した比較例と比べると、明らかに拡散幅が減少することが確認できた。
【0031】
また、2個連結と3個連結とでは2個連結の方がより拡散幅が小さいので、本実験では、連結個数は2個の方が有効と判明した。
【0032】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施の形態及び実施例では、略正立方体形状のブロックを使用したが、本発明はこれに限定されずに、他形状のブロックも使用できる。また、ブロック1個の寸法も適宜設定可能である。
【0033】
また、本発明は、基礎マウンド以外の各種の水中構造物の構築にも適用可能であって、例えば、魚礁や潜堤等の構築にも適用でき、また、海底における水中構造物に限定されず、例えば、河川の水底や湖沼の湖底における水中構造物の構築にも適用できる。
【0034】
また、ブロックをロープで連結したときのブロック同士の好ましい間隔に関しては、例えば、図8のように、一辺の長さaの略正立方体状のブロック11と12をロープ16で連結した場合、ブロック11と12のロープ長さに対応する最大の面間距離dがブロック11、12の一辺の長さaの1乃至5倍程度であることが好ましく、これにより、水中落下のときのブロックの拡散を効果的に抑制できる。また、ブロックとブロックとを連結するロープは2本等の複数本であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態による水中投入方法の際に用いることのできる2個のブロックを連結した例を概略的に示す斜視図である。
【図2】本実施の形態による水中投入方法の際に用いることのできる3個のブロックを連結した別の例を概略的に示す斜視図である。
【図3】本実施の形態による水中投入方法に用いることのできる運搬船の上面図(a)、要部側面図(b)、及び要部正面図(c)である。
【図4】図3の運搬船から海中に投入されたブロックの落下の様子を模式的に示す図である。
【図5】実施例においてブロック2個を中央部分の孔を通してひもでルーズに連結した様子を示す図である。
【図6】実施例の実験において水槽底面における各ブロック(2個連結)の着地位置を示す図である。
【図7】比較例の実験において水槽底面における各ブロック(連結せず)の着地位置を示す図である。
【図8】2個のブロックをロープで連結したときのブロック同士の好ましい間隔を説明するための側面図である。
【符号の説明】
【0036】
11,12,13 ブロック(ブロック状物)
11a、12a、13a 接続部
16,17 ロープ(連結部材)
20 運搬船
21 ブロック
22 ロープ
M 基礎マウンド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロック状物を連結部材によりルーズに連結して水中に投入することを特徴とするブロック状物の水中投入方法。
【請求項2】
前記ブロック状物に前記連結部材を接続するための接続部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のブロック状物の水中投入方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブロック状物の水中投入方法により前記ブロック状物を水中に投入することで水底に水中構造物を構築することを特徴とする水中構造物の構築方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロック状物を連結部材によりルーズに連結して水中に投入することを特徴とするブロック状物の水中投入方法。
【請求項2】
前記ブロック状物に前記連結部材を接続するための接続部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のブロック状物の水中投入方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブロック状物の水中投入方法により前記ブロック状物を水中に投入することで水底に水中構造物を構築することを特徴とする水中構造物の構築方法。
【請求項4】
少なくとも2個のブロック状物を水中に投入するために連結部材によりルーズに連結したことを特徴とするブロック状物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−125059(P2006−125059A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315058(P2004−315058)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】