説明

ブロワーランナー

【課題】ブロワーランナーはボスと主板を接合しているリベットやボルトが露出部しているため摩耗や騒音や効率低下の問題があった。またボスとシャフトはナットで固定するがネジ部が腐食して固着するため補修時に取り外せない問題があった。ブロワーランナーの翼板は激しく摩耗するので定期的な現地補修が不可欠であり整備に多大なコストや労力を要していた。また補修のための生産機会損失が大きかった。
【解決手段】リベットやボルトの露出部を耐摩耗材で被覆した中空リングでカバーし、ボスやキー溝の空間に油脂を充填しナットシャフトのネジが腐食で固着しないようにした。ブロワーランナーの翼板は金属板や超硬合金などに電気銅メッキやカニゼンメッキを施すとともに液体フラックスを塗布してカーケンドール効果を利用してハイクロム鋳鉄と鋳込むことにより拡散接合し摩耗を防止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摩耗や腐食環境で使用するブロワーランナーの長寿命化及び効率向上及び補修の簡便化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主板をボスに固定しているリベットやボルトなどの留め具は剥き出しになっており激しい摩耗や腐食を受ける。このため留め具には溶射をして摩耗を防いでいる。溶射の耐摩耗性能は優れているが溶射の厚みは500μm程度であり厚くできないので結果的に数年毎に追加溶射が必要となる。摩耗と腐食から同時に保護するために肉盛などの耐摩耗処理した円筒状のキャップをかぶせる方法もあるが、平滑なボスの表面に突起物が出るため騒音や効率低下の問題がある。
【0003】
ボスはキー留めするが軸方向の動きを止めるためにボスの両側を右ネジナットと左ネジナットで締め付けて固定している。数年経過するとシャフトのネジとナットのネジが錆で固着して外せなくなる問題がある。ランナーの翼板や主板、側板を交換するような補修の場合はランナーをシャフトから外して行うのが作業性の面から望ましい。現実には錆が原因でランナーをシャフトから外すのは困難であるため作業効率が悪く、修理工程が長くなる問題がある。
【0004】
翼板の先端部、翼板表面、後端部はダストカットで摩耗する。特に先端部や表面の先端部近傍は塊状の飛来物が高速で衝突するので衝撃摩耗を受けるので摩耗が激しい。翼板は摩耗防止のため一般的には溶接肉盛や溶射で被覆する。溶射は厚みを厚くできないので定期的な追加溶射が必要である。溶接肉盛は硬度を高くすると亀裂が発生する。亀裂部から優先的に摩耗が進展するので定期的な補修肉盛が必要となる。実開昭60−98795号広報や実開昭62−128197号広報において、翼板の先端や表面にセラミックス製の耐摩片を配置する方法が提案されているがセラミックス耐摩片が剥離したり、割損したりしやすいので定期的な補修が必要であった。
【0005】
特開2010−105133号広報において、翼板の先端部と後端部に超硬粉体の高周波肉盛ロウ付けし、表面をハイクロム鋳鉄粉体で高周波肉盛ロウ付けした方法が提案されている。フェロ炭化クロム(Cr2C7+Fe)、フェロニオブ炭化物(NbC2+Fe)、フェロ炭化タングステン(WC+Fe)などの複合炭化物をフェロシリコン(FeSi)、フェロマンガン(FeMn)、フェロリン(FeP)などのフェロ合金をロウ材としてロウ付けする。ロウ付け温度1450〜1700℃まで加熱してロウ材、複合炭化物、フェロ合金が溶解すると比重の差で成分が分離し肉盛部の均一な硬度を確保することは困難であり摩耗斑ができる問題があった。このような摩耗を高周波装置で現場補修するのは困難であり、補修する場合は溶射や肉盛で対応している。また翼板の全面を同時に加熱するには大型の高周波装置が必要であり、翼板を部分的に加熱すると熱歪みが生じる問題があった。
【0006】
特開2001−96182号広報では、ロウ付け用ロウ材(無電解Ni−Pメッキ)をコーティングした超硬合金チップやサーメットチップをホウ酸、ホウ砂、フッ化物、金属ホウ素(1〜2%)を含んだ固体フラックスを介して耐摩耗性鋳鉄と鋳込む方法が提案されている。金属ホウ素は2300℃で溶解するがハイクロム鋳鉄の溶解温度は1400〜1450℃であり金属ホウ素のフラックスとしての機能は不十分であり無電解Ni−Pメッキとハイクロム鋳鉄の接合は分子拡散した金属接合になっていなかった。このためハイクロム鋳鉄が摩耗すると超硬合金やサーメットは剥き出しになり簡単に剥離していた。
【0007】
特開2009−6347号広報では、鋳造複合材に柱状体を所定間隔で並べる方法が提案されている。柱状体は鋳造複合体に接合されておらず埋め込まれているだけであり、柱状体間が先に摩耗すると柱状体が脱落する問題がある。
【0008】
特開平6−323298号広報では、溶射層を有した鋼製ライナーをランナー翼部や翼板先端部に取り付ける方法が提案されている。溶射の耐摩耗性は優れているが溶射層の厚みは500μm以下であるため定期的な溶射層の追加補修が必要である。そのため一定期間整備のためにランナーの稼働を停止する必要があった。
【0009】
特願2010−200494号広報においては、各種溶接、銀ロウ、黄銅ロウ、リン銅ロウなどのロウ付け用として用いる気化フラックスの基となる液体フラックスが提案されている。
【0010】
特願2010−232201号広報においては、超硬合金とハイクロム鋳鉄の鋳込み方法が提案されている。
【0011】
特開2010−194606号広報及び特開2010−162598号広報においてはセラミックス板をスタッド溶接で金属板に固定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭60−98795号広報「羽根車用耐摩片」
【特許文献2】実開昭62−128197号広報「羽根車用耐摩部材の取付構造」
【特許文献3】特開2010−105133号広報「集塵ブロワー装置」
【特許文献4】特開2001−96182号広報「鋳ぐるみロウ付け法による受歯」
【特許文献5】特開2009−6347号広報「鋳造複合材」
【特許文献6】特開平6−323298号広報「集塵機ブロワーランナーの製作方法」
【特許文献7】特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」
【特許文献8】特開2009−297782号広報「液体フラックスと製造装置」
【特許文献9】特開2010−100441号広報「液体フラックスと製造装置」
【特許文献10】特願2010−156516号広報「耐摩耗ライナ」
【特許文献11】特願2010−232201号広報「超硬合金の鋳ぐるみ方法」
【特許文献12】特願2010−200494号広報「ロウ付け用フラックス」
【特許文献13】特開2010−194606号広報「セラミックス板の取り付け構造」
【特許文献14】特開2010−162598号広報「セラミックス板の取り付け方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ブロワーランナーの補修や耐摩耗対策に関する課題は、(1)ボスに主板を固定するためのリベットやボルトの摩耗や腐食を防止する、(2)リベットやボルトによるブロワー効率の低下防止や騒音の低減する、(3)定期的な追加溶射や亀裂の生じる溶接肉盛に代わる翼板先端部や表面の摩耗対策を具現化する、(4)翼板の先端部にセラミックスピースを接着剤で張り付けたりスタッド溶接で取り付けたりする方法ではセラミックスピースが割損して定期的な補修が必要なため衝撃で割損せず且つ摩耗しにくい耐摩耗ライナを具現化する、(5)ランナーを全面的に補修する際にランナーをシャフトから外す作業を容易にする、(6)炭素鋼板や超硬合金とハイクロム鋳鉄を拡散接合し、超硬合金がハイクロム鋳鉄から剥離しないような耐摩耗ライナを具現化することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、シャフトにボスを配設し、該ボスにリベットやボルトなどの留め具で主板を取り付け、該主板に翼板と側板を取り付けたブロワーランナーにおいて、外側に耐摩耗コーティングを施し、内側に空間を設けた半割リングで前記留め具の露出部を被覆したブロワーランナーである。
【0015】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、シャフトにボスを配設し、該ボスにリベットやボルトなどの留め具で主板を取り付け、該主板に翼板と側板を取り付けたブロワーランナーにおいて、前記ボスの両側を、シャフトに設けた右ネジと左ネジに螺合する右ネジナットと左ネジナットで固定し、前記右ネジナットと前記左ネジナットが前記ボスと接する面及び前記右ネジナットと前記左ネジナットが前記シャフトと接する面にOリングを配設し、前記シャフトと前記ボスの空間及びキー溝の空間及び前記右ネジナットと前記左ネジナットが前記シャフトと形成する空間に油脂を充填したブロワーランナーである。
【0016】
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、シャフトにボスを配設し、該ボスにリベットやボルトなどの留め具で主板を取り付け、該主板に翼板と側板を取り付けたブロワーランナーにおいて、前記翼板は金属板に貫通孔やアンカー用アリ溝を形成するとともに、係止用溝を形成し、該係止用溝に超硬合金を係止してハイクロム鋳鉄と鋳込んでいる複合翼板であるブロワーランナーである。
【0017】
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記金属板に電気銅メッキもしくは電気ニッケルメッキを施し、且つ前記電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキの上にカニゼンメッキを施し、且つ前記カニゼンメッキの上に複数のフッ化物とホウ化物を溶媒に溶解して生成した液体フラックスを塗布し、該液体フラックスを乾燥せしめてフラックス結晶を生成せしめて前記金属板と前記超硬合金を前記ハイクロム鋳鉄に鋳ぐるみしたブロワーランナーである。
【0018】
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、前記超硬合金に前記電気銅メッキもしくは電気ニッケルメッキを施し、且つ前記電気銅メッキの上にカニゼンメッキを施し、且つ前記カニゼンメッキの上に複数のフッ化物とホウ化物を溶媒に溶解して生成した液体フラックスを塗布し、該液体フラックスを乾燥せしめてフラックス結晶を生成せしめて、前記超硬合金を前記ハイクロム鋳鉄に鋳ぐるみしたブロワーランナーである。
【0019】
第6の解決手段は特許請求項6に示すように、前記複合翼板の前部は前記金属板と前記超硬合金と前記ハイクロム鋳鉄と鋳ぐるみしてあり、後部は前記金属板に前記超硬合金もしくは真空薄膜を施したサーメットや真空薄膜を施したセラミックスに前記電気銅メッキして、該電気銅メッキの上に前記液体フラックスを塗布して、ロウ付けしているブロワーランナーである。
【0020】
第7の解決手段は特許請求項8に示すように、前記複合翼板の前部は前記金属板と前記超硬合金と前記ハイクロム鋳鉄と鋳ぐるみしてあり、後部は前記金属板にセラミックスピースをスタッド溶接で取り付けているブロワーランナーである。
【0021】
第8の解決手段は特許請求項8に示すように、前記超硬合金に前記電気銅メッキもしくは電気ニッケルメッキし、且つ該電気銅メッキの上にカニゼンメッキして、該超硬合金の上に金属玉を載置し、前記超硬合金をアースし且つ前記金属玉に通電し、前記金属玉を前記超硬合金にスタッド溶接してスタッド用超硬合金を生成し、該スタッド用超硬合金をパンチングメタルに載置し、該パンチングメタルをアースし前記スタッド用超硬合金をパンチングメタルにスタッド溶接して超硬合金敷設板を生成し、該超硬合金敷設板を金属基材に載置するとともに前記超硬合金敷設板を前記金属基材に溶接固定して鋳込み用骨材を生成し、該鋳込み用骨材に前記電気銅メッキを施し、且つ該電気銅メッキの上に前記カニゼンメッキを施し、且つ該カニゼンメッキの上に前記液体フラックスを塗布して、該液体フラックスを乾燥せしめて前記フラックス結晶を析出させて、前記ハイクロム鋳鉄と鋳ぐるみして耐摩耗ライナを生成して、前記主板や前記側板に取り付けたブロワーランナーである。
【0022】
第9の解決手段は特許請求項9に示すように、前記超硬合金に前記電気銅メッキもしくは電気ニッケルメッキし、且つ該電気銅メッキの上にカニゼンメッキして、該超硬合金の上に金属玉を載置し、前記超硬合金をアースし且つ前記金属玉に通電し、前記金属玉を前記超硬合金にスタッド溶接してスタッド用超硬合金を生成し、該スタッド用超硬合金をパンチングメタルに載置し、該パンチングメタルをアースし前記スタッド用超硬合金をパンチングメタルにスタッド溶接して超硬合金敷設板を生成し、該超硬合金敷設板を金属基材に載置するとともに前記超硬合金敷設板を前記金属基材に溶接固定して鋳込み用骨材を生成し、該鋳込み用骨材に前記電気銅メッキを施し、且つ該電気銅メッキの上に前記カニゼンメッキを施し、且つ該カニゼンメッキの上に前記液体フラックスを塗布して、該液体フラックスを乾燥せしめて前記フラックス結晶を析出させて、前記ハイクロム鋳鉄と鋳ぐるみした耐摩耗ライナである。
【発明の効果】
【0023】
第1の解決手段による効果は、(1)リベットやボルトなどの留め具の露出部の摩耗や腐食を防止できる、(2)留め具の露出部を半割リングで全周被覆するので空気抵抗を軽減できブロワー効率が向上するとともに騒音を低減できる。
【0024】
第2の解決手段による効果は、(1)右ネジナット、左ネジナット、シャフトのネジが錆ないので、シャフトからのボスの取り外しが容易である、(2)主板、側板、翼板の補修や取り換え作業が容易に行えるので精度の高い修理ができる、(3)修理工程を短縮できることである。
【0025】
第3の解決手段による効果は、(1)金属板に貫通孔やアンカー用アリ溝を形成しているので、これらの貫通孔やアリ溝にハイクロム鋳鉄の溶湯が食い込み、ハイクロム鋳鉄と金属板を機械的に強力に結合できることである。(2)複合翼板先端に固形物が高速で衝突しても超硬合金が埋め込まれているので摩耗しにくい、(3)超硬合金はハイクロムライナに埋め込まれており衝撃を吸収するので破損しにくいことである。
【0026】
第4の解決手段による効果は、金属板に電気銅メッキや電気ニッケルメッキを施しその上にカニゼンメッキし、カニゼンメッキの上に液体フラックスを塗布し乾燥させて結晶フラックスを析出させているので、電気銅メッキや電気ニッケルメッキやカニゼンメッキがロウ材となり且つ結晶フラックスがハイクロム鋳鉄の溶湯の酸化防止や清浄化及び表面張力を低減して湯流れをよくするので金属板とハイクロム鋳鉄をカーケンドール効果により冶金的に拡散接合できることである。従って、金属板とハイクロム鋳鉄が剥離することがない。
【0027】
第5の解決手段による効果は、超硬合金に電気銅メッキや電気ニッケルメッキやカニゼンメッキを施し、その上に液体フラックスを乾燥させてフラックス結晶を析出させてハイクロム鋳鉄と鋳込むことにより、電気銅メッキやカニゼンメッキがロウ材となり、フラックス結晶がハイクロム鋳鉄の溶湯を酸化防止したり清浄化したりするとともに表面張力を低減し湯流れを向上するのでカーケンドール効果により超硬合金とハイクロム鋳鉄を拡散接合できることである。従って、超硬合金とハイクロム鋳鉄が剥離することがない。
【0028】
第6の解決手段による効果は、複合翼板の前部は高速の飛来物による衝撃荷重に耐えるために超硬合金をハイクロム鋳鉄に鋳込んで強化するため重量が大きくなるが、後部は摩耗主体なので超硬合金をロウづけすることにより耐摩耗材の重量が低減できることである。
【0029】
第7の解決手段による効果は、複合翼板の前部は高速の飛来物による衝撃荷重に耐えるために超硬合金をハイクロム鋳鉄に鋳込んで強化するため重量が大きくなるが、後部は摩耗主体なのでセラミックス板をスタッド溶接ピンで固定することにより耐摩耗材の重量が低減できることである。
【0030】
第8の解決手段による効果は、(1)超硬合金の耐摩耗ライナを各種形状や大きさに自在に製造できる、(2)耐摩耗ライナをブロワーランナーの主板や側板の翼板に近接して貼り付けることにより、翼板と主板や側板との接合面の摩耗を防止できることである。
【0031】
第9の解決手段による効果は、超硬合金の耐摩耗ライナを各種形状や大きさに自在に製造できることである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ブロワーランナーの断面図
【図2】図1A部の拡大図
【図3】超硬合金を立てて鋳込んだ複合翼板の断面図
【図4】超硬合金を斜めにして鋳込んだ複合翼板の断面図
【図5】超硬合金を翼板全面に斜めにして前面に鋳込んだ断面図
【図6】超硬合金を斜めにして鋳込んだ複合翼板の部分断面の斜視図
【図7】超硬合金をサラ溝に係止して鋳込んだ複合翼板の断面図
【図8】超硬合金をサラ溝に係止して鋳込んだ複合翼板の部分断面の斜視図
【図9】金属板にメッキ施工し液体フラックスを塗布したイメージ図
【図10】超硬合金にメッキと液体フラックスを塗布した断面図
【図11】真空薄膜がある超硬合金にメッキと液体フラックスを塗布した断面図
【図12】真空薄膜のある硬質材に電気銅メッキした断面図
【図13】硬質材をロウ付けした複合翼板の断面図
【図14】セラミックス板をスタッド溶接した複合翼板の断面図
【図15】スタッド溶接したセラミックス板の断面図
【図16】金属玉をスタッド溶接した超硬合金断面図
【図17】超硬合金敷設板の断面図
【図18】鋳込み用骨材の断面図
【図19】耐摩耗ライナ
【図20】複合翼板の取付状態断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態を図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、図8、図9、図10図11、図12、図13、図14、図15、図16、図17、図18、図19、図20に基づいて説明する。
【0034】
第1の解決手段は特許請求項1及び図1、図2に示すように、シャフト10にボス20を配設し、該ボス20にリベットやボルトなどの留め具30で主板40を取り付け、該主板40に翼板50と側板41を取り付けたブロワーランナー100において、外側に耐摩耗コーティング71を施し、内側に空間72を設けた半割リング70で前記留め具30の露出部を被覆したブロワーランナー100である。
【0035】
半割リング70の材質は炭素鋼、SUS、チタンなどの金属材料が使用できる。金属パイプをリングに成型して半割に切断して製作できる。金属の板を半割のリングに成型して製作することもできる。またハイクロム鋳鉄のような耐摩耗材で鋳造して製作することもできる。半割リングに溶接肉盛や溶射にてハードフェイシング71する。半割リング70は一体で製作してもよいが円周方向に複数に分割したものを溶接して製作してもよい。半割リング70で留め具30を被覆した後、半割リング70の空間70aは充填物72で充填するのがよい。充填物72はキャスタブルやセメントなどが使用できる。充填物72を充填する理由は半割リング70の空間70aにダストや水分が侵入したときにブロワーランナー100の動バランスが崩れるからである。
【0036】
半割リング70は円周方向に対して突起物がなく空気抵抗が低減するので回転効率が向上し、留め具30の露出部が風を切るときの騒音を低減できる。
【0037】
第2の解決手段は特許請求項2及び図1、図2に示すように、シャフト10にボス20を配設し、該ボス20にリベットやボルトなどの留め具30で主板40を取り付け、該主板40に翼板50と側板41を取り付けたブロワーランナー100において、前記ボス20の両側を、シャフト10に設けた右ネジ11と左ネジ12に螺合する右ネジナット61と左ネジナット62で固定し、前記右ネジナット61と前記左ネジナット62が前記ボス20と接する面及び前記右ネジナット61と前記左ネジナット62が前記シャフト10と接する面にOリング14を配設し、前記シャフト10と前記ボス20の空間10a及びキー溝の空間10b及び前記右ネジナット61と前記左ネジナット62が前記シャフト10と形成する空間10cに油脂を充填したブロワーランナー100である。
【0038】
右ネジナット61と左ネジナット62はそれぞれシャフト10の右ネジ11、左ネジ12と螺合するが、緩み防止のために右ネジ、左ネジにしている。シャフト10とボス20の空間10aやキー13とボス20間にできるキー溝の空間10b及び前記右ネジナット61と前記左ネジナット62が前記シャフト10と形成する空間10cに油脂を注入する。右ネジナット61や左ネジナット62が接するボス20とシャフト10の面はそれぞれOリング14でシールして油脂が漏れにくくしている。油脂は注入口15から圧入し、排油口16から油脂が出てくるまで注入する。排油口16には盲栓をする。油脂はグリースでもよいしタービン油でもよい。注入した油脂はOリング14が健全であればほとんど洩れることはないが、3〜4年に1回の割合で補給するのがよい。油脂はシャフト10の右ネジ11と右ネジナット61及び左ネジ12と左ネジナット62の間に浸み込んで空気を遮断するのでこれらのネジ11、12が錆びることはない。従って、数年経過してもシャフト10から簡単に右ネジナット61と左ネジナット62を取り外せるのでシャフト10とボス20の分解が容易である。
【0039】
第3の解決手段は特許請求項3及び図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、図8に示すように、シャフト10にボス20を配設し、該ボス20にリベットやボルトなどの留め具30で主板40を取り付け、該主板40に翼板50と側板41を取り付けたブロワーランナー100において、前記翼板50は、金属板52に貫通孔52aやアンカー用アリ溝52bを形成するとともに、係止用溝52cを形成し、該係止用溝52cに超硬合金80を係止してハイクロム鋳鉄53と鋳込んでいる複合翼板51であることを特徴とするブロワーランナー100である。
【0040】
超硬合金80はハイクロム鋳鉄53の溶湯を鋳型に流し込む際に動かないように固定する必要がある。そのため係止用溝52cは超硬合金80より若干小さく製作しておき超硬合金80を軽く打ち込んで止まるようにするのがよい。図3においては、超硬合金80を係止用溝52cに略垂直に差し込んで固定している。図4では超硬合金80を係止用溝52cに斜めに差し込んで固定している。超硬合金80は飛来物や空気抵抗を強く受ける複合翼板51の前方部に配設する必要がある。図3のように超硬合金80を略垂直に立てることにより、飛来物や空気抵抗を受けやすくなり複合翼板51の後方の摩耗を低減できる。図4のように超硬合金80を斜めにすることにより飛来物や空気抵抗を逆に逃がすことができ超硬合金80の摩耗寿命を延長できる。しかし複合翼板51の後方は磨耗の影響を受けやすいので超硬合金80を密に埋め込む必要がある。磨耗の激しいブロワーランナー100の場合は図5のように複合翼板51の後方にも配設するのが良い。図6は超硬合金80を斜めに埋め込んだ複合翼板51の部分断面の斜視図である。超硬合金80はできるだけ繋ぎ目80aが小さくなるように配設するのがよい。繋ぎ目80aが大きいとダストカットが発生する。ダストカットが発生して後方の摩耗が拡大しないように、超硬合金80の前列80bと後列80cのつなぎ目は千鳥配列にするのが良い。図7は超硬合金80をアリ溝の係止溝52cに係止した場合の断面図である。図8は超硬合金80をアリ溝の係止溝52cに係止した場合の部分断面の斜視図である。工具用超硬合金80は端面を斜めにカットした形状のものがあり、アリ溝の係止溝52cに挿入して係止することができる。
【0041】
第4の解決手段は特許請求項4及び図9に示すように、前記金属板52に電気銅メッキ81もしくは電気ニッケルメッキ82を施し、且つ前記電気銅メッキ81もしくは前記電気ニッケルメッキ82の上にカニゼンメッキ83を施し、且つ前記カニゼンメッキ83の上に複数のフッ化物とホウ化物を溶媒に溶解して生成した液体フラックス84を塗布し、該液体フラックス84を乾燥せしめてフラックス結晶84を生成せしめて、前記金属板52と前記超硬合金80を前記ハイクロム鋳鉄53に鋳ぐるみしたことを特徴とする請求項3記載のブロワーランナー100である。
【0042】
本発明による金属板52とハイクロム鋳鉄53の鋳ぐるみは特願2010−156516号広報「耐摩耗ライナ」を応用することにより具現化したものである。
【0043】
本発明による液体フラックス84は、本発明者が発明した特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」(特許文献1)、特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」(特許文献2)、特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」(特許文献3)によって製造することができる。少なくとも複数のフッ化物とホウ化物をアルコールやアセトンなどの溶媒に溶解して生成したものである。フッ化物とホウ化物は必須材料でありこの他に用途に応じて種々の化合物を配合できる。
【0044】
ホウ化物はホウ素とそれより電気陰性度が小さい元素との間の化合物の総称である。例えば、ホウ酸(H3BO3)、ホウ砂(Na2B4O7、酸化ホウ素(B2OB)、ホウ酸トリメチール((CH3O)3B)、ホウ酸カリウム(K2B4O7)、ホウフッ化水素酸(HBF4)、ホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)などがありハイクロム鋳鉄53の成分、鋳込み温度になどの条件に応じて選択することができる。
【0045】
フッ化物は例えば、フッ化カリウム(KF)、フッ化ナトリウム(NaF)、三フッ化ホウ素(BF3)、四フッ化珪素(SiF4)、酸性フッ化ナトリウム(NaHF2)、ホウフッ化カリウム(KBF4)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)、ホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)、テトラフルオロホウ酸(HBF4)、ケイフッ化カリウム(K2SiF6)、フッ化アルミナトリウム(液晶石、Na3ALF6)、フッ化アルミカリウム(カリ永晶石、K3ALF6)、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)、酸性フッ化カリウム(KHF2)、ケイフッ化ナトリウム(NaHF6)、ケイフッ化ナトリウム(NaHF6)などがありハイクロム鋳鉄の成分、鋳込み温度になどの条件に応じて選択することができる。フッ化物とホウ化物の共通の化合物であるホウフッ化カリウム(KBF4)やホウフッ化ナトリウム(NaBF4)はそれぞれのフッ化物とホウ化物の両方で例示した。
【0046】
ハイクロム鋳鉄53の溶湯は徐冷中の1000〜1100℃の温度領域で電気銅メッキ81もしくは電気ニッケルメッキ82と液体フラックス84の相互作用により金属板52と溶着する。もしくは電気銅メッキ81や電気ニッケルメッキ82の上に施したカニゼンメッキ83と液体フラックス84の相互作用により金属板52と溶着する。液体フラックス84は鋳型の予熱時に焼成され溶媒は消失するが電気銅メッキ81や電気ニッケルメッキ82やカニゼンメッキ83に固着したフラックス結晶84(残留成分)は薄いフィルム状となりフラックスは機能を発揮しハイクロム鋳鉄53溶湯の表面張力除去、清浄作用、酸化防止作用によりカーケンドール効果が生じて金属間元素が移動して拡散接合による鋳ぐるみロウ付けを可能にする。
【0047】
ハイクロム鋳鉄53の化学成分は一般的に重量%で、C:2.5〜3.5%、Si:0.3〜0.5%、 Mn:0.4〜0.6、P: 0.02以下、S: 0.02以下、Cr:24〜28、Ni:max2%、 残Feであり、炭化クロムCr2C7を主力としている。用途に応じてMo、Nb、V、W、Ti、ALなどを添加する場合がある。
【0048】
従来のハイクロム鋳鉄53の化学成分を基本にして、これに炭化物を形成する元素を添加してハイクロム鋳鉄53の硬度向上を図ることも可能である。従来の主成分である炭化クロム(Cr2C7)に加えて、炭化ニオブ(NbC2)、炭化モリブデン(MoC)、炭化バナジウム(VC)、炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)などの炭化物を析出させた組織構造とすることによりハイクロム鋳鉄53の硬度はHv900〜1200を実現できる。添加元素の内、Ti、V、Ni、Moは硬度向上の他に結晶微細化剤としての働きもある。ハイクロム鋳鉄53は急熱急冷すると針状炭化物となるため割れやすいがTi、V、Ni、Moなどの結晶微細化を促進する元素を添加することにより、マルテンサイトやセメンタイト中にセミオーステナイトが生まれるので緩衝材の役割を果たし割れにくくなる。硬度向上のための主な炭化物はCr2C7、NbC2、WCでありこれらがハイクロム鋳鉄53中の炭化物の95%程度を占めている。ハイクロム鋳鉄53に各種炭化物形成元素を添加すると金属板52との接合性が低下したりクラックが入りやすくなったりするなどの問題があったが、カニゼンメッキ83への液体フラックス84塗布によりこれらの問題を解決できた。
【0049】
電気銅メッキ81や電気ニッケルメッキ82の表面にカニゼンメッキ(Ni−P)83をする。電気銅メッキ81や電気ニッケルメッキ82やカニゼンメッキの厚みは0.01〜0.03mmが望ましい。
【0050】
金属板52に電気銅メッキ81を施し、且つその上にカニゼンメッキ83を施し、且つカニゼンメッキ83の上に液体フラックス84を塗布する。液体フラックス84の塗布厚みは乾燥後において、0.01〜0.03mmが望ましい。液体フラックス84は砂型(鋳型)中で300〜400℃に予熱するのでその際の熱で焼成されカニゼンメッキ83にフラックス結晶84となって薄く張り付く。フラックス結晶84は注湯時に次のような働きをする。(1)注湯中の酸化物を除去し清浄化作用をする。(2)カニゼンメッキ83表面の酸化を防止する。(3)注湯の流動性をよくし、拡延性を広げ表面張力を低減するので鋳巣、ピンホールの発生を抑制する。
【0051】
ハイクロム鋳鉄53の品質を確保するには溶湯の流動性をよくする必要があり、ジルコニアレンガの最大耐熱温度である1600±50℃近辺まで溶湯温度を上げて鋳込むのが望ましい。金属板52は冷やし金として作用するので溶湯の急冷を緩和するために通常の鋳込みよりも溶湯温度は100℃程度高くする。このためフラックスも1650〜1700℃の温度範囲において酸化防止や清浄作用の効果を発揮する必要がある。従来フラックスとして一般に使用されているケイ酸ソーダ(Na2SiO3)の使用限界は最大1200〜1400℃であり、ホウ砂(Na2B4O7)は800〜1000℃である。従って従来のフラックスは1400℃が限界でありハイクロム鋳鉄53用のフラックスとして必ずしも最良のものではない。本発明で使用する液体フラックス84は300〜400℃の低温域から1650〜1700℃の高温域までをカバーする幅広い温度範囲で機能を発揮するものである。
【0052】
第5の手段は特許請求項5及び図10、図11に示すように、前記超硬合金80に前記電気銅メッキ81もしくは電気ニッケルメッキ82を施し、且つ前記電気銅メッキ81もしくは電気ニッケルメッキ82の上にカニゼンメッキ83を施し、且つ前記カニゼンメッキ83の上に複数のフッ化物とホウ化物を溶媒に溶解して生成した液体フラックス84を塗布し、該液体フラックス84を乾燥せしめてフラックス結晶84を生成せしめて、前記超硬合金80を前記ハイクロム鋳鉄53に鋳ぐるみしたブロワーランナー100である。
【0053】
本発明による超硬合金80とハイクロム鋳鉄53の鋳ぐるみは特願2010−232201号広報「超硬合金の鋳ぐるみ方法」を応用することにより具現化したものである。
【0054】
超硬合金80表面には液体フラックス84塗布後、アルコール分が蒸発して均一に0.1mm程度のフラックス結晶84(液体フラックス84)が析出する。液体フラックス84中には複数の電解質がアルコール中最大30wt%濃度にて溶解しているためである。鋳ぐるみ母材となる超硬合金80や金属板52は熱容量が大きくなることから鋳込み前にあらかじめ200〜300℃程度に予熱する。超硬合金80や金属板52が冷やし金となって溶湯が固まるのを防ぐためである。液体フラックス84は、乾燥後溶媒が蒸発してフラックス結晶84となっている。このフラックス結晶84を200〜300℃にて予熱するとガラス状に固まり強固に超硬合金80に張り付いて剥離しない。フラックス結晶84はガラス状に固まることで1400〜1450℃の溶湯が鋳型に流れ込んできても超硬合金80に張り付いたまま剥離しない。即ち、液体フラックス84はフラックスとしての機能を果たすために200〜1450℃までの温度範囲で超硬合金80に張り付く機能が必要である。液体フラックス84の役割は、(1)超硬合金80表面の酸化物を除去し清浄作用を有すること、(2)電気銅メッキ81のロウ付け温度(1086℃)まで活性化を保持できること、(3)ロウ付けの流動性と拡延性を保持することである。これら条件が満たされることにより、1400〜1450℃のハイクロム鋳鉄53溶湯を流し込んだときに超硬合金80表面のフラックス結晶84がフラックス機能を発揮し、一瞬にしてハイクロム鋳鉄53の表面張力を破り安定して電気銅メッキ81やカニゼンメッキ83とロウ付け接合することが可能となる。
【0055】
超硬合金80は、タングステンカーバイト(WC)、MoC、VC、NbC、TiCなどの複合炭化物をNiやCoにて粒子間結合させたものである。超硬合金80からなる工具表面には窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)、チタンアルミナイトライド(TiALN)、アルミクロムナイトライド(ALCrN)などの硬質物質を化学気相成長(CVD)や物理気相成長(PVD)により真空薄膜85がコーティングしてある。本発明では通常の超硬合金80のほかに真空薄膜85を施した超硬合金80も複合翼板51に応用できる。超硬合金80からできた切削工具の真空薄膜85を剥すことなく、真空薄膜85の上に直接電気銅メッキ81してその上にカニゼンメッキ83したり液体フラックス84を塗布したりしてハイクロム鋳鉄53と鋳ぐるむことにより耐磨耗性に優れた複合翼板51を製造できる。
【0056】
第6の解決手段は特許請求項6及び図12及び図13に示すように、前記複合翼板51の前部は前記金属板52と前記超硬合金80と前記ハイクロム鋳鉄53と鋳ぐるみしてあり、後部は前記金属板52に前記超硬合金80もしくは真空薄膜85を施したサーメット86や真空薄膜85を施したセラミックス87に前記電気銅メッキ81して、且つ該電気銅メッキ81の上に前記カニゼンメッキ83を施し、且つ該カニゼンメッキ83の上に前記液体フラックス84を塗布して、ロウ付けしているブロワーランナー100である。
【0057】
前記超硬合金80や真空薄膜85を施した超硬合金80や真空薄膜85を施したサーメット86や真空薄膜85を施したセラミックス87に電気銅メッキ81を施し、且つ電気銅メッキ81の上にカニゼンメッキ83を施し、且つカニゼンメッキ83の上に液体フラックス84を塗布して乾燥させてフラックス結晶84を析出させてからロウ付けする。特願2010−232201号広報「超硬合金の鋳ぐるみ方法」の発明により真空薄膜85をコーティングした超硬合金80やサーメット86やセラミックス87などの硬質材に直接電気銅メッキ81が可能になった。従って、これらの硬質材に電気銅メッキ81を施し、且つ電気銅メッキ81の上にカニゼンメッキ83を施しさらにその上に液体フラックス84を塗布して液体フラックス84を乾燥させてフラックス結晶84を析出させることによりカーケンドール効果が生じ、拡散接合によるロウ付けが可能となる。少なくとも超硬合金80やサーメット86やセラミックス87などの硬質材に電気銅メッキ81して且つ液体フラックス84を塗布して金属板52にロウ付けしてあれば本発明の範囲内である。複合翼板51の後端は摩耗しやすいので硬化肉盛54をしたほうがよい。
【0058】
本発明による超硬合金80と金属板52のロウ付けは特願2010−200494号広報「ロウ付け用フラックス及びロウ付け方法」を応用することにより具現化したものである。ロウ付けは銀蝋、リン銅蝋、銅及び黄銅蝋、ニッケル蝋、コバルト蝋などが使用できる。ロウ付け用液体フラックスは特願2010−200494号広報で提示されている液体フラックスが使用できる。
【0059】
サーメット86はセラミックスとメタル複合体であり、炭化チタン(TiC)や炭窒化チタン(TiCN)などのチタン化合物をニッケルやコバルトで結合したものなどが使用できる。セラミックス87はアルミナ、窒化珪素、炭化ケイ素、ジルコニアなどが使用できる。
【0060】
第7の解決手段は特許請求項7及び図14、図15に示すように、前記複合翼板51の前部は前記金属板52と前記超硬合金80と前記ハイクロム鋳鉄53と鋳ぐるみしてあり、後部は前記金属板52にセラミックス87をスタッド溶接で取り付けているブロワーランナー100である。
【0061】
特開2010−194606号広報「セラミックス板の取り付け構造とその方法」及び特開2010−162598号広報「セラミックス板の取り付け方法」などにおけるセラミックスやスタッド溶接方法が使用できる。図14は図13のB部を拡大したものである。セラミックス87は板状のセラミックス板87として金属板52にスタッド溶接する。図14(a)はセラミックス板87の縦断面図である。スタッド溶接ピン87aはセラミックス板87のサイドから挿入することができる。図14(b)はセラミックス板87の横断面図である。セラミックス板87をスタッド溶接ピン87aで固定している状態を示している。セラミックス板87はアルミナ、窒化珪素、炭化ケイ素、ジルコニアなどが使用できる。セラミックス板87の厚みは3〜30mmが望ましい。3mm以下であるとスタッド溶接ピン87aを挿入できなくなる。30mmより厚いと重量が大きくなるとともに遠心力が大きくなりスタッド溶接強度が不足する。重量が大きくなるとブロワーランナー100を起動するときのGD2が大きくなりモーター容量アップにつながる。セラミックス板87はダストカットを防止するために千鳥配列にするのがよい。スタッド溶接する場合においても、金属板52に液体フラックス84を塗布してフラックス結晶84を析出させてスタッド溶接することにより強度の高いスタッド溶接を得ることができる。金属板52は全部と後部を一枚の金属板52で一体にしてもよいし、図13に示すように2枚の金属板52を溶接して一体化してもよい。複合翼板51の後端は摩耗しやすいので硬化肉盛54をしたほうがよい。
【0062】
第8の解決手段は特許請求項8及び図16、図17、図18、図19、図20に示すように、前記超硬合金80に前記電気銅メッキ81もしくは電気ニッケルメッキ82し、且つ該電気銅メッキ81もしくは電気ニッケルメッキ82の上にカニゼンメッキ83して、該超硬合金80の上に金属玉90を載置し、前記超硬合金80をアースし前記金属玉90に通電し、前記金属玉90を前記超硬合金80にスタッド溶接してスタッド用超硬合金88を生成し、該スタッド用超硬合金88をパンチングメタル91に載置し、該パンチングメタル91をアースし前記スタッド用超硬合金88をパンチングメタル91にスタッド溶接して超硬合金敷設板92を生成し、該超硬合金敷設板92を金属基材93に載置するとともに前記超硬合金敷設板92を前記金属基材93に溶接固定して鋳込み用骨材94を生成し、該鋳込み用骨材94に前記電気銅メッキ81を施し、且つ前記カニゼンメッキ83を施し、且つ該カニゼンメッキ83の上に前記液体フラックス84を塗布して、該液体フラックス84を乾燥せしめて前記フラックス結晶84を析出させて、前記ハイクロム鋳鉄53と鋳ぐるみして耐摩耗ライナ95を生成して、前記主板40や前記側板41に取り付けたブロワーランナー100である。
【0063】
本発明は、特願2010−156516号広報「耐摩耗ライナ」と特願2010−232201号広報「超硬合金の鋳ぐるみ方法」に開示してある発明を応用して具現化したものである。
【0064】
図16(a)に示すように金属玉90を超硬合金80の上に載置する。超硬合金80に貫通孔90aがある場合は貫通孔90aに金属玉90を載置すると安定する。金属玉90にスタッド溶接の電極91を押し付けて電源92により通電する。電圧は100〜200V、電流は1000〜20000Aである。図16(b)に示すように通電後金属玉90は熱変形してやや扁平になり超硬合金80と溶着部90bを形成して接合しスタッド用超硬合金88を生成する。次に図17に示すように、スタッド用超硬合金88をパンチングメタル93にスタッド溶接して超硬合金敷設板94を生成する。スタッド用超硬合金88をスタッド溶接する際の電圧は100〜200V、電流は1000〜20000Aである。次に図18に示すように、超硬合金敷設板94を金属基材95に溶接部90cにて溶接して鋳込み用骨材96を生成する。次に、該鋳込み用骨材96に前記電気銅メッキ81もしくは電気ニッケルメッキ82を施し、且つ前記カニゼンメッキ83を施し、且つ該カニゼンメッキ83の上に前記液体フラックス84を塗布して、該液体フラックス84を乾燥せしめて前記フラックス結晶84を析出させる。電気銅メッキ81はシアン浴やピロリン酸浴やホウフッ化浴を使用することができる。次に図19に示すように、鋳込み用骨材96をハイクロム鋳鉄53と鋳込んで耐摩耗ライナ97を生成する。次に図20に示すように、耐摩耗ライナ97を主板40や側板41に溶接する。本耐摩耗ライナ97を使用することによりブロワーランナー100の耐磨耗性を向上させることができる。
【0065】
金属玉90は炭素鋼、SUS、チタンなどが使用できる。金属玉90の大きさは2〜8mmがよい。2mmより小さいと超硬合金80とパンチングメタル93の間隔が小さくなりハイクロム鋳鉄53の溶湯廻りが低下する。8mmより大きいと超硬合金80とパンチングメタル93の間隔が大きくなり鋳込み用骨材96の厚みが大きくなりコスト高となる。望ましくは3〜5mmである。貫通孔90aのある超硬合金80においてはスタッド溶接の電極91で金属玉90を抑える際に貫通孔90aによって金属玉90が安定する効果がある。パンチングメタル93は炭素鋼、SUS、チタンなどが使用できる。金属基材95は炭素鋼、SUS、チタンなどが使用できる。
【0066】
金属玉90によって超硬合金80とパンチングメタル93の間に隙間が生まれるので超硬合金80とパンチングメタル93をハイクロム鋳鉄53によって強固に結合できる。従ってハイクロム鋳鉄53が摩耗しても超硬合金80はパンチングメタル93に接合されているので剥離することはない。
【0067】
第9の解決手段は特許請求項9及び図19に示すように、前記超硬合金80の前記カニゼンメッキ83の上に金属玉90を載置し、前記超硬合金80をアースし且つ前記金属玉90に通電し、前記金属玉90を前記超硬合金80に溶着せしめてスタッド用超硬合金88を生成し、該スタッド用超硬合金88をパンチングメタル93に載置し、該パンチングメタル93をアースし前記スタッド用超硬合金88をパンチングメタル93にスタッド溶接して超硬合金敷設板94を生成し、該超硬合金敷設板94を金属基材95に載置するとともに前記超硬合金敷設板94を前記金属基材95に溶接部95cにて溶接固定して鋳込み用骨材96を生成し、該鋳込み用骨材96に前記電気銅メッキ81もしくは電気ニッケルメッキ82を施し、且つ前記カニゼンメッキ83を施し、且つ該カニゼンメッキ83の上に前記液体フラックス84を塗布して、該液体フラックス84を乾燥せしめて前記フラックス結晶84を析出させて、前記ハイクロム鋳鉄53と鋳ぐるみした耐摩耗ライナ97である。
【0068】
耐摩耗ライナ97はボルトや溶接によりブロワーランナー100、ホッパー、シュートなどの摩耗を受ける機械部品に簡単に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 :シャフト
10a:シャフトとボスの空間
10b:キー溝の空間
10c:右ネジナットと左ネジナットがシャフトと形成する空間
11 :右ネジ
12 :左ネジ
13 :キー
14 :Oリング
15 :油脂注入口
16 :排油口
20 :ボス
30 :留め具
40 :主板
41 :側板
50 :翼板
50a:貫通孔
50b:アンカー用アリ溝
50c:係止用溝
51 :複合翼板
52 :金属板
53 :ハイクロム鋳鉄
54 :硬化肉盛
61 :右ネジナット
62 :左ネジナット
70 :半割リング
70a:空間
71 :ハードフェイシング
72 :充填物
80 :超硬合金
80a:繋ぎ目
80b:前列
80c:後列
81 :電気銅メッキ
82 :電気ニッケルメッキ
83 :カニゼンメッキ
84 :液体フラックス(フラックス結晶)
85 :真空薄膜
86 :サーメット
87 :セラミックス
87a:スタッド溶接ピン
88 :スタッド用超硬合金
90 :金属玉
90a:貫通孔
90b:溶着部
90c:溶接部
91 :電極
92 :電源
93 :パンチングメタル
94 :超硬合金敷設板
95 :金属基材
96 :鋳込み用骨材
97 :耐摩耗ライナ
100:ブロワーランナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトにボスを配設し、該ボスにリベットやボルトなどの留め具で主板を取り付け、該主板に翼板と側板を取り付けたブロワーランナーにおいて、外側に耐摩耗コーティングを施し、内側に空間を設けた半割リングで前記留め具の露出部を被覆したことを特徴とするブロワーランナー。
【請求項2】
シャフトにボスを配設し、該ボスにリベットやボルトなどの留め具で主板を取り付け、該主板に翼板と側板を取り付けたブロワーランナーにおいて、前記ボスの両側を、シャフトに設けた右ネジと左ネジに螺合する右ネジナットと左ネジナットで固定し、前記右ネジナットと前記左ネジナットが前記ボスと接する面及び前記右ネジナットと前記左ネジナットが前記シャフトと接する面にOリングを配設し、前記シャフトと前記ボスの空間及びキー溝の空間及び前記右ネジナットと前記左ネジナットが前記シャフトと形成する空間に油脂を充填したことを特徴とするブロワーランナー。
【請求項3】
シャフトにボスを配設し、該ボスにリベットやボルトなどの留め具で主板を取り付け、該主板に翼板と側板を取り付けたブロワーランナーにおいて、前記翼板は金属板に貫通孔やアンカー用アリ溝を形成するとともに、係止用溝を形成し、該係止用溝に超硬合金を係止してハイクロム鋳鉄と鋳込んでいる複合翼板であることを特徴とするブロワーランナー。
【請求項4】
前記金属板に電気銅メッキもしくは電気ニッケルメッキを施し、且つ前記電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキの上にカニゼンメッキを施し、且つ前記カニゼンメッキの上に複数のフッ化物とホウ化物を溶媒に溶解して生成した液体フラックスを塗布し、該液体フラックスを乾燥せしめてフラックス結晶を生成せしめて前記金属板と前記超硬合金を前記ハイクロム鋳鉄に鋳ぐるみしたことを特徴とする請求項3記載のブロワーランナー。
【請求項5】
前記超硬合金に前記電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキを施し、且つ前記電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキの上にカニゼンメッキを施し、且つ前記カニゼンメッキの上に複数のフッ化物とホウ化物を溶媒に溶解して生成した液体フラックスを塗布し、該液体フラックスを乾燥せしめてフラックス結晶を生成せしめて、前記超硬合金を前記ハイクロム鋳鉄に鋳ぐるみしたことを特徴とする請求項3及び請求項4記載のブロワーランナー。
【請求項6】
前記複合翼板の前部は前記金属板と前記超硬合金と前記ハイクロム鋳鉄と鋳ぐるみしてあり、後部は前記金属板に前記超硬合金もしくは真空薄膜を施したサーメットや真空薄膜を施したセラミックスに前記電気銅メッキして、該電気銅メッキの上に前記液体フラックスを塗布して、ロウ付けしていることを特徴とする請求項3及び請求項4及び請求項5記載のブロワーランナー。
【請求項7】
前記複合翼板の前部は前記金属板と前記超硬合金と前記ハイクロム鋳鉄と鋳ぐるみしてあり、後部は前記金属板にセラミックスピースをスタッド溶接で取り付けていることを特徴とする請求項1及び請求項3及び請求項4及び請求項5記載のブロワーランナー。
【請求項8】
前記超硬合金に前記電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキし、且つ該電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキの上にカニゼンメッキして、該超硬合金の上に金属玉を載置し、前記超硬合金をアースし且つ前記金属玉に通電し、前記金属玉を前記超硬合金にスタッド溶接してスタッド用超硬合金を生成し、該スタッド用超硬合金をパンチングメタルに載置し、該パンチングメタルをアースし前記スタッド用超硬合金をパンチングメタルにスタッド溶接して超硬合金敷設板を生成し、該超硬合金敷設板を金属基材に載置するとともに前記超硬合金敷設板を前記金属基材に溶接固定して鋳込み用骨材を生成し、該鋳込み用骨材に前記電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキを施し、且つ該電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキの上に前記カニゼンメッキを施し、且つ該カニゼンメッキの上に前記液体フラックスを塗布して、該液体フラックスを乾燥せしめて前記フラックス結晶を析出させて、前記ハイクロム鋳鉄と鋳ぐるみして耐摩耗ライナを生成して、前記主板や前記側板に取り付けたことを特徴とする請求項1及び請求項2請求項3及び請求項4及び請求項5及び請求項6及び請求項7記載のブロワーランナー。
【請求項9】
前記超硬合金に前記電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキし、且つ該電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキの上にカニゼンメッキして、該超硬合金の上に金属玉を載置し、前記超硬合金をアースし且つ前記金属玉に通電し、前記金属玉を前記超硬合金にスタッド溶接してスタッド用超硬合金を生成し、該スタッド用超硬合金をパンチングメタルに載置し、該パンチングメタルをアースし前記スタッド用超硬合金をパンチングメタルにスタッド溶接して超硬合金敷設板を生成し、該超硬合金敷設板を金属基材に載置するとともに前記超硬合金敷設板を前記金属基材に溶接固定して鋳込み用骨材を生成し、該鋳込み用骨材に前記電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキを施し、且つ該電気銅メッキもしくは前記電気ニッケルメッキの上に前記カニゼンメッキを施し、且つ該カニゼンメッキの上に前記液体フラックスを塗布して、該液体フラックスを乾燥せしめて前記フラックス結晶を析出させて、前記ハイクロム鋳鉄と鋳ぐるみしたことを特徴とする耐摩耗ライナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−102641(P2012−102641A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250420(P2010−250420)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(504132962)
【Fターム(参考)】