説明

プッシュスイッチ付きスライドスイッチ

【課題】プッシュ機構におけるプッシュストロークを短縮して操作性を向上させるとともに小形・薄形化を図り、スライド機構は切換位置ごとにクリック感を発生させて他の機能との明確な操作感の差別化を図りうるプッシュスイッチ付きスライドスイッチを提供する。
【解決手段】プッシュ機構に皿形可動接片3を用いたことでプッシュストロークが短縮されて操作性を向上させることができるとともに小形・薄形化を図ることができる。また、スライド機構の動作に連動してディテント機構25が動作することで切換位置ごとにクリック感が発生して他の機能との明確な操作感の差別化を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチ付きスライドスイッチに関するものであり、特に、小形・薄形で優れた操作性を有するプッシュスイッチ付きスライドスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、例えば、次のようなプッシュスライドスイッチが知られている。この従来技術は、スライドスイッチ機能部とプッシュスイッチ機能部のいずれも、復帰用のバネ部材としてそれぞれコイルばねが使用されて摺動接点方式として構成されている。そして、一つの摘みの操作によってプッシュスイッチとしてもスライドスイッチとしても機能するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−229781号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の従来技術においては、スライドスイッチ機能部とプッシュスイッチ機能部のいずれも摺動接点方式となっている。このため、プッシュストロークが大きくなってスイッチ全体が大形化するとともに良好な操作感触が得難いという問題があった。また、近年の多様化した機能を持つ電子機器においては各機能のスイッチに操作感の差別化が求められている。しかし上記従来技術は、これに対応させることも難しいという問題があった。
【0004】
そこで、プッシュ機構におけるプッシュストロークを短縮して操作性を向上させるとともに小形・薄形化を図り、スライド機構は切換位置ごとにクリック感を発生させて他の機能との明確な操作感の差別化を図り、さらには複合機能を備えたスイッチを高い精度で容易に製造、組立てを行うとともにコスト低減を図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、複数のスライド用固定端子及び該複数のスライド用固定端子上をスライドして当該複数のスライド用固定端子間の接続を切換えるスライド接片を備えたスライド機構と、複数のプッシュ用固定端子並びに該複数のプッシュ用固定端子に対向して配置され中央部の1段押し操作及び該操作の解除により弾性的に反転して前記複数のプッシュ用固定端子間の接続を開閉する皿形可動接片を備えた1段階式プッシュ機構と、前記皿形可動接片の押し操作及び前記スライド接片のスライド操作を行わせるための摘み並びに該摘みを押し操作可能に保持するとともに前記スライド接片を取付けて前記摘みによるスライド操作時に当該スライド接片を前記複数のスライド用固定端子上にスライドさせるスライダを備えた操作機構と、前記スライダとスイッチ本体側との間に設けられ前記スライド接片による前記複数のスライド用固定端子間の切換位置ごとにクリック感を発生するディテント機構と、前記摘みによる少なくとも一方向へのスライド操作時に該摘みをスライド操作前の中立位置に復帰させるための付勢力を生成し前記摘みによるスライド操作の解除時に前記付勢力により前記摘みを前記スライダとともに前記中立位置に弾力的に復帰させる自己復帰機構とを一体に構成してなるプッシュスイッチ付きスライドスイッチを提供する。
【0006】
この構成によれば、摘みをスライド操作するとスライダを介してスライド接片が複数のスライド用固定端子上をスライドして該複数のスライド用固定端子間の接続切換えが行われる。一方、摘みを押し操作すると皿形可動接片が表裏方向に弾性的に反転動作して複数のプッシュ用固定端子間の開閉が行われる。また、摘みのスライド操作によるスライド機構の動作時には、これと連動して、ディテント機構が動作する。そして、該ディテント機構の動作により、スライド接片による複数のスライド用固定端子間の切換位置ごとに、操作者に対しクリック感が発生して他の機能との操作感の差別化が得られる。また摘みによる少なくとも一方向へのスライド操作時には自己復帰機構の動作により、該スライド操作の解除時に摘みはスライド操作前の中立位置に自動的に復帰する。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記ディテント機構と上記自己復帰機構は、上記1段階式プッシュ機構の両サイドにそれぞれ配置してなるプッシュスイッチ付きスライドスイッチを提供する。
【0008】
この構成によれば、複数のプッシュ用固定端子、皿形可動接片及び操作機構における摘みが縦形に構成される一段階式プッシュ機構に対し、その両サイドにディテント機構と自己復帰機構をそれぞれ配置したことで、スイッチ全体の薄形化が、より良く図れる。
【0009】
請求項3記載の発明は、上記スライド機構における複数のスライド用固定端子及び上記1段階式プッシュ機構における複数のプッシュ用固定端子は、ベースの成形時に該ベース内の表面部にインサート成形により設けてなるプッシュスイッチ付きスライドスイッチを提供する。
【0010】
この構成によれば、複数のスライド用固定端子と複数のプッシュ用固定端子とをベース内の表面部にインサート成形により設けたことで、組立工数の低減とともにスイッチ全体の薄形化が図れる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、複数のスライド用固定端子及び該複数のスライド用固定端子上をスライドして当該複数のスライド用固定端子間の接続を切換えるスライド接片を備えたスライド機構と、複数のプッシュ用固定端子並びに該複数のプッシュ用固定端子に対向して配置され中央部の1段押し操作及び該操作の解除により弾性的に反転して前記複数のプッシュ用固定端子間の接続を開閉する皿形可動接片を備えた1段階式プッシュ機構と、前記皿形可動接片の押し操作及び前記スライド接片のスライド操作を行わせるための摘み並びに該摘みを押し操作可能に保持するとともに前記スライド接片を取付けて前記摘みによるスライド操作時に当該スライド接片を前記複数のスライド用固定端子上にスライドさせるスライダを備えた操作機構と、前記スライダとスイッチ本体側との間に設けられ前記スライド接片による前記複数のスライド用固定端子間の切換位置ごとにクリック感を発生するディテント機構と、前記摘みによる少なくとも一方向へのスライド操作時に該摘みをスライド操作前の中立位置に復帰させるための付勢力を生成し前記摘みによるスライド操作の解除時に前記付勢力により前記摘みを前記スライダとともに前記中立位置に弾力的に復帰させる自己復帰機構とを一体に構成したので、1段階式プッシュ機構に皿形可動接片を用いたことでプッシュストロークが短縮されて操作性を向上させることができるとともに小形・薄形化を図ることができる。スライド機構の動作に連動してディテント機構が動作することで切換位置ごとにクリック感が発生して他の機能との明確な操作感の差別化を得ることができる。またディテント機構及び自己復帰機構を備えたスライド機構と1段階式プッシュ機構とを一体化したことで、複合機能を備えたスイッチを高い精度で容易に製造、組立てを行うことができるという利点がある。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記ディテント機構と上記自己復帰機構は、上記1段階式プッシュ機構の両サイドにそれぞれ配置したので、皿形可動接片及び摘み等が縦形に構成される1段階式プッシュ機構に対し、その両サイドにディテント機構と自己復帰機構をそれぞれ配置したことで、スイッチ全体の薄形化を、より良く図ることができるという利点がある。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記スライド機構における複数のスライド用固定端子及び上記1段階式プッシュ機構における複数のプッシュ用固定端子は、ベースの成形時に該ベース内の表面部にインサート成形により設けたので、組立工数を低減することができて経済的な効果を期待することができるとともに薄形化を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
プッシュ機構におけるプッシュストロークを短縮して操作性を向上させるとともに小形・薄形化を図り、スライド機構は切換位置ごとにクリック感を発生させて他の機能との明確な操作感の差別化を図り、さらには複合機能を備えたスイッチを高い精度で容易に製造、組立てを行うとともにコスト低減を図るという目的を、複数のスライド用固定端子及び該複数のスライド用固定端子上をスライドして当該複数のスライド用固定端子間の接続を切換えるスライド接片を備えたスライド機構と、複数のプッシュ用固定端子並びに該複数のプッシュ用固定端子に対向して配置され中央部の1段押し操作及び該操作の解除により弾性的に反転して前記複数のプッシュ用固定端子間の接続を開閉する皿形可動接片を備えた1段階式プッシュ機構と、前記皿形可動接片の押し操作及び前記スライド接片のスライド操作を行わせるための摘み並びに該摘みを押し操作可能に保持するとともに前記スライド接片を取付けて前記摘みによるスライド操作時に当該スライド接片を前記複数のスライド用固定端子上にスライドさせるスライダを備えた操作機構と、前記スライダとスイッチ本体側との間に設けられ前記スライド接片による前記複数のスライド用固定端子間の切換位置ごとにクリック感を発生するディテント機構と、前記摘みによる少なくとも一方向へのスライド操作時に該摘みをスライド操作前の中立位置に復帰させるための付勢力を生成し前記摘みによるスライド操作の解除時に前記付勢力により前記摘みを前記スライダとともに前記中立位置に弾力的に復帰させる自己復帰機構とを一体に構成することにより実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に従って詳述する。図1はプッシュスイッチ付きスライドスイッチの外観を示す図、図2はプッシュスイッチ付きスライドスイッチの要部分解斜視図、図3はベース部を示す図である。まず、本実施例に係るプッシュスイッチ付きスライドスイッチの構成を説明する。
【0016】
図2において、プッシュスイッチ付きスライドスイッチ1は、主として、ベース2、後述する複数のプッシュ用固定端子と共に1段階式プッシュ機構を構成する皿形可動接片3、自己復帰機構を構成するコイルばね4、絶縁板5、後述する複数のスライド用固定端子と共にスライド機構を構成するスライド接片6、皿形可動接片3のプッシュ(押し)操作及びスライド接片6のスライド操作を行うための摘み7aを備えた摘み部7、該摘み部7と共に操作機構9を構成するスライダ8、並びにベース2の上側に取付けられ、該ベース2と共にスイッチ本体となるカバー10等で構成されている。
【0017】
ベース2は、合成樹脂等の絶縁性部材製であり、図3(a)に示すように、平面視左右方向にやや長い長方形状で上面が開放の箱形に形成されている。ベース2の内底面2aには、ほぼ円形の凹部2b内に2個のプッシュ用固定端子11,12が適宜間隔をおいて形成され、幅方向の一側部(図3(a)の上部側)には、スライド用の4個の固定端子13、固定端子14、共通固定端子15及び固定端子16が左右方向に一列に並んで形成されている。前記2個のプッシュ用固定端子11,12及び4個のスライド用固定端子13,14,15,16は、ベース2の成形時に、その内底面2aにインサート成形により形成されている。
【0018】
また、ベース2における幅方向の他側部(図3(a)の下部側)には、溝状のコイルばね収容凹部17が形成され、該コイルばね収容凹部17の左右両端部に前側位置決め部17aと後側位置決め部17bが形成されている。前記コイルばね4は、その両端部が前側位置決め部17aと後側位置決め部17bにそれぞれ位置決めされてコイルばね収容凹部17に収容される。
【0019】
ベース2の左右外側面2c,2cにおける各端部の上部位置には、カバー10を係止するための係止突起18,…がそれぞれ形成されている。
【0020】
図4は、ベース2の内底面2aに配列されている2個のプッシュ用固定端子11,12並びにスライド用の4個の固定端子13、固定端子14、共通固定端子15及び固定端子16の各形状及び配列状態を示している。2個のプッシュ用固定端子11,12の各端子部11a,12aと4個のスライド用固定端子13〜16の各端子部13a,14a,14b,15a,15b,16aは、ベース2の外側面にそれぞれ導出されている。
【0021】
前記皿形可動接片3は、金属板ばね材をプレス加工して、ドーム状に湾曲した円形に作られており、中央部が1段押しされると表裏方向で弾性的に反転する可動接片として作られている。該皿形可動接片3は、前記ベース2の内底面2aにおける円形凹部2bの部分に位置決め配置されて2個のプッシュ用固定端子11,12と共に打接点方式の1段階式プッシュ機構を構成している。皿形可動接片3は、中央部が押下されずに完全なドーム状の形をしているときには、2個のプッシュ用固定端子11と12の間を離して、電気的にオフの状態にしている。中央部が一段押しされると表裏方向に撓んでクリック変形し、この変形した状態で2個のプッシュ用固定端子11と12に跨がって接触し、2個のプッシュ用固定端子11と12の間を接続して電気的にオンの状態にする。中央の押下が解かれると再びクリック変形して元の状態に戻る。
【0022】
絶縁板5は、皿形可動接片3とスライド接片6との間の電気的絶縁を図るものである。
【0023】
スライド接片6は、金属板ばね材をプレス加工して形成されたものであり、両端には、4個のスライド用固定端子13,14,15,16に摺接接続される接点6a,6bがそれぞれ形成されている。このスライド接片6は、4個のスライド用固定端子13,14,15,16と共にスライド機構を構成している。
【0024】
摘み部7は、図6に示すように、摘み7aの下部に鍔部7bが設けられ、摘み7aの上面に凹部7cが形成されている。該凹部7cに別途作製した適宜の部品等を嵌着することができる。摘み7aは、前記皿形可動接片3の1段押し操作及び前記スライド接片6のスライド操作を行わせるためのもので、鍔部7bの底面には前記皿形可動接片3の中央部に向かって突き出した凸部7dが形成されている。摘み7aを押し操作したとき、該凸部7dにより皿形可動接片3の中央部を確実に1段押しすることができる。
【0025】
スライダ8は合成樹脂製であり、図7に示すように、その上面のほぼ中央部には前記摘み7aを押し操作可能に保持するための開口19が形成されている。スライダ8は、その下面に前記スライド接片6を取付けて摘み7aによるスライド操作時に該スライド接片6を前記4個のスライド用固定端子13,14,15,16上にスライドさせて、該スライド用固定端子13,14,15,16間の接続を切換えるものである。そして、該スライダ8と前記摘み部7とで、操作機構9が構成されている。
【0026】
スライダ8の上面における一側部(図7(a)の上部側)には、3個のディテント係止用凹部20a,20b,20cが左右方向に、それぞれ所要間隔をおいて形成されている。また、スライダ8の他側部(図7(d)の下部側)における下面には、前記コイルばね収容凹部17における前側位置決め部17aと後側位置決め部17b(図3(a)参照)にそれぞれ対応した前側作用部21aと後側作用部21bが下方に向けて形成されている。
【0027】
図5は、ベース2部分のコイルばね収容凹部17に収容されたコイルばね4に対するスライダ8の下面に形成された前側作用部21a及び後側作用部21bの係わり合い関係を示している。このような収容状態にあるコイルばね4の前端に対してはスライダ8側の前側作用部21aが、またコイルばね4の後端に対してはスライダ8側の後側作用部21bがそれぞれ係合可能となるように、スライダ8がベース2内の上部に左右移動可能に取付けられている。図5は、スライダ8が中立位置にあるときのコイルばね4の両端に対するスライダ8側の前側作用部21a及び後側作用部21bの係わり合い関係を示したものである。コイルばね4、コイルばね収容凹部17の両端部に形成された前側位置決め部17a及び後側位置決め部17b、並びにスライダ8の下面に形成された前側作用部21a及び後側作用部21bにより、自己復帰機構22が構成されている。
【0028】
カバー10は、スライダ8の上側からベース2に取付けられるもので、金属板ばね材をプレス加工して形成されており、図8に示すように、本体部10a及び該本体部10aの左右両側から下側に折曲された左右の側板部10b,10bが一体に形成されている。本体部10aには、操作機構9における摘み7aと対応する位置に摘み用開口23が形成され、左右の側板部10b,10bには、前記ベース2に形成されている4個の係止突起18,…にそれぞれ係止するための4個の係止爪10c,…が形成されている。また、本体部10aの一側部(図8 (a)の上部側)には、スライダ8における前記ディテント係止用凹部20a,20b,20cに対応した下方側への突部24aを有するディテントばね24が形成されている。該下方側への突部24aを有するディテントばね24と前記スライダ8におけるディテント係止用凹部20a,20b,20cとでディテント機構25が構成されている。
【0029】
このようなプッシュスイッチ付きスライドスイッチ1は、まず最初に2個のプッシュ用固定端子11,12及び4個のスライド用固定端子13,14,15,16が予め一体に形成されたベース2の上方より、皿形可動接片3及び絶縁板5を所定の態様で配置する。次いで、摘み部7にスライダ8を重ね合わせるとともに、該スライダ8の下面にスライド接片6を取付けた状態で、該摘み部7とスライダ8で構成される操作機構9をベース2上に配置する。これにより、スライド接片6がスライド用固定端子13,14,15,16上に配置されてスライド機構としての1回路3接点のスライドスイッチ26が構成される。また摘み部7における凸部7dが皿形可動接片3の中央部に対向して1段階式プッシュ機構としてのプッシュスイッチ27が構成される。このような状態で、操作機構9が、皿形可動接片3、絶縁板5及びスライド接片6を覆って配置される。
【0030】
次いで、摘み7aと摘み用開口23を対応させて操作機構9の上からカバー10を被せ、カバー10側の係止爪10c,…をベース2側の係止突起18,…に係合させ、該カバー10をベース2に取付ける。これにより、摘み7aが摘み用開口23からカバー10の外側に突出し、またディテントばね24の突部24aがスライダ8のディテント係止用凹部20a,20b,20cに係合可能な状態で組み立てられる。図1は、この組立てられた後のプッシュスイッチ付きスライドスイッチ1を示している。
【0031】
次に、図9〜図12を用いて、上述のように組み立てられたプッシュスイッチ付きスライドスイッチ1の動作を説明する。まず、摘み7aを左右に動かした場合、即ちスライドスイッチ26として動作させた場合を説明する。
【0032】
「摘み7aが中立位置にあるとき」(図9(a)、図10(a))。このとき、スライドスイッチ26におけるスライド接片6は、共通固定端子15と固定端子14とに接触して該両端子14,15間がオンになる。また、ディテント機構25はディテントばね24の突部24aが中立点に対応したディテント係止用凹部20bに落ち込み係合している。
【0033】
「摘みを左側へスライド操作したとき」(図9(b)、図10(b))。このとき、スライドスイッチ26におけるスライド接片6は左側へスライドし、共通固定端子15と固定端子13とが接触するように切換えられて該両端子13,15間がオンになり、共通固定端子15と固定端子14間はオフに転じる。また、スライド接片6の左側へのスライドに連動してディテント機構25及び自己復帰機構22が次のように動作する。即ち、ディテント機構25では、ディテントばね24の突部24aがディテント係止用凹部20aに落ち込み係合して操作者にクリック感が与えられる。自己復帰機構22では、前端が前側位置決め部17aで係止されたコイルばね4の後端がスライダ8側の後側作用部21bで押されることで、該コイルばね4が圧縮されて摘み7aをスライド操作前の中立位置に復帰させるための付勢力が生成される。この付勢力により摘み7aによる左側へのスライド操作が解除されると、該摘み7aはスライダ8とともに前記中立位置に弾力的に復帰する。
【0034】
「摘みを右側へスライド操作したとき」(図9(c)、図10(c))。このとき、スライドスイッチ26におけるスライド接片6は右側へスライドし、共通固定端子15と固定端子16とが接触するように切換えられて該両端子15,16間がオンになり、共通固定端子15と固定端子14間はオフに転じる。また、スライド接片6の右側へのスライドに連動してディテント機構25及び自己復帰機構22が次のように動作する。即ち、ディテント機構25では、ディテントばね24の突部24aがディテント係止用凹部20cに落ち込み係合して操作者にクリック感が与えられる。自己復帰機構22では、後端が後側位置決め部17bで係止されたコイルばね4の前端がスライダ8側の前側作用部21aで押されることで、該コイルばね4が圧縮されて摘み7aをスライド操作前の中立位置に復帰させるための付勢力が生成される。この付勢力により摘み7aによる右側へのスライド操作が解除されると、該摘み7aはスライダ8とともに前記中立位置に弾力的に復帰する。
【0035】
なお、自己復帰機構22については、スライダ8の下面における前側作用部21a又は後側作用部21bのうちのいずれか一方の作用部の形成を省略して、変形例として構成することも可能である。そして前側作用部21aの形成を省略したときは、摘み7aを右側へスライド操作したとき、コイルばね4は圧縮されないので摘み7aをスライド操作前の中立位置に復帰させるための付勢力は生成されない。このため、共通固定端子15と固定端子16間のオン状態への切換えはそのまま保持される。この切換え状態から摘み7aを中立位置に復帰させるときは、該摘み7aの手動操作がなされる。
【0036】
また、後側作用部21bの形成を省略したときは、摘み7aを左側へスライド操作したとき、コイルばね4は圧縮されないので摘み7aをスライド操作前の中立位置に復帰させるための付勢力は生成されない。このため、共通固定端子15と固定端子13間のオン状態への切換えはそのまま保持される。この切換え状態から摘み7aを中立位置に復帰させるときは、前記と同様に該摘み7aの手動操作がなされる。
【0037】
次いで、摘み7aを1段押し操作した場合、即ち1段階式のプッシュスイッチ27として動作させた場合を説明する。
【0038】
「摘み7aを押し操作してないとき」(図11(a)、図12(a))。このとき、2個のプッシュ用固定端子11,12間は、オフ状態のままに保持されている。
【0039】
「摘み7aを1段押し操作したとき」(図11(b)、図12(b))。このとき、摘み部7の下面に形成された凸部7dにより皿形可動接片3の中央部が1段押しされる。この押し操作により、皿形可動接片3が表裏方向に弾性的に反転動作して該皿形可動接片3の裏面が2個のプッシュ用固定端子11,12に接触し、該2個のプッシュ用固定端子11,12がオン状態になる。摘み7aの押し操作を解除すると、皿形可動接片3の弾性復帰力で摘み7aが戻され、これと同時に2個のプッシュ用固定端子11,12間は、元のオフ状態に転じる。
【0040】
上述したように、本実施例に係るプッシュスイッチ付きスライドスイッチにおいては、1段階式のプッシュスイッチ27に皿形可動接片3を用いたことでプッシュストロークが短縮されて操作性を向上させることができるとともに小形・薄形化を図ることができる。
【0041】
スライドスイッチ26は、切換位置ごとにクリック感が発生することで他の機能との明確な操作感の差別化を得ることができる。
【0042】
ディテント機構25及び自己復帰機構22を備えたスライドスイッチ26と1段階式のプッシュスイッチ27とを一体化したことで、複合機能を備えたスイッチを高い精度で容易に製造、組立てを行うことができる。
【0043】
皿形可動接片3及び摘み部7等が縦形に構成される1段階式のプッシュスイッチ27に対し、その両サイドにディテント機構25と自己復帰機構22をそれぞれ配置したことで、スイッチ全体の薄形化を、より良く図ることができる。
【0044】
複数のスライド用固定端子13〜16及び複数のプッシュ用固定端子11,12は、ベース2の成形時にインサート成形により形成したので、組立工数を低減することができて経済的な効果を期待することができる。
【0045】
なお、自己復帰機構22については、前述のように、スライダ8の下面における前側作用部21a又は後側作用部21bのうちのいずれか一方の作用部の形成を省略することで、摘み7aを右側へスライド操作したとき、又は摘み7aを左側へスライド操作したときについて該自己復帰機構22の機能は無効となる変形例が構成されることを述べた。これと同様にして、ディテント機構25についても、カバー10部分への突部24aを有するディテントばね24の形成の有無、及びスライダ8部分へのディテント係止用凹部20a,20b,20cの形成の有無により、摘み7aを右側へスライド操作したとき、又は摘み7aを左側へスライド操作したときについて、ディテント機構25の機能は無効となる変形例が得られる。
【0046】
そこで、本実施例に係るプッシュスイッチ付きスライドスイッチにおいては、スライダ8及びカバー10のみを組み替えることで、自己復帰機構22とディテント機構25についてそれぞれ機能の異なる変形例を構成し、この両変形例を組合わせることでプッシュスイッチ付きスライドスイッチとして、例えば、13通りのバリエーションを有するものを用意することが可能である。
【0047】
図13は、この自己復帰機構22による自己復帰機能とディテント機構25によるクリック感触についての13通りのバリエーションを有するプッシュスイッチ付きスライドスイッチA〜Nをまとめて示している。表中、「○」は「機能有り」を示し、空欄は「機能なし」を示す。
【0048】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図は本発明の実施例に係るプッシュスイッチ付きスライドスイッチを示すものである。
【図1】プッシュスイッチ付きスライドスイッチの外観を示す図であり、(a)は平面図、(b)は図(a)のA側から見た側面図、(c)は図(a)のB側から見た側面図。
【図2】プッシュスイッチ付きスライドスイッチの要部分解斜視図。
【図3】ベースを示す図であり、(a)は平面図、(b)は図(a)のD側から見た側面図、(c)は図(a)のE側から見た側面図、(d)は図(a)のF−F線断面図。
【図4】ベース内の表面部にインサート成形された複数のスライド用固定端子及び複数のプッシュ用固定端子を示す平面図。
【図5】ベースの一側部に内装された自己復帰機構の構成図。
【図6】摘み部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は図(a)のG−G線断面図。
【図7】スライダを示す図であり、(a)は平面図、(b)は図(a)のH−H線断面図、(c)は図(a)のJ−J線断面図、(d)は底面図。
【図8】カバーを示す図であり、(a)は平面図、(b)は図(a)の側面図、(c)は図(a)のK−K線断面図、(d)は図(a)のL−L線断面図。
【図9】スライド機構のスライド操作状態を示す図1(a)のC−C線断面に相当する図であり、(a)は摘みが中立位置にあるときの図、(b)は摘みを一側方へスライド操作した状態の図、(c)は摘みを他側方へスライド操作した状態の図。
【図10】スライド機構の接点切換えを模式的に示す図であり、(a)は摘みが中立位置にあるときの結線図、(b)は摘みを一側方へスライド操作したときの結線図、(c)は摘みを他側方へスライド操作したときの結線図。
【図11】プッシュ機構のプッシュ操作状態を示す図1(a)のC−C線断面に相当する図であり、(a)は非プッシュ操作状態の図、(b)は摘みをプッシュ操作した状態の図。
【図12】プッシュ機構の接点開閉を模式的に示す図であり、(a)は非プッシュ時の結線図、(b)はプッシュ操作時の結線図。
【図13】スライドスイッチ部における自己復帰機構とディテント機構のバリエーション例を示す図。
【符号の説明】
【0050】
1 プッシュスイッチ付きスライドスイッチ
2 ベース
3 皿形可動接片
4 コイルばね
5 絶縁板
6 スライド接片
7 摘み部
7a 摘み
8 スライダ
9 操作機構
10 カバー
11 プッシュ用固定端子
12 プッシュ用固定端子
13 固定端子
14 固定端子
15 共通固定端子
16 固定端子
17 コイルばね収容凹部
18 係止突起
19 開口
20a〜c ディテント係止用凹部
21a〜b 前側作用部と後側作用部
22 自己復帰機構
23 摘み用開口
24 ディテントばね
25 ディテント機構
26 スライドスイッチ
27 プッシュスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスライド用固定端子及び該複数のスライド用固定端子上をスライドして当該複数のスライド用固定端子間の接続を切換えるスライド接片を備えたスライド機構と、複数のプッシュ用固定端子並びに該複数のプッシュ用固定端子に対向して配置され中央部の1段押し操作及び該操作の解除により弾性的に反転して前記複数のプッシュ用固定端子間の接続を開閉する皿形可動接片を備えた1段階式プッシュ機構と、前記皿形可動接片の押し操作及び前記スライド接片のスライド操作を行わせるための摘み並びに該摘みを押し操作可能に保持するとともに前記スライド接片を取付けて前記摘みによるスライド操作時に当該スライド接片を前記複数のスライド用固定端子上にスライドさせるスライダを備えた操作機構と、前記スライダとスイッチ本体側との間に設けられ前記スライド接片による前記複数のスライド用固定端子間の切換位置ごとにクリック感を発生するディテント機構と、前記摘みによる少なくとも一方向へのスライド操作時に該摘みをスライド操作前の中立位置に復帰させるための付勢力を生成し前記摘みによるスライド操作の解除時に前記付勢力により前記摘みを前記スライダとともに前記中立位置に弾力的に復帰させる自己復帰機構とを一体に構成してなることを特徴とするプッシュスイッチ付きスライドスイッチ。
【請求項2】
上記ディテント機構と上記自己復帰機構は、上記1段階式プッシュ機構の両サイドにそれぞれ配置してなることを特徴とする請求項1記載のプッシュスイッチ付きスライドスイッチ。
【請求項3】
上記スライド機構における複数のスライド用固定端子及び上記1段階式プッシュ機構における複数のプッシュ用固定端子は、ベースの成形時に該ベース内の表面部にインサート成形により設けてなることを特徴とする請求項1又は2記載のプッシュスイッチ付きスライドスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−134950(P2009−134950A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309288(P2007−309288)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】