説明

プラグドア装置

【課題】ドアに車両の前後方向への力を作用させるドア駆動機構で開閉動作とプラグ動作とを行え、回動アームを有してドアのプラグ動作を補助するようにドアを車両の幅方向に案内する機構の設置スペースを削減できる、小型のプラグドア装置を提供する。
【解決手段】固定ベース51、スライドベース52、ドア駆動機構53、軸部54、ガイド部55、回動アーム機構75が設けられる。回動アーム機構75において、回転力発生部76は、ドア(108、109)からドア開閉力を取得して回転力を発生させる。また、従動回転部材77は、上記回転力が伝達されることで回転する。そして、ガイド曲面部材78は、従動回転部材77の回転に伴って従動回転部材77を円弧状の曲面に沿って移動させるガイド曲面部78aが設けられる。更に、回動アーム80は、ガイド曲面部材78に対して回動自在に設けられ、回転力発生部76及び従動回転部材77を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗降口に設置され、ドアの開閉動作、及び、車両の幅方向にドアを移動させるプラグ動作を行うプラグドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗降口に設置され、ドアの開閉動作、及び、車両の幅方向にドアを移動させるプラグ動作を行うプラグドア装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示されたプラグドア装置は、乗降口に設置された一対のドアとして設けられた両引きの引き分けドアを開閉するプラグドア装置として構成されている。そして、このプラグドア装置は、車両の本体に固定された固定ベースと、車両の幅方向に移動可能に固定ベースに設けられたスライドベースと、スライドベースに設けられ、連結部を介してドアを車両の前後方向へ移動させるドア駆動装置として設けられたドア駆動機構と、を備えている。
【0003】
また、特許文献1のプラグドア装置には、連結部に設けられた軸部と、固定ベースに回動自在に設けられ、ドアを開く際、軸部と当接しつつ回動して軸部が車両の幅方向の一方に移動するように軸部を案内するとともに、ドアを閉じる際、軸部と当接しつつ回動して軸部が車両の幅方向の他方に移動するように軸部を案内するガイド部とが、更に設けられている。これにより、このプラグドア装置は、ドアに対して車両の前後方向への力を作用させるドア駆動機構で開閉動作とプラグ動作とを行うことができる小型のプラグドア装置として構成されることになる。
【0004】
また、特許文献1のプラグドア装置には、乗降口の上部及び下部の両側において、回動することでドアのプラグ動作を補助するようにドアを車両の幅方向に案内する上側回動アーム及び下側回動アームが設けられている。これらの上側回動アーム及び下側回動アームのそれぞれの先端にはローラが設けられ、各ローラはドアに設けられたレールの溝に沿って移動可能に配置されている。また、上側回動アームとスライドベースとの間には連結棒が設けられ、連結棒は、一端が上側回動アーム側に対して回動自在に、他端側がスライドベースに対して回動自在に設けられている。
【0005】
更に、特許文献1のプラグドア装置では、上下方向に延びるとともに、乗降口に設けられたブラケットに対して回動自在に支持される連結軸が設けられている。この連結軸は、上側回動アーム及び下側回動アームを連結するように構成され、連結軸の上端側に上側回動アームが固定され、連結軸の下端側には下側回動アームが固定されている。上記の構成により、特許文献1のプラグドア装置は、スライドベースの移動とともに連結棒を介して上側回動アームが回動し、更に、上側回動アームの回動とともに連結軸を介して下側回動アームも回動する。これにより、特許文献1のプラグドア装置においては、ドアの剛性が小さい場合であっても、プラグ動作の際に、軸部、ガイド部、及びスライドベースが配置されたドアの上部側の移動に対するドアの下部側の移動の追従性が不十分となってしまう状態の発生が防止されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−95939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のプラグドア装置においては、上下方向に延びて上側回動アーム及び下側回動アームを連結する連結軸が設けられることで、上側回動アームとともに下側回動アームも回動する。このため、前述のように、プラグ動作の際に、プラグ動作を行うための機構が配置されたドアの上部側に対するドアの下部側の移動の追従性が確保される。しかしながら、特許文献1のプラグドア装置は、上側回動アーム及び下側回動アームを連結する連結軸が必要となるため、乗降口の近傍において上下方向に延びる連結軸を設置するためのスペースも必要となってしまう。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、ドアに対して車両の前後方向への力を作用させるドア駆動機構で開閉動作とプラグ動作とを行うことができる小型のプラグドア装置を実現でき、更に、回動アームを有してドアのプラグ動作を補助するようにドアを車両の幅方向に案内する機構の設置スペースを削減することができる、プラグドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1発明に係るプラグドア装置は、車両の乗降口に設置され、ドアの開閉動作、及び、前記車両の幅方向に前記ドアを移動させるプラグ動作を行うプラグドア装置に関する。そして、第1発明に係るプラグドア装置は、前記車両の本体に固定された固定ベースと、前記固定ベースに対して前記車両の幅方向にスライド移動可能に前記固定ベースに設置されたスライドベースと、前記スライドベースに設置され、連結部を介して前記ドアを前記車両の前後方向へ移動させるドア駆動機構と、前記ドア又は前記連結部に設けられた軸部と、前記固定ベースに回転自在に設置され、前記ドアが開く際に、前記軸部と当接しつつ回動して当該軸部が前記車両の幅方向の一方に移動するように当該軸部を案内するとともに、前記ドアが閉じる際に、当該軸部と当接しつつ回動して当該軸部が前記車両の幅方向の他方に移動するように当該軸部を案内するガイド部と、前記ドアの開閉動作に伴って、開閉方向に移動する前記ドアにおける移動方向の力であるドア開閉力に基づいて回動する回動アームを有し、前記ドアのプラグ動作を補助するように前記ドアを前記車両の幅方向に案内する回動アーム機構と、を備え、前記回動アーム機構は、前記ドアから前記ドア開閉力を取得することで回転力を発生させる回転力発生部と、前記回転力発生部で発生した回転力が伝達されることで回転する従動回転部材と、前記従動回転部材又は前記回転力発生部に当接するとともに、前記従動回転部材の回転に伴って当該従動回転部材を円弧状の曲面に沿って移動させるガイド曲面部が設けられたガイド曲面部材と、前記回転力発生部に対して前記ドア側に設けられ、前記ドアの一部に対して前記車両の幅方向において前記回転力発生部が配置される側と反対側で接触し、当該ドアの一部を支持するドア側支持部と、前記ガイド曲面部材に対して回動自在に設けられ、前記回転力発生部及び前記従動回転部材を保持する前記回動アームと、前記回動アームに対して前記ドアが開く方向である開方向側に設けられ、前記ドアが開く際に前記回動アームと当接することで当該回動アームの回動範囲を規制する規制部材と、を有していることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、ガイド部は、軸部に当接して回動することで軸部を車両の幅方向(以下「車幅方向」とも記載する)に案内する。そのため、ガイド部の動作は、ドアの車幅方向への移動に追従するような動作となる。これにより、ドアの車幅方向への移動状況に合わせて、車幅方向においてガイド部が占有するスペースをより小さくすることができる。これにより、ドアに対して車両の前後方向への力を作用させるドア駆動機構で開閉動作とプラグ動作とを行うことができる小型のプラグドア装置を実現できる。
【0011】
更に、この発明によると、ドアの開閉動作に伴ってドア開閉力に基づいて回動する回動アームを有する回動アーム機構が設けられている。そして、回動アーム機構では、ドアから取得されたドア開閉力によって発生した回転力が伝達された従動回転部材が回転し、この従動回転部材がガイド曲面部に沿って案内されることで、従動回転部材を保持する回動アームが回動する。このため、軸部、ガイド部、及びスライドベースがドアの上部側に設置され、回動アーム機構がドアの下部側に設置され、ドアの剛性が小さい場合であっても、プラグ動作の際に、ドアの上部側の移動に対するドアの下部側の移動の追従性が不十分となってしまう状態の発生が防止される。即ち、特許文献1に開示された連結軸が設けられていなくても、プラグ動作を行うための機構が配置されたドアの上部側の移動に対するドアの下部側の移動の追従性が確保されることになる。よって、回動アームを有してドアのプラグ動作を補助するようにドアを車両の幅方向に案内する機構の設置スペースを削減することができる。尚、本発明の回動アーム機構によると、ドア開閉力を取得して回転力を発生させる回転力発生部側に加え、ドアの一部を介して車幅方向における反対側に配置されたドア側支持部によっても、ドアが支持される。このため、ドアの一部が車幅方向の両側から挟み込まれるように支持されることになり、回転力発生部がドアに対して追従して作動する状態が常時確保されることになる。更に、この回動アーム機構では、回動アームのドア開方向側の回動範囲が規制部材によって規制されるため、ドアが開く際に回動アームがプラグ動作後に過度に回動してドアの移動を妨げてしまうことが防止されることになる。
【0012】
従って、本発明によると、ドアに対して車両の前後方向への力を作用させるドア駆動機構で開閉動作とプラグ動作とを行うことができる小型のプラグドア装置を実現でき、更に、回動アームを有してドアのプラグ動作を補助するようにドアを車両の幅方向に案内する機構の設置スペースを削減することができる、プラグドア装置を提供することができる。
【0013】
第2発明に係るプラグドア装置は、第1発明のプラグドア装置において、前記回転力発生部は、前記ドアから前記ドア開閉力を駆動力として取得する駆動力取得部と、前記駆動力取得部で取得された駆動力によって回転して回転力を発生する駆動回転部材と、を有していることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、回転力発生部において、ドア開閉力を駆動力として取得する機構と、取得された駆動力から回転力を発生させる機構とが、分離された機構として構成される。このため、ドアに対して接触しながら摩擦力で回転するように構成されるような回転力発生部に比して、ドア開閉力を効率よく取得することができるとともに効率よく回転力に変換することができる。
【0015】
第3発明に係るプラグドア装置は、第2発明のプラグドア装置において、前記回動アーム機構は、前記規制部材に当接した位置で前記回動アームの位置を保持するように当該回動アームを付勢可能なアーム付勢バネを更に有し、前記駆動力取得部は、前記ドアに固定されたドア側固定ラックと、前記駆動回転部材の外周に設けられて前記ドア側固定ラックに噛み合う外歯と、を有し、前記ドア側固定ラックは、前記ドアにおける前記車両の前後方向において部分的に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、ドア開閉力を効率よく取得することができる駆動力取得部について、ドアに固定されたドア側固定ラックと駆動回転部材の外周の外歯とによる簡素な構成で実現することができる。尚、ドア側固定ラックが車両の前後方向で部分的に設けられるため、プラグ動作後に駆動回転部材の外周の外歯がドア側固定ラックに噛み合って過度に作動してドアの移動を妨げてしまうことが防止されることになる。更に、アーム付勢バネが設けられているため、ドアが開く際に、車両の前後方向に部分的に設けられたドア側固定ラックと駆動回転部材の外周の外歯との噛み合いが外れた後においても、規制部材に当接した位置で回動アームの位置が保持されることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、ドアに対して車両の前後方向への力を作用させるドア駆動機構で開閉動作とプラグ動作とを行うことができる小型のプラグドア装置を実現でき、更に、回動アームを有してドアのプラグ動作を補助するようにドアを車両の幅方向に案内する機構の設置スペースを削減することができる、プラグドア装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプラグドア装置の全体を示す模式図である。
【図2】図1のJ−J線矢視位置から見た断面を示す模式図である。
【図3】図1に示すプラグドア装置の正面図としての模式図である。
【図4】図3に示すプラグドア装置の平面図としての模式図である。
【図5】図3の一部を拡大して示す図である。
【図6】図2におけるドアの上部を拡大して示す模式図である。
【図7】図3に示すプラグドア装置におけるプラグ機構の平面図である。
【図8】図7に示すプラグ機構のD−D線矢視位置から見た一部断面を含む図である。
【図9】図7に示すプラグ機構の側面図であってE線矢視方向から見た図である。
【図10】図7に示すプラグ機構の背面図であってF線矢視方向から見た一部断面を含む図である。
【図11】図7に示すプラグ機構の作動を説明するための平面図である。
【図12】図2におけるドアの下部を拡大して示す模式図である。
【図13】図2に示すプラグドア装置における回動アーム機構の平面図である。
【図14】図13に示す回動アーム機構のM−M線矢視位置から見た一部断面を含む正面図である。
【図15】図13に示す回動アーム機構の側面図である。
【図16】図3に示すプラグドア装置におけるロック機構の一部を示す正面図である。
【図17】変形例に係る回動アーム機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態ついて図面を参照しつつ説明する。本発明は、車両の乗降口に設置され、ドアの開閉動作、及び、車両の幅方向にドアを移動させるプラグ動作を行うプラグドア装置として適用できるものである。尚、本実施形態では、2枚で構成される両引きの引き分けドアに対して適用されるプラグドア装置を例にとって説明するが、この例に限らず、1枚で構成される片引きのドアに対して本発明が適用されてもよい。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係るプラグドア装置3の全体を示す模式図である。図1に示すプラグドア装置3は、2枚で構成される両引きの引き分けドアに対して適用される。尚、図1は、車両内側から見た模式図であり、車両の乗降口106に対してドア(108、109)とともに設置された状態を示す図である。図2は、図1のJ−J線矢視位置から見た断面を示す模式図である。図3は、プラグドア装置3の正面図としての模式図であって、図1におけるドア108の上部を拡大して示す図である。尚、図1及び図3では、乗降口106の上部において車両にプラグドア装置3が収納される際の車両内側に配置されるカバーの図を省略して示している。図4は、図3に示すプラグドア装置3の平面図としての模式図であり、ドア(108、109)とともに示している。図5は、図3の一部を拡大して示す図である。図6は、プラグドア装置3の側面図としての模式図であって、図2におけるドア(108、109)の上部を拡大して示す図である。
【0021】
〔全体構成について〕
図1に示すように、車両側壁105には、乗降口106が設けられている。尚、図1は、ドア(108、109)が閉じられた状態を図示しており、乗降口106を破線で示している。乗降口106の上部には、車両の前後方向に延びるようにフレーム107が固定されている。ここで、車両の前後方向とは、車両の進行方向と平行な方向であり、図1において両端矢印Bで示す方向である。尚、車両側壁105及びフレーム107は、車両の本体の一部を構成している。
【0022】
また、乗降口106を覆うように2枚のドア(108、109)が設置されている。2枚のドア(108、109)は、両引きの引き分けドアであって、プラグドア装置3により開閉される。そして、ドア(108、109)は、その下方側において、車両の幅方向の外側に向かって緩やかに湾曲して張り出すように形成されている(図2を参照)。ここで、車両の幅方向(以下、「車幅方向」とも記載する)とは、車両の前後方向及び上下方向に対して垂直な方向であり、図2において両端矢印Cで示す方向である。尚、ドア(108、109)は、閉じられた位置である閉鎖位置(図1及び図2にて示す位置)において、乗降口106を略密閉するように構成されている。
【0023】
図1乃至図6に示すプラグドア装置3は、車両の乗降口106に設置され、ドア(108、109)の開閉動作、及び、車幅方向にドア(108、109)を移動させるプラグ動作を行う装置として設けられている。そして、このプラグドア装置3は、固定ベース51、スライドベース52、2枚の引き分けドア(108、109)を車両の前後方向へ移動させるように駆動するドア駆動機構53、ドア駆動機構53により車両の前後方向に駆動される軸部54(54a、54b)、軸部54(54a、54b)を案内するガイド部55(55a、55b)、倍速レール56(56a、56b)、ロック機構57、回動アーム機構75(75a、75b)、等を備えて構成されている。
【0024】
固定ベース51は、車両の本体を構成するフレーム107の一部であるブラケット107aに固定されている。これにより、固定ベース51は、車両の本体に対して相対移動しないように固定されている。また、固定ベース51には、水平に設置される平坦な板状部51aと、板状部51aにおける車両の前後方向における両側に設けられた一対のスライド支持部(51b、51b)とが備えられている。スライド支持部51bは、ブロック状で車幅方向に延びるように設置された部材として設けられている。そして、各スライド支持部51bには、スライドベース52を車幅方向にスライド移動可能に支持するためのレール部材51cが固定されている。
【0025】
図3及び図6に示すスライドベース52は、固定ベース51の下方において、固定ベース51に対して車両の幅方向にスライド移動可能にこの固定ベース51に対して設置されている。そして、スライドベース52には、水平方向で平坦に延びるように設置される本体部52aと、ブラケット部52bと、車輪部52cとが設けられている。
【0026】
ブラケット部52bは、本体部52aにおける車幅方向の外側(ドア108、109側)の端部にて本体部52aに対して下方に屈曲した後さらに水平方向に車幅方向外側に向かって屈曲するように延びる部分として設けられている。そして、ブラケット部52aは、複数設けられ、本体部52aに対して車両の前後方向における複数個所から延びるように設けられている。各ブラケット部52bには、後述の倍速レール56(56a、56b)が設置されている。また、車輪部52cは、本体部52aにおける車両の前後方向の両側に設置されており、車幅方向に延びたレール部材51c上を転動する車輪を備えて構成されている。これにより、スライドベース52が固定ベース51に対して車幅方向にスライド移動可能に構成されている。
【0027】
〔ドア駆動機構、倍速レールについて〕
図3乃至図6に示すドア駆動機構53は、スライドベース52の本体部52aに設置され、連結部59を介して2枚のドア(108、109)を車両の前後方向へ移動させる機構として設けられている。尚、本実施形態では、ドア駆動機構53は、本体部52aの下方側に設置されている。そして、このドア駆動機構53は、ダイレクトドライブ方式のブラシレス電動モータ21を含む駆動部53a、ラックアンドピニオン機構53b、等を備えて構成されている。
【0028】
ラックアンドピニオン機構53bは、駆動部53aからの駆動力が入力されることで連結部59を移動させる機構として設けられている。そして、このラックアンドピニオン機構53bは、対面する2つの駆動ラック60(60a、60b)と、駆動ピニオン61とを備えて構成されている。対面する2つの駆動ラック60(60a、60b)は、車幅方向の外側に配置される外側駆動ラック60aと、車幅方向の内側に配置される内側駆動ラック60bとで構成されている。外側駆動ラック60a及び内側駆動ラック60bは、車両の前後方向において互いに平行に延びるように配置されている。
【0029】
駆動ピニオン61は、2つの駆動ラック(60a、60b)の間に配置され、各駆動ラック(60a、60b)における互いに対向する側に設けられた歯に対して噛み合うように配置されている。そして、この駆動ピニオン61は、回転軸心が鉛直方向を向くように配置されている。また、この駆動ピニオン61は、駆動部53aにおける遊星歯車機構20のリングギア20dに対して同心状に固定されている。このため、リングギア20dの回転とともに同じ回転軸心を中心として回転するように構成されている。リングギア20dとともに駆動ピニオン61が回転することで、駆動ピニオン61に噛み合う2つの駆動ラック(60a、60b)が、車両の前後方向において互いに逆方向に移動する。
【0030】
また、駆動部53aとラックアンドピニオン機構53bにおける駆動ピニオン61とは、スライドベース52における車両の前後方向の中央部分に配置されている。そして、ラックアンドピニオン機構53bにおける駆動ラック60(60a、60b)には、連結部59が取り付けられている。
【0031】
駆動部53aは、駆動源として設けられて本実施形態の電動モータを構成するブラスレス電動モータ21に加え、更に、ブラシレス電動モータ21からの駆動力が入力される遊星歯車機構20を備えて構成されている。遊星歯車機構20は、第1実施形態と同様に、サンギア20a、複数のプラネタリギア20b、キャリア20c、リングギア20d、等を備えて構成されている。
【0032】
サンギア20aには、ブラシレス電動モータ21からの駆動力が入力される。複数のプラネタリギア20bは、サンギア20aの周囲に配置され、サンギア20aに噛み合うとともに自転しながらこのサンギア20aの周囲を公転するように設けられている。キャリア20cは、複数のプラネタリギア20bのそれぞれを自転自在に支持するとともに、これらのプラネタリギア20bを公転自在に支持する枠部材として設けられている。リングギア20dは、各プラネタリギア20bに噛み合う内歯が内周に形成されたリング状のギアとして設けられている。リングギア20dには、前述のように、ラックアンドピニオン機構53bにおける駆動ピニオン61が固定されている。
【0033】
また、キャリア20cにおける外周部の一部は、ロック出力部22に連結されている。ロック出力部22は、キャリア20cがサンギア20aの軸心を中心として揺動することでキャリア20cから出力される駆動力をロック機構57に対して入力する機構として設けられている。このロック出力部22は、キャリア20cが揺動することで出力された駆動力について、その駆動力の作用方向を変換し、車両の前後方向と平行な直線方向の駆動力として出力するように構成されている。また、ロック出力部22における駆動力を出力する先端部分には、出力ローラ22aが設けられている。また、ロック出力部22には、出力ローラ22aを回転自在に支持する出力ローラ軸22bが設けられており、この出力ローラ軸22bを介してキャリア20cの駆動力が、ロック機構57の伝達部材40に入力されることになる。
【0034】
尚、本実施形態では、ダイレクトドライブ方式のブラシレス電動モータ21からの駆動力が、サンギア20aに入力され、リングギア20dから出力される駆動力が、ラックアンドピニオン機構53bに入力され、キャリア20cから出力される駆動力が、ロック機構57に入力される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ブラシレス電動モータ21からの駆動力が、サンギア20a、キャリア20c、及びリングギア20dの何れか1つに入力され、サンギア20a、キャリア20c、及びリングギア20dの何れか1つから出力される駆動力が、ラックアンドピニオン機構53bに入力され、サンギア20a、キャリア20c、及びリングギア20dのうちの残りの1つから出力される駆動力が、ロック機構57に入力されるように構成されていればよい。
【0035】
駆動ラック60(60a、60b)に取り付けられてドア駆動機構53からの駆動力を伝達する連結部59は、外側駆動ラック60aに取り付けられる連結部59aと、内側駆動ラック60bに取り付けられる連結部59bとで構成されている。連結部59a及び連結部59bは、いずれも、屈曲形成された板状の部材によって構成されている。そして、連結部59aは、外側駆動ラック60aに対して、車両の前後方向におけるドア108側の端部にて、固定されている。連結部59bは、内側駆動ラック60bに対して、車両の前後方向におけるドア109側の端部にて、固定されている。
【0036】
連結部59aは、外側駆動ラック60aに固定された部分から水平にドア108側に向かって延びた後、屈曲して上方に延びるように構成されている。そして、連結部59aは、上方に延びた部分の端部において、倍速レール56のうち車両の前後方向におけるドア108側に設置された倍速レール56aにおける支持レール16dに固定されている。連結部59bは、内側駆動ラック60bに固定された部分から水平にドア108側に向かって延びた後、屈曲して上方に延びるように構成されている。そして、連結部59bは、上方に延びた部分の端部において、倍速レール56のうち車両の前後方向におけるドア109側に設置された倍速レール56bにおける支持レール16dに固定されている。
【0037】
また、連結部59aには、上方に延びた部分の端部から部分的に屈曲して水平に突出して延びる突出端部が設けられている。この突出端部には、上方に向かって延びるように片持ち状に突出する軸部54aが設けられている。尚、軸部54aには、軸部54aにおける突出端部に固定される軸本体に対して回転自在に取り付けられた軸部ローラ54cが設けられている。
【0038】
また、連結部59bには、上方に延びた部分の端部から部分的に屈曲して水平に突出して延びる突出端部が設けられている。この突出端部には、上方に向かって延びるように片持ち状に突出する軸部54bが設けられている。尚、軸部54bには、軸部54bにおける突出端部に固定される軸本体に対して回転自在に取り付けられた軸部ローラ54cが設けられている。
【0039】
図3乃至図6に示す倍速レール56(56a、56b)は、車両の前後方向におけるドア108側に設置される倍速レール56aと、車両の前後方向におけるドア109側に設置される倍速レール56bとで構成されている。倍速レール56a及び倍速レール56bは、車両の前後方向に延びるように設けられている。そして、倍速レール(56a、56b)は、いずれも、対面する2つのラック(16a、16b)と、ピニオン16cと、支持レール16dとを備えて構成されている。各倍速レール(56a、56b)における対面する2つのラック(16a、16b)は、上側に配置される上側ラック16aと、下側に配置される下側ラック16bとで構成されている。上側ラック16a及び下側ラック16bは、車両の前後方向において互いに平行に延びるように配置されている。
【0040】
各倍速レール(56a、56b)におけるピニオン16cは、2つのラック(16a、16b)の間に配置され、各ラック(16a、16b)に設けられた歯に対して噛み合うように配置されている。そして、各倍速レール(56a、56b)において、ピニオン16cは、支持レール16dに対して回転自在に支持されている。
【0041】
倍速レール56aにおけるピニオン16cは、連結部59a側に連結されている。即ち、倍速レール56aのピニオン16cは、倍速レール56aの支持レール16dを介して連結部59aに連結されている。このため、駆動ラック60aに固定された連結部59aと、倍速レール56aにおける支持レール16d及びピニオン16cとは、相対位置が変化しないように互いに連結されている。
【0042】
一方、倍速レール56bにおけるピニオン16cは、連結部59b側に連結されている。即ち、倍速レール56bのピニオン16cは、倍速レール56bの支持レール16dを介して連結部59bに連結されている。このため、駆動ラック60bに固定された連結部59bと、倍速レール56bにおける支持レール16d及びピニオン16cとは、相対位置が変化しないように互いに連結されている。
【0043】
また、各倍速レール(56a、56b)において、ピニオン16cを回転自在に支持する支持レール16dは、上側ラック16a及び下側ラック16bを車幅方向の両側から挟んだ状態で支持するように構成されている。尚、支持レール16cは、上側ラック16a及び下側ラック16bのそれぞれを車両の前後方向にスライド移動自在に支持している。
【0044】
また、倍速レール56aにおいては、2つのラック(16a、16b)のうちの一方の下側ラック16bがスライドベース52のブラケット部52bに固定されて連結され、他方の上側ラック16aがドア108側に連結されている。尚、上側ラック16aは、ドア108に対して、ドア支持部材108aを介して連結されている。また、ドア支持部材108aは、ドア108を懸架した状態で支持している。
【0045】
また、倍速レール56bにおいては、2つのラック(16a、16b)のうちの一方の下側ラック16bがスライドベース52のブラケット部52bに固定されて連結され、他方の上側ラック16aがドア109側に連結されている。尚、上側ラック16aは、ドア109に対して、ドア支持部材108aと同様に構成されるドア支持部材を介して連結されている。また、このドア支持部材は、ドア109を懸架した状態で支持している。
【0046】
ドア駆動機構53の駆動ピニオン61が駆動されると、駆動ラック60aに固定された連結部59aとともに倍速レール56aの支持レール16d及びピニオン16cが車両の前後方向において移動する。これにより、スライドベース52に固定された下側ラック16bに対して、ピニオン16cが噛み合いながら車両の前後方向の一方に移動する。そして、この移動するピニオン16cに対して、ピニオン16cに噛み合う上側レール16aが車両の前後方向における同方向に移動する。このため、上側ラック16aは、下側ラック16bに対し、ピニオン16cの移動速度に対して倍の速度で移動することになる。そして、上側ラック16aの下側ラック16bに対する移動量は、ピニオン16cの下側ラック16bに対する移動量に対して、同じ方向で倍の移動量となる。また、上側ラック16aにドア支持部材108aを介して連結されたドア108も、上側ラック16aと同じ速度で移動することになる。そして、下側ラック16bが連結されたスライドベース52に対して、ドア108が車両の前後方向における一方へ移動することになる。
【0047】
また、駆動ピニオン61が駆動されると、上記の倍速レール56aの作動タイミングと同時タイミングで、駆動ラック60bに固定された連結部59bとともに倍速レール56bの支持レール16d及びピニオン16cも車両の前後方向において移動する。このとき、駆動ラック60bが駆動ラック60aと逆方向に移動し、倍速レール56bのピニオン16cが倍速レール56aのピニオン16cと逆方向に移動する。そして、倍速レール56bにおいても、上側ラック16aが、下側ラック16bに対して、ピニオン16cの移動速度の倍の速度でピニオン16cの移動距離の倍の距離を移動する。その結果、倍速レール56bの下側ラック16bが連結されるスライドベース52に対して、上側ラック16aにドア支持部材を介して連結されたドア109が車両の前後方向における他方へ移動することになる。即ち、ドア109が、車両の前後方向におけるドア108の移動方向と逆方向へ移動することになる。このため、プラグドア装置3においては、両引きの引き分けドア(108、109)が対称的に開閉駆動されるように構成されている。
【0048】
〔プラグ機構について〕
プラグドア装置3において、ドア(108、109)を車幅方向に移動させるプラグ動作を行うためのプラグ機構は、軸部54(54a、54b)、ガイド部55(55a、55b)、及びローラガイド(23、23)を備えて構成されている。尚、ドア108側のプラグ動作を行うプラグ機構が、軸部54a、ガイド部55a及びローラガイド23で構成され、ドア109側のプラグ動作を行うプラグ機構が、軸部54b、ガイド部55b及びローラガイド23で構成されている。
【0049】
ドア108側のプラグ動作を行うプラグ機構と、ドア109側のプラグ動作を行うプラグ機構とは、同様に構成されている。そして、ドア108側のプラグ機構のガイド部55aは、連結部59aの突出端部に設けられた軸部54aを案内するように設けられている。また、ドア109側のプラグ機構のガイド部55bは、連結部59bの突出端部に設けられた軸部54bを案内するように設けられている。
【0050】
ドア108側のプラグ機構及びドア109側のプラグ機構は、同様に構成されるため、以下の説明では、ドア108側のプラグ機構の構成について説明し、ドア109側のプラグ機構の構成の説明を省略する。尚、ドア108側のプラグ機構と、ドア109側のプラグ機構とは、車両の前後方向に対する各構成要素の配置構成が、逆となるように設定されている。即ち、ドア109側のプラグ機構は、車両の前後方向及び車幅方向に対する各構成要素の配置構成が、ドア108側のプラグ機構に対して、乗降口106における車両の前後方向の中央位置を通って水平に車幅方向に延びる仮想の線を中心とした線対称の配置状態となるように設定されている。
【0051】
図7は、ドア108側のプラグ機構を示す平面図である。図8は、ドア108側のプラグ機構の図7のD−D線矢視位置から見た一部断面を含む図である。図9は、ドア108側のプラグ機構の側面図であって図7のE線矢視方向から見た図である。図10は、ドア108側のプラグ機構の背面図であって図7のF線矢視方向から見た一部断面を含む図である。図11は、ドア108側のプラグ機構の作動を説明するための平面図である。尚、図8乃至図10は、図7及び図11に対して拡大して示している。また、図7乃至図10は、ドア108が閉鎖位置のときのプラグ機構の状態を示している。一方、図11は、ドア108が閉鎖位置から開く際において、プラグ動作が完了した直後の状態を示している。
【0052】
図3、図5乃至図11に示すプラグ機構(軸部54a、ガイド部55a、ローラガイド23)は、固定ベース51とスライドベース52との間に配置されている。軸部54aは、前述のように、連結部59aの突出端部に設けられている。ローラガイド23は、固定ベース51の板状部51aの下面側に固定されている。ガイド部55aは、第1リンク24及び第2リンク25を備えて構成され、固定ベース51の下側に設置されている。そして、このガイド部55aは、第1リンク24において、固定ベース51に回転自在に設置されている。
【0053】
第1リンク24は、略長方形形状の板状部材であって、一端側を固定ベース51に対して回動自在に設けられている。具体的には、第1リンク24は、 略鉛直方向を向く第1回動軸26の周りに回動自在に設けられる。また、第1リンク24の他端側の周縁には、軸部54aの軸部ローラ54cを収容可能な第1切り欠き部24aが形成されている。
【0054】
第2リンク25は、板状部材であって、第1リンク24に回動自在に設けられている。具体的には、第2リンク25は、第1リンク24の第1切り欠き部24aの近傍に設けられた略鉛直方向を向く第2回動軸27の周りに回動自在に設けられる。また、第2リンク25の周縁には、軸部54aの軸部ローラ54cを収容可能な第2切り欠き部25aが形成されている。また、第2リンク25には、鉛直軸周りに回転自在に取り付けられたガイド部ローラ28が設けられている。ガイド部ローラ28は、第2リンク25 から上方に突出する回転軸29に対して回転自在に取り付けられており、固定ベース11に固定されたローラガイド23と略同じ高さに配置されている。
【0055】
ドア108が閉鎖位置である場合は、図7に示すように、上方から見た状態において、第1リンク24の第1切り欠き部24aと第2リンク25の第2切り欠き部25aとで軸部54aの周囲が囲まれる。具体的には、第1リンク24は、第1切り欠き部24aの開口側を車幅方向外側を向けるように保持され、また、第2リンク25は、第2切り欠き部25aの開口側を、第1回動軸26に向かう方向とは逆方向に向けるように保持される。これにより、第1リンク24における第1切り欠き部24a内から外側に向かって軸部54aが移動することが、第2リンク25によって拘束される。
【0056】
また、ドア108が閉鎖位置にある状態においては、第2リンク25のガイド部ローラ28は、第2切り欠き部25aよりも車幅方向外側に位置している。そして、第2リンク25の第2回動軸27は、第2切り欠き部25aよりも車幅方向内側に位置している。
【0057】
また、第1リンク24と第2リンク25との間には、付勢手段としてのつるまきバネ30が設けられている。つるまきバネ30の一端は、第2リンク25における第2回動軸27とガイド部ローラ28との略中間部に設けられており、他端は、第1リンク24における第1回動軸26に近い位置に設けられている。これにより、第2リンク25は、軸部54aの拘束を解除する方向(上方から見て第2回動軸27を中心とした時計周りの方向)に回動するようにつるまきバネ30に付勢される。つまり、第2リンク25は、つるまきバネ30によって、ガイド部ローラ28がローラガイド23に近づく方向に付勢される。
【0058】
ローラガイド23は、板状の部材として設けられている。そして、ローラガイド23には、その側面において、ガイド部ローラ28を案内する斜面23aと、この斜面23aに連続してガイド部ローラ28を案内する曲面23bとが設けられている。
【0059】
斜面23aは、ローラガイド23の側面の一部として設けられ、ドア108が開く方向(ドア108の開方向。図7において矢印G1で示す。)に向かうほど、車幅方向外側に位置するように形成される平坦な面として構成されている。
【0060】
曲面23bは、ローラガイド23の側面の一部として設けられ、斜面23aから連続し、略半円弧状に出っ張るように曲がった後に更に略半円弧状に窪むように曲がりつつ車幅方向内側に向かって延びる曲面として構成されている。尚、曲面23bは、車幅方向における外側に近い位置においては、開方向に凸であり、車幅方向における内側に近い位置においては、ドア108が閉じる方向(ドア108の閉方向。ドア108の開方向と逆方向であり、図7において矢印G2で示す。)に向かって凹んでいる。
【0061】
〔回動アーム機構について〕
図12は、図2におけるドア108の下部を拡大して示す模式図である。図1、図2及び図12に示す回動アーム機構75(75a、75b)は、ドア(108、109)の下部側に設置され、プラグ機構によるドア(108、109)のプラグ動作を補助するようにドア(108、109)を車幅方向に案内する機構として設けられている。そして、回動アーム機構75(75a、75b)は、ドア(108、109)の開閉動作に伴って、開閉方向に移動するドア(108、109)における移動方向の力であるドア開閉力に基づいて回動する回動アーム80を備えて構成されている。
【0062】
回動アーム機構75aは、ドア108のプラグ動作を補助するようにドア108を車幅方向に案内する機構として設けられている。回動アーム機構75bは、ドア109のプラグ動作を補助するようにドア109を車幅方向に案内する機構として設けられている。そして、回動アーム機構(75a、75b)は、乗降口106の下部側において、車両の前後方向における両側にそれぞれ配置されている。尚、図2及び図12においては、図1のJ−J線矢視位置から見た状態では表れない回動アーム機構75aについて、車両の前後方向で対応する位置にて、二点差線で示している。
【0063】
ドア108側の回動アーム機構75aと、ドア109側の回動アーム機構75bとは、同様に構成されている。そこで、以下の説明では、回動アーム機構75aの構成について説明し、回動アーム機構75bの構成の説明を省略する。尚、ドア108側の回動アーム機構75aと、ドア109側の回動アーム機構75bとは、車両の前後方向に対する各構成要素の配置構成が、逆となるように設定されている。即ち、回動アーム機構75bは、車両の前後方向及び車幅方向に対する各構成要素の配置構成が、回動アーム機構75aに対して、乗降口106における車両の前後方向の中央位置を通って水平に車幅方向に延びる仮想の線を中心とした線対称の配置状態となるように設定されている。
【0064】
図13は、回動アーム機構75aを示す平面図である。図14は、図13に示す回動アーム機構75aのM−M線矢視位置から見た一部断面を含む正面図である。図15は、回動アーム機構75aの側面図である。図12乃至図15に示すように、回動アーム機構75aは、回転力発生部76、従動回転部材77、ガイド曲面部材78、ドア側支持部79、回動アーム80、規制部材81、アーム付勢バネ82、中間歯車83、補助ローラ84、等を備えて構成されている。
【0065】
回転力発生部76は、ドア108から前述のドア開閉力(開閉方向に移動するドア108における移動方向の力)を取得することで回転力を発生させる機構として設けられている。そして、この回転力発生部76は、駆動力取得部76aと駆動回転部材76bとを備えて構成されている。
【0066】
駆動力取得部76aは、ドア108からドア開閉力を駆動力として取得する機構として設けられている。一方、駆動回転部材76bは、駆動力取得部76aで取得された駆動力によって回転力を発生する部材として設けられている。そして、本実施形態では、駆動力取得部76aは、ドア108に対してその車幅方向の内側に固定されたドア側固定ラック85と、駆動回転部材76bの外周に設けられてドア側固定ラック85の歯に噛み合う外歯86とを備えて構成されている。尚、外歯86が外周に設けられた駆動回転部材76bは、平歯車として構成されている。また、ドア側固定ラック85は、ドア108における車両の前後方向において全長ではなく部分的に設けられている。このドア側固定ラック85の車両の前後方向における長さは、ドア108が閉鎖位置から開方向に移動する際に、ドア108のプラグ動作中は外歯86に対して噛み合い、プラグ動作終了時点で外歯86に対する噛み合いが外れるように、設定されている。
【0067】
従動回転部材77は、回転力発生部76の駆動回転部材76bで発生した回転力が中間歯車83を介して伝達されることで回転する平歯車として設けられている。尚、中間歯車83は、平歯車として設けられており、駆動回転部材76b及び従動回転部材77に対して噛み合うように配置されている。このため、ドア108の開閉方向の移動とともにドア側固定ラック85が移動し、ドア側固定ラック85の移動に伴ってこれに噛み合う駆動回転部材76bが回転し、更に、駆動回転部材76bに噛み合う中間歯車83が回転する。そして、中間歯車83の回転に伴ってこれに噛み合う従動回転部材77が回転することになる。
【0068】
ガイド曲面部材78は、従動回転部材77に当接するとともに、従動回転部材77の回転に伴って従動回転部材77を円弧状の曲面に沿って移動させるガイド曲面部78aが設けられた部材として構成されている。そして、このガイド曲面部材78は、車両の本体である車両側壁105側に取り付けられた車両側ブラケット87に対してボルトにて固定されている。また、ガイド曲面部材78には、車両側ブラケット87に固定される端部側と反対側において、ガイド曲面部78aが形成された部分が設けられている。尚、ガイド曲面部78aが形成された部分は、円弧状に延びる縁部とその両側で半径方向に延びる一対の縁部とを有する扇形状の部分として設けられている。そして、ガイド曲面部78aには、円弧状の曲面に沿って配置されるとともに従動回転部材77の外周の歯に対して噛み合う外歯が形成されている。これにより、従動回転部材77がガイド曲面部78aの外歯に対して噛み合いながら回転することで、この従動回転部材77が、図13にて一点鎖線の両端矢印Nで示すように、円弧状の曲面に沿って移動することになる。
【0069】
回動アーム80は、ドア108の車幅方向の内側においてドア側固定ラック85の近傍に配置され、ガイド曲面部材78に対して回転軸88を介して回動自在に設けられている。この回動アーム80は、水平な方向において互いに平行に延びる一対の平板状の部分と、この一対の平板状の部分を固定して連結する側壁部分とを備えて構成されている。そして、回動アーム80は、上下に配置される一対の平板状の部分において、回転力発生部76における駆動回転部材76bを回転自在に保持するとともに、中間歯車83及び従動回転部材77も回転自在に保持するように構成されている。
【0070】
規制部材81は、回動アーム80に対してドア108が開く方向である開方向側に設けられ、ドア108が開く際に回動アーム80と当接することで回動アーム80の回動範囲を規制するストッパとして設けられている。そして、この規制部材81は、ストッパブラケット81aとストッパゴム81bとを備えて構成されている。
【0071】
ストッパブラケット81aは、ガイド曲面部材78に対して片持ち状に固定された部材として設けられ、車幅方向の外側に向かってガイド曲面部材78から突出するように設置されている。ストッパゴム81bは、ストッパブラケット81aに対して固定されたゴム部材として設けられている。このストッパゴム81bは、ストッパブラケット81aの突出方向における中途部分においてストッパブラケット81aに固定されており、回動アーム80に当接する部分として設けられている。尚、図13では、駆動回転部材76b、中間歯車83及び従動回転部材77を回転自在に保持した回動アーム80が、ドア108の開方向への移動に伴って回動し、ストッパゴム81bに当接して回動範囲が規制された状態が、二点鎖線で図示されている。
【0072】
アーム付勢バネ82は、回動アーム80が規制部材81に当接した位置(図13の二点鎖線で示す位置)で、その回動アーム80の位置を保持するように回動アーム80を付勢可能なバネ部材として設けられている。このアーム付勢バネ82は、コイルバネとして設けられている。
【0073】
また、アーム付勢バネ82の一端側の端部は、中間歯車83の回転軸と同一軸心上において鉛直方向に延びるように設置されたピン89に対して、回転自在に取り付けられている。一方、アーム付勢バネ82の他端側の端部は、車両側ブラケット87から突出して設けられたバネ支持用ブラケット87aにおいて鉛直方向に延びるように設置されたピン90に対して回転自在に取り付けられている。これにより、アーム付勢バネ82は、他端側の端部であるピン90側に対して、一端側の端部側であるピン89側を引っ張り方向に付勢可能に設けられている。
【0074】
また、アーム付勢バネ82の他端側の端部を回転自在に支持するピン90は、回動アーム80の回転軸88及び規制部材81に対して、車幅方向においては内側に配置され、車両の前後方向においては回動アーム80と反対側に配置されている。そして、アーム付勢バネ82は、ドア108が閉鎖位置の状態からプラグ動作が完了する状態まで移動して回動アーム80が回動する際に、回転軸88の上方を通過するように配置されている。このため、アーム付勢バネ82は、ドア108のプラグ動作が完了して回動アーム80が規制部材81に当接した状態では、回動アーム80を規制部材81に対して当接させる方向に付勢するように構成されている。
【0075】
ドア側支持部79は、回転力発生部76に対してドア108側に設けられ、一対の支持ローラ(79a、79a)と、一対の支持ローラ(79a、79a)を回転自在に支持する支持フレーム79bとを備えて構成されている。そして、ドア側支持部79は、一対のローラ(79a、798a)が、ドア108の一部であるドアレール91に対して車両の幅方向において回転力発生部76が配置される側(ドアレール91に対する車幅方向の内側)と反対側で接触するように配置されている。これにより、ドア側支持部79は、ドア108の一部としてのドアレール91を支持するように構成されている。
【0076】
尚、ドアレール91は、ドア108において車幅方向内側における下端側に設けられ、車両の前後方向に延びるレール部分として構成されている。また、このドアレール91は、ドア108において、下方に開口して車両の前後方向に延びる溝も区画するように設けられている。そして、支持フレーム79bに対して鉛直軸方向の回転軸を介してそれぞれ回転自在に支持された一対の支持ローラ(79a、79a)が、上記の溝の内側に配置されている。また、各支持ローラ79aは、ドアレール91に対して車幅方向の内側に向かって当接するとともにドアレール91に対して転動自在に配置されている。
【0077】
また、ドアレール91に対する車幅方向における内側には、回動アーム80に対して回転自在に支持されるとともに一対の支持ローラ(79a、79a)に対応する高さ位置に設置された補助ローラ84が配置されている。補助ローラ84は、その回転軸が駆動回転部材76bの回転軸と同一軸心上に配置され、駆動回転部材76bの下方に配置されている。そして、補助ローラ84は、ドアレール91に対して転動自在に配置され、一対の支持ローラ(79a、79a)との間で一対の支持ローラ(79a、79a)とともにドアレール91を車幅方向の両側から挟んで支持するように設けられている。
【0078】
尚、一対の支持ローラ(79a、79a)を回転自在に支持する支持フレーム79bは、ドアレール91の下方で車幅方向の延びるように配置されている。そして、支持フレーム79bは、車幅方向の外側の端部において、一対の支持ローラ(79a、79a)を回転自在に支持している。一方、支持フレーム79bにおける車幅方向の内側の端部は、補助ローラ84の回転軸に対して回転自在に取り付けられている。このため、ドア108の移動に伴う回動アーム80の回動の際に、支持フレーム79bが回動アーム80に対して回動し、ドアレール91に対して転動する一対の支持ローラ(79a、79a)及び補助ローラ84によってドアレール91が支持されることになる。
【0079】
〔ロック機構について〕
図3、図5及び図6に示すロック機構57は、ドア(108、109)の閉鎖位置でドア(108、109)の移動を制限するようにロック可能な機構として設けられている。そして、このロック機構57は、ロックピン63(63a、63b)と、リンク機構64と、リンク保持機構65と、ロック固定部62と、ロック移動部37と、を備えて構成されている。
【0080】
ロックピン63(63a、63b)は、駆動ラック60(60a、60b)又は連結部59(59a、59b)に固定されたアーム部材(66a、66b)に設置されたピン状の部分として設けられている。アーム部材66aは、駆動ラック60a又は連結部59aに対して固定されている。アーム部材66bは、駆動ラック60b又は連結部59bに対して固定されている。また、アーム部材(66a、66b)は、駆動ラック60(60a、60b)又は連結部59(59a、59b)から車幅方向の内側に向かって延びるように設けられている。そして、アーム部材(66a、66b)には、車幅方向の内側の端部側において、車両の前後方向に沿って突出する部分が更に設けられている。アーム部材(66a、66b)において車両の前後方向に突出する部分は、車両の前方側及び後方側から乗降口106における車両の前後方向の中央側に向かって片持ち状に突出するように配置されている。そして、各アーム部材(66a、66b)における車両の前後方向で片持ち状に突出する先端側の端部に、各ロックピン(63a、63b)が固定されている。尚、ロックピン63aは、アーム部材66aの先端側の端部から車幅方向の外側に向かって突出するように設けられている。一方、ロックピン63bは、アーム部材66bの先端側の端部から車幅方向の外側に向かって突出するように設けられている。
【0081】
リンク機構64は、3つのリンクが直列に連結されることで構成され、鉛直面内で直線状態と屈曲状態とに変形可能な機構として設けられている。リンク機構64における中央のリンク64aは、中央部において連結ピン67aによりガイドプレート43に対して回動自在に支持されている。尚、ガイドプレート43は、スライドベース52に設置された駆動部53aのハウジング等に対して固定された板状の部材として設けられている。そして、ガイドプレート43には、上記の連結ピン67aが取り付けられる位置の下方において、出力ローラ22aが配置される長孔43aが形成されている。出力ローラ22aは、この長孔43aに沿って移動することで、車両の前後方向に移動する。そして、出力ローラ22aは、リンク機構64の中央のリンク64aに対して係合可能に設置されており、出力ローラ22aの長孔43aに沿った移動に伴って、リンク機構が直線状態と屈曲状態との間で変形するように構成されている。
【0082】
リンク保持機構65は、一対の係合部材(69a、69b)を備えて構成されている。一対の係合部材(69a、69b)は、リンク機構64の両端部近傍において、リンク機構64に対して(連結ピン67aに対して)対称に、鉛直面内で回動自在に設置されている。そして、一対の係合部材(69a、69b)は、ドア(108、109)が閉鎖位置の状態において、直線状態のリンク機構64の両端部に係合するとともに、ロックピン(63a、63b)にも係合するように構成されている。
【0083】
一方、上記の状態において、遊星歯車機構20のキャリア20cが揺動して出力された駆動力がロック出力部22の出力ローラ22aに出力されると、出力ローラ22aの移動に伴って直線状態のリンク機構64が屈曲状態に変形する。これにより、一対の係合部材(69a、69b)とリンク機構64との係合が外れることになる。そして、遊星歯車機構20のリングギア20dから出力された駆動力によってラックアンドピニオン機構53bが作動して駆動ラック(60a、60b)又は連結部(59a、59b)とともにアーム部材(66a、66b)が移動すると、ロックピン(63a、63b)もドア(108、109)の開方向に向かって互いに離間する方向に移動することになる。
【0084】
上記のようにロックピン(63a、63b)が移動すると、リンク機構64と係合部材(69a、69b)との係合が外れているため、係合部材(69a、69b)が、図示しない付勢バネの付勢力によって回動し、ロックピン(63a、63b)との係合が外れることになる。尚、この状態においては、係合部材(69a、69b)は、リンク機構64が直線状態に延びる動きを外縁部によって拘束するように構成されている。そして、リンク機構64が、リンク保持機構65によって屈曲状態に保持されているときは、出力ローラ22aがリンク64aに保持され、遊星歯車機構20におけるキャリア20cへの出力が固定された状態に維持される。
【0085】
一方、ラックアンドピニオン機構53bが上記と逆方向に作動すると、アーム部材(66a、66b)とともにロックピン(63a、63b)がドア(108、109)の閉方向に向かって互いに接近する方向に移動することになる。このようにロックピン(63a、63b)が移動すると、ロックピン(63a、63b)が係合部材(69a、69b)に係合し、係合部材(69a、69b)が、図示しない付勢バネの付勢方向と反対に回動する。そして、係合部材(69a、69b)が、リンク機構64に係合可能な状態となる。この状態で、遊星歯車機構20のキャリア20cが揺動し、ロック出力部22の出力ローラ22aが長孔43aを移動することで、リンク機構64が屈曲状態から直線状態に変形することになる。そして、リンク機構64の両端部が係合部材(69a、69b)に係合することになる。
【0086】
図16は、ロック機構57におけるロック固定部62及びロック移動部37を示す平面図である。ロック固定部62は、固定ベース51に固定されて設けられたブロック状の部材として構成されている。
【0087】
ロック移動部37は、遊星歯車機構20のキャリア20cからロック機構57へ出力される駆動力によって移動可能に設けられている。そして、このロック移動部37は、ドア(108、109)の閉鎖位置において、ロック固定部62に対して車両の幅方向における内側の面36aで当接するように構成されている。このように、ロック機構57は、ロック移動部37がロック固定部62に当接することで、ドア(108、109)の閉鎖時において、ドア(108、109)の車幅方向における外側への移動を規制するように設けられている。
【0088】
また、ロック移動部37は、ロック固定部36に当接可能なスライド当接部38と、スライドレール39と、伝達部材40とを備えて構成されている。スライドレール39は、スライドベース52に固定されて車両の前後方向に延びるレール部材として設けられている。これにより、スライドレール39は、スライド当接部38のスライド移動方向を車両の前後方向に平行な方向に規制するように構成されている。
【0089】
伝達部材40は、板状の部材として設けられ、上下方向に延びるように配置されている。そして、この伝達部材40は、遊星歯車機構20のキャリア20cからロック機構57へ出力される駆動力をスライド当接部38に伝達する部材として設けられている。尚、伝達部材40は、ロック出力部22における出力ローラ軸22bに固定されている(図6を参照)。図6ではガイドプレート43の図示を省略しているが、出力ローラ軸22bは、ガイドプレート43の長孔43aを貫通し、伝達部材40の下端側に固定されている。また、長孔43aを貫通する出力ローラ軸22bに対して、長孔43aに対応する位置で、出力ローラ22aが回転自在に支持されている。
【0090】
上記により、ロック機構57は、キャリア20cからロック出力部22を介して出力される駆動力が、伝達部材40において入力されるように構成されている。そして、遊星歯車機構20からの駆動力による出力ローラ軸22bの移動とともに、伝達部材40が、車両の前後方向に移動することになる。更に、伝達部材40の移動とともに、スライドレール39でスライド移動方向が規制されたスライド当接部38が、車両の前後方向に移動することになる。
【0091】
また、スライド当接部38は、スライドブロック41とローラ42とを備えて構成されている。スライドブロック41は、ブロック状に設けられ、スライドレール39によってスライド移動方向を車両の前後方向に規制される部材として設けられている。尚、スライドブロック41は、伝達部材40の上端側が固定されるとともに、スライドレール39のレール面上を摺動してスライド移動可能に嵌まり込む溝が形成されている。
【0092】
ローラ42は、スライドブロック41に対して、鉛直軸周りに回転自在に支持されている。そして、ローラ42は、その外周側面において、ロック固定部36の側面に対して当接可能に配置されている。尚、ロック固定部62の側面には、ローラ42が当接可能な面36aが設けられている。この面36aは、ロック固定部62において車幅方向の内側に面する側面として設けられている。そして、この面36aは、車幅方向に対して直交する面として形成され、ドア(108、109)の閉鎖時においてロック移動部37のスライド当接部38におけるローラ42の外周と当接することで、ドア(108、109)の車幅方向における外側への移動を規制するように構成されている。
【0093】
〔プラグドア装置の作動について〕
次に、プラグドア装置3の作動について説明する。図1乃至図6に示すようにドア(108、109)が閉鎖位置のときは、軸部54(54a、54b)は、ガイド部55(55a、55b)のそれぞれにおける第1リンク24及び第2リンク25に係合している。
【0094】
また、ドア(108、109)が閉鎖位置のときは、図5、図6及び図16に示すように、ロック機構57は、ローラ42がロック固定部62の面36aに当接している。このため、ロック機構57及び遊星歯車機構20のキャリア20cを介して、スライドベース52の車幅方向外側への移動が規制された状態となっている。これにより、プラグ機構による車幅方向外側へのプラグ動作が規制され、ドア(108、109)の移動が制限されるようにロックされている。
【0095】
上記の閉鎖位置の状態から、ドア駆動機構53のダイレクトドライブ方式のブラシレス電動モータ21が駆動されることにより、遊星歯車機構20のサンギア20aが回転を開始し、サンギア20aの周囲のプラネタリギア20bがリングギア20dと噛み合いながらサンギア20aの周囲を公転し始めることになる。そして、プラネタリギア20bの公転に伴うキャリア20cの揺動により、出力ローラ22a及び出力ローラ軸22bが長孔43a内を一方に移動する。
【0096】
これにより、出力ローラ軸22bとともに伝達部材40が車両の前後方向におけるドア108の開方向と平行に移動し、スライドブロック41もスライドレール39上をドア108の開方向と平行に移動する。そして、リンク機構64が、両端部で係合部材(69a、69b)に係合した直線状態から、両端部の係合が外れた屈曲状態に移行することになる。
【0097】
上記により、ロック固定部62の面36aに当接していたローラ42が、面36aから外れる位置まで移動することになる。そして、係合部材(69a、69b)に係合していたロックピン(63a、63)が、係合部材(69a、69b)から外れる位置まで移動することになる。尚、図16では、面36aから外れた位置まで移動したローラ42の位置を二点鎖線のローラ42aとして図示している。これにより、ロック機構57によるドア(108、109)のロック状態が解除され、プラグ機構による車幅方向外側へのプラグ動作が可能な状態となる。
【0098】
上記のように、車幅方向外側へのプラグ動作が可能な状態に移行すると、更に連続して、ドア駆動機構53のブラシレス電動モータ21の駆動が継続される。これにより、リングギア20dを介してラックアンドピニオン機構53bの駆動ピニオン61に出力される駆動力が、更に、駆動ラック(60a、60b)及び連結部(59a、59b)を介して軸部(54a、54b)に伝達される。このため、軸部(54a、54b)のそれぞれは、ドア(108、109)をそれぞれ開方向に移動しようとして、各ガイド部(55a、55b)の第2リンク25を同方向へ付勢する。
【0099】
尚、以下におけるプラグ機構の作動の説明については、図7乃至図11に示すドア108側のプラグ機構を例にとって説明し、ドア109側のプラグ機構の作動の説明については、同様のため、適宜省略する。図7に示すように、第2リンク25の第1リンク24に対する回動(上方から見て第2回動軸27を中心とした時計周りの方向への回動)は、ガイド部ローラ28がローラガイド23の斜面23aに当接する位置で規制されている。そのため、第2リンク25は、第1リンク24に対してほとんど回動せず、第2回動軸27を介して第1リンク24に、第1回動軸26を中心とする回動力(上方から見て時計周りの方向への回動力)を与えることになる。結果として、ガイド部ローラ28は斜面23aに沿って移動するとともに、第1リンク24は、第1回動軸26を中心として図中矢印Hで示す方向に向かって回動する。
【0100】
第1リンク24が上方から見て時計周り方向に回動している間、第2リンク25のガイド部ローラ28は、ローラガイド23の斜面23aに沿って移動する。このとき、第2 リンク25は、つるまきバネ30により斜面23a側に引きつけられているので、斜面23aからガイド部ローラ28が離れることはない。また、ガイド部ローラ28が斜面23aに沿って移動しているときは、第1リンク24の第1切り欠き部24aと第2リンク25の第2切り欠き部25aとが軸部54aの周囲を囲んだ状態が維持される。
【0101】
上記の状態から、更に軸部54aが開方向に移動すると、ガイド部ローラ28とローラガイド23との接触位置が斜面23aから曲面23bに移行する。これにより、ガイド部ローラ28が、曲面23bに沿って車幅方向内側に引き込まれるとともに、第2リンク25が、第1リンク24に対して、第2回動軸27を中心として上方から見て時計周り方向に相対回転する。即ち、図11に示すように、第2リンク25による軸部54aの拘束が解除される。また、このとき、第1リンク24の矢印H方向の回動は、ローラガイド23に固定されたストッパ44に対して第1リンク24が当接することで、規制されている。
【0102】
上記のように、ガイド部55(55a、55b)は、ドア(108、109)が開く際に、軸部(54a、54b)と当接しつつ回動して軸部(54a、54b)が車幅方向の一方(ドア108の開方向及びドア109の開方向)に移動するように軸部(54a、54b)を案内する機構として構成されている。
【0103】
また、上述のようにガイド部(55a、55b)が作動する際、軸部(54a、54b)に対して、車幅方向外側を向く力が作用することになる。そのため、軸部(54a、54b)に対して連結部(59a、59b)を介して連結されるドア駆動機構53にも車幅方向外側に向かう力が作用するとともに、ドア駆動機構53 が設置されるスライドベース52にも、車幅方向外側に向かう力が作用する。
【0104】
上記により、ドア駆動機構53およびスライドベース52が、固定ベース51におけるスライド支持部51bに案内されて車幅方向外側に移動することになる。結果として、ドア(108、109)が車幅方向外側に移動するプラグ動作が行われることになる。そして、プラグ動作が行われることで、ドア(108、109)の開方向への移動が可能な状態となる。
【0105】
そして、上記の車幅方向外側へのプラグ動作が行われる場合には、回動アーム機構75(75a、75b)が、ドア(108、109)のプラグ動作を補助するようにドア(108、109)を車幅方向の外側に案内することになる。尚、以下における回動アーム機構75の作動の説明については、図12乃至図15に示すドア108側の回動アーム機構75aを例にとって説明し、ドア109側の回動アーム機構75bの作動の説明については、同様のため、適宜省略する。
【0106】
まず、ドア108が閉鎖位置の状態のときは、回動アーム機構75aは、駆動回転部材76bの外周の外歯86がドア側固定ラック85に噛み合い、回動アーム80が図13にて実線で示す位置に位置している。この状態から、ドア108のプラグ動作が開始されると、ドア108の移動に伴って、駆動回転部材76bが外歯86においてドア側固定ラック85に噛み合いながら回転し、ドア開閉力としての駆動力が駆動力取得部76aにて取得されることになる。また、このとき、一対の支持ローラ(79a、79a)と補助ローラ84とが、ドアレール91を車幅方向の両側から挟んだ状態で、互いに逆方向に回転しながらドアレール91に対して転動することになる。
【0107】
そして、ドア108の移動とともに、駆動回転部材76bが回転し、この駆動回転部材76bに噛み合う中間歯車83が回転し、更に、中間歯車83に噛み合う従動回転部材77が回転することになる。また、このとき、従動回転部材77は、ガイド曲面部材78のガイド曲面部78aの外歯と噛み合いながら回転し、ガイド曲面部78aに沿って移動することになる。これにより、駆動回転部材76b及び従動回転部材77を回転自在に支持するとともにガイド曲面部材78に回動自在に支持された回動アーム80が、ドア108の移動に伴って、車幅方向外側に向かって回動することになる。
【0108】
プラグ動作が完了する位置までドア108が移動すると、回動アーム80は、図13にて二点鎖線で示す位置まで移動し、規制部材81のストッパゴム81bに当接することになる。これにより、回動アーム80の回動範囲が規制され、回動アーム80は、停止した状態となる。また、プラグ動作が完了する位置までドア108が移動すると、ドア108における車両の前後方向において部分的に設けられたドア側固定ラック85と外歯86との噛み合いが外れることになる。これにより、ドア108が開放される際における駆動力取得部76aによるドア108のドア開閉力の取得が終了することになる。
【0109】
また、上記のドア108のプラグ動作の後、ドア108が開方向へ移動する際には、ドア108のドアレール91の移動とともに、一対の支持ローラ(79a、79a)と補助ローラ84とが、ドアレール91に対して転動することになる。また、この状態では、アーム付勢バネ82によって、回動アーム80の位置が、規制部材81に当接した位置に保持されている。
【0110】
また、プラグ機構及び回動アーム機構75による車幅方向外側へのプラグ動作が完了した時点では、屈曲状態のリンク機構64の両端部の動きが、係合部材(69a、69b)の外縁部によって拘束されている。そして、この状態では、遊星歯車機構20のキャリア20cからロック機構57に入力される駆動力と釣り合う反力が係合部材(69a、69b)の外縁部において発生する。これにより、遊星歯車機構20のリングギア20dから駆動ピニオン61に入力される駆動力によって駆動ピニオン61が回転駆動される。
【0111】
そして、駆動ピニオン61の回転に伴い、駆動ラック(60a、60b)が互いに逆方向に駆動され、連結部(59a、59b)とともに倍速レール(56a、56b)における支持レール16d及びピニオン16cが移動する。このため、各倍速レール(56a、56b)において、スライドベース52に固定された下側ラック16bに対して、ドア(108、109)に連結された上側ラック16aが、ピニオン16cに対して倍速で移動することになる。これにより、ドア(108、109)がそれぞれ開方向へ移動し、ドア(108、109)の開放動作が行われることになる。尚、ドア(108、109)の開方向への移動中は、軸部(54a、54b)は、ガイド部(55a、55b)から車幅方向に力を受けることはなく、連結部(59a、59b)とともにドア(108、109)の開方向に直線的に移動することになる。
【0112】
一方、ドア(108、109)が閉じる際は、上述したドア(108、109)の開放動作と逆の動作が行われる。即ち、ドア駆動機構53におけるダイレクトドライブ方式のブラシレス電動モータ21が駆動され、遊星歯車機構20を介して駆動される駆動ピニオン61が前述の開放動作の場合とは逆方向に回転する。これにより、連結部(59a、59b)に連結された各倍速レール(56a、56b)における支持レール16d及びピニオン16cが前述の開放動作の場合と逆方向に移動する。そして、各倍速レール(56a、56b)において、スライドベース52に固定された下側ラック16bに対して、ドア(108、109)に連結された上側ラック16aが、ピニオン16cに対して倍速で移動する。これにより、ドア(108、109)が閉方向へ移動し、ドア(108、109)の閉鎖動作が行われることになる。また、軸部(54a、54b)は、ガイド部(55a、55b)に向かってそれぞれ直線的に閉方向に移動することになる。
【0113】
尚、ガイド部55aにおいては、ドア108が開いた状態では、つるまきバネ30により第2リンク25に上方から見て時計周り方向の回動力が作用している。即ち、ガイド部ローラ28がローラガイド23の曲面23bに当接した位置に位置するように、つるまきバネ30から引っ張りの力が第2リンク25に作用している。本実施形態においては、ガイド部ローラ28は、曲面23bにおけるガイド部ローラ28の外周形状と略同じ半円弧形状を有する凹部に嵌まり込んでいる。従って、第1リンク24および第2リンク25が所定の位置で安定して保持される。具体的には、閉方向に直線的に移動してきた軸部54aが第2切り欠き部25aの内縁に当接できる位置で、第2リンク25が保持される。また、第1リンク24も、閉方向に直線的に移動してきた軸部54aを第1切り欠き部24a内に収容できる位置で保持される(図11を参照)。
【0114】
従って、軸部54aは、ドア108が全開の状態の位置から閉方向に所定量移動したときに第2リンク25の第2切り欠き部25aの内縁に当接し(図11を参照)、この第2リンク25を付勢する。このとき、第2リンク25は、つるまきバネ30の力に抗して、第2回動軸27を中心として上方から見て反時計方向に回動するので、軸部54aの閉方向への直線的な移動が妨げられることはない。この第2リンク25の回動時においては、ガイド部ローラ28は、ローラガイド23の曲面23bに沿って移動することになる。 尚、第2リンク25の回動時においては、第1リンク24は、ほとんど回動することなく所定の位置もしくはその近傍部で保持される。
【0115】
そして、軸部54aは、第1リンク24の第1切り欠き部24aの内縁に当接する位置まで閉方向に移動し、第1リンク24を閉方向に付勢する。これにより、第1リンク24が第1回動軸26を中心として上方から見て反時計方向に回動するとともに、軸部54aが車幅方向内側に案内される。
【0116】
このとき、ドア108は、軸部54aと同様に移動する。即ち、ドア108は、全開の状態の位置からから閉方向に直線的に移動するとともに、閉鎖位置近傍部において、車幅方向内側に引き込まれて閉鎖位置に移行する。これにより、プラグ機構による車両幅方向内側へのプラグ動作が完了することになる。
【0117】
上記のように、ガイド部(55a、55b)は、ドア(108、109)が閉じる際に、軸部(54a、54b)と当接しつつ回動して軸部(54a、54b)が車幅方向の他方(ドア108の閉方向及びドア109の閉方向)に移動するように軸部(54a、54b)を案内する機構として構成されている。
【0118】
また、上記の車幅方向内側へのプラグ動作が行われる場合には、回動アーム機構75(75a、75b)が、ドア(108、109)のプラグ動作を補助するようにドア(108、109)を車幅方向の外側に案内することになる。
【0119】
ドア108が閉方向に移動しているときは、一対の支持ローラ(79a、79a)と補助ローラ84とが、ドアレール91に対して転動している。そして、ドア108が閉方向に所定量移動して車幅方向内側へのプラグ動作が開始される位置に達すると、ドア側固定ラック85が駆動回転部材76bの外周の外歯86に噛み合う位置まで到達する。更に、ドア108の車幅方向内側へのプラグ動作が開始されると、ドア108の移動に伴って、駆動回転部材76bが外歯86においてドア側固定ラック85に噛み合いながら回転し、ドア開閉力としての駆動力が駆動力取得部76aにて取得されることになる。このとき、駆動回転部材76bは、ドア108の開放動作時の回転方向とは逆方向に回転することになる。
【0120】
そして、ドア108の移動とともに、駆動回転部材76bが回転し、この駆動回転部材76bに噛み合う中間歯車83が回転し、更に、中間歯車83に噛み合う従動回転部材77が回転することになる。また、このとき、従動回転部材77は、ガイド曲面部材78のガイド曲面部78aの外歯と噛み合いながら回転し、ガイド曲面部78aに沿って、ドア108の開放動作時と逆方向に移動することになる。これにより、駆動回転部材76b及び従動回転部材77を回転自在に支持するとともにガイド曲面部材78に回動自在に支持された回動アーム80が、ドア108の移動に伴って、車幅方向内側に向かって回動することになる。そして、ドア108が閉鎖位置に到達した時点で、ドア108が閉じられる際における駆動力取得部76aによるドア108のドア開閉力の取得が終了し、回動アーム80の回動も停止することになる。
【0121】
また、プラグ機構及び回動アーム機構75による車幅方向内側へのプラグ動作が完了した時点では、ロックピン(63a、63b)は、係合部材(69a、69b)にそれぞれ係合し、係合部材(69a、69b)を回動させている。これにより、係合部材(69a、69b)が、屈曲状態のリンク機構64の両端部に対向した状態となっている。そして、上記のように係合部材(69a、69b)が回動すると、係合部材(69a、69b)の外縁部によるリンク機構64の拘束が解除された状態となる。このため、遊星歯車機構20のキャリア20cから出力ローラ22aを介して入力される駆動力により、リンク64aが回動し、リンク機構64が屈曲状態から直線状態に変形する。そして、リンク機構64の両端部が、係合部材(69a、69b)に係合することになる。
【0122】
また、このとき、キャリア20cから出力ローラ軸22bを介して入力される駆動力により、伝達部材40が車両の前後方向におけるドア108の閉方向と平行に移動し、スライドブロック41もスライドレール39上をドア108の閉方向と平行に移動する。そして、図16において二点鎖線のローラ42aとして示す位置からロック固定部62の面36aに当接する位置までローラ42が移動することになる。これにより、ロック機構57によるドア(108、109)のロック状態が確保され、プラグ機構による車幅方向外側へのプラグ動作ができない状態となる。
【0123】
〔プラグドア装置の効果について〕
以上説明したプラグドア装置3によると、ガイド部55(55a、55b)は、軸部54(54a、54b)に当接して回動することで軸部54(54a、54b)を車幅方向に案内する。そのため、ガイド部55(55a、55b)の動作は、ドア(108、109)の車幅方向への移動に追従するような動作となる。これにより、ドア(108、109)の車幅方向への移動状況に合わせて、車幅方向においてガイド部55(55a、55b)が占有するスペースをより小さくすることができる。これにより、ドア(108、109)に対して車両の前後方向への力を作用させるドア駆動機構53で開閉動作とプラグ動作とを行うことができる小型のプラグドア装置3を実現できる。
【0124】
更に、プラグドア装置3によると、ドア(108、109)の開閉動作に伴ってドア開閉力に基づいて回動する回動アーム80を有する回動アーム機構75(75a、75b)が設けられている。そして、回動アーム機構75(75a、75b)では、ドア(108、109)から取得されたドア開閉力によって発生した回転力が伝達された従動回転部材77が回転し、この従動回転部材77がガイド曲面部78aに沿って案内されることで、従動回転部材77を保持する回動アーム80が回動する。このため、軸部54(54a、54b)、ガイド部55(55a、55b)、及びスライドベース52がドア(108、109)の上部側に設置され、回動アーム機構75(75a、75b)がドア(108、109)の下部側に設置され、ドア(108、109)の剛性が小さい場合であっても、プラグ動作の際に、ドア(108、109)の上部側の移動に対するドア(108、109)の下部側の移動の追従性が不十分となってしまう状態の発生が防止される。即ち、特許文献1に開示された連結軸が設けられていなくても、プラグ動作を行うための機構が配置されたドア(108、109)の上部側の移動に対するドア(108、109)の下部側の移動の追従性が確保されることになる。よって、回動アーム80を有してドア(108、109)のプラグ動作を補助するようにドア(108、109)を車両の幅方向に案内する機構の設置スペースを削減することができる。尚、回動アーム機構75(75a、75b)によると、ドア開閉力を取得して回転力を発生させる回転力発生部76側に加え、ドア(108、109)の一部を介して車幅方向における反対側に配置されたドア側支持部79によっても、ドア(108、109)が支持される。このため、ドア(108、109)の一部が車幅方向の両側から挟み込まれるように支持されることになり、回転力発生部76がドア(108、109)に対して追従して作動する状態が常時確保されることになる。更に、この回動アーム機構75(75a、75b)では、回動アーム80のドア開方向側の回動範囲が規制部材81によって規制されるため、ドア(108、109)が開く際に回動アーム80がプラグ動作後に過度に回動してドア(108、109)の移動を妨げてしまうことが防止されることになる。
【0125】
従って、本実施形態によると、ドア(108、109)に対して車両の前後方向への力を作用させるドア駆動機構53で開閉動作とプラグ動作とを行うことができる小型のプラグドア装置3を実現でき、更に、回動アーム80を有してドア(108、109)のプラグ動作を補助するようにドア(108、109)を車両の幅方向に案内する機構の設置スペースを削減することができる、プラグドア装置3を提供することができる。
【0126】
また、プラグドア装置3によると、回転力発生部76において、ドア開閉力を駆動力として取得する機構と、取得された駆動力から回転力を発生させる機構とが、分離された機構として構成される。このため、ドア(108、109)に対して接触しながら摩擦力で回転するように構成されるような回転力発生部に比して、ドア開閉力を効率よく取得することができるとともに効率よく回転力に変換することができる。
【0127】
また、プラグドア装置3によると、ドア開閉力を効率よく取得することができる駆動力取得部76aについて、ドアに固定されたドア側固定ラック85と駆動回転部材76bの外周の外歯86とによる簡素な構成で実現することができる。尚、ドア側固定ラック85が車両の前後方向で部分的に設けられるため、プラグ動作後に駆動回転部材76bの外周の外歯86がドア側固定ラック85に噛み合って過度に作動してドア(108、109)の移動を妨げてしまうことが防止されることになる。更に、アーム付勢バネ82が設けられているため、ドア(108、109)が開く際に、車両の前後方向に部分的に設けられたドア側固定ラック85と駆動回転部材76bの外周の外歯86との噛み合いが外れた後においても、規制部材81に当接した位置で回動アー80の位置が保持されることになる。
【0128】
〔変形例について〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0129】
(1)前述の実施形態では、2枚で構成される両引きの引き分けドアに対して適用されたプラグドア装置を例にとって説明したが、この例に限らず、1枚で構成される片引きのドアに対して本発明が適用されてもよい。
【0130】
(2)前述の実施形態では、ドア駆動機構が、ラックアンドピニオン機構を備えて構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。プーリ或いはスプロケット等として構成された駆動輪部材及び従動輪部材と、駆動輪部材及び従動輪部材に掛け回されるベルト、チェーン、ワイヤ、等として構成された無端状部材とを備えて構成されたドア駆動機構を実施してもよい。
【0131】
(3)前述の実施形態では、軸部が連結部に設けられている形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。軸部がドアに直接に設けられた形態であってもよい。
【0132】
(4)ガイド部の形状については、上述の実施形態で例示した形状でなくてもよい。即ち、ガイド部は、固定ベースに回転自在に設置され、ドアが開く際に、軸部と当接しつつ回動して軸部が車両の幅方向の一方に移動するように軸部を案内するとともに、ドアが閉じる際に、軸部と当接しつつ回動して軸部が車両の幅方向の他方に移動するように軸部を案内可能な形状であればよい。
【0133】
(5)回転力発生部については、前述の実施形態で例示した形態に限らず、変更して実施してもよい。例えば、回転力発生部が、周回するベルト部材を有し、このベルト部材がドアに接触しながら摩擦力によって周回して回転する機構として設けられてもよい。このように、ドアに接触してドア開閉力を取得することで回転力を発生させる回転力発生部を実施してもよい。
【0134】
尚、上記の場合、ガイド曲面部材におけるガイド曲面部は、回転力発生部のベルト部材に対して当接するように構成されることになる。そして、従動回転部材が、ベルト部材の内側において回動アームに対して回転自在に支持され、ガイド曲面部材との間でベルト部材を挟むように配置される。これにより、回転力発生部としてのベルト部材の回転力が従動回転部材に伝達され、ガイド曲面部に対して接触して摩擦力を生じながら周回するベルト部材の回転と従動回転部材の回転とに伴って、従動回転部材がガイド曲面部に沿って移動することになる。
【0135】
(6)ドア側固定ラックと、ドア側固定ラックに噛み合う歯付ベルトとを備えて構成された回転力発生部が設けられた回動アーム機構を実施してもよい。図17は、変形例に係る回動アーム機構92を示す平面図である。図17に示す回動アーム機構92は、ドア側固定ラック85、両面歯付ベルト94、駆動回転部材76bを備えて構成された回転力発生部93が設けられている。尚、図17においては、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0136】
両面歯付ベルト94は、無端状のベルト部材として設けられ、内周面及び外周面に歯が設けられている。そして、両面歯付ベルト94の内側には、回動アーム80に対して回転自在に支持された駆動回転部材76b及び従動回転部材77が配置されている。そして、両面歯付ベルト94は、内周面の歯において駆動回転部材76bの外周の歯と従動回転部材77の外周の歯とに対して噛み合った状態で、駆動回転部材76b及び従動回転部材77に対して周回するように掛け回されている。
【0137】
また、両面歯付ベルト94は、外周面に設けられた歯においてドア側固定ラック85に噛み合うとともにガイド曲面部78aに形成された外歯にも噛み合うように設置されている。これにより、ドアの移動に伴って、両面歯付ベルト94がドア側固定ラック85と噛み合いながら周回するように回転し、両面歯付ベルト94に内側で噛み合う駆動回転部材76b及び従動回転部材77も回転する。そして、ガイド曲面部78aの外歯に対して噛み合いながら周回する両面歯付ベルト94の回転と従動回転部材77の回転とに伴って、従動回転部77がガイド曲面部78aに沿って移動することになる。これにより、回動アーム80が回動することになる。尚、この変形例では、上述のように、駆動回転部材76b及び従動回転部材77は、前述の実施形態とは噛み合う対象が異なり、両面歯付ベルト94の内周面に対して噛み合っている。また、回転力発生部93の両面歯付ベルト94が、ガイド曲面部材78のガイド曲面部78aに当接している。
【0138】
(7)回動アームとして回動動作の際に伸縮する機構を備える形態を実施してもよい。また、曲率半径が変化するように形成された曲面に沿って従動回転部材を移動させるガイド曲面部が設けられたガイド曲面部材を備える形態を実施してもよい。これらの形態の場合、ドアが閉鎖位置の状態において回動アーム機構の配置スペースの更なるコンパクト化が可能な構造を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、車両の乗降口に設置され、ドアの開閉動作、及び、車両の幅方向にドアを移動させるプラグ動作を行うプラグドア装置として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0140】
3 プラグドア装置
51 固定ベース
52 スライドベース
53 ドア駆動機構
54、54a、54b 軸部
55、55a、55b ガイド部
59、59a、59b 連結部
75、75a、75b 回動アーム機構
76 回転力発生部
77 従動回転部材
78 ガイド曲面部材
78a ガイド曲面部
79 ドア側支持部
80 回動アーム
81 規制部材
106 乗降口
108、109 ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗降口に設置され、ドアの開閉動作、及び、前記車両の幅方向に前記ドアを移動させるプラグ動作を行うプラグドア装置であって、
前記車両の本体に固定された固定ベースと、
前記固定ベースに対して前記車両の幅方向にスライド移動可能に前記固定ベースに設置されたスライドベースと、
前記スライドベースに設置され、連結部を介して前記ドアを前記車両の前後方向へ移動させるドア駆動機構と、
前記ドア又は前記連結部に設けられた軸部と、
前記固定ベースに回転自在に設置され、前記ドアが開く際に、前記軸部と当接しつつ回動して当該軸部が前記車両の幅方向の一方に移動するように当該軸部を案内するとともに、前記ドアが閉じる際に、当該軸部と当接しつつ回動して当該軸部が前記車両の幅方向の他方に移動するように当該軸部を案内するガイド部と、
前記ドアの開閉動作に伴って、開閉方向に移動する前記ドアにおける移動方向の力であるドア開閉力に基づいて回動する回動アームを有し、前記ドアのプラグ動作を補助するように前記ドアを前記車両の幅方向に案内する回動アーム機構と、
を備え、
前記回動アーム機構は、
前記ドアから前記ドア開閉力を取得することで回転力を発生させる回転力発生部と、
前記回転力発生部で発生した回転力が伝達されることで回転する従動回転部材と、
前記従動回転部材又は前記回転力発生部に当接するとともに、前記従動回転部材の回転に伴って当該従動回転部材を円弧状の曲面に沿って移動させるガイド曲面部が設けられたガイド曲面部材と、
前記回転力発生部に対して前記ドア側に設けられ、前記ドアの一部に対して前記車両の幅方向において前記回転力発生部が配置される側と反対側で接触し、当該ドアの一部を支持するドア側支持部と、
前記ガイド曲面部材に対して回動自在に設けられ、前記回転力発生部及び前記従動回転部材を保持する前記回動アームと、
前記回動アームに対して前記ドアが開く方向である開方向側に設けられ、前記ドアが開く際に前記回動アームと当接することで当該回動アームの回動範囲を規制する規制部材と、
を有していることを特徴とする、プラグドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラグドア装置であって、
前記回転力発生部は、前記ドアから前記ドア開閉力を駆動力として取得する駆動力取得部と、前記駆動力取得部で取得された駆動力によって回転して回転力を発生する駆動回転部材と、を有していることを特徴とする、プラグドア装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラグドア装置であって、
前記回動アーム機構は、前記規制部材に当接した位置で前記回動アームの位置を保持するように当該回動アームを付勢可能なアーム付勢バネを更に有し、
前記駆動力取得部は、前記ドアに固定されたドア側固定ラックと、前記駆動回転部材の外周に設けられて前記ドア側固定ラックに噛み合う外歯と、を有し、
前記ドア側固定ラックは、前記ドアにおける前記車両の前後方向において部分的に設けられていることを特徴とする、プラグドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−202140(P2012−202140A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68584(P2011−68584)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】