説明

プラスチックの処理方法

【課題】プラスチックの分解油から塩素化合物を抽出する設備を小型化した処理方法の提供。
【解決手段】(1)プラスチックと溶剤を混合、加熱する溶解工程、(2)プラスチック溶液と水素とを触媒の存在下で水素化分解する反応工程、(3)生成物を上澄み油と残渣油に遠心分離する工程、(4)残渣油に水を添加して塩素化合物を水相に抽出し、水相を分離して残渣油を精製する工程、(5)上澄み油と精製残渣油を各留分に分留する工程を有する廃プラの処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックを有効利用するためのプラスチックの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物系プラスチックを水素化分解して、ベンゼンまたはベンゼン誘導体、すなわちベンゼン類を得る技術は知られている(例えば、特許文献1、2)。特許文献1の方法は、加熱により液化された廃プラスチックを含む液状の単環または多環系芳香族化合物に水素を加えて水素化分解反応させるとともに、得られた反応生成物を環化触媒の存在下で反応させてベンゼン類を得る方法である。
【0003】
特許文献1の方法によれば、ベンゼン類は得られるが、廃プラスチック中に塩素系樹脂が混在する場合には、塩素化ベンゼン類が副生するので、これの除去が困難になる。また水素化分解反応生成物(分解油)の一つである重質留分の塩素濃度が高くなるという問題があった。
【0004】
この塩素系樹脂に係る問題を解決する方法として、特許文献2の方法が提案されている。すなわち、プラスチックと溶剤を加熱混合して得た溶液中で、プラスチックの水素化分解反応を行い、生成物に水を添加して、水溶性塩素化合物を除去した後、蒸留して留分毎に回収し、そのうちの重質留分をプラスチックの溶剤として循環使用する方法である。
【0005】
しかし、この方法によるときは、水溶性塩素化合物を効率よく除去するために、水素化分解反応生成物に対して数倍量の水を添加する必要があり、水素化分解反応生成物の全量から水溶性塩素化合物を除去するための設備が大型になるという問題、および、大量の水の使用に伴う操業コストの増大の問題があった。
【特許文献1】特開2003−321682号公報
【特許文献2】特開2007−291281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来法における問題点を解決することが課題である。すなわち、本発明は、プラスチックの処理方法において、水素化分解反応生成物から水溶性塩素化合物を水により抽出除去する設備をコンパクトにし、大量の水の使用に伴う操業コストの低減を達成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、水素化分解反応生成物(分解油)の遠心分離後の残渣に水を添加すると、水溶性塩素化合物のほぼ全量が水相に移行し、系外に排出する廃棄物の量を減量できるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明は、下記工程を有するプラスチックの処理方法である。すなわち、(1)塩素系プラスチックを含有するプラスチックと溶剤を混合、加熱してプラスチック溶液を得る溶解工程、(2)前記溶解工程で得られたプラスチック溶液と水素とを触媒の存在下で反応させて前記プラスチックの水素化分解反応を行う水素化分解反応工程、(3)前記水素化分解反応工程で得られた水素化分解反応生成物を遠心分離して上澄み油と残渣油に分離する遠心分離工程、(4)前記遠心分離工程で得られた残渣油に水を添加して、前記残渣油に含まれる水溶性塩素化合物を水相に抽出し、前記水相を分離して前記水溶性塩素化合物除去残渣油を得る残渣油精製工程、(5)前記遠心分離工程で得られた上澄み油と前記残渣油精製工程で得られた水溶性塩素化合物除去残渣油を蒸留して、各留分として分離、回収する蒸留工程とを有することを特徴とする塩素系プラスチックを含有するプラスチックの処理方法である。
【0009】
本発明のプラスチックの処理方法は,前記塩素系プラスチック以外のプラスチックがスチレン系樹脂、スチレン系ゴム。オレフィン系樹脂、オレフィン系ゴムまたは(メタ)アクリレート樹脂であることが好ましい。
【0010】
本発明のプラスチックの処理方法は,前記溶解工程に用いる溶剤がコールタールまたはコールタールの留分であることが好ましい。
【0011】
本発明のプラスチックの処理方法は,前記水素化分解工程で用いる触媒が、鉄、酸化鉄または硫化鉄であることが好ましい。
【0012】
本発明のプラスチックの処理方法は,前記水素化分解反応を温度400〜460℃、圧力5.1〜10.1MPaで行うことが好ましい。
【0013】
本発明のプラスチックの処理方法は,前記遠心分離工程において、水素化分解反応生成物に対する残渣油の収率を10〜20質量%にすることが好ましい。
【0014】
本発明のプラスチックの処理方法は,前記残渣油精製工程に用いる水の量が、前記上澄み油および残渣油の合計量100質量部に対し20〜40質量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、塩素系プラスチックを含有するプラスチックを原料として、水溶性塩素化合物を抽出分離するための水の使用量を低減し低操業コストで、かつコンパクトな残渣油精製設備により、塩素濃度の高い軽質留分、重質留分を副生することなく、塩素濃度が低いベンゼン類を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を具体的に説明するが、本発明はこの説明に限定されるものではない。
【0017】
(プラスチック)
本発明に使用される塩素系プラスチックを含有するプラスチックは、バージンプラスチック、産業廃棄物系プラスチックのほか、一般廃棄物系プラスチック(プラスチックごみ)を含むプラスチック全般である。すなわち、前記プラスチックは塩化ビニル等の塩素系樹脂、塩素系ゴムのほかに、スチレン系樹脂、スチレン系ゴム、オレフィン系樹脂、オレフィン系ゴム、(メタ)アクリレート系樹脂等を含むプラスチックである。また、本発明では熱硬化性樹脂をも便宜上プラスチックに含めている。
また、前記プラスチックの形態、形状は特段拘らない。プラスチックの射出成形や押出成形で得られた成形品やフィルム、成形屑、それらの破砕物や粉末のいずれであっても構わない。また、プラスチックが金属、ガラス等との複合体を形成していても構わない。前記プラスチックは溶剤への溶解時間が短くなるので粗砕し、数cm以下の大きさにしたものが好ましい。
【0018】
(溶剤)
本発明に使用される溶剤は、前記プラスチックを溶解(流動化)でき、生成するベンゼン類と分離しないものであればいかなる溶剤でもよいが、ベンゼン類と相溶性がある単環、二環、三環程度の芳香族化合物(各種誘導体も含む)、またはこれらの混合物が好ましい。なかでもコールタールの各留分は、熱硬化性樹脂、紙類等をも流動化できるので、水素化分解反応設備への前記プラスチックのポンプアップが可能となり、極めて好適である。コールタールの各留分としては、コールタール(全留分)をはじめコールタール蒸留プラントで製造されるクレオソート油留分、アントラセン油留分等を用いることができる。これらはコールタールピッチを含有していてもよい。
また、本発明の水素化分解反応生成物(分解油)を遠心分離して得た残渣油を蒸留して回収した重質留分を本発明の溶解工程における溶剤として使用することができる。なお、重質留分の好ましい沸点は330℃以上である。
前記溶剤の使用量は前記プラスチックを溶解するに足る量であり、一様ではないが、例えば、前記溶剤にコールタールを用いた場合、前記プラスチック100質量部に対し50〜500質量部、好ましくは100〜200質量部である。
【0019】
(溶解工程)
本発明の溶解工程は、前記プラスチックと前記溶剤を混合し、混合物を加熱攪拌するか、加熱した前記溶剤に前記プラスチックを加え攪拌して、前記プラスチックを前記溶剤に溶解または分散する工程である。なお、本発明においては、分散液も便宜上溶液と称する。
前記加熱温度、時間は前記プラスチックの種類や組成、前記溶剤の種類等によって一様ではないが、例えば、前記溶剤にコールタールを用いた場合、150〜250℃、好ましくは180〜220℃に0.2〜10時間、好ましくは0.5〜2時間加熱する。150℃未満では前記プラスチックの溶解速度が遅く、250℃を超えると前記コールタール留分(クレオソート油、アントラセン油等)の蒸発量が多くなる。
【0020】
(水素化分解反応工程)
次いで、前記溶解工程で得られた前記プラスチック溶液に、水素化分解反応触媒と水素を供給して前記プラスチックを水素化分解する。水素化分解反応工程において、例えば、ポリスチレンは分子鎖(主鎖)が切断され、ベンゼン類であるエチルベンゼンを生成する。さらに、エチルベンゼン等のアルキル鎖の分解、不均化反応でベンゼン類であるベンゼン、トルエン、キシレン等とメタン、エタン等のアルカン類を生成する。通常、熱分解のみではスチレンの生成が多い。しかし、水素化分解反応では反応が温和に進むことと、ポリスチレンの主鎖の切断部分に水素原子が供給されることによりエチルベンゼンが多くなる。ポリエチレン、ポリプロピレンが存在する場合は、主鎖の切断が主体となるので、主にC3〜C4のガス留分を生成する。
また、それ以外のフェノール樹脂で代表される熱硬化性樹脂、ポリエチレンテレフタレート等も水素化分解によってベンゼン類を生成するほか、一部は重質油類(ピッチも含む)を生成する。
【0021】
一方、コールタール(溶剤)および本発明の最終工程から循環され、溶剤として使用される重質留分は、ガス中の水素との反応によって主に水素化分解が起こって軽質化する。またそれらの一部は重縮合反応によってピッチ留分を生成することもある。その際、単環、二環、三環等の芳香族化合物と塩素が反応し、1000〜2000ppm程度の芳香族塩素化合物が副生する。
【0022】
前記プラスチックの塩素含有量が少ないとき、すなわち産業廃棄物系プラスチックを原料とするときは、水素化分解反応に用いる触媒はCo−Mo、Ni−Mo、Ni−W系触媒、または鉄系触媒(酸化鉄、硫化鉄、硫酸鉄、またはその焼成物)等である。これらの触媒は、必要に応じてアルミナ、シリカ、ゼオライト等の担体に担持して用いることができる。ただし、数%程度の塩素を含有する都市ごみ系(一般廃棄物)廃プラスチックを原料とするときは、前記触媒の貴金属成分が塩化物を形成して劣化するので、塩化物となっても触媒性能を有する鉄系触媒が好ましい。中でも鉄、酸化鉄、硫化鉄などが好ましい。前記触媒が粒状物の場合の粒径は0.01〜10mm程度であればよい。
【0023】
前記水素化分解反応は液相、気相のいずれで行ってもよい。前記反応温度は300〜500℃が好ましく、400〜460℃がより好ましい。前記反応圧力は1.0〜20.3MPa(10〜200気圧)が好ましく、5.1〜10.1MPa(50〜100気圧)がより好ましい。
前記水素化分解反応は、流動床、固定床、スラリー床等のいずれの反応形式を用いて実施しても構わないが、スラリー床反応形式が好ましい。
なお水素化分解反応設備に供給する前記プラスチック:溶剤:触媒の質量比は好ましくは5:94:1〜36:64:10、より好ましくは38:72:2〜35:60:5である。
【0024】
前記水素の水素源は特に限定されないが、水素ガスを含むコークス炉ガス、石油精製用ガス、本発明の実施により生成した水素ガス等が好ましい。水素の供給量はプラスチックと溶剤の合計量100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜3質量部である。
【0025】
(遠心分離工程)
前記水素化分解工程で得られた水素化反応生成物は、遠心分離により上澄み油と水溶性塩素化合物を含む残渣油に分離される。残渣油はおおよそ10〜20質量%生成し、上澄み油がおおよそ90〜80質量%生成する。遠心分離は常法により実施される。
前記上澄み油は有機化合物が主成分で、芳香族化合物、有機塩素化合物等を含有する。前記残渣油も有機化合物が主成分であるが、水溶性塩素化合物、有機塩素化合物(芳香族塩素化合物)等を含有する。水溶性塩素化合物は塩化鉄、塩化アルミニウム、アルカリ金属の塩化物等の無機化合物である。
【0026】
(残渣油精製工程)
前記遠心分離工程で得られた残渣油に水が添加され、含有する水溶性塩素化合物が水相に抽出される。水の添加量は前記残渣油に対し質量で1〜4倍量、好ましくは2〜3倍量である。前記抽出温度、圧力は特に限定されないが、常温常圧でよい。
前記水相はデカンテーション等により残渣油から分離され、本発明の設備外に排出される。水相が分離され、水溶性塩素化合物を除去された残渣油は、蒸留工程に移液される。
【0027】
(蒸留工程)
前記水相、すなわち、水溶性塩素化合物を除去された残渣油と、前記上澄み油は蒸留塔に供給され、C3〜C4を主体とするガス留分、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンを主体とするベンゼン類留分(初留〜沸点200℃未満)、二環芳香族化合物を主体とする軽質留分(沸点200℃以上330℃未満)、三環以上の芳香族化合物を主体とする重質留分(沸点330℃以上)に分留される。
前記蒸留は常圧で実施しても減圧で実施してもよく、また、多段蒸留であってもよい。勿論、前記4留分に限定する必要はなく、プラスチックの種類、組成、留分の需要等を考慮して、留分数を増減してもよい。
なお、重質留分には、プラスチックに含有される無機物等の残渣(固形分)が蓄積されていることがあるので、重質留分を本発明に循環利用する場合には、前記残渣を適宜除去することが好ましい。
【0028】
前記蒸留工程で得られた各留分はそのまま、または、さらに留分を細分留したり、各留分を精製して、種々の用途に利用される。
例えば、前記重質留分は本発明の溶解工程の溶剤として利用することができる。ただし、操業時間が長くなると、次第に前記固形分が蓄積する場合があり、そのため操業が不安定となってくるので、適宜、間欠的に重質留分を本発明の設備外に排出する必要がある。
【0029】
次に、本発明のプラスチックの処理方法をフロー図(図1)を用いて説明する。ただし、本発明は図1に示す処理方法に限定されるものではない。
廃プラスチック11、溶剤12、および水素化分解反応触媒13が溶解槽1に供給され、混合され、廃プラスチック11がコールタールに溶解される。このとき、蒸留塔6から得られた重質留分25の一部を溶剤として循環使用する。
溶解槽1からの廃プラスチック溶液は、水素化分解反応器3に供給され、廃プラスチック11が水素化分解反応触媒13の存在下、水素ガス15により水素化分解される。水素化分解反応はほぼ完全混合槽形式で、所定の反応温度および圧力で実施される。
前記水素ガス15は、水素化分解反応器3から排出される水素含有ガスと合流して供給してもよい。この場合、水素ガス濃度を所定濃度に維持するように一部を排ガス21として排気し、水素ガス15をメークアップする。
【0030】
水素化分解反応器3からの水素化分解反応生成物は遠心分離機4により、上澄み液と残渣油に分離される。残渣油は抽出器5に供給され、水16により残渣油中の水溶性塩素化合物が抽出される。前記水相は抽出器5からそのまま残渣27として排出される。
水相を分離した残渣油は抽出器5から蒸留塔6に供給され、各留分に分留される。また、前記上澄み液は水素化分解反応器3から蒸留塔6に供給され、各留分(ガス留分22、ベンゼン類留分23、軽質留分24および重質留分25)に分留される。
【0031】
図1では、蒸留塔6を1塔としているが、常圧蒸留塔と減圧蒸留塔を併設して分留を細分化してもよい。また、ベンゼン類留分から高純度のベンゼン類を回収するため、専用の蒸留塔等の精製装置を設けてもよい。
【実施例】
【0032】
図1のフロー図に示すプラスチック処理設備を用いて、本発明のプラスチックの処理方法を実施した。
【0033】
(実施例1)
都市ごみ系廃プラスチックを模擬して、ポリスチレン30質量%、ポリエチレン35質量%、ポリプロピレン30質量%、塩化ビニル樹脂5質量%の混合物を調製した。前記混合物を200℃に保持した溶解槽1に9.6kg/hrで供給し、溶剤としてコールタール留分のアントラセン油12(6.0kg/hr)と、本実施例1の蒸留塔6から得た重質留分25(16.4kg/hr)を供給した。触媒としては、転炉ダスト(第二酸化鉄の含有量:30質量%)を1.5kg/hrの割合で添加した。前記温度で0.5時間加熱し、前記プラスチック混合物を溶解し、プラスチック溶液を得た。
【0034】
前記プラスチック溶液を水素化分解反応器3に33.5kg/hrで供給し、水素ガスを2.5Nm/hrで供給した。反応温度460℃、反応圧力10.1MPa(100気圧)、滞留時間1.3hrで前記プラスチックの水素化分解反応を行った。
【0035】
水素化分解反応生成物(分解抽、塩素濃度2.5質量%)を31.8kg/hrで反応器3から取出し、遠心分離機4により、水溶性塩素化合物をほとんど含まない上澄み油と水溶性塩素化合物を含む残渣油(塩素濃度20質量%程度)に分離した。前記分解液の全量に対する残渣油の収率は12質量%であった。残渣油は液−液抽出器5で残渣油の2倍畳(分解油の24質量%)の水を加えて水溶性塩素化合物を水相に抽出し、分離した精製残渣油(塩素濃度430質量ppm)を蒸留塔6に送り、沸点が200℃未満のベンゼン類を主体とする留分(ベンゼン類留分23)を0.1kg/hr、沸点が200℃以上330℃未満の軽質留分24を0.5kg/hr、および、沸点が330℃以上の重質留分25(塩化鉄となっていない転炉ダストを含む)を3.4kg/hr得た。一方、上澄み油はそのまま27.8kg/hrで蒸留塔6に送液した。
【0036】
前記ベンゼン類留分23の塩素濃度は6質量ppm、軽質留分24の塩素濃度は100質量ppm、重質留分の塩素濃度は82質量ppmであった。なお、塩素濃度はイオンクロマトによる方法で分析した。
本発明によりコンパクト化しても、水溶性塩素化合物を従来技術と同程度に除去できるので、循環する重質留分(有機塩素化合物)が増加せず、水素化分解油の塩素含有量が増加しない(蓄積しない。)。
【0037】
(比較例1)
実施例1における水素化分解反応生成物(分解油)を21.8kg/hrで反応器3から取出したが、これを遠心分離することなく、液−液抽出器5で前記分解油の全量に対し2倍量(200質量%)の水を加えて水溶性塩素化合物を水相に抽出し、分離した後、蒸留塔6に送り、C3〜C4留分(ガス留分22)を0.5kg/hr、沸点が200℃未満のベンゼン類を主体とする留分(ベンゼン類留分23)を6.4kg/hr、沸点が200℃以上330℃未満の軽質留分24を12.1kg/hr、および、沸点が330℃以上の重質留分25(塩化鉄となっていない転炉ダストを含む)を12.8kg/hr得た。
前記ベンゼン類留分23の塩素濃度は7質量ppm、軽質留分24の塩素濃度は98質量ppm、重質留分の塩素濃度は83質量ppmであった。
【表1】

【0038】
実施例1と比較例1において、ベンゼン類留分23、軽質留分24、および、重質留分25の塩素濃度はほぼ同等である。しかし、実施例1において、分解油に対する残渣油の収率は12質量%であるから、抽出のために残渣油に添加した水の量の2倍量は分解油に対して24質量%と計算される。一方、比較例1においては遠心分離工程がないので、抽出のために分解油に対して添加した水の量の2倍量は200質量%と計算される。すなわち、遠心分離工程を設けることにより、水溶性塩素化合物の抽出のために添加する水の量を約八分の一に低減することができる。これは、大幅な操業コストダウンになり、また、抽出器以後の設備のコンパクト化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の廃プラスチックの廃棄処理方法を実施するための概略フロー図の一例である。
【符号の説明】
【0040】
1 溶解槽
3 水素化分解反応器
4 遠心分離機
5 抽出器
6 蒸留塔
11 廃プラスチック
12 溶剤
13 触媒
15 水素
16 水
21 排ガス
22 ガス留分
23 ベンゼン類留分
24 軽質留分
25 重質留分
27 残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系プラスチックを含有するプラスチックと溶剤を混合、加熱してプラスチック溶液を得る溶解工程と、
前記溶解工程で得られたプラスチック溶液と水素とを触媒の存在下で反応させて前記プラスチックの水素化分解反応を行う水素化分解反応工程と、
前記水素化分解工程で得られた水素化分解反応生成物を遠心分離して上澄み油と残渣油に分離する遠心分離工程と、
前記遠心分離工程で得られた残渣油に水を添加して、前記残渣油に含まれる水溶性塩素化合物を水相に抽出し、前記水相を分離して前記水溶性塩素化合物除去残渣油を得る残渣油精製工程と、
前記遠心分離工程で得られた上澄み油と前記残渣油精製工程で得られた水溶性塩素化合物除去残渣油を蒸留して、各留分として分離、回収する蒸留工程とを有することを特徴とする塩素系プラスチックを含有するプラスチックの処理方法。
【請求項2】
前記残渣油精製工程に用いる水の量が、前記上澄み油および残渣油の合計量100質量部に対し20〜40質量部であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックの処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−298877(P2009−298877A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153081(P2008−153081)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(591067794)JFEケミカル株式会社 (220)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】