説明

プラスチックアンプル

【課題】簡易な構造を有していながら、確実に折り切り開栓することができ、その折り切り開栓時の薬液の飛散を防止することができるプラスチックアンプルを提供すること。
【解決手段】注出口8が形成されたアンプル本体3と、注出口8に沿って形成されたネック部4を介してアンプル本体3に連通可能に接続された栓部5と、栓部5から外側へ突出した薄板状のエッジ部6を介して栓部5に接続されたヘッド部7とを備えるプラスチックアンプル1において、エッジ部6に対して交差する方向に扁平な形状のアーム板15をヘッド部7に形成する。そして、アーム板15を指で摘み、アーム板15を引き上げることでネック部4を支点にアンプル本体3とヘッド部7との間を折り曲げて、ネック部4を折り切ることにより開栓する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り切り操作によって開栓されるプラスチックアンプルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬液を収容するアンプルなどの容器は、衝撃に対する強度、取扱い易さ、安全性などの観点より、ガラス製の容器からプラスチック製の容器(プラスチックアンプル)へと移行している。
例えば、特許文献1は、有底筒状に形成された薬液収容部と、薬液収容部の開口端と連通していて、薬液収容部の周方向に沿って薄肉に形成される脆弱部を有する薬液排出筒部と、薬液排出筒部の一方側端部を閉鎖する頂部と、薬液排出筒部の脆弱部より頂部側から連続して、薬液排出筒部の外側に突出し、かつ、頂部の外表面から連続して、頂部の外側に突出する摘み片とを備えるプラスチックアンプルを開示している。
【0003】
そして、薬液収容部と摘み片とを把持し、これらを互いに折り曲げて脆弱部を折り裂くことによって、プラスチックアンプルを開栓することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−104868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のプラスチックアンプルでは、薬液排出筒部が薬液収容部と連通しており、これらの間を薬液が自由に行き来できる。そのため、アンプルを傾けた場合などに薬液収容部から移動してきた薬液が薬液排出筒部に溜まり、その薬液がアンプルの内圧により抜けない場合がある。その結果、薬液排出筒部を脆弱部で開裂したときに、溜まっていた薬液が開栓と同時に飛散するおそれがある。
【0006】
その対策として、薬液排出筒部をできる限り小さくして薬液が溜まり難い構造にしたり、薬液排出筒部をできる限り大きくして薬液が溜まっても容易に抜くことができるようにしたりする手法が考えられる。
しかしながら、いずれの対策も最善策であるとは言えない。例えば、薬液排出筒部が小さすぎると、薬液排出筒部と摘み片との境界部分が、薬液排出筒部の脆弱部に非常に近い位置になる。そのため、摘み片を摘んでアンプルを開栓する際に、摘み片を倒れる方向に傾けて曲げると、脆弱部ではなく当該境界部分を支点にアンプルが折り曲がって開栓できないおそれがある。一方、薬液排出筒部が大きくする場合には、薬液収容部の開口端の径も大きくする必要があり、その結果、摘み片を折るために大きな力を必要とし、また、大きく開いた開口端から液が飛散するおそれもある。
【0007】
また、薬液収容部と薬液排出筒部との間とを封鎖する部材を設けることで本体部から栓部に液が流れることを防止する対策は、ブローフィルシール(BFS:Blow Fill Seal)成形で作製されるプラスチックアンプルの製造工程に、部材の挿入工程をどのように組み込むかの工夫が必要となる。
そこで、本発明の目的は、簡易な構造を有していながら、確実に折り切り開栓することができ、その折り切り開栓時の薬液の飛散を防止することができるプラスチックアンプルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラスチックアンプルは、頂部および底部を有するボトル状に形成されていて、前記頂部に薬液を注出するための注出口が形成されたアンプル本体と、前記注出口に沿って形成され、厚さを薄くして切り離し容易としたネック部を介して前記アンプル本体に連通可能に接続され、前記注出口を閉塞する栓部と、前記栓部の頂面から外側へ突出した薄板状のエッジ部を介して前記栓部に接続されていて、前記エッジ部に対して交差する形状の摘み部を有するヘッド部とを一体的に含み、前記アンプル本体は、前記アンプル本体と前記ヘッド部との間を折り曲げて、前記ネック部を折り切ることにより開栓される。
【0009】
この構成によれば、ヘッド部の摘み部が、薄板状のエッジ部に対して交差する形状を有しているため、摘み部を摘んだ状態からエッジ部に沿って簡単に力を加えることができる。つまり、エッジ部を支点に折れ曲がる方向(エッジ部の厚さ方向)とは交差する方向に力を加えることができる。そのため、栓部の空間量が非常に小さく、ネック部とエッジ部とが近接していても、アンプルを開栓する際には、ネック部を確実に支点としてアンプル本体とヘッド部との間を折り曲げることができる。さらに、栓部の空間量を小さく設定できることにより、折り切り開栓時の薬液の飛散も防止することができる。
【0010】
また、このような効果を、アンプル本体と栓部とが連通可能に接続された簡易な構造で達成することができるので、アンプル本体と栓部との間を封鎖する部材を設けなくて済む。そのため、プラスチックアンプルの製造工程の工程数の増加や工程の複雑化を防止することもできる。
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記エッジ部は、前記栓部の前記頂面の径方向両端部に跨って形成されており、前記ヘッド部は、当該エッジ部の全長にわたって前記エッジ部と前記摘み部とを連結するベース部を含むことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、エッジ部の全長にわたって接続されたベース部が設けられているので、摘み部を曲げたときに発生する力を、ベース部を介してエッジ部全体に均等に加えることができる。そして、その均等に加わった力を栓部に伝えることができるので、プラスチックアンプルの開栓性を向上させることができる。
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記摘み部は、前記エッジ部に対して交差する方向に扁平な形状に形成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、摘み部が摘み易くなるので、ネック部を折り切る際の作業性を向上させることができる。
また、本発明のプラスチックアンプルは、前記アンプル本体が、前記摘み部を指で摘み、前記ネック部を支点に前記アンプル本体と前記ヘッド部との間を折り曲げて、前記ネック部を折り切ることにより開栓されるものであってもよい。
【0013】
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記摘み部は、前記ベース部から前記エッジ部に沿って前記アンプル本体の軸方向に垂直な方向に延出していて、当該垂直方向に沿う上側の扁平面および下側の扁平面を有する扁平な形状で前記ベース部により水平方向に片持ち支持されたアーム板を含み、前記アンプル本体は、前記アーム板を指で摘み、前記アーム板を引き上げることにより開栓されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、アーム板を引き上げることで、てこの原理を利用して開栓できるので、開栓操作を容易に行なうことができる。
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記ベース部は、前記アーム板の前記上側の扁平面と同一平面で連続する上側の扁平面およびその反対側の下側の扁平面を有する扁平な形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、ベース部とアーム板とが水平方向に直線上に並ぶので、アーム板の引き上げによる力をベース部に直接伝えることができる。そのため、アーム板からベース部に効率よく力を伝えることができる。
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記ベース部は、前記栓部の前記頂面の径よりも幅狭に形成され、前記アーム板は、前記栓部の前記頂面の径よりも幅広に形成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、ベース部を幅狭に形成することによりエッジ部を介して栓部に伝わる力の分散を防止でき、一方、アーム板を幅広にすることにより、アーム板を摘み易くして力を加え易くすることができる。
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記アーム板は、その前記下側の扁平面が前記栓部の下端と同じ高さ位置になるように、前記ベース部よりも厚く形成されていて、前記栓部の側方で前記栓部に隣り合っており、前記エッジ部は、前記アーム板の前記栓部に隣り合った部分とも直接接続されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ベース部を介さず、アーム板からエッジ部に力を直接伝えることができ、しかも栓部の側方を起点にネック部の切り離しを行うことができるので、プラスチックアンプルの開栓性を一層向上させることができる。
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記ベース部における前記アーム板とは反対側端部は、前記栓部の端部よりも外側に突出しないように当該端部と面一に揃うように形成されていてもよい。
【0018】
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記アンプル本体には、前記アーム板の直下に位置する部位が反対側の部位に比べて、前記アンプル本体の側面が一段低くされた低段面が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、アーム板の直下に一定の空間が確保されるので、アーム板へ指を引っ掛け易くすることができる。
【0019】
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記摘み部は、前記ベース部から前記アンプル本体の軸方向に直立していて、前記エッジ部に垂直な一対の扁平面を有する扁平な形状で前記ベース部により下方から支持された立設板を含み、前記アンプル本体は、前記立設板を指で摘み、前記立設板を倒すことにより開栓されてもよい。
この構成によれば、立設板を倒すことで簡単に開栓できるので、開栓操作を容易に行なうことができる。
【0020】
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記ベース部は、前記エッジ部に平行な一対の扁平面を有する扁平な形状に形成されていて、平面視において前記立設板と十字状に直交していることが好ましい。
この構成によれば、エッジ部に対して垂直な方向に力を加えることができるので、エッジ部を支点とした折れ曲がりを確実に防止することができる。
【0021】
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記ベース部は、前記栓部の側方に回り込むように形成され、前記栓部の側方で前記栓部に隣り合っており、前記エッジ部は、前記ベース部の前記栓部に隣り合った部分とも直接接続されていることが好ましい。
この構成によれば、栓部の側方を起点にネック部の切り離しを行うことができるので、プラスチックアンプルの開栓性を一層向上させることができる。
【0022】
また、立設板を有するプラスチックアンプルでは、立設板を摘む際にアンプル本体が障害とならないので、前記アンプル本体を、前記立設板の厚さ方向に左右対称な形状にすることができる。これにより、アンプル本体の薬液収容可能量の設計を容易にすることができる。
そして、本発明のプラスチックアンプルによれば、ネック部を確実に支点としてアンプル本体とヘッド部との間を折り曲げることができるので、前記栓部を、前記アンプル本体の軸方向に直交する方向に扁平なドーム形状または筒状に形成することができる。これにより、栓部の空間量を小さくして、薬液が溜まり難い構造を達成することができる。
【0023】
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記アンプル本体には、前記エッジ部の延長線上に沿って、前記アンプル本体の側面から外側へ突出した薄板状のリブが形成されていることが好ましい。
この構成によれば、アンプル本体の剛性を向上させることができ、アンプル本体の形状を維持することができる。
【0024】
また、本発明のプラスチックアンプルは、環状ポリオレフィンのみからなるプラスチック層の単層からなることが好ましい。
この構成によれば、プラスチックアンプルが、環状ポリオレフィンのみからなるプラスチック層の単層からなる環状ポリオレフィン製である。そのため、従来広く利用されているポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン製アンプルに比べて、水蒸気バリア性を向上(水蒸気透過率を減少)させることができ、ガラス製アンプルと同等の水蒸気バリア性を発現することができる。また、ガラス製アンプルは落下して地面に衝突したときに破損するおそれがあるが、本発明の環状ポリオレフィン製アンプルは、落下して地面に衝突しても破損し難い。
【0025】
さらに、環状ポリオレフィン製アンプルは、ポリオレフィン製アンプルのような可撓性のある容器ではなく、堅固な容器である。そのため、注出口からアンプル本体内部に注射針を挿入して薬液を注出する際、注射針の挿入量が大きすぎてアンプル本体の底部が注射針で突かれても、底部が注射針で貫通されることを防止することができる。
一方、本発明のように、アンプルの開栓法として、ネック部を切断部としてアンプル本体とヘッド部との間を折り切る方法が採用される場合には、欠片の飛散および開栓後の切断部の形状の安定性に注意する必要がある。例えば、ガラス製アンプルを折り切ると、アンプル本体やヘッド部の一部(欠片)が飛散して、欠片が注出口からアンプル内に入ってしまうおそれがある。また、予め設定した切断部に沿ってヘッド部を折り切ろうとしても、切断部とは異なる部分に切れ目が入って、開栓後に鋭い箇所が残りやすい。そのため、開栓後の取扱いに注意を要するので、取り扱い易いとはいえない。
【0026】
そこで、この構成によれば、プラスチックアンプルをガラス転移温度Tgが50℃〜104℃の環状ポリオレフィンのプラスチック層単層で形成することにより、折り切り開栓時の欠片の飛散を抑制できる。また、切断部として設定したネック部に沿って、ヘッド部を良好に折り切ることができる。これにより、開栓後の切断部を所望の形状に安定させることができる。
【0027】
また、本発明のプラスチックアンプルでは、JIS K 7206に準拠して測定される前記プラスチック層のビカット軟化点は、60℃〜120℃であることが好ましい。
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記アンプル本体の層厚は、400μm〜1000μmであってもよい。
アンプル本体の層厚が上記範囲であっても、優れた成形性を効果的に発現させることができる。しかもアンプル本体の厚さが上記範囲であれば、良好な水蒸気バリア性を維持しつつ、小さな力でヘッド部を折り曲げることにより、アンプル本体を簡単に開栓することができる。
【0028】
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記ネック部は、70N・m/mm以下の力で開栓可能な厚さで形成されていることが好ましい。
また、本発明のプラスチックアンプルでは、前記プラスチックアンプルにおける薬液の内容量は、1mL〜5mLと小容量であってもよい。本発明によれば、麻薬(例えば、モルヒネ等)のように1回分の使用量が少量であり、その1回分単位で保存した場合の内容量の減少割合が大きいと、薬の作用を十分に得ることが困難になる薬液に対しても好適に使用することができる。この場合、アンプル本体の薬液収容可能量は1.5mL〜7.5mLである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るプラスチックアンプルの正面図である。
【図2】図2は、図1のプラスチックアンプルの右側面図である。
【図3】図3は、図1のプラスチックアンプルの左側面図である。
【図4】図4は、図1のプラスチックアンプルの平面図である。
【図5】図5は、図1のプラスチックアンプルの底面図である。
【図6】図6は、図1〜図5のプラスチックアンプルの断面図であって、図2のA−A切断面における断面を示す。
【図7】図7(a)(b)は、図1〜図5のプラスチックアンプルの開栓操作を説明するための図であって、図7(a)は開栓前の状態を示し、図7(b)は開栓後の状態を示している。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態に係るプラスチックアンプルの正面図である。
【図9】図9は、図8のプラスチックアンプルの右側面図である。
【図10】図10は、図8のプラスチックアンプルの平面図である。
【図11】図11は、図8のプラスチックアンプルの底面図である。
【図12】図12は、図8〜図11のプラスチックアンプルの断面図であって、図8のB−B切断面における断面を示す。
【図13】図13(a)(b)は、図8〜図11のプラスチックアンプルの開栓操作を説明するための図であって、図13(a)は開栓前の状態を示し、図13(b)は開栓後の状態を示している。
【図14】図14は、図1〜図5のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【図15】図15は、図1〜図5のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【図16】図16は、図1〜図5のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【図17】図17は、図1〜図5のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【図18】図18は、図1〜図5のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【図19】図19は、図1〜図5のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【図20】図20は、図1〜図5のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【図21】図21は、図8〜図11のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【図22】図22は、図8〜図11のプラスチックアンプルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラスチックアンプル1の正面図である。図2は、図1のプラスチックアンプル1の右側面図である。図3は、図1のプラスチックアンプル1の左側面図である。図4は、図1のプラスチックアンプル1の平面図である。図5は、図1のプラスチックアンプル1の底面図である。図6は、図1〜図5のプラスチックアンプル1の断面図であって、図2のA−A切断面における断面を示す。なお、図1のプラスチックアンプル1について、背面図は正面図(図1)と同一に現れる。
【0031】
プラスチックアンプル1は、プラスチック層2の単層からなり(図2参照)、アンプル本体3と、ネック部4を介してアンプル本体3に接続された栓部5と、エッジ部6を介して栓部5に接続されたヘッド部7とを一体的に含む。
アンプル本体3は、周壁および楕円形の底壁を有するボトル状(楕円柱状)に形成されていて、その頂部に薬液を注出するための注出口8が形成されている。アンプル本体3の底壁を楕円形に形成することにより、周壁が地面と接するようにプラスチックアンプル1を寝かせたときに、プラスチックアンプル1を転がりにくくすることができる。このような楕円柱状のアンプル本体3は、後述するブローフィルシール成形を採用すれば、樹脂を挟む割り型の形状を変えることにより簡単に形成することができる。
【0032】
そして、この実施形態では、アンプル本体3の周壁および底壁によって区画される円柱状の中空部分が、薬液を収容するための薬液収容室9をなしている。
薬液収容室9に収容される薬液の内容量は、例えば、1mL〜5mLである。また、収容される薬液の種類としては、例えば、注射用水(とりわけ、モルヒネ等の麻薬)、生理食塩水などが挙げられる。
【0033】
また、アンプル本体3の周壁および底壁の厚さT(アンプル本体3におけるプラスチック層2の層厚)は、例えば、400μm〜1000μmである(図2参照)。
アンプル本体3の周壁には、周壁(側面)から外側へ突出した薄板状のリブ10が直線状に設けられている。また、アンプル本体3の底壁には、底壁(底面)から外側へ突出したリブ11が設けられている。周壁のリブ10と底壁のリブ11とは、互いに連続している。
【0034】
これら互いに連続する2つのリブ10,11は、プラスチックアンプル1の製造方法に起因して形成されるものである。
ネック部4は、アンプル本体3の注出口8に沿って全周にわたって円環状に形成され、厚さを薄くして切り離し容易とされている。具体的には、ネック部4は、アンプル本体3の層厚Tよりも薄く形成されている部分であり、例えば、70N・m/mm以下(好ましくは、50N・m/mm以下)の力で開栓できる程度の厚さTで形成されている(図2参照)。具体的には、アンプル本体3におけるプラスチック層2の層厚Tの10〜50%である。
【0035】
栓部5は、頂部が尖った状態で閉塞され、底部が開放されていて、側部が注出口8よりも外側にはみ出すように膨らんだドーム状または筒状に形成されており、その下端においてネック部4を介してアンプル本体3に接続されている。これにより、底部が開放された栓部5は、注出口8を介してアンプル本体3(薬液収容室9)に連通可能に接続されている。
【0036】
また、栓部5は、アンプル本体3の軸方向に直交する方向(つまり水平方向)に扁平であることが好ましい。これにより、栓部5の空間12の量(体積)を小さくして、薬液が溜まり難い構造を達成することができる。
エッジ部6は、栓部5の頂部(頂面13)から上方へ突出した薄板状をなし、栓部5の頂面13の径方向両端部に跨って直線状に設けられている。エッジ部6は、栓部5の尖った頂面13に設けられているため、その下端の高さ位置は不揃いであるが、その上端の高さ位置は一定の位置で揃っている。また、エッジ部6は、リブ10,11の延長線上に沿って形成されている。つまり、後述するブローフィルシール成形において、パリソンを割り型で挟んだときに、その割り型の合わせ面に沿ってエッジ部6およびリブ10,11が同時に形成される。
【0037】
ヘッド部7は、エッジ部6の全長にわたってエッジ部6に接続されたベース部14と、ベース部14からエッジ部6に沿ってアンプル本体3の軸方向に垂直な方向に延出していて、ベース部14により水平方向に片持ち支持されたアーム板15とを含む。
ベース部14およびアーム板15は、いずれもアンプル本体3の軸方向に垂直な方向に沿う上側の扁平面16,18および下側の扁平面17,19を有する扁平な四角板状に形成されており、それらの上側の扁平面16,18が同一平面で連続している。また、ベース部14およびアーム板15の内部は、中空で互いに連通している。また、ヘッド部7の厚さT(ヘッド部7におけるプラスチック層2の層厚)は、例えば、アンプル本体3の厚さTと同じ(400μm〜1000μm)である(図2参照)。
【0038】
また、ベース部14およびアーム板15は、エッジ部6を中心にその一方側および他方側が同じ幅となる左右対称に形成されている。ベース部14およびアーム板15の幅は、ベース部14が栓部5の頂面13の径よりも幅狭に形成され、アーム板15が栓部5の頂面13の径よりも幅広に形成されており、ベース部14の側面とアーム板15の側面との間は、それら側面に対して傾斜する段差面20を有する中間部21を介して連続している。
【0039】
ベース部14とアーム板15の厚さの関係については、アーム板15は、その下側の扁平面19が栓部5の下端と同じ高さ位置になるように、ベース部14よりも厚く形成されていて、栓部5の側方で栓部5に隣り合っている。そして、その栓部5の側方位置までエッジ部6が形成されており、アーム板15の栓部5に隣り合った部分は、エッジ部6と直接接続されている、つまり、エッジ部6は、栓部5の頂面13からアーム板15側の側面に回り込む鉤形(L形)に形成されている。
【0040】
また、ベース部14におけるアーム板15とは反対側端部22は、栓部5の端部よりも外側に突出しないように当該端部と面一に揃うように形成されている。
また、アンプル本体3には、アーム板15の直下に位置する部位が反対側の部位に比べて、アンプル本体3の側面が一段低くされた(凹んだ)低段面23が形成されている。これにより、アーム板15の直下に一定の空間が確保されるので、アーム板15へ指を引っ掛け易くすることができる。
【0041】
そして、このプラスチックアンプル1は、ヘッド部7のアーム板15を指で摘み、図7(a)に示すように、アーム板15を引き上げることにより、てこの原理を利用してネック部4を支点にアンプル本体3とヘッド部7との間を折り曲げて、ネック部4を折り切ることによって、開栓することができる。開栓によりアンプル本体3の注出口8が開放され、その注出口8にシリンジのノズル(図示せず)を挿入し、アンプル本体3内に収容されている薬液を採取できる状態となる。
【0042】
上記したアンプル本体3、栓部5およびヘッド部7を一体的に有するプラスチックアンプル1は、例えば、ブローフィルシール(BFS:Blow Fill Seal)法によって製造することができる。
例えば、まず、プラスチックアンプル1の材料である環状ポリオレフィンを押出成形することにより、パリソンを作製する。
【0043】
次に、得られたパリソンを割り型で挟み、アンプル本体3の各部を形成し(ブロー工程)、アンプル本体3の内部に薬液を充填する(充填工程)。
次に、割り型で挟んで、栓部5およびヘッド部7の各部を形成し、アンプル本体3の注出口8を密閉する(シール工程)ことにより、薬液が収容されたプラスチックアンプル1が得られる。このようにして得られるプラスチックアンプル1は、日局プラスチック製医薬品容器試験法透明性試験第1法で測定された透明性が、80%以上である。
【0044】
なお、リブ10,11およびエッジ部6は、パリソンを割り型で挟んだときに、その割型の合わせ面に沿って形成される。
次に、プラスチックアンプル1を構成するプラスチック層2について説明する。なお、次に説明するプラスチックは、あくまでもプラスチックアンプル1の材料の一例であって、その他のプラスチックを利用することもできる。例えば、プラスチックアンプル1は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、環状ポリオレフィンを用いて形成することができる。これらのうち、環状ポリオレフィンを用いれば、ポリオレフィンを用いる場合に比べて水蒸気バリア性を向上させることができ、ガラス製アンプルと同等の水蒸気バリア性を発現することができる。 プラスチックアンプル1の材料として環状ポリオレフィンを用いる場合、プラスチック層2は、環状ポリオレフィンのみからなることが好ましい。「環状ポリオレフィンのみ」とは、環状ポリオレフィンが単独で使用されることを意味する。
【0045】
プラスチック層2の形成に用いられる環状ポリオレフィンとしては、例えば、エチレンとジシクロペンタジエン類との共重合体、エチレンとノルボルネン系化合物との共重合体、シクロペンタジエン誘導体の開環重合体、複数のシクロペンタジエン誘導体の開環共重合体、これらの水素添加物などが挙げられる。
これらの環状ポリオレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、環状ポリオレフィンは、上記のなかでも、好ましくは、エチレンとノルボルネン系化合物との共重合体の水素添加物、1種以上のシクロペンタジエン誘導体の開環(共)重合体の水素添加物が挙げられる。
【0046】
上記環状ポリオレフィンの具体例としては、例えば、下記一般式(1)で示される繰返し単位と、下記一般式(1´)で示される繰返し単位とを有するコポリマー、例えば、下記一般式(2)で示される繰返し単位を有するポリマーなどが挙げられる。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
(式(1)、式(1´)および式(2)中、R、R1´、R、R2´、RおよびRは、同一または異なって、水素、炭化水素残基または極性基を示す。RとR、R1´とR2´、RとRは、それぞれ、互いに結合して環を形成していてもよい。m、m´、xおよびzは、同一または異なって、1以上の整数を示し、n、n´およびyは、同一または異なって、0または1以上の整数である。)
炭化水素残基としては、例えば、アルキル基が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0050】
極性基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など。)、エステル、ニトリル、ピリジルなどが挙げられる。
一般式(1)および(1´)で示される繰返し単位を有するポリマーは、1種または2種以上の単量体を、公知の開環重合方法によって重合させ、または、こうして得られる開環重合体を、常法に従って水素添加したものである。
【0051】
このようなポリマーは、例えば、日本ゼオン(株)製の商品名「ゼオノア(登録商標)」、「ゼオネックス(登録商標)」、日本合成ゴム(株)製の商品名「ARTON(登録商標)」などとして、入手可能である。
一般式(2)で示される繰返し単位を有するポリマーは、単量体としての1種または2種以上のノルボルネン系モノマーとエチレンとを、公知の方法によって付加共重合させたもの、および/または、これを常法に従って水素添加したものである。
【0052】
このようなポリマーは、例えば、三井化学(株)製の商品名「アペル(登録商標)」、ティコナGmbH製の商品名「トパス(登録商標)」などとして、入手可能である。
上記一般式(1)、(1´)および(2)で表される繰返し単位を有するポリマーのうち、その水素添加物は、いずれも飽和ポリマーであることから、ガス遮蔽性や水分遮蔽性に加えて、耐熱性や透明性、さらには安定性の点で優れている。特に、水分遮断性を有することにより、麻薬(例えば、モルヒネ等)のように1回分の使用量が少量であり、薬の作用を十分に得ることが困難になる薬液に対して好適に使用することができる。
【0053】
また、プラスチックアンプル1では、アンプル本体3がネック部4の折り切りにより開栓されるので、上記一般式(1)、(1´)および(2)で表される繰返し単位を有するポリマーのうち、好ましくは、(2)で表される繰返し単位を有するポリマーが用いられる。
以上のように、このプラスチックアンプル1によれば、ヘッド部7のアーム板15が、薄板状のエッジ部6に対して垂直な方向に扁平な形状を有しているため、アーム板15を摘んだ状態からエッジ部6に沿って簡単に力を加えることができる。つまり、図7(a)に示すように、エッジ部6を支点に折れ曲がる方向(図3参照)と垂直な方向に力を加えることができる。そのため、栓部5が扁平でその空間12の量が非常に小さく、ネック部4とエッジ部6とが近接していても、プラスチックアンプル1を開栓する際には、ネック部4を確実に支点としてアンプル本体3とヘッド部7との間を折り曲げることができる。さらに、栓部5の空間12の量(体積)を適切な大きさにすることにより、折り切り開栓時の薬液の飛散も防止することができる。
【0054】
また、このような効果を、アンプル本体3と栓部5とが連通可能に接続された簡易な構造で達成することができるので、アンプル本体3と栓部5との間を封鎖する部材を設けなくて済む。そのため、プラスチックアンプル1の製造工程の工程数の増加や工程の複雑化を防止することもできる。
また、エッジ部6とアーム板15とが、エッジ部6の全長にわたって接続されたベース部14により連結されているので、アーム板15を引き上げたときに発生する力を、ベース部14を介してエッジ部6全体に均等に加えることができる。そして、その均等に加わった力を栓部5に伝えることができるので、プラスチックアンプル1の開栓性を向上させることができる。しかも、アーム板15を引き上げることで、てこの原理を利用して開栓できるので、開栓操作を容易に行なうことができる。
【0055】
また、ベース部14の上側の扁平面16とアーム板15の上側の扁平面18が同一平面で連続していて、ベース部14とアーム板15とが水平方向に直線上に並ぶので、アーム板15の引き上げによる力をベース部14に直接伝えることができる。そのため、アーム板15からベース部14に効率よく力を伝えることができる。
また、ベース部14およびアーム板15の幅については、ベース部14を幅狭に形成することによりエッジ部6を介して栓部5に伝わる力の分散を防止でき、一方、アーム板15を幅広にすることにより、アーム板15を摘み易くして力を加え易くすることができる。
【0056】
さらに、エッジ部6が鉤形に形成されていて、アーム板15を栓部5の側方において、ベース部14を介さずエッジ部6に直接接続されているので、アーム板15からエッジ部6に力を直接伝えることができる。これにより、栓部5の側方を起点にネック部4の切り離しを行うことができるので、プラスチックアンプル1の開栓性を一層向上させることができる。
【0057】
さらに、プラスチックアンプル1は、可撓性のある容器ではなく、堅固な容器である。そのため、注出口8からアンプル本体3内部にシリンジの注射針を挿入して薬液を注出する際、注射針の挿入量が大きすぎてアンプル本体3の底壁が注射針で突かれても、底壁が注射針で貫通されることを防止することができる。
一方、このプラスチックアンプル1のように、アンプルの開栓法として、ネック部4を切断部としてアンプル本体3とヘッド部7との間を折り切る方法が採用される場合には、欠片の飛散および開栓後の切断部の形状の安定性に注意する必要がある。
【0058】
例えば、プラスチックアンプル1と同形状のガラス製アンプルを折り切ると、アンプル本体3やヘッド部7の一部(欠片)が飛散して、欠片が注出口8からアンプル本体3内に入ってしまうおそれがある。また、予め切断部として設定したネック部4に沿ってヘッド部7を折り切ろうとしても、ネック部4とは異なる部分(例えば、ヘッド部7やアンプル本体3)に切れ目が入って、開栓後に、元々ヘッド部7やアンプル本体3であった部分が鋭い切断部(「ひげ」と呼ばれる細かい樹脂片)として残りやすい。そのため、開栓後の取扱いに注意を要するので、取り扱い易いとはいえない。
【0059】
そこで、本実施形態では、プラスチックアンプル1なので、図7(b)に示すように、折り切り開栓時の欠片の飛散を抑制することができる。また、予め切断部として設定したネック部4に沿って、ヘッド部7を良好に折り切ることができる。これにより、開栓後には、アンプル本体3の注出口8の周囲に切断部24が残るが、その切断部24はネック部4に沿ってヘッド部7が折り切られた結果として残るものであるので、ほぼフラットに安定することとなる。
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態に係るプラスチックアンプル31の正面図である。図9は、図8のプラスチックアンプル31の右側面図である。図10は、図8のプラスチックアンプル31の平面図である。図11は、図8のプラスチックアンプル31の底面図である。図12は、図8〜図11のプラスチックアンプル31の断面図であって、図8のB−B切断面における断面を示す。なお、図8のプラスチックアンプル31について、背面図は正面図(図8)と同一に現れ、左側面図は右側面図(図9)と同一に現れる。
【0060】
プラスチックアンプル31は、プラスチック層32の単層からなり(図9参照)、アンプル本体33と、ネック部34を介してアンプル本体33に接続された栓部35と、エッジ部36を介して栓部35に接続されたヘッド部37とを一体的に含む。
アンプル本体33は、周壁および楕円形の底壁を有するボトル状(楕円柱状)に形成されていて、その頂部に薬液を注出するための注出口38が形成されている。アンプル本体33の底壁を楕円形に形成することによる効果は、前述のプラスチックアンプル31と同様である。また、アンプル本体33の周壁および底壁によって区画される円柱状の中空部分が、薬液を収容するための薬液収容室39をなしている。
【0061】
薬液収容室39に収容される薬液の内容量は、例えば、1mL〜5mLである。また、収容される薬液の種類としては、例えば、注射用水(とりわけ、モルヒネ等の麻薬)、生理食塩水などが挙げられる。
また、アンプル本体33の周壁および底壁の厚さT(アンプル本体33におけるプラスチック層32の層厚)は、例えば、400μm〜1000μmである(図9参照)。
【0062】
アンプル本体33の周壁には、周壁(側面)から外側へ突出した薄板状のリブ40が直線状に設けられている。また、アンプル本体33の底壁には、底壁(底面)から外側へ突出したリブ41が設けられている。周壁のリブ40と底壁のリブ41とは、互いに連続している。
これら互いに連続する2つのリブ40,41は、プラスチックアンプル31の製造方法に起因して形成されるものである。
【0063】
ネック部34は、アンプル本体33の注出口38に沿って全周にわたって円環状に形成され、厚さを薄くして切り離し容易とされている。具体的には、ネック部34は、アンプル本体33の層厚Tよりも薄く形成されている部分であり、例えば、70N・m/mm以下(好ましくは、50N・m/mm以下)の力で開栓できる程度の厚さTで形成されている(図9参照)。具体的には、アンプル本体33におけるプラスチック層32の層厚Tの10〜50%である。
【0064】
栓部35は、頂部が尖った状態で閉塞され、底部が開放されていて、側部が注出口38よりも外側にはみ出すように膨らんだドーム状または筒状に形成されており、その下端においてネック部34を介してアンプル本体33に接続されている。これにより、底部が開放された栓部35は、注出口38を介してアンプル本体33(薬液収容室39)に連通可能に接続されている。
【0065】
また、栓部35は、アンプル本体33の軸方向に直交する方向(つまり水平方向)に扁平であることが好ましい。これにより、栓部35の空間42の量(体積)を小さくして、薬液が溜まり難い構造を達成することができる。
エッジ部36は、栓部35の頂部(頂面43)から上方へ突出した薄板状をなし、栓部35の径方向両端部に跨って栓部35の側面に回り込むように直線状に設けられている。エッジ部36は、栓部35の尖った頂面43の形状を維持するように、その上端が尖っている。また、エッジ部36は、リブ40,41の延長線上に沿って形成されている。つまり、ブローフィルシール成形において、パリソンを割り型で挟んだときに、その割り型の合わせ面に沿ってエッジ部36およびリブ40,41が同時に形成される。
【0066】
ヘッド部37は、エッジ部36の全長にわたってエッジ部36に接続されたベース部44と、ベース部44からアンプル本体33の軸方向に直立していて、ベース部44により下方から支持された立設板45とを含む。
ベース部44は、エッジ部36に平行な一対の扁平面(前側の扁平面46および後側の扁平面47)を有する扁平な三角板状に形成されており、立設板45は、エッジ部36に垂直な一対の扁平面(右側の扁平面48および左側の扁平面49)を有する扁平な四角板状で形成されている。そして、立設板45は、ベース部44の頂部において一体的にベース部44に接続され、図10に示すように、平面視においてベース部44と十字状に直交している。
【0067】
また、ベース部44および立設板45の内部は、中空で互いに連通している。また、ヘッド部37の厚さT(ヘッド部37におけるプラスチック層32の層厚)は、例えば、アンプル本体33の厚さTと同じ(400μm〜1000μm)である(図9参照)。
また、ベース部44は、エッジ部36を中心にその一方側および他方側が同じ厚さとなる左右対称に形成されている。一方、立設板45は、エッジ部36を中心にその一方側および他方側が同じ幅となる左右対称に形成されている。
【0068】
また、ベース部44は、その底部両端部が栓部35の側方に回り込むようにアンプル本体33側に下がった垂下がり部50を有しており、当該一対の垂下がり部50が栓部35の側方で栓部35に隣り合っている。そして、一対の垂下がり部50は、エッジ部36の栓部35側方に形成された部分と直接接続されている、
また、アンプル本体33は、立設板45の厚さ方向に左右対称な形状を有している。これにより、アンプル本体33の薬液収容可能量の設計を容易にすることができる。
【0069】
そして、このプラスチックアンプル31は、ヘッド部37の立設板45を指で摘み、図13(a)に示すように、立設板45を倒すことにより、ネック部34を支点にアンプル本体33とヘッド部37との間を折り曲げて、ネック部34を折り切ることによって、開栓することができる。開栓によりアンプル本体33の注出口38が開放され、その注出口38にシリンジのノズル(図示せず)を挿入し、アンプル本体33内に収容されている薬液を採取できる状態となる。
【0070】
なお、プラスチック層32の説明は、前述のプラスチック層32と重複するので、省略する。
以上のように、このプラスチックアンプル31によれば、ヘッド部37の立設板45が、薄板状のエッジ部36に対して垂直な方向に扁平な形状を有しているため、立設板45を摘んだ状態からエッジ部36に沿って簡単に力を加えることができる。つまり、図13(a)に示すように、エッジ部36を支点に折れ曲がる方向(図9参照)と垂直な方向に力を加えることができる。そのため、栓部35が扁平でその空間42の量が非常に小さく、ネック部34とエッジ部36とが近接していても、プラスチックアンプル31を開栓する際には、ネック部34を確実に支点としてアンプル本体33とヘッド部37との間を折り曲げることができる。さらに、栓部35の空間42の量(体積)を適切な大きさにすることにより、折り切り開栓時の薬液の飛散も防止することができる。
【0071】
また、このような効果を、アンプル本体33と栓部35とが連通可能に接続された簡易な構造で達成することができるので、アンプル本体33と栓部35との間を封鎖する部材を設けなくて済む。そのため、プラスチックアンプル31の製造工程の工程数の増加や工程の複雑化を防止することもできる。
また、立設板45が、エッジ部36の全長にわたって接続されたベース部44を介して、十字状にエッジ部36に連結されているので、立設板45を倒したときに発生する力を、ベース部44を介してエッジ部36全体に均等に加えることができる。そして、その均等に加わった力を栓部35に伝えることができるので、プラスチックアンプル31の開栓性を向上させることができる。しかも、立設板45を倒すことで簡単に開栓できるので、開栓操作を容易に行なうことができる。
【0072】
さらに、エッジ部36が栓部35の側面に回り込むように形成されていて、ベース部44の垂下がり部50が栓部35の側方において直接接続されているので、栓部35の側方を起点にネック部34の切り離しを行うことができるので、プラスチックアンプル31の開栓性を一層向上させることができる。
その他、プラスチックアンプル31であること(アンプルがプラスチック製であること)による効果は、前述のプラスチックアンプル31と同様である。
【0073】
すなわち、図13(b)に示すように、折り切り開栓時の欠片の飛散を抑制することができる。また、予め切断部として設定したネック部34に沿って、ヘッド部37を良好に折り切ることができる。これにより、開栓後には、アンプル本体33の注出口38の周囲に切断部51が残るが、その切断部51はネック部34に沿ってヘッド部37が折り切られた結果として残るものであるので、ほぼフラットに安定することとなる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
例えば、図1〜図5のプラスチックアンプル1は、図14〜図20に示す形状に変形されていてもよい。
【0075】
すなわち、プラスチックアンプル1は、図14に示すように、ベース部14の上側の扁平面16とアーム板15の上側の扁平面18が同一平面で連続していなくてもよい。この図14では、ベース部14はアーム板15側の端部にアンプル本体3の軸方向に立設された支持板25をさらに含み、アーム板15は、この支持板25により水平方向に片持ち支持されている。
【0076】
また、図15に示すように、ベース部14およびアーム板15が同一幅で形成され、その幅が栓部5の頂面13の径よりも狭くなっていてもよい。
また、図16に示すように、ベース部14およびアーム板15が同じ厚さで形成されていることにより、ネック部4が全周にわたって露出してもよいし、図17に示すように、ベース部14におけるアーム板15とは反対側端部22が、栓部5の端部よりも外側に突出していてもよい。
【0077】
また、図18に示すように、アンプル本体3のアーム板15の直下に部分に低段面23が形成されていなくてもよい。さらに、アンプル本体3は、図19に示す長いタイプであってもよいし、図20に示す短いタイプであってもよい。
また、図8〜図11のプラスチックアンプル31は、例えば、図21〜図22に示す形状に変形されていてもよい。
【0078】
すなわち、プラスチックアンプル31は、図21に示すように、ヘッド部37がベース部44を有しておらず、立設板45がエッジ部36に直接接続されていてもよい。また、図22に示すように、ベース部44が垂下がり部50を有していなくてもよい。
本発明のプラスチックアンプルは、例えば、医療用途において、幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 プラスチックアンプル
2 プラスチック層
3 アンプル本体
4 ネック部
5 栓部
6 エッジ部
7 ヘッド部
8 注出口
9 薬液収容室
10 リブ
11 リブ
12 (栓部の)空間
13 (栓部の)頂面
14 ベース部
15 アーム板
16 (ベース部の)上側の扁平面
17 (ベース部の)下側の扁平面
18 (アーム板の)上側の扁平面
19 (アーム板の)下側の扁平面
20 段差面
21 中間部
22 (ベース部の)端部
23 (アンプル本体の)低段面
24 切断部
25 支持板
31 プラスチックアンプル
32 プラスチック層
33 アンプル本体
34 ネック部
35 栓部
36 エッジ部
37 ヘッド部
38 注出口
39 薬液収容室
40 リブ
41 リブ
42 (栓部の)空間
43 (栓部の)頂面
44 ベース部
45 立設板
46 (ベース部の)前側の扁平面
47 (ベース部の)後側の扁平面
48 (立設板の)右側の扁平面
49 (立設板の)左側の扁平面
50 (ベース部の)垂下がり部
51 切断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部および底部を有するボトル状に形成されていて、前記頂部に薬液を注出するための注出口が形成されたアンプル本体と、
前記注出口に沿って形成され、厚さを薄くして切り離し容易としたネック部を介して前記アンプル本体に連通可能に接続され、前記注出口を閉塞する栓部と、
前記栓部の頂面から外側へ突出した薄板状のエッジ部を介して前記栓部に接続されていて、前記エッジ部に対して交差する形状の摘み部を有するヘッド部とを一体的に含み、
前記アンプル本体は、前記アンプル本体と前記ヘッド部との間を折り曲げて、前記ネック部を折り切ることにより開栓される、プラスチックアンプル。
【請求項2】
前記エッジ部は、前記栓部の前記頂面の径方向両端部に跨って形成されており、
前記ヘッド部は、当該エッジ部の全長にわたって前記エッジ部と前記摘み部とを連結するベース部を含む、請求項1に記載のプラスチックアンプル。
【請求項3】
前記摘み部は、前記エッジ部に対して交差する方向に扁平な形状に形成されている、請求項1または2に記載のプラスチックアンプル。
【請求項4】
前記アンプル本体は、前記摘み部を指で摘み、前記ネック部を支点に前記アンプル本体と前記ヘッド部との間を折り曲げて、前記ネック部を折り切ることにより開栓される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項5】
前記摘み部は、前記ベース部から前記エッジ部に沿って前記アンプル本体の軸方向に垂直な方向に延出していて、当該垂直方向に沿う上側の扁平面および下側の扁平面を有する扁平な形状で前記ベース部により水平方向に片持ち支持されたアーム板を含み、
前記アンプル本体は、前記アーム板を指で摘み、前記アーム板を引き上げることにより開栓される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項6】
前記ベース部は、前記アーム板の前記上側の扁平面と同一平面で連続する上側の扁平面およびその反対側の下側の扁平面を有する扁平な形状に形成されている、請求項5に記載のプラスチックアンプル。
【請求項7】
前記ベース部は、前記栓部の前記頂面の径よりも幅狭に形成され、
前記アーム板は、前記栓部の前記頂面の径よりも幅広に形成されている、請求項6に記載のプラスチックアンプル。
【請求項8】
前記アーム板は、その前記下側の扁平面が前記栓部の下端と同じ高さ位置になるように、前記ベース部よりも厚く形成されていて、前記栓部の側方で前記栓部に隣り合っており、
前記エッジ部は、前記アーム板の前記栓部に隣り合った部分とも直接接続されている、請求項6または7に記載のプラスチックアンプル。
【請求項9】
前記ベース部における前記アーム板とは反対側端部は、前記栓部の端部よりも外側に突出しないように当該端部と面一に揃うように形成されている、請求項5〜8のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項10】
前記アンプル本体には、前記アーム板の直下に位置する部位が反対側の部位に比べて、前記アンプル本体の側面が一段低くされた低段面が形成されている、請求項5〜9のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項11】
前記摘み部は、前記ベース部から前記アンプル本体の軸方向に直立していて、前記エッジ部に垂直な一対の扁平面を有する扁平な形状で前記ベース部により下方から支持された立設板を含み、
前記アンプル本体は、前記立設板を指で摘み、前記立設板を倒すことにより開栓される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項12】
前記ベース部は、前記エッジ部に平行な一対の扁平面を有する扁平な形状に形成されていて、平面視において前記立設板と十字状に直交している、請求項11に記載のプラスチックアンプル。
【請求項13】
前記ベース部は、前記栓部の側方に回り込むように形成され、前記栓部の側方で前記栓部に隣り合っており、
前記エッジ部は、前記ベース部の前記栓部に隣り合った部分とも直接接続されている、請求項11または12に記載のプラスチックアンプル。
【請求項14】
前記アンプル本体は、前記立設板の厚さ方向に左右対称な形状を有している、請求項11〜14のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項15】
前記栓部は、前記アンプル本体の軸方向に直交する方向に扁平なドーム形状または筒状に形成されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項16】
前記アンプル本体には、前記エッジ部の延長線上に沿って、前記アンプル本体の側面から外側へ突出した薄板状のリブが形成されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項17】
前記プラスチックアンプルは、環状ポリオレフィンのみからなるプラスチック層の単層からなる、請求項1〜16のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項18】
前記アンプル本体の層厚は、500μm〜1200μmである、請求項1〜17のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項19】
前記ネック部は、70N・m/mm以下の力で開栓可能な厚さで形成されている、請求項1〜18のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。
【請求項20】
前記プラスチックアンプルにおける薬液の内容量は、1mL〜5mLであり、前記アンプル本体の薬液収容可能量が1.5mL〜7.5mLである、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプラスチックアンプル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−95436(P2013−95436A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237703(P2011−237703)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】