説明

プラスチックシート小型溶着器

【課題】蛇行がないプラスチックシート小型溶着器を提供する。
【解決手段】超音波発信器と振動子による超音波振動を伝達するホーンと、ホーンの下側に設けられ、プラスチックシートの溶着部の下側を支えて回転する歯車状のローラーアンビルと、ホーンがプラスチックシートを押さえ込むように付勢するバネと、ローラーアンビルの前方に設けられ、複数の従動ローラーとプラスチックシートを挟んで進行方向に送り出す送りローラーと、ローラーアンビルと送りローラーの中間位置に、進行方向に沿って一列に並んで設けられ、プラスチックシートの上面を押さえる複数個の蛇行防止ローラーと、プラスチックシートの一側に当接して、プラスチックシートの挿入位置を決める位置決め部材と、排出ローラーと、ローラーアンビルと送りローラーと排出ローラーを駆動する速度制御付き電動機と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックシート小型溶着器に係り、より詳しくは、折り重ねたプラスチックシートの縁部を溶着してクリアファイルなどが製作できる小規模のプラスチックシート小型溶着器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリアシートなどの大量生産用として大型の超音波接合装置があったが、大型の超音波接合装置は、大量生産用の素材供給部、大型の超音波発信装置を備えており、少ロットのプラスチックシートの処理には操業面、製造コスト面で不向きであった。また、大型の超音波接合装置では、周波数が20kHzと低く、融点の高いPET等の樹脂は接着が困難であり、接着できたとしても接着部の外観が劣るという問題があった。従って、PET樹脂を含む高融点樹脂の処理が可能であるとともに、少ロットのクリアシートの作成ができ、クリアシートの溶着部に会社名や、宣伝用の文字や画像の挿入ができて事務所単位でも処理が可能なプラスチックシート溶着用小型溶着器の要請が強かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−71789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、蛇行がなく使い勝手のよいプラスチックシート小型溶着器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるプラスチックシート小型溶着器は、超音波発信器と振動子による超音波振動を伝達するホーンと、前記ホーンの下側に設けられ、プラスチックシートの溶着部の下側を支えて回転する歯車状のローラーアンビルと、前記ホーンがプラスチックシートを押さえ込むように付勢するバネと、前記ローラーアンビルの前方に設けられ、複数の従動ローラーとプラスチックシートを挟んで進行方向に送り出す送りローラーと、前記ローラーアンビルと前記送りローラーの中間位置に、プラスチックシートの進行方向に沿って一列に並んで設けられ、プラスチックシートの上面を押さえる複数個の蛇行防止ローラーと、前記プラスチックシートの一側に当接して、前記プラスチックシートの挿入位置を決める位置決め部材と、前記送りローラーを通過したプラスチックシートをさらに送り出す排出ローラーと、前記ローラーアンビルと前記送りローラーと前記排出ローラーを駆動する速度制御付き電動機と、が備えられることを特徴とする。
【0006】
前記ローラーアンビルは、歯の外周面にプラスチックシートの溶着部に転写される文字、模様、画像が形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記超音波発信器は、周波数が30〜50kHzであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプラスチックシート小型溶着器によれば、ローラーアンビルと送りローラーの中間の位置に、プラスチックシートの進行方向に沿って一列に並び、プラスチックシートの上面を押さえる複数の蛇行防止ローラーを設けたので、プラスチックシートが垂れ下がっても正面側(前方側)に逃げにくくなり、溶着部が湾曲してしまうことがなく、まっすぐに溶着ができる。また、バネでホーンが、プラスチックシートを押さえ込むようにしたので、はがれにくい確実な溶着ができる。従動ロールを2個設けたので、送りロールとプラスチックシートの接触面積を大きくでき、プラスチックシートのスリップが生じないようにできる。位置決め部材を設けたので、プラスチックシートの一側に当接する簡単な操作で、プラスチックシートの挿入位置を決めることができる。排出ローラーによりプラスチックシートが出口側に十分に送り出されるから、取り出しやすい。
【0009】
ローラーアンビルの歯の外周面にプラスチックシートの溶着部に転写される文字、模様、画像を形成したので、溶着部に自社製品のロゴなどを刻印したクリアファイルが製作できる。
【0010】
超音波発信器の周波数を30〜50kHzとしたので、PETなど融点が高いプラスチックシートであっても良好に溶着できる。樹脂の融点は、例をあげればPPが170°、PEが130°、PETが260°である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるプラスチックシート小型溶着器の主要部概略図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明のプラスチックシート小型溶着器の斜視図である。
【図4】本発明のプラスチックシート小型溶着器の側面図である。
【図5】本発明のプラスチックシート小型溶着器の正面図である。
【図6】本発明のプラスチックシート小型溶着器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明のプラスチックシート小型溶着器について説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明によるプラスチックシート小型溶着器の主要部概略図である。図1に示すように、プラスチックシート小型溶着器1は、超音波発信器2と、振動子8と、ホーン9と、ホーン9を押し付けるバネ10と、ホーン9の下側にあって、プラスチックシート6の溶着部の下側を支えて回転するローラーアンビル4と、ローラーアンビル4の前方に設けられ、複数の従動ローラー15と合わせてプラスチックシートを挟んで進行方向に送り出す送りローラー5と、ローラーアンビル4と送りローラー5の中間の位置に、プラスチックシート6の進行方向に沿って一列に並んで設けられ、プラスチックシート6の上面を押さえる複数個の蛇行防止ローラー17と、プラスチックシート6の溶着位置を決める位置決め部材7と、を含んで構成される。ブースター3は、振動子8とホーン9を連結する振幅変換部品である。バネ10の付勢力によって、ホーン9がプラスチックシート6を押さえ込む。ホーン9とローラーアンビル4に挟まれた位置でプラスチックシート6が超音波溶着される。
【0014】
ローラーアンビル4は、外周部に歯が形成された歯車状をしており、外周部の歯の深さや個数を選定することで溶着の円滑化を計っている。また、ローラーアンビル4の歯の外周部に会社名や、宣伝用の文字や画像を刻印することでクリアファイル6aのプラスチックシート6に会社名や、宣伝用の文字や画像を挿入することが出来る。ローラーアンビル4と軸を共用して、プラスチックシート6を進行方向に送る送りローラー5が備えられている。送りローラー5はゴム又はシリコーン製である。送りローラー5に対向して設けられる、従動ローラー15は、プラスチックシート6を送りローラー5と上下に挟み込んで移動させる。従動ローラー15は2個備えたので、1個の場合に比較して、プラスチックシート6と送りローラー5との接触面積を大きくできる。そのため、プラスチックシート6のスリップを防止できる。
【0015】
クリアファイル6aの溶着部は、クリアファイル6aの奥側端に形成される。位置決め部材7は、プラスチックシート6の端面に当接して、プラスチックシート6の端面とホーン9との間隔を一定に保つ。ローラーアンビル4は、速度制御付き電動機13で駆動される。駆動軸上には送りローラー5も装着されている。送りローラー5とローラーアンビル4は、同じ回転速度で駆動される。
【0016】
プラスチックシート6は、送りローラー5によって移動するが、送りローラー5と従動ローラー15で押さえているだけでは、プラスチックシート6が蛇行しやすく、クリアファイル6aの1側端と溶着部の間隔が変化して溶着ラインが波状になる。そこで、ローラーアンビル4と送りローラー5の中間位置にあって、プラスチックシート6の上面を押さえてプラスチックシート6の蛇行を防止する蛇行防止ローラー17を設置した。蛇行防止ローラー17は、進行方向に沿って複数個が一列に並んで設けられる。蛇行防止ローラー17の数は樹脂の種類、厚さによって最適な個数が異なるが、進行方向に4〜7個設置すると蛇行がない良好な結果が得られた。
【0017】
図2は、図1のA−A断面を示すものである。ローラーアンビル4と送りローラー5の間に7個の蛇行防止ローラー17が設置されている。蛇行防止ローラー17を複数個設けたので、プラスチックシート6が正面側に垂れ下がって移動しようとするが、これが蛇行防止ローラー17とプラスチックシート6との摩擦で抑えられる。排出ローラー18は、送りローラー5を通過したプラスチックシートの後端をさらに送り出せる。排出ローラー18は、速度制御付き電動機13で駆動される。
【0018】
図3は、本発明のプラスチックシート小型溶着器1の斜視図であり、正面下部に操作パネルが設けられる。図4〜6は、本発明のプラスチックシート小型溶着器1の側面図、正面図、平面図である。図6は、クリアファイル6aの大、中、小をプラスチックシート小型溶着器1で製作する場合の位置関係を示している。プラスチックシート6をプラスチックシート小型溶着器1に挿入する際、プラスチックシート6の一側を位置決め部材7に当接させるようにする。これによりプラスチックシート6の溶着位置が決まる。なお、装置を小型化したので、図6のような溶着では、クリアファイル6aが装置からははみ出す形となる。
【0019】
プラスチックシート小型溶着器をさらに詳しく説明する。プラスチックシート小型溶着器1は、幅440mm、奥行き420mm、高さ400mmの寸法に収めることが出来た。本実施例では、超音波発信器として40kHz、150Wのものを使用した。ローラーアンビル4は、径が70mm、幅が10mmの円板で、外周部に歯を100個設けて歯車状にした。
【0020】
プラスチックシート6の送り速度は最大400mm/秒で、この場合、プラスチックシート6の長辺310mmでは1.3秒、短辺220mmでは約0.5秒で処理できた。プラスチックシート6の送り速度は、プラスチックシート6の厚みにより最適な速度がある。ローラーアンビル4の外周部の歯の高さは0.25〜1.5mmの範囲とした。外周部の歯の幅は0.8〜1.0mmの範囲とした。ローラーアンビル4の外周面に「CLEAR SHEET」の文字を刻印してプラスチックシートを処理した結果、溶着部に明瞭な文字を浮かび上がらせることができた。文字の刻印の状況は図2の引出し円の中に示す。なお、バネ10によるホーン9の押し付け力は、2kgf〜10kgfとした。
【0021】
本発明のプラスチックシート小型溶着器1は、幅440mm、奥行き420mm、高さ400mmなので、普通の事務所内で使用でき、持ち運びも容易である。超音波発信器は、40kHz,150Wと従来の標準型20kHz、1200Wと比較して大幅に容量を低減できた。プラスチックシートとしてはPP(ポリプロピレン)が一般的であるが、PET(ポリエチレンテフタレート)、ポリエステル、再生シートなどの場合でも溶着性が向上して良好な外観が得られた。
【0022】
本実施例では、入側のプラスチックシート6を供給するフィーダーや、出側の溶着済みのプラスチックシート6を積み上げるパイラーが装備されないが、これらを付加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、使い勝手のよいプラスチックシート小型溶着器として好適である。
【符号の説明】
【0024】
1 プラスチックシート小型溶着器
2 超音波発信器
3 ブースター
4 ローラーアンビル
5 送りローラー
6 プラスチックシート
6a クリアファイル
7 位置決め部材
8 振動子
9 ホーン
10 バネ
13 電動機
14 電動機
15 従動ローラー
16 駆動ギヤ
17 蛇行防止ローラー
18 排出ローラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発信器と振動子による超音波振動を伝達するホーンと、
前記ホーンの下側に設けられ、プラスチックシートの溶着部の下側を支えて回転する歯車状のローラーアンビルと、
前記ホーンがプラスチックシートを押さえ込むように付勢するバネと、
前記ローラーアンビルの前方に設けられ、複数の従動ローラーとプラスチックシートを挟んで進行方向に送り出す送りローラーと、
前記ローラーアンビルと前記送りローラーの中間位置に、プラスチックシートの進行方向に沿って一列に並んで設けられ、プラスチックシートの上面を押さえる複数個の蛇行防止ローラーと、
前記プラスチックシートの一側に当接して、前記プラスチックシートの挿入位置を決める位置決め部材と、
前記送りローラーを通過したプラスチックシートを送り出す排出ローラーと、
前記ローラーアンビルと前記送りローラーと前記排出ローラーを駆動する速度制御付き電動機と、が備えられることを特徴とするプラスチックシート小型溶着器。

【請求項2】
前記ローラーアンビルは、歯の外周面にプラスチックシートの溶着部に転写される文字、模様、画像が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックシート小型溶着器。

【請求項3】
前記超音波発信器は、周波数が30〜40kHzであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックシート溶着用小型溶着器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39752(P2013−39752A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178547(P2011−178547)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(597042755)日本ヒューチャア株式会社 (2)
【Fターム(参考)】