説明

プラスチック光ファイバコードユニット

【課題】 配線作業を容易に行うことができ、コネクタに取り付けた後の被覆層と素線とのズレの影響をなくすことが可能となるプラスチック光ファイバコードユニットを提供する。
【解決手段】 プラスチック光ファイバ同士2は、連接用ブリッジ3を介して接続されている。プラスチック光ファイバ素線2aの外周に、凹状の嵌合部15が設けられるとともに、コネクタ21の素線挿入孔22の内周に、該嵌合部15に嵌め合わされる凸状の嵌合部25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のプラスチック光ファイバをテープ状に一体化したプラスチック光ファイバコードに接続用のコネクタが取り付けられて光モジュールで使用されるプラスチック光ファイバコードユニットに関し、特に、テレビ内配線等の映像関連光リンクシステムに適したプラスチック光ファイバコードユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバのうちプラスチック光ファイバは、素材が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系光ファイバと比較してやや大きいという短所を有するものの、軽量で加工性が良く、また、低コストで製造可能であるという長所を有しており、光通信の送受を行う各種の光モジュールにおいて、その伝送損失が問題にされない近距離の光伝送路として多用されている。
【0003】
特許文献1には、光モジュールで使用されるプラスチック光ファイバコードとして、4本の光ファイバを並べて、合成樹脂製のテープ化材によってテープ状に一括被覆したものが適することが記載されている。
【0004】
また、プラスチック光ファイバコードには、接続のためのコネクタが取り付けられるが、このようなコネクタとして、特許文献2には、プラスチック光ファイバから被覆層が剥離されたプラスチック光ファイバ素線を挿入する素線挿入孔と、被覆層を含んだ本体部分を挿入する本体挿入部とが設けられているものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−10837号公報(例えばその図5)
【特許文献2】特開平7−63917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラスチック光ファイバコードユニットをテレビ内配線などに使用するに際しては、配線作業を容易に行えることが課題となっている。
【0007】
また、プラスチック光ファイバコードの端部にコネクタを取り付けるに際し、プラスチック光ファイバ素線の先端部の特に通信用光源が透過するコア部分と、送受信用の光源素子面または光源用レンズ面との距離が変化すると、伝送効率低下などの弊害が発生し、光ファイバの性能を発揮することができない。特許文献2のものでは、詰め体を使用することで、プラスチック光ファイバの本体部分のコネクタ(口金)に対する動きは防止されているが、曲げや引っ張りの力がプラスチック光ファイバコードに作用すると、被覆層と素線とのズレが発生する可能性がある。この場合、光源素子面または光源用レンズ面からプラスチック光ファイバ素線の端面までの距離が変化し、伝送効率に影響を与えることとなるので、その解消が課題となっている。
【0008】
本発明は、配線作業を容易に行うことができ、コネクタに取り付けた後の被覆層と素線とのズレの影響をなくすことが可能となるプラスチック光ファイバコードユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によるプラスチック光ファイバコードは、複数本のプラスチック光ファイバをテープ状に一体化したプラスチック光ファイバコードと、各プラスチック光ファイバから被覆層を剥離したプラスチック光ファイバ素線をそれぞれ挿入するように並列状に形成された複数の素線挿入孔を有しプラスチック光ファイバコードの端部に取り付けられるコネクタとからなるプラスチック光ファイバコードユニットにおいて、プラスチック光ファイバ同士は、連接用ブリッジを介して接続されており、プラスチック光ファイバ素線の外周に、凹状または凸状の嵌合部が設けられるとともに、コネクタの素線挿入孔の内周に、該嵌合部に嵌め合わされる凸状または凹状の嵌合部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
プラスチック光ファイバ(以下「POF」と称することがある)は、重合体をマトリックスとする有機化合物からなるコアと、コアと屈折率が異なる(一般的には低屈折率の重合体)からなるクラッドと、複数層の樹脂製保護層とからなるものとされる。
【0011】
複数層の樹脂製保護層は、接続に際してその一部が必要に応じて剥離され、この明細書においては、剥離される保護層を被覆層と称し、プラスチック光ファイバ(POF)は、被覆層までを含むものとし、コネクタの取付けのために被覆層が剥離されたプラスチック光ファイバ(POF)は、プラスチック光ファイバ(POF)素線と称している。
【0012】
コネクタは、合成樹脂製または金属製とされ、コネクタには、通常、複数のPOF素線をそれぞれ挿入するように並列状に形成された素線挿入孔と、プラスチック光ファイバコードの本体部分(非剥離部分)の端部を挿入するための本体挿入部とが設けられる。素線挿入孔の嵌合部は、合成樹脂製のコネクタを形成する金型に該嵌合部に対応する凸部または凹部を形成することで得ることができ、また、金属製のコネクタに切削加工を施すことでも得ることができる。
【0013】
POFは、高い屈折率を有する材料をコアに、低い屈折率を有する材料をクラッドにもつ2層構造から構成されるステップインデックス(SI)型と称されるものであってもよく、また、中心から外側(半径方向)に向かって屈折率の大きさに分布を有するコアを備えたグレーデッドインデックス(GI)型と称されるものであってもよい。GI型にすることにより、より高速な通信が可能となる。
【0014】
プラスチック光ファイバ同士を連接用ブリッジを介して接続するには、例えば、コア、コアを囲むクラッドおよびクラッドを囲む保護層からなり並列に配置されたプラスチック光ファイバ素線に押出成型によって被覆層および連接用ブリッジを形成すればよい。クラッドを囲む保護層は複数層からなるものとされることがあり、被覆層も複数層からなるものとされることがある。
【0015】
従来のプラスチック光ファイバコードは、横一列の偏平状態が保持されるようにPOFが樹脂で固められた構造とされているのに対し、この発明によるプラスチック光ファイバコードでは、POF同士が被覆層と厚みがほぼ等しい連接用ブリッジを介して接続される。このようにすると、連接用ブリッジが可撓性を有していることで、プラスチック光ファイバコードを偏平な状態として扱うことができるだけでなく、円形孔を通す場合などには、まるまった状態に変形させることができる。また、連接用ブリッジは、従来のものに比べて、引き裂きに対する強度が低下するので、プラスチック光ファイバコードを単心のPOFに分離する作業を容易に行うことができる。したがって、テレビ内配線などでの使用に適している。
【0016】
このプラスチック光ファイバコードには、プラスチック光ファイバコードの接続端部が挿入されるコネクタが取り付けられる。この際、プラスチック光ファイバコードの接続端部は、被覆層および連接用ブリッジが剥離されて、複数のPOF素線だけからなるものとされ、これに対応して、コネクタには、複数のPOF素線をそれぞれ挿入するための素線挿入孔が並列状に形成される。従来、POF素線は、加工されないことが前提でコネクタの構成が種々が工夫されていたが、この発明によるプラスチック光ファイバコードユニットでは、POF素線に加工が施されて、コネクタがこれに対応するように形成される。
【0017】
すなわち、従来、プラスチック光ファイバコードをコネクタに取り付けるに際しては、被覆層を剥離する以外の加工を行うことなく、素線径よりも若干大きい径を有する素線挿入孔に素線を挿入するとともに、POFの本体部分をコネクタに固定するようになっていた。この従来のものでは、被覆層に対するPOF素線の動きが考慮されていないため、曲げや引っ張りの力がプラスチック光ファイバコードに作用すると、被覆層と素線とのズレが発生することがある。この場合、光源素子面または光源用レンズ面からPOF素線の端面までの距離が変化し、伝送効率に影響を与えることとなる。そこで、この発明によるプラスチック光ファイバコードでは、各POF素線の端部に嵌合部が形成されるとともに、コネクタの素線挿入孔にこの嵌合部に嵌め合わされる嵌合部が形成されていることで、POF素線を直接コネクタで保持するものとなっており、これにより、光源素子面または光源用レンズ面からPOF素線の端面までの距離が一定に保たれ、距離の変化が伝送効率に影響を与えるという問題が解消して、安定した光伝送効率を得ることが可能となる。
【0018】
POF素線の外周に凹状または凸状の嵌合部を設けるには、機械的または熱処理的な加工処理により、POF素線の先端部に凹状の形状加工を施してもよく、また、専用部品(リング、突起など)を装着することにより、POF素線の先端部に凸状の形状加工を施してもよい。形状加工は、周方向の1カ所または複数カ所に部分的に施してもよく、全周にわたって施してもよい。コネクタには、POF素線の先端部に加工された凹状または凸状の嵌合部に対応するように、凸状または凹状の嵌合部が形成される。そして、POF素線の嵌合部とコネクタの嵌合部とを嵌め合わせることにより、コネクタ内におけるPOF素線の先端部の位置を固定することができ、これにより、POF素線の端面と光源素子面または光源用レンズ面との距離が一定に保たれるだけでなく、コネクタからのプラスチック光ファイバコードの抜けも防止される。
【0019】
POF素線に凹状の嵌合部が設けられたプラスチック光ファイバコードユニットにおいて、各プラスチック光ファイバは、コア、コアを囲むクラッド、クラッドを囲む保護層および保護層を囲む被覆層からなり、連接用ブリッジは、被覆層に一体に形成されており、プラスチック光ファイバ素線の保護層に凹状の嵌合部が形成されていることものとされることがある。このようにすることで、連接用ブリッジの形成、被覆層の剥離および保護層への嵌合部の形成を容易に行うことができ、製造工程の簡素化が可能となる。保護層への嵌合部の形成は、例えば、複数のローラでPOF素線の先端部を保持しておき、V字状の研削面を有する回転砥石によって保護層の外周面を研削すればよい。凹状の嵌合部加工においては、保護層の70%程度を研削することが好ましく、また、切削角度は、90〜120°程度が望ましい。保護層は合成樹脂製とされるので、回転砥石を使用しての嵌合部加工を容易に行うことができる。嵌合部加工は、回転砥石を使用した切削などの機械的な処理の他に、熱処理的な加工処理によっても実施することができる。
【0020】
POF素線に凸状の嵌合部が設けられたプラスチック光ファイバコードユニットにおいて、各プラスチック光ファイバは、コア、コアを囲むクラッド、クラッドを囲む保護層および保護層を囲む被覆層からなり、連接用ブリッジは、被覆層に一体に形成されており、略C状をなした塑性変形可能なリングがプラスチック光ファイバ素線の保護層の外周にかしめられることによって、凸状の嵌合部が形成されていることがある。このようにすることで、連接用ブリッジの形成、被覆層の剥離および保護層への嵌合部の形成を容易に行うことができ、製造工程の簡素化が可能となる。リングは金属製とされることが好ましく、保護層が合成樹脂製とされていることで、保護層が径方向内方に弾性変形し、凸状の嵌合部としてのリングを凹状の嵌合部に嵌め入れやすいものとなる。
【0021】
POFの心数は、限定されないが、通常、取扱い易さの点で20心以下である。POFのコア径は、例えば100μm以上300μm以下とされる。また、POF素線の径は、2mm以下とされる。
【0022】
コアおよびクラッドとして使用されるプラスチックの種類は、透明性が高く光伝送に用いることができるものであれば限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体、スチレン系モノマーの重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル等;スチレン系モノマーとして、スチレン(St)、α−メチルスチレン、クロロスチレン(ClSt)、ブロモスチレン等が挙げられ、これらの共重合体でも構わない。その他共重合成分として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等のビニルエステル類;N―n−ブチルマレイミド、N―tert−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類等が例示される。その他、ポリカーボネート系プラスチック、シクロオレフィン系プラスチック、非晶フッ素系プラスチックなどを用いることもできる。
【0023】
POFを被覆する保護層、被覆層および連接用ブリッジを形成する合成樹脂としては、特に限定されないが、プラスチック光ファイバコードの用途に必要な、強度、難燃性、柔軟性、耐薬品性、耐熱性等を満足するものを選択することが好ましい。例えば、塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩ビ−エチレン−酢酸ビニル共重合体等、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリカーボネート等を主成分とするもの等が挙げられる。
【0024】
連接用ブリッジは、複数のケーブルが水平面上に横一列に配置された場合の底面(最下点)または頂面(最上点)に設けられてもよく、また、上下のちょうど中央(各ケーブルの中心軸と同じレベル)に設けられてもよく、底面または頂面と上下のちょうど中央との間の任意の位置に設けられてもよい。各連接用ブリッジは、通常、同じ位置(全ての連接用ブリッジが同じ面内に位置するよう)に設けられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
なお、連接用ブリッジは、複数のケーブルが水平面上に横一列に配置された場合の底面(最下点)または頂面(最上点)に設けられる場合、複数のケーブルをまるまった状態に変形させる形態としては、複数のケーブルが連接用ブリッジの外側にくるようにしてまるまった状態に変形させるようにしてもよいし、複数のケーブルを連接用ブリッジの内側にくるようにしてまるまった状態に変形させるようにしてもよい。
【0026】
このプラスチック光ファイバコードは、種々の用途に使用することができるが、光ファイバを介して光信号を伝送する光伝送装置(光リンクシステム)における映像信号伝送用に適しており、配線スペースの制約が厳しいテレビ内配線などに特に適している。テレビ内配線で使用される場合、POFの波長としては、500〜850nmであることが好ましく、500〜750nm(可視光線)であってもよいし、780〜850nmの光源(赤外線)であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
この発明のプラスチック光ファイバコードユニットによると、プラスチック光ファイバ同士が連接用ブリッジを介して接続されているので、テレビ内配線等の映像関連光リンクシステムにおける配線作業を容易に行うことができる。また、プラスチック光ファイバ素線の外周に、凹状または凸状の嵌合部が設けられるとともに、コネクタの素線挿入孔の内周に、該嵌合部に嵌め合わされる凸状または凹状の嵌合部が設けられているので、プラスチック光ファイバ素線が直接コネクタで保持され、これにより、コネクタに取り付けた後の被覆層と素線とのズレの影響をなくすことができる。したがって、光源素子面または光源用レンズ面からPOF素線の端面までの距離が一定に保たれ、伝送率の高いプラスチック光ファイバコードユニットが得られる。また、嵌合部同士が嵌まり合うことで、プラスチック光ファイバコードをコネクタに取り付けた後の抜けの問題を解消することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明によるプラスチック光ファイバコードユニットの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、プラスチック光ファイバコードの斜視図である。
【図3】図3は、プラスチック光ファイバコードの横断面図である。
【図4】図4は、プラスチック光ファイバコードの凹状の嵌合部を得る装置を示す図である。
【図5】図5は、本発明によるプラスチック光ファイバコードユニットの第2実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、図3の上下を上下といい、図3の左右を左右というものとする。
【0030】
図1から図4までは、この発明によるプラスチック光ファイバコードユニットの第1実施形態を示している。
【0031】
プラスチック光ファイバコードユニットは、図1に示すように、複数本のPOF(プラスチック光ファイバ)(2)をテープ状に一体化したプラスチック光ファイバコード(1)と、プラスチック光ファイバコード(1)の端部に取り付けられるコネクタ(21)とからなる。
【0032】
プラスチック光ファイバコード(1)は、図2および図3に示すように、POF(2)と、POF(2)同士を連接する連接用ブリッジ(3)とからなる。
【0033】
複数のPOF(2)は、隣り合うもの同士の間に所定間隔をおいて横一列に偏平状態で配置されており、連接用ブリッジ(3)は、このようにして配置された各POF(2)の上下のちょうど中央同士をつなぐように設けられている。
【0034】
すべてのPOF(2)は、同じ形状であり、連接用ブリッジ(3)もすべて同じ形状とされている。
【0035】
このプラスチック光ファイバコード(1)は、水平面、垂直面などに沿わせて設置した場合、複数のPOF(2)が横一列に配置され、偏平状態での使用が可能となる。プラスチック光ファイバコード(1)は、複数のPOF(2)がまるまった状態に変形させることが容易であり、このように変形させることで、このプラスチック光ファイバコード(1)を孔に通す作業を容易に行うことができる。
【0036】
各POF(2)は、重合体をマトリックスとする有機化合物からなるコア(11)と、コアと屈折率が異なる(一般的には低屈折率の重合体からなる)クラッド(12)と、これらを保護するオーバークラッド(保護層)(13)およびジャケット(被覆層)(14)とからなる。連接用ブリッジ(3)は、ジャケット(14)と一体に形成されている。
【0037】
プラスチック光ファイバコード(1)は、コア(11)、コア(11)を囲むクラッド(12)およびクラッド(12)を囲むオーバークラッド(13)からなる素線(2a)を並列に配置して、押出成型によってこれらの素線(2a)にジャケット(14)を被覆して、ジャケット(14)同士を連接用ブリッジ(3)で接続することで形成される。
【0038】
このプラスチック光ファイバコード(1)は、高速の伝送速度を得ることができるように、4本のPOF(2)からなる4心テープ構造とされている。ただし、従来の4心コードは、4本が横一列の偏平状態が保持されるように樹脂で固めた構造とされているのに対し、このプラスチック光ファイバコード(1)によると、図2および図3に示す横一列の偏平状態と、この状態から、内側の2本のPOF(2)を上に、外側の2本のPOF(2)を下に並べた二列二層のまるまった状態とに変形可能となっている。
【0039】
テレビ内配線等では、4心テープ構造のプラスチック光ファイバコード(1)を端部または適宜な中間部で2心または単心とすることがあり、各連接用ブリッジ(3)を裂くことで、4心テープ構造を容易に単心に分離することができる。
【0040】
プラスチック光ファイバコード(1)にコネクタ(21)が取り付けられる際、図1および図2に示すように、プラスチック光ファイバコード(1)の接続端部は、ジャケット(14)および連接用ブリッジ(3)が剥離されて、複数のPOF素線(2a)だけからなるものとされる。コネクタ(21)は、プラスチック光ファイバコード(1)の接続端部が強制的に挿入されるものとされており、コネクタ(21)には、プラスチック光ファイバコード(1)の接続端部に対応して、複数のPOF素線(2a)をそれぞれ挿入するように並列状に形成された断面円形の(円筒状の)素線挿入孔(22)と、プラスチック光ファイバコード(1)の本体部分(非剥離部分)の端部を挿入するための本体挿入部(23)とが設けられている。
【0041】
従来、コネクタ(21)に対するプラスチック光ファイバコード(1)の移動は、例えば、POF(2)とコネクタ(21)の本体挿入部(23)との間に固定用のリングが強制的に挿入されることで防止されている。ここで、ジャケット(被覆層)(14)とPOF素線(2a)との接着力は、ジャケット(14)がPOF素線(2a)から剥離される必要があるので、それほど大きいものとはされていないことから、POF素線(2a)に強い力が作用すると、POF素線(2a)はジャケット(14)に対して長さ方向に動くことが可能であり、プラスチック光ファイバコード(1)の本体部分をコネクタ(21)に固定しただけでは、POF素線(2a)の動きを完全に抑えることはできないものとなっている。そのため、POF素線(2a)がコネクタ(21)に対してずれることによって、コネクタ(21)に位置合わせされている光源素子(24)に対して、POF素線(2a)端面と光源素子(24)との距離がずれるという問題がある。
【0042】
この問題を解消するために、この発明によるプラスチック光ファイバコードユニットでは、プラスチック光ファイバコード(1)の接続端部において、各POF素線(2a)の端部に、凹状の嵌合部(15)が形成されており、これに対応して、コネクタ(21)の素線挿入孔(22)に、凸状の嵌合部(25)が形成されている。各POF素線(2a)の凹状の嵌合部(15)は、縦断面V字状とされて、ジャケット(14)が剥離された後のPOF素線(2a)の端部におけるオーバークラッド(13)に形成されている。
【0043】
この実施形態のプラスチック光ファイバコードユニットによると、各POF素線(2a)が直接コネクタ(21)で保持されており、これにより、光源素子(24)面(または光源用レンズ面)からPOF素線(2a)の端面までの距離が一定に保たれ、伝送率の高いものとなっている。
【0044】
POF素線(2a)への凹状嵌合部(15)の形成は、図4に示す研削装置を使用して行うことができる。
【0045】
図4において、軸方向に所定間隔をおいて配置された1対のファイバ固定用ローラ(31)が軸方向から見て正三角形の頂点に位置するように計3対配置され、これら3対のファイバ固定用ローラ(31)によってPOF素線(2a)が支持されており、軸方向に所定間隔をおいて配置された1対のファイバ固定用ローラ(31)の間に、凹状嵌合部加工用の砥石(32)が径方向移動可能に配置されている。砥石(32)の押し付け量(移動量)は、所定値に設定することができ、POF素線(2a)のオーバークラッド(13)の範囲内に凹状嵌合部(15)が形成される。ここで、加工範囲は、オーバークラッド(13)の70%程度とされ、また、切削角度は、90〜120°程度とされる。
【0046】
なお、上記図4の実施形態では、砥石(32)は、1カ所だけにしか配置されていないが、固定用ローラ(31)と同様に、軸方向から見て正三角形の頂点に位置するように計3つ配置するようにして、凹状嵌合部(15)を周方向に所定間隔で3つ設けるようにしてもよい。また、砥石(32)がPOF素線(2a)の周りを公転するようにして、凹状嵌合部(15)が環状となるようにすることもできる。POF素線(2a)を支持する構成が図示のものに限定されないことはもちろんである。砥石(32)を使用した機械的な加工に代えて、熱処理的な加工によって凹状嵌合部(15)を形成するようにしてもよい。
【0047】
POF素線(2a)の凹状嵌合部(15)の形状は、上記のものに限られるものではない。また、各POF素線(2a)を直接コネクタ(21)で保持する構成として、POF素線(2a)に凸状の嵌合部を形成し、コネクタ(21)の素線挿入孔(22)に凹状の嵌合部を形成するようにしても、同様の効果を得ることができる。その実施形態(第2実施形態)を図5に示す。
【0048】
図5において、略C状をなした塑性変形可能なリング(16)がPOF素線(2a)のオーバークラッド(13)の外周にかしめられることによって、オーバークラッド(13)の外周から突出した凸状の嵌合部(16a)が形成されている。これに対応して、コネクタ(21)の素線挿入孔(22)に、略環状でかつ凸状となっている嵌合部(16a)が嵌め入れられる環状でかつ凹状の嵌合部(26)が形成されている。
【0049】
この実施形態のプラスチック光ファイバコードユニットによると、各POF素線(2a)が直接コネクタ(21)で保持されており、これにより、光源素子(24)面(または光源用レンズ面)からPOF素線(2a)の端面までの距離が一定に保たれ、伝送率の高いものとなっている。
【0050】
上記のコネクタ(21)は、フラット型とされており、これにより、プラスチック光ファイバコード(1)の接続部分の薄型構造が可能となるが、この発明によるプラスチック光ファイバコード(1)に取り付けられるコネクタは、上記のものに限られず、種々の形態のものを使用することができる。従来のコネクタでは、POF素線(2a)には加工が施されないという前提で、その構成部品に改良が施されているが、POF素線(2a)に嵌合部(15)(16a)が設けられている上記プラスチック光ファイバコード(1)を使用することで、コネクタの簡素化が可能となる。
【0051】
上記プラスチック光ファイバコード(1)は、種々の光モジュールと組み合わせて使用することができ、その用途は限定されないが、高さ制限があって配線スペースの制約が厳しいテレビ内配線等の映像関連光リンクシステムに特に適している。
【0052】
なお、テレビ内配線に使用される場合、POF(2)の波長としては、500〜850nmであることが好ましく、500〜750nm(可視光線)であってもよいし、780〜850nmの光源(赤外線)であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
(1) プラスチック光ファイバコード
(2) POF(プラスチック光ファイバ)
(2a) POF(プラスチック光ファイバ)素線
(3) 連接用ブリッジ
(11) コア
(12) クラッド
(13) オーバークラッド(保護層)
(14) ジャケット(被覆層)
(15) 凹状嵌合部
(16) C状リング
(16a) 凸状嵌合部
(21) コネクタ
(22) 素線挿入孔
(25) 凸状嵌合部
(26) 凹状嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のプラスチック光ファイバをテープ状に一体化したプラスチック光ファイバコードと、各プラスチック光ファイバから被覆層を剥離したプラスチック光ファイバ素線をそれぞれ挿入するように並列状に形成された複数の素線挿入孔を有しプラスチック光ファイバコードの端部に取り付けられるコネクタとからなるプラスチック光ファイバコードユニットにおいて、プラスチック光ファイバ同士は、連接用ブリッジを介して接続されており、プラスチック光ファイバ素線の外周に、凹状または凸状の嵌合部が設けられるとともに、コネクタの素線挿入孔の内周に、該嵌合部に嵌め合わされる凸状または凹状の嵌合部が設けられていることを特徴とするプラスチック光ファイバコードユニット。
【請求項2】
各プラスチック光ファイバは、コア、コアを囲むクラッド、クラッドを囲む保護層および保護層を囲む被覆層からなり、連接用ブリッジは、被覆層に一体に形成されており、プラスチック光ファイバ素線の保護層に凹状の嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項1のプラスチック光ファイバコードユニット。
【請求項3】
各プラスチック光ファイバは、コア、コアを囲むクラッド、クラッドを囲む保護層および保護層を囲む被覆層からなり、連接用ブリッジは、被覆層に一体に形成されており、略C状をなした塑性変形可能なリングがプラスチック光ファイバ素線の保護層の外周にかしめられることによって、凸状の嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項1のプラスチック光ファイバコードユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−277014(P2010−277014A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131779(P2009−131779)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】