説明

プラスチック光ファイバ素線およびその製造方法

【課題】材質に依存することなく、プラスチック光ファイバ素線(POF)のクラッドの屈折率を低下させる。
【解決手段】多数の細孔33を有する外管12を形成する。この外管12にコア用ポリマーを入れて回転重合によりコア材30を構成し、外管12とコア材30とからなるプリフォーム21を作製する。プリフォーム21を加熱延伸してPOFを得る。加熱延伸により外管12の多数の細孔33が分散されて、POFのクラッドに多数の微細孔が形成される。微細孔の大きさは、1μm以上1000μm以下とし、その量は、1vol%以上70vol%以下とする。この微細孔によってクラッドの屈折率が低下する。アウターコア材31と同質のものをクラッドとして使用しても、アウターコアよりも低屈折率のクラッドが得られ、クラッドの素材の選択幅が広がる。親和性に優れ、高NA化、高伝送速度のPOFが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光ファイバ素線およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ素線は、光が通るコアと、前記コアの外周を覆うクラッドとからなる光伝送体であり、高速伝送かつ大容量の情報伝達ができることから、様々な分野において用いられている。このような光ファイバ素線の中でも、成型加工性や可撓性,耐衝撃性などに優れた性質を有するとともに、安全かつ低価格であり、また、低伝送損失であるプラスチック光ファイバ素線(Plastic Optical Fiber;POF)が注目されている。
【0003】
最近では、このPOFのコアに屈折率分布を設けたグレーデッドインデックス型(Graded Index:GI型)POFが注目されている。このGI型POFは、コアの中心に向かって屈折率が連続的に高くなる構造を有している。このように、屈折率を連続的に変化させると、光を徐々に屈折させてコアに閉じ込めることができる。また、媒質中の光の速度が屈折率に反比例することを利用して、光の速度を中心から離れるにつれて速くすることで、斜めに進む光と直進する光とが、光ファイバ素線の一端から他端までに到達する時間を同じにすることができるので、その伝送波形を崩れにくくすることができる。
【0004】
GI型POFは、透明度の高い光学樹脂と、これとは屈折率の異なる添加剤(例えば、ドーパント)とを混合し重合させたコアと、前記コアよりも低屈折率であるクラッドからなる。このとき、光学樹脂とドーパントのように、屈折率の異なる成分同士を混合して重合させる場合には、主成分(この場合は、光学樹脂)のガラス転移温度(Tg)が低下してしまい、結果として、耐熱性の低下を引き起こす。特に、光ファイバ素線において、屈折率があまり高くない添加剤を光学樹脂に添加し、重合させた場合には、Tgが低下するとともに、光ファイバ素線の伝送能力の指標である開口数(NA)が低下してしまう。また、前記添加剤は、光学樹脂の中に分散されているだけで、固定されていないので、高温に曝されると拡散移動してしまい、屈折率分布が変化したり、添加剤が凝集して光散乱が増加することで、光伝送能力が変化したりするという問題が生じてしまう。このような問題を受け、光学樹脂に添加剤を添加してPOFを製造する場合にも、光学樹脂本来の耐熱性を低下させることなく、かつ低光伝送損失を実現させることができるGI型POFを提供する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−91758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の方法では、金属キレート化合物を用いてコアに屈折率分布を発現させることで、光学樹脂に添加剤を添加しても、光学樹脂のTgが低下することを抑制するとともに、低光伝送損失を実現することができるGI型POFを作製することができる。ただし、GI型POFを含めて、POFは、クラッドよりも高屈折率であるコアを形成させることが必要であるが、コアに低屈折率成分を使用した場合、クラッドには、前記コアよりも、より低屈折率である成分を使用しなければならないために、前記クラッドに使用することができる成分が限定されてしまうという問題が生じている。しかしながら、特許文献1記載の方法をはじめとして、今までに、このPOFを形成させる成分に関する問題を解決することができる方法は提案されていない。
【0006】
本発明は、コアおよびクラッドを構成する材料を制限せずに選択して、屈折率分布を有し、かつ高NA化や高速伝送を実現させたPOFおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるプラスチック光ファイバ素線は、コアと、このコアの外周に配置されるクラッドとを有するプラスチック光ファイバ素線において、前記クラッドに微細孔を多数設けることを特徴とする。また、微細孔の大きさが、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、この微細孔の量が、1vol%以上70vol%以下であることが好ましい。なお、前記コアを構成する材料が、前記クラッドを構成する材料と同一の材料を含むことが好ましい。また、前記コアが径方向で中心に向かうにしたがい、次第に屈折率が高くなる屈折率分布を有することが好ましい。
【0008】
また、本発明におけるプラスチック光ファイバ素線の製造方法は、細孔を有する管を形成し、前記管にコア用ポリマーを入れて重合させてプラスチック光ファイバ素線用プリフォームとし、前記プリフォームを加熱延伸して、前記細孔を分散させてなる微細孔を有するクラッドを形成するようにプラスチック光ファイバ素線を製造することを特徴とする。なお、前記管を、同心円状に複数配置した複層管から構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クラッドに微細孔を多数設けるようにしたので、クラッドを構成する材料に関わらず、クラッドの屈折率を低下させることができる。これにより、コアおよびクラッドを構成する材料として、同一の材料を用いても、クラッドの屈折率を低下させることができるので、親和性が高く、かつ高NA化または結合効率を高めたPOFを製造することができる。また、コアおよびクラッドを構成する材料として同一のものを用いた場合には、POFを製造する際に用いる材料数の低減を図ることができるので、低コスト化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図を引用しながら説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。図1は、POFの製造工程図である。それぞれの工程については後で詳細に説明するものとし、ここでは工程の流れについてのみ説明する。
【0011】
まず、外管作製工程11において、管形状の外管12を作製する。図2に示すように、外管12は、POF25(図4参照)の母材となるプリフォーム21の外殻部分をなすものであり、プリフォーム21を加熱延伸させた後には、所定の径のクラッドとなる。本発明においては、多数の細孔を有する管を同心円状に複数配置した複層管を外管12とする。外管12を構成する材料やその形成方法に関しては、後で説明する。
【0012】
次に、外管12の中空部にコア材30を形成させてプリフォーム21を作製する(図2参照)。本実施形態では、2重構造のコア材30を形成させる。以降の説明において、外側、つまり外管12の内面と接する部分をアウターコア材31と称し、内側、つまりアウターコア材31の内面に接するようにして形成される部分をインナーコア材32と称する。
【0013】
外管12を作製した後に、まず、第1注入工程13において、アウターコア材31を生成させるための重合性化合物(以下、アウターコア材用モノマーと称する。)を外管12の中空部に注入する。次に、アウターコア材生成工程15として、注入したアウターコア材用モノマーを重合させて、断面円形の中央が空洞となるようにアウターコア材31を生成させる。ただし、重合体へ重合性化合物が接触し、しみ込むなどして重合体が膨潤または溶解し、所定の反応が進む塊状重合の一種である界面ゲル重合反応が起こると、この重合反応の進行により、先に形成されていた重合体が溶解する場合がある。したがって、例えば、後述するインナーコア材32の生成反応により、先に形成されたアウターコア材31がインナーコア材32と一体となって、アウターコア材31が認められなくなる場合がある。
【0014】
次に、第2注入工程17として、インナーコア材32を生成させるための重合性化合物(以降、インナーコア材用モノマーと称する。)をアウターコア材31の内側に注入する。続けて、インナーコア材生成工程20として、前記重合性化合物を重合させてインナーコア材32を生成させる。こうして、外管12の内側にアウターコア材31とインナーコア材32とからなるコア材30を形成させたプリフォーム21を作製する。なお、本発明においては、アウターコア材用モノマーおよびインナーコア材用モノマーは、単量体に限定されるものではなく、2量体や3量体の他に、後述するような各種の重合体を形成するための重合性化合物を含んでいる。
【0015】
作製されたプリフォーム21は、延伸工程22に供され、所定の方法により延伸されて、プラスチック光ファイバ素線(POF)25となる。この延伸工程22では、円柱状のプリフォーム21は加熱されながら長手方向に延伸される。このとき、プリフォーム21が延伸される際には、外管12も同時に延伸されるために、細孔33が延伸され、かつ分散されて、図4に示すように、光学的レベルで口径と配置が制御された微細孔44が多数形成されたクラッド40が得られる。同様に、プリフォーム21を構成するコア材30のうち、インナーコア材32からはインナーコア43が、アウターコア材31からはアウターコア42が、それぞれ形成される。さらに、被覆工程26において、POF25の外周を被覆材で被覆することで、外周に保護層が形成されたプラスチック光ケーブル27を作製することができる。被覆工程26を経たPOF25は、プラスチック光ファイバ心線またはプラスチック光ファイバコード(ともに、plastic optical code)と称される。本発明においては、このファイバ心線が1本のままであって必要に応じてさらに被覆を施されたものをシングルファイバケーブルと称し、一方、ファイバ心線がテンションメンバなどとともに複数本組み合わされてさらなる被覆材が被されたものをマルチファイバケーブルと称し、プラスチック光ケーブル27とは、これらのシングルファイバケーブルとマルチファイバケーブルとの両方を含む。
【0016】
図2(A)に、本発明でのプリフォーム21の直径方向で切断した横断面図を示し、図2(B)に、プリフォーム21の軸方向に切断した縦断面図を示す。プリフォーム21は、外管12と、コア材30とを有し、このコア材30は、アウターコア材31とインナーコア材32とからなる。また、外管12およびコア材30ともに、その外径および内径が長手方向にそれぞれ一定で、厚みが均一の管状となっている。したがって、外管12の内径は、アウターコア31の外径に等しく、アウターコア材31の内径は、インナーコア材32の内径に等しい。
【0017】
本実施形態では、コア材30を、アウターコア材31とインナーコア材32との2層構造としたが、他の構造にも本発明は適用される。コア材30の他の構造としては、例えば、アウターコア材31とインナーコア材32との境界が存在せずに、外管12の内周からコア材30の中央に向かって屈折率が連続的もしくは段階的に高くなる構造や、3層以上の構造を挙げることができる。
【0018】
図2(A)に示すように、プリフォーム21の外管12は、多数の細孔33を有する管をポリマーで形成し、これを同心円状に複数配置した複層管(本実施形態では3つ)から構成される。ただし、複層管を構成する管の本数などに関しては、本発明はこれに限定されない。また、図2(B)に示すように、細孔33は、外管12の直径方向および長手方向に対して、多数設けられている。細孔33においては、その形状および配置、数量などは特に限定されず、プリフォーム21を加熱延伸した後に得られるPOF25において、所定の屈折率を発現するように調整されればよい。
【0019】
図3に細孔33の概略図を示す。本実施形態では、図3(A)に示すような貫通孔35を細孔33とした形態を示したが(図2参照)、細孔33の形状は、これに限定されない。例えば、図3(B)のような、半円状の凹み37を外管37に設けてもよいし、図3(C)のような、気泡39を外管38に設けてもよい。図3(A)〜(C)に示すような、いずれの形状においても、細孔33は、プリフォーム21を延伸させてPOF25とする際に、延伸による分散によって、その口径が小さくなって微細孔44となる。各種細孔33の形成方法に関しては、後ほど説明する。また、細孔33の寸法に関しては、各細孔33の種類に応じて適宜求めた値とする。例えば、図3(A)に示すような貫通孔35の場合には、その直径をD1、深さをD2とし、図3(B)に示すような凹み37の場合には、その最大直径をD3、深さをD4とする。図3(C)に示すような気泡39の場合には、各気泡の最大直径をD5とすればよい。
【0020】
外管12に細孔33を形成させる方法としては、特に限定はされないが、例えば、貫通孔35(図3(A)参照)を形成させる場合には、所望の材料により外管12を形成させた後、その周面に細かい貫通孔35を多数形成させればよい。このとき、貫通孔35の形成方法としては、ポリマーで形成された細管を束ねて融着させたものを細孔33とする方法や、あらかじめ、CO2 などの気体をポリマー中に溶かしておき、それを減圧することで細孔33を得る方法などが挙げられ、実際にはこれらの各種方法を、単一または組み合わせて行う。また、管を形成した直後に、多数の孔形成用突起を有するローラまたはプーリを接触させることで、多数の貫通孔35を形成してもよい。また、凹み37(図3(B)参照)は貫通孔35と同様にして形成される。気泡39(図3(C)参照)の場合には、外管12をなす管を押出成形する際に、溶融ポリマー内に微細な気泡39を混入させることで形成すればよいが、いずれにおいても、その形成方法は特に限定されない。
【0021】
上述したように、本発明の外管12は、多数の細孔33を有する管から構成されている。本実施形態では、3本の管を用いて、これらを同心円状に配置して作製した複層管を外管12とした。図2(A)、(B)においては、そのことを分かりやすくするために、各管の境界線を示したが、実際には、複層管を形成する際には、用いられる複数の管は、融着または接着剤により接着されているので、境界線は確認できない場合が多い(後述する図4(A)、(B)も同様)。融着する場合には、管同士が形成する界面において、隙間が生じないように密着させて接合することが好ましい。ただし、融着時の温度に関しては、構成するポリマー材料などに応じて、適宜決定すればよく、特に限定はされない。また、接着剤で接着する際には、市販されている接着剤を用いることができるが、PMMA系接着剤を用いることが好ましい。このとき、外管12およびコア材30を構成する材料にできる限り類似した成分で形成されている接着剤を選択して用いることが、より密着性高く接着することができるので好ましい。
【0022】
図4(A)に、POF25を直径方向で切断した横断面図を示し、図4(B)に、軸に沿って切断したPOF25の縦断面図を示す。POF25は、クラッド40とコア41より構成される。クラッド40およびコア41は、プリフォーム21を構成する外殻12およびコア材30が、それぞれ加熱延伸されることで形成されたものである。図4(A)に示すように、POF25のクラッド40は多数の微細孔44を有している。これは、クラッド40の母材である外管12に設けられた細孔33が、加熱延伸時の延伸によって分散されて微細になったものである。微細孔44は、プリフォーム21の外管12における細孔33の配置に順ずるものであり、図4(B)に示すように、クラッド40の直径方向および長手方向に対して多数形成される。図4(A)および(B)では、クラッド40において微細孔44が規則的に配されている様態を示したが、上述したように、微細孔44は、延伸時において、細孔33が延伸により分散されて形成されるものであるため、実際には、規則的に配されていない場合が多いが、本発明においては、その配列状況は特に問題とはならない。ただし、光学特性などの観点から、できる限り類似した微細孔44をクラッド40に形成することが好ましい。
【0023】
図5に、POF25の屈折率分布に関する概略図を示す。図5において、横軸の符号(A)で示される範囲は、図4(A)におけるクラッド40の屈折率であり、符号(B)で示される範囲は、図4(B)におけるアウターコア42の屈折率であり、符号(C)で示される範囲は、インナーコア43の屈折率である。
【0024】
上述したように、本発明のクラッド40は、複数の微細孔44を有することを特徴とするが、微細孔44の大きさが、1nm以上1000nm以下であることが好ましい。より好ましくは、10nm以上100nm以下である。微細孔44の大きさは、使用する波長の1/10以下である場合において、低伝送損失が実現できる。このため、微細孔44の大きさが1000nmよりも大きい場合には、伝送損失が大きくなってしまう。一方で、微細孔44が1nmよりも小さい場合には、作業上、作製が困難であるため不適である。また、微細孔44の量においては、POF25の横断面積を1としたとき、その量が、1vol%以上70vol%以下であることが好ましい。より好ましくは、10vol%以上50vol%以下である。このとき、微細孔44の量が70vol%よりも多い場合には、NA値は高い値が得られるが、強度が弱くなってしまうために、変形しやすい。一方で、微細孔44の量が、1vol%未満の場合には、NA値を高くすることができない。
【0025】
アウターコア42は、インナーコア43に比べて、屈折率が低くなっており、インナーコア43は、アウターコア42との境界から中心に向けて屈折率が連続的に高くなっている。また、クラッド40は、コア41を形成する材料と同一の材料により形成されているが、多数の微細孔44が設けられているので、アウターコア42よりも屈折率が低い。断面円形の径方向においては、屈折率の最大値と最小値との差が、0.001以上0.3以下であることが好ましい。POF25の構造がこのような屈折率を発現する場合には、GI型光伝送体としての機能を発現する。なお、図4(A)においては、アウターコア42とインナーコア43との境界を、説明の便宜上示しているが、製造条件などにより境界の明確さは異なり、必ずしも確認できるものでなくてもよい。
【0026】
本実施形態のアウターコア42は、屈折率が概ね一定となっている様態を示したが(図5参照)、インナーコア43に近づくほど屈折率が大きくなっていてもよい。このように屈折率の大きさの変化は、段階的であっても、連続的であってもよく、特に限定はされない。
【0027】
また、本発明におけるPOF25は、クラッド40よりもコア41の屈折率が高くなる構造を有するものであれば、特に限定はされない。本実施形態においては、屈折率がコアの中心に向かうにしたがい、連続的に高くなるGI型POFを示したが、クラッド40とコア41とが段階的に屈折率が変化するステップインデックス型(Step Index:SI型)でもよい。図6(A)にSI型POF125の横断面図を示す。GI型POF25が、クラッド40と、アウターコア42およびインナーコア43からなる2層のコア41から構成される複層構造であるのに対して、SI型POF125は、クラッド140とコア141がそれぞれ1層からなる2層構造を有する。図6(B)に、SI型POF125の屈折率分布に関する概略図を示す。図6(B)において、横軸の符号(A)で示される範囲は、クラッド140の屈折率であり、符号(B)で示される範囲は、コア141の屈折率である。なお、SI型POF125の作製方法においては、上述の(GI型)POF25の作製方法に等しいので、説明は省略する。
【0028】
本発明においては、クラッド40を構成する材料は特に限定はされないが、コア41を構成する材料と同一の材料を含んでいることが好ましい。すなわち、クラッド40となる外管12を構成する材料が、コア41となるコア材30を構成する材料と同一の材料を含んでいる。コア材30を構成する材料としては、後述のような素材が挙げられ、このように、コア材30と同一の材料を用いて形成させた外管12を有するプリフォーム21を加熱延伸した場合には、親和性および光学的、機械的特性に優れたPOF25を作製することができる。ただし、外管12およびとコア材30は、同一の材料を用いて形成されることがもっとも好ましいが、類似した材料を用いて形成させても、比較的親和性に優れたPOF25を作製することができるので好ましい。外管12およびコア材30に用いる材料の詳細に関しては、後ほど説明する。
【0029】
外管12およびコア材30の材料は、光散乱を生じないように、非晶性のポリマーとすることが好ましく、互いに密着性に優れるポリマーとし、これらがタフネスなどに示される機械的特性に優れ、耐湿熱性にも優れていることがより好ましい。また、外管12および(または)コア材30がフッ素系樹脂からなることが好ましい。外管12およびコア材30に用いられるポリマーに関しての詳細は、後で説明する。
【0030】
コア材30を構成する材料の例としては、(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、主鎖環状含フッ素ポリマー形成モノマー類(e)、テフロン(登録商標)アモルファスフルオロポリマー(テフロン(登録商標)AF)、AVA樹脂、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)ポリカーボネート類の原料であるビスフェノールAなどを重合性化合物として用いて重合させたものとすることができる。そして、クラッド形成ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)も好ましい。これらを原料として、各々を重合させたホモポリマー、あるいはこれらのうち2種以上を組み合わせて重合させた共重合体、および上記のホモポリマーや共重合体の各種組み合わせによる混合物も例として挙げることができる。混合物を用いる場合においては、上記沸点Tbは、混合物を構成する複数の原料化合物の沸点の中で最も低い温度、もしくは共沸混合物を成すことにより沸点が下がるときには沸点下降後の温度として定義される。また、混合物を原料として得られた共重合体およびブレンドポリマーの場合には、各共重合体またはブレンドポリマーのガラス転移点を上記Tgとして定義する。そして、これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類または含フッ素ポリマーを成分として含むものが光伝送体を構成する上でより好ましい。次に、上記の例について、より詳細に示す。
【0031】
上記の(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレートなどが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
【0032】
(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0033】
(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等、(e)主鎖環状含フッ素ポリマー形成モノマー類としては、モノマーとして環状構造を有するまたもしくは環化重合することによって非晶質の主鎖に環状構造を有する含フッ素重合体を形成するポリマーを形成するものであり、サイトップ(登録商標)として知られるポリパーフルオロブタニルビニルエーテルや特開平8−334634などに例示される主鎖に脂肪環もしくは複素環を有するようなポリマーを形ー成するモノマー、および特願2004-186199号に例示されるものなどが挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではなく、重合性化合物の単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率が、光伝送体に成形されたときに所定の屈折率分布を成形体の中で有するように、種類や組成比を決定することが好ましい。
【0034】
また、外管12を構成する材料としては、上記の各種化合物の他に以下のものが挙げられる。例えば、メチルメタクリレート(MMA)とトリフルオロエチルメタクリレート(FMA)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体がある。また、MMAと,tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体がある。さらには、ポリカーボネート(PC)、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)を用いることもできる。また、フッ素樹脂の共重合体(例えば、PVDF系共重合体)や、テトラフルオロエチレンパーフルオロ(アルキルビニルエーテル(PFA)ランダム共重合体、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体などを用いることもできる。
【0035】
なお、これらのポリマーが水素原子(H)を含んでいる場合には、その水素原子が重水素原子(D)に置換されていることが好ましく、これにより伝送損失の低減、特に近赤外領域の波長における伝送損失の低減を図ることができる。
【0036】
さらに、POF25を近赤外光用途に用いるためには、ポリマーを構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報や特開2003−192708号公報などに記載されているような、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換したポリマーを用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。このようなポリマーとしては、例えば、重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを例示することができる。なお、原料となる化合物は、重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に除去されることが望ましい。
【0037】
本発明においては、重合性化合物を重合させてポリマーとする際において、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものが各種ある。例えばラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、これらに限定されるものではなく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
ポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには、連鎖移動剤を使うことができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0039】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなど)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオールなど)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
【0040】
前述した重合開始剤や連鎖移動剤、屈折率調整剤の各添加量については、用いるコア用ポリマーである重合性化合物の種類などに応じて、好ましい範囲を適宜決定することができる。本実施形態においては、重合開始剤は、コア材30の重合性化合物に対して、0.005〜0.050質量%となるように添加しているが、この添加率を0.010〜0.020質量%とすることがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、コア材30の重合性化合物に対して、0.10〜0.40質量%となるように添加しているが、この添加率を0.15〜0.30質量%とすることがより好ましい。
【0041】
その他、外管12とコア材30、もしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、コア材30もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として用いることができる。これらの添加剤も、前記原料となる各種重合性化合物に添加した後、重合することによって、外管12やコア材30、もしくはそれらの一部に含有させることができる。
【0042】
アウターコア42を形成するアウターコア材31とインナーコア43を形成するインナーコア材32とにおいては、各ポリマーのうち少なくともいずれか一方には、屈折率調整剤(以下、ドーパントと称する)を各所定量混合する。このドーパントとしては、非重合性の化合物が好ましい。インナーコア材32のみにドーパントを添加する場合には、この添加率は、インナーコア材32の主成分となるポリマーに対して0.01重量%以上25重量%以下とすることが好ましく、1重量%以上20重量%以下とすることがより好ましい。これにより、断面円形の径方向における屈折率分布係数を上記のような好ましい範囲により制御しやすくなる。
【0043】
本実施形態においては、ドーパントとしては高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与せず、溶融状態のポリマー中で所定の拡散速度を有する低分子化合物を用い、これを添加することによりコア41の径方向における屈折率を変化させている。ドーパントは、モノマーに限定されず、オリゴマー(ダイマー、トリマーなどを含む)であってもよい。したがって、モノマーの状態ではインナーコア材用モノマーやインナーコア材32との重合反応性を有していても、これがオリゴマーとなったときにはこれらと重合しないものであればこのようなオリゴマーをドーパントとすることができる。
【0044】
ドーパントの具体的な例としては、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ジフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。コア材30におけるドーパントの濃度および分布を調整することで、POF25の屈折率を所望の値に変化させることができる。
【0045】
本実施形態においては、断面円形の径の外側から中心に向けて屈折率が連続的に高くなるように(図5参照)、インナーコア材32の生成方法としては、後述のような回転ゲル重合法を適用している。また、インナーコア材用モノマーは、MMAまたは全重水素化メチルメタクリレート(MMA−d8)であり、重合後のアウターコア材31とインナーコア材32とは、主成分がPMMAまたは全重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)である。なお、図2では両者の境界は、説明の便宜上示されてはいるが、上述したように、この境界線が明確でない場合がある。例えば、プリフォーム21において、回転ゲル重合反応などが生起進行する場合、明確でないか、または界面が消失する場合がある。
【0046】
プリフォーム21の製造方法について、図7〜図10を参照しながら詳細に説明する。図7は、重合容器の断面図であり、図8は、回転重合装置の概略斜視図であり、図9は、重合装置による重合反応についての説明図であり、図10は、インナーコア材32開始時における重合容器の断面図である。ただし、本発明は、ここに示す形態に限定されるものではない。
【0047】
図7に示すように、重合容器50は、円管状の容器本体50aと、この容器本体50aの両端をそれぞれ塞ぐ蓋50bとを有する。その材質は、耐熱性などを考慮して選定されればよく、特に限定はされないが、本実施形態においてはSUS製を用いている。重合容器50は、その内径が外管12の外径よりもわずかに大きいものであり、後に述べるような重合容器50の回転に同機して外管12が回転することができるようになっている。
【0048】
まず、所定の材料からなる栓51で、外管12の片端部を塞ぐ。アウターコア材生成時において、外管12は、図7に示されるような重合容器50の中に収容される。また、この栓51はコア材30を形成する重合性化合物に溶解しない素材からなり、可塑剤などを溶出させるような化合物も含まないものとする。このような素材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。片端部を栓51で塞いだあとに、アウターコア材用モノマーをはじめとするアウターコア材用原料を外管12の中に注入する。そして、他方の端部も栓51で塞いだ後、回転させながらアウターコア材用モノマーを重合させてアウターコア材31(図2参照)を生成させる。なお、外管12が重合容器50の回転に上記のように応じることができるように、重合容器50の内側などに外管12を支持する支持部材などを設けてもよい。
【0049】
アウターコア材生成工程15(図1参照)は、上記のような重合容器50が、図8に示すような回転重合装置52にセットされて実施される。回転重合装置52は、装置本体53の中に複数の支持回転部材54と、装置本体53の外側に駆動部55と、装置本体53内の温度を検知してその検知結果に応じて内部温度を制御するための温度コントローラ56とを有している。
【0050】
支持回転部材54は、円柱形状であり、2本の周面で少なくともひとつの重合容器50を支持することができるように、長手方向が互いにおおむね平行かつ略水平となっている。各支持回転部材54は、その一端が装置本体53の側面に回動自在に取り付けられており、駆動部55によりそれぞれ独立した条件で回転駆動される。駆動部55にはコントローラ(図示しない)が備えられており、このコントローラにより駆動部55の駆動が制御される。そして、所定の重合反応時においては、図9に示すように、隣り合う支持回転部材54の周面により形成される谷部に重合容器50は載せられて、支持回転部材54の回転に応じて回転する。図9においては、支持回転部材54の回転軸を符号54aで示している。本実施形態においては、図9に示すように、重合容器50の回転はサーフェスドライブ式としているが、この回転方式については限定されるものではない。
【0051】
なお、本実施形態では、図9に示すように、重合容器50の両端の蓋50bには磁石50cがそれぞれ備えられているとともに、隣り合う2本の回転部材54により形成される間の下方にも磁石57が備えられている。これにより、回転時において重合容器50が支持回転部材54から浮くことを防止している。重合容器50の支持回転部材54からの浮きを防止する方法としては磁石を用いる上記方法のほかに、支持回転部材54と同様な回転手段を、セットされた重合容器50の上部に接するようにさらに設けて、同様に回転させ、これにより重合容器50の浮きを防止することもある。さらには、例えば重合容器50に上方に押さえ手段などを設けて、重合容器50に所定の荷重をかける方法などもあるが、本発明は浮き防止方法に依存するものではない。
【0052】
続いて、アウターコア材31の生成方法について説明する。アウターコア材31は、外管12とインナーコア材32との間に存在し、インナーコア材用モノマーの重合反応にも関与する。ただし、アウターコア材31は、インナーコア材32の生成条件によっては不要である場合もあるし、また、前述のようにインナーコア材32の生成過程においてインナーコア材32と一体化して消失する場合もある。用いるモノマーなどのアウターコア部用原料は、ろ過や蒸留などにより、重合禁止剤や水分、不純物などを、あらかじめ十分除去してから用いることが好ましい。さらにモノマーや重合開始剤を混合した後で、この混合物を超音波処理により溶存気体や揮発成分を除去することが好ましい。なお、第1注入工程13(図1参照)の前後では、必要に応じて、公知の減圧装置により、外管12や注入物を減圧処理してもよい。
【0053】
その後、外管12を装填した重合容器50を、その長手方向を略水平状態にして回転(水平回転)させながら重合を生起進行させるとアウターコア材31が生成する。このように、アウターコア材31は、外管12の円管軸を回転中心にしながら重合する回転重合により生成される。なお、回転重合の前には、外管12を立てた状態で予備重合をしてもよく、この予備重合の際には必要に応じて所定の回転機構により、外管12の円管軸を回転中心として回転させる。このような回転重合においては、外管12の長手方向を、おおむね水平に保ちながら回転させるために、外管12の内面全体にアウターコア材31が生成しやすくなる。本発明では、アウターコア材31の重合時においては、外管12の長手方向を水平とすることが、外管12の内面全体にアウターコア材31を形成する上で最も好ましいが、略水平であれば好適であり、回転軸の許容される角度は水平に対して、おおむね5°以内である。
【0054】
以上のようにしてアウターコア材31が形成された外管12を、回転重合装置52から取り出した後、本実施形態では、所定温度に設定された恒温槽などの加熱手段により所定時間の加熱処理をしている。
【0055】
次に、インナーコア材32を生成させる。図10は、インナーコア材32生成開始時における重合容器50の断面図である。この重合容器50は、アウターコア材31生成時に用いたものと同様であるため、同一の符号を用いる。インナーコア材用モノマーをはじめとするインナーコア材用原料58をアウターコア材31の中空部に注入する。その後、注入口を栓51で塞ぎ、アウターコア材31が形成された外管12の長手方向を略水平状態とし、外管12の断面円形の中心が回転軸となるように回転させながら反応を開始し重合を進めるとインナーコア材32が生成する。
【0056】
インナーコア材用モノマーの重合は、アウターコア材生成工程15で用いた回転重合装置52(図8参照)を用い、アウターコア材31生成時と同様に、外管12の長手方向が略水平で回転する状態となるように重合容器50を回転させて実施する。
【0057】
インナーコア材用モノマーが重合を開始すると、アウターコア材31の内壁がインナーコア材用モノマーにより膨潤し、重合初期段階では膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっており、そのため、重合速度が加速(ゲル効果と称する)する。このような現象から、本明細書中では、あらかじめ作製された管状部材を回転させながら、この管状部材と注入された重合性化合物との反応により膨潤層を形成して、この重合性化合物を重合する反応を回転ゲル重合法と称する。この重合反応は、本実施形態のように、管状部材の長手方向が水平とされることがより好ましい。そして、重合は、アウターコア材31の内面から開始し、外管12の断面円形の中心に向かって進行する。このとき、膨潤層の内部へは、分子体積の小さい化合物ほど優先的に入り込むため、重合の進行と共に、共存する他の化合物と比べて分子体積の大きなドーパントが膨潤層から前記中心方向へと押し出される。この結果、形成されたインナーコア材32の中心部は、高屈折率のドーパントの濃度が高くなり、断面円形の径方向における中心に向かって屈折率が徐々に高くなったプリフォーム21を得ることができる。
【0058】
本実施形態においては、アウターコア材31とインナーコア材32とは、膨潤層を形成しながらプリフォーム21が作製されることから、アウターコア材31とインナーコア材32とは明確な境界を有するものではない。また、本発明の回転ゲル重合法においては、ゲル層の形成により上記のようにアウターコア材31が消失する場合の他、アウターコア材31がインナーコア材32の生成前よりも小さな厚みとなる場合もある。
【0059】
なお、本実施形態においては、回転ゲル重合法を用いてコア材30を形成させた。このとき、重合させる際には、重合容器50を略水平に保持した状態で回転させたが、回転方法に関しては、この形態に限定されない。その他の方法としては、例えば、重合容器50を吊るした状態で回転させながら重合させてもよい。
【0060】
上述のような回転ゲル重合法では、用いる重合性化合物の沸点以下の温度を反応温度とすることが好ましい。本実施形態のように、重合性化合物としてMMAまたはMMA−d8を用いる場合には、反応温度は、30〜100℃とすることが好ましく、40〜80℃とすることがより好ましい。反応温度を所定の上限値よりも高い温度とすると、沸騰したり気泡が発生したりするなどの問題がある。一方で、所定の下限値よりも低い場合には、反応に要する時間が長くなるので、重合における体積収縮に対して重合物の生成状態の応答性が悪くなり、空気が重合物内部に抱き込まれたりするなどの問題が生じる場合がある。このことは、延伸した後のPOF25に気泡が生じる原因ともなるときがある。
【0061】
また、反応時間は、0.5〜20時間とすることが好ましく、1.5〜3時間とすることがより好ましい。20時間よりも長いと生産効率的に問題があり、0.5時間よりも短いと重合度が不均一となったり、気泡が発生したり、重合体が波うちの状態となって不均一な密度になるなどの問題が生じる。
【0062】
回転速度については、500〜4000rpmとすることが好ましく、1500〜3500rpmとすることがより好ましい。4000rpmよりも速くすることは、装置に対する運転負荷が大きくなり、装置運転に要する電気コストが高くなり、また、振動の発生に対する装置設計の改善などを要することもあるので好ましくない。一方、500rpmよりも小さい回転速度とすると、回転軸を中心となるように重合反応を制御することが困難となる場合があり、これは、例えば中空部を形成したい場合にでも良好な中空部を形成できなかったり、あるいは重合体の均一化を損なったりする原因になる。
【0063】
上記の方法を用いることで、外管12およびコア材30がプラスチックからなり、細孔33を有する外管12と、コア材30がアウターコア材31とインナーコア材32との2重構造である円柱状の光伝送体であるプリフォーム21を作製することができる。また、得られたプリフォーム21を延伸工程22に供することで、微細孔44を有するクラッド40と、インナーコア41とアウターコア42からなるコア41とから構成されるPOF25を得ることができる。
【0064】
プリフォーム21の延伸方法としては、特開平07−234322号公報などに記載される各種延伸方法を適用することができ、これにより、所望の直径、例えば、200μm以上1000μm以下のPOF25が得られる。
【0065】
本発明によるPOF25は、曲げ、耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として、通常、その表面に1層以上の保護層を被覆して用いられる。
【0066】
また、本実施形態においては、POF25の外周を被覆材で被覆したものをプラスチック光ケーブル27とした様態を示したが、POF25をそのまま束ねて被覆したものをプラスチック光ケーブル27として称する場合もある。したがって、被覆の形態としては、被覆材とPOF25との界面が全周にわたって接している状態において被覆されている密着型被覆と、被覆材とPOF25との界面に微細孔を有するルース型被覆とがある。ルース型被覆において、例えば、コネクタとの接続部において保護層を剥離した場合には、その端面の微細孔から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、密着型被覆とルース型被覆とを比較した場合には、通常は密着型被覆であることが好ましい。
【0067】
しかし、ルース型被覆の場合には、被覆材とPOF25とが密着していないので、プラスチック光ケーブル27にかかる応力や、熱をはじめとするダメージの多くを保護層で緩和させることができる。そのため、POF25にかかるダメージを軽減させることができることから、用途によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、微細孔部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填させることにより、端面からの水分伝播を防止できる。また、これらの半固体や粉粒体に対して、耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能を付与することにより、より高い性能の被覆を形成することができる。なお、ルース型被覆を作製するには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整して、さらに減圧装置を加減することにより微薄な層を作ることができる。
【0068】
本発明によるPOF25は、必要に応じて上記の保護層を1次保護層とし、外周にさらに2次(または多層)保護層を設けてもよい。前記1次保護層が十分な厚みを有している場合には、前記1次保護層の存在により熱ダメージを低減することができることから、2次保護層の素材における硬化温度の制限は、前記1次保護層を被覆する場合に比べて、緩和することができる。前記2次保護層には被覆用素材において説明したように、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤などの添加剤を導入してもよい。
【0069】
また、プラスチック光ケーブル27に複数の他の機能を付与させるために、適宜機能性層としての被覆層をさらに積層させてもよい。例えば、前述の難燃化層以外に、POF25の吸湿を抑制するためのバリア層や、POF25に含有された水分を除去するための吸湿材料層などがある。このような吸湿材料層の付与方法としては、例えば、吸湿テープや吸湿ジェルを、所定の被覆層内や被覆層間に設ける方法がある。他の機能性層としては、可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層、外部からの応力を緩衝するための緩衝材としての発泡材料層、剛性を向上させるための強化層などがある。プラスチック光ケーブル27の構造材(被覆材)としては、樹脂以外にも、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線などの線材を熱可塑性樹脂に含有させたものが例示され、このような材料を用いると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。
【0070】
前記抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられ、前記金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他に、保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を、プラスチック光ケーブル27の外周部に組み込むことができる。また、プラスチック光ケーブル27の形状は使用形態によって、光ファイバ心線を同心円上にまとめた集合型のものや、一列に並べたテープ型のもの、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめたものなど用途に応じてその形態が選ばれる。
【0071】
本発明のプリフォーム21から得られたプラスチック光ケーブル27は、従来に比べて、軸ずれに対する許容度が高いために、突き合せにより接合しても用いることができるが、より好ましくは、その端部に接続用光コネクタを備えて、互いの接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することが可能である。さらには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置などが組み合わされて好適に用いられる。この際には、必要に応じて他の光ファイバ素線などと組み合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LANなどをはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
【0072】
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号公報に記載の導波路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号などの各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号などの各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号などの公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号などの各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号などに記載の光信号処理装置;特開2001−86537号などに記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号などに記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号などの各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを用いた、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明(導光)、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
【0073】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0074】
PMMAを用いて、直径D1が0.5mm、深さD2が0.2mmの貫通孔を細孔33として形成させたPMMA管を3重に同心円状に配置した後に、互いに融着させて、内径が20mm、長さが60cmの中空部を有する複層管を外管12として作製した。この中空部に、アウターコア材用モノマーとして、全重水素化ポリメタクリル酸メチル(PMMA−d8、Tg;80℃〜115℃)を204.1gと、重合開始剤として、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート、商品名;V−601、和光純薬(株)製、70℃での半減期時間;5時間)と、連鎖移動剤として、n−ラウリルメルカプタンとの混合物を、所定温度に調整してから、それぞれ注入した。ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)とn−ラウリルメルカプタンとのMMA―d8に対する添加率は、それぞれ0.012モル%と0.2モル%とした。
【0075】
アウターコア材用モノマーを注入した外管12を、重合容器50に収容し、これを長手方向が水平となるように回転重合装置52にセットして、500rpmで回転させながら60℃の雰囲気下で2時間、その後3000rpmとして回転させながら60℃の雰囲気下で16時間、さらに3000rpmで回転させながら90℃の雰囲気下で4時間加熱重合を行い、中空部を有するアウターコア材31を形成させた。
【0076】
アウターコア材31の中空部に、インナーコア材用モノマーを常温常圧下で注入した。インナーコア材用モノマーとしては、水分を400ppm以下に除去したMMA―d8を81.7gと、重合開始剤としてジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート;V−601)と、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンと、ドーパントとしてジフェニルスルフィド(DPS)とを混合させた混合物を用いた。次に、外管12を、長手方向が水平となるように、回転重合装置52にセットして、回転速度を2000rpmとして70℃の雰囲気下で5時間回転させた後、さらに、回転速度を500rpmとして回転させながら90℃の雰囲気下で5時間加熱重合してプリフォーム21を得た。最後に、このプリフォーム21を延伸工程22で延伸させて、外径が316μmのPOF25を製造した。
【実施例2】
【0077】
実施例1と同じ製造方法および製造条件を用いて、プリフォーム21およびPOF25を作製した。ただし、プリフォーム21を形成する外管12として、非晶質のフッ素樹脂を用いて作製した管に実施例1と同じ細孔33を設けたものを外管12として作製した。
【実施例3】
【0078】
実施例1と同じ製造方法および製造条件を用いて、プリフォーム21およびPOF25を作製した。ただし、ガラス管内部に、PMMAを用いて作製した外径20mm、長さ60cmのPMMA管を外管12とした。また、実施例3においては、外管12に細孔33を設けなかった。
【実施例4】
【0079】
PMMAを用いて、直径D1が0.5mm、深さD2が0.2mmの貫通孔を細孔33として形成させたPMMA管を3重に同心円状に配置した後に、互いに融着させて、内径が20mm、長さが60cmの中空部を有する複層管を外管12として作製した。この中空部に、コア材用モノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)を200gと、重合開始剤として、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート、商品名;V−601、和光純薬(株)製、70℃での半減期時間;5時間)と、連鎖移動剤として、n−ラウリルメルカプタンとの混合物を、所定温度に調整してから、それぞれ注入した。ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)とn−ラウリルメルカプタンとのMMAに対する添加率は、それぞれ0.012モル%と0.2モル%とした。コア材用モノマーを注入した外管12を、重合容器50に収容し、これを長手方向が水平となるように回転重合装置52にセットして、500rpmで回転させながら60℃の雰囲気下で2時間、その後3000rpmとして回転させながら60℃の雰囲気下で16時間、さらに3000rpmで回転させながら90℃の雰囲気下で4時間加熱重合を行い、中空部を有するコア材を形成させた。このPFを加熱延伸し、内部にできた中空部を潰し、ファイバ径500μmφのSI型POF125を得た。
【0080】
〔評価方法〕
各実施例において作製したPOF25の破断面における外管12の屈折率および開口数を測定し、その値を評価した。このとき、開口数(NA値)が0.4よりも大きいPOFを、優性(○)とし、0.3よりも大きいものを標準(△)、0.3未満のものを劣性(×)として評価した。
【0081】
各実施例における評価結果および実施条件を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
実施例1では、細孔33を有するPMMA管を3重に配置して形成した複層管を外管12としてプリフォーム21とし、これを加熱延伸させてPOF25を作製した。このとき、POF25のクラッド40の屈折率は、n=1.40であり、NA値は0.51であった。実施例2では、細孔33を有するフッ素樹脂管を外管12として、実施例1と同様にPOF25を作製した。このとき、POF25のクラッド40の屈折率は、n=1.27であり、NA値は0.43であった。実施例3では、細孔33を設けないPMMA管を外管12として、実施例1と同様にしてPOF25を作製した。このとき、POF25のクラッド40の屈折率は、n=1.48であり、NA値が0.17であった。また、実施例1〜3がGI型POFを作製したのに対して、実施例4では、実施例1および2と同じ形状および寸法の細孔33を有するPMMA管を外管12として、その中空部に1層のコア141を形成させたSI型POF125を作製した。このとき、POF125のクラッド140の屈折率は、n=1.42であり、NA値が0.45であった。
【0084】
実施例1、2および実施例4においては、構成する材料および光ファイバ素線の型は異なるが、ともに微細孔44を多数設けたクラッドを形成させた。その結果、実施例1ではn=1.40、実施例2ではn=1.27、実施例4ではn=1.42であった。通常、PMMAはn=1.49程度であり、フッ素樹脂はn=1.34程度であるので、両者ともに、材料が従来有する屈折率よりもその値を低下させることができたといえる。一方で、実施例3では、実施例1と同様にしてPMMA管を用いてクラッド40としたが、n=1.49であり、PMMAが従来有する値と同じであった。したがって、構成する材料およびPOFの型に関わらず、クラッドに微細孔44を設けることで、屈折率を低下させることができることを確認した。
【0085】
NA値に注目した場合、実施例1、2および実施例4でのNA値は、それぞれ0.51、0.43、0.45といずれも0.4以上の高いNA値を示した。一方で、実施例3においては、NA値が0.17と0.3未満となった。これらの結果から、構成する材料およびPOFの型に関わらず、クラッドに微細孔44を設けることで、より高NA化できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明でのプラスチック光ファイバ素線の製造工程を示す概略図である。
【図2】(A)は、プリフォームの横断面図であり、(B)は同縦断面図である。
【図3】外管に形成される細孔の一例を示す断面図である。
【図4】(A)は、POFの横断面図であり、(B)は同縦断面図である。
【図5】POFの屈折率分布を示す概略図である。
【図6】(A)は、POFの横断面図であり、(B)は屈折率分布を示す概略図である。
【図7】重合容器の断面図である。
【図8】回転重合装置の概略斜視図である。
【図9】重合装置による重合反応についての説明図である。
【図10】インナーコア材生成開始時における重合容器の断面図である。
【符号の説明】
【0087】
12 外管
21 プリフォーム
25 プラスチック光ファイバ素線(POF)
30 コア材
31 アウターコア材
32 インナーコア材
33 細孔
35 貫通孔
40 クラッド
41 コア
42 アウターコア
43 インナーコア
44 微細孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、このコアの外周に配置されるクラッドとを有するプラスチック光ファイバ素線において、
前記クラッドに微細孔を複数設けたことを特徴とするプラスチック光ファイバ素線。
【請求項2】
微細孔の大きさが、1nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光ファイバ素線。
【請求項3】
微細孔の量が、1vol%以上70vol%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光ファイバ素線。
【請求項4】
前記コアを構成する材料が、前記クラッドを構成する材料と同一の材料を含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれかひとつ記載のプラスチック光ファイバ素線。
【請求項5】
前記コアが、径方向で中心に向かうにしたがい、次第に屈折率が高くなる屈折率分布を有することを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつ記載のプラスチック光ファイバ素線。
【請求項6】
細孔を有する管を形成し、
前記管にコア用ポリマーを入れて重合させてプラスチック光ファイバ素線用プリフォームとし、前記プリフォームを加熱延伸して、前記細孔を分散させてなる微細孔を有するクラッドを形成するようにプラスチック光ファイバ素線を製造することを特徴とするプラスチック光ファイバ素線の製造方法。
【請求項7】
前記管を、同心円状に複数配置した複層管から構成することを特徴とする請求項6記載のプラスチック光ファイバ素線の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−178102(P2006−178102A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369992(P2004−369992)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】