説明

プラスチック成形品、プラスチック成形品の成形方法、および該プラスチック成形品を有する光走査装置

【課題】プラスチック成形品における転写面の形状精度の向上を図る。
【解決手段】金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面11を有するプラスチック成形品10において、転写面11以外の少なくとも1つの面に突起形状40を有し、該突起形状40を有する面と同一面に金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した凹形状の不完全転写部22を有し、かつ、転写面以外の少なくとも1つの面に凸形状の不完全転写部21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形品、プラスチック成形品の成形方法、および該プラスチック成形品を有する光走査装置に関する。さらに詳述すると、レーザ方式のデジタル複写機、レーザプリンタ、又はファクシミリ装置の光学走査系や、ビデオカメラ等の光学機器、光ディスク等に適用されるプラスチック成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品の成形方法として、金型温度を成形用樹脂の熱変形温度前後とした一定容積のキャビティ内に、樹脂母材を挿入または溶融樹脂を射出充填し、保圧を制御しながら徐冷した後、金型を開いて成形品を取り出す射出成形方法が広く知られている。
【0003】
このような射出成形方法によれば、特殊な形状のプラスチック成形品であっても、該プラスチック成形品の形状に形成された金型を用いることにより、コストを抑えつつ大量生産することが可能となる。例えば、レンズやプリズムなどの光学素子は、光学面形状精度や内部の複屈折に関して高い精度が求められるため、従来は、ガラス製のものが主流であったが、製品のコストダウンの要求に従って、プラスチック製の光学素子(プラスチックレンズ、プラスチックミラー等)へと変化している。
【0004】
プラスチック成形品の形状は、その用途によっては、様々な形状が求められ、例えば、薄肉部を転写領域とする成形品でありながらも当該転写部に微細な凹凸形状を有するもの等、高精度な金型形状の転写性を要求されるようになっている。特に、レーザプリンタなどの走査光学系に用いられるレンズ(例えば、エフシータレンズ)においては、複数の機能を最小限の素子でまかなうために、その鏡面形状も球面のみならず複雑な被球面形状に設計される場合が多い。また、これらのレンズは、省スペース化の要求により薄肉形状に設計される場合が多い。
【0005】
このようなプラスチック成形品の成形加工においては、金型のキャビティ内の溶融樹脂を冷却固化させる工程において、キャビティ内での樹脂圧力や樹脂温度を均一にすることがプラスチック成形品を所望の形状に精度よく成形するのに望ましい。しかしながら、例えば、複雑な偏肉形状の成形品は、冷却固化の速度が場所によって異なり、内部応力によって、成形品取出し時の金型とられや離型不良、取り出し後のそりなどの形状変形が発生する。特に、プラスチック光学素子においては内部歪みによる複屈折を発生させやすいという問題があった。
【0006】
また、例えば、図1に示すプラスチック成形品10の転写面11の垂直方向の断面14において、転写面垂直方向の厚さ寸法をa、転写面平行方向の厚さ寸法をbとしたとき、a/b<1のようなアスペクト比の薄肉の部分においても、a方向の冷却速度の方がb方向の冷却速度よりも早いため、転写面に樹脂圧力が残った状態で冷却固化されてしまい、内部応力によって、成形品取出し時の金型とられや離型不良、取り出し後のそりなどの形状変形が発生するというという問題がある。以下、本明細書において、転写面垂直方向の厚さ寸法をa、転写面平行方向の厚さ寸法をbとしたとき、a/b<1の関係を有するプラスチック成形品を薄肉形状の(または、薄肉部を有する)プラスチック成形品と呼ぶ。
【0007】
この残圧を低減するためには、樹脂圧力を低く抑えた射出成形(低圧射出成形)を行わなければならない。しかしながら、低圧射出成形においては、充填樹脂量がキャビティ容積に対して少なくなる為、成形品にひけが発生しやすくなり、収縮量の増大により、金型形状の転写精度が悪化するという欠点があった。
【0008】
この低圧射出成形における、ひけの問題を解決するための技術として、特許文献1には、通気口から空気圧を非転写部にかけ、転写部との圧力差を発生させて、ひけを非転写面に誘導することで、転写面のひけ発生を防止する発明が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、金型のキャビティを構成する入子の一部(キャビティ駒ともいう)を成形中に摺動させて、非転写面の樹脂を剥離させることで、射出充填によってキャビティ内に樹脂内圧を発生させ、転写面の密着が維持される適切な圧力を残した状態のときに、キャビティ駒を動作させて強制的に空隙をつくり、この部分にひけを誘導することが開示されている。
【0010】
また、特許文献3には、厚肉、偏肉形状のプラスチック成形品に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより凹形状または凸形状に形成した不完全転写部を、転写面以外の面に有することにより、樹脂内圧や内部歪みの残存をなくす発明が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ひけは充填後の樹脂の冷却による樹脂内圧が非転写部にかけられた空気圧以下にならないと生じない。よって、特許文献1に記載の発明による薄肉形状のプラスチック成形品の成形では、薄肉部では初期の高圧下に樹脂が冷却固化してしまっているため、内部応力および内部歪みが残存してしまい、転写面精度の低下及び複屈折の悪化が生じるという問題があった。
【0012】
また、特許文献2に記載の発明によっても、特に、薄肉形状のプラスチック成形品の成形では、転写面部分の樹脂が冷却固化する前に離隔動作をさせなければないため、樹脂は、離隔動作に伴いキャビティ容積が増大するため、キャビティ内樹脂圧が負圧となる。このため、負圧になった際、転写面の密着力が低下するため、転写面にひけが発生するという問題があった。また、樹脂の体積収縮に追従させるように可動入子を可動させることも考えられるが、可動入子の安定性を保ちつつ、精度よく追従させることは困難であった。
【0013】
また、特許文献3に記載の発明によっても、特に、薄肉形状のプラスチック成形品の成形では、特許文献2と同様に、冷却固化進行前の樹脂圧力が発生した状態において離隔動作をすると、キャビティ内圧が負圧となり、転写面にひけを発生させてしまう。また、樹脂圧力が下がった状態においてひけを誘導しても、既に内部応力を残した状態で冷却固化が進行してしまっているという問題があった。
【0014】
さらに、特許文献1に記載の発明によっても、ひけを誘導する領域が制御しきれずに、転写面にひけが広がってしまう場合があった。また、特許文献2、3に記載の発明共に、剥離したひけ領域が、キャビティ駒の領域にとどまらず転写面まで進行してしまうという問題があった。
【0015】
この、ひけ領域の転写面への進出について図16〜図18を用いて説明する。図16に示すプラスチック成形品10は、転写面11を有した成形品である。
【0016】
図17は、図16に示すプラスチック成形品の一断面14におけるプラスチック成形品10(溶融樹脂37)、およびこれを画成する成形金型30の断面を示している。成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂37を射出充填するものである。キャビティは、上下の被転写入子31,32と、側壁面33によって画成されている。側壁面33には、エアスリット35とそれに連通する通気口36が設けられており、通気口36は、図示しない成形金型30の外部にある気体圧縮装置等に接続され、圧縮空気をキャビティ側面に流入できるようになっている。このような成形金型30を用いて、特許文献1のように、通気口36から空気圧を非転写部にかけ、ひけを非転写面22に誘導すると、剥離したひけ領域が、キャビティ駒の領域にとどまらず転写面11まで進行してしまう場合がある(図中囲み部分)。
【0017】
また、図18は、図16に示すプラスチック成形品の一断面14におけるプラスチック成形品10(溶融樹脂37)、およびこれを画成する成形金型30の断面の他の例を示している。図18に示す成形金型30は、エアスリット35および通気口36に替えて、可動入子34を有している。このような成形金型30を用いて、特許文献2のように、可動入子34を成形中に摺動させて、ひけを誘導しても、同様に、剥離したひけ領域が、キャビティ駒の領域にとどまらず転写面11まで進行してしまう場合がある(図中囲み部分)。
【0018】
そこで本発明は、転写面以外の少なくとも1つの面に突起形状を有し、該突起形状を有する面と同一面に金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した凹形状の不完全転写部を有し、かつ、転写面以外の少なくとも1つの面に凸形状の不完全転写部を有することにより、転写面にひけを発生させず転写面の形状精度の向上を図り、かつ、内部応力および内部歪みの発生を小さくして複屈折を小さくすることができるプラスチック成形品、プラスチック成形品の成形方法、および該プラスチック成形品を有する光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載のプラスチック成形品は、金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品において、転写面以外の少なくとも1つの面に突起形状を有し、該突起形状を有する面と同一面に金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した凹形状の不完全転写部を有し、かつ、転写面以外の少なくとも1つの面に凸形状の不完全転写部を有するものである。
【0020】
したがって、樹脂内圧を発生させたプラスチック成形品において、転写面以外の領域に凸形状の不完全転写部を設けることにより、キャビティ壁面の転写後に樹脂圧力を抜くことが可能となる。また、凹形状の不完全転写部を設けることにより、樹脂圧力抜きの際、負圧となり発生するひけを吸収することが可能となる。特に、突起形状を設けることにより、突起形状は転写面を有するキャビティと比較して樹脂量も小さく、金型との密着面積割合も大きい為、樹脂の冷却による収縮、固化速度が速くなる。よって、固化の進行が早い突起形状の根元に沿って、凹形状の不完全転写部は収縮成長するため、結果的に高いひけ誘導領域の制御性が得られる。また、成形品は圧力抜きの状態で冷却固化するため、内部残留応力の低減が可能となり、取り出し時及び取り出し後の形状変形が抑えられ、優れた形状転写性を得られる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラスチック成形品において、凹形状の不完全転写部を、突起形状の近傍位置に有するものである。
【0022】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプラスチック成形品において、転写面に垂直な断面形状における、該転写面の垂直方向の成形品厚みaと該転写面の平行方向の成形品厚みbとは、a/b<1の関係を満たすものである。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のプラスチック成形品において、成形品厚みaは、転写面の垂直方向の成形品厚みの最小値であり、成形品厚みbは、転写面の平行方向の成形品厚みの最大値であるものである。
【0024】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4までのいずれかに記載のプラスチック成形品において、凹形状の不完全転写部および凸形状の不完全転写部を、転写面以外の対向する面にそれぞれ有するものである。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から4までのいずれかに記載のプラスチック成形品において、凹形状の不完全転写部および凸形状の不完全転写部を、転写面以外の同一面に有するものである。
【0026】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6までのいずれかに記載のプラスチック成形品において、突起形状を同一面、または異なる面に複数有するものである。
【0027】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から7までのいずれかに記載のプラスチック成形品において、突起形状は、金型のキャビティ形状を転写した取り付け基準面であるものである。
【0028】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1から8までのいずれかに記載のプラスチック成形品において、金型のキャビティ形状を転写した取り付け基準面をさらに有するものである。
【0029】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1から9までのいずれかに記載のプラスチック成形品において、転写面のうち、少なくとも1つは、光学鏡面に形成された光学素子であるものである。
【0030】
また、請求項11に記載のプラスチック成形品の成形方法は、金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品の成形方法であって、少なくともキャビティ壁面の一部に通気部が設けられ、かつ、該通気部が設けられるキャビティ壁面の一部に凹形状部が設けられており、樹脂の射出充填後の所定タイミングにおいて、通気部より圧縮空気を送り込み、かつ、少なくともキャビティ壁面の一部を構成する可動入子を該キャビティから離れる方向に摺動させるようにしている。
【0031】
また、請求項12に記載のプラスチック成形品の成形方法は、金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品の成形方法において、少なくともキャビティ壁面の一部は、他のキャビティ壁面よりも樹脂との密着力が低い材料により形成した優先剥離部であって、かつ、該優先剥離部が設けられるキャビティ壁面の一部に凹形状部が設けられており、樹脂の射出充填後の所定タイミングにおいて、少なくともキャビティ壁面の一部を構成する可動入子を該キャビティから離れる方向に摺動させるようにしている。
【0032】
また、請求項13に記載の発明は、請求項11または12に記載のプラスチック成形品の成形方法において、凹形状部を2以上有する金型を用いたものである。
【0033】
また、請求項14に記載の光走査装置は、被走査面を複数の光束で走査するマルチビーム型の光走査装置において、請求項10に記載のプラスチック成形品を、各光束の入射位置が副走査方向において異なる光学素子として有するものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、転写面にひけを発生させず転写面の形状精度の向上を図り、かつ、内部応力および内部歪みの発生を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】プラスチック成形品の参考例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の一例である。
【図3】図1に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の他の例である。
【図4】本実施形態に係るプラスチック成形品の一実施形態(第1の実施形態)を示す斜視図である。
【図5】図4に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の一例である。
【図6】図4に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の他の例である。
【図7】プラスチック成形品の他の実施形態(第2の実施形態)を示す斜視図である。
【図8】図7に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の一例である。
【図9】プラスチック成形品の他の実施形態(第3の実施形態)を示す斜視図である。
【図10】図9に示すプラスチック成形品の断面図である。
【図11】プラスチック成形品の他の実施形態(第4の実施形態)を示す斜視図である。
【図12】図11に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の一例である。
【図13】図11に示すプラスチック成形品の上面図の一例である。
【図14】図11に示すプラスチック成形品を、所定の空間に取り付けた例を示す図である。
【図15】本発明に係る光走査装置の概略構成図の一例である。
【図16】従来のプラスチック成形品の斜視図である。
【図17】転写面にひけが生じる様子を説明する説明図(1)である。
【図18】転写面にひけが生じる様子を説明する説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る構成を図1から図15に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0037】
先ず、本願発明者らが先に発明したプラスチック成形品、およびプラスチック成形品の成形方法であって、本発明に係るプラスチック成形品、およびプラスチック成形品の成形方法の前提となる参考例について説明する。
[プラスチック成形品の参考例]
図1にプラスチック成形品の一実施形態の斜視図を示す。プラスチック成形品10は、転写面(第1転写面)11および転写面(第2転写面)12を上下に有し、凸形状の不完全転写部21と凹形状の不完全転写部22とを転写面11,12の側面の対向する2面に有した成形品である。なお、転写面11,12の側面の他の2面(側面23,24)については、キャビティ形状を転写した転写面とすればよいが、不完全転写部であっても良く、特に限られるものではない。
【0038】
また、プラスチック成形品10は薄肉形状、すなわち、転写面11,12に垂直なある面(一点鎖線13で示す)におけるプラスチック成形品の一断面14において、転写面垂直方向の成形品厚さ寸法aと転写面平行方向の厚さ寸法bとは、次式(1)を満たすものである。なお、aおよびbの値は、次式(1)を満たす限り特に限られるものではないが、例えば、a=5mm,b=10m等とすればよい。
a/b<1 …(1)
【0039】
[プラスチック成形品の成形方法の参考例(1)]
図1に示すプラスチック成形品10を例に、プラスチック成形品の成形方法の一例について説明する。図2は、図1に示すプラスチック成形品の一断面14におけるプラスチック成形品10(溶融樹脂37)、およびこれを画成する成形金型30の断面を示している。
【0040】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂37を射出充填するものである。キャビティは、上下の被転写入子31,32と、側壁面33,34によって画成されている。
【0041】
側壁面33には、通気部、すなわち、エアスリット35とそれに連通する通気口36が設けられており、通気口36は、図示しない成形金型30の外部にある気体圧縮装置等に接続され、圧縮空気をキャビティ側面に流入できるようになっている。
【0042】
他方の側壁面34は、可動入子34で画成されており、可動入子34は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。
【0043】
可動入子34をキャビティ側に摺動させた状態(図2(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂37は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。
【0044】
ここで、溶融樹脂37の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、エアスリット35から圧縮空気に送り込むようにする。なお、溶融樹脂37が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングは、樹脂の成分等に応じて最適なタイミングを得るようにすればよい。
【0045】
また、図2(b)に示すように、可動入子34をキャビティ側面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。この可動入子34の後退によりキャビティ容積が膨張し、溶融樹脂37もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子34の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂37の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、エアスリット35からの圧縮空気により、加圧されている側壁面33は、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22が成形される。
【0046】
このように、樹脂内圧低下による樹脂体積不足と、冷却固化促進による充填樹脂の体積収縮は、キャビティより剥離した凸形状および凹形状の不完全転写部21,22が自由面となり動くことで吸収される。換言すれば、不完全転写部21,22に転写不良を誘導することにより、転写部11,12へのひけ発生を抑制することができる。また、射出充填に伴う樹脂内圧は、キャビティ体積膨張による内圧低下を発生させることにより、ほぼ0に近づけることができ、この状態において冷却固化されたプラスチック成形品10の内部応力及び内部歪みについてもほぼ0に近づけることが可能となる。よって、転写面11,12の形状精度の向上および複屈折の発生を抑えたプラスチック成形品とすることができる。
【0047】
[プラスチック成形品の成形方法の参考例(2)]
図1に示すプラスチック成形品10を例に、プラスチック成形品の成形方法の他の例について説明する。図3は、図1に示すプラスチック成形品の一断面14におけるプラスチック成形品10(溶融樹脂37)、およびこれを画成する成形金型30の断面を示している。
【0048】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂37を射出充填するものである。キャビティは、上下の被転写入子31,32と、側壁面33,34によって画成されている。
【0049】
側壁面33は、固定入子33で画成されており、固定入子33の少なくとも溶融樹脂37と接する表面は、他のキャビティ表面と比較して、樹脂との密着力が低い材料により形成されている(優先剥離部を有する)。当該樹脂との密着力が低い材料としては、例えば、TiN(窒化チタン)、TiCN(シアン化チタン)、テフロン(登録商標)樹脂含有金属等が挙げられる。本実施形態では、固定入子33の表面を樹脂との密着力が低い材料により表面処理を施し、固定入子33と充填樹脂とを離型しやすくなっている。
【0050】
他方の側壁面34は、可動入子34で画成されており、可動入子34は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。
【0051】
可動入子34をキャビティ側に摺動させた状態(図3(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂37は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。
【0052】
ここで、溶融樹脂37の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、可動入子34をキャビティ側面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。なお、溶融樹脂37が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングは、樹脂の成分、固定入子33の表面材料等に応じて最適なタイミングを得るようにすればよい。
【0053】
この可動入子34の後退により、図3(b)に示すように、キャビティ容積が膨張し、溶融樹脂37もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子34の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂37の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、他のキャビティ表面と比較して離形成の高い固定入子33の壁面は、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22が成形される。
【0054】
このように、樹脂内圧低下による樹脂体積不足と、冷却固化促進による充填樹脂の体積収縮は、キャビティより剥離した凸形状および凹形状の不完全転写部21,22が自由面となり動くことで吸収される。換言すれば、不完全転写部21,22に転写不良を誘導することにより、転写部11,12へのひけ発生を抑制することができる。また、射出充填に伴う樹脂内圧は、キャビティ体積膨張による内圧低下を発生させることにより、ほぼ0に近づけることができ、この状態において冷却固化されたプラスチック成形品10の内部応力及び内部歪みについてもほぼ0に近づけることが可能となる。よって、転写面11,12の形状精度の向上および複屈折の発生を抑えたプラスチック成形品とするすることができる。
【0055】
(第1の実施形態)
本願発明者らの更なる検討の結果、以上説明したプラスチック成形品、およびプラスチック成形品の成形方法の参考例によれば、上記特有の効果を奏することに加えて、ひけ領域がキャビティ駒の領域にとどまらず転写面まで進行してしまうという課題(図16〜図18)に対しても、特許文献1〜3に記載の技術に比して、ある程度抑えることができる。しかしながら、本願発明者らは、上記の参考例によっても、ひけ領域が転写面まで進行が生じうる場合があることを知見した。
【0056】
そこで、本発明に係るプラスチック成形品は、以下に詳述するように、突起形状を有するプラスチック成形品とすることにより、上記参考例の効果に加えて、さらに、転写面へのひけの進出を抑制して、転写面の形状精度の向上を図ることができるものである。
【0057】
[プラスチック成形品]
図4に本発明に係るプラスチック成形品の一実施形態の斜視図を示す。プラスチック成形品10は、転写面(第1転写面)11および転写面(第2転写面)12を上下に有し、凸形状の不完全転写部21と、凹形状の不完全転写部22とを転写面11,12の側面の対向する2面に有した成形品である。さらに、突起形状40を有している。なお、プラスチック成形品10の転写面11,12の側面の他の2面(側面23,24)については、キャビティ形状を転写した転写面とすればよいが、不完全転写部であっても良く、特に限られるものではない。
【0058】
ここで、凹形状の不完全転写部22は、突起形状40と同一面に設けられる。特に、凹形状の不完全転写部22は、突起形状40の近傍(根元部分)に設けられることが好ましい。
【0059】
また、図4に示すプラスチック成形品10は薄肉形状、すなわち、転写面11,12に垂直なある面(一点鎖線13で示す)におけるプラスチック成形品の一断面14において、転写面垂直方向の成形品厚さ寸法a(図示せず)と転写面平行方向の厚さ寸法b(図示せず)とは、上記式(1)を満たしている。しかしながら、本発明に係るプラスチック成形品は、上記参考例とは異なり、必ずしも、転写面垂直方向の成形品厚さ寸法aと転写面平行方向の厚さ寸法bとが、上記式(1)を満たす必要はなく、a/b≧1の関係にあっても良い。すなわち、薄肉形状でなくともよく、例えば、薄肉部を有する偏肉形状の成形品であっても良い。
【0060】
[プラスチック成形品の成形方法(第1の成形方法)]
図4に示すプラスチック成形品10を例に、本発明に係るプラスチック成形品の成形方法の一例(第1の成形方法ともいう)について説明する。図5は、図4に示すプラスチック成形品の一断面14におけるプラスチック成形品10(溶融樹脂37)、およびこれを画成する成形金型30の断面を示している。
【0061】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂37を射出充填するものである。キャビティは、上下の被転写入子31,32と、側壁面33a,33b,34によって画成されている。
【0062】
側壁面33aには、通気部、すなわち、エアスリット35とそれに連通する通気口36が設けられており、通気口36は、図示しない成形金型30の外部にある気体圧縮装置等に接続され、圧縮空気をキャビティ側面に流入できるようになっている。
【0063】
さらに、側壁面33aには、突起形状40に相当する部分となる、凹形状の窪み部分(以下、凹形状部)41が形成されている。なお、側壁面33aは、必ずしも、単一の入子により構成しなくともよく、凹形状部41に相当する入子と通気部が設けられる入子の2以上の入子により構成するようにしても良い。
【0064】
他方の側壁面は、可動入子34で画成されており、可動入子34は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。
【0065】
可動入子34をキャビティ側に摺動させた状態(図5(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂37は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。
【0066】
ここで、溶融樹脂37の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、通気口36を通じてエアスリット35から圧縮空気に送り込むようにする。なお、溶融樹脂37が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングは、樹脂の成分等に応じて最適なタイミングを得るようにすればよい。
【0067】
次いで、図5(b)に示すように、可動入子34をキャビティ側面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。この可動入子34の後退によりキャビティ容積が膨張し、溶融樹脂37もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子34の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂37の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、エアスリット35からの圧縮空気により、加圧されている側壁面33は、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22が成形される。
【0068】
このように、樹脂内圧低下による樹脂体積不足と、冷却固化促進による充填樹脂の体積収縮は、キャビティより剥離した凸形状および凹形状の不完全転写部21,22が自由面となり動くことで吸収される。換言すれば、不完全転写部21,22に転写不良を誘導することにより、転写部11,12へのひけ発生を抑制することができる。また、射出充填に伴う樹脂内圧は、キャビティ体積膨張による内圧低下を発生させることにより、ほぼ0に近づけることができ、この状態において冷却固化されたプラスチック成形品10の内部応力及び内部歪みについてもほぼ0に近づけることが可能となる。
【0069】
さらに、突起形状40はキャビティ転写面領域と比較すると、早く冷却固化するため、剥離後に収縮により成長していく凹形状の不完全転写部22は、収縮速度の早い、突起形状40の根元に添った形でできあがる。すなわち、突起形状40(凹形状部41)があることで、凹形状の不完全転写部22の成長による広がりを任意の領域に留めることが可能となるものである。
【0070】
よって、転写面11,12にひけが進出することなく、かつ樹脂内圧が残存することなく、要求される形状精度で形成した転写面11及び12を有し、内部歪みの低いプラスチック成形品とすることができる。
【0071】
[プラスチック成形品の成形方法(2)]
図4に示すプラスチック成形品10を例に、プラスチック成形品の成形方法の他の例(以下、第2の成形方法という)について説明する。図6は、図4に示すプラスチック成形品の一断面14におけるプラスチック成形品10(溶融樹脂37)、およびこれを画成する成形金型30の断面を示している。
【0072】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂37を射出充填するものである。キャビティは、上下の被転写入子31,32と、側壁面33a,33b,34によって画成されている。
【0073】
側壁面33aは、固定入子で画成されており、固定入子全体、または固定入子の少なくとも溶融樹脂37と接する表面は、他のキャビティ表面と比較して、樹脂との密着力が低い材料により形成されている(優先剥離部)。当該樹脂との密着力が低い材料としては、例えば、TiN(窒化チタン)、TiCN(シアン化チタン)、テフロン(登録商標)樹脂含有金属等が挙げられる。本実施形態では、固定入子33の表面を樹脂との密着力が低い材料により表面処理を施し、固定入子と充填樹脂とを離型しやすくなっている。
【0074】
他方の側壁面34は、可動入子34で画成されており、可動入子34は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。
【0075】
可動入子34をキャビティ側に摺動させた状態(図6(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂37は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。
【0076】
ここで、溶融樹脂37の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、可動入子34をキャビティ側面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。なお、溶融樹脂37が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングは、樹脂の成分、側壁面33aの表面材料等に応じて最適なタイミングを得るようにすればよい。
【0077】
この可動入子34の後退により、図6(b)に示すように、キャビティ容積が膨張し、溶融樹脂37もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子34の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂37の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、他のキャビティ表面と比較して離形成の高い側壁面33aの壁面は、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22が成形される。
【0078】
さらに、突起形状40はキャビティ転写面領域と比較すると、早く冷却固化するため、剥離後に収縮により成長していく凹形状の不完全転写部22は、収縮速度の早い、突起形状40の根元に添った形でできあがる。すなわち、突起形状40(凹形状部41)があることで、凹形状の不完全転写部22の成長による広がりを任意の領域に留めることが可能となるものである。
【0079】
よって、転写面11,12にひけが進出することなく、かつ樹脂内圧が残存することなく、要求される形状精度で形成した転写面11及び12を有し、内部歪みの低いプラスチック成形品とすることができる。
【0080】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るプラスチック成形品の他の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。上記第1の実施形態では、凸形状および凹形状の不完全転写部がそれぞれ異なる面に形成される場合を例に説明したが、凸形状および凹形状の不完全転写部を同一面に形成することも好ましい。
【0081】
[プラスチック成形品]
図7に本実施形態に係るプラスチック成形品の斜視図を示す。このプラスチック成形品10は、微細で複雑な凹凸形状を有する転写面11を上面に設け、凸形状の不完全転写部21および凹形状の不完全転写部22を転写面11に対向する同一面内に設けたものである。また、突起形状40を、凸形状の不完全転写部21および凹形状の不完全転写部22と同一面に有し、凹形状の不完全転写部22は、突起形状40の近傍(根元部分)に設けられている。
【0082】
[プラスチック成形品の成形方法]
図7に示すプラスチック成形品10の成形方法について説明する。図8は、図7に示すプラスチック成形品の一断面14におけるプラスチック成形品10(溶融樹脂37)、およびこれを画成する成形金型30の断面を示している。
【0083】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂37を射出充填するものである。キャビティは、上被転写入子31、下壁面38(38a,38b)、可動入子(下壁面)39と、側壁面33によって画成されている。また、下壁面38aには、エアスリット35とそれに連通する通気口36が設けられている。また、下壁面38の一部は、可動入子39で画成されており、可動入子39は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。さらに、下壁面38aには、突起形状40に相当する部分となる、凹形状部41が形成されている。
【0084】
可動入子39をキャビティ側に摺動させた状態(図8(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂37は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。
【0085】
ここで、溶融樹脂37の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、エアスリット35から圧縮空気に送り込むようにする。
【0086】
次いで、図8(b)に示すように、可動入子39をキャビティ側面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。この可動入子39の後退によりキャビティ容積が膨張し、溶融樹脂37もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子39の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂37の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、エアスリット35からの圧縮空気により、加圧されている下壁面38aには、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22が成形される。さらに、突起形状40はキャビティ転写面領域と比較すると、早く冷却固化するため、剥離後に収縮により成長していく凹形状の不完全転写部22は、収縮速度の早い、突起形状40の根元に添った形でできあがる。
【0087】
このように、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、転写部11にひけを発生させず、かつ樹脂内圧が残存することなく、要求される形状精度で形成した転写面11を有し、内部歪みの低いものとすることができる。さらに、突起形状40により、凹形状の不完全転写部22の成長による広がりを任意の領域に留めることができる。
【0088】
特に、本実施形態においては、転写面11は微細な凹凸形状を有しているため、被転写面(上被転写入子31)の細かいパターンへの樹脂充填を正確に行うために樹脂圧を高く設定する必要があるが、当該成形方法を用いることで、高樹脂圧で転写面11を形成しても、樹脂圧力を抜くことができるため、残留内部応力のないプラスチック成形品10が得られる。よって、成形金型30から取り出す際、または取り出した後の形状変形を防止することができる。
【0089】
なお、転写面11以外の面形状については、特に限られるものではなく、凸形状および凹形状の不完全転写部21,22、突起形状40は、転写面11以外のいずれかの面に形成されるものであればよい。また、凸形状および凹形状の不完全転写部21,22、突起形状40の形成数も複数であっても良い。また、上記第2の成形方法を用いて成形するようにしても良い。
【0090】
以上説明したように、本発明に係るプラスチック成形品の成形方法によれば、高精度な光学鏡面や微細な凹凸のパターン等を有するプラスチック成形品を、低コストかつ高精度に金型形状を転写することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係るプラスチック成形品の第3の実施形態について説明する。なお、上記第1〜第2の実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。
【0092】
[プラスチック成形品]
図9に本実施形態に係るプラスチック成形品の斜視図を示す。このプラスチック成形品10は、凹形状を有する転写面11を上面に設け、凸形状の不完全転写部21を下部に、凹形状の不完全転写部22a,22bを転写面側面の2面に設けたものである。さらに、突起形状40a,40bを、それぞれ凹形状の不完全転写部22a,22bと同一面に有しており、凹形状の不完全転写部22a,22bは、突起形状40a,40bの近傍(根元部分)に設けられている。
【0093】
[プラスチック成形品の成形方法]
図9に示すプラスチック成形品10の成形方法について説明する。図10は、図9に示すプラスチック成形品の一断面14におけるプラスチック成形品10(溶融樹脂37)、およびこれを画成する成形金型30の断面を示している。
【0094】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂37を射出充填するものである。キャビティは、上被転写入子31、下壁面38(38a,38b)、可動入子39と、側壁面33によって画成されている。また、側壁面33には、それぞれエアスリット35とそれに連通する通気口36が設けられている。また、下壁面38の一部は、可動入子39で画成されており、可動入子39は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。さらに、壁面33には、突起形状40a,40bに相当する部分となる、凹形状部41a,41bが形成されている。
【0095】
可動入子39をキャビティ側に摺動させた状態(図10(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂37は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。ここで、溶融樹脂37の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、両側のエアスリット35から圧縮空気に送り込むようにする。
【0096】
次いで、図10(b)に示すように、可動入子39をキャビティ下面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。この可動入子39の後退によりキャビティ容積が膨張し、溶融樹脂37もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子39の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂37の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、エアスリット35からの圧縮空気により、加圧されている側壁面33,34は、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22a,22bが成形される。さらに、突起形状40a,40bはキャビティ転写面領域と比較すると、早く冷却固化するため、剥離後に収縮により成長していく凹形状の不完全転写部22a,22bは、収縮速度の早い、突起形状40の根元に添った形でできあがる。
【0097】
このように、本実施形態においても、上記第1〜第2の実施形態と同様に、転写部11にひけを発生させず、かつ樹脂内圧が残存することなく、要求される形状精度で形成した転写面11を有し、内部歪みの低いものとすることができる。さらに、突起形状40により、凹形状の不完全転写部22の成長による広がりを任意の領域に留めることができる。
【0098】
(第4の実施形態)
次に、本発明に係るプラスチック成形品の第4の実施形態について説明する。なお、上記第1〜第3の実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。
【0099】
図11(a)に本実施形態に係るプラスチック成形品の斜視図を示す。なお、図11(b)は、図11(a)に示すプラスチック成形品10に隠線を付加した図であり、図11(c)は、図11(b)に図12に示す各断面を付したものである。図11に示すプラスチック成形品10の転写面11,12は光学鏡面であり、プラスチック成形品10はプラスチックレンズ10である。
【0100】
また、図12(a)はプラスチックレンズ10の転写面11に垂直なある面(一点鎖線13aで示す)における断面14aでの断面図、図12(b)はプラスチックレンズ10の転写面11に垂直なある面(一点鎖線13bで示す)における断面14bでの断面図、図12(c)はプラスチックレンズ10の転写面11に垂直なある面(一点鎖線13cで示す)における断面14cでの断面図である。
【0101】
また、図13に、図11に示すプラスチックレンズ10の金型キャビティ内における転写面11側から見た上面図を示す。なお、図13(a)は、可動入子の摺動直後の樹脂内圧が抜けた瞬間の上面図、図13(b)は冷却固化後の上面図を示している。また、図14はプラスチックレンズ10を、取り付け基準面16により、所定の空間内に取り付けした例を示しており、図14(a)は、転写面側面を正面にした図であり、図14(b)は転写面を正面とした図である。
【0102】
このプラスチックレンズ10は、レンズ短手方向における端部の側面に凸形状の不完全転写部21a,21bを、長手方向における端部の側面に突起形状40と凹形状の不完全転写部22a,22bを設けた成形品である。ただし、凸形状の不完全転写部21a,21bは、図12(a)の断面14aに示すように長手端部においては、凸形状を有するが、図12(b)の断面14bに示すように長手中央に近づくにつれて凹形状の不完全転写部22c,22dへと連続的に変化している(図10(b))。また、プラスチックレンズ10は、長手端部の両側面に、金型形状を転写したレンズ取り付け基準面16を有している。
【0103】
本実施形態に係るプラスチック成形品10の成形方法は、上記実施形態と同様の方法によれば良く、凸形状の不完全転写部21a,21bは、成形金型(図示せず)の可動入子に対応し、凹形状の不完全転写部22a,22bは、成形金型のエアスリット(または優先剥離部)に対応する。上述のように、この成形方法によれば、可動入子の後退動作直後のタイミングにおいて、プラスチック成形品は樹脂体積膨張に伴い、図13(a)に示すように可動入子に対応する凸形状の不完全転写部21a,21bは長手方向の全域において凸形状に、突起形状40の根元の不完全転写部22a,22bが凹形状になる。
【0104】
しかしながら、図13(a)に示すような形状から冷却固化による樹脂収縮が起こると、成形品端部においては、エアスリットに相当する凹形状の不完全転写部22が突起形状40の根元に添って自由面として動いて収縮を吸収するが、成形品中央部においては、収縮を吸収するのは、可動入子より剥離した凸形状の不完全転写部21a,21bのみになるため、凸形状の不完全転写部21a,21bは収縮に伴い、凹形状の不完全転写部22c,22dに変化する。
【0105】
その結果、図13(b)に示すように、可動入子に対応する不完全転写部は、端部凸形状21a,21bから連続的に中央部にかけて凹形状22c,22dへと変化した成形品が成形される。
【0106】
このように、本実施形態においても、上記第1〜第3の実施形態と同様に、成形金型を用いた射出成形法により、可動入子に対応する部分に凸形状の不完全転写部21a,21bおよび凹形状の不完全転写部22c,22dを、また突起形状40とその根元のエアスリットに対応する部分に凹形状の不完全転写部22a,22bを、それぞれ形成することにより、転写面11,12にひけを発生させず、かつ樹脂内圧が残存することなく、要求される形状精度で形成した転写面11,12を有し、内部歪みの低いものとすることができる。
【0107】
ここで、凸形状及び凹形状の不完全転写部21,22は、成形金型の形状を転写していない自由曲面である。したがって、不完全転写部の領域を使用したプラスチック成形品の空間内の位置決めは、不安定となり、精度が得られないこととなる。そこで、本実施形態に係るプラスチック成形品10のように、不完全転写部とは別に、凸形状または凹形状の不完全転写部21,22の両端に、凸形状を超える高さの金型形状を転写した取り付け基準面16を設けることが好ましい。これにより、凸形状及び凹形状の不完全転写部を使用することなくプラスチック成形品を高精度に空間内での位置決め及び取り付けが可能となる。
【0108】
また、この取り付け基準面16にも、上述の内部残留応力除去による、形状の高精度化の効果は及ぶこととなるので、取り付け基準面16の形状転写精度も優れたプラスチック成形品を提供することができる。なお、取り付け基準面16の位置、形状、数は特に限られるものではなく、転写面とは異なるいずれかの位置に設けるようにすればよい。
【0109】
例えば、図14(b)に示すように、プラスチックレンズ10のZ軸方向53を空間に高精度に位置決めして使用できるため、プラスチックレンズ10を用いた光学装置の光学特性を優れたものにすることが可能である。
【0110】
また、突起形状40も、凹形状の不完全転写部を含まず、且つ冷却収縮の影響を受けないで高精度な転写性を有することとなるので、突起形状部分を取り付け基準面16とするも好ましい。例えば、図14に示すように、X軸方向51、Y軸方向52の取り付け基準として利用することができる。このようにすることにより、プラスチック成形品の取り付け基準面を、不完全転写部とは別に有することで凸形状及び凹形状を使用することなく、プラスチック成形品10を高精度に空間内に位置決めし、取り付けることができる。
【0111】
(光学素子)
以上説明した本発明に係るプラスチック成形品を、その転写面の少なくとも1つを光学鏡面に形成した光学素子(プラスチックレンズ、プラスチックミラー等)として用いることが好ましい。光学素子としてのプラスチック成形品は、高い形状精度の要求に加えて、内部歪みの低減も要求される。上述のように、本発明に係るプラスチック成形品は、内部残留応力が非常に低いため、内部歪みも非常に小さい成形品とすることが可能となる。よって、このプラスチック成形品を光学素子として用いることにより、複屈折の少ない優れた効果を有する光学素子とすることができる。また、取り付け基準面を有することにより(図11〜図14)、位置決め精度および光学特性をさらに優れたものとすることができる。
【0112】
例えば、図7に示したプラスチック成形品10は、転写面11を光学鏡面とした光学素子(光学ミラー)に適用することができる。該光学素子によれば、微小な散乱効果を有する回折格子を構成できる。また、図9に示したプラスチック成形品10は、転写面11を凹型の光学鏡面としたプラスチックミラーに適用することができる。また、図11に示したプラスチック成形品10は、転写面11を光学鏡面(例えば、入射面)、転写面12を光学鏡面(例えば、出射面)としたプラスチックレンズに適用することが好適である。
【0113】
(マルチビーム走査光学装置)
さらに、本発明に係るプラスチック成形品を適用した光学素子は、光学鏡面の高形状精度の効果に加え、低内部歪みによる低複屈折が実現できるため、その光学性能を優れたものとすることができる。
【0114】
例えば、通常の成形によって得られるプラスチックレンズの内部歪みは、成形品内の場所ごとに偏在するため、マルチビームを用いる走査光学系においては、各ビームの副走査方向の光束入射位置が異なる。このため、マルチビームのビーム間に与える複屈折の影響が異なることとなり、ビーム毎の強度や偏光特性などの光学性能に差異を生み出すという問題があった。しかしながら、本発明に係るプラスチック成形品を適用したプラスチックレンズは内部歪みが無い為、マルチビーム走査光学系に活用することで、より優れた効果を発揮することができる。
【0115】
図15に、本発明に係る光走査装置の一実施形態であるマルチビーム走査光学装置の装置構成図を示す。このマルチビーム走査光学装置100は、複数の発光源101(ch1〜ch4)からのビームを、共通のカップリングレンズ102により以後の光学系にカップリングし、カップリングされた複数ビームを、共通の線像結像光学系(シリンドリカルレンズ104)により、光偏向器105の偏向反射面近傍に主走査方向に長く、副走査方向に分離した複数の線像として結像させ、光偏向器105により同時に等角速度的に偏向させ、偏向ビームを共通の走査光学系(第1走査レンズ106,第2走査レンズ107)を透過し、折り曲げミラー108により光路を折り曲げられ、被走査面(感光体109)上に、副走査方向に分離した複数の光スポットとして集光し、これら複数の光スポットとにより複数走査線を同時走査するものである。なお、符号103は、光束周辺部を遮断してビーム整形するアパーチュアである。また、ビームの1つは、光走査に先立ってミラー110に入射し、レンズ111により受光素子112に集光され、受光素子12の出力に基づき、各ビームの光走査の書込み開始タイミングが決定される。
【0116】
ここで、本発明に係るプラスチック成形品を適用したプラスチックレンズは、例えば、第2走査レンズ107に用いることが好適である。
【0117】
以上のように、本発明に係るプラスチック成形品を適用した光学素子は内部歪みがないため、副走査方向のどの位置を光束が透過したとしても、光束への複屈折の影響はほとんどなく、ビーム毎の光学性能の差異もほとんどなくなる。よって、当該光学素子を、マルチビーム走査光学系に活用することで、より優れた効果を発揮させることができる。
【0118】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0119】
上記実施形態において説明したキャビティ形状および該キャビティ形状を用いた射出成形により成形可能なプラスチック成形品の形状は一例であって、本発明に係るプラスチック成形品の成形方法を、他のキャビティ形状に適用することにより、様々な形状のプラスチック成形品を成形することができる。
【0120】
例えば、図4に示した、凸形状および凹形状の不完全転写部21,22とは、対向する面になくとも良く、例えば、側面23に対応する側に可動入子を設けて、側面23を凸形状の不完全転写部としても良い。また、突起形状40、凸形状および凹形状の不完全転写部21,22は、少なくとも各1箇所有していればよい。したがって、突起形状40や、各不完全転写部を2箇所以上有しても良い。また、凸形状の不完全転写部と凹形状の不完全転写部の形成数も同じでなくても良く、例えば、凸形状の不完全転写部を2箇所、凹形状の不完全転写部を1箇所有する等、としても良い。このように、不完全転写部を広くまたは多く設けるようにすることにより、不完全転写部への転写不良の誘導を可能とし、転写部の転写性能をさらに向上させることが可能となる。また、同一面に複数の突起形状40を有するようにしても良い。また、上記成形方法における樹脂充填の方法、樹脂圧力の発生方法や凸形状及び凹形状の不完全転写部の形成方法は、上述の例に限られるものではない。
【0121】
また、本発明に係るプラスチック成形品を光学素子に適用した例に説明したが、これに限られるものではなく、転写面が高い形状精度を要求される種々のプラスチック成形品に適用することができる。例えば、携帯電話等の電子機器等の外装部品にも適用することが好適である。
【符号の説明】
【0122】
10 プラスチック成形品(光学素子、プラスチックレンズ)
11 転写面(第1転写面)
12 転写面(第2転写面)
14 断面
16 取り付け基準面
21,21a,21b 凸形状の不完全転写部
22,22a,22b,22c,22d 凹形状の不完全転写部
23,24 側面
30 成形金型
31 上被転写入子
32 下被転写入子
33,33a,33b 側壁面(固定入子)
34 側壁面(可動入子)
35 エアスリット
36 通気口
37 溶融樹脂
38,38a,38b 下壁面
39 下壁面(可動入子)
40,40a,40b 突起形状
41,41a,41b 凹形状部
51 X軸方向取り付け基準
52 Y軸方向取り付け基準
53 Z軸方向取り付け基準
100 光走査装置
101 発光源
102 カップリングレンズ
103 アパーチュア
104 シリンドリカルレンズ
105 光偏向器
106 第1走査レンズ
107 第2走査レンズ
108 折り曲げミラー
109 感光体
110 ミラー
111 レンズ
112 受光素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【特許文献1】特開平6−304973号公報
【特許文献2】特開平11−28745号公報
【特許文献3】特開2000−84945号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品において、
前記転写面以外の少なくとも1つの面に突起形状を有し、該突起形状を有する面と同一面に金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した凹形状の不完全転写部を有し、
かつ、前記転写面以外の少なくとも1つの面に凸形状の不完全転写部を有する
ことを特徴とするプラスチック成形品。
【請求項2】
前記凹形状の不完全転写部を、前記突起形状の近傍位置に有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品。
【請求項3】
前記転写面に垂直な断面形状における、該転写面の垂直方向の成形品厚みaと該転写面の平行方向の成形品厚みbとは、a/b<1の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形品。
【請求項4】
前記成形品厚みaは、前記転写面の垂直方向の成形品厚みの最小値であり、
前記成形品厚みbは、前記転写面の平行方向の成形品厚みの最大値であることを特徴とする請求項3に記載のプラスチック成形品。
【請求項5】
前記凹形状の不完全転写部および前記凸形状の不完全転写部を、前記転写面以外の対向する面にそれぞれ有することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のプラスチック成形品。
【請求項6】
前記凹形状の不完全転写部および前記凸形状の不完全転写部を、前記転写面以外の同一面に有することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のプラスチック成形品。
【請求項7】
前記突起形状を同一面、または異なる面に複数有することを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載のプラスチック成形品。
【請求項8】
前記突起形状は、金型のキャビティ形状を転写した取り付け基準面であることを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載のプラスチック成形品。
【請求項9】
金型のキャビティ形状を転写した取り付け基準面をさらに有することを特徴とする請求項1から8までのいずれかに記載のプラスチック成形品。
【請求項10】
前記転写面のうち、少なくとも1つは、光学鏡面に形成された光学素子であることを特徴とする請求項1から9までのいずれかに記載のプラスチック成形品。
【請求項11】
金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品の成形方法であって、
少なくともキャビティ壁面の一部に通気部が設けられ、かつ、該通気部が設けられるキャビティ壁面の一部に凹形状部が設けられており、
樹脂の射出充填後の所定タイミングにおいて、
前記通気部より圧縮空気を送り込み、
かつ、少なくともキャビティ壁面の一部を構成する可動入子を該キャビティから離れる方向に摺動させる
ことを特徴とするプラスチック成形品の成形方法。
【請求項12】
金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品の成形方法において、
少なくともキャビティ壁面の一部は、他のキャビティ壁面よりも前記樹脂との密着力が低い材料により形成した優先剥離部であって、かつ、該優先剥離部が設けられるキャビティ壁面の一部に凹形状部が設けられており、
樹脂の射出充填後の所定タイミングにおいて、
少なくともキャビティ壁面の一部を構成する可動入子を該キャビティから離れる方向に摺動させる
ことを特徴とするプラスチック成形品の成形方法。
【請求項13】
前記凹形状部を2以上有する金型を用いた請求項11または12に記載のプラスチック成形品の成形方法。
【請求項14】
被走査面を複数の光束で走査するマルチビーム型の光走査装置において、
請求項10に記載のプラスチック成形品を、各光束の入射位置が副走査方向において異なる光学素子として有することを特徴とする光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−20511(P2012−20511A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160606(P2010−160606)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】