説明

プラスチック成形品の仕上げ装置

【課題】成形品のパーティングライン等に生じるバリを自動的に除去し、除去後の切削屑が生じないプラスチック成形品の仕上げ装置を提供する。
【解決手段】成形品を保持する治具と、上記成形品に生じたバリに押し付ける加熱具とを備え、上記加熱具は、上記成形品に生じたバリと接触する面に設けられた合成ゴムと、上記合成ゴムを所定の温度に加熱するヒーターから構成され、上記合成ゴムを上記ヒーターにて所定の温度に加熱した後、上記成形品に生じたバリに上記合成ゴムを押し付け、上記バリを溶かして、上記バリが溶けたものを上記成形品の表面に溶着させて平坦にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形品の表面仕上げの際に、パーティングライン等に生じるバリを除去して仕上げるプラスチック成形品の仕上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、射出成形等の成形法で製造されたプラスチック成形品の表面には、金型の合わせ目に相当する部分であるパーティングラインに、細い線状の糸バリが生じやすく、外観上あるいは機能上問題があった。そのため従来から、このようなパーティングラインに生じた糸バリをナイフや、やすり等で切削除去することにより、成形品の表面仕上げを行っていた。
【0003】
手作業でこのような作業を行うと、仕上り精度にばらつきが生じるばかりでなく、製品の歩留りが大幅に低下するという問題があった。そのために、切削治具を回転させてパーティングラインに生じた糸バリを自動的に切削除去する装置(引用文献1,2参照)も発明されている。
【特許文献1】特開平5−000419号公報
【特許文献2】特開平5−127162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バリを除去する場合、従来の手作業では時間が掛かるという問題が生じ、また、手作業及び上述のような装置を用いたとしても、パーティングラインに生じたバリを切削することによって除去するので、バリを除去した後に切削屑が発生するので、その処理が必要となるという問題が生じている。
【0005】
そこで、本発明は、成形品のパーティングライン等に生じるバリを自動的に除去し、除去後の切削屑が生じないプラスチック成形品の仕上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラスチック成形品の仕上げ装置は、成形品を保持する治具と、上記成形品に生じたバリに押し付ける加熱具とを備え、上記加熱具は、上記成形品に生じたバリと接触する面に設けられた合成ゴムと、上記合成ゴムを所定の温度に加熱するヒーターから構成され、上記合成ゴムを上記ヒーターにて所定の温度に加熱した後、上記成形品に生じたバリに上記合成ゴムを押し付け、上記バリを溶かして、上記バリが溶けたものを上記成形品の表面に溶着させて平坦にすることを特徴とする。
【0007】
さらに、上記治具によって成形品を回転させて、上記成形品のバリが生じている面を上記合成ゴムと接触する方向に移動させることも可能である。
【0008】
上記合成ゴムと上記成形品の間にフィルムを供給するフィルム供給装置を設けて、上記合成ゴムを上記成形品に押し付ける際に、上記フィルムの上から上記合成ゴムを上記成形品に生じたバリに押し付けることもできる。
【0009】
上記治具に上記成形品をセットする成形品運搬手段を備えることも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプラスチック成形品の仕上げ装置は、成形品を保持する治具と、上記成形品に生じたバリに押し付ける加熱具とを備え、上記加熱具は、上記成形品に生じたバリと接触する面に設けられた合成ゴムと、上記合成ゴムを所定の温度に加熱するヒーターから構成され、上記合成ゴムを上記ヒーターにて所定の温度に加熱した後、上記成形品に生じたバリに上記合成ゴムを押し付け、上記バリを溶かして、上記バリが溶けたものを上記成形品の表面に溶着させて平坦にすることにより、切削屑を生じることなく自動的に成形品のパーティングライン等に生じたバリを除去し成形品の仕上げを行うことが可能となる。
【0011】
さらに、上記治具によって成形品を回転させて、上記成形品のバリが生じている面を上記合成ゴムと接触する方向に移動させることにより、成形品の向きを変える手作業を省略することができる。
【0012】
上記合成ゴムと上記成形品の間にフィルムを供給するフィルム供給装置を設けて、上記合成ゴムを上記成形品に押し付ける際に、上記フィルムの上から上記合成ゴムを上記成形品に生じたバリに押し付けることにより、パーティングライン等に生じたバリ除去後の成形品の表面に光沢やくすみを得ることが可能となり、成形品に求められる仕上げに適宜応じることが可能となる。
【0013】
上記治具に上記成形品をセットする成形品運搬手段を備えることにより、成形品の製造からパーティングライン等に生じたバリの除去までを全て自動で行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のプラスチック成形品の仕上げ装置を、図を用いて以下に詳細に説明する。プラスチック成形品には、成形の際に金型の合せ目にあたる部分のパーティングライン上にバリが生じる。本発明のプラスチック成形品の仕上げ装置は、上記パーティングライン等に生じたバリを、従来のように削り取るのではなく、熱を加えて、上記バリを溶かして、上記バリが溶けたものを上記成形品の表面に溶着させて平坦にすることによって、仕上げを行う装置である。
【0015】
図1が第1の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置1の概略正面図(成形品運搬手段20を省略)であり、図2がプラスチック成形品の仕上げ装置1の側面図であり、図3が図1で省略した成形品運搬手段20を図1とは反対側から見た概略正面図である。従って、図1と図3は向かい合った位置関係となり、図1,3に記載されているものを合わせると、本発明のプラスチック成形品の仕上げ装置1の全体となる。
【0016】
第1の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置1は、成形品18のパーティングライン上に生じたバリ19を除去するための装置であり、上記成形品18を保持する治具2と、上記成形品18に生じたバリ19を熱で溶かすための加熱具3を備え、さらに、上記治具2に上記成形品18を移動させるための成形品移運搬手段20を備える。
【0017】
上記治具2および上記加熱具3は下部ステージ4上に配置され、上記治具2は、上記下部ステージ4上に設けられたレール17に沿って移動する移動機構を備えた移動ステージ5に設けられた、成形品18を保持する保持台10、上記保持台10の左右に配置された2つの支柱6、上記支柱6に回転可能に保持される軸7、上記軸7に対して垂直に固定された2本のアーム8、上記軸7を回転させるための、モーターやベルト等から構成される駆動部9から構成される。
【0018】
上記治具2は、上記移動ステージ5によって、上記加熱具3の下方と、上記成形品運搬手段20の下方とを移動可能(図2に矢印で示す方向に移動可能)である。上記アーム8は、上記軸7が駆動部9によって回転することによって、水平方向と、下向きの垂直方向との間を移動可能となっている。
【0019】
上記保持台10の上部の前側には突部16が設けられ、上記アーム8の先端付近には2本のアーム8の互いに対向する面に突起11が設けられている。上記治具2に上記成形品18が最初にセットされる時、上記アーム8が水平方向になった状態で、上記保持台10と上記アーム8の突起11によって上記成形品18が保持される。その後、上記アーム8が垂直方向に移動し、上記突部16によって上記成形品18は上記保持台10に保持される状態となる。
【0020】
上記加熱具3は、上記成形品18のバリ19と接触する面に設けられた板状の合成ゴム13、上記合成ゴム13を所定の温度に加熱するヒーター12から構成される。上記合成ゴム13としてはシリコンゴムやフッ素ゴム等を用いるが、その他にも、ヒーター12の加熱温度に耐えうる合成ゴムであればよい。上記加熱具3はシリンダー14によって上下動され、上記シリンダー14はシリンダー支え15に固定され、上記シリンダー支え15が支柱34にて保持されている。
【0021】
上記成形品運搬手段20は、成形直後の成形品18を運搬してきて上記治具2へと移動させ、さらに仕上げ後の成形品18を次工程へと運搬するものであり、他の部材と同様に下部ステージ4上に設けられ、上記治具2等の正面となる位置に設置されている。
【0022】
上記成形品運搬手段20は、成形後の成形品18を運んでくる供給ベルトコンベア21と、仕上げ後の成形品18を次工程へと運ぶための排出ベルトコンベア22と、上記成形品18を上記供給ベルトコンベア21から上記治具2へと移動し、さらに上記治具2から上記排出ベルトコンベア22へと移動させる移動手段から構成される。
【0023】
上記移動手段は、支柱27に取り付けられた水平方向にスライドする水平スライド部材26と垂直方向にスライドする垂直スライド部材25によって上記成形品18を移動させるものであり、上記成形品18を保持するための2つの吸着部材24を、上記垂直スライド部材25の下端に設けられたアーム23に備えている。
【0024】
上記成形品18に生じたバリ19を除去する方法について説明する。上記加熱具3の下方に、上記成形品18に生じたバリ19が上向きとなるように、上記保持台10に上記成形品18をセットする。そして、上記ヒーター12によって、上記合成ゴム13を成形品18の樹脂の塑性変形温度付近まで加熱する。そして、上記シリンダー14を作動させて上記加熱具3を下方へ移動させ、上記合成ゴム13を上記成形品18に生じたバリ19に上から押し付ける。
【0025】
加熱された上記合成ゴム13が押し付けられると、上記バリ19は溶け始め、上記バリ19が溶けたものは、上記合成ゴム13が上記成形品18に押し付けられていることで、上記成形品18の表面に溶着されて、上記成形品18の表面は平坦となる。
【0026】
さらに、上記プラスチック成形品の仕上げ装置1の作動について図を用いて詳しく説明する。まず初めに、上記供給ベルトコンベア21によって成形後の成形品18が運ばれてくる。この時、上記成形品18はバリ19が生じている面が治具2の側(図3の手前側)となる状態で運ばれてくる。そして、所定の位置に上記成形品18が到着したら、水平スライド部材26と垂直スライド部材25によって、上記吸着部24を上記成形品18の上へと移動させ、図3に示すように上記成形品18を吸着して保持する。
【0027】
この時、上記治具2は、上記移動ステージ5によって、上記供給ベルトコンベア21と上記排出ベルトコンベア22の間に移動しており、上記アーム8は水平な状態となっている。
【0028】
上記成形品18を保持した状態で、水平スライド部材26と垂直スライド部材25が作動し、上記成形品18を移動させて、図4(b)に示すように、上記保持台10と上記アーム8の突起11の上に載せる。その後、上記吸着部24による吸着を解除し、上記垂直スライド部材25および上記水平スライド部材26が作動して、上記吸着部24は上記成形品18から離れる。
【0029】
このようにして、上記治具2に上記成形品18が載せられたら、上記移動ステージ5によって、上記治具2を上記加熱具3の下方へと移動させる。この時、上記成形品18のバリ19が生じている面が横向きとなっているので、上向きとなるように上記駆動部9の作動により軸7を回転させて、上記アーム8を垂直方向へと動かす。これによって、上記成形品18は向きを変え、図4(a)に示すように、上記バリ19が生じている面が上向きとなった状態で、上記突部16に引っ掛けられて上記保持台10に保持される。
【0030】
このように、上記成形品18を上記治具2に所定の向きにセットしている間に、上記ヒーター12を作動させ上記合成ゴム13を成形品18の樹脂の塑性変形温度付近まで加熱しておく。そして、上記成形品18のセットが完了したら、上記シリンダー14を作動させて、図5に示すように、上記加熱具3を下方へ移動させ、上記合成ゴム13を上記成形品18に生じたバリ19に押し付ける。
【0031】
上記合成ゴム13が押し付けられると、上記バリ19が加熱されて溶け始める。上記バリ19が溶けたものは、上記合成ゴム13が上記成形品18の表面に押し付けられた状態なので、上記成形品18の表面に溶着されて、上記成形品18の表面は平坦となり、上記成形品18の仕上げが完了する。
【0032】
上記バリ19が全て上記成形品18の表面に溶着されたら、上記シリンダー14を作動させて上記加熱具3を上方へ移動させ、上記ヒーター12による加熱を停止する。そして、上記駆動部9の作動により軸7を回転させて、上記アーム8を水平方向へと動かし、上記成形品18が元の向きに戻ったら、上記移動ステージ5の作動によって、図6に示すように、上記治具2を上記供給ベルトコンベア21と上記排出ベルトコンベア22の間に移動させる。
【0033】
このようにして上記成形品18のバリ19を除去している間に、上記供給ベルトコンベア21によって次の成形品18’を所定の位置に運んでおく。そして、バリ19が除去された成形品18と、次にバリ19を除去する成形品18’が所定の位置に配置されたら、水平スライド部材26と垂直スライド部材25の作動によって、2つの吸着部24をそれぞれ上記成形品18と上記成形品18’の上方に移動させ、図7に示すように、上記成形品18と上記成形品18’を同時に吸着し保持する。
【0034】
そして、上記水平スライド部材26と上記垂直スライド部材25の作動によって、図8に示すように、上記成形品18を上記排出ベルトコンベア21上に移動させ、上記成形品18’を上記治具2へと移動させる。そして、上記吸着部24による吸着を解除し、上記成形品18は上記排出ベルトコンベア22によって次工程へと運ばれて行き、上記成形品18’は移動ステージ5の作動によって上記加熱具3の下方へと移動され、引き続きバリ19の除去が行われる。
【0035】
このように、2つの上記吸着部24を設けてその間隔を調節することによって、一度の上記水平スライド部材26と上記垂直スライド部材25の作動で2つの成形品18,18’を同時に移動させることができるので、作動時間を短縮することができる。
【0036】
このように、本発明のプラスチック成形品の仕上げ装置は、バリを熱で溶かして除去することで、切削屑を生じることなく自動的に成形品のパーティングライン等に生じたバリを除去し成形品の仕上げを行うことが可能となる。
【0037】
次に、第2の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置1’について図を用いて説明する。第2の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置1’は、図9に示すように、第1の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置1に、フィルム供給装置28を追加したものであり、その他の構造は第1の実施形態と同じであるので、ここでは主に、上記フィルム供給装置28について説明する。
【0038】
上記フィルム供給装置28は、図9に示すように、上記成形品18のバリ19を除去する際に、上記成形品18と上記加熱具3の上記合成ゴム13の間にフィルム35を供給するものであり、フィルム供給リール29とフィルム巻取りリール30から構成され、上記供給リール29と上記巻取りリール30の間に複数のガイドを設け、上記加熱具3と上記成形品18の間に上記フィルム35を通過させる。
【0039】
上記プラスチック成形品の仕上げ装置1’は、図10に示すように、上記フィルム35を、上記加熱具3によって上記成形品18に押し付けながら上記バリ19を溶かして、上記成形品18の仕上げを行うものであり、これによって、仕上げ後の上記成形品18の表面の状態を変えることを可能にする。
【0040】
例えば、上記フィルム35として、PETフィルムを用いた場合、上記成形品18がAS・ABS樹脂成形品であると、上記成形品18の仕上げを行った表面には、光沢が発生する。また、上記フィルム35として、PEフィルムを用いた場合、上記成形品18がPET系樹脂成形品であると、上記成形品18の仕上げを行った表面には、くすみが発生する。これらは、一例ではあるが、上記フィルム35の材質と上記成形品18の材質の組み合わせによって、上記成形品18の仕上げを行った後の表面の状態を変えることができる。これにより、各成形品18の好ましい仕上げ状態を選択することも可能となる。
【0041】
ここまでは、コンパクトの蓋のような厚みが薄い形状の成形品18の側面のパーティングライン上に生じたバリを除去する装置について説明してきたが、次に、第3の実施形態として、クリーム容器のような広口容器およびそのキャップといった厚みのある形状の成形品31の上部に生じたバリ32を除去するための、プラスチック成形品の仕上げ装置1’’について説明する。
【0042】
本実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置1’’は、図11に示すように、上記成形品31を保持する治具33と、上記成形品31に生じたバリ32を熱で溶かすための加熱具3を備え、さらに、上記治具33に上記成形品31を移動させるための成形品移運搬手段20を備える。
【0043】
上記治具33は、上記移動ステージ5によって、上記加熱具3の下方と、上記成形品運搬手段20の下方とを移動可能であるが、これまでの実施形態とは異なり、単に上記成形品31を載せるための台となっている。
【0044】
上記加熱具3は、上記成形品31の上面に生じたバリ32と接触する面に設けられた板状の合成ゴム13、上記合成ゴム13を所定の温度に加熱するヒーター12から構成され、上記加熱具3はシリンダー14によって上下動され、上記シリンダー14はシリンダー支え15に固定され、上記シリンダー支え15が支柱34にて保持されている。
【0045】
上記成形品運搬手段20は、成形品31を運搬してきて上記治具33へと移動させ、さらに仕上げ後の成形品31を次工程へと運搬するものであり、他の部材と同様に下部ステージ4上に設けられ、上記治具33等の正面となる位置に設置されている。上記成形品運搬手段20は、成形後の成形品31を運んでくる供給ベルトコンベア21と、仕上げ後の成形品31を次工程へと運ぶための排出ベルトコンベア22と、上記成形品31を上記供給ベルトコンベア21から上記治具33へと移動し、さらに上記治具33から上記排出ベルトコンベア22へと移動させる移動手段から構成されており、上述の他の実施形態と同じものを用いており、詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置1’’の対象となる広口容器のような成形品31は、通常、金型から取り出す際に、上記成形品31の外側(底部)を取り出し機で吸着させて、上記成形品運搬手段20の上記供給用ベルトコンベア21に載置される。この時、載置された上記成形品31は、バリ32が生じている開口部が下向きとなっているので、上記バリ32を除去するためには、上記成形品31を反転させる必要がある。
【0047】
そのために、本実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置1’’には、上記成形品31を反転させるための反転装置を設ける。上記反転装置を設置する場所は特に限定するものではなく、例えば、上記供給用ベルトコンベア21の端部、初めの端部あるいは終わりの端部、あるいは中間に設けてもよく、あるいは、上記治具33に一度上記成形品31を載せた後に、反転させるように配置することも可能である。
【0048】
さらに、上記プラスチック成形品の仕上げ装置1’’の作動について図を用いて詳しく説明する。まず初めに、上記供給ベルトコンベア21によって成形後の成形品31が運ばれてくる。この時、上記成形品31は既に上記反転装置(図示せず)によって反転された状態となっており、バリ32が生じている面が上向きとっている。そして、所定の位置に上記成形品31が到着したら、水平スライド部材26と垂直スライド部材25によって、上記吸着部24を上記成形品31の上へと移動させ、図12に示すように上記成形品31の底を吸着して保持する。
【0049】
この時、上記治具33は、上記移動ステージ5によって、上記供給ベルトコンベア21と上記排出ベルトコンベア22の間に移動している。上記成形品31を保持した状態で、水平スライド部材26と垂直スライド部材25が作動し、上記成形品31を上記治具33に載せる。その後、上記吸着部24による吸着を解除し、上記垂直スライド部材25および上記水平スライド部材26が作動して、上記吸着部24は上記成形品31から離れる。このようにして、上記治具33に上記成形品31が載せられたら、上記移動ステージ5によって、図11に示すように、上記治具33を上記加熱具3の下方へと移動させる。
【0050】
このように、上記成形品31を上記治具33にセットしている間に、上記ヒーター12を作動させ上記合成ゴム13を成形品31の樹脂の塑性変形温度付近まで加熱しておく。そして、上記成形品31のセットが完了したら、上記シリンダー14を作動させて、図13に示すように、上記加熱具3を下方へ移動させ、上記合成ゴム13を上記成形品31に生じたバリ32に押し付ける。
【0051】
上記合成ゴム13が押し付けられると、上記バリ32が加熱されて溶け始める。上記バリ32が溶けたものは、上記合成ゴム13が上記成形品32に押し付けられた状態なので、上記成形品31に溶着されて上記成形品31の仕上げが完了する。
【0052】
上記バリ32が全て上記成形品31に溶着されたら、上記シリンダー14を作動させて上記加熱具3を上方へ移動させ、上記ヒーター14による加熱を停止する。そして、上記移動ステージ5の作動によって、上記治具2を上記供給ベルトコンベア21と上記排出ベルトコンベア22の間に移動させる。
【0053】
このように、上記成形品31のバリ32を除去している間に、上記供給ベルトコンベア21によって次の成形品31’は所定の位置に配置されているので、水平スライド部材26と垂直スライド部材25の作動によって、2つの吸着部24をそれぞれ上記成形品31と上記成形品31’の上方に移動させ、図14に示すように、上記成形品31と上記成形品31’を同時に吸着し保持し、上記水平スライド部材26と上記垂直スライド部材25の作動によって、上記成形品31を上記排出ベルトコンベア21上に移動させ、上記成形品31’を上記治具33へと移動させる。
【0054】
そして、上記吸着部24による吸着を解除し、上記成形品31は上記排出ベルトコンベア22によって次工程へと運ばれて行き、上記成形品31’は移動ステージ5の作動によって上記加熱具3の下方へと移動され、引き続きバリ32の除去が行われる。
【0055】
このように、本発明のプラスチック成形品の仕上げ装置は、バリを熱で溶かして除去することで、切削屑を生じることなく自動的に成形品に生じたバリを除去し成形品の仕上げを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置の概略正面図であり成形品運搬手段を省略した図である。
【図2】第1の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置の概略側面図である。
【図3】図1で省略した成形品運搬手段を図1とは反対側から見た概略正面図である。
【図4】治具のアーム及び保持台の側面図であり、(a)がアームを垂直にした状態を示し、(b)がアームを水平にした状態を示す。
【図5】バリを除去している状態の第1の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置の概略側面図である。
【図6】バリ除去後に、成形品を成形品運搬手段へと移動した状態の第1の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置の概略側面図である。
【図7】バリ除去後の成形品と、次にバリを除去する成形品を吸着部によって吸着した状態を示す図である。
【図8】バリ除去後の成形品と、次にバリを除去する成形品を吸着部によって吸着し移動させた状態を示す図である。
【図9】第2の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置の概略正面図であり成形品運搬手段を省略した図である。
【図10】バリを除去している状態の第2の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置の概略側正面図である。
【図11】第3の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置の概略側面図である。
【図12】バリを除去する成形品を吸着部によって吸着した状態を示す図である。
【図13】バリを除去している状態の第3の実施形態のプラスチック成形品の仕上げ装置の概略側正面図である。
【図14】バリ除去後の成形品と、次にバリを除去する成形品を吸着部によって吸着した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1,1’,1’’ プラスチック成形品の仕上げ装置
2 治具
3 加熱具
4 下部ステージ
5 移動ステージ
6 支柱
7 軸
8 アーム
9 駆動部
10 保持台
11 突起
12 ヒーター
13 合成ゴム
14 シリンダー
15 シリンダー支え
16 突部
17 レール
18,18’ 成形品
19 バリ
20 成形品運搬手段
21 供給ベルトコンベア
22 排出ベルトコンベア
23 アーム
24 吸着部
25 垂直スライド部材
26 水平スライド部材
27 支柱
28 フィルム供給装置
29 フィルム供給リール
30 フィルム巻取りリール
31,31’ 成形品
32 バリ
33 治具
34 支柱
35 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を保持する治具と、上記成形品に生じたバリに押し付ける加熱具とを備え、
上記加熱具は、上記成形品に生じたバリと接触する面に設けられた合成ゴムと、上記合成ゴムを所定の温度に加熱するヒーターから構成され、
上記合成ゴムを上記ヒーターにて所定の温度に加熱した後、上記成形品に生じたバリに上記合成ゴムを押し付け、上記バリを溶かして、上記バリが溶けたものを上記成形品の表面に溶着させて平坦にすることを特徴とするプラスチック成形品の仕上げ装置。
【請求項2】
上記治具によって成形品を回転させて、上記成形品のバリが生じている面を上記合成ゴムと接触する方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品の仕上げ装置。
【請求項3】
上記合成ゴムと上記成形品の間にフィルムを供給するフィルム供給装置を設けて、上記合成ゴムを上記成形品に押し付ける際に、上記フィルムの上から上記合成ゴムを上記成形品に生じたバリに押し付けることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形品の仕上げ装置。
【請求項4】
上記治具に上記成形品をセットする成形品運搬手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチック成形品の仕上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−137432(P2010−137432A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315498(P2008−315498)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】