説明

プラスチック構造体、U字型側溝、トラフ又はマンホール

【課題】 プラスチック構造体の軽量化、廃プラスチックの再利用
【解決手段】 U字型側溝、トラフ又はマンホールなどに適用できるように鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチック構造体で構成した。プラスチック構造体は、鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強した強化プラスチックで製造された複数の構成部材を組み付けて接合した構成にしてもよい。またプラスチックには廃プラスチックを再利用してもよい。本発明によればコンクリート製のものに比べて軽量であり、これらは地下に埋設されたときに受ける圧力に対しても十分な耐力を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はU字型側溝、トラフ又はマンホールなどに用いることができるプラスチック構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下埋設物であるU字型側溝、トラフ又はマンホールは、コンクリート製のものが多く用いられている。また、特許文献1に記載されるように、これらの一部を構成する部位にプラスチックを用いたものも知られている。
【特許文献1】特開平8−189045
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地下埋設物であるU字型側溝、トラフ又はマンホールは、コンクリート製のものが多く用いられているが、これらは地下に埋設されたときに受ける圧力に充分な耐力を備えている必要があるためであり、重量も大きく、製品コストも高い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチックで構成したプラスチック構造体であり、U字型側溝、トラフ又はマンホールなどの地下埋設物を提供し得るものである。この場合、複雑な形状を単純な形状のプラスチック構造体で構成すべく、鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチックで製造された複数の構成部材を組み付けて接合する構成にしてもよい。またプラスチックには廃プラスチックを再利用してもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、U字型側溝、トラフ又はマンホールなどの地下埋設物を、鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチックで構成することができる。これらはコンクリート製のものに比べて軽量であり、地下に埋設されたときに受ける圧力に対しても十分な耐力を備えている。また、鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強した強化プラスチックで製造された複数の構成部材を組み付けて接合した構成することにより、鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチックで各部材を製造することが簡単になり、製造設備の設備コストを安価にすることができる。またプラスチックは廃プラスチックを再利用することにより、製品コストを安価にすることができるだけでなく、プラスチックゴミ問題を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の一実施形態に係るU字型側溝、トラフ又はマンホールを図面に基づいて説明する。
【0007】
本発明の一実施形態に係る電気用又は通信用マンホール10は、図1に示すように、断面がU字型のマンホール10の底部を構成する底部材11と、側壁を構成する側壁部材12と、マンホール10の上縁部を構成する上縁部材13を備えている。底部材11、側壁部材12及び上縁部材13はそれぞれ内部に鉄筋14を格子状に入れて補強した強化プラスチック15で構成している。内部に鉄筋14を入れて補強した強化プラスチック15は、例えば、所定の型内に、鉄筋14を設置した状態で、溶融樹脂を充填し、これを冷却することにより製造することができる。なお、図示は省略するが、補強材として鉄板を入れる場合も同様に製造することができる。このマンホール10は、このように内部に鉄筋14を格子状に入れて補強した強化プラスチック15で形成することが容易な適切な形状に分割されており、各構成部材はそれぞれマンホールを構成するように組付けられて接合ボルト16で固定されている。
【0008】
この実施形態では、図1に示すように、底部材11に側壁部材12を取り付け、側壁部材12の上縁に上縁部材13を取り付け、さらに上縁部材13の上面に蓋取付枠17を取り付け、上部にマンホール10の蓋18が設置できるようになっている。また、この実施形態では、マンホール10の各部材を接合する接合面にシール材(図示省略)を介在させて接合して、マンホール10に地下水が浸入したり、マンホール10から水が漏れたりするのを防止している。
【0009】
このように構成した電気用又は通信用マンホール10は、内部に鉄筋14を格子状に入れて補強した強化プラスチック15で構成しているので、地下に埋設されたときに受ける圧力に対して十分な耐力を備えている。また、従来のコンクリート製のものに比べて軽量である。またプラスチックに廃プラスチックを再利用することにより、製品コストを安価にすることができる。また、断面がU字型のマンホール10を、適切な形状の構成部材に分割し、各構成部材を電気用又は通信用マンホール10に組付けて接合したので、鉄筋14で補強したプラスチック15で各部材を製造することが簡単になり、また設備コストも低く抑えることができる。
【0010】
次に、変形例に係る電気用又は通信用マンホール10aを図2に示す。なお、同図において、図1に示す電気用又は通信用マンホール10と同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付している。
【0011】
図2に示す電気用又は通信用マンホール10aでは、電気用又は通信用マンホール10aの底部材11aは幅方向断面において中央が窪んで形成されている。また、この変形例に係る電気用又は通信用マンホール10aは、ケーブルを固定するのに用いるU字金具19がプラスチックに植設されている。
【0012】
次に、U字型側溝又はトラフを説明する。U字型側溝又はトラフ30は、図3に示すように、内部に鉄筋31を格子状に入れて補強した強化プラスチック32で形成することが容易なように適切な形状の構成部材に分割されており、各構成部材はそれぞれU字型側溝又はトラフ30を構成するように組付けられて接合ボルト33で固定されている。
【0013】
この実施形態では、U字型側溝又はトラフ30は、図3に示すように、断面がU字型の底部を構成する底部材34と、側壁を構成する側壁部材35と、U字型側溝又はトラフ30の蓋を構成する蓋部材36に分割している。底部材34、側壁部材35及び蓋部材36はそれぞれ内部に鉄筋31を格子状に入れて補強した強化プラスチック32で構成しており、底部材34に側壁部材35を組み付けて接合ボルト33で接合するようになっている。また、側壁部材35の上端には蓋部材36を設置するための段差が形成されており、図3に示すように、蓋部材36が嵌め込まれるようになっている。また、図4に示すように、蓋部材26に代えて、グレーチング蓋37を取り付けるタイプのU字型側溝又はトラフ30もあり、側壁部材35の上縁にグレーチング蓋37を取り付ける段差を設けている。この実施形態では、側壁部材35の斯かる段差部分は鉄板をL字型に曲げた金具38をプラスチック32に埋め込んでおり、グレーチング蓋37が当たるところを補強している。また、U字型側溝又はトラフ30の側壁部材35の長手方向の両端部には、図5に示すように、それぞれU字型側溝又はトラフ30を連結するときに、嵌まり込むように対応する凹凸39が設けられており、U字型側溝又はトラフ30を長手方向に組み合わせることができるようになっている。なお、図示は省略するが、ケーブルを敷設する金具はプラスチック32に植設して設けても良い。
【0014】
このU字型側溝又はトラフ30によれば、内部に鉄筋31を格子状に入れて補強した強化プラスチック32で構成しているので、地下に埋設されたときに受ける圧力に対して十分な耐力を備えている。また、従来のコンクリート製のものに比べて軽量である。またプラスチックに廃プラスチックを再利用することにより、製品コストを安価にすることができる。また、断面がU字型のU字型側溝又はトラフ30を、適切な形状の構成部材に分割し、各構成部材をU字型側溝又はトラフ30に組付けて接合したので、鉄筋31で補強したプラスチック32で各部材を製造することが簡単になり、また設備コストも低く抑えることができる。
【0015】
次に、下水用のマンホールを説明する。この下水用マンホール50は、図6に示すように、下水用マンホール50の地下空間51の底を構成する底部材52と、下水用マンホール50の地下空間51の側壁を形成する側壁部材53と、下水用マンホール50の地下空間51の天井を構成する天井部材54と、下水用マンホール50に人が出入する人孔55を構成する人孔壁部材56に分割されている。底部材52、側壁部材53、天井部材54及び人孔壁部材56の各構成部材はそれぞれ内部に鉄筋57を格子状に入れて補強した強化プラスチック58で構成されており、この実施形態では、各構成部材は下水用マンホール50を構成するように組付けられた後、接合ボルト60で接続されている。
【0016】
この実施形態では、図6に示すように、下水用マンホール50の地下空間51の側壁は、複数の側壁部材53を組み合わせて接合する構造とし、また人孔も複数の人孔壁部材56を組み合わせて接合したものである。このように、各構成部材を小型にすることにより、製造設備の設備コストを低く抑えることができる。また、人孔壁部材56には、人が出入するときに使う足掛金具61がプラスチック58に植設されている。また、天井部材54には、人孔と地下空間51を連通させる穴59が形成されている。
【0017】
この下水用マンホール50の組み付けは、まず底部材52に側壁部材53を接合ボルト60で接続し、地下空間51を形成する各側壁部材53を順に組付け接続し、さらに地下空間51の天井を構成する天井部材54を組付けて接続する。次に、天井部材54に形成された穴59に合わせて人孔壁部材56を組み付けて接合ボルト60で接続する。次に、人孔壁部材56の上面には蓋取付枠63を取り付け、上部に下水用マンホール50の蓋64を設置する。なお、この実施形態では、下水用マンホール50の各部材を接合する接合面にシール材を介在させて接合しており、下水用マンホール50に水が浸入したり、下水用マンホール50から水が漏れるのを防止している。
【0018】
この下水用マンホール50によれば、内部に鉄筋57を格子状に入れて補強した強化プラスチック58で構成しているので、地下に埋設されたときに受ける圧力に対して十分な耐力を備えている。また、従来のコンクリート製のものに比べて軽量である。またプラスチックに廃プラスチックを再利用することにより、製品コストを安価にすることができる。また、下水用マンホール50を適切な形状の構成部材に分割し、各構成部材を組付けて接合したので、鉄筋57で補強したプラスチック58で各部材を製造することが簡単になり、また設備コストも抑えることができる。また、プラスチックは、通常の家庭や工場から排出されるような下水に対して、安定した性質を備えているので、下水用マンホールに好適である。
【0019】
以上、本発明の一実施形態に係るプラスチック構造体として、U字型側溝、トラフ、マンホールなどを例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
内部に鉄筋を格子状に入れて補強した強化プラスチックは他のプラスチック構造体、例えば、土止め壁、土止め擁壁に応用が可能であり、道路上の構造物として、歩道と車道又は官地と民地などの区画を分ける境界ブロック、さらに、宅地境界に設置する保安上又は目隠し用の境界ブロック壁等にも適用することができる。
【0021】
また、プラスチックには、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどを用いることができる。また、廃プラスチックを再利用することもできる。廃プラスチックを利用する場合には、廃プラスチックに純粋なプラスチックのペットなどを混合して用いても良い。
【0022】
また、上述した実施形態では、プラスチック構造体は、それぞれ鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強した強化プラスチックで製造した複数の構成部材を組み付けて接合する構造を備えているが、本発明に係るプラスチック構造体は、それぞれ鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強した強化プラスチックで一体的な構造で製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気用又は通信用マンホールの縦断面図。
【図2】電気用又は通信用マンホールの変形例を示す縦断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るU字型側溝又はトラフの縦断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るU字型側溝又はトラフの縦断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るU字型側溝又はトラフの斜視図。
【図6】本発明の一実施形態に係る下水用マンホールの縦断面図。
【符号の説明】
【0024】
10 電気用又は通信用マンホール
11 底部材
12 側壁部材
13 上縁部材
14 鉄筋
15 プラスチック
16 接合ボルト
17 蓋取付枠
18 蓋
26 蓋部材
30 U字型側溝又はトラフ
50 下水用マンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチックで構成したことを特徴とするプラスチック構造体。
【請求項2】
鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチックで製造した複数の構成部材を組み付けて接合する構造を備えたプラスチック構造体。
【請求項3】
略U字形の断面形状を備えたU字型側溝又はトラフであって、底部を構成する底部材と、側壁を構成する側壁部材のそれぞれを鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチックで構成し、前記底部材と側壁部材をU字型側溝又はトラフを構成するように組み付けて接合する構造を備えたことを特徴とするU字型側溝又はトラフ。
【請求項4】
マンホールを分割した各部材を鉄筋又は鉄板を内部に入れて補強したプラスチックで構成し、前記各部材がマンホールを構成するように組み付けて接合する構造を備えたことを特徴とするマンホール。
【請求項5】
前記プラスチックは廃プラスチックを再利用したものであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のプラスチック構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−161481(P2006−161481A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356974(P2004−356974)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】