説明

プラスチック製光学レンズの成形方法

【課題】多くの型枠を必要とせず、複雑なレンズ特性のレンズであっても対応可能なプラスチックレンズの成形方法を提供すること。
【解決手段】第1及び第2のレンズ型枠2,3とガスケット4からなる母型1のガスケット4の第1のレンズ型枠2の下方位置に複数のアクチュエータ17を配設し、駆動軸18を所定の進出位置となるように制御する。これによって第1のレンズ型枠2を所望のレンズ面形状に変形させる。そして、駆動軸18を進出位置で保持させた状態で注入口7からレンズ成形用のモノマーを注入し、熱硬化させてレンズを得るようする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックを原料とした光学レンズの成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から成型用の母型のキャビティ内にレンズ成形用の液状成形材料としての熱硬化性プラスチック材料(モノマー)を充填し、これを加熱してレンズを成形する成形方法が知られている。このような成形方法の一例として特許文献1及び特許文献2を示す。特許文献1ではその図1及び図2に示すように保持部材としてのガスケット14に対して第1及び第2の型枠12,13を装着し母型を構成し、ガスケット14に形成した充填口16から内部に液体状の熱硬化性プラスチック材料を注入し、これを硬化させてプラスチックレンズを得るようにしている。あるいは、このようなガスケットではなくレンズを成形する面を所定間隔あけて2つの型枠を向いあわせた状態で型枠保持部材としてテープを使用する場合がある。また、材料として熱可塑性プラスチック材料を使用することも可能である。特許文献2でも同様に第1及び第2のモールド3,4をガスケット2に装着することで鋳型(母型)を構成するようにしている。
これらように成型用の母型内にプラスチック材料を導入してプラスチックレンズを成形する場合にはすでに型枠がレンズ面の形状をなしているため、基本的に切削加工をしなくともよく、材料費も切削で廃棄する部分がないため、切削加工によってレンズを作製する場合よりもコスト削減となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−341538号公報
【特許文献2】特開2005−132043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レンズを例えば眼鏡レンズとして利用する場合、ユーザーの様々な処方に対応させるためには度数に応じて型枠を数多く用意しなければならない。また、S度数だけでなくC度数(乱視度数)や累進特性を考慮する場合には更に型枠の種類は多く必要となる。その場合には型枠の製作コストがかかってしまうことになってしまう。
また、複雑なレンズ特性のレンズを作製する場合には型自体の作製も困難であり、実際には特殊なレンズ特性の場合には切削で対応するケースも多い。そのため、多くの種類の型枠を用意しなくとも複雑なレンズ特性のレンズに対応できるプラスチックレンズの成形方法が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、多くの型枠を必要とせず、複雑なレンズ特性のレンズであっても対応可能なプラスチックレンズの成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明では、レンズの表裏いずれかのレンズ面を成形する面(以下、レンズ成形面とする)を有するレンズ型枠と、レンズの外縁を成形するとともに前記レンズ型枠を前記レンズ成形面が上向きとなるように保持する保持部材とからなる容器中にレンズ成形用の成形材料を導入し、同成形材料を前記容器内形状に応じて流動させた後、同成形材料の硬化を図り、その後レンズ型枠及び保持部材を離型させてレンズを得るようにしたプラスチック製光学レンズの成形方法であって、
移動体を直線的に進退させるアクチュエータを所定間隔を空けて二次元方向に複数隣接配置するとともに、前記レンズ型枠を可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成し、前記各アクチュエータの前記移動体先端を前記レンズ型枠の外側位置に対向配置させ、前記各アクチュエータをそれぞれの前記移動体が所定の進出位置となるように駆動制御して、前記移動体によって前記レンズ型枠を押圧して前記レンズ成形面を所定のレンズ特性の面となるように変形させ、その変形状態で前記レンズ型枠を保持しつつレンズ成形用の成形材料を容器内に導入してレンズの硬化を図るようにしたことをその要旨とする。
また請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記各アクチュエータは前記レンズ型枠の下側に配設されて、前記移動体先端はアクチュエータ設置面に対して垂直方向に進退するようにしたことをその要旨とする。
また請求項3の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記レンズ成形用の成形材料は液状の熱硬化性プラスチックであり、熱、光又はマイクロ波のエネルギーを受動させて重合硬化するようにしたことをその要旨とする。
また請求項4の発明では請求項1又は2の発明の構成に加え、前記レンズ成形用の成形材料は熱可塑性プラスチックであり、熱又はマイクロ波のエネルギーを受動させて同熱可塑性プラスチックを溶融させ、前記容器内に注入するようにしたことをその要旨とする。
【0006】
これらのような構成では、可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成されたレンズ型枠と対向する位置から複数のアクチュエータの移動体を進出させて先端でレンズ型枠を押圧し、所定のレンズ特性の面となるように変形させる。そして、その変形状態を維持して容器内部にレンズ成形用の成形材料を導入し、その成形材料を容器内の形状に応じて流動させた後に成形材料の硬化を図り、硬化した後にレンズ型枠及び保持部材を離型させてレンズを得るようにする。
ここに、本発明のアクチュエータとは入力エネルギーによって移動体を直線的に進退させる駆動装置であって、電気的なアクチュエータとしては電磁ソレノイドを駆動源としたり、モータを駆動源としたり、空圧を利用するものが一般的であるが、移動体の進退量を制御することが可能な駆動源であれば特に限定されるものではない。本発明のアクチュエータは移動体の進出位置が制御されるようになっている。制御方法は入力エネルギーの種類によって異なる。また、移動体はアクチュエータに内蔵された軸体自体、あるいは内蔵された軸体から直接的あるいは間接的に連動させられる押動部材が想定される。
アクチュエータは二次元方向に複数隣接配置されていることが必要である。このような、二次元方向の拡がりがないとレンズ面形状に応じた変形を広い範囲で実行することができないからである。移動体先端が同一平面上にあることが好ましいが、相互の位置関係が分かっていれば必ずしも移動体先端が同一平面上になくとも構わない。
アクチュエータの数は特に限定されるものではないが、数が多いほどレンズ型枠の膜厚を薄くでき、より精密な変形を担保できる。また、全体に散点的にバランスよく配置することが好ましい。
可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体からなるレンズ型枠の材質としては例えば、シリコンゴム、ナイロン等の耐熱性のある素材が好ましい。また、アクチュエータの移動体による押動によって皺がよらないために十分な弾性を備えることが好ましい。
【0007】
また、各アクチュエータはレンズ型枠の下側に配設されて、移動体先端は垂直方向に進退することが好ましい。つまり、容器の底となるレンズ型枠の裏側から移動体で押圧することが好ましい。
また、容器は上面が他の型枠で塞がれていてもよく、開放されていてもよい。また、レンズ成形用の成形材料としては、液状の熱硬化性プラスチックを使用することが想定される。液状の熱硬化性プラスチックは硬化させるために熱、光又はマイクロ波のエネルギーを受動させて重合硬化させる。
プラスチックレンズの材料としては、熱可塑性プラスチックを使用することも想定される。この場合に熱可塑性プラスチックは常温で固化しているため、一旦加熱して溶融させて容器内形状に応じて流動させる必要がある。
【0008】
また請求項5の発明では、レンズの裏面となる面を成形するためのレンズ成形面を有する第1のレンズ型枠と、同レンズの表面となる面を成形するためのレンズ成形面を有する第2のレンズ型枠とをレンズ成形面同士を正対させた状態で所定間隔離間させて配置し、レンズの外縁を成形するための保持部材を前記第1及び第2のレンズ型枠間に配設することで同両レンズ型枠の間隔を保持させながら同両レンズ型枠及び保持部材に包囲された外空間と区画された内部空間を有する母型を形成させ、前記保持部材の一部に形成された注入口からレンズ成形用の液状成形材料を前記母型内に注入して同液状成形材料の硬化を図り、その後同両レンズ型枠を離型させてレンズを得るようにしたプラスチック製光学レンズの成形方法であって、移動体を直線的に進退させるアクチュエータを所定間隔間を空けて二次元方向に複数隣接配置するとともに、前記第1又は第2のいずれか、もしくは両方のレンズ型枠を可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成し、前記各アクチュエータの前記移動体先端を膜体から構成される前記レンズ型枠の外側位置に対向配置させ、前記各アクチュエータをそれぞれの前記移動体が所定の進出位置となるように駆動制御して前記移動体によって膜体から構成される前記レンズ型枠を押圧して前記レンズ成形面を所定のレンズ特性の面となるように変形させ、その変形状態で膜体から構成される前記レンズ型枠を保持しつつレンズ成形用の成形材料を容器内に導入してレンズの硬化を図るようにしたことをその要旨とする。
また請求項6の発明では請求項5の発明の構成に加え、前記各アクチュエータは膜体から構成される前記レンズ型枠に正対させた状態で配設されて、前記移動体先端はアクチュエータ設置面に対して垂直方向に進退するようにしたことをその要旨とする。
また請求項7の発明では請求項5又は6の発明の構成に加え、前記第1又は第2のいずれかのレンズ型枠を可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成するとともに、いずれか他方のレンズ型枠を前記レンズ成形用の液状成形材料と同質の成形材料から成形したレンズ前駆体から構成し、前記母型内に注入した前記レンズ成形用の液状成形材料とを重合硬化させる際に同レンズ前駆体と一体化するようにしたことをその要旨とする。
また請求項8の発明では請求項5又は6の発明の構成に加え、 前記レンズ成形用の成形材料は熱可塑性プラスチックであり、熱又はマイクロ波のエネルギーを受動させて同熱可塑性プラスチックを溶融させ、前記容器内に注入するようにしたことをその要旨とする。
また請求項9の発明では請求項5〜7のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記レンズ成形用の液状成形材料は熱、光又はマイクロ波のエネルギーを受動して重合硬化する熱硬化性プラスチックであることをその要旨とする。
【0009】
上記請求項5〜9のような構成では、第1及び第2のレンズ型枠と保持部材からなる母型の内部空間にレンズ成形用の液状成形材料を注入して同液状成形材料の硬化を図り、その後両レンズ型枠を離型させてレンズを得るようにしたプラスチック製光学レンズの成形方法であって、第1及び第2のいずれか、もしくは両方のレンズ型枠を可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成し、複数のアクチュエータの移動体を膜体から構成したレンズ型枠と対面させ、移動体を進出させてレンズ型枠を押圧し、所定のレンズ特性の面となるように変形させる。そして、その変形状態を維持して母型内部に液状成形材料を導入し、その成形材料を母型内の形状に応じて流動させた後に成形材料の硬化を図り、硬化した後にレンズ型枠及び保持部材を離型させてレンズを得るようにする。
ここに、膜体から構成されていないレンズ型枠をレンズ成形用の液状成形材料と同質の成形材料から成形したレンズ前駆体から構成し、前記母型内に注入した前記レンズ成形用の液状成形材料とを重合硬化させる際に同レンズ前駆体と一体化するような構成を採用することが可能である。つまり、成形するためのレンズ型枠をそのまま成形予定レンズの一部としてしまうわけである。このように構成することで、レンズ型枠を下方のみ用意すればよいこととなり、上側のレンズ型枠が事実上不要となる。また、実際に母型内で液状成形材料を硬化させて成形する部分をごくわずかな部分とすることができるため、すでにレンズ面が成形されている場合にその収差の補正のために使用する等用途の幅が広がる。レンズ型枠と液状成形材料とは同一素材であることが好ましいが、屈折率や相溶性に問題がなければ同一でなくとも構わない。
また、レンズ成形用の液状成形材料としては、熱硬化性プラスチックを使用することが想定される。液状の熱硬化性プラスチックは硬化させるために熱、光又はマイクロ波のエネルギーを受動させて重合硬化させる。また、レンズ成形用の成形材料として熱可塑性プラスチックを使用することも可能であり、その場合には容器中に導入後に熱又はマイクロ波のエネルギーを受動させて溶融させ、前記容器内形状に応じて流動させるようにすることが好ましい。
また、各アクチュエータは膜体から構成されたレンズ型枠に正対するように配設されて、移動体先端は垂直方向に進退することが好ましい。つまり、母型のレンズ型枠の裏側から移動体で押圧することが好ましい。
【0010】
また請求項10の発明では請求項1〜9のいずれかの発明の構成に加え、移動体によって前記レンズ型枠を押圧して前記レンズ成形面を所定のレンズ特性の面となるように変形させた後に、その変形状態で前記レンズ型枠を保持しつつレンズ成形用の成形材料を容器内に導入してレンズの硬化を図るレンズ硬化工程の後で、前記移動体を進出位置にて保持した状態で同レンズを取り出し、前記移動体の保持された進出位置において次の成形のための前記レンズ型枠を保持させ次の前記レンズ硬化工程を実行するようにして同等なレンズ特性の面を持つ光学レンズを連続して作製するようにしたことをその要旨とする。
このような構成であれば、一旦確定した位置に進出した移動体上にレンズ型枠を置くことで先の形状と同様に型枠は変形するため、連続的に同等なレンズ特性の面を持つ光学レンズを効率的に作製できることとなる。
また請求項11の発明では請求項1〜10のいずれかの発明の構成に加え、基準レンズの基準面に対して成形予定レンズの前記レンズ面にどれだけのサグ量を与えるかを算出するサグ量算出工程と、可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成された前記レンズ型枠上に前記基準レンズを前記基準面が接触するように載置し、前記アクチュエータを駆動制御して前記基準面形状に応答して変形した前記レンズ型枠に前記移動体を当接させて、前記各アクチュエータ毎の前記移動体の初期位置を決定する移動体初期位置決定工程と、前記各アクチュエータの配設位置と対応する成形予定レンズの前記レンズ面上の基準位置を特定し、前記サグ量算出工程において同各基準位置に与えられたサグ量を基準進出位置にある前記移動体に対して付加して前記各移動体をそれぞれ新たに固有の進出位置に進出させる移動体固有進出工程とを有し、前記移動体初期位置決定工程において前記各移動体を初期位置に進出させた後に、前記基準レンズを取り除き、前記移動体固有進出工程において前記各移動体を新たな固有の進出位置に進出させて前記レンズ型枠について前記レンズ成形面を所定のレンズ特性の面となるように変形させるようにしたことをその要旨とする。
また請求項12の発明では請求項11の発明の構成に加え、前記アクチュエータは中心を通る直線に沿って同心円状に配置させられていることをその要旨とする。
【0011】
上記請求項10及び11のような構成においては、アクチュエータの移動体に初期位置を与えるために基準レンズを使用する。基準レンズを可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成されたレンズ型枠上に基準面が接触するように載置し、アクチュエータを駆動制御して基準面形状に応答して変形したレンズ型枠に移動体を当接させて、各アクチュエータ毎の移動体の初期位置を決定する。一方、基準レンズに対する成形予定レンズのレンズ面に与えるサグ量を算出する。そして、そのサグ量と同等の変形がされるように可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成されたレンズ型枠をアクチュエータの移動体はその配設位置、例えば水平方向位置a1〜anと対応する成形予定レンズのレンズ面上の基準位置p1〜pnに与えられたサグ量分(固有の進出量)だけ進出させることが想定される。
これによって、アクチュエータの移動体の位置にばらつきがあっても、基準レンズのカーブをレンズ型枠を通して倣うことによって、正確な初期位置を決定することができ、成形予定レンズのレンズ面は基準レンズに対してどれだけのサグ量を与えるかという観点でレンズ型枠を変形させることができるため、極めて正確なレンズを作製することが可能である。
本発明では基準レンズの基準面は所定のカーブを有するレンズだけでなく無限大の曲率、つまり平面である場合も含むものとする。また、アクチュエータは中心を通る直線に沿って密に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記各請求項の発明では、プラスチックレンズの成形において多くの型枠を必要とせず、複雑なレンズ特性のレンズであっても自在に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1の母型の構成を説明する図であって(a)は正面方向からの分解断面図、(b)は正断面図。
【図2】本発明の実施例1の母型をオーブン内に配置した状態の周辺機器を含んだ説明図の正断面図。
【図3】本発明の実施例1に使用するアクチュエータの配置状態を模式的に説明する平面図。
【図4】本発明の実施例1の電気的構成を説明するブロック図。
【図5】本発明の実施例1のレンズの成形工程を説明する図であって(a)は基準レンズを第1の型枠上に載置する説明図、(b)は基準レンズ載置後にアクチュエータを駆動させて駆動軸を初期位置に移動させた状態の説明図。
【図6】本発明の実施例1のレンズの成形工程を説明する図であって(a)は基準レンズを第1の型枠上から取りだした状態を説明する説明図、(b)はサグ量に応じた進出量で駆動軸を進出させている途中の状態を説明する説明図。
【図7】本発明の実施例1のアクチュエータの駆動軸の進出量を決定する手法を説明する説明図。
【図8】本発明の実施例1のレンズの成形工程を説明する図であって(a)は図6(b)の状態から第2の型枠を取り付けた状態を説明する説明図、(b)は母型内部に熱硬化性プラスチック材料を充填させた状態の説明図。
【図9】本発明の実施例2のアクチュエータの駆動軸の進出量を決定する手法を説明する説明図。
【図10】本発明の実施例3のレンズの成形工程において第2の型枠を液体状の熱硬化性プラスチック材料Mと同一の材料で構成することで両者を一体化させることを説明する説明図。
【図11】本発明の実施例4のレンズの成形工程において(a)は上方が開放された母型の正断面図、(b)は熱可塑性プラスチックを注入している途中工程を説明する説明図、(c)はこの母型を使用して作製したプラスチックレンズの断面図。
【図12】本発明の他の実施例の母型をオーブン内に配置した状態の周辺機器を含んだ説明図の正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のプラスチック製光学レンズを眼鏡レンズに適用した具体的な成形方法について図面に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1では図1(a)及び(b)に示すような母型1を使用する。成形材料としては屈折率1.500の熱硬化性プラスチックを利用した。母型1は第1の型枠2、第2の型枠3及び保持部材としてのガスケット4から構成される。第1の型枠2は本実施例1では厚み2.0mmの均一な厚みの可撓性のあるシリコンゴム製の円形の平板な膜体から構成されており、その周縁にガスケット4に係合させて固定するための係合部5が形成されている。第2の型枠3は表裏とも同じ曲率の球面から構成されたメニスカス形状のガラス製の円形板状体とされている。図1(b)に示すように、水平に設置された状態で第1の型枠2は緩やかな断面二次曲線のカーブを描いて自重で撓むこととなる。
第1の型枠2の内面は成形されるプラスチックレンズの裏面(眼球側)を成形するためのレンズ成形面とされ、第2の型枠3の内面は成形されるプラスチックレンズの表面(物体側)を成形するためのレンズ成形面とされる。ガスケット4は光透過性のシリコンゴム製のリング体であって、その内周には径方向の断面において内方に突起した形状の支持部8が形成されている。ガスケット4には内外を連通させる充填口7が設けられている。第1の型枠2及び第2の型枠3はそれぞれガスケット4に嵌合され支持部8に当接して間隔が保持され、母型1内部にキャビティが形成されることとなる。尚、本実施例1では後述するようにレンズ径75mmとしたため、ここで使用される第1の型枠2、第2の型枠3及びガスケット4はそのレンズ径に対応する内径のものを採用する。
【0015】
図2に示すように、母型1はオーブン10内において第1の型枠2が下側になるようにガスケット4を介して支持フレーム11上に支承される。尚、支持フレーム11とガスケット4は両者を正確に位置合わせするための図示しない凹凸の係合部によって係合されるようになっている。オーブン10にはヒータとファンからなる熱循環ユニット12が併設されている。オーブン10内部にはUV照射装置13が配設されている。UV照射装置13は斜め上方位置の90度ずつずれた4方向と、斜め下方位置の90度ずつずれた4方向(図示ではそれぞれ2方向のみ)の計8方向から中心方向に向って紫外線を照射するように配置されている。
オーブン10内であって、支持フレーム11の内側にはアクチュエータユニット15が配設されている。本実施例1ではアクチュエータユニット15はベースプレート16に埋設された計65基のアクチュエータ17の集合体から構成されている。本実施例1のアクチュエータ17はサーボモータを制御することで進退位置を決定するモータ制御型のリニアアクチュエータであり、内蔵された移動体としての駆動軸18がオーブン10の底面10aに対して垂直方向に向って進退するようになっている。駆動軸18の先端は砲弾形状に構成されている。図3に示すように、各アクチュエータ17は本実施例1では中央から均等な角度で16方向に同心円状に配列されている。図3においてA−A方向、C−C方向、E−E方向、G−G方向の4つの直径方向(つまり8つの放射方向)は45度ずつずれた各方向にそれぞれ5つずつアクチュエータ17が所定間隔で配置された主放射方向である。また、周縁寄りにおいて周方向に隣接するアクチュエータ17の間隔が開きすぎるのを防止するために主放射方向の中間位置であるB−B方向、D−D方向、F−F方向、H−H方向の4つの直径方向(つまり8つの放射方向)の周縁寄りにそれぞれ3つずつアクチュエータ17が副放射方向として所定間隔で配置されている。各方向のアクチュエータ17は中央から所定の半径となる同一円周上に配置され、中心からすべての方向にバランスよくアクチュエータ17が配設されることとなっている。
尚、上記のように本実施例1ではレンズ径75mmに対応する内径の第1の型枠2、第2の型枠3及びガスケット4を用いるため、アクチュエータユニット15もこれらに対応する大きさのものを使用する。
【0016】
図2及び図4に示すように、オーブン10外にはアクチュエータ17を制御するためのアクチュエータ制御用コンピュータ25が設置されている。コンピュータ25はCPU(中央処理装置)26及びROM及びRAMからなるメモリ27等、入力装置28(マウス、キーボード等)、モニター29及びプリンタ30等の周辺装置によって構成されている。CPU26はアクチュエータ17(サーボモータ17a、回転速度検出器17b、エンコーダ17c)、熱循環ユニット12(ヒータ12a及びファン12b)及びUV照射装置13とそれぞれ接続されている。
CPU26はアクチュエータ17の駆動源としてのサーボモータ17aの駆動を制御する。また、アクチュエータ17に併設された回転速度検出器17aからの電圧値に基づいて駆動軸18の進出位置を判断するとともに、サーボモータ17aに内蔵されたエンコーダ17cのパルス信号に基づいて駆動軸18の進出量を判断する。また入力装置27からアクチュエータ17毎の所定の進出量データ、つまりに基準レンズに対する成形予定レンズのサグ量データに基づいてサーボモータ17aを制御し駆動軸18を所定の進出位置に保持させる。
【0017】
次に、このような構成の母型1及びオーブン10を使用したプラスチック製眼鏡レンズの成形工程についてCPU26の制御動作と併せて詳しく説明する。
まず、前提として基準レンズ21の基準面Bsに対する成形予定レンズの裏面側のサグ量を算出する。本実施例1では球面レンズでS−4.00、レンズ径75mmのレンズを作製するものとする。サグ量は成形予定レンズの裏面形状を三次元的にシミュレーションしてレンズ面のあらゆる部分の相対的な位置を算出し、三次元的な形状が分かっている基準レンズ21の基準面Bsとの差として得られる値である。第1の型枠2と接する側が基準面Bsとされるが、実施例1では基準レンズ21の表裏面は互いに平行な平面に構成されているため、表裏面いずれを基準面Bsとしてもよい。この基準面Bsに対するサグ量が求めるサグ量となる。表1に実施例1の幾何中心からの主要なサグ量を示す。
ここでは凹形状のレンズ裏面を成形するようになっているが、第1の型枠2は周縁で支持されており、下方からアクチュエータ17の駆動軸18で押動される場合にはこのように下側に凹形状に変形されることが構造上好ましい。
尚、実施例1の成形予定レンズは乱視度数が0のシングルヴィジョン(SV)であるため、幾何中心Oからあらゆる方向に向かってサグ量は同量に増減する。
【0018】
【表1】

【0019】
図5(a)及び(b)に示すように、オーブン10内において第2の型枠3をガスケット4に装着する前にガスケット4の内径と合致(実際にはごくわずかに小径)する径の基準レンズ21を上方から挿入して第1の型枠2上に載置する。
この状態でCPU26はアクチュエータ17を駆動軸18を進出させる方向に駆動させる。すると図5(b)に示すように駆動に伴って駆動軸18の先端はまず第1の型枠2に当接し、若干撓んだ第1の型枠2を上方に押し戻す。自重で伸びていた第1の型枠2は原形状に復帰する。第1の型枠2を介して基準レンズ21の基準面Bsに当接した駆動軸18は当接による反力で回転速度が低下するため、コントローラ18はこの時の電圧値を検出することとなり駆動軸18が初期位置に進出したと判断される。CPU26はアクチュエータ17の駆動を一旦停止させ駆動軸18を決定された初期位置で保持させる。この初期位置は記憶される。
【0020】
次いで、図6(a)及び(b)に示すように基準レンズ21を取りだした状態でCPU26は各アクチュエータ17の駆動軸18に対応するサグ量と同じ長さの分を進出させるように制御する。例えば今、A方向のアクチュエータ17の進出量を想定する。図3に示すように、A方向は合計11基のアクチュエータ17が直列に並んでいるため、今これをAa1〜Aa11とナンバーを振る。
図7に示すように成形予定レンズの幾何中心p1に対応した中央のアクチュエータ17の位置はAa6である。本実施例1ではAa6から対応する等距離にあるAa1とAa11、Aa2とAa10、Aa3とAa9、Aa4とAa8、Aa5とAa7はそれぞれ同じ進出量となる。今、Aa5とAa7がAa6位置から8mm外方(p2位置)にあり、Aa4とAa8がAa6位置から16mm外方(p3位置)にあり、Aa3とAa9がAa6位置から24mm外方(p4位置)にあり、Aa2とAa10がAa6位置から32mm外方(p5位置)にあり、Aa1とAa11がAa6位置から37mm外方(p6位置)にあるものとする。
そうすると表1からAa6位置にあるアクチュエータ17はサグ量+7.2975mm、Aa5とAa7位置にあるアクチュエータ17はサグ量+6.9770mm、Aa4とAa8位置にあるアクチュエータ17はサグ量+6.0092mm、Aa3とAa9位置にあるアクチュエータ17はサグ量+4.3748mm、Aa2とAa10位置にあるアクチュエータ17はサグ量+2.0393mm、Aa1とAa11位置にあるアクチュエータ17はサグ量+0.2007mmとなり、それぞれそのサグ量がA方向の列の固有の進出量となる。ここではA方向について説明したが、実施例1における成形予定レンズは中心からあらゆる方向のサグ量は同じ距離であれば同じであるため、他の方向の固有の進出量もこのA方向に準じて決定することは容易である。これらの値はコンピュータ25に入力されて各アクチュエータ17の固有の値として記憶されている。
第1の型枠2はこれらアクチュエータ17のサグ量に応じて固有の進出量で進出させられた駆動軸18によって押動されて下向き凹形状に変形させられる。第1の型枠2はこのように間隔を空けて散点状に支持されていても弾性を有するために支持されている駆動軸18間で垂れることなく断面線は滑らかな曲線を描き、a1位置を通る直径方向の断面線の軌跡は成形予定レンズの裏面の幾何中心Oを通る直径方向の断面線の軌跡、つまり表1のサグ量に基づいて得られる曲線と一致する。
【0021】
次いで、図8(a)に示すようにこのように駆動軸18によって第1の型枠2を変形させて保持した状態で第2の型枠3をガスケット4に装着し、充填口7から調整した液体状の熱硬化性プラスチック材料Mを充填し、図8(b)に示すようにキャビティ内に充満させる。以後は、定法に従ってCPU26による制御下で所定時間UV照射装置13を作動させ、まず、充填した硬化性プラスチック材料の表面を硬化させた後、所定時間かけて所定の温度履歴で熱循環ユニット12を作動させて内部まで硬化させる。これによって成形予定レンズの裏面側の形状に所定の特性を与えたレンズが成形されることとなる。母型1(第1及び第2の型枠2,3及びガスケット4)をアクチュエータ17の上から取り外し、作製されたレンズを離型させる。このときアクチュエータ17の駆動軸18の進出位置をそのまま維持させる。
2回目以降のレンズ作製については図8(a)においてアクチュエータ17の駆動軸18の進出量を保持させたまま、レンズを取り出した後の母型1あるいは別途用意しておいた同じサイズの母型1をセットし、上記と同様に熱硬化性プラスチック材料Mを充填してレンズを作製していく。
【0022】
以上のように構成することにより本実施例の成形方法は次のような効果を奏する。
(1)第1の型枠2は変形可能な膜体で構成され、アクチュエータ17の駆動軸18によって成形予定レンズに対応した形状のレンズ成形面に変形させることが可能であるため、レンズ特性に応じた多種類の型枠を用意する必要がない。
(2)アクチュエータ17はバランスよく分散され、なおかつ密に配置されているため、第1の型枠2を変形させた場合に歪みが生じにくい。
(3)基準レンズによってまずアクチュエータ17の駆動軸18の初期位置を決定するため、駆動軸18の進出量の固有の誤差を解消でき、より正確に第1の型枠2を変形させることができる。
(4)一回目のアクチュエータ17の駆動軸18の進出位置が決定されれば、次の工程からは駆動軸18の進出位置を設定しなくとも、母型1を置いていけばよいので、同等なレンズ特定の面を持つ光学レンズを連続して作製することが容易である。
【0023】
(実施例2)
実施例2では実施例1とサイズ違い(内径70mm)の同じ母型31を使用する。また、硬化処理に使用するオーブン10及びその周辺機器についても実施例1と同じ構成のものを使用する。実施例2では成形予定レンズのレンズ特性としてC度数(乱視度数)を有する場合について説明し、実施例1と同じ構成については説明を省略する。本実施例2では球面レンズでS−4.00、C−2.00.AX180でレンズ径70mmのレンズを作製するものとする。実施例2でも実施例1と同様に成形予定レンズの裏面形状を三次元的にシミュレーションしてレンズ面のあらゆる部分の相対的な位置を算出し、基準レンズ21の面との差として得るようにする。
表2に実施例2の幾何中心からの主要なサグ量を示す。実施例2の成形予定レンズは乱視度数が乱視軸180度で設定されているため、垂直方向と水平方向で最大のサグ量と最少のサグ量となる。
【0024】
【表2】

【0025】
本実施例では実施例1と異なり中心からあらゆる方向でサグ量が異なる。そのため、すべてのアクチュエータ17はすべて異なる固有の進出量とされる。そのため、すべてのアクチュエータ17の成形予定レンズの裏面形状に対する相対位置を明らかにする必要がある。そのため、本実施例では乱視軸と一致する方向にアクチュエータ17の1つの配列と一致させるようにして計算を簡略化するようにしている。例えば、乱視軸に直交する方向であるY軸方向と配列Aを一致させるものとする。
例えば実施例1と同様に配列Aアクチュエータ17を想定する。図9に示すように成形予定レンズの幾何中心p1に対応した中央のアクチュエータ17の位置はAa6である。本実施例1ではAa6から対応する等距離にあるAa1とAa11、Aa2とAa10、Aa3とAa9、Aa4とAa8、Aa5とAa7はそれぞれ同じ進出量となる。今、Aa5とAa7がAa6位置から8mm外方(p2位置)にあり、Aa4とAa8がAa6位置から16mm外方(p3位置)にあり、Aa3とAa9がAa6位置から24mm外方(p4位置)にあり、Aa2とAa10がAa6位置から30mm外方(p5位置)にあり、Aa1とAa11がAa6位置から34mm外方(p6位置)にあるものとする。 そうすると表1からAa6位置にあるアクチュエータ17はサグ量+9.1627mm、Aa5とAa7位置にあるアクチュエータ17はサグ量+8.7133mm、Aa4とAa8位置にあるアクチュエータ17はサグ量+7.3476mm、Aa3とAa9位置にあるアクチュエータ17はサグ量+5.0010mm、Aa2とAa10位置にあるアクチュエータ17はサグ量+2.5573mm、Aa1とAa11位置にあるアクチュエータ17はサグ量+0.5516mmとなり、それぞれそのサグ量がA方向の列の固有の進出量となる。
これは配列A方向における進出量であり、16方向の各配列におけるアクチュエータ17に対してそれぞれの位相に応じて算出される値である。例えばA方向と直交するE方向であれば乱視軸と直交するY軸方向となる。これらの値はコンピュータ25に入力されて各アクチュエータ17の固有の値として記憶されている。
実施例2においてもアクチュエータ17の駆動軸18の進出量に違いがあるだけで実施例1と同じ成形工程で成形予定レンズの裏面側の形状に所定の特性を与えたレンズが成形されることとなる。
【0026】
(実施例3)
実施例3では実施例1の母型1において第2の型枠3を液体状の熱硬化性プラスチック材料Mと同一の材料で構成した。また、硬化処理に使用するオーブン10及びその周辺機器についても実施例1と同じ構成のものを使用する。実施例3では図10に示すように離型させた際に第2の型枠3は硬化した熱硬化性プラスチック材料Mと一体化したプラスチックレンズPLを作製することができる。
【0027】
(実施例4)
実施例4では図11(a)に示すような母型31を使用する。母型31は第1の型枠32及び保持部材としてのガスケット33から構成される。第1の型枠32は実施例1と同様に厚み2.0mmの均一な厚みの可撓性のあるシリコンゴム製の円形の平板な膜体から構成されている。また、上記各実施例と異なり第2の型枠がないため母型31は常に開放状態であって密閉状態とはならない。図11(b)に示すように、実施例1あるいは実施例2のようにアクチュエータ17を制御して成形予定レンズの裏面側の形状に所定の特性を与えたレンズを成形する。そして、図11(b)に示すように熱可塑性プラスチック、たとえばポリカーボネートPCをオーブン10内で熱循環ユニット12を制御して溶解させて充填口7から母型31内に注入し、内部形状に沿ってポリカーボネートPCを流動させ、その除冷して離型すると図11(c)のような裏面だけが第1の型枠32で成形されたプラスチックレンズPLが得られる。本実施例4では表面側は成形されないので、適宜切削及び研磨加工して表面側を成形する。
【0028】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施例では膜体からなる第1の型枠2,32はガスケット4,33に対して下側に配置される場合で説明したが、上側に配置される第2の型枠3を同様に膜体から構成し、下方に向って駆動軸18が進出するようにアクチュエータ17を配置することも可能である。
・第1及び第2のレンズ型枠2,3は上記ではアクチュエータ17が下方に配置されるように上下方向で配置したが、第1及び第2のレンズ型枠2,3を縦置きして、横方向からアクチュエータ17が進退するように配置してもよい。
・上記実施例ではレンズの裏面側についてアクチュエータ17を使用して成形するようにしていたが、表面側をアクチュエータ17を使用して成形するようにしてもよい。
・上記実施例ではオーブン10,35は熱循環ユニット12,36によって熱風で加熱するようにしていたが、図12のようにオーブン37にマイクロ波供給装置38を併設してマイクロ波による誘導加熱で母型1内の液体状の熱硬化性プラスチック材料(あるいは熱可塑性プラスチック)を硬化させるようにしてもよい。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0029】
1,31…母型、2,32…第1のレンズ型枠、3…第2のレンズ型枠、4,33…保持部材としてのガスケット、17…アクチュエータ、18…移動体としての駆動軸、M…熱硬化性プラスチック材料、PC…熱可塑性プラスチックとしてのポリカーボネート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの表裏いずれかのレンズ面を成形する面(以下、レンズ成形面とする)を有するレンズ型枠と、レンズの外縁を成形するとともに前記レンズ型枠を前記レンズ成形面が上向きとなるように保持する保持部材とからなる容器中にレンズ成形用の成形材料を導入し、同成形材料を前記容器内形状に応じて流動させた後、同成形材料の硬化を図り、その後レンズ型枠及び保持部材を離型させてレンズを得るようにしたプラスチック製光学レンズの成形方法であって、
移動体を直線的に進退させるアクチュエータを所定間隔を空けて二次元方向に複数隣接配置するとともに、前記レンズ型枠を可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成し、前記各アクチュエータの前記移動体先端を前記レンズ型枠の外側位置に対向配置させ、前記各アクチュエータをそれぞれの前記移動体が所定の進出位置となるように駆動制御して、前記移動体によって前記レンズ型枠を押圧して前記レンズ成形面を所定のレンズ特性の面となるように変形させ、その変形状態で前記レンズ型枠を保持しつつレンズ成形用の成形材料を容器内に導入してレンズの硬化を図るようにしたことを特徴とするプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項2】
前記各アクチュエータは前記レンズ型枠の下側に配設されて、前記移動体先端はアクチュエータ設置面に対して垂直方向に進退することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項3】
前記レンズ成形用の成形材料は液状の熱硬化性プラスチックであり、熱、光又はマイクロ波のエネルギーを受動させて重合硬化するようにしたことを特徴とする請求項1又は2のプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項4】
前記レンズ成形用の成形材料は熱可塑性プラスチックであり、熱又はマイクロ波のエネルギーを受動させて同熱可塑性プラスチックを溶融させ、前記容器内に注入することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項5】
レンズの裏面となる面を成形するためのレンズ成形面を有する第1のレンズ型枠と、同レンズの表面となる面を成形するためのレンズ成形面を有する第2のレンズ型枠とをレンズ成形面同士を正対させた状態で所定間隔離間させて配置し、レンズの外縁を成形するための保持部材を前記第1及び第2のレンズ型枠間に配設することで同両レンズ型枠の間隔を保持させながら同両レンズ型枠及び保持部材に包囲された外空間と区画された内部空間を有する母型を形成させ、前記保持部材の一部に形成された注入口からレンズ成形用の液状成形材料を前記母型内に注入して同液状成形材料の硬化を図り、その後同両レンズ型枠を離型させてレンズを得るようにしたプラスチック製光学レンズの成形方法であって、
移動体を直線的に進退させるアクチュエータ同士を所定間隔を空けて二次元方向に複数隣接配置するとともに、前記第1又は第2のいずれか、もしくは両方のレンズ型枠を可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成し、前記各アクチュエータの前記移動体先端を膜体から構成される前記レンズ型枠の外側位置に対向配置させ、前記各アクチュエータをそれぞれの前記移動体が所定の進出位置となるように駆動制御して前記移動体によって膜体から構成される前記レンズ型枠を押圧して前記レンズ成形面を所定のレンズ特性の面となるように変形させ、その変形状態で膜体から構成される前記レンズ型枠を保持しつつレンズ成形用の成形材料を容器内に導入してレンズの硬化を図るようにしたことを特徴とするプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項6】
前記各アクチュエータは膜体から構成される前記レンズ型枠に正対させた状態で配設されて、前記移動体先端はアクチュエータ設置面に対して垂直方向に進退することを特徴とする請求項5に記載のプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項7】
前記第1又は第2のいずれかのレンズ型枠を可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成するとともに、いずれか他方のレンズ型枠を前記レンズ成形用の液状成形材料と同質の成形材料から成形したレンズ前駆体から構成し、前記母型内に注入した前記レンズ成形用の液状成形材料とを重合硬化させる際に同レンズ前駆体と一体化するようにしたことを特徴とする請求項5又は6に記載のプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項8】
前記レンズ成形用の成形材料は熱可塑性プラスチックであり、熱又はマイクロ波のエネルギーを受動させて同熱可塑性プラスチックを溶融させ、前記容器内に注入することを特徴とする請求項5、6に記載のプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項9】
前記レンズ成形用の液状成形材料は熱、光又はマイクロ波のエネルギーを受動して重合硬化する熱硬化性プラスチックであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかのプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項10】
移動体によって前記レンズ型枠を押圧して前記レンズ成形面を所定のレンズ特性の面となるように変形させた後に、その変形状態で前記レンズ型枠を保持しつつレンズ成形用の成形材料を容器内に導入してレンズの硬化を図るレンズ硬化工程の後で、前記移動体を進出位置にて保持した状態で同レンズを取り出し、前記移動体の保持された進出位置において次の成形のための前記レンズ型枠を保持させ次の前記レンズ硬化工程を実行するようにして同等なレンズ特性の面を持つ光学レンズを連続して作製するようにすることを特徴とする請求項1〜9に記載のプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項11】
基準レンズの基準面に対して成形予定レンズの前記レンズ面にどれだけのサグ量を与えるかを算出するサグ量算出工程と、
可撓性かつ弾性のある均一な厚みの膜体から構成された前記レンズ型枠上に前記基準レンズを前記基準面が接触するように載置し、前記アクチュエータを駆動制御して前記基準面形状に応答して変形した前記レンズ型枠に前記移動体を当接させて、前記各アクチュエータ毎の前記移動体の初期位置を決定する移動体初期位置決定工程と、
前記各アクチュエータの配設位置と対応する成形予定レンズの前記レンズ面上の基準位置を特定し、前記サグ量算出工程において同各基準位置に与えられたサグ量を基準進出位置にある前記移動体に対して付加して前記各移動体をそれぞれ新たに固有の進出位置に進出させる移動体固有進出工程とを有し、
前記移動体初期位置決定工程において前記各移動体を初期位置に進出させた後に、前記基準レンズを取り除き、前記移動体固有進出工程において前記各移動体を新たな固有の進出位置に進出させて前記レンズ型枠について前記レンズ成形面を所定のレンズ特性の面となるように変形させるようにしたことを特徴とする請求項1〜10に記載のプラスチック製光学レンズの成形方法。
【請求項12】
前記アクチュエータは中心を通る直線に沿って同心円状に配置させられていることを特徴とする請求項11に記載のプラスチック製光学レンズの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−101978(P2011−101978A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257611(P2009−257611)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】