説明

プラズマディスプレイパネル及びその製造方法、並びに、プラズマディスプレイ装置及びその製造方法

【課題】プラズマディスプレイパネル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、基板と、前記基板上に形成された透明電極と、前記透明電極上に形成されブラック物質を含むバス電極とを有する前面パネルと、前記前面パネルと所定間隔で離隔されて合着された後面パネルとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置に関し、さらに詳細には、プラズマディスプレイパネル及びその製造方法に関する。また、本発明は、プラズマディスプレイ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルは、前面パネルと後面パネルとの間の放電空間に、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)またはネオンとヘリウムとの混合気体(Ne+He)のような、主放電気体と少量のキセノンを含有する不活性ガスとが充填されている。このようなプラズマディスプレイパネルは、高周波電圧により放電する時、放電空間内部の不活性ガスは、真空紫外線(Vacuum Ultraviolet Rays)を発生し、このような真空紫外線は、蛍光体を発光させて画像を具現する。
【0003】
図1は、通常のプラズマディスプレイパネルの構造を示した図である。
【0004】
図1に示しているように、プラズマディスプレイパネルは、スキャン電極102とサステイン電極103とが対をなして形成された複数の維持電極対が配列された前面パネル100と、複数の維持電極対と交差するように、複数のアドレス電極113が配列された後面パネル110とが一定距離を置いて平行に結合される。
【0005】
前面パネル100は、前面ガラス基板101と、前面ガラス基板101上に形成された複数の維持電極対と、を備えている。維持電極対は、スキャン電極102及びサステイン電極103から構成される。スキャン電極及びサステイン電極は、それぞれ、透明な物質で形成された透明電極102a、103aと、銀(Ag)のような金属材質で形成されたバス電極102b、103bとからなる。透明電極102a、103aは、前面ガラス基板101上に形成されている。バス電極102a、103aは、それぞれ、透明電極102a、103a上に形成されている。バス電極をなす銀(Ag)のような金属材質は、放電による光は透過できず、外部光を反射する性質を有し、このような性質によりコントラストを悪くするという問題がある。このような問題を解決するために、透明電極102aとバス電極103aとの間、及び、透明電極103aとバス電極102bとの間に、コントラストを向上させるためのブラック層104が形成される。
前面パネル100は、更に、スキャン電極102及びサステイン電極103を覆う上部誘電体層105と、上部誘電体層105を覆う保護層106と、を備えている。上部誘電体層105は、維持電極対との間に形成される静電容量によって、放電時にその表面に壁電荷を形成してメモリ機能を派生する。また、上部誘電体層105は、その静電容量により放電電流を制限する。また、上部誘電体層105は、電極間を絶縁させる機能を有する。保護層106は、上部誘電体層105をプラズマによるスパッタリングから保護すると共に、二次電子放出効率を向上させて放電開始電圧を下げることで放電条件を容易にする。保護層106は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)を蒸着して形成される。
【0006】
後面パネル110は、後面ガラス基板111と、後面ガラス基板111上に形成された複数のアドレス電極113と、アドレス電極113を覆う下部誘電体層115と、下部誘電体層115上にアドレス電極113に沿って形成された複数の隔壁112と、隔壁112側面から隔壁112の間に露出する下部誘電体層115上に亘って形成された蛍光体114と、を備えている。アドレス電極113は、スキャン電極102との間で書き込み放電を発生させることでデータを書き込む。下部誘電体層115は、アドレス電極113をプラズマによるスパッタリングから保護すると共に、放電電流を制限する。隔壁112は、アドレス電極113に沿って延在するストライプタイプの隔壁である。隔壁112は、アドレス電極113に沿って後面パネル110を複数の領域に分割し、前面パネル100の維持電極対と共に複数個の放電セルを形成させる。蛍光体114は、R、G、Bの各色の蛍光体からなり、放電の際に画像を表示するための可視光線を放出する。
【0007】
このような構造を有するプラズマディスプレイパネルの前面パネル製造方法を説明すれば、以下の図2の通りである。
【0008】
図2は、従来のプラズマディスプレイパネルの前面パネル製造工程を順次に示した図である。
【0009】
図2に示しているように、まず、(a)ステップでは、前面ガラス基板101の上面に酸化インジウムと酸化スズとからなるITO(Indium Tin Oxide)物質の透明電極102aを形成する。
【0010】
その後、(b)ステップにおいて、透明電極が形成された前面ガラス基板101の上部に、ブラック層104を形成するためのブラックペーストを印刷した後、乾燥する。次に、(c)ステップにおいて、乾燥されたブラックペーストの上面に、所定のパターンが形成されたフォトマスクMを載置して、紫外線を照射して乾燥する。
【0011】
露光工程を経たブラック層104の上面に、(d)ステップにおいて、バス電極102bを形成するために、銀(Ag)ペーストを塗布して印刷した後、乾燥する。
【0012】
その後、(e)ステップにおいて、所定のパターンが形成されたフォトマスクMを、塗布された銀(Ag)ペーストの上部に載置して露光する。露光工程を経た後、(f)ステップにおいて、硬化していない部分を現像した後、焼成炉(図示せず)で焼成することで、バス電極102bが形成される。本工程により、透明電極102aと、透明電極102a上に形成されたブラック層104及びバス電極102bとから成る電極パターンが複数形成される。各電極パターンは、スキャン電極又はサステイン電極の何れかである。
【0013】
次に、(g)ステップにおいて、スキャン電極及びサステイン電極が形成された前面ガラス基板の上面に、スキャン電極及びサステイン電極を覆う様に、上部誘電体層105を形成する。
【0014】
最後に、(h)ステップにおいて、上部誘電体層105の表面上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層106を形成して、プラズマディスプレイパネルの前面パネル100を完成させる。
【0015】
このようなプラズマディスプレイパネルの前面パネル製造工程は、印刷、乾燥及び露光工程を繰り返すことによって、工程時間が増加する問題がある。
また、透明電極上に、ブラック層及びバス電極を形成する為に、ペーストを印刷、乾燥及び露光する工程を繰り返すので、生産歩留まりの低下を招く問題がある。
更に、工程時間が増加することにより、製造費用が上昇するという問題がある。
また、透明電極の上面に形成されるブラック層104とバス電極層102bとの間のアラインメント(Align)誤差が発生するという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、上記従来の技術の問題を解決するためになされたものである。
【0017】
本発明の目的は、製造費用の低減が可能なプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【0018】
また、本発明の他の目的は、プラズマディスプレイパネルの製造工程の際に、工程数を低減して生産歩留まりを向上させ得るプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一側面に係るプラズマディスプレイパネルは、基板と、基板上に形成された透明電極と、前記透明電極上に形成されブラック物質を含むバス電極とを有する前面パネルと、前記前面パネルと所定間隔で離隔されて合着された後面パネルと、を含む。
このプラズマディスプレイパネルの構造によれば、従来バス電極と別に形成していたブラック層を省略できるので、印刷、乾燥及び露光の工程数を低減することができる。この結果、工程時間を短縮することができる。また、製造工程が簡略化されること、特に、別途ブラック層を形成した場合に問題となるブラック層とバス電極とのアライメント誤差を防止できることにより、歩留まりを向上させることができる。更に、工程時間の短縮、及び、歩留まりの向上によって、製造コストを低減することができる。
【0020】
本発明の他の一側面に係るプラズマディスプレイパネルは、基板と、前記基板上に形成されブラック物質を含むバス電極とを有する前面パネルと、前記前面パネルと所定間隔で離隔されて合着された後面パネルと、を含む。
このプラズマディスプレイパネルの構造では、透明電極を省略して、ブラック物質を含むバス電極のみを形成することが可能である。この構造によれば、上述の作用効果に加え、更に、工程数を低減することができる。この結果、工程時間を更に短縮することができる。また、製造工程が更に簡略化されることにより、歩留まりを更に向上させることができる。工程時間を更に短縮できること、及び、歩留まりを更に向上できることによって、製造コストを更に低減することができる。
【0021】
本発明の更に他の一側面に係るプラズマディスプレイパネルの製造方法は、(a)ガラス基板上に透明電極を形成するステップと、(b)前記透明電極上にブラック物質と銀(Ag)粒子を含むバス電極ペーストを塗布するステップと、(c)前記バス電極ペーストを露光及び現像することでパターニングし、バス電極を形成するステップと、を含む。
このプラズマディスプレイパネルの製造方法によれば、従来バス電極と別に形成していたブラック層を省略できるので、印刷、乾燥及び露光の工程数を低減することができる。この結果、工程時間を短縮することができる。また、製造工程が簡略化されること、特に、別途ブラック層を形成した場合に問題となるブラック層とバス電極とのアライメント誤差を防止できることにより、歩留まりを向上させることができる。更に、工程時間の短縮、及び、歩留まりの向上によって、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの製造工数を低減して、生産歩留まりを高めると共に、製造費用の低減が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、透明電極と、透明電極の上面に形成されブラック物質を含むバス電極とを有する前面パネルと、該前面基板と所定間隔で離隔されて合着された後面パネルと、を含む。
【0024】
バス電極は、銀(Ag)、銅(Cu)及びクロム(Cr)のうち、いずれかを含むことを特徴とする。
【0025】
バス電極は、銀粒子を更に含み、銀粒子に前記ブラック物質がコーティングされている。
【0026】
ブラック物質は、導電性であることを特徴とする。
【0027】
ブラック物質が導電性物質の場合、銀粒子を取り囲んでいるブラック物質の厚さは、0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする。
【0028】
ブラック物質は、非導電性であることを特徴とする。
【0029】
ブラック物質が非導電性物質の場合、銀粒子を取り囲んでいるブラック物質の厚さは、0.1μm以上1μm以下であることを特徴とする。
【0030】
以下では、本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルを、添付した図面を参照して説明する。
【0031】
<第1実施形態>
【0032】
(構造)
図3は、本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構造を示した図である。
【0033】
図3に示しているように、本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、前面パネル300と、後面パネル310とを備えている。前面パネル300は、前面ガラス基板301と、前面ガラス基板301上に互いに平行に配置された複数の維持電極対(302,303)と、維持電極対(302,303)を覆う上部誘電体層304と、上部誘電体層304を覆う保護層305と、を備えている。
【0034】
各維持電極対(302,303)は、スキャン電極302とサステイン電極303とが対をなして形成されたものである。各維持電極対は、例えば、スキャン電極302及びサステイン電極303を1つずつ含む。スキャン電極302及びサステイン電極303は、後述するアドレス電極313と共に1つの放電セルを区画し、各放電セルにおいて相互放電させ、セルの発光を維持する。スキャン電極302及びサステイン電極303は、前面ガラス基板301上に形成されている。スキャン電極302とサステイン電極303は、それぞれ、透明な物質で形成された透明電極302a、303aと、ブラック物質を含むバス電極302b、303bとからなる。即ち、スキャン電極302は、透明な物質から成る透明電極302aと、ブラック物質を含むバス電極302bと、を有する。サステイン電極303は、透明な物質から成る透明電極303aと、ブラック物質303bを含むバス電極303bと、を有する。
【0035】
透明電極302a、303aは、酸化インジウムと酸化スズとからなるITO(Indium Tin Oxide)からなる。
バス電極302b、303bは、主に、銀(Ag)を含み、銅(Cu)あるいはクロム(Cr)のうち、いずれかを含むことができる。また、バス電極は、銀(Ag)、銅(Cu)あるいはクロム(Cr)のうち、2つ以上を混合した混合材を含むことができる。本実施形態では、バス電極302b、303bは、銀粒子を含む。バス電極302b、303bは、銀粒子、銅粒子、クロム粒子の何れかを含むことが可能である。また、バス電極302b、303bは、銀粒子、銅粒子及びクロム粒子のうち2つ以上を混合して含むことができる。更に、バス電極302b、303bは、銀、銅及びクロムのうち2つ以上を混合した混合材からなる粒子を含むことが可能である。
上部誘電体層304は、スキャン電極302及びサステイン電極303を覆う様に、前面ガラス基板301上に形成されており、各電極間を絶縁する。上部誘電体層304は、維持電極対との間に形成される静電容量によって、放電時にその表面に壁電荷を形成してメモリ機能を派生する。また、上部誘電体層304は、その静電容量により放電電流を制限する。
保護層305は、上部誘電体層305をプラズマによるスパッタリングから保護すると共に、二次電子放出効率を向上させて放電開始電圧を下げることで放電条件を容易にする。保護層305は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)を蒸着して形成される。
【0036】
後面パネル310は、後面ガラス基板311と、後面ガラス基板311の上面に互いに平行に配置された複数のアドレス電極313と、アドレス電極313を覆う下部誘電体層315と、下部誘電体層315の上面に形成された複数の隔壁312と、隔壁312の側面から隔壁312間に露出する下部誘電体層315上に亘って形成された蛍光体層314と、を備えている。
アドレス電極313は、スキャン電極302との間で書き込み放電を発生させて、点灯させる放電セルを選択するために、データを書き込むための電極である。
下部誘電体層315は、アドレス電極313をプラズマによるスパッタリングから保護すると共に、放電電流を制限する。
隔壁112は、アドレス電極113に沿って延在するストライプタイプの隔壁である。隔壁112は、アドレス電極113に沿って後面パネル110を複数の領域に分割し、前面パネル100の維持電極対と共に複数個の放電セルを形成させる。隔壁312は、例えば、サンドブラスト法により形成される。サンドブラスト法では、例えば、下部誘電体層315上に隔壁材料となる低誘電ガラスペーストを塗膜して乾燥させた後、ドライフィルムをフォトリソグラフィにより加工して、低誘電ガラスペースト上にマスクパターンを形成し、研磨剤(アルミナ、ガラスビーズ、炭酸カルシウムなどの微小粒体)を吹き付けて、マスクパターンで保護されていない低誘電体ガラスペーストを切削することで、隔壁312を形成する。
蛍光体層314は、隔壁312及び下部誘電体層315によって形成される溝の内面に形成される。具体的には、蛍光体層314は、隔壁312の側面から、隔壁312の間に露出する下部誘電体層315表面に亘って形成される。蛍光体層314は、例えば、スクリーン印刷法、感光性ペースト法により形成される。蛍光体層314は、放電時に発生する紫外線によってR、G、Bの何れかの色の可視光線を放出し、これにより画像を表示する。
前面パネル300と後面パネル310とは、隔壁312によって所定の間隔を持って合着される。このとき、隔壁312は、後面パネル310をアドレス電極313に沿った複数の領域に分割する。一方、維持電極対(302,303)は、前面パネル300を維持電極対に沿った複数の領域に分割する。従って、前面パネル300と後面パネル310とを密着させて形成したプラズマディスプレイパネルでは、1つの維持電極対と、隣接する1組の隔壁312とによって、1つの放電セルが区画される。更に詳細には、1対のスキャン電極302とサステイン電極303との間の領域を、隣接する1組の隔壁312によって分割した領域が、1つの放電セルを成す。
【0037】
このような構造を有する本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、従来のコントラスト特性を向上させるためのブラック層を省略しても、バス電極の材質を変更することによってコントラスト特性を維持できる。これにより、プラズマディスプレイパネルの製造費用を低減することができる。本発明に係るバス電極構造をさらに詳細に説明すれば、図4の通りである。
【0038】
図4は、本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルのバス電極の内部構造を示した図である。
【0039】
図4に示すように、バス電極302bは、銀粒子(A)と、ブラック物質(B)とを含む。銀粒子(A)の表面は、ブラック物質(B)によって覆われている。言い換えれば、銀粒子(A)の表面にはブラック物質(B)がコーティングされており、このブラック物質(B)がブラック層をなす。
ここで、バス電極の材質には銀粒子を使用したことを一例に挙げたが、バス電極の材料としては、上述したように、導電性の良好な銅やクロムを使用することができる。銀粒子の表面にコーティングされたブラック層(B)は、導電性物質であるか非導電性物質であり得る。
ブラック物質層は、例えば、Cr、Co、Cu、Fe等からなる黒色顔料にガラスフリットを混合したペーストによって形成することができる。
【0040】
ブラック物質層(B)の厚さは、ブラック物質層(B)が導電性の場合、非導電性のブラック層(B)の厚さ以上、即ちブラック層(B)の厚さと同一であるか、相対的にさらに厚くすることができる。すなわち、ブラック物質(B)が導電性の場合、ブラック物質層(B)の厚さは、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。これは、ブラック物質層の厚さが0.1μmより薄くなれば、外部への光の反射を遮断するのが難しくなって、プラズマディスプレイパネルの駆動の際に、コントラスト特性を低下させることができるためである。また、ブラック物質層(B)の厚さが5μm以上に厚くなれば、電気伝導性が低下して駆動効率を減少させる虞があるためである。
【0041】
ブラック物質(B)が非導電性物質の場合、ブラック物質層(B)の厚さは、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。この理由は、ブラック物質層(B)の厚さが0.1μmより薄ければ、上述したように、外部への光の反射を遮断するのが難しく、プラズマディスプレイパネルの駆動の際に、コントラスト特性を低下させるためである。また、ブラック物質層の厚さが1μm以上に厚くなれば、非導電性のブラック物質による電気伝導性の減少を招いて、駆動効率を減少させる虞があるためである。
【0042】
一方、上述した銀(Ag)粒子の表面にブラック物質を覆うと、相対的に電気伝導度の低いブラック物質によって、ブラック物質を含むバス電極の電気伝導度が従来の銀材質からなるバス電極より低くなる虞がある。しかし、表面にブラック物質で覆われた銀(Ag)粒子を加熱すれば、銀(Ag)元素又は原子が上述したブラック物質内に拡散することによって、ブラックバス電極全体の電気伝導度が上昇する。
【0043】
このような点を考慮すれば、焼成工程が必須であるプラズマディスプレイパネルの製造工程の中で、銀元素又は原子を拡散させる所定温度の熱が、表面にブラック物質が覆われた銀(Ag)粒子に加えられるため、ブラック物質が非導電性物質であっても、バス電極は、電気伝導度を維持できるようになる。
【0044】
(製造方法)
図5は、本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの製作工程の内、前面パネルの製造方法を順次に示した図である。
【0045】
図5に示すように、まず、(a)ステップでは、前面ガラス基板301の上面に、酸化インジウムと酸化スズとからなるITO(Indium Tin Oxide)により透明電極302aを形成する。
【0046】
このような透明電極302aは、前面ガラス基板301上にスパッタ法によりITOからなる透明電極膜を形成した後、透明電極膜の上面にドライフィルムフォトレジスト(Dry Film Photo Resist;以下、「DFR」と記す)をラミネートする。所定のパターンが形成されたフォトマスクのパターンを用いて、DFRを露光した後、現像することにより、所定のパターンが転写されたDFRを形成する。その後、DFRをマスクとして、透明電極膜を所定のパターンにエッチングする。このような工程を経て、透明電極302aが形成される。
【0047】
その後、(b)ステップにおいて、透明電極302aが形成された前面ガラス基板301の上面に、ブラック物質を含むブラックバス電極ペースト302bを例えばスクリーン印刷法にて印刷した後、乾燥する。ブラックバス電極ペースト302bは、銀等の導電性を持つ粒子の表面がブラック物質で覆われた導電性物質である。これに対しては、本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構造で既に詳述したので、重複する説明は省略するものとする。
【0048】
次に、(c)ステップにおいて、乾燥されたブラックバス電極ペースト302bの上面に、所定のパターン(バス電極の形状)が形成されたフォトマスクMを載置し、フォトマスクMを介してブラックバス電極ペースト304bに紫外線を照射して乾燥する。このような工程を、露光工程(Photolithography)という。
【0049】
露光工程を経た後、(d)ステップにおいて、ブラックバス電極ペースト302bの硬化していない部分(図5では、露光されなかった部分)を現像により除去する。
その後、焼成炉(図示せず)で焼成することで、ブラックバス電極層302bが形成される。この焼成は、例えば、550℃以上の焼成温度で約3時間行うことが好ましい。このような焼成ステップにおいて、導電性物質、例えば銀(Ag)粒子の表面を覆うブラック物質内に、銀粒子に含まれる銀(Ag)原子の一部が拡散されて、ブラック物質が非導電性物質であっても導電性を有するようになる。これにより、ブラックバス電極全体の電気伝導度が充分に維持される。
【0050】
その後、(e)ステップにおいて、ブラックバス電極層が形成された前面ガラス基板301の上面に誘電体層304を形成する。誘電体層304は、誘電体ガラスペーストを塗布して乾燥した後、約500℃以上600℃以下の温度で焼成を行うことによって、上部誘電体層304を形成する。
【0051】
最後に、(f)ステップにおいて、誘電体層304の表面上にCVD法、イオンプレーティング法や真空蒸着法などを利用して、酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層305が形成されて、プラズマディスプレイパネルの前面パネル300が完成する。
【0052】
このように、バス電極をなす銀(Ag)のような導電性物質の表面をブラック物質で覆ってブラックバス電極を形成することによって、従来のブラック層とバス電極層との間に発生したアラインメント誤差発生を未然に防止できるようになる。
【0053】
また、前面パネルの製造工程の中で、従来プラズマディスプレイパネルのブラック層形成ステップを省略しながらも、コントラスト特性を維持する。ブラック層形成ステップを省略することで、露光、現像の工程数を低減することができる。結果、プラズマディスプレイパネルの製造時間を減少させると共に、生産歩留まりを向上させ、結果的に製造単価を低くすることができる。
以上説明した様に、本発明によれば、従来バス電極と別に形成していたブラック層を省略できるので、印刷、乾燥及び露光の工程数を低減することができる。この結果、工程時間を短縮することができる。
また、製造工程が簡略化されること、特に、別途ブラック層を形成した場合に問題となるブラック層とバス電極とのアライメント誤差を防止できることにより、歩留まりを向上させることができる。更に、工程時間の短縮、及び、歩留まりの向上によって、製造コストを低減することができる。
また、上記製造工程で得られるプラズマディスプレイパネルを、図示しない駆動装置に接続して、プラズマディスプレイパネル及び駆動装置を備えたプラズマディスプレイ装置を製造することができる。駆動装置は、プラズマディスプレイパネルのスキャン電極、サステイン電極、及びアドレス電極と電気的に接続される。駆動装置は、プラズマディスプレイパネルのスキャン電極、サステイン電極及びアドレス電極にそれぞれ駆動信号を供給し、プラズマディスプレイパネルの表示面に画像を表示させる。駆動装置は、例えば、スキャン電極を駆動する走査駆動部、サステイン電極を駆動する維持駆動部、及びアドレス電極を駆動するデータ駆動部を備えることが可能である。
【0054】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、前面ガラス基板301と、前面ガラス基板301上に形成されブラック物質を含むバス電極とを有する前面パネル301と、該前面パネル301と所定間隔で離隔されて合着された後面パネルとを含む。
【0055】
バス電極は、銀(Ag)、銅(Cu)及びクロム(Cr)のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0056】
バス電極は、銀粒子を更に含み、ブラック物質は、銀粒子をコーティングする。
【0057】
ブラック物質は、導電性であることを特徴とする。
【0058】
ブラック物質の厚さは、0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする。
【0059】
ブラック物質は、非導電性であることを特徴とする。
【0060】
ブラック物質の厚さは、0.1μm以上1μm以下であることを特徴とする。
【0061】
図6は、本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構造を示した図である。
【0062】
図6に示すように、本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構造とほぼ同一である。したがって、第1実施形態と同じ構造に対する説明は、省略するものとする。但し、本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、スキャン電極402とサステイン電極403とは、透明電極を含まず、バス電極402b、403bのみからなる。
【0063】
このような構造を有する本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルが有している効果だけでなく、透明電極を削除することによって製造費用をさらに低減できるという効果がある。
【0064】
図7は、本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの製作工程の中で、前面パネル401の製造方法を順次に示した図である。
【0065】
図7に示しているように、本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの前面パネル400の製造方法も、本発明の第1実施形態に係る前面パネルの製造方法とほぼ同一である。但し、前面パネル400の製造の際に、第1実施形態とは異なり、透明電極の形成工程が省略されており、ガラスのような材質の前面基板401上に直接ブラックバス電極402を形成する。
【0066】
このような本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの製造方法は、プラズマディスプレイパネルの製造工数を低減でき、これに伴い、生産歩留まりを向上させることができる。
以上説明した本発明の第2実施形態によれば、透明電極を省略して、ブラック物質を含むバス電極のみを形成する。この構造によれば、上述の作用効果に加え、更に、工程数を低減することができる。この結果、工程時間を更に短縮することができる。また、製造工程が更に簡略化されることにより、歩留まりを更に向上させることができる。工程時間を更に短縮できること、及び、歩留まりを更に向上できることによって、製造コストを更に低減することができる。
また、上記製造工程で得られるプラズマディスプレイパネルを、図示しない駆動装置に接続して、プラズマディスプレイパネル及び駆動装置を備えたプラズマディスプレイ装置を製造することができる。駆動装置は、プラズマディスプレイパネルのスキャン電極、サステイン電極、及びアドレス電極と電気的に接続される。駆動装置は、プラズマディスプレイパネルのスキャン電極、サステイン電極及びアドレス電極にそれぞれ駆動信号を供給し、プラズマディスプレイパネルの表示面に画像を表示させる。駆動装置は、例えば、スキャン電極を駆動する走査駆動部、サステイン電極を駆動する維持駆動部、及びアドレス電極を駆動するデータ駆動部を備えることが可能である。
【0067】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明に係る技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】通常のプラズマディスプレイパネルの構造を示した図である。
【図2】従来のプラズマディスプレイパネルの前面パネル製造工程を順次に示した図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構造を示した図である。
【図4】本発明に係るプラズマディスプレイパネルのバス電極構造を示した図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの製造工程を順次に示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構造を示した図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの製作工程の中で、前面パネルの製造方法を順次に示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された透明電極と、前記透明電極上に形成されブラック物質を含むバス電極とを有する前面パネルと、
前記前面パネルと所定間隔で離隔されて合着された後面パネルと、
を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記バス電極は、銀(Ag)、銅(Cu)及びクロム(Cr)のうち、いずれかを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記バス電極は、銀粒子を更に含み、前記ブラック物質は、前記銀粒子をコーティングしていることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記ブラック物質は、導電性であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記ブラック物質は、導電性物質であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記ブラック物質の厚さは、0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記ブラック物質は、非導電性であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記ブラック物質は、非導電性であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記ブラック物質の厚さは、0.1μm以上1μm以下であることを特徴とする請求項8に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
前記銀粒子に含まれる銀原子の一部が熱処理により前記ブラック物質中に拡散されていることを特徴とする、請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
前記ブラック物質は非導電性であり、前記ブラック物質中に拡散されている前記銀原子により前記バス電極が導電性を有することを特徴とする、
請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項12】
基板と、前記基板上に形成されブラック物質を含むバス電極とを含む前面パネルと、
前記前面パネルと所定間隔で離隔されて合着された後面パネルと、
を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項13】
前記バス電極は、銀(Ag)、銅(Cu)及びクロム(Cr)のうち、いずれかを含むことを特徴とする、請求項12に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
前記バス電極は、銀粒子を更に含み、前記ブラック物質は、前記銀粒子をコーティングしていることを特徴とする、請求項12に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項15】
前記ブラック物質は、導電性であることを特徴とする請求項12に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項16】
前記ブラック物質は、導電性であることを特徴とする請求項14に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項17】
前記ブラック物質の厚さは、0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項18】
前記ブラック物質は、非導電性であることを特徴とする請求項12に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項19】
前記ブラック物質は、非導電性であることを特徴とする請求項14に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項20】
前記ブラック物質の厚さは、0.1μm以上1μm以下であることを特徴とする請求項19に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項21】
前記銀粒子に含まれる銀原子の一部が熱処理により前記ブラック物質中に拡散されていることを特徴とする、請求項14に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項22】
前記ブラック物質は非導電性であり、前記ブラック物質中に拡散されている前記銀原子により前記バス電極が導電性を有することを特徴とする、
請求項21に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項23】
請求項1乃至22何れかに記載のプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動装置と、
を備えたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項24】
ガラス基板上に透明電極を形成するステップと、
前記透明電極の上に、ブラック物質と銀(Ag)粒子とを含むバス電極ペーストを塗布するステップと、
前記バス電極ペーストを露光及び現像することでパターニングし、バス電極を形成するステップと、
を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項25】
前記ブラック物質は、前記銀(Ag)粒子をコーティングしていることを特徴とする請求項20に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項26】
前記銀粒子に含まれる銀原子の一部を熱処理により前記ブラック物質中に拡散させるステップを更に含むことを特徴とする、請求項24に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項27】
前記ブラック物質は非導電性であり、前記銀原子を前記ブラック物質中に拡散させることにより前記バス電極に導電性を持たせることを特徴とする、
請求項26に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項28】
請求項24乃至27の何れかに記載の製造方法によってプラズマディスプレイパネルを製造するステップと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動装置を前記プラズマディスプレイパネルに接続するステップと、
を含むことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−216554(P2006−216554A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24896(P2006−24896)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(590001669)エルジー電子株式会社 (296)
【Fターム(参考)】