説明

プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム

透明基材フィルム31の一方の面に、直接又は接着層を介して、メッシュ状領域203と該メッシュ状領域203を囲む額縁部201とを有する金属層35が設けられている。金属層35に平坦化樹脂層39、及び粘着層41が積層されている。前記金属層35の透明基材フィルム31側の面が黒化処理され、黒化処理層37が形成されている。前記平坦化樹脂層39は近赤外線吸収剤を含有し、粘着層41が封入ガスの発光スペクトルに起因する特定波長光を吸収する色調補正用着色剤を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムに関し、さらに詳しくは、プラズマディスプレイ表示素子(PDPともいう)の前面に配置して、素子から発生する電磁波および近赤外線をシールドし、ディスプレイ(画像表示装置ともいう)に表示された画像を良好に視認できるようにするためのプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断らない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PDP」は「プラズマディスプレイ表示素子」を意味し、「NIR」は「近赤外線」を意味する。
【0003】
(技術の背景)
PDP表示素子は、データ電極と蛍光層を有するガラス基板と透明電極を有するガラス基板とを組合わせ、内部にキセノン、ネオンなどのガスを封入したものであり、従来の陰極線管(CRT)と比較して大画面にでき、普及が進んでいる。PDPが作動すると電磁波、近赤外線、封入ガスの発光スペクトルに起因する特定波長の不要光が大量に発生する。これらの電磁波、近赤外線、及び特定波長の不要光をシールド又は低減するために、PDPの前面に電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、及び不要光吸収フィルムを透明基板に、接着剤層を介して積層して成るプラズマディスプレイ用前面板(複合フィルタ)を設け、プラズマディスプレイを形成している。プラズマディスプレイ用前面板には、PDPから発生する電磁波のシールド性、特に30MHz〜1GHzにおける30dB以上の機能が求められている。また、PDPより発生する波長800〜1,100nmの近赤外線も、他のVTRなどのリモコン機器を誤作動させるので、シールドする必要がある。さらに、PDPに特有の封入ガス固有の発色スペクトルを補正したり、好みの色調に調整したりして、色質を適正化して表示画像の品質を向上させる必要もある。また、プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムには、適度な透明性(可視光透過性、可視光透過率)や輝度に加えて、外光の反射防止性、防眩性を付与して表示画像の視認性を向上させるなど多くの機能が求められている。さらに、プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムには、外力での破損を防止する機械的強度を有する基板、必要に応じて他の層を組み合わせて、容易にプラズマディスプレイ用前面板とすることができることが求められている。
【0004】
(先行技術)
従来、電磁波シールドフィルムを構成要素としたプラズマディスプレイ用前面板としては、接地のための外部電極と良好な接続をとることによる高い電磁波シールド性を得ると共に、近赤外線シールド性、透明性を有する電磁波シールド性接着フィルム及びそれを用いた部材のものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、特開2003−15533号公報ではレーザなどで上層を除去して接地をとる端子部を形成し、特開2003−66854号公報では上1層のみを除去して縁部(端子部)を形成し、特開2002−324431号公報では銀ベース又は導電テープで電極(端子部)を形成せねばならないので、該形成の工程が増加し、該工程のための設備や材料を必要とし、高コストになるという欠点がある。
【0005】
また、プラズマディスプレイ用前面板としては、近赤外線の漏洩が少ないものが知られている(例えば、特許文献4〜6参照)。しかしながら、特開2000−235115号公報では基板に近赤外線吸収剤を含有させ、また、特開2000−137442号公報では基板に近赤外線吸収剤を含有させ、さらに、特開平10−186127号公報では基材又は別層を設けて近赤外線吸収剤を含有させるものである。このため、近赤外線吸収剤を含有させる部材のいずれもが、本発明の透明基板に相当する部材である。該部材は大きく重く枚葉で扱いにくく、量産されている既製材料である。このため、特別に近赤外線吸収剤を含有させるために、別工程を要する特注品となり、品種別の小ロット生産となって、高コストであるという問題点がある。又、近赤外線吸収剤は、一般に紫外線により劣化して近赤外線吸収性能が低下すると云う問題点もある。
【特許文献1】特開2003−15533号公報
【特許文献2】特開2003−66854号公報
【特許文献3】特開2002−324431号公報
【特許文献4】特開2000−235115号公報
【特許文献5】特開2000−137442号公報
【特許文献6】特開平10−186127号公報
【発明の開示】
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、電磁波のシールド、近赤外線のシールド、及び封入ガスの発光スペクトルに起因する特定波長の不要光のシールドの機能を有するプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムを提供するに当って、多品種少ロット生産に十分適切に対応出来るようにすることである。
【0007】
本発明は、プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムにおいて、透明基材フィルムと、透明基材フィルムの一方の面に直接又は接着層を介して設けられ、複数の開口を含むメッシュ部と、このメッシュ部の外周に配置された額縁部とを有する金属層と、金属層上に順次積層された平坦化樹脂層および粘着層とを備え、平坦化樹脂層は近赤外線吸収剤を含有し、粘着層はプラズマディスプレイの封入ガスの発光スペクトルに起因する特定波長光を吸収する色調補正用着色剤を含有することを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムである。
【0008】
本発明は、粘着層はプラズマディスプレイの表示画像の色調調整を行なう色調調整用着色剤を更に含有することを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムである。
【0009】
本発明は、金属層の額縁部の少なくとも一部は、平坦化樹脂層および粘着層のいずれにも覆われることなく外方へ露出していることを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムである。
【0010】
本発明は、透明基材フィルムの他方の面に、反射防止層及び/又は防眩層が設けられていることを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムである。
【0011】
本発明は、金属層のうち透明基材フィルム側の面に、黒化処理により黒化処理層が設けられていることを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムである。
【0012】
本発明は、平坦化樹脂層はメッシュ部の開口を完全に埋めて平坦化面を形成することを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムである。
【0013】
本発明は、平坦化樹脂層はメッシュ部の開口を一部埋めることを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムである。
【0014】
本発明は、平坦化樹脂層よりも透明基材フィルム側にある層のいずれか1層以上は、紫外線吸収剤を含有することを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムである。
【0015】
本発明によれば、金属層が平坦化樹脂層で覆われて、メッシュの凹部、特に凹部のコーナーが埋まっているので、粘着層を塗布又は貼着しても、気泡が抱き込まれない。従来は平坦化樹脂層がなく直接、粘着層で貼着していたので、メッシュ凹部のコーナーに抱き込まれた気泡を除去するために貼着後の減圧及び/又は加圧による脱気工程が必要であったが、本発明はこの脱気工程が不要となった。また、近赤外線の吸収着色剤と、封入ガスの発光スペクトルに起因する特定波長の不要光の吸収着色剤とが、別の層に含有され、しかも多品種少ロット対応が容易で且つ1番最終工程となる粘着層側に色調補正用着色剤が配置されているので、顧客の好みに応じた多品種少ロット的に透過率調整が必要な色調補正用着色剤のみを容易に調整でき、視認性が長期間にわたって安定した表示画像が得られるプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムが提供される。
【0016】
本発明によれば、色調補正用着色剤に加えて色調調整用着色剤を含有させることで、顧客の好みに応じた表示画像の色調調整をすることができる。
【0017】
本発明によれば、平坦化樹脂層が金属層面の額縁部の一部は露出する様にパターン状に塗布しているので、額縁部から端子加工をすることなく、接地用アースをとることができる。さらに、平坦化樹脂層は必要部分のみにパターン状に塗布しているので、材料費を削減できる。
【0018】
本発明によれば、外光の反射防止、防眩性が付与されているので、表示面へ映り込みがなく、表示画像の視認性が向上する。
【0019】
本発明によれば、外光存在下に於いて、表示画像のコントラストをより高めることが出来る。
又、本発明によれば、近赤外線吸収剤を含有する平坦化樹脂層よりも透明基材フィルム側(外光入射側)にある層中に紫外線吸収剤を含有させている為、日光等の紫外線を含む外光が入射しても、紫外線による近赤外線吸収性能の劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
[図1]は本発明の1実施例を示すプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムの断面図である。
[図2]は本発明の1実施例を示すプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムの平面図である。
[図3]は電磁波シールドフィルムのメッシュ部の断面図であり、特に平坦化樹脂層とメッシュの開口部及びライン部との関係を図示するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1は、本発明の1実施例を示すプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムの断面図である。図2は、本発明の1実施例を示すプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムの平面図である。
【0022】
(基本の構成)
図1に示すように、本発明のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30は、透明基材フィルム31/必要に応じて接着層33/金属層35/平坦化樹脂層39/粘着層41からなる。すなわちプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30は透明基材フィルム31と、透明基板31の一方の面に接着剤33を介して設けられた金属層35と、金属層35上に順次設けられた平坦化樹脂層39および粘着層41とを備えている。
【0023】
金属層35はメッシュ状領域(メッシュ部)203と該メッシュ状領域を外周する額縁部201とを有し、必要に応じて、前記金属層35の透明基材フィルム31側の面が黒化処理されて黒化処理層37が形成されている。かつ、平坦化樹脂層39には近赤外線吸収剤が含有され、粘着層41には封入ガスの発光スペクトルに起因する特定波長光の吸収する色調補正用着色剤が含有されている。また、図2に示すように、金属層35の額縁部201の少なくとも1部は、平坦化樹脂層39で覆われることなく、外方に露出している。また、粘着層41には色調補正用着色剤に加えて、色調調整用着色剤が含有されていてもよい。さらに、透明基材フィルム31の金属層35面でない面に、反射防止及び/又は防眩層51を設けてもよい。
【0024】
本発明のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30は、単独又は保護板などの他の部材と併用して、PDPの観察側に設置することで、プラズマディスプレイ用前面板となり、求められる機能を発現できる。
【0025】
(着色剤の定義)
なお、本発明では複数の着色剤を用いるので、混同を避けるために、本明細書中では、PDPより発生する波長800〜1,100nmの近赤外線をシールドする着色剤を「近赤外線吸収剤(NIR吸収剤ともいう)」とし、PDPに特有の封入ガス(ネオンガスなど)固有の発色スペクトル、即ち特定波長の不要光を吸収し画像の色調の天然色からの偏移を補正する着色剤を「色調補正用着色剤(特にネオン原子発光スペクトルを吸収する場合、Ne光吸収剤ともいう)」とし、表示画像を好みの色調に調整する着色剤を「色調調整用着色剤」と定義する。
【0026】
(プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムの製造、及び材料)
本発明のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムは、まず、(1)金属層35を準備し、必要に応じて少なくとも一方の面を黒化処理する。(2)上記金属層35或いはその表面の黒化処理層37と、透明基材フィルム31とが積層される。(3)積層された金属層35は、フォトリソグラフィー法で形成され、メッシュ状領域203と該メッシュ状領域を外周する額縁部201とを有している。(4)上記金属層35のメッシュ状領域203を覆い、かつ額縁部201の少なくとも1部が露出するように、平坦化樹脂層39がパターン状に形成される。(5)上記平坦化樹脂層39面へ粘着層41が形成される。該製造方法と、使用する材料について、順次説明する。
【0027】
(金属層)
金属層35の材料としては、電磁波をシールドする材料、例えば金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウムなど充分に電磁波をシールドできる程度の導電性を持つ金属が適用できる。金属層は単体でなくても、合金あるいは多層であってもよく、鉄の場合には低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金が好ましく、また、黒化処理としてカソーディック電着を行う場合には、電着の易しさから銅又は銅合金箔が好ましい。該銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔が使用できるが、厚さの均一性、黒化処理及び/又はクロメート処理との密着性、及び10μm以下の薄膜化ができる点から、電解銅箔が好ましい。該金属層35の厚さは1〜100μm程度、好ましくは5〜20μmである。これ以下の厚さでは、フォトリソグラフィ法によるメッシュ加工は容易になるが、金属の電気抵抗値が増え電磁波シールド効果が損なわれ、これ以上では、所望する高精細なメッシュの形状が得られず、その結果、実質的な開口率が低くなり、光線透過率が低下し、さらに視野角も低下して、画像の視認性が低下する。
【0028】
金属層35の表面粗さとしては、Rz値で0.5〜10μmが好ましい。これ以下では、黒化処理しても外光が鏡面反射して、画像の視認性が劣化する。これ以上では、接着剤やレジストなどを塗布する際に、表面全体へ行き渡らなかったり、気泡が発生したりする。なお、表面粗さRzは、JIS・B0601(1994年版)に準拠して測定した10点平均粗さ値である。
【0029】
(黒化処理)
好ましくは、金属層35の少なくとも透明基材フィルム31側の面に、黒化処理を施して黒化処理層37を形成する。さらに、両面を黒化処理してもよい。該黒化処理は、金属層35単層の状態で行ってから透明基材フィルム31へ積層する。積層後、さらに透明基材フィルム31の反対面に露出している金属層35を黒化処理して、両面に黒化処理層37を形成してもよい。
【0030】
(両面黒化)
また、両面を黒化処理する場合、上記で片面黒化処理した金属層35を後述する透明基材フィルム31と積層しメッシュを形成した後に、他方を黒化処理してよい。該黒化処理の方法としては、後述の黒化処理が適用でき、好ましくはメッキ法が用いられる。フォトリソグラフィー法でメッシュ部を設けた後に、黒化処理をすると、メッシュ状の金属層の表面(ライン部の表面)及び側面(ライン部の側面)の部分まで黒化処理を行うことができて、PDPから発生する電磁波をシールドし、かつ、電磁波シールド用の金属メッシュ枠(ライン部)部分からの反射が抑えられ、ディスプレイの表示画像をハイコントラストで、良好な状態で視認することができる。
【0031】
黒化処理としては、金属層の表面を粗化(光拡散)及び/又は黒化(光吸収)すればよく、金属、合金、金属酸化物、金属酸化物、或は黒色顔料を添加した樹脂(塗料)の形成や種々の手法が適用できる。好ましい黒化処理としてはメッキ法が用いられ、該メッキ法によれば、金属層への密着力に優れ、均一に、かつ容易に黒化することができる。該メッキの材料としては、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、若しくはクロムから選択された少なくとも1種、又は化合物を用いる。他の金属又は化合物では、黒化が不充分、又は金属層との密着に欠け、例えばカドミウムメッキでは顕著である。
【0032】
金属層35として銅箔を用いる場合の好ましいメッキ法としては、銅箔を硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルトなどからなる電解液中で、陰極電解処理を行って、カチオン性粒子を付着させるカソーディック電着メッキが挙げられる。該カチオン性粒子を設けることで金属層35がより粗化し、同時に黒色が得られる。該カチオン性粒子としては、銅粒子、銅と他の金属との合金粒子が適用できるが、好ましくは銅・コバルト合金の粒子が用いられ、該銅・コバルト合金粒子の平均粒子径は0.1〜1μmが好ましい。カソーディック電着によれば、粒子を平均粒子径0.1〜1μmに揃えて好適に付着することができる。また、銅箔表面に高電流密度で処理することにより、銅箔表面がカソーディックとなり、還元性水素を発生し活性化して、銅箔と粒子との密着性が著しく向上できる。
【0033】
銅・コバルト合金粒子の平均粒子径がこれ以上では、金属層の厚さが薄くなり、基材フィルムと積層する工程で金属箔が切断したりして加工性が悪化し、また、密集粒子の外観の緻密さが欠けて、外観及び光吸収のムラが目立ってくる。これ以下では、金属層の粗化が不足するので、画像の視認性が悪くなる。
【0034】
また、黒色クロム、黒色ニッケルによる黒化処理も、導電性と黒色度合いが良好で、粒子の脱落もなく好ましい、但し黒色ニッケルはアース性が悪いこともあるので、この場合にはパターン状にメッキすればよい。
【0035】
電磁波シールドフィルム30の視認性を評価する光学特性として、色調をJIS−Z8729に準拠した表色系「L*、a*、b*、ΔE*」で表した。該「a*」及び「b*」の絶対値が小さい方が金属層が非視認性となり、コントラスト感が高まり、結果として画像の視認性が優れる。
【0036】
本明細書では、粗化及び黒色化を合わせて黒化処理という。該黒化処理の好ましい反射Y値は0%より大きく20%以下である。なお、反射Y値の測定方法は、分光光度計UV−3100PC(島津製作所製)にて入射角5°(波長は380nmから780nm)で測定した。
【0037】
(防錆処理)
金属層35面及び/又は黒化処理層37へ、必要に応じて防錆層37aを設けてもよく、少なくとも黒化処理層37へ設けるのが好ましい。該防錆層37aは、金属層35及び黒化処理層37の防錆機能を持ち、かつ黒化処理が粒子の場合、その脱落や変形を防止する。該防錆層37aとしては公知の防錆層が適用できるが、ニッケル、亜鉛、及び/又は銅の酸化物、又はクロメート処理層が好適である。ニッケル、亜鉛及び/又は銅の酸化物の形成は公知のメッキ法でよく、厚さは、0.001〜1μm程度、好ましくは0.001〜0.1μmとなっている。
【0038】
(クロメート処理)
クロメート処理は、被処理材へクロメート処理液を塗布し処理する。該塗布方法としては、ロールコート、カーテンコート、スクイズコート、静電霧化法、浸漬法などが適用でき、塗布後は水洗いせずに乾燥すればよい。クロメート処理液としては、通常CrO2を3g/lを含む水溶液を使用する。具体的には、アルサーフ1000(日本ペイント社製、クロメート処理剤商品名)、PM−284(日本パーカライジング社製、クロメート処理液商品名)などが例示できる。このクロメート処理は黒化処理の効果をより高める。
【0039】
(透明基材フィルム)
透明基材フィルム31の材料としては、使用条件や製造に耐える透明性、絶縁性、耐熱性、機械的強度などがあれば、種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6やナイロン610などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリアラミドなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂などがある。
【0040】
透明基材フィルム31は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であってもよい。該透明基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。透明基材31の厚さは、通常、12〜1000μm程度、好ましくは50〜700μm、100〜500μmが最適である。これ以下の厚さでは、機械的強度が不足して反りやたるみなどが発生し、これ以上では、過剰な性能となってコスト的にも無駄である。該透明基材は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用するが、これら形状を本明細書ではフィルムと総称する。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが透明性、耐熱性がよくコストも安いので好適に使用され、ポリエチレンテレフタレートが最適である。また、透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光線透過率で80%以上である。
【0041】
透明基材フィルム31に対しては、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。該樹脂フィルムは、必要に応じて、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
【0042】
(積層)
透明基材フィルム31と金属層35との積層(ラミネートともいう)法としては通常、透明基材フィルム31又は金属層35の一方の面へ、接着剤(又は粘着剤)の樹脂、またはこれらの混合物を、ラテックス、水分散液、又は有機溶媒液として、スクリーン印刷、グラビア印刷、コンマコート、ロールコートなどの公知の印刷またはコーティング法で、印刷または塗布し、必要に応じて乾燥して接着層33を形成した後に、他方の材料と重ねて加圧すればよい。該接着層の膜厚としては、0.1〜20μm(乾燥状態)程度、好ましくは1〜10μmである。
【0043】
具体的な積層方法としては、通常、連続した帯状(巻取という)で行い、巻き取りロールから巻きほぐされて伸張された状態で、金属層(箔)又は透明基材フィルムの一方へ、接着剤を塗布し乾燥した後に、他方の材料を重ね合わせて加圧すればよい。さらに、必要に応じて30〜80℃の雰囲気で数時間〜数日のエージング(養生、硬化)を行って、巻取りロール状の積層体とする。好ましくは、当業者がドライラミネーション法(ドライラミともいう)と呼ぶ方法がある。さらに、紫外線(UV)や電子線(EB)などの電離放射線で硬化(反応)する電離放射線硬化型樹脂も好ましく用いられる。尚、透明基材フィルムの一方の面にメッキ、蒸着等の方法により金属層を直接形成することも可能である。この場合には、接着層は介在しない。
【0044】
(ドライラミネーション法)
ドライラミネーション法とは、溶媒へ分散または溶解した接着剤を、乾燥後の膜厚が0.1〜20μm(乾燥状態)程度、好ましくは1.0〜5.0μmとなるように、例えば、ロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティングなどのコーティング法で塗布し、溶剤などを乾燥して、接着層を形成し、その後直ちに、貼り合わせ基材を積層した後に、30〜120℃で数時間〜数日間エージングで接着剤を硬化させることで、2種の材料を積層させる方法である。ドライラミネーション法で用いる接着層は接着層33となり、熱硬化型、または電離放射線硬化型接着剤が適用できる。熱硬化型接着剤としては、具体的には、トリレンジイソシアナートやヘキサメチレンジイソシアナート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる2液硬化型ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤などが適用できるが、2液硬化型ウレタン系接着剤が好適である。
【0045】
(金属のメッシュ加工)
図2の平面図に示すように、金属層35はメッシュ状領域のメッシュ部203と、該メッシュ部を外周する全面金属層の端子部となる額縁部201とを有する。メッシュ部203は、図3の断面図の如く、開口部207と金属層が残ったライン部205とで囲まれた複数の開口部207とを有している。額縁部201は開口部がなく全面金属層が残され、額縁部201は、メッシュ部203を囲むように設けておく。メッシュ状領域を設ける方法として、公知のフォトリソグラフィー法が適用できる。
【0046】
(フォトリソグラフィー法)
透明基材フィルム31/接着層33/金属層35の積層体の金属面を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状とする。この金属層35へレジスト層をメッシュパターン状に設け、レジスト層で覆われていない部分の金属層をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去して、メッシュ状の金属層とする。この工程も、帯状で連続して巻き取られたロール状の積層体を加工して行く。該積層体を連続的又は間歇的に搬送しながら、緩みなく伸張した状態で、マスキング、エッチング、レジスト剥離する。
【0047】
まず、マスキングは、例えば、感光性レジストを金属層上へ全面塗布し、乾燥した後に、所定のパターン(メッシュのライン部と額縁部)を措置した原版(フォトマスク)にて密着露光し、水現像し、硬膜処理などを施し、ベーキングする。レジストは、巻き取りロール状の帯状の積層体を連続又は間欠で搬送させながら、その金属層面へ、カゼイン、PVA、ゼラチンなどのレジストをディッピング(浸漬)、カーテンコート、掛け流しなどの方法で塗布される。また、レジストは塗布ではなく、ドライフィルムレジストを用いてもよく、ドライフィルムレジストを用いると、作業性が向上できる。ベーキングはカゼインレジストの場合、200〜300℃で行うが、積層体の反りを防止するために、できるだけ低温度が好ましい。
【0048】
(エッチング)
マスキング後にエッチングを行う。エッチングに用いるエッチング液としては、本発明のようにエッチングを連続して行う場合、循環使用が容易にできる塩化第二鉄、或は塩化第二銅の水溶液が好ましい。また、該エッチングは、帯状で連続する鋼材、特に厚さ20〜80μmの薄板をエッチングするカラーTVのブラウン管用のシャドウマスクを製造する設備と、基本的に同様の工程である。即ち、該シャドウマスクの既存の製造設備を流用でき、マスキングからエッチングまでが一貫して連続生産できて、極めて効率が良い。エッチング後は、水洗、アルカリ液によるレジスト剥離、洗浄を行ってから乾燥すればよい。
【0049】
(メッシュ)
メッシュ部203は、額縁部201で囲まれるとともにライン部205により形成された複数の開口部207を有している。開口部207の形状は特に限定されず、例えば、正3角形等の3角形、正方形、長方形、菱形、台形などの4角形、6角形、等の多角形、円形、楕円形などが適用できる。これらの開口部207の複数を、同一形状のもののみ、または2種類以上の組合せにより配列させてメッシュ部203とする。開口部207の開口率及びメッシュの非視認性から、ライン部205のライン幅は25μm以下、好ましくは20μm以下となっており、ライン部205のライン間隔(ラインピッチ)は光線透過率から100μm以上、好ましくは200μm以上となっている。また、ライン部205と電磁波シールド層端部の辺とのなすバイアス角度は、モアレ縞の解消などのために、ディスプレイの画素や発光特性を加味して適宜、選択すればよい。
図3(A)(B)は、電磁波シールドフィルムのメッシュ部の断面図である。
【0050】
(平坦化樹脂層)
フォトリソグラフィー法で積層された、透明基材フィルム31/接着層33/金属層35/必要に応じ設けられる黒化処理層37からなる積層体の金属層或いは黒化処理層37面に、平坦化樹脂層39を設ける。メッシュ部203が形成されると、額縁部201及びメッシュ部203のライン部205は金属箔の厚みがあるが、開口部207は金属層35が除去されて空洞(凹部)となり、メッシュ部203は、凹凸状態となる。従来、該凹凸は次工程で接着剤又は粘着剤が塗布される場合が多いので、接着剤などで埋められるが、隅々まで埋まらず特にコーナー部分には気泡が発生して、透明性や表示画像の視認性が低下するので、加圧や減圧などによる気泡の脱気工程を設けねばならないという欠点がある。この脱気工程は、積層体を通常常温〜70℃程度の密閉釜へ入れて、加圧及び/又は減圧、若しくはこれらの繰り返し、30〜60分間も行うバッチ処理であり、極めて生産性が低く、高コストである。また、メッシュ部203形成後積層体をディスプレイへ貼り込む場合には、凹凸が露出したままで、傷付きやすく作業性が悪い。本発明によれば、これらの欠点が解消される。
【0051】
平坦化樹脂層39で凹部を埋めて、メッシュ部203の開口部207の凹部の隅々まで行き渡らせ、かつ金属層を保護する。平坦化樹脂層39の樹脂を金属層35へ塗布し被覆するが、図3(A)の如く平坦化樹脂層39が開口部207の凹部を埋め、かつ金属層35上にも形成されて表面を平坦化させてもよく、図3(B)の如く開口部207の凹部の表面に凹凸が残っていてもよい。要は、開口部207の凹部及び金属層35を覆い、開口部207の凹部の隅々へ平坦化樹脂層39が行き渡って金属層の凹凸の段差を軽減していればよい。
【0052】
平坦化樹脂層39は透明性が高く、メッシュの金属との接着性が良く、次工程の透明接着剤との接着性がよいものであればよい。該平坦化樹脂層39の材料としては、透明であればよく特に限定されないが、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、反応型樹脂、電離放射線硬化型樹脂やこれらの混合物が使用される。平坦化樹脂層39が熱硬化型樹脂の場合には、後述する着色剤、特にジイモニウム系化合物を含有させた場合、該着色剤がイソシアネート基などの官能基を有する硬化剤との硬化反応過程において着色剤が変化し、機能が低下しやすい。また、電離放射線硬化型樹脂の場合には、電離放射線の照射により、着色剤が変退色や機能低下したりする恐れがあるので、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0053】
さらに、平坦化樹脂層39は、粘着層41へ含有する「色調補正用着色剤」及び/又は「色調調整用着色剤」と隔離するためにも、熱可塑性樹脂が好ましく、さらに好ましくは、極性の高い官能基を持たない合成樹脂、あるいは官能基数の少ない合成樹脂となっている。
【0054】
熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニルアルコール共重合体、又は塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、ポリブチル(メタ)アクリレート樹脂、又はアクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体などのアクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系などのポリオレフィン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、セルロース系樹脂(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、プロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなど)、これらの混合物等が使用される。なお、本明細書では、変性されたセルロース系樹脂も合成樹脂に含める。
【0055】
好ましい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又はポリエステル樹脂である。該熱可塑性樹脂は、着色剤である色素の溶解性や安定維持性、及び着色剤の機能耐久性の点で良好である。
【0056】
(近赤外線吸収剤の含有)
平坦化樹脂層39へは、近赤外線吸収剤(NIR吸収剤)を含有させる。該近赤外線吸収剤は、PDPの発する波長800〜1100nm帯域の近赤外線の透過率が20%以下、好ましくは10%以下に、実用に供さられる程度にシールドするものであれば、特に限定されない。近赤外線吸収剤として、近赤外線領域に急峻な吸収があり、可視光領域の光透過性が高い、例えば、ポリメチン系、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、6塩化タングステンなどの近赤外線吸収色素が用いられる。
【0057】
着色剤の種類や添加量は、着色剤の吸収波長及び吸収係数や、色調及びディスプレイ用前面板に要求される透過率などに合わせて、適宜選択すればよい。例えば、近赤外線吸収剤の添加量は、層中に0.1〜15質量%程度を添加し、色調補正用着色剤や色調調整用着色剤などそれぞれの着色剤の添加量は、層中に0.00001〜2質量%程度を添加し、それらの着色剤を紫外線から保護するために、層中にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤を含ませてもよく、紫外線吸収剤の添加量は、層中に0.1〜10質量%程度である。
【0058】
(着色剤の含有)
平坦化樹脂層39へ近赤外線吸収剤(NIR吸収剤)からなる着色剤を含有させる場合には、透明合成樹脂と着色剤とを溶媒へ溶解又は分散した組成物インキを塗布し乾燥すればよい。上記着色剤は事前に溶媒へ溶解又は分散した溶液状とし、同様に透明合成樹脂も事前に溶媒へ溶解又は分散した溶液状とした後に、混合又は再分散して組成物インキとするのが、着色剤を均一に分散する点で望ましい。混合又は分散の方法としては特に限定はなく、通常の混練・分散機、例えば、デスパー、ミキサー、タンブラー、ブレンダー、ホモジナイザー、ボールミルなどの公知の方法を用いることができる。
【0059】
(平坦化樹脂層の形成)
平坦化樹脂層39としては、上記樹脂を開口部207の凹部に塗布して埋め込むが、凹部の隅々まで侵入しないと、気泡が残り透明性が低下する。このため、溶剤などで稀釈して低粘度の組成物(インキ)とし、塗布し乾燥して層を形成する。該組成物(インキ)としては、上記の樹脂をメチルエチルケトン、酢酸エチル及び/又はトルエンなどを溶媒として分散または溶解し、別途、着色剤も同様の溶媒へ分散または溶解して混合することが、均一に分散する点で好ましい。塗布方法としては、スクリーン印刷、ロールコート、リバースロールコート、スリットリバースコート、スプレーコート、ダイコート、リップダイコート、グラビアコート(グラビア印刷)、グラビアリバースコート、またはコンマコートなどの公知の印刷または塗布法で形成する。凹部の隅々まで侵入しないと、気泡が残り透明性が低下する。このため、溶剤などで稀釈して低粘度で塗布し乾燥したり、空気を脱気しながら塗布する。
【0060】
(パターン状の形成)
該平坦化樹脂層39は、図2に図示するように、パターン状に塗布することが好ましく、該パターン塗布方法としては、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、または間欠式ダイコート法が好ましい。該パターンは、メッシュ部203を覆っていればよく、少なくとも額縁部201の1部を覆わず、該額縁部201の1部である金属層35を接地用アースをとることができるように露出させればよい。該露出部分は、額縁部201の全部、メッシュ部203の外周の上下左右の1又は複数辺、又は1辺の1部でもよい。このようにすると、額縁部201の1部が外方に露出するので、筐体などへ容易に接地しアースをとれる。また、平坦化樹脂層39は、必要な部分のみパターン状に塗布しているので、材料費が削減できる。さらに、従来は接地用に端子部が露出していないので、わざわざ加工して露出させる端子加工作業をしていたが、本発明ではパターン状に塗布し額縁部の1部が露出しているので、端子加工が不要である。
【0061】
(粘着層)
上記のように積層された、透明基材フィルム31/接着層33/金属層35/平坦化樹脂層39のうち平坦化樹脂層39面へ粘着層41が設けられている。粘着層41の粘着剤としては、公知の感圧で接着する粘着剤が適用できる。粘着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン又はスチレン−ブタジエン共重合樹脂などの合成ゴム系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニール又はエチレン−酢酸ビニール共重合体などの酢酸ビニール系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリロニトリル、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン、ロジントリグリセリド又は水素化ロジンなどのロジン系樹脂が適用できる。好ましい粘着層41の粘着剤としては、化学的に極性の低く、透明性のよい材料が好ましい。
【0062】
(色調補正用着色剤)
PDPでは、特有の封入ガス(例えばネオンなど)固有の発色スペクトル光(不要発光)が発生して、表示画像の色純度が低下する。このため、これをシールドし補正する着色剤「色調補正用着色剤(特にネオン原子の発光スペクトル吸収の場合Ne光吸収剤ともいう)」を含む層を設ける必要がある。「色調補正用着色剤」は、粘着層41に含有される。特にネオン原子の発光スペクトルを吸収する場合には色調補正用着色剤としては、波長570nm〜605nmに吸収極大を有する着色剤を用いる。色調補正用着色剤としては、可視領域に所望の吸収波長を有する一般の染料または顔料が用いられ、その種類は特に限定されるものではない。例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、アゾメチン系、オキリジン系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ポルフィリン系、ジバンゾフラノン系、ジケトピロロピロール系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系、スクアリリウム系等の公知の有機色素が挙げられる。
【0063】
(色調調整用着色剤)
粘着層41に、「色調補正用着色剤」に加えて、更に色調調整用着色剤を含有させてもよい。色調調整用着色剤は、透過画像のコントラストの向上や、色彩調整のために用いられ、画像の色調を変えて画像を好みの色調に調整するための、可視領域に吸収を持つ着色剤である。色調調整用着色剤としては、例えば、モノアゾピグメント、キナクリドン、チオインジゴボルドー、ベリリレンマルーン、アニリンブラック、弁柄、酸化クロム、コバルトブルー、群青、カーボンブラックなどの有機および無機顔料、並びにインジゴイド染料、カルボニウム染料、キノリン染料、ニトロン染料、ナフトキノン染料、ベリノン染料などの染料を挙げることができる。好ましい着色剤(染料又は顔料)としては、560〜620nmの波長範囲に吸収極大を持つローダミン系、ボルフィリン系、シアニン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、キサンタン系、オキソノール系またはアゾ系の化合物、380〜440nmの波長範囲に吸収を持つシアニン系、メロシアニン系、オキソノール系、アリーリデン系またはスチリル系などのメチン系、アントラキノン系、キノン系、ジフェニルメタン染料、トリフエニルメタン染料、キサンテン染料、アゾ系、アゾメチン系の化合物、640〜780nmの波長範囲に吸収を持つシアニン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、キサンテン系、オキソノール系、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、銅フタロシアニン系、フェノチアジン系またはフェノキサジン系などの化合物が好ましく用いられる。これらの着色剤を単独又は混合して用いてもよい。
【0064】
着色剤の種類や添加量は、着色剤の吸収波長および吸収係数や、色調及びディスプレイ用前面板に要求される透過率などに合わせて、適宜選択すればよい。例えば、近赤外線吸収剤は、層中に0.1〜15質量%程度添加され、色調補正用着色剤や色調調整用着色剤は、層中に0.00001〜2質量%程度添加される。それらの着色剤を紫外線から保護するために、層中にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤を含ませてもよく、紫外線吸収剤は、層中に0.1〜10質量%程度添加される。
【0065】
(着色剤の含有)
粘着層41の層中へ色調補正用着色剤(Ne光吸収剤等)、色調調整用着色剤の少なくとも1つの着色剤を含有させる場合には、粘着層41用の粘着剤と着色剤とを溶媒へ溶解又は分散した組成物を用い、該組成物を塗布し乾燥すればよい。上記着色剤は事前に溶媒へ溶解又は分散した溶液状とし、同様に粘着剤も事前に溶媒へ溶解又は分散した溶液状とした後に、混合又は再分散して組成物インキとするのが、着色剤を均一に分散する点で望ましい。混合又は分散の方法としては特に限定はなく、通常の混練・分散機、例えば、デスパー、ミキサー、タンブラー、ブレンダー、ホモジナイザー、ボールミルなどの公知の方法が用いられる。
【0066】
本発明では、含有させる近赤外線吸収剤(NIR吸収剤)と色調補正用着色剤(Ne光吸収剤等)を、それぞれ平坦化樹脂層39と粘着層41の別層に配分することができるので、両着色剤の透過率調整を個別に行える為、NIRと不要発光の吸収の程度を容易に調整できる。また、粘着層41中へ色調補正用着色剤(Ne吸収剤等)及び色調調整用着色剤を含有させる作業は、終わりに近い工程で行なわれる。このため物理的規格が予め決まっており、特に透過スペクトルを確認して色調を調整する作業が不要な粘着層41に着色剤を含有させるまでの工程は、共通規格でまとめて1品種大ロット製造として行なうことができるので、低コストで製造できる。さらに、最終工程にあたる粘着層形成工程において透過スペクトルを確認して色調を調整または補正する必要の有る色調補正用着色剤や色調調整用着色剤を含有させるため、顧客の好みに応じた表示画像の色調を容易に補正、調整することができ、而も工程全体の時間、コストの上昇を最小限に出来る。また、粘着層形成工程は、平坦化樹脂層形成工程に比べて加工精度、加工条件調整の要求レベルも低くて済むため、多品種少ロットの色調の補正または調整に向いている。
【0067】
(剥離紙)
粘着層41は粘着性を有するので、粘着層41面へ剥離紙を貼着しておくのが好ましい。剥離紙は、粘着層形成後直ちに使用する場合には不要である。剥離紙としては、シリコーン樹脂やメラミン樹脂などを塗布したポリエチレンテレフタレートフィルムや上質紙などの公知のものが適用できる。また、粘着剤を平坦化樹脂層39に塗布する替わりに、予め剥離紙へ粘着剤が塗布された粘着フィルムを、透明基材フィルム31/接着層33/金属層35/平坦化樹脂層39の積層体の平坦化樹脂層39面へ貼着してもよい。好ましいプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30の構成は、透明基材フィルム31/接着層33/金属層35/平坦化樹脂層39(近赤外線吸収剤を含有)/粘着層41/(色調補正用着色剤、若しくは、色調補正用着色剤及び色調調整用着色剤を含有)/剥離紙となり、使用時に剥離紙を除去して使用する。
【0068】
(反射防止層及び/または防眩層)
以上で、透明基材フィルム31の一方の面へ電磁波及び近赤外線のシールド機能を設けたが、さらに、透明基材フィルムの他方の面に、反射防止層及び/又は防眩層51を設けてもよい。反射防止層及び/又は防眩層51は、最後に設けてもよいが、予め透明基材フィルム31に設けておくのが好ましい。
【0069】
(反射防止機能)
上記透明基材フィルム31表面へ、反射防止機能を付与するために、少なくとも反射防止層及び/又は防眩層51を設ける。また、反射防止フィルムTAC−AR1(大日本印刷社製、商品名)などの市販品の反射防止機能付き透明フィルムを用いてもよい。反射防止機能は、太陽、蛍光燈などからの外光が、PDPの画面に入射して反射することから生じる画面の映り込みを低減させる。また、表面の反射率を抑えることで、画像のコントラストが良くなりその結果、画像の視認性が向上する。
【0070】
(反射防止層)
本明細書において、「反射防止層」とは、透明基材フィルム31表面に、透明な誘電体層を1層以上積層したものをいう。誘電体層のうち最外層の屈折率を其の直下の層(透明基材フィルム、直下の誘電体層、或いは後述の如くハードコート層の上に反射防止層を積層する場合に於いてはハードコート層)よりも低屈折率となるように構成し、且つ該誘電体層の光学的厚み(屈折率×幾何学的厚み)を反射防止すべき光の波長の1/4とする。このような構成により各層界面からの反射光を干渉により減衰させることができる。反射防止層の代表的な層構成としては、(1)透明基材フィルム/(低屈折率層)、(2)透明基材フィルム/(高屈折率層/低屈折率層)、(3)透明基材フィルム/(低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)、(4)透明基材フィルム/(高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層)等が挙げられる。
尚ここで( )内は反射防止層の構成である。反射防止層を構成する各層の材料としては、低屈折率層については、弗化マグネシウム(MgF2)、水晶石等の無機物、或いは後述のように低屈折率樹脂組成物が挙げられる。高屈折率層については、二酸化チタン、硫化亜鉛等の無機物が挙げられる。反射防止層の製法は、公知の蒸着、スパッタリング等の乾式コーティング法、或いはロールコート、リップダイコート等の湿式コーティング法による。
【0071】
具体例を示すと、(1)屈折率が2.3の硫化亜鉛からなる高屈折率層と、屈折率が1.38の弗化マグネシウムからなる低屈折率層とを、(透明基材フィルム/〔高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層〕)の順で真空蒸着法にて積層したものを用いることができる。各層の光学的厚みは、可視光線帯域の中間付近の波長ナトリウム原子スペクトルのD線(≒590nm)の1/4とする。
【0072】
(2)また透明基材フィルム表面に、低屈折率樹脂組成物からなる低屈折率層をリップダイコート法によって塗工し、積層したものを用いることができる。低屈折率層の光学的厚みは、可視光線帯域の中間付近の波長ナトリウム原子スペクトルのD線(≒590nm)の1/4とする。該低屈折率樹脂組成物としては、分子中に弗素原子を含む電離放射線硬化型樹脂中に、平均粒子径5〜300nmの透明微粒子を分散させたものを用いることができる。低屈折率樹脂組成物を透明基材フィルム表面に塗工し、電離放射線を照射して架橋、硬化せしめることにより、硬化塗膜の内部及び/又は表面に平均孔径が0.01〜100nmの空気を含有する孔を多数生じさせ、多孔質塗膜を形成する。このように分子中に弗素原子を含む電離放射線硬化型樹脂は、それ自体が通常の樹脂に比べて低屈折率を持ち、かつ塗膜が多孔質となり空気を含有するため、塗膜の平均屈折率は空気の屈折率(1.0)に向かって近づき、結果として塗膜の屈折率は低くなる。分子中に弗素原子を含む電離放射線硬化型樹脂としては、数平均分子量が20,000〜500,000程度のポリマーであって、分子中に弗素原子を含むと共に、電離放射線硬化性官能基として(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有するものを必須成分とする。(尚ここで、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基又はメタクリロイル基」を意味する)。分子中に弗素原子を含む電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、フルオロエチレン等の弗素原子含有単量体同志の単独重合体、或いは弗素原子含有単量体とペンタエリスリトールトリアクリレート等の弗素原子非含有単量体との共重合体を用いることができる。該ポリマーに更に必要に応じて1分子中に3個以上の電離放射線硬化性官能基を有する単量体を加えても良い。単量体中には弗素原子を含有しても良いし、含有しなくても良い。尚、電離放射線としては、代表的には電子線、紫外線等が用いられる。
【0073】
電離放射線硬化型樹脂中に含まれる微粒子としては、粒子内部に空気を内包した中空粒子、多孔質粒子等の粒子それ自体に空気を含有するものが用いられる。或いは、粒子それ自体には空気を含有しなくとも、該電離放射線硬化型樹脂中に分散した際に、その周囲に空気を付随し微粒径気泡を生じるもの、あるいは(1次)粒子が複数集合、凝集して空気を包含するもの等であっても良い。該微粒子としては、例えば、中空シリカ粒子、多孔質シリカ粒子、コロイダルシリカ、アクリル凝集粒子等が挙げられる。
該微粒子の添加量は、該分子中に弗素原子を含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、1〜400質量部程度である。
【0074】
(ハードコート層)
必要に応じて、透明基材フィルム31と反射防止層51との間に設けるハードコート層は、JIS−K5400の鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有する層からなり、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート単量体等を単独或いは2種以上混合したものを塗工し、これを、熱又は電離放射線で硬化させて形成される。
【0075】
(防眩層)
本明細書において、「防眩層」は、層表面の微小凹凸、或いは層内部に分散する異屈折率微粒子によって光を拡散(散乱)させて、ディスプレイ画像のギラツキやチラツキ感を防止するものをいう。防眩性の光学的性質は、ヘイズ値が、3%以上、好ましくは3〜40%、より好ましくは5〜30%となっている。ヘイズ値が3%未満では防眩性が不足し、ヘイズ値が40%を超過すると光線透過率が悪くなる。60°グロスは、100以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは50〜85である。60°グロスが100を超えると、反射による表面光沢により防眩性が不十分となる。透過鮮明度は、100以上、より好ましくは150以上、さらに好ましくは200〜300である。透過鮮明度が100未満では視認性が不足する。全光線透過率は、70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80〜95%である。全光線透過率が70%未満では透明性が不足する。上記の数値範囲が防眩性、視認性、光線透過性、透明性などに関して総合的によい。
【0076】
(防汚層)
反射防止層及び/又は防眩層51面に防汚層51aを設けてもよい。防汚層51aとしては一般的に、撥水性、撥油性のコートで、シロキサン系、フッ素化アルキルシリル化合物などが適用できる。撥水性塗料として用いられるフッ素系或いはシリコーン系樹脂を好適に用いることができる。例えば、反射防止層の低屈折率層をSiO2により形成した場合には、フルオロシリケート系撥水性塗料が好ましく用いられる。
【0077】
(紫外線吸収剤)
上記の如き層構成の電磁波シールドフィルム30に於いて日光等の外光中の紫外線によって、近赤外線吸収剤の劣化を防止する為に、近赤外線吸収剤を含有する平坦化樹脂層39よりも基材フィルム31側に位置する層の中に、紫外線吸収剤を含有せしめる事が好ましい。斯くの如くすることにより、外光中の紫外線は近赤外線吸収剤(を含む平坦化樹脂)に到達する迄の間に吸収され減衰する。紫外線吸収剤を含有せしめる層としては、接着層33、透明基材フィルム31、反射防止及び/又は防眩層51、或いは防汚層51aのいずれか1層又は2層以上が考えられる。或はこれらの層とは別個に透明樹脂中に紫外線吸収剤を含有する層を平坦化樹脂層39よりも透明基材フィルム31側のいずれかの位置に形成しても良い。紫外線吸収剤としては透明なものを選ぶが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等の有機系紫外線吸収剤、粒径0.2μm程度以下の微粒子から成る酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤が用いられる。紫外線吸収剤の添加量は、各層中に於いて0.1〜5重量%程度である。
【0078】
(プラズマディスプレイ前面板の製造)
以上のようにして、本発明のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30が得られ、該電磁波シールドフィルム30の単独、又は、別に透明基板61などを積層して、プラズマディスプレイ用前面板60を形成する。剥離紙を用いている場合には、剥離紙を除去して透明基板61に粘着層41を粘着する。別の透明基板としては、厚さが0.5〜10mm程度のガラス板やアクリル板が適用できる。
【0079】
(プラズマディスプレイの組立)
続いて、プラズマディスプレイ用前面板60を、PDPの前面へセットして、プラズマディスプレイを作製する。プラズマディスプレイ用前面板60の粘着層41側或は透明基板61側を、PDP面と相対するように設置して、プラズマディスプレイとする。プラズマディスプレイ用前面板60とPDPとの間には、空気層があってもよく、又は接着剤などで直接接着してもよい。
このとき、プラズマディスプレイ用前面板の観察側の面には金属層35の額縁部201の1部が露出しているので、プラズマディスプレイの筐体へ公知の導電性テープなどで、容易にアースをとることができる。従来は金属層は露出していないので、金属層を露出させる工程を必要としていた。本発明によれば、プラズマディスプレイを、透明基材フィルム41側から観賞すればよく、前述した多くの機能とその効果が奏される。
【0080】
(変形形態)(金属層をメッキ)
金属層35として、金属箔を用いて説明してきたが、金属層35をメッキ法によりメッシュ状に形成してもよい。この場合、透明基材フィルム31の一方の面へ、直接、金属層35をメッキ法で形成するので、接着層33は不要となる。メッキ法は、まず、透明基材フィルム31の一方の面へ、中心部分のメッシュ部203とその外周部の額縁部201とからなる形状のパターンを形成した後導電処理を行い、黒化処理を行った後に、電磁波シールド機能の金属をメッキする。メッシュ状領域203と該メッシュ状領域203を囲む額縁部201は、メッシュ状の導電処理を行う際に、所望のメッシュパターンを形成することにより得られる。このようにしてメッシュ状領域203と該メッシュ状領域203を囲む額縁部201とが同時に形成された金属層35が得られる。必要に応じて、金属層35にさらに防錆層が形成される。メッキ法により透明基材フィルム31,金属層35及び黒化処理層37を形成する材料としては、前述のフォトリソグラフィー法と同様である。メッキ法では金属層の成膜方法が異なるだけである。
【実施例1】
【0081】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0082】
(金属層、黒化処理層)
金属層として、厚さ10μmの電解銅箔を用い、この一方の面へ銅・コバルト合金粒子(平均粒子径0.3μm)をカソーディック電着させて黒化処理層を形成した。
【0083】
(基材フィルムと積層)
黒化処理層と、厚さ100μmの2軸延伸PETフィルムA4300(東洋紡績社製、ポリエチレンテレフタレート商品名)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤でラミネートした後に、50℃で3日間エージングして、積層体を得た。接着剤としては主剤としてポリエステルウレタンポリオールを用い、又硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートを用い、塗布量は乾燥後の厚さで4μmとした。
【0084】
(メッシュ部の形成)
該積層体の銅箔をフォトリソグラフィー法によりメッシュ部を形成する。カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを流用して、連続した帯状積層体(巻取)に対してマスキングからエッチングまでを行う。まず、積層体の銅層面の全体へ、カゼインレジストを掛け流し法で塗布した。次のステーションへ間欠して搬送し、開口部207が正方形であって、かつライン部205のライン幅22μm、ライン部205のライン間隔(ピッチ)300μm、バイアス角度49℃のメッシュ部203及び該メッシュ部を囲む幅が15mmの額縁部201のネガパターン原版を用いて、密着露光した。次々と積層体をステーションを搬送させながら、水現像し、硬膜処理し、さらに、加熱してベーキングした。さらに次のステーションへ搬送し、エッチング液として塩化第二鉄水溶液を用いて、スプレイ法で吹きかけてエッチングし、開口部207を形成した。次々と積層体をステーションを搬送させながら、水洗し、レジストを剥離し、洗浄し、さらに加熱乾燥して、メッシュ部203を形成した。
【0085】
(平坦化樹脂層の形成)
続いて、平坦化樹脂層39を形成する。平坦化樹脂層の組成液としては、アクリル系樹脂へ、下記の着色剤を予めメチルエチルケトン溶媒へ分散又は溶解させてから混合した。
【0086】
(着色剤)
上記着色剤は、近赤外線吸収剤(NIR吸収剤)として、ジイモニウム系色素CIR1085(日本カーリット社製、商品名)、フタロシアニン系色素IR12(日本触媒社製、商品名)及びフタロシアニン系色素IR14(日本触媒社製、商品名)を混合して用いた。
上記の平坦化樹脂層の組成液を混合してダイコート法で、メッシュ部分のみへパターン状に塗布し乾燥することで、平坦化樹脂層で覆われたメッシュ部203と、露出した幅15mmの額縁部201(金属層)側の平坦化樹脂層39(乾燥後の厚さ15μm)を得た。
【0087】
(粘着層)
下記の粘着層組成物を用いて、スクリーン印刷法で、メッシュ部203のみにパターン状に印刷し乾燥して、厚さ75μmのシリコーン塗布のPETセパレータを貼合した。このことにより粘着層41で覆われたメッシュ部203と、露出した幅15mmの額縁部(金属層)201とを有する実施例1のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30を得た。
【0088】
(粘着層組成物)
上記粘着層組成物として、アクリル系樹脂の粘着剤に、色調補正用着色剤(Ne光吸収剤)として、TAP−2(山田化学社製、商品名)を含有させたものを用いた。
【実施例2】
【0089】
(色調調整用着色剤入り)
粘着層41の組成液へ、さらに色調調整用着色剤をとして、PSバイオレットRC(三井東圧染料社製、商品名)を加える以外は、実施例1と同様にして、プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30を得た。
【実施例3】
【0090】
透明基材フィルムとして、下記の反射防止フィルムTAC−AR1(大日本印刷社製、反射防止フィルム商品名)(層構成は、厚さ80μmのTAC(トリアセチルセルロース)フィルム/ハードコート層/低屈折率層/防汚層である)を用い、この反射防止面の反対側の面へ、金属層を積層する以外は、実施例1と同様にしてプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30を得た。
【実施例4】
【0091】
(紫外線吸収剤入り)
透明基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート中に紫外線吸収剤として、2(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールを1質量%含有する厚さ80μmの層と、紫外線吸収剤を非含有のポリエチレンテレフタレートの厚さ20μmの層との2層積層体から成る総厚100μmの2軸延伸フィルムを用い、該透明基材フィルムの紫外線吸収剤非含有の層側に金属層の黒化処理層側を積層した以外は、実施例1と同様にしてプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30を得た。
【0092】
(参考例1〜4)
実施例1〜4のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム30の粘着層面を、厚さ5mmのアクリル樹脂板へ貼着し、プラズマディスプレイ用前面板を得た。該プラズマディスプレイ用前面板を、PDPとしてのWOOO(日立製作所社製、商品名)の前面に5mmの空気層をあけて設置することによりプラズマディスプレイを作製した。
【0093】
(参考例5)
参考例1のプラズマディスプレイ用前面板を、アクリル系樹脂の粘着剤によりPDPとしてのWOOO(日立製作所社製、商品名)の前面に直接接着させて設置することによりプラズマディスプレイを作製した。
【0094】
(評価)
プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムを、電磁波シールド性、近赤外線吸収性に加えて、画像の色調、耐湿熱試験及び耐光性試験後の着色剤の褐色性、画像の視認性、及び耐光性試験後の褐色性と近赤外線吸収性の劣化により評価した。画像の色調は、TVテストパターンを表示させて目視で色調を観察し、異常ないものを合格とした。着色剤の褐色性は、耐湿熱試験(60℃95%RH環境下で、1000時間保持)後、及び耐光性試験(カーボンアーワ燈型サンシャインフェードメータにて、ブラックパネル温度63℃の環境下で100時間暴露)後の色の変化を試験前と比較して目視で評価し、著しい変化のないものを合格とした。画像の視認性は、全面が白及び黒画像を表示させて目視で色調を観察し、ギラツキ、外光の著しい映り込みのないものを合格とした。近赤外線吸収性及びその耐光性試験による劣化は波長800〜1100nmの帯域に於ける透過率を上記耐侯性試験の前及び後の透過率を測定し、該帯域内のいずれの波長に於いても透過率10%以下であるものを合格とした。又電磁波シールド性はKEC法(財団法人関西電子光学振興センターの開発した測定法)にて測定し、周波数30MHz〜1GHz帯域内での減衰率が30dB以上のものを合格とした。
【0095】
(評価の結果)
評価の結果、全実施例及び全参考例とも電磁波シールド性及び耐湿熱試験並びに耐候性試験前の近赤外線吸収性は合格であった。又、実施例1〜3では、画像の色調、耐熱試験後の着色剤の褐色性及び画像の視認性のいずれも合格であったが、耐光性試験後の着色剤の褐色性に於いては黄変が認められ不合格であった。又、耐光性試験後の近赤外線吸収性に於いては、上記波長帯域内の近赤外線透過率が10%を超えて不合格となった。
一方、実施例4では、耐候性試験後の着色剤の褐色性、及び耐候性試験後の近赤外線吸収性は共に合格であった。参考例1〜5では、画像の色調及び画像の視認性は共に合格であった。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルムにおいて、
透明基材フィルムと、
透明基材フィルムの一方の面に直接又は接着層を介して設けられ、複数の開口を含むメッシュ部と、このメッシュ部の外周に配置された額縁部とを有する金属層と、
金属層上に順次積層された平坦化樹脂層および粘着層とを備え、
平坦化樹脂層は近赤外線吸収剤を含有し、
粘着層はプラズマディスプレイの封入ガスの発光スペクトルに起因する特定波長光を吸収する色調補正用着色剤を含有することを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
粘着層はプラズマディスプレイの表示画像の色調調整を行なう色調調整用着色剤を更に含有することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
金属層の額縁部の少なくとも一部は、平坦化樹脂層および粘着層のいずれにも覆われることなく外方へ露出していることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
透明基材フィルムの他方の面に、反射防止層及び/又は防眩層が設けられていることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
金属層のうち透明基材フィルム側の面に、黒化処理により黒化処理層が設けられていることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
平坦化樹脂層はメッシュ部の開口を完全に埋めて平坦化面を形成することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム。
【請求項7】
平坦化樹脂層はメッシュ部の開口を一部埋めることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム。
【請求項8】
平坦化樹脂層よりも透明基材フィルム側にある層のいずれか1層以上は、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1〜7記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルム。

【国際公開番号】WO2005/022971
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513459(P2005−513459)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012293
【国際出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】