説明

プラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルの駆動方法

【課題】走査パルス電圧を高くすることなく安定した書込み放電を発生させる。
【解決手段】走査電極を複数の走査電極群に分け、初期化期間においては第1の走査電極群と第2の走査電極群とで異なる波形形状の下り傾斜波形電圧を発生させ、書込み期間においては走査パルスを発生させて走査電極を駆動する走査電極駆動回路43と、第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の発生に用いる制御信号OC1と第2の走査電極群に印加する走査パルスの発生に用いる第2の制御信号SID(1)とを発生する制御信号発生回路とを備え、走査電極駆動回路43は、第2の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位を第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位よりも高い電位にする第3の制御信号OC1’を、第1の制御信号OC1および第2の制御信号SID(1)にもとづき発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には、例えば分圧比で5%のキセノンを含む放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネルにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としては一般にサブフィールド法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。サブフィールド法では、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドで各放電セルを発光または非発光させることにより階調表示を行う。各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
【0004】
初期化期間では、各走査電極に初期化波形を印加し、各放電セルで初期化放電を発生させる。それにより、各放電セルにおいて、続く書込み動作のために必要な壁電荷を形成する。
【0005】
書込み期間では、走査電極に順次走査パルスを印加(以下、この動作を「走査」とも記す)するとともに、データ電極には表示すべき画像信号に対応した書込みパルスを印加する(以下、これらの動作を総称して「書込み」とも記す)。それにより、走査電極とデータ電極との間で選択的に書込み放電を発生させ、選択的を壁電荷を形成する。
【0006】
続く維持期間では、表示させるべき輝度に応じた所定の回数の維持パルスを走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に印加する。それにより、書込み放電による壁電荷形成が行われた放電セルで選択的に放電を起こし、その放電セルを発光させる。これにより画像表示を行う。
【0007】
複数の走査電極は走査電極駆動回路により駆動され、複数の維持電極は維持電極駆動回路により駆動され、複数のデータ電極はデータ電極駆動回路により駆動される。
【特許文献1】特開2006−18298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
書込み期間では、上述したように、複数の走査電極に走査パルスを順次印加して走査を行う。したがって、複数の放電セルのうち走査パルスが印加される順番が遅い放電セルにおいては、初期化波形が印加されてから走査パルスが印加されるまでの時間が長くなる。
【0009】
初期化放電よって放電セルに形成された壁電荷は、他の放電セルに書込み放電を発生させるためにデータ電極に印加される書込みパルスの影響を受けて徐々に減少する。そのため、走査パルスが印加される順番が遅い放電セルにおいては、その放電セルに走査パルスおよび書込みパルスが印加されるまでに壁電荷が減少し、書込み放電の放電不良が発生する場合がある。特に、高精細化されたパネルにおいては、走査電極数の増加により走査に費やす時間がさらに長くなってしまうため、書込み期間の最後の方に書込みがなされる放電セルにおける壁電荷の減少はさらに大きくなり、書込み放電が不安定になりやすい。
【0010】
放電を安定に発生させるためには、電極に印加する駆動電圧を上げればよいが、これは、消費電力を増大させる一因となる。
【0011】
本発明は、これらの課題に鑑みなされたものであり、大画面化、高精細化されたパネルにおいても、走査パルス電圧(振幅)を大きくすることなく、安定した書込み放電を発生させることが可能なプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたパネルと、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、走査電極を第1の走査電極群を含む複数の走査電極群に分け、初期化期間においては第1の走査電極群と第1の走査電極群以外の走査電極群とで異なる波形形状の下り傾斜波形電圧を発生させ、書込み期間においては走査パルスを発生させて走査電極を駆動する走査電極駆動回路と、第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の発生に用いる第1の制御信号と第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する走査パルスの発生に用いる第2の制御信号とを発生する制御信号発生回路とを備え、走査電極駆動回路は、走査電極を第1の走査電極群と第2の走査電極群との2つの走査電極群に分け、初期化期間において、第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位を第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位よりも高い電位にする第3の制御信号を、第1の制御信号および第2の制御信号にもとづき発生させることを特徴とする。
【0013】
これにより、第1の走査電極群以外の走査電極群により構成される放電セル群、例えば、第2の走査電極群により構成される第2の放電セル群に、書込み動作を開始する前に下り傾斜波形電圧による初期化放電を発生させることができるので、大画面化、高精細化されたパネルにおいても、走査パルス電圧(振幅)を大きくすることなく、安定した書込み放電を発生させることが可能となる。また、走査電極駆動回路に供給するために制御信号発生回路で発生させる制御信号の数を削減することができる。
【0014】
また、本発明のパネルの駆動方法は、走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたパネルを、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、走査電極を第1の走査電極群を含む複数の走査電極群に分け、初期化期間においては第1の走査電極群と第1の走査電極群以外の走査電極群とで異なる波形形状の下り傾斜波形電圧を発生させ、書込み期間においては走査パルスを発生させて走査電極を駆動するパネルの駆動方法であって、第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の発生に用いる第1の制御信号と第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する走査パルスの発生に用いる第2の制御信号とを発生させ、初期化期間において、第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位を第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位よりも高い電位にする第3の制御信号を、第1の制御信号および第2の制御信号にもとづき発生させることを特徴とする。
【0015】
これにより、第1の走査電極群以外の走査電極群により構成される放電セル群、例えば、第2の走査電極群により構成される第2の放電セル群に、書込み動作を開始する前に下り傾斜波形電圧による初期化放電を発生させることができるので、大画面化、高精細化されたパネルにおいても、走査パルス電圧(振幅)を大きくすることなく、安定した書込み放電を発生させることが可能となる。また、走査電極駆動回路に供給するために制御信号発生回路で発生させる制御信号の数を削減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大画面化、高精細化されたパネルにおいても、走査パルス電圧(振幅)を大きくすることなく、安定した書込み放電を発生させることができるプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0018】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
【0019】
また、保護層26は、放電セルにおける放電開始電圧を下げるために、パネルの材料として使用実績があり、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性に優れたMgOを主成分とする材料から形成されている。
【0020】
背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0021】
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。なお、本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0022】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
【0023】
図2は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がパネル10の表示領域となる。
【0024】
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図3は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、制御信号発生回路45、および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0025】
画像信号処理回路41は、パネル10の画素数に応じて、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。
【0026】
制御信号発生回路45は、水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vにもとづき各回路ブロックの動作を制御する各種の制御信号を発生し、それぞれの回路ブロック(画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43および維持電極駆動回路44)へ供給する。
【0027】
データ電極駆動回路42は、サブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜データ電極Dmに対応する信号に変換し、制御信号発生回路45から供給される制御信号にもとづいて各データ電極D1〜データ電極Dmを駆動する。
【0028】
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する初期化波形を発生するための初期化波形発生回路(図示せず)、維持期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路(図示せず)、複数の走査ICを備え書込み期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する走査パルスを発生するための走査パルス発生回路52を有する。そして、制御信号発生回路45から供給される制御信号にもとづいて各走査電極SC1〜走査電極SCnをそれぞれ駆動する。
【0029】
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路および電圧Ve1、電圧Ve2を発生するための回路(図示せず)を備え、制御信号発生回路45から供給される制御信号にもとづいて維持電極SU1〜維持電極SUnを駆動する。
【0030】
なお、本実施の形態における走査電極駆動回路43は、後述するように、走査電極SC1〜走査電極SCnを2つの走査電極群に分け、各走査電極群で異なる初期化波形を印加する2相駆動動作を行う。
【0031】
また、制御信号発生回路45は、2相駆動動作のための制御信号を発生し、発生した制御信号を走査電極駆動回路43へ供給する。それにより、走査電極駆動回路43は、走査電極SC1〜走査電極SCnを2相駆動動作により駆動する。
【0032】
次に、走査電極駆動回路43について説明する。図4は、本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路43の回路図である。走査電極駆動回路43は、維持パルスを発生させる維持パルス発生回路50、初期化波形を発生させる初期化波形発生回路51、走査パルスを発生させる走査パルス発生回路52を備え、走査パルス発生回路52のそれぞれの出力はパネル10の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに接続されている。なお、図4には、負の電圧Vaを用いた回路(例えば、ミラー積分回路54)を動作させているときに、維持パルス発生回路50および電圧Vrを用いた回路(例えば、ミラー積分回路53)を電気的に分離するために設けたスイッチング素子Q4を用いた分離回路を示している。また、以下の説明においてスイッチング素子を導通させる動作を「オン」、遮断させる動作を「オフ」と表記し、スイッチング素子をオンさせる信号を「Hi」、オフさせる信号を「Lo」と表記する。
【0033】
維持パルス発生回路50は、一般に用いられている電力回収回路(図示せず)とクランプ回路(図示せず)とを備え、制御信号発生回路45から出力される制御信号にもとづき内部に備えた各スイッチング素子を切換えて維持パルスを発生させる。また、上昇する傾斜波形電圧を発生させるためのミラー積分回路(図示せず)を備え、維持期間の最後に、後述する消去ランプ波形を発生させる。
【0034】
初期化波形発生回路51は、スイッチング素子Q1とコンデンサC1と抵抗R1とを有し走査パルス発生回路52の基準電位Aをランプ状に上昇させるミラー積分回路53、スイッチング素子Q2とコンデンサC2と抵抗R2とを有し走査パルス発生回路52の基準電位Aをランプ状に降下させるミラー積分回路54を備えている。そして、ミラー積分回路53は初期化動作時に上昇する傾斜波形電圧を発生し、ミラー積分回路54は初期化動作時に下降する傾斜波形電圧を発生する。なお、図4には、ミラー積分回路53の入力端子を入力端子IN1、ミラー積分回路54の入力端子を入力端子IN2として示している。
【0035】
なお、本実施の形態では、初期化波形発生回路51に、実用的であり比較的構成が簡単なFETを用いたミラー積分回路を採用しているが、本実施の形態は何らこの構成に限定されるものではなく、基準電位Aをランプ状に上昇または降下させることができる回路であればどのような回路であってもよい。
【0036】
走査パルス発生回路52は、走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに走査パルスを出力する複数の走査IC55(本実施の形態では、走査IC(1)〜走査IC(12))と、書込み期間において基準電位Aを負の電圧Vaに接続するためのスイッチング素子Q5と、基準電位Aに電圧Vscnを重畳した電圧Vcを走査IC55の高電圧側(入力端子INb)に印加するためのダイオードD31およびコンデンサC31と、2つの入力端子に入力される入力信号の大小を比較する比較器CP1および比較器CP2と、比較器CP1の一方の入力端子に電圧(Va+Vset2)を印加するためのスイッチング素子SW1と、比較器CP1の一方の入力端子に電圧(Va+Vset3)を印加するためのスイッチング素子SW2と、比較器CP1の一方の入力端子に電圧(Va+Vset4)を印加するためのスイッチング素子SW3と、走査IC55(本実施の形態では、走査IC(7))を制御するための制御信号SID(本実施の形態では、制御信号SID(1))と比較器CP2の出力信号CPOとの論理和演算を行うオアゲートORと、走査IC55(本実施の形態では、走査IC(1)〜走査IC(6))を制御するための第1の制御信号である制御信号OC1とオアゲートORの出力信号との論理積演算を行うアンドゲートAGとを備えている。なお、比較器CP1の他方の入力端子は基準電位Aに接続されている。また、比較器CP2の一方の入力端子は電圧(Va+Vset5)に、比較器CP2の他方の入力端子は基準電位Aに接続されている。
【0037】
走査IC55は、低電圧側の入力端子である入力端子INaと高電圧側の入力端子である入力端子INbとの2つの入力端子と、各走査電極にそれぞれ接続する複数の出力端子とを有し、制御信号にもとづき、2つの入力端子に入力される電圧のいずれかを各出力端子から出力する。なお、本実施の形態においては、走査IC55を2つの群に分けて駆動し、第1の走査IC群(本実施の形態では、走査IC(1)〜走査IC(6))と、第2の走査IC群(本実施の形態では、走査IC(7)〜走査IC(12))とで異なる制御信号を入力している。そして、第1の走査IC群に属する走査IC(1)〜走査IC(6)には、制御信号として、書込み期間に制御信号発生回路45から出力される制御信号OC1、比較器CP1から出力される制御信号OC2が入力される。また、第1の走査IC群のうち最初に走査を開始する走査IC(1)には、書込み期間に制御信号発生回路45から出力される走査開始信号SIU(1)が入力される。また、第2の走査IC群に属する走査IC(7)〜走査IC(12)には、制御信号として、アンドゲートAGから出力される第3の制御信号である制御信号OC1’、比較器CP1から出力される制御信号OC2が入力される。また、第2の走査IC群のうち最初に走査を開始する走査IC(7)には、書込み期間に制御信号発生回路45から出力される第2の制御信号である走査開始信号SID(1)が入力される。なお、制御信号OC2は全ての走査IC55(本実施の形態では、走査IC(1)〜走査IC(12))に共通して入力される制御信号である。また、全ての走査IC55(本実施の形態では、走査IC(1)〜走査IC(12))には、信号処理動作の同期をとるための同期信号であるクロック信号CLKが共通して入力される。
【0038】
なお、走査パルス発生回路52は、初期化期間では初期化波形発生回路51の電圧波形を出力し、維持期間では維持パルス発生回路50の電圧波形を出力するように、制御信号発生回路45によって制御される。
【0039】
図5は、本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路43の走査IC55と走査電極SC1〜走査電極SCnとの接続の様子を示す概略図である。なお、図5では、走査IC55以外の回路は省略している。
【0040】
走査パルス発生回路52は、n本の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに走査パルス電圧を印加するためのスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnおよびスイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを備えている。スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnは複数の出力毎にまとめられIC化されている。このICが走査IC55である。
【0041】
なお、本実施の形態では、90出力分のスイッチング素子を1つのモノシリックICとして集積し、パネル10は1080本の走査電極を備えているものとする。すなわち、12個の走査IC(1)〜走査IC(12)を用いて走査パルス発生回路52を構成し、n=1080本の走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動するものとする。このように多数のスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをIC化することにより部品点数を削減し、実装面積を低減することができる。ただし、本実施の形態に挙げた数値は単なる一例であり、本発明は何らこれらの数値に限定されるものではない。
【0042】
そして、書込み動作時には、まず、走査電極SC1〜走査電極SC90に接続された走査IC(1)を動作させ、その次に、走査電極SC91〜走査電極SC180に接続された走査IC(2)を動作させ、以降、走査IC(3)から走査IC(12)までを順次動作させる。
【0043】
なお、上述したように、本実施の形態においては、走査IC55を第1の走査IC群と第2の走査IC群とに分けて走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動しており、第1の走査IC群に属する走査IC(1)〜走査IC(6)に接続されている第1の走査電極群(本実施の形態では、走査電極SC1〜走査電極SC540)と、第2の走査IC群に属する走査IC(7)〜走査IC(12)に接続されている第2の走査電極群(本実施の形態では、走査電極SC541〜走査電極SC1080)とで、異なる波形形状の初期化波形を印加している。この詳細は後述する。
【0044】
次に、走査IC55の動作について説明する。図6は、本発明の一実施の形態における制御信号OC1、制御信号OC2と走査IC55の動作状態との対応関係を説明するための図である。なお、第2の走査IC群に関しては、制御信号OC1を制御信号OC1’に代えることで同様の動作状態になるものとする。
【0045】
図6に示すように、制御信号OC1、制御信号OC2がともにハイレベル(以下、「Hi」と記す)のとき、走査IC55は、「All―Hi」の状態、すなわち走査IC55の出力端子の全てが高電圧側の入力端子INbと電気的に接続されるように、走査IC55の内部に備えられた全てのスイッチング素子が切換えられた状態となる。
【0046】
制御信号OC1が「Hi」、制御信号OC2がローレベル(以下、「Lo」と記す)のとき、走査IC55は、「All―Lo」の状態、すなわち走査IC55の出力端子の全てが低電圧側の入力端子INaと電気的に接続されるように、走査IC55の内部に備えられた全てのスイッチング素子が切換えられた状態となる。例えば、初期化波形発生回路51または維持パルス発生回路50を動作させているときは、制御信号OC1を「Hi」、制御信号OC2を「Lo」にすることでスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnがオフ、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnがオンになり、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを経由して各走査電極SC1〜走査電極SCnに初期化波形または維持パルスを印加することができる。
【0047】
制御信号OC1、制御信号OC2がともに「Lo」のとき、走査IC55は、「HiZ」の状態となる。この「HiZ」の状態では、走査IC55の各出力端子からは、走査IC55が「HiZ」の状態になった時点の出力電圧がそのまま保持されて出力される。
【0048】
制御信号OC1が「Lo」、制御信号OC2が「Hi」のとき、走査IC55は、「DATA」状態、すなわち走査IC55に入力される走査開始信号にもとづきあらかじめ定められた一連の動作を行う状態となる。
【0049】
具体的には、走査IC55に走査開始信号が入力されると(本実施の形態では、走査開始信号が「Hi」から「Lo」に変化すると)、まず最初に、走査IC55の最初の出力端子だけが低電圧側の入力端子INaと電気的に接続され、残りの全ての出力端子は高電圧側の入力端子INbと電気的に接続される。その状態が所定時間(例えば、1μsec)継続された後、次に、走査IC55の2番目の出力端子だけが低電圧側の入力端子INaと電気的に接続され、残りの全ての出力端子は高電圧側の入力端子INbと電気的に接続される。そして、その状態が所定時間継続された後、続いて、走査IC55の3番目の出力端子だけが低電圧側の入力端子INaと電気的に接続される。このようにして、走査IC55の各出力端子が、順番に、所定時間ずつ、低電圧側の入力端子INaと電気的に接続されていく。本実施の形態では、書込み期間に走査IC55をこの動作状態にして走査パルス電圧Vaを順次発生させ、走査電極SC1〜走査電極SCnの走査を行う。なお、本実施の形態では、第1の走査IC群に属する走査IC55に入力する走査開始信号を走査開始信号SIUとし、第2の走査IC群に属する走査IC55に入力する走査開始信号を走査開始信号SIDとしている。
【0050】
なお、本実施の形態では、第1の走査IC群のうち最初に走査を行う走査IC(1)に用いる走査開始信号SIU(1)、および第2の走査IC群のうち最初に走査を行う走査IC(7)に用いる走査開始信号SID(1)を制御信号発生回路45で発生させており、残りの走査開始信号、すなわち、走査IC(2)に用いる走査開始信号SIU(2)から走査IC(6)に用いる走査開始信号SIU(6)までの各走査開始信号、および走査IC(8)に用いる走査開始信号SID(2)から走査IC(12)に用いる走査開始信号SID(6)までの各走査開始信号は、走査IC55で発生させている。
【0051】
例えば、走査IC(1)は、走査IC(1)に接続された全ての走査電極への走査が終了した後、シフトレジスター等を使って走査開始信号SIU(1)を所定時間遅延させて作成した走査開始信号SIU(2)を出力し、次段の走査IC(2)に供給する。走査IC(2)は、同様に、走査開始信号SIU(2)を所定時間遅延させて作成した走査開始信号SIU(3)を次段の走査IC(3)に供給する。以下、同様に、各走査IC55は、入力された走査開始信号を所定時間遅延させて新たな走査開始信号を作成し、次段の走査IC55に供給する。このような構成とすることで、走査開始信号SIU(2)〜走査開始信号SIU(6)および走査開始信号SID(2)〜走査開始信号SID(6)を制御信号発生回路45で発生させなくともよくなり、制御信号発生回路45と走査電極駆動回路43とを結ぶ制御信号のための配線の数を削減することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、第1の走査IC群と第2の走査IC群とで異なる波形形状の初期化波形を発生させており、そのために、第1の走査IC群に用いる制御信号OC1と第2の走査IC群に用いる制御信号OC1とで、制御のタイミングを変えている。そして、第1の走査IC群に用いる制御信号OC1に関しては制御信号発生回路45で発生させているが、第2の走査IC群に用いる制御信号OC1に関しては、アンドゲートAGで発生させた第3の制御信号(第1の走査IC群に用いる制御信号OC1と区別するために、本実施の形態では、「制御信号OC1’」と記す)を用いている。さらに、制御信号OC2には、比較器CP1で発生させた信号を用いている。このように、制御信号OC1’および制御信号OC2を論理演算によって発生させることで、制御信号発生回路45で発生させる制御信号の数をさらに削減し、制御信号発生回路45と走査電極駆動回路43とを結ぶ制御信号のための配線の数をさらに削減することができる。
【0053】
なお、制御信号OC2を出力する比較器CP1は、図4に示すように、スイッチング素子SW1がオン、スイッチング素子SW2およびスイッチング素子SW3がオフのときには電圧(Va+Vset2)と基準電位Aとを比較し、スイッチング素子SW2がオン、スイッチング素子SW1およびスイッチング素子SW3がオフのときには電圧(Va+Vset3)と基準電位Aとを比較し、スイッチング素子SW3がオン、スイッチング素子SW1およびスイッチング素子SW2がオフのときには電圧(Va+Vset4)と基準電位Aとを比較する。そして、基準電位Aの方が高い場合には「Lo」を、それ以外では「Hi」を出力し、走査IC(1)〜走査IC(12)に供給する。また、制御信号OC1’の発生に用いる信号CPOを出力する比較器CP2は、電圧(Va+Vset5)と基準電位Aとを比較し、基準電位Aの方が高い場合には「Hi」を、それ以外では「Lo」を出力する。
【0054】
そして、走査IC55はこの制御信号OC2により、また第2の走査IC群においてはさらに制御信号OC1’および走査開始信号SID(1)も加えて、下降する傾斜波形電圧の最低電圧を、電圧値の異なる複数の電圧で切換えて発生させることができる。なお、スイッチング素子SW1〜スイッチング素子SW3のオン/オフは、制御信号発生回路45によって制御されるものとする。
【0055】
次に、本実施の形態における走査電極群について説明する。図7は、本発明の一実施の形態における走査電極群の区分けの一例を示す概略図である。なお、図7では、パネル10と走査IC55との接続の様子を簡略的に表しており、パネル10内において点線で区切られた領域は、1つの走査IC55により駆動される複数(本実施の形態では、90本)の走査電極が配置された領域を表す。また、表示電極対24は、図2と同様に、図面における左右方向に延長して配列されているものとする。そして、走査IC55の出力は、一般に用いられているフレキシブル配線板77により走査電極SC1〜走査電極SCnに接続されているものとする。
【0056】
2相駆動動作を行う場合、図7に破線で示すように、パネル10の表示領域を2つの領域に分け、1つの領域に含まれる複数の走査電極を1つの走査電極群として、走査電極SC1〜走査電極SCnを2つの走査電極群、すなわち、第1の走査電極群と第2の走査電極群とに分けて駆動を行う。例えば、走査電極数n=1080であれば、走査電極SC1〜走査電極SC540を第1の走査電極群とし、走査電極SC541〜走査電極SC1080を第2の走査電極群とする。なお、破線で囲まれた2つの領域を構成する放電セルを、それぞれ第1の放電セル群、第2の放電セル群とする。
【0057】
そして、1つの走査IC55に接続される走査電極数が90本であれば、走査電極SC1から走査電極SC90までを第1の走査IC(1)に接続し、走査電極SC91から走査電極SC180までを第2の走査IC(2)に接続する。このようにして、走査電極を90本ずつ走査ICに接続していく。そして走査電極SC1〜走査電極SC540に接続された走査IC(1)〜走査IC(6)を第1の走査IC群とし、走査電極SC541〜走査電極SC1080に接続された走査IC(7)〜走査IC(12)を第2の走査IC群とする。そして、本実施の形態では、第1の走査IC群と第2の走査IC群とで異なる初期化波形を発生させるものとする。
【0058】
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について説明する。なお、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールド期間を時間軸上で複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドに輝度重みをそれぞれ設定し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行うものとする。
【0059】
このサブフィールド法では、例えば、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、各サブフィールドはそれぞれ1、2、4、8、16、32、64、128の輝度重みを有する構成とすることができる。また、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い、他のサブフィールドの初期化期間においては維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作を行うことで、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させることが可能である。
【0060】
そして、本実施の形態では、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第8SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける全セル初期化動作の放電にともなう発光のみとなり、維持放電を発生させない黒表示領域の輝度である黒輝度は全セル初期化動作における微弱発光だけとなって、コントラストの高い画像表示が可能となる。また、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。
【0061】
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
【0062】
図8は、本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路43の2相駆動動作においてパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【0063】
なお、図8には、書込み期間の最初に走査を行う走査電極であり第1の走査電極群に属する走査電極SC1と、第1の走査電極群のうち最後に走査を行う走査電極である走査電極SCn/2(例えば、走査電極SC540)と、第2の走査電極群のうち最初に走査を行う走査電極である走査電極SCn/2+1(例えば、走査電極SC541)と、書込み期間の最後に走査を行う走査電極であり第2の走査電極群に属する走査電極SCn(例えば、走査電極SC1080)とを示す。合わせて、維持電極SU1〜維持電極SUn、およびデータ電極D1〜データ電極Dmの駆動波形を示す。
【0064】
また、図8には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化動作を行うサブフィールド(以下、「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)の第1サブフィールド(第1SF)と、選択初期化動作を行うサブフィールド(「選択初期化サブフィールド」と呼称する)の第2サブフィールド(第2SF)とを示す。なお、他のサブフィールドにおける駆動電圧波形は、維持期間における維持パルス数が異なる以外は第2SFの駆動電圧波形とほぼ同様である。また、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中から画像データにもとづき選択された電極を表す。
【0065】
まず、全セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。
【0066】
第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜データ電極Dm、維持電極SU1〜維持電極SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧(以下、「上りランプ波形」と呼称する)L1を印加する。
【0067】
この上りランプ波形L1が上昇する間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜データ電極Dm上部および維持電極SU1〜維持電極SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0068】
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜維持電極SUnには正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加する。
【0069】
ここで、本実施の形態では、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2と、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnとで異なる初期化波形、具体的には下り傾斜波形電圧の最低電圧である到達電位の異なる下り傾斜波形電圧を印加する。まず、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2には、維持電極SU1〜維持電極SUn/2に対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える負の電圧(Va+Vset2)に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧(以下、「下りランプ波形」と呼称する)L2を印加する。この間に、走査電極SC1〜走査電極SCn/2と維持電極SU1〜維持電極SUn/2との間、および走査電極SC1〜走査電極SCn/2とデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn/2上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜維持電極SUn/2上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜データ電極Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、第1の走査電極群により構成される第1の放電セル群の全てに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
【0070】
一方、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnには、電圧Vi3から負の電圧(Va+Vset5)に向かって緩やかに下降する下りランプ波形L5を印加する。ここで、本実施の形態では、電圧Vset5を電圧Vset2(例えば、6(V))よりも高い電圧(例えば、70(V))に設定する。
【0071】
このように、本実施の形態では、第2の走査電極群に印加する下りランプ波形の到達電位を第1の走査電極群に印加する下りランプ波形の到達電位よりも高い電位とする。すなわち、第1の走査電極群に印加する下りランプ波形L2が電圧(Va+Vset2)まで下降するのに対して、第2の走査電極群に印加する下りランプ波形L5は電圧(Va+Vset2)よりも高い電圧(Va+Vset5)までしか下降しないようにする。そのため、第2の走査電極群により構成される第2の放電セル群においては、下りランプ波形L5による初期化放電によって移動する電荷の量が第1の放電セル群の各放電セルに比べて少ない。そのため、下りランプ波形L5による初期化放電後、第2の放電セル群の各放電セルには、第1の放電セル群の各放電セルより多くの壁電荷が残存する。
【0072】
続く書込み期間では、走査電極SC1〜走査電極SCnに対しては順次走査パルス電圧を印加し、データ電極D1〜データ電極Dmに対しては発光させるべき放電セルに対応するデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加して、各放電セルに選択的に書込み放電を発生させる。
【0073】
この書込み期間では、まず維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vc(Vc=Va+Vscn)を印加する。
【0074】
そして、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2に対して、順次走査パルスを印加する。まず、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜データ電極Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(Ve2−Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Ve2を、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態とすることができる。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
【0075】
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作を行う。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜データ電極Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn/2行目の放電セルに至るまで順次行い、第1の放電セル群における書込み動作が終了する。
【0076】
そして、本実施の形態においては、第1の走査電極群への書込み動作が終了した後、かつ第2の走査電極群への書込み動作を開始する前に、初期化期間に発生させた下りランプ波形L5よりも到達電位を低くした下りランプ波形を第2の走査電極群に印加する。すなわち、図8に示すように、第2の走査電極群に電圧Vcから負の電圧(Va+Vset3)に向かって緩やかに下降する下りランプ波形L6を印加する。
【0077】
上述したように、初期化期間において第2の走査電極群に印加した下りランプ波形L5は負の電圧(Va+Vset5)までしか下降させておらず、そのため、第2の放電セル群の各放電セルには第1の放電セル群の各放電セルより多くの壁電荷が残存する。したがって、電圧Vset3を電圧Vset5(例えば、70(V))よりも十分に小さい電圧(例えば、8(V))に設定することで、下りランプ波形L6を下りランプ波形L5よりも十分に低い電位まで下降させることができ、これにより、第2の放電セル群の各放電セルに初期化放電を発生させることができる。
【0078】
すなわち、第2の放電セル群の各放電セルにおいては、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnへの走査を開始する直前に初期化放電を発生させることができる。
【0079】
初期化放電で形成される壁電荷は、時間の経過とともに減少する。そのため、全ての走査電極において書込み期間の直前の初期化期間においてのみ初期化放電を同時に発生させる従来の構成(以下、「1相駆動」と記す)では、書込み期間における走査の順番が遅い放電セルにおいて書込み動作が不安定になるおそれがあった。しかし、本実施の形態では、第2の走査電極群への走査を開始する直前に第2の放電セル群に初期化放電を発生させているので、第2の放電セル群においては、書込み動作を開始する直前に壁電荷を適正な状態にすることができる。したがって、書込み期間において書込み動作の順番が遅い第2の放電セル群に属する放電セルにおいても、書込み放電に必要な印加電圧を高くすることなく、安定した書込み動作を行うことが可能となる。
【0080】
なお、図8には、第2の走査電極群に下りランプ波形L6を印加するのと同タイミングで第1の走査電極群にも下りランプ波形L6を印加する波形図を記載しているが、すでに書込み動作が終わっている第1の走査電極群には下りランプ波形は発生させなくとも駆動上は何ら問題ない。しかし、走査電極駆動回路43の構成上、これらの下りランプ波形を発生させないようにすることが困難な場合には、図8に示すように下りランプ波形L6をそのまま第1の走査電極群に印加してもかまわない。第1の放電セル群の各放電セルにおいては、初期化期間において電圧(Va+Vset2)まで下降する下りランプ波形L2を第1の走査電極群の各走査電極に印加して初期化放電を発生させている。そのため、電圧(Va+Vset2)よりも電位が若干高い電圧(Va+Vset3)まで下降する下りランプ波形L6を第1の走査電極群に印加しても、第1の放電セル群の各放電セルに再度初期化放電が発生するおそれはない。したがって、第1の走査電極群には、下りランプ波形L6をそのまま印加しても何ら問題ない。
【0081】
そして、第2の走査電極群に下りランプ波形L6を印加した後、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnに対して、上述と同様の手順で、順次走査パルスを印加する。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、第2の放電セル群における書込み動作が終了して、第1SFにおける書込み期間が終了する。
【0082】
なお、第2の走査電極群に下りランプ波形L6を印加する期間は、データ電極D1〜データ電極Dmに書込みパルスは印加しないものとする。
【0083】
続く維持期間では、輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。
【0084】
この維持期間では、まず走査電極SC1〜走査電極SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜維持電極SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
【0085】
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
【0086】
続いて、走査電極SC1〜走査電極SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜維持電極SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとに輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを交互に印加し、表示電極対24の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
【0087】
そして、維持期間の最後には、維持電極SU1〜維持電極SUnを0(V)に戻した後、ベース電位となる0(V)から放電開始電圧を超える電圧Versに向かって上昇する傾斜波形電圧(以下、「消去ランプ波形」と呼称する)L3を走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する。すると、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間で微弱な消去放電が発生する。この消去放電で発生した荷電粒子は、維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差を緩和するように、維持電極SUi上および走査電極SCi上に壁電荷となって蓄積されていく。これにより、データ電極Dk上の正の壁電荷を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧は、走査電極SCiに印加した電圧と放電開始電圧の差、すなわち(電圧Vers−放電開始電圧)の程度まで弱められる。
【0088】
その後、走査電極SC1〜走査電極SCnを0(V)に戻し、維持期間における維持動作を終了する。
【0089】
第2SFの初期化期間では、第1SFにおける初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加する。すなわち、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜データ電極Dmに0(V)をそれぞれ印加し、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2には、放電開始電圧以下となる電圧(例えば、0(V))から負の電圧(Va+Vset4)に向かって緩やかに下降する下りランプ波形L4を印加する。
【0090】
これにより前のサブフィールド(図8では、第1SF)の維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められ、データ電極Dk(k=1〜m)上部の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。一方、前のサブフィールドで維持放電が起こらなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷の状態がそのまま保たれる。このように第2SFにおける初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して初期化放電を行う選択初期化動作となる。
【0091】
また、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnには、放電開始電圧以下となる電圧(例えば、0(V))から負の電圧(Va+Vset5)に向かって緩やかに下降する下りランプ波形L7を印加する。
【0092】
これにより、第2の走査電極群により構成される第2の放電セル群においては、上述と同様に前のサブフィールド(図8では、第1SF)の維持期間で維持放電を起こした放電セルでのみ微弱な初期化放電が発生する。しかし、第2の走査電極群に印加する下りランプ波形L7は電圧(Va+Vset2)よりも高い電圧(Va+Vset5)までしか下降しないため、第2の放電セル群においては、その初期化放電によって移動する電荷の量は第1の放電セル群の各放電セルに比べて少ない。そのため、下りランプ波形による初期化放電後、第2の放電セル群の各放電セルには、上述と同様に第1の放電セル群の各放電セルより多くの壁電荷が残存する。
【0093】
第2SFの書込み期間においては、第1SFの書込み期間と同様の駆動波形を印加する。したがって、第2の走査電極群への走査を開始する直前に、第2の放電セル群の各放電セルに初期化放電を発生させることができる。
【0094】
第2SFの維持期間においては、第1SFの維持期間と同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとにあらかじめ定められた数の維持パルスを交互に印加する。これにより、書込み期間において書込み放電を発生させた放電セルで維持放電を発生させる。
【0095】
また、第3SF以降のサブフィールドでは、走査電極SC1〜走査電極SCn、維持電極SU1〜維持電極SUnおよびデータ電極D1〜データ電極Dmに対して、維持期間における維持パルス数が異なる以外は第2SFと同様の駆動波形を印加する。
【0096】
なお、上述した構成においては、下りランプ波形L2における電圧Vset2を、下りランプ波形L4における電圧Vset4(例えば、10(V))よりも小さい電圧に設定することが望ましい。これは、電圧(Va+Vset2)を電圧(Va+Vset4)よりも小さい電圧に設定することで、第1SFにおける初期化放電、すなわち1フィールド期間における最初の初期化放電を確実に発生させるためである。
【0097】
以上が、本実施の形態における2相駆動動作時にパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
【0098】
次に、走査電極駆動回路43の動作と駆動電圧波形の発生について説明する。なお、図9では、電圧Vi1、電圧Vi3は電圧Vsに等しいものとし、電圧Vi2は電圧Vrに等しいものとして説明する。
【0099】
図9は、本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路43の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、図9には、書込み期間の最初に走査を行う走査電極SC1に印加される駆動電圧波形と、第2の走査電極群のうち最初に走査を行う走査電極SCn/2+1(例えば、走査電極SC541)に印加される駆動電圧波形とを示す。合わせて、制御信号OC1、制御信号OC2、制御信号OC1’、比較器CP2の出力信号CPO、走査開始信号SIU(1)、走査開始信号SID(1)を示し、入力端子IN1、入力端子IN2への定電流供給状態を示す。
【0100】
なお、本実施の形態において、走査IC55は、「DATA」状態のときに走査開始信号が「Hi」から「Lo」に変化することで、走査を開始するものとする。また、初期化期間の前半および維持期間はスイッチング素子Q4をオンにし、初期化期間の後半および書込み期間はスイッチング素子Q4をオフにするものとする。
【0101】
(初期化期間)
初期化期間では、まず、維持パルス発生回路50の電力回収回路を動作させ、基準電位Aの電位を上昇させる。その後、維持パルス発生回路50のクランプ回路を動作させ、基準電位Aの電位を電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi1と等しい)にする。
【0102】
次に、時刻t1で、上りランプ波形を発生するミラー積分回路53の入力端子IN1を「Hi」にする。具体的には入力端子IN1に、所定の定電流を入力する。すると、抵抗R1からコンデンサC1に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q1のソース電圧がランプ状に上昇し、初期化波形発生回路51の出力電圧もランプ状に上昇し始める。そしてこの電圧上昇は、入力端子IN1が「Hi」の間継続する。
【0103】
この出力電圧が電圧Vr(本実施の形態では、電圧Vi2と等しい)まで上昇したら、その後の時刻t2で、入力端子IN1を「Lo」にする。具体的には入力端子IN1に、例えば0(V)を印加する。入力端子IN1を「Lo」にすると基準電位Aの電位が電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi3と等しい)まで低下する。
【0104】
なお、この間、制御信号OC1、制御信号SIU(1)、制御信号SID(1)は、「Hi」に保ったままにする。したがって、アンドゲートAGから出力される制御信号OC1’も「Hi」となる。また、図示はしていないが、スイッチング素子SW1はオンにし、スイッチング素子SW2、スイッチング素子SW3はオフにして、比較器CP1において、基準電位A、すなわち初期化波形発生回路51から出力される駆動電圧と電圧(Va+Vset2)とが比較されるようにしておく。したがって、この間は基準電位Aの方が電圧(Va+Vset2)よりも電位が高いので、比較器CP1から出力される制御信号OC2は「Lo」となる。
【0105】
すなわち、制御信号OC1、制御信号OC1’が「Hi」、制御信号OC2が「Lo」なので、全ての走査IC55は「All―Lo」状態となり、全ての走査IC55の出力端子からは基準電位A、すなわち、初期化波形発生回路51から出力される駆動電圧がそのまま出力される。
【0106】
このようにして、放電開始電圧以下となる電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi1と等しい)から、放電開始電圧を超える電圧Vr(本実施の形態では、電圧Vi2と等しい)に向かって緩やかに上昇する上りランプ波形を走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する。
【0107】
次に、時刻t3で、下りランプ波形を発生するミラー積分回路54の入力端子IN2に所定の定電流を入力して、入力端子IN2を「Hi」にする。すると、抵抗R2からコンデンサC2に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q2のドレイン電圧がランプ状に下降して基準電位Aの電位がランプ状に下降し、走査IC55の出力電圧もランプ状に下降し始める。
【0108】
このとき、比較器CP1では、この基準電位Aにおける下りランプ波形と、電圧Vaに電圧Vset2が加えられた電圧(Va+Vset2)とが比較されており、比較器CP1からの出力信号、すなわち制御信号OC2は、基準電位Aにおける下りランプ波形が電圧(Va+Vset2)以下となる時刻t5において「Lo」から「Hi」に切換わる。これにより、制御信号OC1、制御信号OC2ともに「Hi」となり、第1の走査IC群に属する走査IC(1)〜走査IC(6)は「All―Hi」状態となって入力端子INbに入力される電圧を出力する。すなわち、走査IC(1)〜走査IC(6)の出力電圧は基準電位Aに電圧Vscnが重畳された電圧となり、それまでの電圧降下が時刻t5で電圧上昇に切換わるため、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2に印加される下りランプ波形は到達電位が電圧(Va+Vset2)の下りランプ波形L2となる。
【0109】
ここで、本実施の形態においては、走査開始信号SID(1)を時刻t2から時刻t3の間で「Lo」にしておく。比較器CP2においては、基準電位Aと電圧(Va+Vset5)とが比較されるので、比較器CP2から出力される信号CPOは、基準電位Aが電圧(Va+Vset5)以下となる時刻t4で「Lo」となる。このとき、走査開始信号SID(1)は「Lo」なので、オアゲートORからは「Lo」が出力され、これによりアンドゲートAGから出力される制御信号OC1’は「Lo」となる。
【0110】
これにより、制御信号OC1’、制御信号OC2ともに「Lo」となり、第2の走査IC群に属する走査IC(7)〜走査IC(12)は「HiZ」状態となる。すなわち、走査IC(7)〜走査IC(12)の出力電圧は、時刻t4時点の出力電圧がそのまま保持された電圧となり、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnに印加される下りランプ波形は到達電位が電圧(Va+Vset5)の下りランプ波形L5となる。
【0111】
なお、走査IC55は「DATA」状態のときのみ走査開始信号が有効に働くので、初期化期間において走査開始信号SID(1)が「Lo」になっても、走査IC(7)〜走査IC(12)の動作には何ら影響を与えない。
【0112】
そして、初期化期間が終了する時刻t6の前に、入力端子IN2に、例えば0(V)を印加して、入力端子IN2を「Lo」にする。
【0113】
以上のようにして、走査電極駆動回路43は、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2に対しては、電圧Vi3から電圧(Va+Vset2)に向かって下降する下りランプ波形L2を発生させ、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnに対しては、電圧Vi3から電圧(Va+Vset5)に向かって下降する下りランプ波形L5を発生させて、初期化期間が終了する。
【0114】
(書込み期間)
書込み期間では、図示はしていないが、スイッチング素子Q5をオンにして、基準電位Aを負の電圧Vaに維持する。また、スイッチング素子SW2はオンにし、スイッチング素子SW1、スイッチング素子SW3はオフにして、比較器CP1において、基準電位A、すなわち負の電圧Vaと電圧(Va+Vset3)とが比較されるようにしておく。したがって、この間は基準電位Aの方が電圧(Va+Vset3)よりも電位が低いので、比較器CP1から出力される制御信号OC2は「Hi」となる。
【0115】
また、時刻t6で制御信号OC1を「Lo」にする。したがって、アンドゲートAGから出力される制御信号OC1’も「Lo」となる。これにより、全ての走査IC55は「DATA」状態となって、走査開始信号により走査を開始する状態となる。
【0116】
書込み期間の前半では、まず先に、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2に順次走査パルスを印加する。そのために、書込み期間開始直後の時刻t7において走査開始信号SIU(1)を所定の期間(例えば、クロック信号CLKの1周期分)「Lo」にする。これにより、走査IC(1)は走査を開始し、走査電極SC1から順次走査パルスが印加される。走査IC(1)からは、走査IC(1)に接続された全ての走査電極の走査が終了するタイミングで走査開始信号SIU(2)が出力され、走査IC(2)に供給される。これにより、走査IC(2)は走査を開始する。以降、各走査IC55は、入力された走査開始信号にもとづき走査を開始するとともに新たな走査開始信号を発生させて次段の走査IC55に供給する。こうして、第1の走査電極群に属する走査電極の走査が順次行われる。
【0117】
そして、走査電極SCn/2への走査パルスの印加が終了し第1の走査電極群に属する全ての走査電極への走査が終了した後の時刻t8で、制御信号OC1を「Hi」にする。走査開始信号SID(1)は「Hi」に維持されたままなので、アンドゲートAGから出力される制御信号OC1’も「Hi」となる。また、図示はしていないが、時刻t8でスイッチング素子Q5をオフにし、合わせて、維持パルス発生回路50のクランプ回路を動作させ、基準電位Aを0(V)にする。
【0118】
これにより、基準電位Aの方が電圧(Va+Vset2)よりも電位が高くなるので、比較器CP1から出力される制御信号OC2は「Lo」となる。すなわち、制御信号OC1、制御信号OC1’が「Hi」、制御信号OC2が「Lo」なので、全ての走査IC55は「All―Lo」状態となり、全ての走査IC55の出力端子からは基準電位A(本実施の形態では、0(V))が出力される。
【0119】
その後の時刻t9で、下りランプ波形を発生するミラー積分回路54の入力端子IN2に所定の定電流を入力して、入力端子IN2を「Hi」にする。これにより、スイッチング素子Q2のドレイン電圧がランプ状に下降して基準電位Aの電位がランプ状に下降し、走査IC55の出力電圧もランプ状に下降し始める。
【0120】
比較器CP1では、この基準電位Aにおける下りランプ波形と電圧(Va+Vset3)とが比較されており、比較器CP1から出力される制御信号OC2は、基準電位Aにおける下りランプ波形が電圧(Va+Vset3)以下となる時刻t10において「Lo」から「Hi」に切換わる。これにより、制御信号OC1、制御信号OC1’、制御信号OC2ともに「Hi」となり、全ての走査IC55は「All―Hi」状態となって入力端子INbに入力される電圧、すなわち、基準電位Aに電圧Vscnが重畳された電圧を出力する。これにより、走査電極SC1〜走査電極SCnに印加される下りランプ波形は到達電位が電圧(Va+Vset3)の下りランプ波形L6となる。
【0121】
そして、下りランプ波形L6を発生させた後の時刻t11で、入力端子IN2を「Lo」にする。以上のようにして、走査電極駆動回路43は、下りランプ波形L6を発生させ、第2の走査電極群への走査を開始する直前に、第2の放電セル群に初期化放電を発生させる。
【0122】
また、時刻t11では、図示はしていないが、スイッチング素子Q5をオンにして基準電位Aを負の電圧Vaに維持する。また、スイッチング素子SW1をオンにし、スイッチング素子SW2、スイッチング素子SW3をオフにして、比較器CP1において、基準電位A、すなわち負の電圧Vaと電圧(Va+Vset2)とが比較されるようにしておく。したがって、この間は基準電位Aの方が電圧(Va+Vset2)よりも電位が低いので、比較器CP1から出力される制御信号OC2は「Hi」となる。
【0123】
また、時刻t11では制御信号OC1を「Lo」にする。したがって、アンドゲートAGから出力される制御信号OC1’も「Lo」となる。これにより、全ての走査IC55は「DATA」状態となって、走査開始信号により走査を開始する状態となる。
【0124】
書込み期間の後半では、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnに順次走査パルスを印加する。そのために、書込み期間の後半開始直後の時刻t12において走査開始信号SID(1)を所定の期間(例えば、クロック信号CLKの1周期分)「Lo」にする。これにより、走査IC(7)は走査を開始し、走査電極SCn/2+1から順次走査パルスが印加される。以降、上述と同様の動作により、第2の走査電極群に属する走査電極の走査が順次行われる。
【0125】
(維持期間)
そして、走査電極SCnへの走査パルスの印加が終了し第2の走査電極群に属する全ての走査電極への走査が終了して書込み期間が終了した後の時刻t13で、制御信号OC1を「Hi」にする。走査開始信号SID(1)は「Hi」に維持されたままなので、アンドゲートAGから出力される制御信号OC1’も「Hi」となる。
【0126】
また、図示はしていないが、時刻t13でスイッチング素子Q5をオフにし、合わせて、維持パルス発生回路50のクランプ回路を動作させ、基準電位Aを0(V)にする。
【0127】
これにより、基準電位Aの方が電圧(Va+Vset2)よりも電位が高くなるので、比較器CP1から出力される制御信号OC2は「Lo」となる。すなわち、制御信号OC1、制御信号OC1’が「Hi」、制御信号OC2が「Lo」なので、全ての走査IC55は「All―Lo」状態となり、走査IC55の出力端子からは基準電位A(本実施の形態では、0(V))が出力される。
【0128】
続いて、詳細は省略するが維持パルス発生回路50の電力回収回路およびクランプ回路を交互に動作させ、あらかじめ定められた回数の維持パルスを発生させる。そして、維持期間の最後に、消去ランプ波形L3を発生させる。こうして、維持期間が終了する。
【0129】
(初期化期間)
続く初期化期間では、図示はしていないが、スイッチング素子Q5はオフに維持したまま、スイッチング素子SW3をオンにし、スイッチング素子SW1、スイッチング素子SW2をオフにして、比較器CP1において、基準電位A(本実施の形態では、0(V))と電圧(Va+Vset4)とが比較されるようにしておく。基準電位Aの方が電圧(Va+Vset4)よりも電位が高いので、比較器CP1から出力される制御信号OC2は、維持期間に引き続き「Lo」のままである。また、制御信号OC1も維持期間に引き続き「Hi」に維持したままにしておく。
【0130】
したがって、制御信号OC1、制御信号OC1’が「Hi」、制御信号OC2が「Lo」なので、全ての走査IC55は「All―Lo」状態となり、全ての走査IC55の出力端子からは基準電位A、すなわち、初期化波形発生回路51から出力される駆動電圧がそのまま出力される。
【0131】
そして、時刻t14で、下りランプ波形を発生するミラー積分回路54の入力端子IN2に所定の定電流を入力して、入力端子IN2を「Hi」にする。これにより、スイッチング素子Q2のドレイン電圧がランプ状に下降して基準電位Aの電位がランプ状に下降し、走査IC55の出力電圧もランプ状に下降し始める。
【0132】
比較器CP1では、この基準電位Aにおける下りランプ波形と電圧(Va+Vset4)とが比較されており、比較器CP1から出力される制御信号OC2は、基準電位Aにおける下りランプ波形が電圧(Va+Vset4)以下となる時刻t16において「Lo」から「Hi」に切換わる。これにより、制御信号OC1、制御信号OC2はともに「Hi」となり、第1の走査IC群は「All―Hi」状態となって入力端子INbに入力される電圧、すなわち、基準電位Aに電圧Vscnが重畳された電圧を出力する。これにより、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2に印加される下りランプ波形は到達電位が電圧(Va+Vset4)の下りランプ波形L4となる。
【0133】
そして、本実施の形態においては、初期化期間開始直後(本実施の形態では、時刻t14から時刻t15の間)に走査開始信号SID(1)を「Lo」にしておく。比較器CP2においては、基準電位Aと電圧(Va+Vset5)とが比較されるので、比較器CP2から出力される信号CPOは、基準電位Aが電圧(Va+Vset5)以下となる時刻t15で「Lo」となる。このとき、走査開始信号SID(1)は「Lo」なので、オアゲートORからは「Lo」が出力され、これによりアンドゲートAGから出力される制御信号OC1’は「Lo」となる。
【0134】
これにより、制御信号OC1’、制御信号OC2ともに「Lo」となり、第2の走査IC群に属する走査IC(7)〜走査IC(12)は「HiZ」状態となる。すなわち、走査IC(7)〜走査IC(12)の出力電圧は、時刻t15時点の出力電圧がそのまま保持された電圧となり、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnに印加される下りランプ波形は到達電位が電圧(Va+Vset5)の下りランプ波形L7となる。
【0135】
そして、初期化期間が終了する時刻t17の前に、入力端子IN2に、例えば0(V)を印加して、入力端子IN2を「Lo」にする。
【0136】
以上のようにして、走査電極駆動回路43は、第1の走査電極群に属する走査電極SC1〜走査電極SCn/2に対しては、0(V)から電圧(Va+Vset4)に向かって下降する下りランプ波形L4を発生させ、第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnに対しては、0(V)から電圧(Va+Vset5)に向かって下降する下りランプ波形L7を発生させて、初期化期間が終了する。
【0137】
続く書込み期間、維持期間、およびそれ以降の動作は、上述した動作と同様である。
【0138】
以上のように構成した本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1では、高精細化されたパネル10においても、走査パルス電圧(振幅)を大きくすることなく、安定した書込み動作を行うことができる。次に、この効果について、説明する。
【0139】
図10は、従来技術における1相駆動動作を行うときに安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)と走査の順番との関係を示す概略特性図である。図10(a)は、1相駆動動作を行うときの安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)と走査の順番との関係を示す概略特性図であり、横軸は走査電極SC1〜走査電極SCnの走査の順番を表し、縦軸は各放電セルにおいて安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を表す。また、図10(b)は、1相駆動動作を行うときに走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する駆動波形を示す波形図であり、書込み期間に最初に走査を行う走査電極SC1、書込み期間のほぼ中間時点で走査を行う走査電極SCn/2+1、書込み期間の最後に走査を行う走査電極SCnにおける駆動波形を示す。なお、図10は、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)と、初期化動作後の時間経過との関連を調べてグラフ化して示した図であり、走査パルス電圧を走査電極毎に変えているわけではない。
【0140】
そして、図10(a)に示すように、各放電セルにおいて、走査の順番が遅くなるほど、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)は大きくなる。そして、最初に走査を行う放電セルと比較して最後に走査を行う放電セルでは、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)は約34(V)も上昇することが実験により確認された。
【0141】
これは、初期化期間に初期化放電よって放電セルに形成された壁電荷が、時間の経過とともに徐々に減少するためと考えられる。その原因の1つに、書込みパルスが書込み期間中(表示画像に応じて)各データ電極に印加されるため、走査が行われていない放電セルにも書込みパルス電圧が印加されるといったことが挙げられる。また、他の放電セルに書込み放電を発生させるためにデータ電極に印加される書込みパルスの影響を受けることによっても、壁電荷は減少する。したがって、走査の順番が遅い放電セルほどより多くの壁電荷は減少し、その分、走査パルス電圧(振幅)を大きくしなければならなくなると考えられる。
【0142】
図11は、本発明の一実施の形態における2相駆動動作を行うときに安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)と走査の順番との関係を示す概略特性図である。図11(a)は、2相駆動動作を行うときの安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)と走査の順番との関係を示す概略特性図であり、横軸は走査電極SC1〜走査電極SCnの走査の順番を表し、縦軸は各放電セルにおいて安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を表す。なお、図11(a)に破線で示す特性は、図10(a)にも示した1相駆動動作時に安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)である。また、図11(b)は、2相駆動動作を行うときに走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する駆動波形を示す波形図であり、書込み期間の最初に走査を行う走査電極であり第1の走査電極群に属する走査電極SC1、書込み期間のほぼ中間時点で走査を行う走査電極であり第2の走査電極群に属する走査電極SCn/2+1、書込み期間の最後に走査を行う走査電極であり第2の走査電極群に属する走査電極SCnにおける駆動波形を示す。
【0143】
本実施の形態における2相駆動動作では、各走査電極群における走査を開始する直前に、各放電セル群毎に下りランプ波形による初期化放電を発生させている。すなわち、第1の放電セル群の各放電セルにおいては第1の走査電極群の各走査電極の走査を開始する直前に下りランプ波形L2(第2SF以降は下りランプ波形L4)による初期化放電を発生させ、第2の放電セル群の各放電セルにおいては第2の走査電極群の各走査電極の走査を開始する直前に下りランプ波形L6による初期化放電を発生させている。
【0144】
この初期化放電により放電セル内の壁電荷を適正な状態にすることができるので、図11(a)に実線で示すように、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を、第2の放電セル群において低減することが可能となる。そして、書込み期間の最後に走査を行う放電セルにおいて、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を、2相駆動動作時には1相駆動動作時と比較して約20(V)低減できることが実験により確認された。
【0145】
このように、本実施の形態においては、書込み期間において第2の走査電極群への走査を開始する前に下りランプ波形による初期化放電を発生させるという上述した2相駆動動作を行うことにより、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を低減することが可能となり、書込み放電が不安定になりやすい走査の順番が遅い放電セルにおいても駆動に必要な印加電圧を高くすることなく、安定した書込み動作を行うことが可能となる。
【0146】
また、本実施の形態では、第1の走査IC群と第2の走査IC群とで異なる波形形状の初期化波形を発生させており、そのために、第1の走査IC群に用いる制御信号OC1と第2の走査IC群に用いる制御信号OC1’とを、互いに異なる制御信号にして発生させなければならない。しかし、本実施の形態では、第2の走査IC群に用いる制御信号OC1’に関しては、制御信号発生回路45ではなく、走査電極駆動回路43が有する論理演算回路によって発生させており、これにより、制御信号発生回路45で発生させる制御信号の数を削減している。
【0147】
図12は、本発明の一実施の形態における走査電極SC1〜SCnの駆動に用いるプリント基板の配置の一例を示す概略図であり、各プリント基板の配置とプリント基板間の接続を模式的に示したものである。
【0148】
本実施の形態においては、図12に示すように、走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動するために3枚のプリント基板を用いている。すなわち、維持パルス発生回路50と、初期化波形発生回路51と、走査電極駆動回路43(走査IC55を除く)とを搭載したプリント基板70と、第1の走査IC群(本実施の形態では、走査IC(1)〜走査IC(6))を搭載したプリント基板71と、第2の走査IC群(本実施の形態では、走査IC(7)〜走査IC(12))を搭載したプリント基板72とを用いて走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動する構成としている。
【0149】
なお、プリント基板70とプリント基板71とは、プリント基板70に搭載したコネクタ73aとプリント基板71に搭載したコネクタ73aとをフレキシブル配線板(Flexible Flat Cable、以下、「FFC」と記す)74aによって接続し、プリント基板70とプリント基板72とは、プリント基板70に搭載したコネクタ73bとプリント基板72に搭載したコネクタ73bとをFFC74bによって接続することで、互いに電気的に接続されている。
【0150】
これにより、図面に破線で示すように、走査電極駆動回路43から出力される駆動電圧を、プリント基板71に搭載された走査IC(1)〜走査IC(6)のそれぞれに入力し、それと同時にプリント基板72に搭載された走査IC(7)〜走査IC(12)のそれぞれに入力している。
【0151】
また、各走査IC55と各走査電極SC1〜SCnとは、プリント基板71およびプリント基板72に搭載した複数のコネクタ78と、走査電極SC1〜SCnのそれぞれに電気的に接続した複数のFFC77とをそれぞれ接続することにより互いに電気的に接続されている。これにより走査IC55から出力される駆動電圧を走査電極SC1〜SCnのそれぞれに印加することができる。
【0152】
また、プリント基板71とプリント基板72とは、プリント基板71およびプリント基板72のそれぞれに搭載したコネクタ75同士をFFC76によって接続することで互いに電気的に接続されている。これにより、プリント基板71の接地電位とプリント基板72の接地電位とを同電位に保つことができ、また、プリント基板70から出力される信号の一部を、プリント基板72からFFC76を介してプリント基板71に供給することができる。
【0153】
また、制御信号発生回路45はプリント基板79に搭載されており、プリント基板70とプリント基板79とは、プリント基板70およびプリント基板79のそれぞれに搭載したコネクタ73c同士をFFC74cによって接続することで互いに電気的に接続されている。これにより、制御信号発生回路45から出力される走査電極駆動回路43に用いる制御信号を、FFC74cを介してプリント基板79からプリント基板70に供給することができる。
【0154】
なお、プリント基板70、プリント基板71、プリント基板72に関しては、それぞれを互いに隣接した位置に配置することが望ましく、本実施の形態ではそのような配置にしているが、制御信号発生回路45を搭載するプリント基板79に関しては、データ電極駆動回路42を搭載したプリント基板(図示せず)および維持電極駆動回路44を搭載したプリント基板(図示せず)にも制御信号を供給しなければならないため、プリント基板70に隣接した位置に配置することは難しい。そのため、FFC74aやFFC74bと比較して、FFC74cは配線長を比較的長くせざるを得ない。
【0155】
ここで、本実施の形態では、制御信号OC1、走査開始信号SIU(1)、走査開始信号SID(1)およびクロック信号CLKは制御信号発生回路45で発生させ、制御信号OC1’および制御信号OC2は走査電極駆動回路43における比較器CP1、比較器CP2、オアゲートORおよびアンドゲートAGを含む論理演算回路を用いて発生させる構成としている。したがって、比較的配線長の長いFFC74cを通さなければならない制御信号の数を、その分削減することができ、FFC74cのサイズを小さくして配線に費やす面積を低減することができる。また、配線長を長くするとその分インピーダンスが高くなり、ノイズが発生しやすくなるが、FFC74cを通す制御信号の数を削減することで、ノイズを低減する効果も期待できる。
【0156】
なお、本実施の形態では、プリント基板70から出力される信号の一部、例えば、制御信号OC1、制御信号OC2、走査開始信号SIU(1)およびクロック信号CLKを、プリント基板72を介してプリント基板71に供給する構成としているが、これらの信号をプリント基板70からプリント基板71に直接供給する構成としてもよい。
【0157】
以上示したように、本実施の形態によれば、走査電極SC1〜走査電極SCnを第1の走査電極群と第2の走査電極群とに分け、初期化期間における初期化動作に加え、書込み期間において第2の走査電極群への走査開始前に第2の放電セル群に初期化放電を発生させる2相駆動動作を行うことにより、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を低減することが可能となる。これにより、書込み放電が不安定になりやすい走査の順番が遅い放電セルにおいても駆動に必要な印加電圧を高くすることなく、安定した書込み動作を行うことが可能となる。
【0158】
また、2相駆動動作を行うためには、第1の走査IC群と第2の走査IC群とで異なる波形形状の初期化波形を発生させなければならず、そのためには、第1の走査IC群に用いる制御信号OC1と第2の走査IC群に用いる制御信号OC1’とを、互いに異なる制御信号にして発生させなければならないが、本実施の形態においては、制御信号発生回路45で発生させる第1の制御信号である制御信号OC1、基準電位Aと電圧(Va+Vset5)との比較結果、および制御信号発生回路45で発生させる第2の制御信号である走査開始信号SID(1)にもとづき、第3の制御信号である制御信号OC1’を発生させているため、制御信号発生回路45で発生させる制御信号の数を削減することができる。
【0159】
なお、本実施の形態では、走査パルス発生回路52が有する論理演算回路を、プリント基板70に搭載した構成を説明したが、何らこの構成に限定されるものではなく、例えば、上述の論理演算回路をプリント基板72に搭載する構成であってもよく、あるいは、プリント基板70とプリント基板72とに分割して搭載する構成であってもよい。これらの構成であっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0160】
なお、本実施の形態では、2相駆動動作を説明したが、本発明は何ら2相駆動動作に限定されるものではない。例えば、パネル10の表示領域を3分割して走査電極群の数を3つにし、3相駆動動作を行う構成としてもよい。あるいは、パネル10の表示領域を4分割、あるいはそれ以上の数に分割して、走査電極群の数を4つ、あるいはそれ以上とし、4相駆動動作、あるいはそれ以上にしてもよい。ただし、その場合には初期化期間において第1の走査電極群に印加する下りランプ波形のみを下りランプ波形L2とし、第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する下りランプ波形は下りランプ波形L5にするものとする。また、書込み期間において第2の走査電極群に下りランプ波形L6を印加するときには、第3の走査電極群以降の走査電極群には到達電位を電圧(Va+Vset5)、あるいはそれ以上の電圧の下りランプ波形を印加するものとする。以降、同様に、書込み動作を開始する走査電極群には、書込み動作を開始する直前には下りランプ波形L5を印加し、それ以外の走査電極群には書込み放電が発生しない駆動電圧波形を印加するものとする。
【0161】
なお、本実施の形態では、下りランプ波形L5、下りランプ波形L7を、下りランプ波形の電圧が電圧(Va+Vset5)に到達した後、その電圧を一定期間保持するような波形形状として示した。しかし、これは、走査電極駆動回路43の回路構成上、このような波形形状になったものに過ぎず、本実施の形態は何らこの波形形状に限定されるものではない。例えば、下りランプ波形の電圧が電圧(Va+Vset5)に到達した後、すぐに電圧上昇を開始するような波形を出力する回路構成であってもかまわない。
【0162】
なお、本実施の形態では、2相駆動動作において走査電極群を区分けする際に、走査電極SC1〜走査電極SCnを2等分する構成を説明したが、何らこの構成に限定されるものではなく、走査電極群毎に走査電極数に差があってもかまわない。また、本実施の形態では、走査電極群を区分けする際に、パネル10の表示面の上半分に配置される走査電極SC1〜走査電極SCn/2を第1の走査電極群とし、下半分に配置される走査電極SCn/2+1〜走査電極SCnを第2の走査電極群とする構成を説明したが、例えば、奇数番目に属する走査電極を第1の走査電極群とし偶数番目に属する走査電極を第2の走査電極群とする構成であってもよい。
【0163】
なお、本実施の形態では、電圧Vset2を6(V)とし、電圧Vset3を8(V)とし、電圧Vset4を10(V)とし、電圧Vset5を70(V)としたが、これらの数値は単なる一例に過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に応じて最適な電圧値に設定すればよい。
【0164】
また、図9に示したタイミングチャートは実施の形態における一例を示したものに過ぎず、何らこれらのタイミングチャートに限定されるものではない。本実施の形態に示した以外の手法により初期化波形を発生させる構成であってもよく、あるいは、書込み期間において走査ICが「DATA」状態と「All―Hi」状態とを交互に繰り返すように各制御信号を発生させることで走査パルスの発生間隔を制御する構成等であってもよい。
【0165】
なお、本実施の形態は、走査電極と走査電極とが隣り合い、維持電極と維持電極とが隣り合う電極構造、すなわち前面板21に設けられる電極の配列が、「・・・走査電極、走査電極、維持電極、維持電極、走査電極、走査電極、・・・」となる電極構造(「ABBA電極構造」と呼称する)のパネルにおいても、有効である。
【0166】
なお、本実施の形態において示した電圧Vset2、電圧Vset3、電圧Vset4、電圧Vset5、サブフィールド数、輝度重み、走査パルス電圧(振幅)等の具体的な各数値は、50インチ、表示電極対数1080対のパネルの特性にもとづき設定したものであって、実施の形態における一例を示したものに過ぎない。本発明はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。また、走査IC55の動作を説明する際に示した各制御信号の極性は、単なる一例であり、説明で示した極性とは逆の極性であってもかまわない。
【0167】
なお、本実施の形態では、消去ランプ波形を走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する構成を説明したが、消去ランプ波形を維持電極SU1〜維持電極SUnに印加する構成とすることもできる。あるいは、消去ランプ波形ではなく、いわゆる細幅消去パルスにより消去放電を発生させる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、大画面化、高精細化されたパネルにおいても、走査パルス電圧を高くすることなく、安定した書込み放電を発生させることができるので、プラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の一実施の形態におけるパネルの構造を示す分解斜視図
【図2】同パネルの電極配列図
【図3】本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図
【図4】本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路の回路図
【図5】本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路の走査ICと走査電極との接続の様子を示す概略図
【図6】本発明の一実施の形態における制御信号OC1、制御信号OC2と走査ICの動作状態との対応関係を説明するための図
【図7】本発明の一実施の形態における走査電極群の区分けの一例を示す概略図
【図8】本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路の2相駆動動作においてパネルの各電極に印加する駆動電圧波形図
【図9】本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路の動作の一例を説明するためのタイミングチャート
【図10】従来技術における1相駆動動作を行うときに安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)と走査の順番との関係を示す概略特性図
【図11】本発明の一実施の形態における2相駆動動作を行うときに安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)と走査の順番との関係を示す概略特性図
【図12】本発明の一実施の形態における走査電極の駆動に用いるプリント基板の配置の一例を示す概略図
【符号の説明】
【0170】
1 プラズマディスプレイ装置
10 パネル
21 (ガラス製の)前面板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25,33 誘電体層
26 保護層
31 背面板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 制御信号発生回路
50 維持パルス発生回路
51 初期化波形発生回路
52 走査パルス発生回路
53,54 ミラー積分回路
55 走査IC
70,71,72,79 プリント基板
73a,73b,73c,75,78 コネクタ
74a,74b,74c,76,77 フレキシブル配線板(FFC)
CP1,CP2 比較器
Q1,Q2,Q4,Q5,QH1〜QHn,QL1〜QLn,SW1,SW2,SW3 スイッチング素子
R1,R2 抵抗
C1,C2,C31 コンデンサ
D31 ダイオード
OR オアゲート
AG アンドゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルと、
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、前記走査電極を第1の走査電極群を含む複数の走査電極群に分け、前記初期化期間においては前記第1の走査電極群と前記第1の走査電極群以外の走査電極群とで異なる波形形状の下り傾斜波形電圧を発生させ、前記書込み期間においては走査パルスを発生させて前記走査電極を駆動する走査電極駆動回路と、
前記第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の発生に用いる第1の制御信号と前記第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する前記走査パルスの発生に用いる第2の制御信号とを発生する制御信号発生回路とを備え、
前記走査電極駆動回路は、
前記初期化期間において、前記第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位を前記第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位よりも高い電位にする第3の制御信号を、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号にもとづき発生させることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを、
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、前記走査電極を第1の走査電極群を含む複数の走査電極群に分け、前記初期化期間においては前記第1の走査電極群と前記第1の走査電極群以外の走査電極群とで異なる波形形状の下り傾斜波形電圧を発生させ、前記書込み期間においては走査パルスを発生させて前記走査電極を駆動するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の発生に用いる第1の制御信号と前記第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する前記走査パルスの発生に用いる第2の制御信号とを発生させ、前記初期化期間において、前記第1の走査電極群以外の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位を前記第1の走査電極群に印加する下り傾斜波形電圧の到達電位よりも高い電位にする第3の制御信号を、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号にもとづき発生させることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−192779(P2009−192779A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32841(P2008−32841)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】