説明

プラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルの駆動方法

【課題】大画面化されたプラズマディスプレイパネルを備えたプラズマディスプレイ装置において、ICの動作用等に発生させる比較的電圧値の低い電源電圧におけるノイズの発生を低減し、回路の誤動作を防止する。
【解決手段】書込みパルスの発生に用いる第1の電圧である電圧Vdを発生する第1の電源回路である電圧Vd発生回路86と、第1の電圧よりも電圧値が低い第2の電圧である電圧Voを電圧Vdを用いて発生する第2の電源回路である電圧Vo発生回路84とを備え、データ電極駆動回路58を複数設けるとともに、データ電極駆動回路58と同数の電圧Vo発生回路84を設け、データ電極駆動回路58と電圧Vo発生回路84とを同一のデータ電極駆動用プリント基板83上に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。
【0003】
図1は、パネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、1対の走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
【0004】
背面板31上には複数の平行なデータ電極32が形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0005】
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、例えば分圧比で5%のキセノンを含むネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。このとき、例えば、キセノンの分圧比を大きくすることで、発光効率を向上させることができる。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが対向して交差する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネル10において、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させることによりカラーの画像を表示することができる。
【0006】
図2は、パネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がパネル10の表示領域となる。
【0007】
このパネル10を駆動する方法としては、サブフィールド法、すなわち、1フィールドを時間軸上で複数のサブフィールド(例えば、第1SF、第2SF、・・・、第8SF、の8つのサブフィールド)に分割し、各サブフィールドのそれぞれに輝度重み(例えば、1、2、4、8、16、32、64、128の輝度重み)を設定し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって多階調の画像を表示することができる。
【0008】
図3は、パネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には、書込み期間において最初に走査を行う走査電極SC1、書込み期間において最後に走査を行う走査電極SCn、維持電極SU1〜維持電極SUn、およびデータ電極D1〜データ電極Dmの駆動波形を示す。
【0009】
図3に示すように、各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み動作に必要な壁電荷を各電極上に形成するとともに、書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(書込み放電を発生させるための励起粒子)を発生させる。
【0010】
なお、サブフィールド法の1つとして、1フィールドのうちの1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い、他のサブフィールドの初期化期間においては直前の維持期間で維持放電を行った放電セルに対してのみ選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作を行う駆動方法が開示されている。このように駆動することによって、階調表示に関係しない発光を全セル初期化動作における微弱発光だけとし、コントラストの高い画像表示が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
そして、図3には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化動作を行うサブフィールド(「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)の第1サブフィールド(第1SF)と、選択初期化動作を行うサブフィールド(「選択初期化サブフィールド」と呼称する)の第2サブフィールド(第2SF)とを示す。なお、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中からサブフィールドデータ(サブフィールド毎の発光・非発光を示すデータ)にもとづき選択された電極を表す。
【0012】
第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜データ電極Dm、維持電極SU1〜維持電極SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、0(V)から放電開始電圧以下の電圧Vi1を印加し、さらに電圧Vi1から、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧(以下、「上りランプ波形」と呼称する)L1を印加する。
【0013】
この上りランプ波形L1が上昇する間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜データ電極Dm上部および維持電極SU1〜維持電極SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層25、33上、保護層26上、蛍光体層35上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0014】
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜維持電極SUnには正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える負の電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧(以下、「下りランプ波形」と呼称する)L2を印加する。
【0015】
この間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜維持電極SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜データ電極Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。
【0016】
続く書込み期間では、走査電極SC1〜走査電極SCnに対しては順次走査パルス電圧を印加(以下、この動作を「走査」とも記す)し、データ電極D1〜データ電極Dmに対しては発光させるべき放電セルに対応するデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加して、発光させるべき放電セルに選択的に書込み放電を発生させ壁電荷を形成する(以下、これらの動作を総称して「書込み」とも記す)。
【0017】
具体的には、まず維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vc(Vc=Va+Vscn)を印加する。
【0018】
そして、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜データ電極Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
【0019】
一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜データ電極Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行う。
【0020】
続く維持期間では、輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を発生させ、対応する放電セルの蛍光体層35を発光させる。
【0021】
具体的には、まず走査電極SC1〜走査電極SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜維持電極SUnに0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
【0022】
続いて、走査電極SC1〜走査電極SCnには0(V)を、維持電極SU1〜維持電極SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。以降同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとに輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを交互に印加する。
【0023】
こうして、所定の数の維持パルスを発生させて、維持期間における維持動作が終了する。
【0024】
第2SFの初期化期間では、第1SFにおける初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加する。すなわち、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜データ電極Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnに放電開始電圧以下となる電圧(例えば、0(V))から負の電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下りランプ波形L4を印加する。
【0025】
これにより直前のサブフィールド(図3では、第1SF)の維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められ、データ電極Dk(k=1〜m)上部の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。一方、前のサブフィールドで維持放電が起こらなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷の状態がそのまま保たれる。
【0026】
第2SFの書込み期間および維持期間では、各電極に対して第1SFの書込み期間および維持期間と同様の駆動波形を印加する。また、第3SF以降のサブフィールドにおける駆動電圧波形は、維持期間における維持パルスの発生数が異なる以外は第2SFの駆動電圧波形とほぼ同様である。
【0027】
図4は、従来技術におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、制御信号発生回路45、各回路ブロックに必要な電力を供給する電源回路46および異常検出回路47を備えている。
【0028】
電源回路46は、家庭用電源取込み口70(例えば、コンセント用プラグ)を備えている。また、電源回路46は、スイッチング動作を行う回路素子を有し(図示せず)、その回路素子がオンされることでプラズマディスプレイ装置1に主電源が投入され、一般に用いられている家庭用電源(商用電源等)の取出し口(例えば、コンセント)から、家庭用電源取込み口70を介して電源回路46内に電力が取り込まれる。そして、電源回路46は、家庭用電源の交流電圧を直流電圧に変換し、内部に備えた各電源電圧発生回路からパネル10の駆動に必要な電源電圧を発生する。
【0029】
画像信号処理回路41は、パネル10の画素数に応じて、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示すサブフィールドデータに変換する。
【0030】
制御信号発生回路45は、水平同期信号H、垂直同期信号Vおよびサブフィールドデータにもとづき各回路ブロックの動作を制御する各種の制御信号を発生し、それぞれの回路ブロック(画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43および維持電極駆動回路44)へ供給する。
【0031】
データ電極駆動回路42は、書込み期間において書込みパルスを発生させるための書込みパルス発生回路48と、データ電極32を駆動するためのIC(以下、「データ電極駆動IC」と記す)を複数有しデータ電極D1〜データ電極Dmのそれぞれに対して印加すべき書込みパルスを出力する書込みパルス出力回路49とを備え、制御信号発生回路45から供給される制御信号にもとづき、書込み期間において書込みパルスを発生させて各データ電極D1〜データ電極Dmを駆動する。
【0032】
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する初期化波形を発生させる初期化波形発生回路、維持期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスを発生させる維持パルス発生回路、書込み期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する走査パルスを発生させる走査パルス発生回路を備え(図示せず)、制御信号発生回路45から供給される制御信号にもとづいて各走査電極SC1〜走査電極SCnをそれぞれ駆動する。
【0033】
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路および電圧Ve1、電圧Ve2を発生させる回路を備え(図示せず)、制御信号発生回路45から供給される制御信号にもとづいて維持電極SU1〜維持電極SUnを駆動する。
【0034】
このようなプラズマディスプレイ装置1に、電源電圧の異常を検出する異常検出回路47を設け、異常検出回路47において電源電圧の異常が検出されたときに各駆動回路の動作を停止する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0035】
例えば、異常検出回路47は、電源回路46から出力される電圧を監視し、電圧異常を検知したときには、制御信号発生回路45に各駆動回路の動作の停止を指示する信号を送信する。
【0036】
図5は、従来技術におけるデータ電極駆動回路42の構成を示す回路図である。図5に示すように、データ電極駆動回路42は、書込み期間に書込みパルスを発生させる書込みパルス発生回路48と、複数のスイッチング素子を複数の出力毎にまとめてIC化した複数のデータ電極駆動ICを有する書込みパルス出力回路49とを備え、書込みパルス出力回路49の各出力端子はパネル10のデータ電極D1〜データ電極Dmのそれぞれに接続されている。なお、以下の説明においては、スイッチング素子を導通させる動作を「オン」、遮断させる動作を「オフ」と表記し、スイッチング素子をオンさせる信号を「Hi」、オフさせる信号を「Lo」と表記する。
【0037】
書込みパルス発生回路48は、電力回収回路50とクランプ回路51とを備え、電力回収回路50は、電力回収用のコンデンサC1と、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2と、逆流防止用のダイオードDi1、ダイオードDi2と、共振用のインダクタL1とを有し、クランプ回路51は、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4を有する。
【0038】
電力回収回路50は、データ電極32の電極容量と共振用のインダクタL1とを共振させてデータ電極32に供給された電力を電力回収用のコンデンサC1に回収し、その回収された電力をデータ電極32に再度供給する。クランプ回路51は、スイッチング素子Q3を導通させることでデータ電極32に正の電圧Vdを印加し、スイッチング素子Q4を導通させることでデータ電極32に接地電位である0(V)を印加する。こうして、書込みパルス発生回路48は、制御信号発生回路45から出力される制御信号にもとづき内部に備えた各スイッチング素子Q1〜スイッチング素子Q4を切換えて書込みパルスを発生させ、発生させた書込みパルスを書込みパルス出力回路49に出力する。
【0039】
書込みパルス出力回路49は、出力端子をm本のデータ電極D1〜データ電極Dmのそれぞれに接続したスイッチ回路OUT1〜スイッチ回路OUTmを備えている。スイッチ回路OUT1〜スイッチ回路OUTmのそれぞれは、書込みパルス発生回路48から出力される書込みパルスをデータ電極D1〜データ電極Dmに印加するためのスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHmと、データ電極D1〜データ電極Dmに0(V)を印加するためのスイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLmとを備えている。スイッチ回路OUT1〜スイッチ回路OUTmは複数個が1つにまとめられIC化されている。このICがデータ電極駆動ICである。そして、制御信号発生回路45から出力される制御信号にもとづき各スイッチング素子を切換えて、書込みパルス発生回路48から出力される書込みパルスをデータ電極Dkに出力する。
【0040】
なお、スイッチング素子QHi(i=1〜m)への制御信号は正論理動作(「Hi」が入力されたときには「Hi」を出力し、「Lo」が入力されたときには「Lo」を出力)するバッファBFiを介してスイッチング素子QHiへ入力され、スイッチング素子QLiへの制御信号は負論理動作(「Lo」が入力されたときには「Hi」を出力し、「Hi」が入力されたときには「Lo」を出力)するバッファINViを介してスイッチング素子QLiへ入力される。そして、バッファBFiとバッファINViとは互いの入力端子同士が接続され、スイッチ回路OUTiの入力端子となっている。したがって、スイッチ回路OUTiに入力される制御信号に対してスイッチング素子QHiとスイッチング素子QLiとは互いに逆の動作をし、常にいずれか一方がオンとなり他方はオフとなる。また、スイッチ回路OUT1〜スイッチ回路OUTmが出力する書込みパルスは比較的高い電圧(例えば、75(V))で発生させているが、スイッチ回路OUT1〜スイッチ回路OUTmに入力される制御信号は比較的低い電圧(例えば、5(V))で発生させており、バッファBF1〜バッファBFmおよびバッファINV1〜バッファINVmも比較的低い電源電圧Vo(例えば、5(V))で動作する。
【0041】
図6は、従来技術におけるプラズマディスプレイ装置1の各駆動回路を搭載したプリント基板の配置の一例を示す平面図である。
【0042】
走査電極駆動用プリント基板71は、走査電極駆動回路43を搭載し、走査電極駆動回路43の出力端子はフレキシブル配線板(Flexible Printed Curcuit、以下、「FPC」と記す)76によりパネル10の走査電極SC1〜走査電極SCnに接続されている。そして、走査電極駆動回路43から出力される駆動電圧は、FPC76を介して、各走査電極SC1〜走査電極SCnに印加される。
【0043】
維持電極駆動用プリント基板72は、維持電極駆動回路44を搭載し、維持電極駆動回路44の出力端子はFPC77によりパネル10の維持電極SU1〜維持電極SUnに接続されている。そして、維持電極駆動回路44から出力される駆動電圧は、FPC77を介して、各維持電極SU1〜維持電極SUnに印加される。
【0044】
データ電極駆動用プリント基板73は、データ電極駆動回路42を搭載し、データ電極駆動回路42の出力端子はFPC78によりパネル10のデータ電極D1〜データ電極Dmに接続されている。そして、データ電極駆動回路42から出力される駆動電圧は、FPC78を介して、データ電極Dkに印加される。
【0045】
なお、パネル10は行方向の辺の長さと列方向の辺の長さの比が16:9になっており、FPC78を配列する辺の長さはFPC76およびFPC77を配列する辺の長さに比べて長い。そのため、例えば、データ電極駆動用プリント基板73を複数(図6では、2つ)配置し、データ電極駆動用プリント基板73のそれぞれにデータ電極駆動回路42を搭載する構成とすることもできる。
【0046】
制御用プリント基板74は、マイクロコンピューター(図面には「マイコン」と記す)80を含む制御信号発生回路45を搭載し、プラズマディスプレイ装置1の全体的な制御を行う。
【0047】
電源用プリント基板75は、電圧Vd(例えば、75(V))を発生させる電圧Vd発生回路81と電圧Vo(例えば、5(V))を発生させる電圧Vo発生回路82とを有する電源回路46を搭載し、プラズマディスプレイ装置1の各回路ブロックに電力を供給する。
【0048】
また、データ電極駆動用プリント基板73には、電源電圧の電圧異常を検出する異常検出回路47が搭載され、異常検出回路47において、例えば電圧Voの電圧異常が検出されたときには、異常を検出したことを示す信号を制御信号発生回路45に送信し、制御信号発生回路45は電源回路46を含む各回路ブロックに各動作を停止する制御信号を送信する。
【特許文献1】特開2000−242224号公報
【特許文献2】特開2007−218965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
プラズマディスプレイ装置1においては、電源回路46が正常に動作していても、電源回路46から各回路ブロックに電力を供給する配線が持つインピーダンス(以下、「配線インピーダンス」と呼称する)に起因するノイズが電源電圧に重畳することがある。
【0050】
また、近年ではパネル10の大型化が進み、大型化したパネル10を搭載したプラズマディスプレイ装置1では、電源回路46から各回路ブロックに電力を供給する配線長も長くなる傾向にある。そのようなプラズマディスプレイ装置1では、配線インピーダンスも大きくなるため、電源電圧に重畳するノイズも大きくなりやすく、電源回路46から出力された直後は小さなノイズであっても、回路ブロックに供給される時点では大きなノイズとなることがある。したがって、そのようなプラズマディスプレイ装置1では、電源電圧(例えば、電圧Vo)に重畳されるノイズに起因する駆動回路(例えば、データ電極駆動回路42)の誤動作が発生するおそれがある。
【0051】
また、電源電圧に重畳されるノイズは、電源電圧の電圧値の大きさではなく配線インピーダンスの大きさやノイズ発生源と配線との位置関係等にもとづきその大きさが変化する。そのため、ノイズが発生すると、パネル10に印加する駆動電圧用に発生させる比較的電圧値の高い電源電圧(例えば、電圧Vd)よりも、例えばICの動作用として発生させる比較的電圧値の低い電源電圧(例えば、電圧Vo)の方が、SN比(信号や電圧の大きさに対するノイズの大きさの比率)が劣化しやすい。
【0052】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、大画面化されたパネルを備えたプラズマディスプレイ装置において、ICの動作用等に発生させる比較的電圧値の低い電源電圧におけるノイズの発生を低減し、回路の誤動作を防止することができるプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0053】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設けて階調表示するサブフィールド法で駆動し、複数のデータ電極を備えたパネルと、データ電極駆動ICを有し、書込み期間においてデータ電極に書込みパルスを印加するデータ電極駆動回路と、データ電極駆動回路を制御する制御信号を発生する制御信号発生回路と、書込みパルスの発生に用いる第1の電圧を発生する第1の電源回路と、第1の電圧よりも電圧値が低い第2の電圧を、第1の電源回路で発生させた第1の電圧を用いて発生する第2の電源回路とを備え、データ電極駆動回路と第2の電源回路とを同一のプリント基板上に搭載したことを特徴とする。
【0054】
これにより、大画面化されたパネルを備え、回路間の配線長が長くなりやすいプラズマディスプレイ装置において、第2の電圧を使用するデータ電極駆動回路の近傍に第2の電源回路を配置するとともに、SN比の劣化が比較的少ない電圧値の高い第1の電圧をノイズの発生しやすい配線長の長い配線を通して第2の電源回路に供給し、第1の電圧を用いて第2の電圧を発生させ、SN比が比較的劣化しやすい低電圧の第2の電圧を配線長を短くしてデータ電極駆動回路に供給することができるので、第2の電圧におけるノイズの発生を低減し、データ電極駆動回路の誤動作を防止することが可能となる。
【0055】
また、このプラズマディスプレイ装置においては、第2の電圧をデータ電極駆動ICを動作させるための電源電圧として用いるとともに、第2の電圧の電圧異常を検出する異常検出回路を備え、異常検出回路をデータ電極駆動回路と第2の電源回路とを搭載したプリント基板上に搭載し、かつ異常検出回路からの出力にもとづきデータ電極駆動ICに入力する制御信号を遮断するスイッチング回路を上述のプリント基板上に備えた構成としてもよい。これにより、第2の電圧にノイズが重畳したときに、第2の電圧を電源電圧として動作するデータ電極駆動ICの動作を速やかに停止し、データ電極駆動ICにおいて誤動作による性能劣化が生じることを防止することができる。
【0056】
また、本発明のパネルの駆動方法は、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設けて階調表示するサブフィールド法で複数のデータ電極を備えたパネルを駆動し、書込み期間において、データ電極に書込みパルスを印加するパネルの駆動方法であって、書込みパルスの発生に用いる第1の電圧を発生させるとともに、データ電極を駆動するデータ電極駆動回路に備えられたデータ電極駆動ICを動作させるための第2の電圧を第1の電圧を用いて発生させ、第2の電圧の電圧異常が検出されたときにはデータ電極駆動ICに入力される制御信号を遮断し、データ電極駆動回路を複数設けるとともに、複数のデータ電極駆動回路と第2の電圧を発生させる電源と第2の電圧の電圧異常を検出する回路とを同一のプリント基板上に搭載することを特徴とする。
【0057】
これにより、大画面化されたパネルを備え、回路間の配線長が長くなりやすいプラズマディスプレイ装置において、第2の電圧を使用するデータ電極駆動回路の近傍に第2の電源回路を配置するとともに、SN比の劣化が比較的少ない電圧値の高い第1の電圧をノイズの発生しやすい配線長の長い配線を通して第2の電源回路に供給し、第1の電圧を用いて第2の電圧を発生させ、SN比が比較的劣化しやすい低電圧の第2の電圧を配線長を短くしてデータ電極駆動回路に供給することができるので、第2の電圧におけるノイズの発生を低減し、データ電極駆動回路の誤動作を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、大画面化されたパネルを備えたプラズマディスプレイ装置において、ICの動作用等に発生させる比較的電圧値の低い電源電圧におけるノイズの発生を低減し、回路の誤動作を防止することができるプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0060】
(実施の形態)
図7は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の各駆動回路を搭載したプリント基板の配置の一例を示す平面図である。本実施の形態に示すプラズマディスプレイ装置には、背景技術で説明したプラズマディスプレイ装置1に備えられたパネル10よりも高精細かつ大型のパネル100が用いられているものとする。そのため、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置では、走査電極駆動回路43を搭載した走査電極駆動用プリント基板710の数、維持電極駆動回路44を搭載した維持電極駆動用プリント基板720の数、およびデータ電極駆動回路58を搭載したデータ電極駆動用プリント基板83の数をそれぞれプラズマディスプレイ装置1よりも増加させて(例えば、走査電極駆動用プリント基板710、維持電極駆動用プリント基板720をそれぞれ3枚、データ電極駆動用プリント基板83を4枚にして)パネル100を駆動するものとする。
【0061】
なお、本実施の形態に示すプラズマディスプレイ装置は、電圧Vo発生回路84および異常検出回路57の配置位置が、図6の平面図に示した電圧Vo発生回路82および異常検出回路47の配置位置とは異なり、また、データ電極駆動回路58の構成の一部が図5に示したデータ電極駆動回路42とは異なるが、それら以外の構成は背景技術で説明したプラズマディスプレイ装置1と同様であるものとする。
【0062】
図7に示すように、本実施の形態に示すプラズマディスプレイ装置は、高精細かつ大型のパネル100を駆動するために、4枚のデータ電極駆動用プリント基板83が設けられており、それぞれのデータ電極駆動用プリント基板83にはデータ電極駆動回路58が搭載されている。また、電源用プリント基板85には第1の電圧である電圧Vdを発生させる第1の電源回路である電圧Vd発生回路86を有する電源回路56が搭載され、制御用プリント基板74には、マイクロコンピューター80を含む制御信号発生回路45が搭載されている。
【0063】
なお、本実施の形態においては、第2の電圧である電圧Voを発生させる第2の電源回路である電圧Vo発生回路84は、電源用プリント基板85ではなく、4枚のデータ電極駆動用プリント基板83のそれぞれに、電圧Voの電圧異常を検出する異常検出回路57とあわせて搭載されているものとする。
【0064】
そして、電圧Vo発生回路84は、電圧Vd発生回路86で発生させた書込みパルスの発生に用いる比較的電圧値の高い電圧Vd(例えば、75(V))から、データ電極駆動ICを動作させるための比較的電圧値の低い電圧Vo(例えば、5(V))を発生させる。
【0065】
上述したように、大画面化されたパネル100を搭載したプラズマディスプレイ装置では、回路間の配線長が長くなりやすく、電源回路から各回路ブロックに電力を供給する配線も長くなりやすい。そのため、配線インピーダンスも大きくなりやすく、電源電圧に大きなノイズが発生しやすい。そして、ノイズが発生したときには、書込みパルスの発生に用いる比較的電圧値の高い電圧Vd(例えば、75(V))よりも、データ電極駆動ICの動作用等に発生させる比較的電圧値の低い電圧Vo(例えば、5(V))の方が、SN比が劣化しやすい。
【0066】
しかし、本実施の形態では、図7に示すように、同一のデータ電極駆動用プリント基板83上にデータ電極駆動回路58と電圧Vo発生回路84とを搭載し、データ電極駆動回路58の近傍に電圧Vo発生回路84を配置する構成としている。したがって、電圧Vo発生回路84とデータ電極駆動回路58とを配線長を短くして接続することができる。そして、電圧Vo発生回路84では、電圧Vd発生回路86で発生させた電圧Vdを用いて電圧Voを発生させる構成としている。すなわち、電源用プリント基板85からデータ電極駆動用プリント基板83までの比較的配線長が長くノイズの発生しやすい配線にはSN比の劣化が比較的少ない電圧値の高い電圧Vdを通し、SN比が比較的劣化しやすい低電圧の電圧Voは配線長の長い配線を通すことなくデータ電極駆動回路58に供給することができる。
【0067】
これにより、比較的電圧値の低い電圧Voを、例えばデータ電極駆動IC等に、ノイズの少ない状態で供給することが可能となり、データ電極駆動IC等における誤動作を防止することが可能となる。
【0068】
異常検出回路57は、電圧Vo発生回路84から出力される電圧Voを監視し、電圧Voに異常がなければ「Lo」(例えば、0(V))を出力し、電圧Voの異常を検出したときには「Hi」(例えば、5(V))を出力する。この出力信号は、各駆動回路の動作の停止を指示する信号(以下、「停止指示信号」と呼称する)として制御信号発生回路45に送信され、あわせて、データ電極駆動回路58にも送信される。
【0069】
なお、異常検出回路57は、電圧Voが所定の電圧(例えば、4.5(V)以上5.5(V)未満)のときには電圧Voに異常はないと判定し、そうでなければ電圧Voに異常があると判定する。この判定には、例えば、あらかじめ設定された電圧(5.5(V)および4.5(V))と電圧Voとを比較するといった一般に用いられている手法を用いることができる。
【0070】
そして、停止指示信号が「Hi」になったときには、制御信号発生回路45は、直ちにパネル10の駆動を停止することを指示する信号を各回路ブロックに出力するとともに、プラズマディスプレイ装置の電源をオフにする。
【0071】
また、データ電極駆動回路58は、停止指示信号が「Hi」になったときには、データ電極駆動ICに入力する制御信号を、直ちに遮断する。このデータ電極駆動回路58の動作を図面を用いて説明する。
【0072】
図8は、本発明の一実施の形態におけるデータ電極駆動回路58の構成を示す回路図である。なお、本実施の形態に示すデータ電極駆動回路58は、異常検出回路57から出力される停止指示信号にもとづき制御信号を遮断するスイッチング回路59を有する以外は図5に示すデータ電極駆動回路42と同様であるものとする。なお、図面を簡略化するために、図8には、スイッチ回路OUTiだけを示す。
【0073】
スイッチング回路59は、異常検出回路57から送信される停止指示信号が「Lo」(例えば、0(V))のときには、電圧Voは正常であるものとして、制御信号をそのままデータ電極駆動回路58に入力する。停止指示信号が「Hi」(例えば、5(V))になったときには、電圧Voに電圧異常が発生したものとして、データ電極駆動回路58に入力される制御信号を直ちに遮断する。具体的には、制御信号に代えて0(V)をデータ電極駆動回路58に入力する。こうして、電圧Voに電圧異常が発生したときに、データ電極駆動回路42の動作を停止させる。
【0074】
本実施の形態において、データ電極駆動回路58をこのような構成としているのは、次のような理由による。
【0075】
データ電極駆動ICは、書込みパルスのような比較的高い電圧値(例えば、75(V))の信号を扱うにもかかわらずICとしての動作そのものは比較的低い電源電圧(例えば、5(V))で行われる。したがって、電圧Voに重畳されたノイズにより誤動作が発生したときに、データ電極駆動ICに性能劣化が生じるおそれがある。
【0076】
図9は、データ電極駆動ICにおける電圧Vd、電圧Vo、制御信号の有無の組み合わせと各組み合わせにおける性能劣化の可能性の有無を示す図である。なお、図面に示す「0」はデータ電極駆動ICの入力端子に所定の電圧(ここでは、電圧Vd、電圧Vo)が印加されていないことを表し、「1」は所定の電圧が印加されていることを表す。
【0077】
図9に示すように、データ電極駆動ICは、スイッチング素子QHiの入力端子に電圧Vdが印加されていないとき、またスイッチング素子QHiの入力端子に電圧Vdが印加されていても制御信号が「Lo」であれば、性能劣化は生じない。しかし、スイッチング素子QHiの入力端子に電圧Vdが印加されるとともに電源電圧端子には電圧Voが印加されず、かつ制御信号が「Hi」のときに、性能劣化が生じるおそれがある。これは、電源電圧端子に電圧Voが印加されないまま制御信号として「Hi」が印加されることでバッファBFiおよびバッファINViの動作が不安定となり、バッファBFiおよびバッファINViの両者から「Hi」が出力されて、スイッチング素子QHiとスイッチング素子QLiとがともにオンになり、電圧Vd発生回路86からスイッチング素子QHiおよびスイッチング素子QLiを介して接地電位に貫通電流と呼ばれる大電流が流れるためである。そして、このような大電流は、スイッチ回路OUTiの性能を劣化させてしまう。
【0078】
しかし、本実施の形態では、電圧Voが異常電圧のときに制御信号を遮断し、バッファBFiおよびバッファINViの入力端子を強制的に「Lo」にすることができるので、上述した誤動作を防止することができる。また、あわせてスイッチング素子Q1〜スイッチング素子Q4にも「Lo」が印加されるので、スイッチング素子QHiに電圧Vdが印加されなくなり、より確実にデータ電極駆動ICを保護することができる。
【0079】
なお、本実施の形態では、異常検出回路57から制御信号発生回路45に停止指示信号を送信し、停止指示信号が「Hi」のときには、制御信号発生回路45からパネル10の駆動を停止することを指示する信号が各回路ブロックに出力される構成としている。そのため、電圧Voに電圧異常が発生したときには、制御信号発生回路45からの指示によりデータ電極駆動回路58も動作を停止する。しかしながら、上述したように、本実施の形態に示すプラズマディスプレイ装置は、大画面化したパネル100を搭載しており、異常検出回路57から制御信号発生回路45までの距離も比較的大きく、異常検出回路57から出力される停止指示信号にも大きなノイズが重畳しやすい。そのため、停止指示信号を受信するマイクロコンピューター80にノイズによる誤動作が生じないような対策、例えば、停止指示信号に比較的時定数の大きいローパスフィルターをかけてノイズを低減する、といった対策が必要である。しかし、その結果、電圧Voに異常が発生してから、パネル10の駆動を停止する信号が制御信号発生回路45から出力されるまでの間に、時間的なズレが発生する可能性がある。すなわち、その時間的なズレの間にデータ電極駆動ICに貫通電流が発生するおそれがある。
【0080】
しかし、本実施の形態では、データ電極駆動回路58の近傍に異常検出回路57を配置しているので、異常検出回路57とデータ電極駆動回路58とを配線長を短くして接続することができる。したがって、異常検出回路57からデータ電極駆動回路58にノイズが比較的少ない状態で停止指示信号を入力することができ、停止指示信号にローパスフィルターが不要となる。すなわち、停止指示信号が「Hi」になったときには、直ちにデータ電極駆動回路58に入力される制御信号を「Lo」にすることができ、より確実にデータ電極駆動ICの誤動作を防止することができる。
【0081】
以上示したように、本実施の形態によれば、大画面化されたパネル100を備え、回路間の配線長が長くなりやすいプラズマディスプレイ装置において、第2の電圧である電圧Voを使用するデータ電極駆動回路58の近傍に第2の電源回路である電圧Vo発生回路84を配置するとともに、SN比の劣化が比較的少ない電圧値の高い第1の電圧である電圧Vdをノイズの発生しやすい配線長の長い配線を通して電圧Vo発生回路84に供給し、電圧Vdを用いて電圧Voを発生させる構成とすることで、SN比が比較的劣化しやすい低電圧の電圧Voを配線長を短くしてデータ電極駆動回路58に供給することができ、電圧Voにおけるノイズの発生を低減し、回路の誤動作を防止することが可能となる。
【0082】
なお、図7に示す電源回路56は、電圧Vd以外にも、パネル100の駆動に必要な各電圧を発生させ、発生させた電圧を各回路ブロックに供給するものとする。また、図7には電圧Voの電圧異常を検出する異常検出回路57だけを示したが、その他の電源電圧についても同様に電圧異常を検出し、その検出結果にもとづきパネル100の駆動を停止するものとする。また、プラズマディスプレイ装置の構成に応じて必要な異常検出回路を備えた構成としてかまわない。また、それらの異常検出を行う回路は電源用プリント基板85上に搭載されていてもかまわない。
【0083】
なお、本実施の形態では、データ電極駆動回路58と電圧Vo発生回路84と異常検出回路57とを同一のデータ電極駆動用プリント基板83上に搭載する構成を説明したが本発明は必ずしもこの構成に限定されるものではなく、電圧Vo発生回路84を搭載したプリント基板、または電圧Vo発生回路84と異常検出回路57とを搭載したプリント基板を、データ電極駆動回路58を搭載したプリント基板の近傍に設ける構成であってもよい。図10は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の各駆動回路を搭載したプリント基板の配置の他の一例を示す平面図である。図8では、配置的に見て上と下とにそれぞれデータ電極駆動用プリント基板83を2枚ずつ設ける構成を説明したが、図10では、配置的に見て上の方に、電圧Vo発生回路および異常検出回路を搭載しないデータ電極駆動用プリント基板91を追加し、3枚のデータ電極駆動用プリント基板を設けている。例えば、このような構成の場合、データ電極駆動用プリント基板91の隣に配置されたデータ電極駆動用プリント基板83上の電圧Vo発生回路90および異常検出回路92から、データ電極駆動用プリント基板91上のデータ電極駆動回路58に電圧Voおよび停止指示信号を供給する構成であってもよい。
【0084】
なお、本実施の形態では、電圧Vdから電圧Voを発生させる構成を説明したが、本発明は必ずしもこの構成に限定されるものではない。本発明は、SN比の劣化が比較的少ない電圧値の高い電圧を配線長の長い配線を通して電圧Vo発生回路に供給し、その電圧から電圧Voを発生させる構成であればよい。例えば、15(V)の電圧を電源回路56から電圧Vo発生回路84、電圧Vo発生回路90に供給して電圧Voを発生させる構成であってもよい。ただし、電圧Voの発生に用いる電圧は、データ電極駆動回路で使用する電圧、すなわち、書込みパルスの発生に用いる電圧である方が配線数の観点等から望ましい。
【0085】
なお、本実施の形態では、第2の電圧である電圧Voを、データ電極駆動ICの動作用として用いる構成を説明したが、本発明は何らこの構成に限定されるものではない。本発明はノイズの重畳しやすい低電圧の電源電圧を、その電圧を使用する回路の近傍で発生させることを目的としたものである。したがって、第2の電圧は、例えば3.3(V)や1.5(V)といった5(V)以外の低電圧であってもよく、また、第2の電圧を他の回路素子の電源電圧として使用する構成であってもよい。
【0086】
なお、本実施の形態では、異常検出回路57、異常検出回路92においてあらかじめ設定された電圧(5.5(V)および4.5(V))と電圧Voとを比較することで電圧Voの電圧異常を検出する構成を説明したが、例えば、電圧Voを通す配線に、ツェナー電圧が上限電圧(5.5(V))に等しいツェナーダイオードを接続しておけば、電圧Voと下限電圧(4.5(V))とを比較することで同様の動作を行わせることができる。あるいは、スイッチング動作を行う回路素子に、電圧Voを抵抗分割して発生させた電圧を制御信号として入力し、電圧Voが下限電圧(4.5(V))未満になったときに回路素子の動作状態が切換わるように構成することでも、電圧Voが下限電圧未満かどうかを判定することができる。
【0087】
なお、本実施の形態では、停止指示信号が「Hi」になったときに、データ電極駆動回路58に入力される制御信号を直ちに「Lo」にする構成を説明したが、例えば、データ電極駆動ICに入力される制御信号だけを「Lo」にする構成であっても、データ電極駆動ICを保護する効果を得ることはできる。
【0088】
なお、本実施の形態では、データ電極駆動回路58にスイッチング回路59を備える構成を説明したが、例えば、スイッチング回路59に代えてアンドゲート等を用いて同様の動作を行う回路を構成してもかまわない。
【0089】
なお、電圧Vo発生回路84、電圧Vo発生回路90を電源用プリント基板85上に搭載し、電圧Voに比較的時定数の大きいローパスフィルターをかけてからデータ電極駆動回路58に供給する構成とすれば、ノイズの発生を防止することは可能である。しかし、その構成では、プラズマディスプレイ装置の動作開始時に電圧Voの立ち上がりが遅くなるという新たな問題が発生してしまう。すなわち、そのような観点からも、本実施の形態に示した構成はより望ましい効果を得ることができる。
【0090】
なお、本実施の形態において示した具体的な各数値、例えば各電源電圧の電圧値等は、単に実施の形態の一例を示したものに過ぎない。また、停止指示信号の極性やバッファBFi、バッファINViの極性等も実施の形態の一例を示したものに過ぎない。また、図7に示したプリント基板の配置等も、単に実施の形態の一例を示したものに過ぎない。本発明はそれらの数値、構成等に何ら限定されるものではなく、各数値や各信号の極性、プリント基板の枚数や各プリント基板に搭載する駆動回路の構成等は、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて最適に設定することが望ましい。また、各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、大画面化されたパネルを備えたプラズマディスプレイ装置において、ICの動作用等に発生させる比較的電圧値の低い電源電圧におけるノイズの発生を低減し、回路の誤動作を防止することができるプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】パネルの構造を示す分解斜視図
【図2】パネルの電極配列図
【図3】パネルの各電極に印加する駆動電圧波形図
【図4】従来技術におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図
【図5】従来技術におけるデータ電極駆動回路の構成を示す回路図
【図6】従来技術におけるプラズマディスプレイ装置の各駆動回路を搭載したプリント基板の配置の一例を示す平面図
【図7】本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の各駆動回路を搭載したプリント基板の配置の一例を示す平面図
【図8】本発明の一実施の形態におけるデータ電極駆動回路の構成を示す回路図
【図9】データ電極駆動ICにおける電圧Vd、電圧Vo、制御信号の有無の組み合わせと各組み合わせにおける性能劣化の可能性の有無を示す図
【図10】本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の各駆動回路を搭載したプリント基板の配置の他の一例を示す平面図
【符号の説明】
【0093】
1 プラズマディスプレイ装置
10,100 パネル
21 (ガラス製の)前面板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25,33 誘電体層
26 保護層
31 背面板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
41 画像信号処理回路
42,58 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 制御信号発生回路
46,56 電源回路
47,57,92 異常検出回路
48 書込みパルス発生回路
49 書込みパルス出力回路
50 電力回収回路
51 クランプ回路
59 スイッチング回路
70 家庭用電源取込み口
71,710 走査電極駆動用プリント基板
72,720 維持電極駆動用プリント基板
73,83,91 データ電極駆動用プリント基板
74 制御用プリント基板
75,85 電源用プリント基板
76,77,78 FPC
80 マイクロコンピューター
82,84,90 電圧Vo発生回路
81,86 電圧Vd発生回路
L1 インダクタ
C1 コンデンサ
Di1,Di2 ダイオード
Q1,Q2,Q3,Q4,QH1〜QHm,QL1〜QLm スイッチング素子
OUT1〜OUTm スイッチ回路
BF1〜BFm,INV1〜INVm バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設けて階調表示するサブフィールド法で駆動し、複数のデータ電極を備えたプラズマディスプレイパネルと、
データ電極駆動ICを有し、前記書込み期間において前記データ電極に書込みパルスを印加するデータ電極駆動回路と、
前記データ電極駆動回路を制御する制御信号を発生する制御信号発生回路と、
前記書込みパルスの発生に用いる第1の電圧を発生する第1の電源回路と、
前記第1の電圧よりも電圧値が低い第2の電圧を、前記第1の電源回路で発生させた前記第1の電圧を用いて発生する第2の電源回路とを備え、
前記データ電極駆動回路と前記第2の電源回路とを同一のプリント基板上に搭載したことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第2の電圧を前記データ電極駆動ICを動作させるための電源電圧として用いるとともに、
前記第2の電圧の電圧異常を検出する異常検出回路を備え、
前記異常検出回路を前記データ電極駆動回路と前記第2の電源回路とを搭載した前記プリント基板上に搭載し、かつ前記異常検出回路からの出力にもとづき前記データ電極駆動ICに入力する前記制御信号を遮断するスイッチング回路を前記プリント基板上に備えたことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設けて階調表示するサブフィールド法で複数のデータ電極を備えたプラズマディスプレイパネルを駆動し、前記書込み期間において、前記データ電極に書込みパルスを印加するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記書込みパルスの発生に用いる第1の電圧を発生させるとともに、前記データ電極を駆動するデータ電極駆動回路に備えられたデータ電極駆動ICを動作させるための第2の電圧を前記第1の電圧を用いて発生させ、
前記第2の電圧の電圧異常が検出されたときには前記データ電極駆動ICに入力される制御信号を遮断し、
前記データ電極駆動回路を複数設けるとともに、複数の前記データ電極駆動回路と前記第2の電圧を発生させる電源と前記第2の電圧の電圧異常を検出する回路とを同一のプリント基板上に搭載することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−39336(P2010−39336A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203973(P2008−203973)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】