説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】高地等の気圧が低い地域においても大幅に画質を損なうことなく、騒音が抑えられたプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】空間を介して対向する一対の基板の間に放電用ガスを充填したプラズマディスプレイパネル11と、そのパネル11を点灯表示するための駆動回路で構成しているプラズマディスプレイ装置であって、少なくとも一つ以上の圧力センサー17と温度センサー16を有し、実動作時の装置周辺の気圧とパネル温度に連動して駆動周波数を制御する事を特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、パネルという)を表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このプラズマディスプレイ装置に用いられるパネルは、大別して、駆動的にはAC型とDC型があり、放電形式では面放電型と対向放電型の2種類があるが、高精細化、大画面化および製造の簡便性から、現状では、プラズマディスプレイ装置の主流は、3電極構造の面放電型のものである。
【0003】
この面放電型のパネル構造について説明する。2枚のガラス基板の内、一方のガラス基板である前面板には透明電極膜が形成され、この透明電極を通して発光を得ることが出来る。透明電極には部分的に金属からなる電極を並行して付加し、大きな放電電流を流すことを可能としている。またこれらの電極上には透明な低融点ガラスからなる誘電体が形成され、さらにその上層には耐スパッタリング性能を高め、同時に放電特性を安定させるためにMgOなどの薄膜が誘電体保護層として形成されている。
【0004】
そして他方の板ガラスである背面板には個々の放電セルを形成するためのストライプ状あるいは井桁状の隔壁が形成され、赤、緑、青に対応した蛍光体がセル内に塗布形成されている。蛍光体層の下には誘電体層が形成され、さらにその下層にはアドレス電極が形成されている。
【0005】
このような構成の前面板と背面板とを封着材で接合し、放電空間内の雰囲気をXe、Ne、He等からなる放電ガスで常圧よりも低い圧力に置換されている。
【0006】
また、パネルはアルミニウムなどの金属製のシャーシ部材の前面側に保持させ、そのシャーシ部材の背面側にパネルを発光させるための駆動回路を構成する回路基板を配置することによりモジュールを構成している。
【0007】
パネルを表示させるための一般的な駆動方法としては、サブフィールド法、すなわち、映像信号の1フィールド期間を輝度の重み付けを有する複数のサブフィールドに分割し、放電を起こすサブフィールドを組み合わせることで映像信号の階調を表示する方法で行う。ここで、サブフィールドは、セル内に所定の壁電荷を形成するための初期化放電を発生させる初期化期間、点灯させるべきセルを選択するアドレス放電を発生させるアドレス期間、および選択したセルにおいて維持放電を発生させる放電維持期間を有し、維持放電に伴う発光により画像を表示する。また、画面中の点灯する面積に応じて、1階調あたりの輝度を決める放電維持回数を変え、省電力と高輝度を両立させている。
【0008】
このようなプラズマディスプレイ装置は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、視野角が広いこと、大型化が容易であること、自発光型であるため表示品質が高いことなどの理由から、フラットパネルディスプレイの中で最近特に注目を集めており、多くの人が集まる場所での表示装置や家庭で大画面の映像を楽しむための表示装置として各種の用途に使用されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−131580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PDPは、その構造上、外気圧が低下するとパネルの内外圧差が小さくなり、パネル内の放電空間に隙間が生じやすくなる。そのため、標高が高い地域などの低気圧環境では2枚の板ガラスの間に隙間が生じ、実動作中の放電によるガラス基板の振動により、人に聞こえる騒音が発生する課題があった。また、実動作中はパネルの温度が上昇するため、パネル内の圧力が上昇し、前述の課題と同様な現象が顕著となる。
【0010】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、低気圧環境下においてパネルの温度上昇を抑えることで、騒音が発生しにくいプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するために本発明は、複数の表示電極を配置した前面基板と前記表示電極に交差するようにデータ電極を配置した背面基板とを間に放電空間が形成されるように対向配置したプラズマディスプレイパネルと、このプラズマディスプレイパネルを前面側に保持し背面側に前記プラズマディスプレイパネルを駆動させるための駆動回路ブロックを配置したシャーシ部材、更に外気圧を検出する圧力センサーとパネル表面温度を検出する温度センサー及び装置を冷却するファンを有し、外気圧とパネル表面温度をモニターすることによって、維持駆動周波数及び冷却ファンを制御する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高地等の気圧が低い地域においても大幅に画質を損なうことなく、騒音が抑えられたプラズマディスプレイ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイ装置について、図1〜図5を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0014】
まず、プラズマディスプレイ装置におけるパネルの構造について図1を用いて説明する。図1に示すように、パネルは、ガラス製の前面基板1と背面基板2とを、その間に放電空間を形成するように対向配置することにより構成されている。前面基板1上には表示電極を構成する走査電極3と維持電極4とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極3および維持電極4を覆うように誘電体層5が形成され、誘電体層5上には保護層6が形成されている。
【0015】
また、背面基板2上には絶縁体層7で覆われた複数のデータ電極8が設けられ、その絶縁体層7上には井桁状の隔壁9が設けられている。また、絶縁体層7の表面および隔壁9の側面に蛍光体層10が設けられている。そして、走査電極3および維持電極4とデータ電極8とが交差するように前面基板1と背面基板2とが対向配置されており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、パネルの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0016】
図2はこのパネルを用いたプラズマディスプレイ装置の回路、センサー、冷却ファンのブロック図である。このプラズマディスプレイ装置は、パネル11、信号処理回路12、データ電極駆動回路13、走査電極駆動回路14、維持電極駆動回路15、温度センサー16、圧力センサー17、冷却ファン18および電源回路(図示せず)を備えている。
【0017】
次に、パネルを駆動するための駆動電圧波形とその動作について図3を用いて説明する。図3はパネルの各電極に印加する駆動電圧波形を示す図であり、SC1〜SCnは走査電極、SU1〜SUnは維持電極、D1〜Dmはデータ電極から印加する波形を表している。
【0018】
本実施の形態によるプラズマディスプレイ装置においては、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間、維持期間を有している。維持期間のパルス数は階調表示に対応する様にサブフィールド毎に重み付けされており、重みの異なるサブフィールドを組み合わせることで映像信号の階調を表示する。更に画面中の点灯する面積によって1階調あたりの輝度を決める維持パルス数を変え、省電力と高輝度を両立させている。
【0019】
次に、本実施の形態によるプラズマディスプレイ装置の特徴部分について、詳細に説明する。
【0020】
図2にある温度センサー16の信号は、信号処理回路12に送られる。センサーの検出温度範囲は高い領域の温度を検出する必要があるため、30〜80℃が望ましい。
【0021】
また、圧力センサー17の信号も信号処理部に送られ、外気圧の値を検出できる。気圧検出範囲は、低い気圧の領域を検出する必要があるため、660〜1013hPaが望ましい。パネル冷却ファン18は信号処理部でその回転数を変えることができる。
【0022】
パネル表面温度とパネルから聞こえる騒音(騒音が聞こえる高度で表記)の関係を測定したデータを図4に示す。実動作時はパネル表面温度が40〜80℃の範囲で変化するため、外気圧が低いと騒音発生高度が低くなる。なお、ここでいう騒音とは、A特性で周波数の重み付けを行った音圧レベルで、パネルから5cm離れた距離で40dB以上のことを言う。
【0023】
また、駆動維持周波数とパネル温度との関係を調べた結果を図5に示す。パネルは維持周波数が高いとより高い輝度を得ることができるが、放電損失による発熱でパネル自体の温度が上昇しやすいという傾向を持つ。
【0024】
従って、例えば標高2800m以下の騒音レベルを抑える場合、実動作中にパネル温度と外気圧をモニターし、気圧が標高2800m相当になった時に、パネル温度が52℃を超えないように駆動周波数の上限を設定し、ノイズ発生を抑制する。パネル冷却ファンで温度を下げても同様の効果を得ることができる。冷却ファンを用いた場合は、維持周波数を下げないので、高地でより高輝度のプラズマディスプレイ装置を提供することができる。冷却ファンと維持周波数の制御は併用しても良い。
【0025】
上記実施形態により、高地等の気圧が低い地域においても大幅に画質を損なうことなく、騒音が抑えられたプラズマディスプレイ装置を提供することができる。
【0026】
なお、本願明細書に添付の図面ならびに上記記載の実施の形態は、本発明の一例として挙げたに過ぎない。本発明はこれら図面および実施の形態に限定されることを意図しない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように本発明は、大画面、高精細のプラズマディスプレイ装置を提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイ装置に用いるパネルの要部を示す斜視図
【図2】同プラズマディスプレイ装置の回路ブロック図
【図3】パネルの各電極に印加する駆動電圧波形を示す波形図
【図4】パネル温度と騒音レベルの関係を示す図
【図5】維持周波数とパネル温度の関係を示す図
【符号の説明】
【0029】
1 前面基板
2 背面基板
3 走査電極
4 維持電極
5 誘電体層
6 保護層
7 絶縁体層
8 データ電極
9 隔壁
10 蛍光体層
11 パネル
12 信号処理回路
13 データ電極駆動回路
14 走査電極駆動回路
15 維持電極駆動回路
16 温度センサー
17 圧力センサー
18 冷却ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を介して対向する一対の基板の間に放電用ガスを充填したプラズマディスプレイパネルと、そのパネルを点灯表示するための駆動回路で構成しているプラズマディスプレイ装置であって、少なくとも一つ以上の圧力センサーと温度センサーを有し、実動作時の装置周辺の気圧とパネル温度に連動して駆動周波数を制御する事を特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
空間を介して対向する一対の基板の間に放電用ガスを充填したプラズマディスプレイパネルと、そのパネルを点灯表示するための駆動回路、及びパネル冷却ファンで構成しているプラズマディスプレイ装置であって、少なくとも一つ以上の圧力センサーと温度センサーを有し、実動作時の装置周辺の気圧とパネル温度に連動して冷却ファンの回転数を制御する事を特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
少なくとも一つ以上の圧力センサーと温度センサーを敷設し、実動作時の装置周辺の気圧に連動して駆動周波数、及び冷却ファンを制御することを特徴とする請求項2に記載のプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−204758(P2009−204758A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45403(P2008−45403)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】