説明

プラズマ光源システム

【課題】発生するプラズマ光の出力を大幅に高めた場合でも熱負荷によるダメージを抑えて装置寿命を延ばすことができるプラズマ光源システムを提供する。
【解決手段】内部が真空排気される真空チャンバー21内で、中心軸7を中心とする円周上に設置された複数の発光点1aでプラズマ光8を周期的に発光する複数のプラズマ光源10と、各発光点1aにおけるプラズマ光8を中心軸7上に位置する集光点9に向けて反射するミラー回転体40と、ミラー回転体40を中心軸7まわりに回転駆動する回転駆動装置48と、ミラー回転体40の内部を冷却する冷却装置50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUV放射のためのプラズマ光源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代半導体の微細加工のために極端紫外光源を用いるリソグラフィが期待されている。リソグラフィとは回路パターンの描かれたマスクを通して光やビームをシリコン基板上に縮小投影し、レジスト材料を感光させることで電子回路を形成する技術である。光リソグラフィで形成される回路の最小加工寸法は基本的には光源の波長に依存している。従って、次世代の半導体開発には光源の短波長化が必須であり、この光源開発に向けた研究が進められている。
【0003】
次世代リソグラフィ光源として最も有力視されているのが、極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)光源であり、およそ1〜100nmの波長領域の光を意味する。この領域の光はあらゆる物質に対し吸収率が高く、レンズ等の透過型光学系を利用することができないので、反射型光学系を用いることになる。また極端紫外光領域の光学系は非常に開発が困難で、限られた波長にしか反射特性を示さない。
【0004】
現在、13.5nmに感度を有するMo/Si多層膜反射鏡が開発されており、この波長の光と反射鏡を組み合わせたリソグラフィ技術が開発されれば30nm以下の加工寸法を実現できると予測されている。さらなる微細加工技術の実現のために、波長13.5nmのリソグラフィ光源の開発が急務であり、高エネルギー密度プラズマからの輻射光が注目されている。
【0005】
光源プラズマ生成はレーザー照射方式(LPP:Laser Produced Plasma)とパルスパワー技術によって駆動されるガス放電方式(DPP:Discharge Produced Plasma)に大別できる。DPPは、投入した電力が直接プラズマエネルギーに変換されるので、LPPに比べて変換効率で優位であるうえに、装置が小型で低コストという利点がある。
【0006】
ガス放電方式による高温高密度プラズマからの放射スペクトルは、基本的にはターゲット物質の温度と密度によって決まり、プラズマの原子過程を計算した結果によると、EUV放射領域のプラズマにするにはXe,Snの場合で電子温度、電子密度がそれぞれ数10eV、1018cm−3程度,Liの場合で20eV、1018cm−3程度が最適とされている。
【0007】
なお、上述したプラズマ光源は、非特許文献1,2および特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】佐藤弘人、他、「リソグラフィ用放電プラズマEUV光源」、OQD−08−28
【非特許文献2】Jeroen Jonkers,“High power extreme ultra−violet(EUV) light sources for future lithography”,Plasma Sources Science and Technology, 15(2006) S8−S16
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−226244号公報、「極端紫外光源および半導体露光装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
EUVリソグラフィ光源には、高い平均出力、微小な光源サイズ、飛散粒子(デブリ)が少ないこと等が要求される。現状では、EUV発光量が要求出力に対して極めて低く、高出力化が大きな課題の一つである。
【0011】
現在、EUV放射のためのプラズマ光源は、高繰り返しのパルス光源を用いる方向で開発が進められている。
しかし、実用出力を目指す、高繰り返し運転化(10〜100kHz)においては、従来技術を大きく上回るエネルギー変換効率(例えば10%以上)を達成したとしても、リソグラフィ光源に要求される1kW出力を達成するには10kW以上の電力を光源部に投入する必要がある。
【0012】
一方、高出力化のために入力エネルギーを大きくすると熱負荷によるダメージがプラズマ生成装置や光学系の寿命の低下を招いてしまう問題点があった。
【0013】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、発生するプラズマ光の出力を大幅に高めた場合でも熱負荷によるダメージを抑えて装置寿命を延ばすことができるプラズマ光源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、内部が真空排気される真空チャンバー内で、中心軸を中心とする円周上に設置された複数の発光点でプラズマ光を周期的に発光する複数のプラズマ光源と、
前記各発光点におけるプラズマ光を前記中心軸上に位置する集光点に向けて反射するミラー回転体と、
該ミラー回転体を前記中心軸まわりに回転駆動する回転駆動装置と、
前記ミラー回転体の内部を冷却する冷却装置と、を備えることを特徴とするプラズマ光源システムが提供される。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記ミラー回転体は、前記各発光点におけるプラズマ光を前記中心軸上に位置する集光点に向けて反射する反射ミラーと、
該反射ミラーの背面を気密に囲むミラー支持体と、
該ミラー支持体に一端が固定され前記中心軸に沿って延び、他端が真空チャンバーの外側に位置し、ミラー支持体内部から前記他端まで連通する中空孔を有する中空回転軸と、を有する。
【0016】
前記冷却装置は、前記中空孔の内面に接触することなく該中空孔を通して中空回転軸の外側からミラー支持体の内部まで連通する中空の冷却水導水管と、
該冷却水導水管を介して反射ミラーの背面に向けて冷却水を噴射し、かつ前記中空孔と冷却水導水管との隙間から冷却水を回収する冷却水供給装置と、を有する。
【0017】
また、前記真空チャンバーは、前記中空回転軸が貫通する貫通支持部を有しており、
該貫通支持部内に中空回転軸の軸方向に間隔を隔てて位置し、中空回転軸を気密にシールする複数の磁性流体シールと、
該磁性流体シール間の空間を真空排気する真空排気装置とを有する。
【0018】
また、前記中空回転軸に固定され、前記ミラー回転体の前記中心軸を中心とする回転バランスを調整するバランスウエイトを有する。
【0019】
また、前記バランスウエイトは、前記回転駆動装置の支持位置を中心とする前記ミラー回転体の回転モーメントとバランスする重量を有する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明の構成によれば、プラズマ光を反射するミラー回転体の内部を冷却する冷却装置を備えるので、プラズマ光の出力を大幅に高めた場合でも熱負荷によるミラー回転体のダメージを抑えて装置寿命を延ばすことができる。
【0021】
また、ミラー回転体は、反射ミラー、ミラー支持体、及び中空回転軸からなり、前記冷却装置は、中空回転軸の中空孔を介して反射ミラーの背面を冷却水で直接冷却するので、反射ミラーの反射率が低く、熱負荷が大きい場合でも、効率的に反射ミラーを冷却してそのダメージを防止することができる。
【0022】
また、特に前記冷却装置は、中空の冷却水導水管と冷却水供給装置からなり、冷却水導水管は前記中空孔の内面に接触することなく、冷却水導水管を介して反射ミラーの背面に向けて冷却水を噴射し、かつ前記中空孔と冷却水導水管との隙間から冷却水を回収するので、回転抵抗が小さく、ミラー回転体の高速回転に影響を与えることなく、熱負荷による反射ミラーのダメージを抑えることができる。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明と関連するプラズマ光源の実施形態図である。
【図2】図1のプラズマ光源の作動説明図である。
【図3】本発明によるプラズマ光源システムの第1実施形態の平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】本発明によるプラズマ光源システムの第2実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明と関連するプラズマ光源の実施形態図であり、このプラズマ光源10は、1対の同軸状電極11、放電環境保持装置20、及び電圧印加装置30を備える。
1対の同軸状電極11は、対称面1を中心として対向配置されている。各同軸状電極11は、棒状の中心電極12、管状のガイド電極14及びリング状の絶縁体16からなる。
【0026】
棒状の中心電極12は、単一の軸線Z−Z上に延びる導電性の電極である。
管状のガイド電極14は、中心電極12を一定の間隔を隔てて囲み、その間にプラズマ媒体を保有するようになっている。プラズマ媒体は、例えばXe,Sn,Li等のガスである。
リング状の絶縁体16は、中心電極12とガイド電極14の間に位置する中空円筒形状の電気的絶縁体であり、中心電極12とガイド電極14の間を電気的に絶縁する。
【0027】
1対の同軸状電極11は、各中心電極12が同一の軸線Z−Z上に位置し、かつ互いに一定の間隔を隔てて対称に位置する。
【0028】
放電環境保持装置20は、同軸状電極11内にプラズマ媒体を供給し、かつプラズマ発生に適した温度及び圧力に同軸状電極11を保持する。放電環境保持装置20は、例えば、真空チャンバー、温度調節器、真空装置、及びプラズマ媒体供給装置により構成することができる。
【0029】
電圧印加装置30は、各同軸状電極11に極性を反転させた放電電圧を印加する。電圧印加装置30は、この例では、正電圧源32、負電圧源34及びトリガスイッチ36からなる。
正電圧源32は、一方(この例では左側)の同軸状電極11の中心電極12にそのガイド電極14より高い正の放電電圧を印加する。
負電圧源34は、他方(この例では右側)の同軸状電極11の中心電極12にそのガイド電極14より低い負の放電電圧を印加する。
トリガスイッチ36は、正電圧源32と負電圧源34を同時に作動させて、それぞれの同軸状電極12に同時に正負の放電電圧を印加する。
この構成により、本発明のプラズマ光源は、1対の同軸状電極11間に管状放電を形成してプラズマを軸方向に封じ込めるようになっている。
【0030】
図2は、図1のプラズマ光源の作動説明図である。この図において、(A)は面状放電の発生時、(B)は面状放電の移動中、(C)はプラズマの形成時、(D)はプラズマ閉込め磁場の形成時を示している。
以下、この図を参照して、プラズマ光発生方法を説明する。
【0031】
上記プラズマ光発生方法では、上述した1対の同軸状電極11を対向配置し、放電環境保持装置20により同軸状電極11内にプラズマ媒体を供給しかつプラズマ発生に適した温度及び圧力に保持し、電圧印加装置30により各同軸状電極11に極性を反転させた放電電圧を印加する。
【0032】
図2(A)に示すように、この電圧印加により、1対の同軸状電極11に絶縁体16の表面でそれぞれ面状の放電電流(以下、面状放電2と呼ぶ)が発生する。面状放電2は、2次元的に広がる面状の放電電流であり、以下「電流シート」と呼ぶ。
なおこの際、左側の同軸状電極11の中心電極12は正電圧(+)、ガイド電極14は負電圧(−)に印加され、右側の同軸状電極11の中心電極12は負電圧(−)、そのガイド電極14は正電圧(+)に印加されている。
【0033】
図2(B)に示すように、面状放電2は、自己磁場によって電極から排出される方向(図で中心に向かう方向)に移動する。
【0034】
図2(C)に示すように、面状放電2が1対の同軸状電極11の先端に達すると、1対の面状放電2の間に挟まれたプラズマ媒体6が高密度、高温となり、各同軸状電極11の対向する中間位置(中心電極12の対称面1)に単一のプラズマ3が形成される。
【0035】
さらに、この状態において、対向する1対の中心電極12は、正電圧(+)と負電圧(−)であり、同様に対向する1対のガイド電極14も、正電圧(+)と負電圧(−)であるので、図2(D)に示すように、面状放電2は対向する1対の中心電極12同士、及び対向する1対のガイド電極14の間で放電する管状放電4に繋ぎ換えられる。ここで、管状放電4とは、軸線Z−Zを囲む中空円筒状の放電電流を意味する。
この管状放電4が形成されると、図に符号5で示すプラズマ閉込め磁場(磁気ビン)が形成され、プラズマ3を半径方向及び軸方向に封じ込むことができる。
すなわち、磁気ビン5はプラズマ3の圧力により中央部は大きくその両側が小さくなり、プラズマ3に向かう軸方向の磁気圧勾配が形成され、この磁気圧勾配によりプラズマ3は中間位置に拘束される。さらにプラズマ電流の自己磁場によって中心方向にプラズマ3は圧縮(Zピンチ)され、半径方向にも自己磁場による拘束が働く。
この状態において、プラズマ3の発光エネルギーに相当するエネルギーを電圧印加装置30から供給し続ければ、高いエネルギー変換効率で、プラズマ光8(EUV)を長時間安定して発生させることができる。
【0036】
上述した装置と方法によれば、対向配置された1対の同軸状電極11を備え、1対の同軸状電極11にそれぞれ面状の放電電流(面状放電2)を発生させ、面状放電2により各同軸状電極11の対向する中間位置に単一のプラズマ3を形成し、次いで面状放電2を1対の同軸状電極間の管状放電4に繋ぎ換えてプラズマ3を封じ込めるプラズマ閉込め磁場5(磁気ビン5)を形成するので、EUV放射のためのプラズマ光を長時間(μsecオーダーで)安定して発生させることができる。
【0037】
また、従来のキャピラリー放電や真空光電金属プラズマと比較すると、1対の同軸状電極11の対向する中間位置に単一のプラズマ3が形成され、かつエネルギー変換効率を大幅(10倍以上)に改善できるので、プラズマ形成中における各電極の熱負荷が小さくなり、構成機器の熱負荷によるダメージを大幅に低減できる。
【0038】
また、1対の同軸状電極11の対向する中間位置にプラズマ光の発光源であるプラズマ3が形成されるので、発生したプラズマ光の有効な放射立体角を大きくできる。
【0039】
しかし、上述したプラズマ光源により、従来技術と比較してエネルギー変換効率を大幅に改善できるが、そのエネルギー変換効率は依然として低く(例えば10%程度)、光源部に投入する電力1kWに対して発生可能なプラズマ光の出力は0.1kW程度に過ぎない。
そのため、リソグラフィ光源に要求されるプラズマ光の出力(例えば1kW)を達成するために、更なる工夫が必要であった。
【0040】
図3は、本発明によるプラズマ光源システムの第1実施形態の平面図であり、図4は図3の側面図である。
図3、図4において、本発明のプラズマ光源システムは、複数(この例では4つ)のプラズマ光源10(この例では、10A,10B,10C,10D)と、ミラー回転体40を備える。
【0041】
なお、プラズマ光源10を構成する放電環境保持装置20と電圧印加装置30は、複数のプラズマ光源10にそれぞれ設けるのが好ましいが、その一部又は全部を共用してもよい。
【0042】
複数(4つ)のプラズマ光源10(10A,10B,10C,10D)は、それぞれ、所定の発光点1aでプラズマ光8を周期的に発光する。この周期は1kHz以上、プラズマ光の発光時間は1μsec以上、プラズマ光の出力は0.1kW以上であるのがよい。また、各プラズマ光源10の周期、発光時間および出力はそれぞれ等しいことが好ましい。
また、各プラズマ光源10は、図1に示したように対向配置された1対の同軸状電極11と、同軸状電極11内にプラズマ媒体を供給しかつプラズマ発生に適した温度及び圧力に保持する放電環境保持装置20と、各同軸状電極11に極性を反転させた放電電圧を印加する電圧印加装置30とを備え、1対の同軸状電極11の間に管状放電を形成してプラズマを軸方向に封じ込めるようになっている。
【0043】
ミラー回転体40は、反射ミラー42、ミラー支持体44及び中空回転軸46からなる。
【0044】
この例において、プラズマ光源10の複数の発光点1aは、中心軸7を中心とする円周上に設置されている。円周上の間隔は、好ましくは互いに等しく設定するのがよい。またこの例で、中心軸7は鉛直軸である。
【0045】
反射ミラー42は、プラズマ光源10の複数の発光点1aにおけるプラズマ光8を集光点9に集光する。
反射ミラー42は、前記中心軸7上に位置し、プラズマ光源10の各発光点1aからのプラズマ光8を中心軸7上に位置する集光点9に向けて反射するようになっている。この例において、反射ミラー42は、凹面ミラーであるが、平面ミラーであってもよい。
また、反射ミラー42と発光点1aとの間に、図示しない集光ミラーを設け、集光ミラーと反射ミラー42とで、発光点1aにおけるプラズマ光8を集光点9に集光してもよい。
【0046】
ミラー支持体44は、反射ミラー42の背面(図で下面)を気密に囲み内部が中空の中空部材である。
中空回転軸46は、ミラー支持体44に一端46a(図で上端)が固定され、中心軸7に沿って延び、他端46b(図で下端)が真空チャンバー21の外側(図で下方)に位置し、ミラー支持体44の内部から他端46bまで連通する中空孔47を有する。
【0047】
真空チャンバー21は、上述した放電環境保持装置20の構成部材であり、プラズマ光源10、反射ミラー42及びミラー支持体44を気密に囲み内部が真空排気される。
【0048】
図4において、本発明のプラズマ光源システムは、さらに、回転駆動装置48を備える。
回転駆動装置48は、各プラズマ光源10の発光時に反射ミラー42がそのプラズマ光源に向くように、中心軸7を中心に反射ミラー42を回転させるようになっている。
【0049】
回転駆動装置48は、この例では、軸受マウント48a、軸受48b、歯車装置49a、及び駆動モータ49bを備える。
【0050】
軸受マウント48aは、真空チャンバー21の外部(図で下方)に固定され、内部に複数の軸受48bを有し、中空回転軸46を中心軸7のまわりに回転可能に支持する。
歯車装置49aは、ミラー回転体49の中空回転軸46に固定された従動歯車と、これと歯合する駆動歯車とからなる。駆動モータ49bは、高速回転用の電動機であり駆動歯車を回転駆動する。
なお、本発明の回転駆動装置48は、この例に限定されず、歯車装置以外の回転手段を用いてもよい、
【0051】
また、この実施形態において、プラズマ光源10は、4台であるが、2〜3台でも、5台以上でもよい。また、特に、発光間隔を短縮し、高繰返し運転(1〜10kHz)を実現するためには、多いほど好ましく、例えば10以上であるのが好ましい。
【0052】
上述した本発明の第1実施形態によれば、複数のプラズマ光源10を同一円周上に設置し、反射ミラー42による集光点9を上記円の中心軸線上に作り、円の中心部に設置した反射ミラー42で円中心を通る垂直軸上に集光させる配置とし、さらに、円周上に配置された個々のプラズマ光源10の発光タイミングと同期して、反射ミラー42の反射面がそのプラズマ光源10に対面するように回転させることにより、集光点9から高出力、かつ微小サイズのプラズマ光を周期的に発光させることができる。
【0053】
また、EUV領域のミラーは反射率が低い(例えば70%前後)が、図3の構成では、単一の反射ミラー42による1回の反射でプラズマ光8を集光点9に集光するので、反射効率を高くでき、発生したEUV光の利用効率を大きくできる。
【0054】
図4において、本発明のプラズマ光源システムは、さらに、冷却装置50を備える。冷却装置50は、この例では、中空の冷却水導水管52と冷却水供給装置54からなる。
【0055】
中空の冷却水導水管52は、この例では下端52bが真空チャンバー21の外部(この例では冷却水供給装置54)に固定された鉛直中空管であり、中空回転軸46の中空孔47の内面に接触することなく中空孔47を通して中空回転軸46の外側からミラー支持体42の内部まで連通し、その上端52aが反射ミラー42の背面近傍に位置するようになっている。
【0056】
冷却水供給装置54は、冷却水回収タンク55と、図示しない冷却水ポンプとを備える。冷却水ポンプは、冷却水導水管52の下端52bから冷却水導水管52を介して反射ミラー42の背面に向けて冷却水を噴射する。また、冷却水回収タンク55は、中空回転軸46の中空孔47と冷却水導水管52との隙間から冷却水を回収するようになっている。
【0057】
上述した冷却装置50の構成により、EUV領域のミラーは反射率が低く(例えば70%前後)、その分、ミラー自体の熱吸収量が増大するが、高速回転するミラー回転体49は、冷却装置50(冷却水導水管52と冷却水供給装置54)に全く接触しないので、高速回転用のシール装置(例えばオイルシール)が不要であり、冷却装置50に起因する回転抵抗を小さくできる。
また冷却装置50は、中空回転軸46の中空孔47を介して反射ミラー42の背面を冷却水で直接冷却するので、反射ミラー42の反射率が低く、熱負荷が大きい場合でも、効率的に反射ミラー42を冷却してそのダメージを防止することができる。
【0058】
図4において、本発明のプラズマ光源システムは、さらに貫通支持部62、複数の磁性流体シール64、及び真空排気装置66を備える。
貫通支持部62は、真空チャンバー21の外面に気密に固定され、中空回転軸46が貫通する貫通孔62aを有する。
【0059】
複数(この例では2つ)の磁性流体シール64は、貫通支持部62の貫通孔62aと中空回転軸46の間に中空回転軸46の軸方向に間隔を隔てて位置し、中空回転軸46の外面を気密にシールする。
磁性流体シールとは、磁性流体が磁場に反応する力を用い、リング状のマグネットをステンレスなどの強磁性材料で挟み込んだ磁気回路部品と組み合わせて使うことにより、磁性流体の液体Oリングを中空回転軸46上に形成し、駆動部などから発生するゴミ、オイルミストなどが真空チャンバー21内へ浸入するのを防ぐものである。
【0060】
貫通支持部62は、さらに複数の磁性流体シール64の間の空間とその外面とを連通する半径方向孔62bを有する。
真空排気装置66は、この半径方向孔62bに接続された排気管65を有しており、排気管65を介して磁性流体シール64の間の空間を真空排気する。
【0061】
上述した構成により、本発明では、磁性流体シール64を複数段とし、そのシール間も真空排気することにより、高速回転でもリーク量を大幅に低減、ないし皆無にすることができる。
【0062】
図5は、本発明によるプラズマ光源システムの第2実施形態の側面図である。
この図の例で、中心軸7は水平軸である。また、本発明のプラズマ光源システムは、さらに、バランスウエイト68を備える。
バランスウエイト68は、この例では、中空回転軸46の他端46b近傍に固定され、ミラー回転体40の中心軸7を中心とする回転バランスを調整するようになっている。
【0063】
また、この例で、バランスウエイト68は、回転駆動装置48の支持位置(例えば軸受48bの中心位置)を中心とするミラー回転体40の回転モーメントとバランスする重量を有する。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0064】
上述したバランスウエイト68を備えることにより、ミラー回転体40の中心軸7を中心とする回転バランスを調整して、ミラー回転体40の高速回転を可能にできる。
また、高速回転機構の軸受マウント48aに対して、真空中の反射ミラー42及びミラー支持体44とは反対側に反射ミラー42及びミラー支持体44の重量とバランスするバランスウエイト68を備えるので、軸受48bに作用する回転モーメントを低減してミラー回転体40の回転軸7を水平に保持することができる。
【0065】
上述したように、本発明の構成によれば、プラズマ光8を反射するミラー回転体40の内部を冷却する冷却装置50を備えるので、プラズマ光8の出力を大幅に高めた場合でも熱負荷によるミラー回転体40のダメージを抑えて装置寿命を延ばすことができる。
【0066】
また、ミラー回転体40は、反射ミラー42、ミラー支持体44、及び中空回転軸46からなり、冷却装置50は、中空回転軸46の中空孔47を介して反射ミラー42の背面を冷却水で直接冷却するので、反射ミラー42の反射率が低く、熱負荷が大きい場合でも、効率的に反射ミラー42を冷却してそのダメージを防止することができる。
【0067】
また、特に冷却装置50は、中空の冷却水導水管52と冷却水供給装置54からなり、冷却水導水管52は中空回転軸46の中空孔47の内面に接触することなく、冷却水導水管52を介して反射ミラー42の背面に向けて冷却水を噴射し、かつ中空孔47と冷却水導水管52との隙間から冷却水を回収するので、回転抵抗が小さく、ミラー回転体の高速回転に影響を与えることなく、熱負荷による反射ミラーのダメージを抑えることができる。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0069】
1 対称面、1a 発光点、
2 面状放電(電流シート)、3 プラズマ、
4 管状放電、5 プラズマ閉込め磁場、
6 プラズマ媒体、7 中心軸、
8 プラズマ光(EUV)、9 集光点、
10(10A,10B,10C,10D) プラズマ光源、
11 同軸状電極、12 中心電極、12a 凹穴、
14 ガイド電極、14a 開口、
16 絶縁体(多孔質セラミック)、
20 放電環境保持装置、21 真空チャンバー、
30 電圧印加装置、32 正電圧源、
34 負電圧源、36 トリガスイッチ、
40 ミラー回転体、42 反射ミラー(凹面ミラー)、
44 ミラー支持体、46 中空回転軸、
46a 一端、46b 他端、47 中空孔、
48 回転駆動装置、48a 軸受マウント、48b 軸受、
49a 歯車装置、49b 駆動モータ、
50 冷却装置、52 冷却水導水管、
52a 上端、52b 下端、
54 冷却水供給装置、55 冷却水回収タンク、
62 貫通支持部、62a 貫通孔、62b 半径方向孔、
64 磁性流体シール、65 排気管、
66 真空排気装置、68 バランスウエイト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空排気される真空チャンバー内で、中心軸を中心とする円周上に設置された複数の発光点でプラズマ光を周期的に発光する複数のプラズマ光源と、
前記各発光点におけるプラズマ光を前記中心軸上に位置する集光点に向けて反射するミラー回転体と、
該ミラー回転体を前記中心軸まわりに回転駆動する回転駆動装置と、
前記ミラー回転体の内部を冷却する冷却装置と、を備えることを特徴とするプラズマ光源システム。
【請求項2】
前記ミラー回転体は、前記各発光点におけるプラズマ光を前記中心軸上に位置する集光点に向けて反射する反射ミラーと、
該反射ミラーの背面を気密に囲むミラー支持体と、
該ミラー支持体に一端が固定され前記中心軸に沿って延び、他端が真空チャンバーの外側に位置し、ミラー支持体内部から前記他端まで連通する中空孔を有する中空回転軸と、を有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ光源システム。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記中空孔の内面に接触することなく該中空孔を通して中空回転軸の外側からミラー支持体の内部まで連通する中空の冷却水導水管と、
該冷却水導水管を介して反射ミラーの背面に向けて冷却水を噴射し、かつ前記中空孔と冷却水導水管との隙間から冷却水を回収する冷却水供給装置と、を有することを特徴とする請求項2に記載のプラズマ光源システム。
【請求項4】
前記真空チャンバーは、前記中空回転軸が貫通する貫通支持部を有しており、
該貫通支持部内に中空回転軸の軸方向に間隔を隔てて位置し、中空回転軸を気密にシールする複数の磁性流体シールと、
該磁性流体シール間の空間を真空排気する真空排気装置とを有する、ことを特徴とする請求項2に記載のプラズマ光源システム。
【請求項5】
前記中空回転軸に固定され、前記ミラー回転体の前記中心軸を中心とする回転バランスを調整するバランスウエイトを有する、ことを特徴とする請求項2に記載のプラズマ光源システム。
【請求項6】
前記バランスウエイトは、前記回転駆動装置の支持位置を中心とする前記ミラー回転体の回転モーメントとバランスする重量を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ光源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−191040(P2012−191040A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54181(P2011−54181)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】