説明

プラズマ処理装置および処理方法

【課題】従来のプラズマ処理では、ウエハ外周周辺部の等電位面が湾曲し、ウエハ外周部周辺のエッチングレートが不均一であるという課題がある。
【解決手段】ウエハ載置用電極111の段差部に、ウエハ載置用電極111と同電位となるように設けたリング状部材303が配置され、かつ前記リング状部材303の上面をウエハ載置用電極111の上面より高くすることでウエハ外周部周辺の等電位面301の湾曲を改善し、ウエハ外周周辺部のエッチングレートを高均一化するプラズマ処理装置および処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子基板等の被処理材を、プラズマを用いてエッチング処理を施すのに好適なプラズマ処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、一般にプラズマを用いたドライエッチングが行われている。ドライエッチングを行うためのプラズマ処理装置は様々な方式が使用されている。一般に、プラズマ処理装置は、真空処理室、これに接続されたガス供給装置、真空処理室内の圧力を所望の値に維持する真空排気系、ウエハ基板を載置する電極、真空処理室内にプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段などから構成されている。プラズマ発生手段によりシャワープレート等から真空処理室内に供給された処理ガスをプラズマ状態とすることで、ウエハ載置用電極に保持されたウエハ基板のエッチング処理が行われる。
【0003】
近年の半導体デバイスの集積度の向上に伴い、微細加工つまり加工精度の向上が要求されるとともに、エッチングレートの面内均一性あるいはエッチング形状におけるCD値(Critical Dimension)の面内の均一性等の向上が要求されている。被エッチング材料の面内エッチングレートの均一性は、以下の影響を受けやすい。プラズマ密度分布、ラジカル分布、ガス流れ分布、被エッチング材料のエッチング処理中の面内温度分布、エッチング反応による反応生成物分布、処理室側壁の温度設定等。これらの分布の影響は各層膜の材料特性に依存し、プラズマエッチングの場合は、エッチング処理の条件(例えば、プラズマの励起電力、使用ガスの種類、使用ガスの混合比、ガス圧力、バイアスRF電力、電極あるいはリアクタ壁等の温度設定等)を各膜層の材料によって最適化する必要がある。よって多層膜のエッチングの完了時点でエッチングレートやエッチング形状(例えばCD)の高精度の面内均一性を得ることは難しくなっている。さらに最近の半導体加工においては微細化に伴いエッチング特性の均一性はナノメートルまたはサブナノメートルのオーダーで要求されている。
【0004】
前述のようなウエハ面内のエッチング均一性の課題において、特にウエハ外周部周辺における電磁気学的、熱力学的な要因によるエッチング処理の不均一のため、ウエハ外周部周辺で半導体デバイスを加工することが難しい場合がある。このような場合、一般的には半導体デバイスの加工が難しい領域にはデバイスを形成しないように設計する。このようなウエハ上のデバイス設計においてウエハ外周部周辺の不使用領域のことをエッジ・エクスクルージョン(E.E.)と称し、特にメモリデバイス分野においては、このE.E.領域の大きさが半導体価格を大きく左右する要因となっている。近年、特にE.E.領域の縮小化が求められており、E.E.領域2mm、さらにはE.E.領域1mmといった要求が強い。
【0005】
前述のE.E.領域を少しでも小さくし、1枚のウエハから取得できるチップ数を多くするため、プラズマ処理装置におけるウエハ面内均一性の改善については様々な検討がされている。このE.E.領域を縮小するため、ウエハ外周部周辺の電磁気学的課題、特にウエハ上に形成される等電位面の湾曲を改善する方法が提案されている。(特許文献1または特許文献2、参照)提案されている改善方法は、ウエハ外周に高周波エッジリングと呼ばれる部材を配置し、ウエハ上のシース分布を中心から外周まで均一とすることにより、均一なエッチング結果が得られる処理装置の構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3881290号公報
【特許文献2】特開2005−260011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や2の構成について検討した結果、ウエハ外周部周辺においてある程度の均一性の向上が認められるものの、限界のあることが分かった。そこで、その理由について更に検討した。その結果、下記のことが分かった。
【0008】
特許文献1、2の構造では、ウエハ外周に配置された高周波エッジリングの上面高さがいずれもウエハ載置用電極の最上面より低い。本構造は、ウエハ載置用電極に印加されるバイアス電力がウエハ載置用電極の外周部に設けられるカバーリングを介してプラズマと結合することが前提として述べられている。つまりカバーリングを介してバイアス電力がプラズマと結合し、カバーリング上面で厚みのある高周波シースを形成することでウエハ外周部周辺の等電位面の湾曲を補正しようとする構造となっている。近年の実際のプラズマエッチング装置では、カバーリングはその製作加工性と寿命の観点から、ある有限の厚みをもって形成され、ウエハ載置用電極の外周部に設けられる。近年のほとんどのプラズマエッチング装置では、印加されたバイアス電力がある有限の厚みをもって形成されたカバーリングを透過することができず、プラズマと結合しシースを形成することは難しい。よって、特許文献1、2のような構造を用いても実際にはウエハ外周周辺部の等電位面の湾曲を十分に修正することは困難であることが分かった。つまりE.E.部のエッチングレートの均一性を十分に改善することはできず、このままでは近年のデバイスメーカーの要求であるE.E.領域2mmまたはE.E.領域1mmといった性能を満足することはできない。前記特許文献1、2を含め、いずれの公表された公報を用いてもE.E領域2mmまたはE.E.領域1mmと規定されたウエハ外周部周辺の等電位面の湾曲を修正することはできなかった。
【0009】
本発明の目的は、エッチング特性が不均一となるエッジ・エクスクルージョン(E.E.)領域を低減可能なプラズマ処理装置および処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、ウエハを保持する手段の上面に段差部を有し、前記保持する手段の最上段にウエハが載置され、前記段差部の直径がウエハの直径より小さくしてあり、前記段差部にウエハを保持する手段と同電位となるように設けたリング状部材が配置され、かつ前記リング状部材の上面が前記保持する手段の上面より高くしてあり、前記リング状部材の内径側と上面と外径側とを誘電体からなる部材が覆っている構造とすることで、ウエハ外周部周辺の等電位面の湾曲を改善し、ウエハ外周部周辺の等電位面をウエハと平行にすることでウエハに入射するイオンの軌道をウエハに垂直方向とし、E.E部のエッチングレートを高精度に均一化できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウエハ保持手段の上面高さよりも高く、それと同電位となるように設けたリングをその外周部に配置することにより、エッチング特性が不均一となるエッジ・エクスクルージョン(E.E.)領域を低減可能なプラズマ処理装置および処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例であるマイクロ波ECRエッチング装置の縦断面図。
【図2】従来例におけるウエハの外周部付近の縦断面図。
【図3】本実施例におけるウエハの外周部付近の縦断面図。
【図4】本実施例におけるウエハの外周部のエッチングレート分布。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の一実施例であるマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング装置を図1により説明する。上部が開放された真空容器101の上部に、真空容器101内にエッチングガスを封入するための誘電体窓103(例えば石英製)を設置することにより処理室104を形成する。真空容器101の上部には、真空容器101内にエッチングガスを導入するためのシャワープレート102(例えば石英製)を設置し、シャワープレート102にはエッチングガスを流すためのガス供給装置117が接続される。また、真空容器101には真空排気口106を介し真空排気装置108が接続されている。プラズマを生成するための電力を処理室104に伝送するため、誘電体窓103の上方には電磁波を放射する導波管107(またはアンテナ)が設けられる。導波管107(またはアンテナ)へ伝送される電磁波は電磁波発生用電源109から発振させる。電磁波の周波数は特に限定されないが、本実施例では2.45GHzのマイクロ波を使用する。処理室104の外周部には、磁場を形成する磁場発生コイル110が設けてあり電磁波発生用電源109より発振された電力は、形成された磁場との相互作用により処理室104内に高密度プラズマを生成する。
【0014】
また、誘電体窓103に対向して真空容器101の下部にはウエハ載置用電極111が設けられる。ウエハ載置用電極111は電極表面が溶射膜(図示省略)で被覆されており、高周波フィルター回路115を介して直流電源116が接続されている。さらに、ウエハ載置用電極111には、マッチング回路113を介して高周波電源114が接続される。処理室104内に搬送されたウエハ112は、直流電源116から印加される直流電圧の静電気力でウエハ載置用電極111上に吸着され、処理室104内に所望のエッチングガスを供給した後、真空容器101内を所定の圧力とし、処理室104内にプラズマを発生させる。ウエハ載置用電極111に接続された高周波電源114から高周波電力を印加することにより、プラズマからウエハへイオンを引き込み、ウエハ112がエッチング処理される。なお、符号105はカバーリングである。
【0015】
図2に従来のエッチング装置におけるウエハ周辺部の構造を示す。従来のエッチング装置では、ウエハ載置用電極111の上面の直径は、ウエハ112の直径より数mm程度小さくしてある。よって、ウエハ載置用電極111の上面外周側は段差形状を有する。また図2に示す通り、前記段差部とウエハ載置用電極111の外周側面とがプラズマに接することを防止するため、誘電体材料で構成されたカバーリング105をウエハ載置用電極111の前記段差部に設けている。前記構造により、ウエハ載置用電極111は直接プラズマに接することがなくなり、プラズマ起因の表面反応による電極表面のダメージや電極表面の消耗を抑制している。前記カバーリングは、プラズマをウエハ112に集中化させるフォーカシングの効果を持った一般的なフォーカスリングとは異なる。
【0016】
前記カバーリング105は、ウエハ112の搬送時のガイド、ウエハ112の搬送時のセンタリングの機能を有するようにウエハ112周辺部をテーパ形状としている。前記カバーリング105は、一般的には石英材料やアルミナ等のセラミック材料、イットリア材料(Y)を用いる。
【0017】
図2に、ウエハ112上に形成される電界の等電位面201と前記電界により引き込まれたイオンの軌道202を示す。一般的にプラズマと接する物質の表面にはプラズマシースと呼ばれる空間電荷層が形成される。図2に示した等電位面201は、ウエハ112にウエハ載置用電極111を介して接続された高周波電源114から供給された高周波電力により形成された電界におけるある時間瞬間の状況を示している。図2に示すような従来のカバーリング105を用いた場合、ウエハ112を支持するウエハ載置用電極111の凸部直径がウエハ112より小さく、前記段差部がウエハ112およびウエハ載置用電極111の凸部(ウエハ112の静電吸着面)の高さより低い構造となっているため、ウエハ112上の等電位面がウエハ112外周部で湾曲するという問題がある。図2より、ウエハ112の中心側(外周部以外の領域)では等電位面201がウエハに対して平行に保たれており、ウエハ112に入射するイオンの軌道202もウエハに垂直であることが分かる。しかし、ウエハ112の外周部(E.E.部)では等電位面201が湾曲し、これによりウエハ112に入射するイオンの軌道202もウエハに対して垂直ではなく、大きく傾いている。よって、ウエハ112の中心側(外周部以外の領域)と比べ、ウエハ112の外周部(E.E.部)に入射するイオンの個数が多くなり、ウエハ112の外周部(E.E.部)のエッチングレートが急増するという問題が発生する。つまりウエハ112の外周部(E.E.部)でのエッチングレートの均一性が低下し、前記外周部での半導体デバイスの電気的特性や性能が劣化、歩留まりを低下させるという課題がある。また、ウエハ112の外周部ではイオンが垂直にウエハ112に入射せず、ある角度をもってウエハ112に入射するため、エッチング形状が垂直形状を維持できない。エッチング形状を高精度に制御できないため、前記外周部での半導体デバイスの電気的特性や性能が劣化、歩留まりを低下させるという課題も発生する。
【0018】
次に、図3に本実施例におけるウエハ周辺部の構造を示す。本実施例では、上面が円形(図示せず)の凸部を有するウエハ載置用電極111の外周側面の段差部に凸部を囲うように高周波リング303が設置される。高周波リング303の材質は金属導体を用い、例えばアルミニウムを用いることができる。必要に応じて陽極酸化処理(アルマイト等)や、溶射等の表面処理(溶射被膜)などの誘電体の被覆にて覆うことにより、プラズマ起因の表面反応や異常放電等を抑制することができる。またウエハ載置用電極111と高周波リング303は同電位とする。ウエハ載置用電極111と高周波リング303を同電位とするには、例えば、ウエハ載置用電極111と高周波リング303をメタルタッチさせる、高周波リング303をウエハ載置用電極111に導電性ボルト等で締結させる等、複数の方法が考えられる。また高周波リング303を別部品とすることなく、ウエハ載置用電極111の形状を最初から図3に示すような形状とし、一体部品としてもよい。この高周波リング303には、プラズマから高周波リング303を保護するためにカバーリング105が取り付けられている。カバーリング105は、高周波リング303の内径側と上面の他、外径側を覆っている。前記構造により、ウエハ載置用電極111と高周波リング303は直接プラズマに接することがなくなり、プラズマ起因の表面反応による表面のダメージや表面の消耗を抑制している。前記カバーリング105は、ウエハ112の搬送時のガイド、ウエハ112の搬送時のセンタリングの機能を有するようにウエハ112周辺部をテーパ形状としている。前記カバーリング105は、一般的には石英材料やアルミナ等のセラミック材料、イットリア材料(Y)を用いる。
【0019】
ここで、高周波リング303の上面の高さは、ウエハ載置用電極111の上面高さより高くしなければならない。できれば高周波リング303の上面の高さは、ウエハ112の上面高さより高くした方がよい。ウエハ112の上面より高周波リング303の上面高さを高く設けることにより、ウエハ112の外周部付近での等電位面がウエハ112と平行になるよう改善される。実際にはウエハ112の外周部付近での等電位面の湾曲を抑制し、ウエハ112と平行になるようにするには、ウエハ載置用電極111の上面より高周波リング303の上面の高さは、0.0mm以上5.0mm以下とする必要がある。高周波リング303の上面がウエハ112の上面より低い場合、ウエハ112の外周部付近での等電位面の湾曲の抑制効果は小さくなり、ウエハ112最外周において、ウエハ112と前記等電位面を平行にすることは困難となる。また高周波リング303の内径は、ウエハの外径により近くすることで、ウエハ112の外周部付近での等電位面の湾曲を抑制することができる。ただしウエハ112と高周波リングが近すぎると異常放電等が発生するため、ウエハ112の外径と高周波リング303の内径は1.0mm以上離し隙間を設けてもよい。前記隙間にはカバーリング105等の誘電体を挿入しておくことが望ましい。よって高周波リング303の内径とウエハの外径の隙間間隔は、1.0mm以上10mm以下が望ましい。また前記誘電体材料の厚みは、1.0mm以上5.0mm以下の範囲が望ましい。厚み1.0mm以下は誘電体材料の製作加工性とバイアス電力の透過の観点から望ましくなく、5.0mm以上では、エッチング処理に伴いウエハから発生する反応生成物の滞留といった問題が発生しやすい。よってウエハ搭置用電極111の上面よりカバーリング105の上面の高さは、10mm以下がよい。
【0020】
上述のように図3に示すようなウエハ周辺部の構造とすることで、ウエハ112の外周部付近の等電位面の湾曲をより抑制することができ、ウエハ112の処理において中心付近と外周付近とでより均一なプラズマ処理を実施できる。
【0021】
図3に、ウエハ112上に形成される電界の等電位面301と前記電界により引き込まれたイオンの軌道302を示す。一般的にプラズマと接する物質の表面にはプラズマシースと呼ばれる空間電荷層が形成される。図3に示した等電位面301は、ウエハ112にウエハ載置用電極111を介して接続された高周波電源114から供給された高周波電力により形成された電界におけるある時間瞬間の状況を示している。本実施例である図3に示すような高周波リング303とカバーリング105を用いた場合、ウエハ112上の等電位面がウエハ112外周部でも湾曲せず、ウエハ112と平行にすることができる。図3に示すように、ウエハ112の中心部から外周部にかけて等電位面301がウエハに対して平行に保たれており、ウエハ112の外周部付近に入射するイオンの軌道302もウエハに垂直であることが分かる。よって、ウエハ112の中心部から外周部に入射するイオンの個数を均一にすることができ、ウエハ112の面内でエッチングレートを均一にできる。つまり、ウエハ112の中心部から外周部(E.E.部)でのエッチングレートの均一性が改善し、特にウエハ112の外周部の半導体デバイスの電気的特性や性能が劣化せず、歩留まりを向上させるという効果がある。また、ウエハ112の外周部でもイオンが垂直にウエハ112に入射し、エッチング形状が垂直形状となる。エッチング形状を高精度に制御でき、前記外周部での半導体デバイスの電気的特性や性能が劣化することなく、歩留まりを向上させるという効果がある。
【0022】
また図3に示すようなウエハ周辺部の構造により、ウエハ112上の電位と高周波リング303の表面電位はいつも等しくなり、ウエハ112に対するプロセス条件(特にウエハバイアス電力)が変化してもウエハ112外周部の等電位面の湾曲が抑制できる。つまりプロセス条件が変化しても高周波リング303の寸法をその都度最適化しなくても、ウエハ112外周部付近の等電位面をウエハ112に平行にすることができ、プラズマ処理の効率が向上する。
【0023】
次に図4で実際のエッチングレート結果を示す。本実施例においては、被エッチング材料を窒化シリコン膜とし、エッチングガスとして例えば、四フッ化メタンガス、酸素ガス、トリフルオロメタンガスを用いられる。曲線401は、図2に示すような従来のウエハ周辺部の構造によりエッチングした場合のエッチングレートの面内分布、特にウエハ外周部(E.E.部)を示す。曲線402は、本実施例である図3に示す高周波リング303を設けた構造によりエッチングした場合のエッチングレートの面内分布、特にウエハ外周部(E.E.部)を示す。
【0024】
曲線401が示すように、従来のウエハ周辺部の構造によりエッチングした場合、ウエハ112の周辺部のエッチングレートが急増し、ウエハ112面内の均一性が低下している。これに対して、曲線402が示すように本実施例である図3のようなウエハ周辺部の構造を設けることで、ウエハ112の周辺部のエッチングレートの急増が抑制され、ウエハ112面内のエッチングレート均一性が改善される。これは前述の通り、図3に示すような高周波リング303とカバーリング105を用いた場合、ウエハ112上の等電位面がウエハ112外周部でも湾曲せず、ウエハ112と平行にすることができ、ウエハ112の中心部から外周部にかけて等電位面がウエハに対して平行に保たれ、ウエハ112の外周部付近に入射するイオンの軌道をウエハに垂直にすることができ、E.E.領域2mm、E.E.領域1mmにおけるウエハ外周部でのエッチング特性(加工形状やエッチングレート等)を高均一化できる(E.E.領域の低減)。よって、ウエハ112の中心側から外周部に入射するイオンの個数を面内で均一にすることができ、ウエハ面内のエッチングレートを均一にできる。つまり、ウエハ112の中心部から外周部(E.E.部)でのエッチングレートの均一性が改善し、特にウエハ112の外周部の半導体デバイスの電気的特性や性能が劣化せず、歩留まりを向上させるという効果がある。また、ウエハ112の外周部でもイオンが垂直にウエハ112に入射し、エッチング形状が垂直形状となる。エッチング形状を高精度に制御でき、前記外周部において半導体デバイスの電気的特性や性能が劣化しない領域が拡大され、歩留まりを向上させる効果がある。
【0025】
また図2に示すような従来のウエハ周辺部の構造を用いた場合、ウエハ112の外周部に入射するイオンの軌道がウエハ112中心方向に曲げられることを前述した。これら軌道を曲げられたイオンは、ウエハ外周部に入射するだけでなく、カバーリング105の内径周辺部、つまりウエハ112最外周近傍のカバーリング105の表面にも入射する。このカバーリング105の内径周辺部の表面に入射するイオンは、図2のような従来のウエハ周辺部の構造を用いた場合、ウエハ中心方向に曲げられるため、カバーリング105の内径周辺部は、ウエハ112中心方向へ向かって消耗する。つまりカバーリング105の内径周辺部は、垂直方向には消耗せず、水平方向に消耗していく。よってウエハ載置用電極111の前記段差部の径によって、カバーリング105の寿命が決定されてしまう。ウエハ載置用電極111の前記段差部は、プラズマ起因の表面反応を抑制するためその径をウエハ112より小さくすることが望ましいが、その径を小さくすることにより、ウエハ112のエッチング処理中の温度制御性の低下や吸着力の低下を招く。よってウエハ載置用電極111の前記段差部の直径は、その最適直径より小さくすることができず、図2に示すような従来のウエハ周辺部の構造を用いた場合、カバーリング105の寿命を長期化することが困難であった。対して、図3に示すような高周波リング303とカバーリング105を用いた構造とした場合、前述の通りウエハ112の外周部に入射するイオンの軌道はウエハ112対して垂直方向とすることができる。よって図3のような本実施例のウエハ周辺部の構造を用いた場合、カバーリング105の内径周辺部の表面に入射するイオンは、ウエハと垂直方向に入射し、カバーリング105の内径周辺部は、垂直方向に消耗する。つまりカバーリング105の内径周辺部は、ウエハ112の中心へ向けた水平方向には消耗せず、垂直方向にのみ消耗していく。よって、ウエハ載置用電極111の前記段差部の径によらず、カバーリング105の厚みによってカバーリングの寿命を決定することができる。具体的には、本実施例である図3のようなウエハ周辺の構造により、カバーリング105の寿命を長期化できる効果がある。これにより、プラズマ処理装置のメンテナンス時間の低減、部品の交換回数を低減することができ、半導体デバイスの生産性の向上や半導体デバイスを削減できるという効果がある。
【0026】
本実施例では、被エッチング材料を窒化シリコン膜とし、エッチングガスとして例えば、前述の四フッ化メタンガス、酸素ガス、トリフルオロメタンガスを用いたが、被エッチング材料としては、窒化シリコン膜だけでなく、ポリシリコン膜、フォトレジスト膜、反射防止有機膜、反射防止無機膜、有機系材料、無機系材料、シリコン酸化膜、窒化シリコン酸化膜、窒化シリコン膜、Low−k 材料、High−k 材料、アモルファスカーボン膜、Si 基板、メタル材料等においても同等の効果が得られる。またエッチングを実施するガスとしては、例えば、例えば、塩素ガス、臭化水素ガス、四フッ化メタンガス、三フッ化メタン、二フッ化メタン、アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア、八フッ化プロパン、三フッ化窒素、六フッ化硫黄ガス、メタンガス、四フッ化シリコンガス、四塩化シリコンガス、塩素ガス、臭化水素ガス、四フッ化メタンガス、三フッ化メタン、二フッ化メタン、アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア、八フッ化プロパン、三フッ化窒素、六フッ化硫黄ガス、メタンガス、四フッ化シリコンガス、四塩化シリコンガスヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、ラドンガス等が使用できる。
【0027】
以上の実施例ではマイクロ波ECR放電を利用したエッチング装置を例に説明したが、他の放電(有磁場UHF放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電、トランスファー・カップルド放電)を利用したドライエッチング装置においても同様の作用効果がある。また上記各実施例では、エッチング装置について述べたが、プラズマ処理を行うその他のプラズマ処理装置、例えばプラズマCVD装置、アッシング装置、表面改質装置等についても同様の作用効果がある。
【0028】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
101・・・真空容器、102・・・シャワープレート、103・・・誘電体窓、104・・・処理室、105・・・カバーリング、106・・・真空排気口、107・・・導波管、108・・・真空排気装置、109・・・電磁波発生用電源、110・・・磁場発生コイル、111・・・ウエハ載置用電極、112・・・ウエハ、113・・・マッチング回路、114・・・高周波電源、115・・・高周波フィルター回路、116・・・直流電源、117・・・ガス供給装置、201・・・等電位面、202・・・イオン軌道、301・・・等電位面、302・・・イオン軌道、303・・・高周波リング、401・・・エッチングレート(従来)、402・・・エッチングレート(本発明)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気装置が接続され内部を減圧可能な処理室と、前記処理室内へガスを供給する装置と、前記処理室内部で処理される被処理材を保持する手段と、前記処理室内部にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記被処理材を保持する手段にバイアス電位を印加するバイアス印加手段とを有するプラズマ処理装置において、
前記被処理材を保持する手段の上面は段差部を有し、前記被処理材を保持する手段の最上段には前記被処理材が載置され、前記段差部の直径は前記被処理材の直径より小さくしてあり、前記被処理材を保持する手段と同電位になるよう設けたリング状部材を前記段差部に配置し、かつ前記リング状部材の上面が前記被処理材を保持する手段の上面より高くしてあり、前記リング状部材の内径側と上面と外径側を誘電体材料で覆っていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
真空排気装置が接続され内部を減圧可能な処理室と、前記処理室内へガスを供給する装置と、前記処理室内部で処理される被処理材を保持する手段と、前記処理室内部にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記被処理材を保持する手段にバイアス電位を印加するバイアス印加手段とを有するプラズマ処理装置において、
前記被処理材を保持する手段の上面は段差部を有し、前記保持する手段の最上段には前記被処理材が載置され、前記段差部の直径は前記被処理材の直径より小さくしてあり、前記被処理材を保持する手段と同電位になるよう設けたリング状部材を前記段差部に配置し、かつ前記リング状部材の上面が前記被処理材を保持する手段の上面より高くしてあり、前記リング状部材の内径側と上面と外径側を誘電体材料で覆い、前記誘電体材料の厚みを調節することで前記リング状部材に印加されたバイアス電力が前記処理室内の前記プラズマに印加されないようにしたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、
前記リング状部材の上面が前記被処理材を保持する手段の上面より0.0mm以上5.0mm以下の範囲で高い位置に配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、
前記リング状部材の上面の内径は、前記被処理材の外径より1.0mm以上10mm以下の範囲で大きいことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、
前記誘電体材料の厚みは、1.0mm以上5.0mm以下の範囲であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、
前記リング状部材と前記被処理材を保持する手段とは、同一部品として形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、
前記リング状部材の表面は、陽極酸化膜または溶射被膜で被覆されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、
前記リング状部材の上面を覆う前記誘電体は、セラミック材または石英材料であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
真空排気装置が接続され内部を減圧可能な処理室と、該処理室内へガスを供給する装置と、該処理室内部で処理される被処理材を保持する手段と、該処理室内部にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記被処理材を保持する手段にバイアス電位を印加するバイアス印加手段とを有するプラズマ処理装置において、
前記被処理材の外周部周辺において、前記バイアス電位を印加するバイアス印加手段を用いて形成される前記外周部周辺の等電位面が前記被処理材と平行になるように形成され、前記被処理材の外周部周辺に入射するイオンの軌道が前記被処理材に対して垂直方向となるような手段を設けたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項10】
真空排気装置により処理室内部を減圧し、前記処理室内へガスを供給し、前記処理室内部で処理される被処理材を保持し、該処理室内部にプラズマを発生させ、前記被処理材を保持する手段にバイアス電位を印加し、前記被処理材を温度調節された電極上に静電気力により吸着して前記被処理材をプラズマ処理する方法において、
上面に段差部を有する前記被処理材を保持する手段を用い、前記保持する手段の最上段に前記被処理材を保持し、前記段差部の直径が前記被処理材の直径より小さくしてある前記被処理材を保持する手段に対し前記段差部に前記被処理材を保持する手段と同電位となるように配置されたリング状部材を用い、かつ前記リング状部材の上面を前記処理材を保持する手段の上面より高く設け、また前記段差部と前記リング状部材との間隔と前記リング状部材の上面を覆う誘電体からなる部材を用いてエッチング処理を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項11】
真空排気装置により処理室内部を減圧し、前記処理室内へガスを供給し、前記処理室内部で処理される被処理材を保持し、該処理室内部にプラズマを発生させ、前記被処理材を保持する手段にバイアス電位を印加し、前記被処理材を温度調節された電極上に静電気力により吸着して前記被処理材をプラズマ処理する方法において、
上面に段差部を有する前記被処理材を保持する手段を用い、前記保持する手段の最上段に前記被処理材を保持し、前記段差部の直径が前記被処理材の直径より小さくしてある前記被処理材を保持する手段に対し前記段差部に前記被処理材を保持する手段と同電位となるように配置されたリング状部材を用い、かつ前記リング状部材の上面を前記処理材を保持する手段の上面より高く設け、また前記段差部と前記リング状部材との間隔と前記リング状部材の上面を覆う誘電体からなる部材を用い、前記誘電体材料の厚みを調節することで前記リング状部材に印加されたバイアス電力が前記処理室内の前記プラズマに印加されないようにエッチング処理を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項12】
真空処理室と、前記真空処理室内に配置され、被処理材を保持する被処理材保持手段と、前記被処理材保持手段にバイアス電位を印加するバイアス印加手段とを有するプラズマ処理装置において、
前記被処理材保持手段は、前記被処理材を載置する円形の凸部を有し、
前記凸部の周辺には、前記凸部に載置される前記被処理材と離間するように前記凸部を囲んで導体リングが配置され、
前記導体リングは、プラズマに対する保護膜で覆われており、前記バイアス印加手段に接続されると共に、前記導体リングの高さは、前記凸部の上面の高さよりも高いことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項13】
請求項12記載のプラズマ処理装置において、
前記導体リングは、前記被処理材保持手段を介して前記バイアス印加手段に接続されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項14】
請求項12記載のプラズマ処理装置において、
前記導体リングは、前記被処理材保持手段と一体部品であることを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−227278(P2012−227278A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92364(P2011−92364)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】