説明

プラズマ生成装置

【課題】排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置において、プラズマ領域から活性種を拡散させて、活性種の効果が得られる範囲を拡大する。
【解決手段】プラズマ生成装置20は、排気通路30に露出し、近接した状態で間隔を隔てて配置された第1電極23及び第2電極24を有する電極部21と、電極部21に高周波を出力する高周波発生器22と、第1電極23と第2電極24との間に電位差を付与するプラズマ側電源29とを備えている。プラズマ生成装置20は、高周波発生器22が電極部21へ高周波を出力して電極部21の近傍にプラズマを生成し、電極部21の近傍にプラズマが形成されている期間に、プラズマ側電源29が第1電極23と第2電極24との間に電位差を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置が知られている。特許文献1には、この種のプラズマ生成装置として、ガス処理装置が記載されている。
【0003】
具体的に、特許文献1のガス処理装置は、複数のガス処理ユニットを備えている。各ガス処理ユニットは、アンテナとスパークプラグとが設けられたキャビティを備えている。キャビティでは、スパーク放電が行われて小規模のプラズマが生成され、そのプラズマがマイクロ波のエネルギーを受けて拡大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−34674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のプラズマ生成装置では、プラズマが形成されているプラズマ領域で活性種が生成される。しかし、活性種にはOHラジカルなど生存期間(ライフタイム)が短いものがあり、従来のプラズマ生成装置では、それほど広い範囲で活性種の効果が期待できない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置において、プラズマ領域から活性種を拡散させて、活性種の効果が得られる範囲を拡大することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、排気ガスが流れる排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置を対象とし、近接した状態で間隔を隔てて配置された第1電極及び第2電極を有する電極部と、前記電極部に高周波を出力する高周波発生器と、前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与するプラズマ側電源とを備え、前記高周波発生器が前記電極部へ高周波を出力して前記電極部の近傍にプラズマを生成し、プラズマが形成されている期間に、前記プラズマ側電源が前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与する。
【0008】
第1の発明では、高周波発生器から出力された高周波により電極部の近傍にプラズマが形成されている期間に、第1電極と第2電極との間に電位差が付与される。電極部では、第1電極及び第2電極の何れかが、プラスかマイナスの電位となる。プラズマ領域の活性種は、プラスの極性を有するものと、マイナスの極性を有するものがある。プラズマ領域の活性種のうち、電極部の第1電極又は第2電極の電位と極性が同じ活性種は、電気的に反発し、電極部から離れて拡散する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1電極及び前記第2電極が配置された表側の電極配置面に沿って排気ガスが流れるように前記排気通路に配置された板状絶縁体を備えている。
【0010】
第2の発明では、板状絶縁体の表側が、第1電極及び第2電極が設けられた電極配置面となっている。電極配置面に沿って流れる排気ガスは、電極部の近傍や電極部の近傍から拡散した活性種と反応する。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記板状絶縁体が、前記排気ガスを浄化する浄化触媒の上流に配置されている。
【0012】
第3の発明では、浄化触媒の上流で排気ガスがプラズマ処理される。排気ガス中の一部の分子は、酸化しやすい分子に分解される。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記高周波発生器は、前記電極部へ電磁波を出力する一方、前記板状絶縁体と前記浄化触媒との間には、排気ガスを通過させつつ、前記電極部から放射された電磁波が前記浄化触媒側へ漏れることを阻止する漏洩阻止用導体が設けられている。
【0014】
第4の発明では、電極部から放射された電磁波により、浄化触媒の上流にプラズマが生成される。漏洩阻止用導体は、電磁波が浄化触媒側へ漏れることを阻止する。漏洩阻止用導体は、電磁波が浄化触媒に吸収されることを阻止する。
【0015】
第5の発明は、第4の発明において、プラズマが形成されている期間に、前記漏洩阻止用導体と、前記浄化触媒自体または前記浄化触媒の周囲に設けられた触媒側導体との間に電位差を付与する触媒側電源を備えている。
【0016】
第5の発明では、電極部から放射された電磁波によりプラズマが形成されている期間に、漏洩阻止用導体と触媒側導体との間に電位差が付与される。この電位差により、板状絶縁体近傍の活性種は浄化触媒側へ引き寄せられる。
【0017】
第6の発明は、第2の発明において、前記板状絶縁体では、前記電極配置面の裏面に排気ガスを浄化する触媒層が設けられ、前記板状絶縁体は、前記排気通路に複数設けられ、複数の板状絶縁体は、隣り合う板状絶縁体において前記電極設置面と前記触媒層とが間隔を隔てて対面するように設けられている。
【0018】
第6の発明では、電極部が設けられた板状絶縁体の裏面を利用して、浄化触媒が構成されている。浄化触媒を構成する触媒層は、プラズマが生成される電極配置面に対向している。
【0019】
第7の発明は、第1乃至第6の何れか1つの発明において、前記第1電極及び前記第2電極が、共に櫛状に形成され、間隔を隔てて噛み合わされている。
【0020】
第7の発明では、櫛状の第1電極と櫛状の第2電極が噛み合わされた領域でプラズマが生成される。プラズマは比較的広範囲に生成される。
【0021】
第8の発明は、排気ガスが流れる排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置を対象とし、前記排気通路に露出し、近接した状態で間隔を隔てて配置された第1電極及び第2電極を有する電極部と、前記電極部に高周波を出力する高周波発生器とを備え、前記第1電極及び前記第2電極は、それぞれが櫛状に形成され、前記排気通路において一方が他方の上流に位置して互いに対面するように配置され、前記高周波発生器から前記電極部へ高周波が供給されると、前記第1電極と前記第2電極との間にプラズマが生成される。
【0022】
第8の発明では、櫛状の第1電極と櫛状の第2電極とが互いに近接した状態で対面している。第1電極と第2電極とは、櫛歯が並ぶ面同士が対面している。第1電極及び第2電極を有する電極部に高周波が供給されると、互いに近接する両電極の間にプラズマが生成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、電極部の近傍にプラズマが形成されている期間に、第1電極と第2電極との間に電位差を付与することで、電極部の第1電極又は第2電極の電位と極性が同じプラズマ領域の活性種を電極部の近傍から拡散させている。そのため、多くの排気ガスが活性種と反応する。従って、活性種の効果が得られる範囲を拡大させて、排気ガスの浄化効率を向上させることができる。
【0024】
また、第2の発明では、電極配置面に沿って流れる排気ガスは、電極部の近傍や電極部の近傍から拡散した活性種と反応する。ここで、排気ガスは、周囲に比べて圧力が高くなるプラズマ領域を避けようとするため、排気ガスの流速は、電極設置面から離れるほど速くなる。そのため、第1電極と第2電極との間に電位差を付与しない場合は、多くの排気ガスが流れる領域にそれほど活性種を供給することができない。それに対して、第2の発明では、多くの排気ガスが流れる領域に向けて活性種を拡散できるので、排気ガスの浄化効率を大幅に向上させることができる。
【0025】
また、第3の発明では、浄化触媒の上流で、排気ガス中の一部の分子が酸化しやすい分子に分解される。従って、浄化触媒では酸化反応が起きやすくなり、有害成分を容易に分解することができる。浄化触媒が活性温度に達する前であれば、浄化触媒の活性温度(ライトオフ温度)が低下し、浄化触媒を活性化させるのに要する時間を短縮することができる。
【0026】
また、第6の発明では、浄化触媒を構成する触媒層が、近傍でプラズマが生成される電極配置面に対向している。触媒層には、近傍で生成された活性種が供給される。従って、多くの活性種を浄化触媒へ接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1に係る排気通路における浄化触媒近傍の概略構成図である。
【図2】実施形態1に係るプラズマ生成装置のブロック図である。
【図3】実施形態1の変形例1に係る排気通路における浄化触媒近傍の概略構成図である。
【図4】実施形態2に係る浄化触媒の断面図である。
【図5】実施形態3に係るプラズマ生成装置の要部の概略構成図である。
【図6】実施形態3に係る電極部を上流側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
【0029】
本実施形態1は、エンジン10の排気通路30においてプラズマを生成するプラズマ生成装置20である。プラズマ生成装置20は、図1に示すように、排気通路30の一部を構成する収容部材32に、排気ガスを浄化する浄化触媒31(三元触媒)と共に設けられている。プラズマ生成装置20は、浄化触媒31の直上流に設けられている。
【0030】
プラズマ生成装置20は、図2に示すように、第1電極23及び第2電極24を有する電極部21と、電極部21に高周波を出力する高周波発生器22と、第1電極23と第2電極24との間に電位差を付与するプラズマ側電源29を備えている。本実施形態1では、高周波発生器22が、マイクロ波を発生するマイクロ波発振器(例えば、マグネトロンや半導体発振器)を有し、マイクロ波発振器で発生させたマイクロ波を第1電極23へ出力する。第1電極23は、マイクロ波の放射アンテナ(輻射アンテナ)として機能する。また、プラズマ側電源29は直流電源である。
【0031】
プラズマ生成装置20は、複数の電極部21を備えている。また、プラズマ生成装置20は、複数の電極部21の第1電極23の間でマイクロ波の供給先を切り替える分配器15を備えている。
【0032】
電極部21では、第1電極23及び第2電極24が、互いに近接した状態で間隔を隔てて配置されている。第1電極23及び第2電極24は、長方形の板状絶縁体25の片面に設けられた導電パターンにより構成されている。板状絶縁体25では、第1電極23及び第2電極24が配置された表側の面が電極配置面を構成している。第1電極23は、接地されている。
【0033】
第1電極23及び第2電極24は、共に櫛状に形成され、互いに近接した状態で間隔を隔てて噛み合わされている。第1電極23及び第2電極24は、複数の櫛歯部23a,24aと、各櫛歯部23a,24aの基端に接続された接続部23b,24bとを備えている。各櫛歯部23a,24aは、板状絶縁体25の短手方向に延びている。
【0034】
第1電極23には、マイクロ波入力端子26と第1直流入力端子27とが接続されている。第1電極23では、板状絶縁体25の長手方向の一端側の櫛歯部23aの外側に、マイクロ波入力端子26と第1直流入力端子27とが接続されている。マイクロ波入力端子26には、高周波発生器22から出力されたマイクロ波を伝送する伝送線路51が接続されている。第1直流入力端子27には、プラズマ側電源29の第1端子から延びるリード線52が接続されている。第1直流入力端子27は、第1ローパスフィルタ41を介して、第1電極23に接続されている。
【0035】
第2電極24には、第2直流入力端子28が接続されている。第2電極24では、板状絶縁体25の長手方向の他端側の櫛歯部24aの外側に、第2直流入力端子28が接続されている。第2直流入力端子28は、第2ローパスフィルタ42を介して、第2電極24に接続されている。第2直流入力端子28には、プラズマ側電源29の第2端子から延びるリード線53が接続されている。
【0036】
プラズマ生成装置20は、図1及び図2に示すように、それぞれに電極部21が設けられた複数の板状絶縁体25を備えている。複数の板状絶縁体25は、図1において上下に隣り合う板状絶縁体25において、表面(電極設置面25a)と裏面(電極非設置面25b)とが間隔を隔てて対面するように設けられている。複数の板状絶縁体25は、各板状絶縁体25の長手方向が排気通路30の延伸方向に一致するように配置されている。複数の板状絶縁体25では、隣り合う板状絶縁体25の間を、電極設置面25a及び電極非設置面25bに沿って排気ガスが流れる。
【0037】
複数の板状絶縁体25は、収容部材32に固定された第1支持部材43及び第2支持部材44に支持されている。第1支持部材43は、複数の板状絶縁体25の上流側を支持している。第1支持部材43には、マイクロ波入力端子26と分配器15とを接続するマイクロ波の伝送線路51と、プラズマ側電源29の第1端子と第1直流入力端子27とを接続するリード線52とが配設されている(図示省略)。
【0038】
一方、第2支持部材44は、複数の板状絶縁体25と浄化触媒31との間に設けられ、複数の板状絶縁体25の下流側を支持している。第2支持部材44は、第1電極23から放射されたマイクロ波を透過しない金属製の網状部材により構成されている。第2支持部材44は、漏洩阻止用導体を構成している。第2支持部材44には、プラズマ側電源29の第2端子と第2直流入力端子28とを接続するリード線53が配設されている(図示省略)。
−プラズマ生成装置の動作−
【0039】
プラズマ生成装置20がマイクロ波プラズマを生成するプラズマ生成動作について説明する。プラズマ生成装置20は、エンジン10を制御する電子制御装置11により制御される。
【0040】
なお、エンジン10は、エンジン10だけを駆動源とする自動車に搭載されるものであってもよいし、エンジン10とモータを駆動源とするハイブリッド自動車に搭載されるものであってもよい。ハイブリッド自動車は、例えば低負荷から高負荷へ変化する際に、モータからエンジン10への駆動源の切り替えによりエンジン10が始動される。
【0041】
電子制御装置11は、エンジン10の始動時に浄化触媒31を活性化させる時間(ライトオフタイム)を短縮するために、プラズマ生成装置20にプラズマ生成動作の実行を指示する。電子制御装置11は、プラズマ生成動作を開始する際に、高周波発生器22へマイクロ波駆動信号を出力すると共に、プラズマ側電源29へ電圧印加信号を出力する。
【0042】
高周波発生器22は、マイクロ波駆動信号を受けると、所定の設定時間(例えば5秒間)に亘って、所定のデューティーでマイクロ波パルスを繰り返し発振する。マイクロ波パルスは、分配器15に入力される。分配器15は、高周波発生器22がマイクロを発振している期間に亘って、複数の電極部21の第1電極23の間でマイクロ波の供給先を順番に切り替える。分配器15は、例えば数ミリ秒毎にマイクロ波の供給先を切り替える。また、プラズマ側電源29は、電圧印加信号を受けると、高周波発生器22がマイクロ波を発振している期間に亘って、第1電極23と第2電極24との間に電位差を付与し、第2電極24の電位をマイナスの高電位にする。
【0043】
各板状絶縁体25では、分配器15から出力されたマイクロ波パルスが第1電極23から放射される。板状絶縁体25の電極設置面25aの近傍では、第1電極23の櫛歯部23aと第2電極24の櫛歯部24aとの間の電界が強くなる。その結果、板状絶縁体25の長手方向の一端側の第1電極23の櫛歯部23aから、板状絶縁体25の長手方向の他端側の第2電極24の櫛歯部24aに至るまでの広範囲の領域で、マイクロ波プラズマが生成される。マイクロ波プラズマが形成されているプラズマ領域では、OHラジカル等の活性種が生成される。
【0044】
なお、実施形態1では、プラズマ生成装置20が、マイクロ波プラズマを生成する際にスパーク放電を発生させる放電器を備えている(図示省略)。放電器は例えば点火プラグである。放電器には、第1電極23からのマイクロ波パルスの放射と同時、またはマイクロ波パルスの放射の開始直後に、高電圧パルスが供給される。放電器の放電ギャップでは放電が生じ、排気ガスの成分から自由電子が放出される。マイクロ波プラズマは、自由電子をトリガーとして生成される。このようにすることで、放電を行わない場合に比べて、マイクロ波プラズマを安定的に生成することができる。なお、後述する実施形態2や実施形態3においても、プラズマ生成装置20が、マイクロ波プラズマを生成する際にスパーク放電を発生させる放電器を備えている。
【0045】
本実施形態1では、マイクロ波プラズマが形成されている期間に、第2電極24がマイナスの高電位になる。そのため、ププラズマ領域の活性種のうち、第2電極24の電位と極性が同じマイナスの活性種(例えば、OHラジカル)が、電気的に反発し、電極部21から離れて拡散する。
【0046】
プラズマ生成動作中は、マイクロ波プラズマが形成されている板状絶縁体25の間を通過する排気ガスの有害成分が分解される。本実施形態1では、板状絶縁体25の間において、活性種が電極設置面25aから離れて拡散されているので、多くの有害成分が分解される。排気ガスの有害成分は、酸化しやすい成分に分解される。
【0047】
浄化触媒31には、分解された成分が活性種と共に流入する。その結果、浄化触媒31に流入する排気ガスをマイクロ波プラズマに接触させない場合に比べて、浄化触媒31の活性温度は低下する。本実施形態1では、エンジン10の電子制御装置11がエンジン10の始動時にプラズマ生成動作を実行するので、エンジン10の始動時の浄化触媒31の活性化に要する時間が短縮される。
−実施形態1の効果−
【0048】
実施形態1では、電極部21の近傍にマイクロ波プラズマが形成されている期間に、第1電極23と第2電極24との間に電位差を付与することで、第2電極24の電位と極性が同じマイナスの活性種を電極部21の近傍から拡散させている。排気ガスの有害成分の多くは、活性種と反応する。従って、活性種の効果が得られる範囲を拡大させて、排気ガスの浄化効率を向上させることができる。
【0049】
また、実施形態1では、電極配置面25aに沿って流れる排気ガスは、電極部21の近傍や電極部21の近傍から拡散した活性種と反応する。ここで、排気ガスは、周囲に比べて圧力が高くなるプラズマ領域を避けようとするため、排気ガスの流速は、電極設置面25aから離れるほど速くなる。そのため、第1電極23と第2電極24との間に電位差を付与しない場合は、多くの排気ガスが流れる領域にそれほど活性種を供給することができない。それに対して、本実施形態1では、多くの排気ガスが流れる領域に向けて活性種を拡散できるので、排気ガスの浄化効率を大幅に向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態1では、浄化触媒31の上流で、排気ガス中の一部の分子が酸化しやすい分子に分解される。浄化触媒31では酸化反応が起きやすくなり、浄化触媒31の活性温度(ライトオフ温度)が低下する。従って、浄化触媒31を活性化させるのに要する時間を短縮することができる。
−実施形態1の変形例1−
【0051】
実施形態1の変形例1では、図3に示すように、プラズマ生成装置20が、第2支持部材44と収容部材32における浄化触媒31の外側部分との間に電位差を与える触媒側電源46(直流電源)を備えている。第2支持部材44には、触媒側電源46からプラスの高電圧が印加される。収容部材32は接地されている。収容部材32における浄化触媒31の外側部分は、触媒側導体を構成している。
なお、第2支持部材44と収容部材32は共に金属製である。第2支持部材44は、絶縁体(図示省略)を介して収容部材32から電気的に絶縁されている。
【0052】
実施形態1の変形例1において、浄化触媒31自体に触媒側導体を設けて、触媒側電源46により第2支持部材44と触媒側導体との間に電位差を付与してもよい。また、触媒側電源46として交流電源を使用してもよい。
《実施形態2》
【0053】
実施形態2では、複数の板状絶縁体25により浄化触媒31が構成されている。図4に示すように、複数の板状絶縁体25は、支持部材45を介して収容部材32に支持されている。各板状絶縁体25では、電極部21が設けられた電極配置面25aの裏面25bに、一定間隔で凸部49が形成されている。電極設置面25aの裏面25b上には、ほぼ全面に亘って、排気ガスを浄化する触媒層48が積層されている。触媒層48は、電極部21が設けられた電極設置面25aに間隔を隔てて対面している。
【0054】
なお、電極設置面25aにおいて、導電パターンが存在しない領域にも触媒層48を形成してもよい。
−実施形態2の効果−
【0055】
実施形態2では、浄化触媒31を構成する触媒層48が、近傍でマイクロ波プラズマが生成される電極配置面25aに対向している。触媒層48には、マイクロ波プラズマを接触させて、そのプラズマ領域で生成された活性種が供給される。従って、多くの活性種を浄化触媒31へ接触させることができる。
《実施形態3》
【0056】
実施形態3では、第1電極23及び第2電極24が、図5に示すように、全体が排気通路30に露出した状態で、排気通路30の浄化触媒31の上流に1組だけ設けられている。第1電極23及び第2電極24は、実施形態1のように板状絶縁体25に設けない。
【0057】
第1電極23及び第2電極24は、図6に示すように、櫛状に形成されている。第1電極23は、分波器62を介して高周波発生器22に接続されている。第2電極24は、接地されている。第1電極23及び第2電極24では、第1電極23が第2電極24の上流に配置されている。第1電極23と第2電極24とは、互いに近接した状態で、櫛歯が並ぶ面が対面している。第1電極23と第2電極24では、櫛歯の向きが互いに直交している。高周波発生器22から第2電極24へマイクロ波が供給されると、第1電極23と第2電極24との間の領域では、マイクロ波プラズマが生成される。
【0058】
なお、実施形態3では、マイクロ波を吸収するマイクロ波吸収体(例えば、カーボンマイクロコイル)が、浄化触媒31に設けられている。マイクロ波吸収体は、ハニカム状の浄化触媒31の表面に担持されている。高周波発生器22と第1電極23との間には、分波器62が設けられている。分波器62は、高周波発生器22が出力するマイクロ波を、第1電極23と触媒側アンテナ61とに分波する。なお、第1電極23と浄化触媒31との間には、第1電極23から放射されたマイクロ波が浄化触媒31側へ漏れることを防止する網状の漏洩防止部材63が設けられている。
【0059】
実施形態3では、エンジン10の始動時に、高周波発生器22が駆動され、第1電極23と触媒側アンテナ61とにそれぞれマイクロ波が供給される。第1電極23から放射されたマイクロ波により、第1電極23と第2電極24との間の領域では、マイクロ波プラズマが生成される。一方、触媒側アンテナ61から放射されたマイクロ波により、浄化触媒31に担持されたマイクロ波吸収体が加熱され、浄化触媒31が温められる。
なお、第1電極23及び第2電極24は、排気通路30の浄化触媒31を2つに分割した場合に、その間に配置してもよい。
−実施形態3の効果−
【0060】
実施形態3では、マイクロ波プラズマによる排気ガスの分解及び活性種の生成により、浄化触媒31の活性時間が短縮されるだけでなく、マイクロ波吸収体のマイクロ波加熱によっても浄化触媒31の活性時間が短縮される。プラズマの生成と浄化触媒31の加熱とを行うためのマイクロ波は、1つの高周波発生器22から出力される。従って、簡素な構造で浄化触媒31の活性時間を短縮することができる。
−実施形態3の変形例1−
【0061】
実施形態3の変形例1では、マイクロ波吸収体が浄化触媒31の一部にだけ設けられている。マイクロ波吸収体は、例えば、円柱状の浄化触媒31の中央部にだけ設けられている。また、浄化触媒31の上流には、排気ガスを浄化触媒31の中央部へ案内する案内機構が設けられている(図示省略)。案内機構は、例えば、収容部材32の壁面に回動自在に設けられた羽根部材である。案内機構は、収容部材32の壁面に沿う第1の位置と、第1の位置から傾いて排気ガスを浄化触媒31の中央部へ案内する第2の位置との間で動かされる。案内機構は、エンジン10の始動時に第1の位置から第2の位置へ動かされる。
【0062】
変形例1によれば、エンジン10の始動時に浄化触媒31において温度が低い領域へ排気ガスが流れることが抑制される。
《その他の実施形態》
【0063】
前記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0064】
前記実施形態において、プラズマ側電源29が交流電源であってもよい。
【0065】
また、前記実施形態において、マイクロ波よりも周波数が低い高周波(例えば、キロヘルツ帯やメガヘルツ帯の高周波)を電極部21へ供給して、電極部21の近傍にプラズマを生成してもよい。
【0066】
また、前記実施形態において、浄化触媒31が、三元触媒以外の他の触媒(例えば、尿素SCRシステムのSCR触媒)であってもよい。
【0067】
また、前記実施形態において、板状絶縁体25を浄化触媒31の下流に設けてもよい。プラズマ生成装置20は、浄化触媒31を通過した排気ガスをプラズマ処理する。
【0068】
また、前記実施形態において、プラズマ生成装置20を、例えば燃焼炉の排気通路などエンジン10の排気通路30以外に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置について有用である。
【符号の説明】
【0070】
20 プラズマ生成装置
21 電極部
23 第1電極
24 第2電極
22 高周波発生器
25 板状絶縁体
29 プラズマ側電源
30 排気通路
31 浄化触媒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流れる排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置であって、
前記排気通路に露出し、近接した状態で間隔を隔てて配置された第1電極及び第2電極を有する電極部と、
前記電極部に高周波を出力する高周波発生器と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与するプラズマ側電源とを備え、
前記高周波発生器が前記電極部へ高周波を出力して前記電極部の近傍にプラズマを生成し、前記電極部の近傍にプラズマが形成されている期間に、前記プラズマ側電源が前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与することを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1電極及び前記第2電極が表側の電極配置面に設けられ、該電極配置面に沿って排気ガスが流れるように前記排気通路に配置された板状絶縁体を備えていることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記板状絶縁体は、前記排気ガスを浄化する浄化触媒の上流に配置されていることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記高周波発生器は、前記電極部へ電磁波を出力する一方、
前記板状絶縁体と前記浄化触媒との間には、排気ガスを通過させつつ、前記電極部から放射された電磁波が前記浄化触媒側へ漏れることを阻止する漏洩阻止用導体が設けられていることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記電極部の近傍にプラズマが形成されている期間に、前記漏洩阻止用導体と、前記浄化触媒自体または前記浄化触媒の周囲に設けられた触媒側導体との間に電位差を付与する触媒側電源を備えていることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記板状絶縁体では、前記電極配置面の裏面に排気ガスを浄化する触媒層が設けられ、
前記板状絶縁体は、前記排気通路に複数設けられ、
複数の板状絶縁体は、隣り合う板状絶縁体において前記電極設置面と前記触媒層とが間隔を隔てて対面するように設けられていることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つにおいて、
前記第1電極及び前記第2電極は、共に櫛状に形成され、間隔を隔てて噛み合わされていることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項8】
排気ガスが流れる排気通路においてプラズマを生成するプラズマ生成装置であって、
前記排気通路に露出し、近接した状態で間隔を隔てて配置された第1電極及び第2電極を有する電極部と、
前記電極部に高周波を出力する高周波発生器とを備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、それぞれが櫛状に形成され、前記排気通路において一方が他方の上流に位置して互いに対面するように配置され、
前記高周波発生器から前記電極部へ高周波が供給されると、前記第1電極と前記第2電極との間にプラズマが生成されることを特徴とするプラズマ生成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−636(P2013−636A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132442(P2011−132442)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(504293528)イマジニアリング株式会社 (51)
【Fターム(参考)】