説明

プラントの運転条件最適化システム、プラントの運転条件最適化方法、プラントの運転条件最適化プログラム

【課題】安価かつ容易にモデル化でき、人が制御・設定できる変数を用いることにより現実にプラントに実装でき、取得したデータが示していた変数間の相関性を保った範囲で最適な運転条件が得られるプラントの運転条件最適化システム等を提供する。
【解決手段】計測データ記録部43は、運転状態データ取得部41により取得された運転状態データS−DATAと運転指標データ取得部42により求められた運転指標データI−DATAとを所定の項目に基づき関連させた一連の計測データとして計測DBに記録する。回帰モデル作成部44は、運転状態データS−DATA側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データI−DATA側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行って回帰モデルを作成する。運転指標変数最適化部45は、回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化するような運転状態変数を求めるプラントの運転条件最適化システム、プラントの運転条件最適化方法、プラントの運転条件最適化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの運転において望まれる点は、製造プラントであれば製品品質及び歩留であり、その他のプラントであれば運転効率及びコストである。更に環境要因としてのCO排出量等の運転指標が最適となるプラントの運転が望まれており、これらを実現することがプラント運転における大きな関心事である。従来、この関心事に対して以下の特許文献1、2、3に記載されたような方法、装置等が提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1の発電プラントの運転最適化方法及び装置では、発電プラントのタービン入口蒸気の温度と圧力とから、エントロピー計算に基づいてプラント運転評価指標としてタービン効率を計算する物理モデル(特許文献1の図9の物理モデル113)を用いている。特許文献1の段落[0023]以降に記載されているように、非線形計画演算部を備えており、非線形最適化手法により最適運転条件を求めている。特許文献1ではローカルミニマムを回避するために複雑な最適化手法を組み合わせている。
【0004】
特許文献2に記載されたコジェネプラントとその運転方法では、コジェネプラントの複数のユニットについて、予め各ユニットについて単独試験等により求めた送出蒸気量、燃料消費量の特性を表す線形式(個別モデル)等に基づいて各種プラント運転評価指数を蒸気の温度、圧力等の運転条件の線形式(全体モデル)として表している(特許文献2の図2参照)。特許文献2の段落[0016]以降に記載されているように、運転計画部は、この線形式に基づいて線形計画法により1つまたは複数の運転評価指標を最適化しようとしている。
【0005】
特許文献3に記載された操作変数選択装置等では、対象プロセスの操作変数の変化が該対象プロセスの品質変数に与える影響を表す項、対象プロセスの操作変数と品質変数との間の非線形を表す項、操作に関わるコスト及びペナルティを表す項、これら3項の任意の非線形関数として与えられる評価関数を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−199825号公報
【特許文献2】特開2006−17340号公報
【特許文献3】特開2006−323523号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】茨木 俊秀、福島 雅夫著、FORTRAN77 最適化プログラミング、岩波コンピュータサイエンス、株式会社岩波書店発行、1991年4月10日
【非特許文献2】宮下 芳勝、佐々木 慎一著、コンピュータ・ケミストリー シリーズ3 ケモメトリックス−化学パターン認識と多変数解析−、共立出版株式会社、1995年1月25日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1では物理モデルを用いているが、それが現実のモデルの入出力の物理量(の関係)を適切に表しているか否かは不明瞭である。具体的には現実の物理量に合わせるために物理モデルのパラメータの合わせ込みが必要となり、これには多大な労力が必要となるという問題があった。
【0009】
特許文献1記載の発電プラントの運転最適化方法等では、上述したように非線形最適化手法を用いているため、計算が煩雑になるという問題もあった。特許文献1ではローカルミニマムを回避するために複雑な最適化手法を組み合わせているが、これにより更に計算時間がかかることになる。この結果、例えば複数の運転評価指標を評価して最適な運転条件を定めようとすることは現実的には不可能になり、得られた最適な運転条件と他の条件との比較評価を行うことは困難であるという問題があった。
決定変数同士は完全に独立に設定できるものではなく、一般に決定変数同士が相関を持っている場合がある。この場合、決定変数同士の相関を保ったまま変化させる必要があるが、一般の非線形最適化手法では、それを考慮できないという問題があった。
【0010】
加えて、運転条件に対応する物理モデルのパラメータが、人が制御・設定できる変数であるとは限らないため、当該物理モデルから得られた最適な運転条件を実際にその通りにプラントに実装できるとは限らないという問題もあった。
【0011】
一方、特許文献2における「モデル」は線形であり、最適化手法も線形計画法であって簡便であり、複数の運転評価指標を考慮することもできる。しかし、当該「モデル」を作成するためにはプラントの試験等によりその特性を評価する必要があるため、多大な労力を要するという問題があった。一般的には特許文献2に記載されているような「モデル」に基づく最適化を行うことは困難であり、現実的には、最適化は熟練者の勘と経験に頼ったり、試行錯誤によって定める場合が多い。
【0012】
特許文献2においても特許文献1の問題と同様に、運転条件に対応する「モデル」のパラメータが、人が制御・設定できる変数であるとは限らないため、当該「モデル」から得られた最適な運転条件を実際にその通りにプラントに実装できるとは限らないという問題もあった。
一方において、線形モデルよりも厳密な非線形モデルが得られれば、その予測精度は一般に線形モデルよりも優れている。この予測精度の優れた非線形モデルを用いて、決定変数同士の相関を保ったままの範囲で各種制約条件を満たしながら最適な決定変数を定めることができれば、望ましいことはいうまでもない。
【0013】
また、上述したように特許文献3では非線形を表す項を用いているため、特許文献1における問題と同様に、計算が煩雑になる等の非線形最適化手法に共通する問題があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、現実の物理量に合わせるために多大な労力が必要となる物理モデル及び計算が煩雑になる非線形最適化手法を用いることなく、安価かつ容易にモデル化ができ、人が制御・設定できる変数を用いることにより現実にプラントに実装することができ、取得したデータが示していた変数間の相関性を保った範囲で最適な運転条件を得ることができるプラントの運転条件最適化システム等を提供することにある。
また、本発明の目的は、既に計測されているプラントの通常運転データから運転状態とそのときのプラント運転評価指標との関係を多変量解析によりモデル化し、このモデルに基づいて線形の最適化手法により最適な運転評価指標を効率的または少ない計算量で実現可能な運転条件を得ることにある。
更に、本発明の目的は、線形に限らずに高精度なモデルを利用可能とし、元のデータまたはそれから非線形変換等を施して得られた変数に対してQ統計量、T統計量を計算してこれらに対する制約条件を設定することで、元のデータが持っていた変数同士の相関を保った範囲で最適解が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載のプラントの運転条件最適化システムは、複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態データを取得する運転状態データ取得手段と、プラントに設けられたセンサにより測定された、または前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データに基づいて求められた、プラントの運転を評価する運転指標データを取得する運転指標データ取得手段と、前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データと前記運転指標データ取得手段により求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録する計測データ記録手段と、前記データ記録部に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行い回帰モデルを作成する回帰モデル作成手段であって、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換手段と、該成分変換手段により変換された成分から目的変数を予測する予測手段と、該成分変換手段に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換手段とを有するものであり、前記回帰モデル作成手段により作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める運転指標変数最適化手段であって、前記逆変換手段により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ前記予測手段により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とする。
なお、本明細書において、予測手段または予測モデルへの入力を説明変数といい、予測手段または予測モデルからの出力を目的変数というものとする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の運転条件最適化システムにおいて、前記運転指標データ取得手段により求められる運転指標データが複数ある場合、前記計測データ記録手段は、前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データと前記運転指標データ取得手段により求められた複数の運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録し、前記回帰モデル作成手段は、前記データ記録部に記録された複数組の計測データであって一組の計測データ中に複数の運転指標データを含み得るものに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す複数の運転指標変数を複数の目的変数として各々所定の多変量解析を行い各回帰モデルを作成し、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換手段と、該成分変換手段により変換された成分から複数の目的変数を予測する予測手段と、該成分変換手段に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換手段とを有するものであり、前記運転指標変数最適化手段は、前記回帰モデル作成手段により作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求めるものであって、前記逆変換手段により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ、前記予測手段により予測された複数の目的変数に関する各評価関数に基づく一つの評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記一つの評価関数は各評価関数の所定の重み付け和により求められることを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記所定の多変量解析は主成分回帰であることを特徴とする。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記所定の多変量解析は部分的最小二乗法(Partial Least Squares:PLS)であることを特徴とする。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記評価関数が目的関数に関する線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する線形な式である場合、前記最適化は線形計画法を用いることを特徴とする。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記評価関数が目的変数に関する非線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する非線形な式である場合、前記最適化は非線形計画法を用いることを特徴とする。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記運転指標変数最適化手段により得られた最適な運転条件と前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データとに基づき、該最適な運転条件の妥当性を評価可能に出力する妥当性評価手段を更に備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記プラントは顧客のプラントであり、前記運転指標変数最適化手段により求められた最適な運転条件を顧客のプラント側に実装する最適運転条件値実装手段と、前記最適運転条件値実装手段による実装前後の所定の期間における顧客のプラントの運転を評価する運転指標データに基づき、顧客の利益増加及び/または費用節減効果を算出する利益等算出手段と、前記利益等算出手段により算出された顧客の利益増加及び/または費用節減効果に基づく対価を徴収する対価徴収手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記プラントは発電プラントであり、前記運転状態データは発電プラントにおける流量、圧力、温度のいずれか1つ以上を含み、前記運転指標データは効率を含むことを特徴とする。
【0025】
請求項11記載のプラントの運転条件最適化方法は、プラントの運転条件の最適化をコンピュータに実行させるプラントの運転条件最適化方法であって、複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態データを取得する運転状態データ取得ステップと、プラントに設けられたセンサにより測定された、または前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データに基づいて求められた、プラントの運転を評価する運転指標データを取得する運転指標データ取得ステップと、前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データと前記運転指標データ取得ステップで求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録する計測データ記録ステップと、前記データ記録部に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行い回帰モデルを作成する回帰モデル作成ステップであって、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、該成分変換部により変換された成分から目的変数を予測する予測部と、該成分変換部の変換に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換部とを有するものであり、前記回帰モデル作成ステップで作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める運転指標変数最適化ステップであって、前記逆変換手段により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ前記予測手段により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とする。
【0026】
請求項12記載の発明は、請求項11記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記運転指標データ取得ステップにより求められる運転指標データが複数ある場合、前記計測データ記録ステップは、前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データと前記運転指標データ取得ステップで求められた複数の運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録し、前記回帰モデル作成ステップは、前記データ記録部に記録された複数組の計測データであって一組の計測データ中に複数の運転指標データを含み得るものに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す複数の運転指標変数を複数の目的変数として各々所定の多変量解析を行い各回帰モデルを作成し、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、該成分変換部により変換された成分から複数の目的変数を予測する予測部と、該成分変換部の変換に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換部とを有するものであり、前記運転指標変数最適化ステップは、前記回帰モデル作成ステップで作成された各回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求めるものであって、前記逆変換部により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ、前記予測部により予測された複数の目的変数に関する各評価関数に基づく一つの評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とする。
【0027】
請求項13記載の発明は、請求項12記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記一つの評価関数は各評価関数の所定の重み付け和により求められることを特徴とする。
【0028】
請求項14記載の発明は、請求項11〜13のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記所定の多変量解析は主成分回帰であることを特徴とする。
【0029】
請求項15記載の発明は、請求項11〜13のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記所定の多変量解析は部分的最小二乗法(Partial Least Squares:PLS)であることを特徴とする。
【0030】
請求項16記載の発明は、請求項11〜15のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記評価関数が目的変数に関する線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する線形な式である場合、前記最適化は線形計画法を用いることを特徴とする。
【0031】
請求項17記載の発明は、請求項11〜15のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記評価関数が目的変数に関する非線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する非線形な式である場合、前記最適化は非線形計画法を用いることを特徴とする。
【0032】
請求項18記載の発明は、プラントの運転条件の最適化を求めるプラントの運転条件最適化プログラムであって、コンピュータに、複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態データを取得する運転状態データ取得ステップ、プラントに設けられたセンサにより測定された、または前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データに基づいて求められた、プラントの運転を評価する運転指標データを取得する運転指標データ取得ステップ、前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データと前記運転指標データ取得ステップで求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録する計測データ記録ステップ、前記データ記録部に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行い回帰モデルを作成する回帰モデル作成ステップであって、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、該成分変換部により変換された成分から目的変数を予測する予測部と、該成分変換部の変換に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換部とを有するものであり、前記回帰モデル作成ステップで作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める運転指標変数最適化ステップであって、前記逆変換部により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ前記予測部により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とするステップを実行させるためのプラントの運転条件最適化プログラムであることを特徴とする。
【0033】
請求項19記載の発明は、請求項18記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、前記運転指標データ取得ステップにより求められる運転指標データが複数ある場合、前記計測データ記録ステップでは、前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データと前記運転指標データ取得ステップで求められた複数の運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録し、前記回帰モデル作成ステップでは、前記データ記録部に記録された複数組の計測データであって一組の計測データ中に複数の運転指標データを含み得るものに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す複数の運転指標変数を複数の目的変数として各々所定の多変量解析を行い各回帰モデルを作成し、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、該成分変換部により変換された成分から複数の目的変数を予測する予測部と、該成分変換部の変換に対応したプログラムで成分から説明変数を推定する逆変換部とを有するものであり、前記運転指標変数最適化ステップでは、前記回帰モデル作成ステップで作成された各回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求めるものであって、前記逆変換部により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ、前記予測部により予測された複数の目的変数に関する各評価関数に基づく一つの評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とする。
【0034】
請求項20記載の発明は、請求項19記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、前記一つの評価関数は、各評価関数の所定の重み付け和により求められることを特徴とする。
【0035】
請求項21記載の発明は、請求項18〜20のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、前記所定の多変量解析は主成分回帰であることを特徴とする。
【0036】
請求項22記載の発明は、請求項18〜20のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、前記所定の多変量解析は部分的最小二乗法(Partial Least Squares:PLS)であることを特徴とする。
【0037】
請求項23記載の発明は、請求項18〜22のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、前記評価関数が目的変数に関する線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する線形な式である場合、前記最適化は線形計画法を用いることを特徴とする。
【0038】
請求項24記載の発明は、請求項18〜22のいずれか1項に記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、前記評価関数が目的変数に関する非線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する非線形な式である場合、前記最適化は非線形計画法を用いることを特徴とする。
【0039】
請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムは、プラントの運転条件最適化システムであって、複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態データを取得する運転状態データ取得手段と、プラントに設けられたセンサにより測定された、または前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データに基づいて求められた、プラントの運転を評価する運転指標データを取得する運転指標データ取得手段と、前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データと前記運転指標データ取得手段により求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録する計測データ記録手段と、前記データ記録部に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数とする予測モデルを作成する予測モデル作成手段と、前記計測データを対象として、互いに相関を持つ説明変数を、相互に無相関であり、かつ元の説明変数より少ない数の成分であって、元の説明変数を部分空間に射影することにより設定された座標としての成分に変換する成分変換手段と、元の説明変数の空間内の任意の点と前記部分空間上の射影点との距離の2乗をQ統計量として計算し、前記射影点と前記部分空間の中心との正規化された距離の2乗をT統計量として計算するQ統計量・T統計量計算手段と、前記Q統計量及びT統計量から最適化における制約条件としての上限値をそれぞれ設定するQ統計量・T統計量上限値設定手段と、前記予測モデルに基づき目的変数を最適化する説明変数を求める手段であって、前記Q統計量及びT統計量がそれぞれ前記上限値以下であることを制約条件の少なくとも一つとし、元の説明変数同士が持っていた相関を保ちつつ、前記目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、この説明変数値を最適な運転条件とする運転条件最適化手段と、を備えたことを特徴とする。
【0040】
請求項26記載のプラントの運転条件最適化システムは、請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記成分変換手段として主成分分析を用いることを特徴とする。
【0041】
請求項27記載のプラントの運転条件最適化システムは、請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記成分変換手段として部分的最小二乗法を用いることを特徴とする。
【0042】
請求項28記載のプラントの運転条件最適化システムは、請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記予測モデルとして、元の運転状態変数と、元の運転状態変数に非線形変換を施して得られる新しい変数とを合わせた全変数、またはそのうちの適当な変数を抽出した変数を説明変数とし、運転指標変数を目的変数とする重回帰モデルを用いることを特徴とする。
【0043】
請求項29記載のプラントの運転条件最適化システムは、請求項28記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記Q統計量・T統計量計算手段が、元の説明変数と前記予測モデルの作成に用いた非線形項の一部または全部を含めた変数と、に基づいて前記Q統計量及びT統計量を計算することを特徴とする。
【0044】
請求項30記載のプラントの運転条件最適化システムは、請求項28または29記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記予測モデルとして、元の運転状態変数に非線形変換を施して得られる新しい変数を加えた変数を説明変数とし、運転指標変数を目的変数とする主成分回帰モデルを用い、前記Q統計量・T統計量計算手段が、前記主成分回帰モデルの中で計算される主成分分析に基づいて前記Q統計量及びT統計量を計算することを特徴とする。
【0045】
請求項31記載のプラントの運転条件最適化システムは、請求項28または29記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記予測モデルとして、元の運転状態変数に非線形変換を施して得られる新しい変数を加えた変数を説明変数とし、運転指標変数を目的変数とする部分的最小二乗法モデルを用い、前記Q統計量・T統計量計算手段が、前記予測モデルとしての部分的最小二乗法モデルに基づいて前記Q統計量及びT統計量を計算することを特徴とする。
【0046】
請求項32記載のプラントの運転条件最適化システムは、請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記予測モデルとしてニューラルネットワークを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
本発明のプラントの運転条件最適化システム等によれば、コンピュータとネットワークを介して接続されたプラントから記録装置に収集されたセンサデータが遠隔で送信される。コンピュータの運転状態データ取得部は、プラントにおける複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態を取得する。運転指標データ取得部は、運転状態データ取得部により取得された運転状態データに対応するタイミングで、別途センサまたは分析計等で測定及び評価を行うことにより、運転指標データを取得する。あるいは、運転状態データ取得部により取得された運転状態データに基づき、プラントの運転を評価する運転指標データを求めてもよい。計測データ記録部は、運転状態データ取得部により取得された運転状態データと運転指標データ取得部により求められた運転指標データとを所定の項目(例えば取得タイミング)に基づき関連させた一組の計測データとし、当該計測データを計測DBに記録する。
【0048】
回帰モデル作成部は、計測DBに記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数(複数あるものと想定)を目的変数として所定の多変量解析を行って回帰モデルを作成する。回帰モデルでは、温度等の説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、成分変換部により変換された成分から濃度等の目的変数を予測する予測部と、成分変換部の変換方法に対応した方法で成分から温度等の説明変数を推定する逆変換部とを有している。運転指標変数最適化部は、回帰モデル作成部により作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める。より詳しくは、逆変換部により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ予測部により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数を求め、当該説明変数値をプラントの最適な運転条件とする。
【0049】
回帰モデルを用いることにより、説明変数である運転状態変数の変化の仕方と目的変数である運転指標の変化の仕方とを評価することができる。ここでは直接説明変数を設定するのではなく、(中間変数である)成分を設定することにより、成分から逆変換部によって回帰モデルの説明変数の推定値を算出し、予測部を用いて運転指標の推定値を算出する。ここで、上述のようにして算出された説明変数(運転状態変数)同士は、元の(回帰モデルの作成に用いた)データにおいて運転状態変数同士が持っていた相関を保っている。以上のようにして、成分から変数間の相関を考慮して算出(逆変換)された説明変数の推定値と、目的変数の推定値との両者を同時に評価することにより、説明変数、目的変数に関する制約を満たしつつ目的変数を最適(最大化、最小化、または望ましい所定の値に近づける)にするような成分の値を定めることができる。この結果、現実の物理量に合わせるために多大な労力が必要となる物理モデル及び計算が煩雑になる非線形最適化手法を用いることなく、安価かつ容易にモデル化ができ、人が制御・設定できる変数を用いることにより現実にプラントに実装することができ、取得したデータが示していた変数間の相関性を保った範囲で最適な運転条件を得ることができるプラントの運転条件最適化システム等を提供することができるという効果がある。
【0050】
また、実際の運転データを用いてモデル化し、更にQ統計量及びT統計量の上限値内で最適解を探索するため、そのデータが示していた運転状態変数間の相関を保った範囲内で、しかも多変数空間で元のデータを存在していた領域内で最適解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1等におけるプラントの運転条件最適化システム10を示す図である。
【図2】記録装置31に設けられた計測DB50を示す図である。
【図3】発電プラントを例にした場合における計測DB50aを示す図である。
【図4】回帰モデル60を説明するための概念図である。
【図5】プラントの運転条件最適化方法及びプログラムの処理の流れを説明する図である。
【図6】計測DB50の一例である計測DB50bを示す図である。
【図7】計測DB50の別の例である計測DB50cを示す図である。
【図8】主成分分析処理及び主成分回帰モデル作成処理に各々用いられるデータを例示する図である。
【図9】主成分分析処理及び主成分回帰モデル作成処理の流れを説明する図である。
【図10】部分的最小二乗法の処理の流れを説明する図である。
【図11】実施例1〜3で得られた最適運転条件値65を、例えば各運転状態変数S−DATAの度数分布と散布図とにプロットして画面に表示する表示例70を示す図である。
【図12】7つの運転状態変数S−DATAを例示する図である。
【図13】3つの運転指標変数I−DATAを例示する図である。
【図14】7つの運転状態変数S−DATAの時系列グラフ80を示す図である。
【図15】3つの運転指標変数I−DATAの時系列グラフ90を示す図である。
【図16】得られたPLSモデル60bを示す図である。
【図17】得られたPLSモデル60bに基づいて3つの運転指標変数I−DATAを重み付けし、線形計画法で最適化したときの結果(最適化結果100)示す図である。
【図18】得られた最適運転条件値65の妥当性の評価のための画面表示例を示す図である。
【図19】プラント1等が顧客のプラントである場合の運転条件最適化システム10’を示す図である。
【図20】対価徴収部38が対価を徴収する際に発行する請求書例110を示す図である。
【図21】本発明のコンピュータ・プログラムを実行するコンピュータ30の内部回路120を示すブロック図である。
【図22】本発明の実施例8におけるプラントの運転条件最適化システムを示す図である。
【図23】Q統計量及びT統計量を説明するための概念図である。
【図24】実施例9における因子の説明図である。
【図25】実施例9において、各ロットに対するRMSE(2乗平均誤差の平方根)の説明図である。
【図26】実施例9の各因子に対する最適条件の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0053】
図1は、本発明の実施例1等におけるプラントの運転条件最適化システム10を示す。
図1で、符号1、2、3、……、Nは最適化の対象となるプラント1、プラント2、プラント3、……、プラントNである(以下、「プラント1等」と略す。)。図1に示されるように、プラント1等側には、プラント1等を計測・制御する生産実行システム(Manufacturing Execution System:MES)11及び分散型制御システム(Distributed Control System:DCS)12がある。プラント1等では、対象を計測するセンサ13(流量計、圧力計、温度計等)で計測された種々のセンサデータが記録装置14に収集されている。
図1に示されるように、プラント1等側には各々ルータ21、22、23、24(以下、「ルータ21等」と略す。)が設けられており、ルータ21等は各々ネットワーク20に接続されている。図1で、符号30はプラント1等の運転条件を最適化するコンピュータ、25はコンピュータ30側に設けられネットワーク20に接続されたルータ、31はコンピュータ30に接続された記録装置、40はコンピュータ30の機能を示す機能ブロックである。図1に示されるように、記録装置14に収集されたセンサデータは、MES11及びDCS12を経由し、ルータ21、ネットワーク20、ルータ25を介してコンピュータ30側へ遠隔で送信される。あるいは、センサ13で収集されたセンサデータは直接ルータ21、ネットワーク20、ルータ25を介してコンピュータ30側へ遠隔で送信してもよい。
【0054】
次に、図1の機能ブロック40に示されるコンピュータ30の各機能について順に説明する。
図1の運転状態データ取得部(運転状態データ取得手段)41は、プラント1等における複数のセンサ13により測定されたプラント1等の運転状態を示す運転状態データを取得する。プラント1等には一般に複数のセンサ13が設置されており、これらのセンサ13により定期または非定期に一括してプラント1等の運転状態を表すデータである運転状態データが測定され、ネットワーク20を介してコンピュータ30側へ送信される。
図2は、記録装置31に設けられた計測データのデータベース50(データ記録部。以下、「計測DB」と呼ぶ。)を示す。図2に示されるように、送信された運転状態データは取得されたタイミング毎に1セットとして計測DB50の1行(1レコード)に格納される。例えば、図2に示されるように、計測DB50の取得タイミング欄51が「3」の運転状態データS−DATAは、センサ1欄52が「10.6」、センサ2欄52が「9.3」、センサN欄54が「0.12」となっている。これら一括して取得される運転状態データS−DATAは同時に取得する必要はなく、例えばセンサ(変数)毎に一定の遅れを持って取得する場合もある。
【0055】
図1の運転指標データ取得部(運転指標データ取得手段)42は、運転状態データ取得部41により取得された運転状態データS−DATAに対応するタイミングで、別途センサ13または分析計(不図示)で測定及び評価を行うことにより、運転指標データI−DATAを取得する。あるいは、運転状態データ取得部41により取得された運転状態データS−DATAに基づき、プラント1等の運転状態を評価する運転指標データを求めてもよい。図2に示されるように、運転状態データS−DATAの各行において運転指標データI−DATも格納される。例えば、計測DB50の取得タイミング欄51が「2」の運転指標データI−DATAは、運転指標1欄55が「0.67」、運転指標K欄56が「19.8」となっている。すべての運転状態データS−DATAに対して1対1で運転指標データI−DATAが取得されるわけではなく、一部の運転状態データS−DATAに対応する運転指標データI−DATAが無い場合もあり得る。例えば、計測DB50の取得タイミング欄51が「3」の運転指標データI−DATAは、運転指標1欄55が「0.67」であるが、運転指標K欄56が空白となっている。その場合にはそのデータ(例えば、運転指標K欄56が空白となっている取得タイミング欄51が「3」の行)は最適化の対象から除いて使用しないものとする。
【0056】
以下では、プラント1等として発電プラントを例に取上げ、運転状態データS−DATAは発電プラントにおける流量、圧力、温度のいずれか1つ以上を含むものとし、運転指標データI−DATAは効率を含むものとする。しかし、本発明の運転条件最適化システム10が適用されるプラントは発電プラントに限定されるものではなく、製造プラント等であってもよいことは勿論であり、この場合、運転状態データS−DATA、運転指標データI−DATAは適宜設定可能である。
【0057】
図1の計測データ記録部(計測データ記録手段)43は、運転状態データ取得部4により取得された運転状態データS−DATAと運転指標データ取得部42により求められた運転指標データI−DATAとを所定の項目(例えば、取得タイミング欄51に示される取得タイミング)に基づき関連させた一組の計測データとし、当該計測データを計測DB50に記録する。
図3は、発電プラントを例にした場合における計測DB50aを示す。図3で図2と同じ符号及び記号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図3に示されるように、運転状態データS−DATAと運転指標データI−DATとを一組として計測DB50aの1レコード(行)とし、この1レコードを1サンプルとして複数のサンプル分を格納する。例えば、計測時刻欄(取得タイミング欄)51が「2009/5/12 1:00」のサンプルの運転状態データS−DATAとして発電機の発電出力欄=「38.6」があり、運転指標データI−DATAとして運転状態データS−DATAに基づき得られた温度内部効率1欄(%)=「91.1」がある。
【0058】
図1の回帰モデル作成部(回帰モデル作成)44は、計測DB50に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数(複数あるものと想定)を目的変数として所定の多変量解析を行って回帰モデルを作成する。
図4は、回帰モデル60を説明するための概念図である。図4に例示されるように、温度、圧力、流量等が説明変数であり、z1、z2、……、znが成分、濃度が目的変数である。回帰モデル60は、温度等の説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分z1等へ変換する成分変換部(成分変換手段)46と、成分変換部46により変換された成分z1等から濃度等の目的変数を予測する予測部(予測手段)47と、成分変換部46の変換方法に対応した方法で成分z1等から温度等の説明変数を推定する逆変換部(逆変換手段)48とを有している。
【0059】
一般に説明変数は多数あり、互いに相関を持っている。そこで成分変換部46は、これらの説明変数を多変量解析により互いに無相関なかつ元の説明変数の数よりも少ない(中間変数である)成分z1等に変換(集約・圧縮)する。この変換は、一般に説明変数同士が互いに持っている相関を、互いに無相関な成分にまとめていることになる。予測部47は、上述のように変換された成分1等から目的変数を予測する。以上より、成分変換部46と予測部47とを組み合わせることにより、説明変数から目的変数を予測することができる。
回帰モデル60は、成分z1等から予測部47により目的変数を表す(予測する)ことができるが、同時に成分z1等が与えられた場合に、成分変換部46に対応した方法で、成分z1等に対応する元の説明変数を算出(推定)する(逆変換する)ことができる。これは、成分z1等が元の説明変数同士の相関を集約しているので、成分z1等から逆にこの相関を満たす元の説明変数の値を表すものである。
【0060】
図1の運転指標変数最適化部(運転指標変数最適化手段)45は、回帰モデル作成部44により作成された回帰モデル60に基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める。より詳しくは、逆変換部48により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ予測部47により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、当該説明変数値をプラント1等の最適な運転条件とする。
【0061】
回帰モデル60を用いることにより、説明変数である運転状態変数の変化の仕方と目的関数である運転指標の変化の仕方とを評価することができる。但し、ここでは直接説明変数値を設定するのではなく、(中間変数である)成分z1等を設定することにより、成分z1等から逆変換部48によって回帰モデル60の説明変数の推定値を算出し、予測部47を用いて運転指標の推定値を算出する。ここで、上述のようにして算出された説明変数(運転状態変数)同士は、元の(回帰モデル60の作成に用いた)データにおいて運転状態変数同士が持っていた相関を保っている。
以上のようにして、成分z1等から変数間の相関を考慮して算出(逆変換)された説明変数の推定値と、目的変数の推定値との両者を同時に評価することにより、説明変数、目的変数に関する制約を満たしつつ目的変数を最適(最大化、最小化、または望ましい所定の値に近づける)にするような成分の値を定めることができる。
【0062】
特にこの回帰モデル60は一般に線形であり、上述した評価関数が目的変数に関する線形な式(目的関数が運転指標の線形結合)であり、かつ上記制約条件が説明変数に関する線形な式である場合、最適化手法として線形計画法を用いることができる。
【0063】
例えば、上述した所定の多変量解析が主成分分析及び主成分回帰である場合、元の説明変数xから主成分tを算出するローディング行列をP、主成分tから目的変数yを算出する回帰係数ベクトルをQとする。そうすると、成分変換部46の機能は主成分分析であり、説明変数xから成分(主成分スコア)tに、t=Pxとして表される。ここで、Tは転置を示す。予測部47の機能は主成分回帰であり、主成分tから目的変数yに、y=Qt=QPxとして表される。なお、これらの値は平均値0、分散1等に標準化された後の変数である。
逆変換部48により説明変数の推定値(逆変換値)はx=Ptと表され、予測部47により目的変数yの推定値はQtと表される。従って、例えば説明変数xに対する上下限制約の範囲内で目的変数(y=)Qtを最大化する場合には、以下の数式1のようになる。
【0064】
【数1】

【0065】
ここでx、xは、各々説明変数の下限、上限(のベクトル)である。数式1を線形計画法の一般的な定式化に当てはめると以下の数式2のようになる。
【数2】

【0066】
数式2は線形計画法の一般的な表現であり、公知の方法で解くことができる(例えば、非特許文献1に記載された2段階シンプレックス法等を参照)。
【0067】
一方、目的関数が線形でなく、運転指標(y=Qt)に関する非線形な関数fで表されたり、制約条件が運転条件(x=Pt)、運転指標(y=Qt)に関する非線形な関数gで表される場合、言い換えれば評価関数が目的変数に関する非線形な式(例:2次式)でありかつ制約条件が説明変数に関する非線形な式bである場合には、一般的に以下の数式3のように表され、最適化手法として非線形最適化手法(例:二次計画法)を用いることにより解くことができる。
【0068】
【数3】

【0069】
図5は、プラントの運転条件最適化方法及びプログラムの処理の流れを説明する。図5で図1及び図2と同じ符号を付した個所は同じ要素または機能を示すため、説明は省略する。
図5に示されるように、データ取得装置49は、複数のセンサ13により測定されたプラント1等の運転状態を示す運転状態データS−DATAを取得する(運転状態データ取得ステップ)。データ取得装置49は、運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データS−DATAに対応するタイミングで、別途センサ13または分析計(不図示)で測定及び評価を行うことにより、運転指標データI−DATAを取得する(運転指標データ取得ステップ)。あるいは、運転状態データ取得ステップで取得された運転データS−DATAに基づき、プラント1等の運転を評価する運転指標データI−DATAを求めてもよい。データ取得装置49は、運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データS−DATAと運転指標データ取得ステップで求められた運転指標データI−DATAとを所定の項目(例えば、図2の取得タイミング欄51に示される取得タイミング)に基づき、関連させた一組の計測データとし、当該計測データを記録装置31内の計測DB50に記録する(計測データ記録ステップ)。以上のデータ取得装置49の機能はコンピュータ30の機能(プラントの運転条件最適化プログラム)の一部として実現することができるが、データ取得装置49はコンピュータ30とは別のコンピュータとして実現することが好適である。
【0070】
図6は、計測DB50の一例である計測DB50bを示す。
図6に示されるように、各計測点で計測されたセンサデータ(圧力1欄50b−2、流量1欄50b−3、温度1欄50b−4等で示されるS−DATA)は、計測時刻50b−1欄に示される同時刻毎(所定の項目毎)に取得されてまとめて1行として格納され、これが一般に一定のサンプリング周期の計測時刻毎に取得されて蓄積される。これらの各時刻における運転指標データI−DATAとして例えば効率欄50b−5に示される効率が、運転指標データ取得部42により算出される。運転指標データI−DATAが効率ではない場合、運転指標データI−DATAは別途センサ13等により計測される。
【0071】
図6では各行について計測時刻(所定の項目)により紐付けしたため、同時刻のデータの例について示した。しかし、例えば1つのロット(所定の項目)に紐付いた運転条件データ等、紐付けは同時刻でなくても可能である。図7は、計測DB50の別の例である計測DB50cを示す。図7に示されるように、各計測点で計測されたセンサデータ(計測時刻1欄50c−2、計測時刻2欄50c−3等で示されるS−DATA)は、ロット番号欄50c−1に示される同じロット番号毎(所定の項目毎)にまとめて1行として格納され、蓄積される。まとめるタイミングはセンサデータの取得途中または最後にバッチ処理として行えばよい。これらの各ロットにおける運転指標データI−DATAとして例えば効率欄50b−5に示される効率が計測または算出される。以上では、運転指標の例として効率を示しているが、例えば発電プラントであれば発電電力量、半導体製造プラントであれば半導体生成プロセスにおける成膜厚等の品質であってもよい。
【0072】
図5に戻り、回帰モデル作成部44(多変量解析エンジン)は、計測DB50等に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行い回帰モデル60を作成し、記録装置31に回帰モデル60として記録する(回帰モデル作成ステップ)。図4に示したように、回帰モデル60は、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部46と、成分反感部46により変換された成分から目的変数を予測する予測部47と、成分変換部46の変換に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換部48とを有している。
【0073】
運転指標変数最適化部45(最適化エンジン)は、回帰モデル作成ステップで作成された回帰モデル60に基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数(最適な運転条件である最適運転条件値65)を求める(運転指標変数最適化ステップ)。詳しくは、逆変換部48により推定(逆変換)された説明変数に関する制約条件を満たしつつ予測部47により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、当該説明変数値を最適運転条件値65とする。ここで、制約条件等はコンピュータ30のキーボード、マウス等の入力部34から与えることができ、最適運転条件値65はコンピュータ30のディスプレイ等の出力部33に出力(表示)して、監視員(または専門家)35に示すことができる。
【0074】
次に、上述した所定の多変量解析が主成分回帰である場合の処理について説明する。
図8は主成分分析処理及び主成分回帰モデル作成処理に各々用いられるデータ行列を例示する。図8で図2及び図6と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図8に示されるように、2次元データXはセンサデータS−DATAにおいて計測時刻欄50b−1に示される計測時刻及び各変数欄50b−2等に示される変数名を除いた正味のデータだけで構成され、2次元データYは運転指標データI−DATAにおいて計測時刻欄50b−1に示される計測時刻及び各指標欄50b−5等に示される指標名を除いた正味のデータだけで構成されている。
図9は、主成分分析処理及び主成分回帰モデル作成処理の流れを説明する図である。図9で図2及び図6と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図9に示されるように、計測DB50等に蓄積された計測データから、運転条件についてのサンプル×変数の2次元データXが取り出され主成分分析処理44aが行われてローディング行列P及び主成分tを得る。次に、計測DB50等に蓄積された計測データから、運転指標についての2次元データYが取り出され、Yと主成分分析処理44aで得られた主成分tとにより主成分回帰モデル作成処理45aが行われて回帰行列Qを得る。以下の数式4に示す回帰モデル60a作成(主成分分析)用のデータ行列Xの各行はサンプルに対応し、各列は変数に対応する。ここで、サンプルの数(行列)はM、変数の数(列数)はNである。
【0075】
【数4】

【0076】
主成分分析処理44aで得られたローディング行列(モデル係数行列)Pと主成分回帰処理44bで得られた回帰行列Qとを共に回帰モデル60aとして記録装置31に格納する。以下では、主成分分析としてNIPALS(Nonlinear Iterative Partial Least Squares)アルゴリズムを用いる(例えば、前述した非特許文献2を参照)。
主成分分析モデル係数Pは主成分数をAとしたN行A列の行列である。主成分数Aとしては例えば上記非特許文献2記載の累積因子寄与率=80%となる値とする。主成分分析モデル係数Pは以下の1)から7)のようにして求める。
【0077】
1)pに適当な初期値を与える。ここでは、データ行列Xの行のうち分散最大の行(横ベクトル)の転置をpの初期値とする。
2)
【0078】
【数5】

3)前回のスコアt(k−1)と現在のスコアt(k)とを比較し、
【0079】
【数6】

なら収束であり6)へ進む。
4)
【0080】
【数7】

5)
【0081】
【数8】

として2)へ戻る。
6)次の主成分の計算が必要ならX=X−tpとして1)へ戻って繰り返す。不要なら終了する。
7)以上のようにして1)〜6)の処理をA個の縦ベクトルpが得られるまで行い、得られた縦ベクトルpを順に左から並べて主成分分析モデル係数Pを得る。
【0082】
回帰行列Qの求め方について説明する前に、主成分分析について少し詳しく説明する。主成分軸はスコアtの二乗和Sが最大となるように求められる。二乗和Sはローディング係数pの関数であるため、二乗和Sが最大になるローディング係数pを決定する必要がある。但し、ローディング係数pの二乗和=1という制約条件を満たす必要があるため、Lagrangeの未定乗数法が用いられる。この場合、λを未定乗数として、G(p,p,λ)(説明の便宜上、データは2次元とする)を定義し、このG(p,p,λ)を最大とするp,p,λを決定する。G(p,p,λ)をp及びpで偏微分した式は以下の数式9のように表される。
【0083】
【数9】

【0084】
ここで、pはp,pを並べた縦ベクトルである。数式9はXXの固有ベクトルがpであり、その固有値がλであることを示している。
さて、次に回帰行列Qの求め方(図9の主成分回帰モデル作成処理45a)について説明する。いま、Yを1変数yとした場合、上述した主成分スコアt(縦ベクトル)を第1主成分から第A主成分まで並べた行列をTとし、bをA行1列の回帰ベクトルとすると、主成分回帰モデルは、以下の数式10となる。
【0085】
【数10】

【0086】
ここで、yはA行1列の縦ベクトルである。数式10のbは、以下の数式11のようにして求められる。
【0087】
【数11】

【0088】
数式11で、Λは上述した固有値λを要素とする対角行列である。回帰ベクトルQは1行A列であるため、Q=bとして求められる。yが多変数(=R)の場合、bはA行R列の回帰行列B、yはA行R列の行列Yとなり、数式10と同様にY=TBとなる。この場合もBは数式11と同様にB=Λ−1Yを用いて求められる。回帰行列QはR行A列であるため、Q=Bとして求められる。
【0089】
以上のようにして得られた主成分回帰モデルの係数Pと回帰行列Qとを用いて、例えば運転指標推定値y=Qtの最大化の場合であれば、以下の数式12のように最適化問題(線形計画法)として定式化される(図9の運転条件最適化46aの処理)。
図9に示されるように、制約条件等はコンピュータ30のキーボード、マウス等の入力部34から与えることができ、最適運転条件値Xopt65aはコンピュータ30のディスプレイ等の出力部33に出力(表示)して、監視員(または専門家)35に示すことができる。
【0090】
【数12】

【0091】
なお、数式12は、元の変数に対して例えば平均値0、分散1となるように標準化された後の変数に対する定式化である。標準化後の定式化で得られた最適解をtoptとし、これより得られるこのときの運転状態変数(標準化後の最適運転条件値65a)と運転指標(標準化後の最適運転指標)の推定値とを各々xopt=Ptopt、yopt=Qtoptと表すと、標準化前の元の単位系での値で表すには以下の数式13,14のようになり、実際のプラントに実装するときにはこのXopt、Yoptを用いる。
【0092】
【数13】

【数14】

【0093】
opt:標準化された変数(単位系)での最適条件
opt:標準化される前の変数(単位系)での最適条件
opt:標準化された変数(単位系)での最適運転指標
opt:標準化される前の変数(単位系)での最適運転指標
:X平均値
:X標準偏差
:Y平均値
:Y標準偏差
【0094】
ここで、X、Yは複数の変数からなるためベクトルであり、その平均値や標準偏差もベクトルとしている。Ys.yopt等のベクトル同士の積において、間に「.」を記しているのはベクトルの各要素同士の積として得られるベクトルを表す。
【0095】
以上のように、本発明の実施例1によれば、コンピュータ30とネットワーク20を介して接続されたプラント1等から記録装置14に収集されたセンサデータが遠隔で送信される。コンピュータ30の運転状態データ取得部41は、プラント1等における複数のセンサ13により測定されたプラント1等の運転状態を示す運転状態データS−DATAを取得する。運転指標データ取得部42は、運転状態データ取得部41により取得された運転状態データS−DATAに基づき、プラント1等の運転を評価する運転指標データI−DATAを求める。計測データ記録部43は、運転状態データ取得部41により取得された運転状態データS−DATAと運転指標データ取得部42により求められた運転指標データI−DATAとを所定の項目(例えば、取得タイミング欄51に示される取得タイミング)に基づき関連させた一組の計測データとし、当該計測データを計測DB50に記録する。回帰モデル作成部44は、計測DB50に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数(複数あるものと想定)を目的変数として所定の多変量解析を行って回帰モデル60を作成する。回帰モデル60は、温度等の説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分z1等へ変換する成分変換部46と、成分変換部46により変換された成分z1等から濃度等の目的変数を予測する予測部47と、成分変換部46の変換方法に対応した方法で成分Z1等から温度等の説明変数を推定する逆変換部48とを有している。一般に説明変数は多数あり、互いに相関を持っている。そこで成分変換部46は、これらの説明変数を多変量解析により互いに無相関なかつ元の説明変数の数よりも少ない(中間変数である)成分z1等に変換(集約・圧縮)する。この変換は、一般に説明変数同士が互いに持っている相関を、互いに無相関な成分にまとめていることになる。予測部47は、上述のように変換された成分z1等から目的変数を予測する。
以上より、成分変換部46と予測部47とを組み合わせることにより、説明変数から目的変数を予測することができる。回帰モデル60は、成分z1等から予測部47により目的変数を表す(予測する)ことができるが、同時に成分z1等が与えられた場合に、成分変換部46に対応した方法で、成分z1等に対応する元の説明変数を算出(推定)する(逆変換する)ことができる。これは、成分z1等が元の説明変数同士の相関を集約しているので、成分z1等から逆にこの相関を満たす元の説明変数の値を表すものである。運転指標変数最適化部45は、回帰モデル作成部44により作成された回帰モデル60に基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める。より詳しくは、逆変換部48により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ予測部47により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、当該説明変数値をプラント1等の最適な運転条件とする。
【0096】
回帰モデル60を用いることにより、説明変数である運転状態変数の変化の仕方と目的関数である運転指標の変化の仕方とを評価することができる。但し、ここでは直接説明変数を設定するのではなく、(中間変数である)成分z1等を設定することにより、成分z1等から逆変換部48によって回帰モデル60の説明変数の推定値を算出し、予測部47を用いて運転指標の推定値を算出する。ここで、上述のようにして算出された説明変数(運転状態変数)同士は、元の(回帰モデル60の作成に用いた)データにおいて運転状態変数同士が持っていた相関を保っている。
以上のようにして、成分z1等から変数間の相関を考慮して算出(逆変換)された説明変数の推定値と、目的変数の推定値との両者を同時に評価することにより、説明変数、目的変数に関する制約を満たしつつ目的変数を最適(最大化、最小化、または望ましい所定の値に近づける)にするような成分の値を定めることができる。この結果、現実の物理量に合わせるために多大な労力が必要となる物理モデル及び計算が煩雑になる非線形最適化手法を用いることなく、安価かつ容易にモデル化ができ、人が制御・設定できる変数を用いることにより現実にプラントに実装することができ、取得したデータが示していた変数間の相関性を保った範囲で最適な運転条件を得ることができるプラントの運転条件最適化システム等を提供することができる。
【実施例2】
【0097】
実施例2では、所定の多変量解析が部分的最小二乗法(Partial Least Squares:PLS)である場合について説明する。部分的最小二乗法においても主成分回帰と同様に定式化することができ、線形計画法で解くことができる。以下では、部分的最小二乗法のアルゴリズムとして非特許文献2記載のアルゴリズムを用いる。
【0098】
図10は、部分的最小二乗法の処理の流れを説明する。図10で図2及び図6と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。
図10に示されるように、記録装置31の計測DB50等に蓄積された計測データから、正常な部分のPLSモデル60b作成用のデータについて、数式15に示される説明変数のサンプル×変数の2次元データ行列Xと目的変数のサンプル×1変数のデータベクトルyとが取り出され、入力される。
【0099】
【数15】

【0100】
図10に示されるように、部分的最小二乗法処理44bでは入力されたデータ行列X及びデータベクトルyから部分的最小二乗法係数Ppls、W、Qplsを計算し、これらをPLSモデル60bとして記録装置31に格納する。以上の関係は、以下の数式16〜18に示されている。ここで、N種類のデータをA種類の成分に変換することを考えた場合、Tplsは説明変数の線形結合である潜在変数のM行A列の行列、Pplsはローディング係数のN行A列の行列、Qplsは1行A列の横ベクトル、WはPLS重みと呼ばれるN行A列の行列である。
【0101】
【数16】

【数17】

【数18】

【0102】
A=1成分の場合のPLSモデルは以下の数式19,20から成り立っている。
【0103】
【数19】

【数20】

【0104】
数式19,20に示されるように、PLSモデルでは、データ行列Xの一部が潜在変数tを通して実現され、データベクトルyのモデリングに用いられている。潜在変数tは数式21のようになる。
【0105】
【数21】

【0106】
ここで、wはPLS重みベクトル(N行1列の縦ベクトル)であり、そのノルムは数式22に示されるように1である。
【0107】
【数22】

【0108】
PLSモデルの構築規準は、データベクトルyと潜在変数tとの相関を大きくすると同時に潜在変数tの分散を大きくし、データ行列Xに含まれる情報を多く用いることにあるとされている。そこで、数式23で示されるデータベクトルyと潜在変数tとの共分散である内積Sを考え、数式22の制約条件下でSが最大の場合を最適なPLSモデルと考える。
【0109】
【数23】

【0110】
このため、Lagrangeの未定乗数法を用いる。途中は省略するが非特許文献2を参照されたい。数式23が最大となる最適なwは数式24となり、数式25,26を得る。潜在変数tは数式21(t=Xw)により求まる。
【0111】
【数24】

【数25】

【数26】

【0112】
A=2成分の場合は、最終的な予測モデル式は後述する数式28,29で表現することができる。部分的最小二乗法の場合も主成分分析の場合と同様に、潜在変数の行列Tplsは左の列から分散の大きい順に並んでいる。分散を左の列から順に積算していく場合、分散全体の和(データ行列Xと潜在変数の行列Tplsとで全列の分散全体の和は一致する。)に対する積算分の比率(累積因子寄与率と呼ばれる)が80%に達するものが潜在変数の数として適当であると考えられるため、例えばこれをAの値として採用する。具体的には、taを潜在行列Tの第a列、σtaをtaの標準偏差としたとき、以下の数式27のようになる。
【0113】
【数27】

【0114】
A=2成分のPLSモデル式は、以下の数式28,29のように書くことができる。
【0115】
【数28】

【数29】

【0116】
1番目の成分に関係する係数は数式30〜33により算出される。
【0117】
【数30】

【数31】

【数32】

【数33】

【0118】
2番目の成分は、1番目の成分に関係しない成分を求めるので、数式28,29を次の数式34,35で変換する。
【0119】
【数34】

【数35】

【0120】
よって、2番目の成分に関係する係数は以下の数式36〜39より求めることができる。
【0121】
【数36】

【数37】

【数38】

【数39】

【0122】
成分が3より多い場合も以上と同様にして求めることができる。一般化すると、PLSのアルゴリズムは以下の1)〜8)(数式40〜49)となる。
【0123】
1)
【数40】

【数41】

2)
【数42】

3)
【数43】

4)
【数44】

5)
【数45】

6)
【数46】

7)
【数47】

【数48】

【数49】

8)次のPLS成分が必要なら3)へ戻って繰り返し、不要なら終了する。
【0124】
成分数=Aの場合、PplsはN行A列、Qplsは1行A列の横ベクトル、WはN行A列の行列となる。以上のようにして得られたPLSモデルの係数PplsとQplsとを用いて、例えば運転指標推定値y=Qplstの最大化の場合であれば、以下の数式50のように最適化問題(線形計画法)として定式化することができる(図10の運転条件最適化45b)。
図10に示されるように、制約条件等はコンピュータ30のキーボード、マウス等の入力部34から与えることができ、最適運転条件値Xopt65bはコンピュータ30のディスプレイ等の出力部33に出力(表示)して、監視員(または専門家)35に示すことができる。
【0125】
【数50】

【0126】
なお、実施例1で説明した主成分回帰の場合と同様に、ここに記したのは平均値ゼロ、標準偏差1に標準化した後の変数についての最適化であり、これを元の単位系の変数値に戻す場合には前記と同様の処理を行う。詳しくは、標準化後の定式化で得られた最適解をtoptとし、これより得られるこのときの運転状態変数(標準化後の最適運転条件値65b)と運転指標(標準化後の最適運転指標)の推定値とを各々xopt=Pplsopt、yopt=Qplsoptと表すと、標準化前の元の単位系での値で表すには以下の数式13,14(再掲)のようになり、実際のプラントに実装するときにはこのXopt、Yoptを用いる。
【0127】
[数13]
opt=Y.yopt+Y
[数14]
opt=X.xopt+X
【0128】
opt:標準化された変数(単位系)での最適条件
opt:標準化される前の変数(単位系)での最適条件
opt:標準化された変数(単位系)での最適運転指標
opt:標準化される前の変数(単位系)での最適運転指標
:X平均値
:X標準偏差
:Y平均値
:Y標準偏差
ここでX、Yは複数の変数からなるためベクトルであり、その平均値や標準偏差もベクトルとしている。Ys.yopt等のベクトル同士の積において、間に「.」を記しているのはベクトルの各要素同士の積として得られるベクトルを表す。
【0129】
目的関数は線形でなく、運転指標(y=Qplst)に関する非線形な関数fで表されたり、制約条件が運転条件(x=Pplst)、運転指標(y=Qplst)に関する非線形な関数gで表される場合、言い換えれば評価関数が目的変数に関する非線形な式(例:2次式)でありかつ制約条件が説明変数に関する非線形な式bである場合には、一般的に以下の数式51のように表され、最適化手法として非線形最適化手法(例:二次計画法)を用いることにより解くことができる。
【0130】
【数51】

【0131】
以上のように、本発明の実施例2によれば、所定の多変量解析が部分的最小二乗法PLSである場合においても主成分回帰と同様に定式化することができ、線形計画法で解くことができる。部分的最小二乗法では、記録装置31の計測DB50等に蓄積された計測データから、正常な部分のPLSモデル作成用のデータについて、数式15に示される説明変数のサンプル×変数の2次元データ行列Xとの目的変数のサンプル×1変数のデータベクトルyとが取り出され、入力される。入力されたデータ行列X及びデータベクトルyから部分的最小二乗法Ppls、W、Qplsを計算し、これらをPLSモデル60bとして記録装置31に格納する。N種類のデータをA種類の成分に変換する。累積因子寄与率が80%に達するものが潜在変数の数として適当であると考えられるため、例えばこれをAの値として採用する。PLSのアルゴリズムは上述した1)から8)となる。成分数=Aの場合、PplsはN行A列、Qplsは1行A列の横ベクトル、WはN行A列の行列となる。以上のようにして得られたPLSモデルの係数PplsとQplsとを用いて、例えば運転指標推定値y=Qplstの最大化の場合であれば、上記数式50のように最適化問題(線形計画法)として定式化することができる。この結果、所定の多変量解析が部分的最小二乗法PLSである場合においても、現実の物理量に合わせるために多大な労力が必要となる物理モデル及び計算が煩雑になる非線形最適化手法を用いることなく、安価かつ容易にモデル化ができ、人が制御・設定できる変数を用いることにより現実にプラントに実装することができ、取得したデータが示していた変数間の相関性を保った範囲内で最適な運転条件を得ることができるプラントの運転条件最適化システム等を提供することができる。
【実施例3】
【0132】
実施例3では、図1の運転指標データ取得部42により求められる運転指標データが複数ある場合について、より詳しく説明する。この場合、計測データ記録部43は、運転状態データ取得部41により取得された運転状態データS−DATAと運転指標データ取得部42により求められた複数の運転指標データI−DATAとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、当該計測データを計測DB50等に記録する。
【0133】
回帰モデル作成部44は、計測DB50等に記録された複数組の計測データであって一組の計測データ中に複数の運転指標データI−DATAを含み得るものに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す複数の運転指標変数を複数の目的変数として各々所定の多変量解析を行って各回帰モデル60を作成する。この回帰モデル60は、実施例1で説明したように説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分z1等へ変換する成分変換部46と、成分変換部46により変換された部分z1等から複数の目的変数を予測する予測部47と、成分変換部46に対応した方法で成分z1等から説明変数を推定(逆変換)する逆変換部48とを有している。
【0134】
運転指標変数最適化部45は、回帰モデル作成部44により作成された回帰モデル60に基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める。詳しくは、逆変換部48により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ、予測部47により予測された複数の目的変数に関する各評価関数に基づく一つの評価関数を考え、この一つの評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、この説明変数値を最適な運転条件65とする。ここで、上記一つの評価関数は各評価関数の所定の重み付け和により求めることが好適である。
【0135】
以上のように、最適化する対象の目的変数(運転指標)が複数個あり、各運転指標についての評価関数を同時に最適化する部分(各評価関数を最適化したい場合)、それらの評価関数を組み合わせ、全体として評価する一つの評価関数を算出する。具体的には、各評価関数に対する重み付き和を新しい一つの評価関数とする。例えば運転指標が効率であり、複数種類の効率があってそれらを同時に最大化するような場合、評価関数は運転指標である効率そのものであり、y=Qtで表される。複数の指標を考慮した新しい評価関数はyの各要素に対する重み付き和となる。それぞれに対する重みをw1、w2、……、wnとし、これを並べた横ベクトルをw=[w1、w2、……、wn]とすると運転指標の重み付き和は以下の数式52で表される。
【0136】
【数52】

【0137】
従って、最適化問題は以下の数式53で表される。
【0138】
【数53】

【0139】
なお、各目的変数に対する評価関数が目的変数の何らかの関数で表されている場合には、その重み付き和は以下の数式54のようになる。
【0140】
【数54】

【0141】
重みw=[w1、w2、……、wn]としては、例えば以下のように定めることができる。実施例1、2で作成された回帰モデル60等、PLSモデル60bにおいて、主成分回帰、部分的最小二乗法を適用する際に、一般に各変数(運転状態データx、運転指標データy)は平均値0、分散(標準偏差)1に標準化した上で上記の各モデルが作成される。ここで複数の運転指標があってyがベクトルである場合には、その各要素が平均値0、分散1に標準化されている。従って、これらのy同士を重み付けする際には、例えばすべて1に設定すればこれらは同等に重み付けされて最適化されることになる。yの中で重視したいものがある場合、その重みを10倍等に設定すればよい。以上のように、複数の評価関数の重み付け和を最適化における評価関数として設定して最適化手法で解くことにより、複数の目的変数の各々を重みで考慮した最適運転条件値65を得ることができる。
【0142】
一般に、運転指標変数最適化部45(図5参照)は、回帰モデル作成部44等で得られた回帰モデル60、制約条件、目的変数(評価関数)が複数ある場合には、各々に対する重み(目的変数が複数の場合は上記w)がコンピュータ30のキーボード、マウス等の入力部34から与えられ、線形計画法等の最適化手法により最適化が行われ、最適運転条件値65はコンピュータ30のディスプレイ等の出力部33に出力(表示)して、監視員(または専門家)35に示すことができる。
【0143】
以上のように、本発明の実施例3によれば、運転指標データ取得部42により求められる運転指標データが複数あり(最適化する対象の目的変数(運転指標)が複数個あり)、各運転指標についての評価関数を同時に最適化する場合(各評価関数を最適化したい場合)、それらの評価関数を組み合わせ、全体として評価する一つの評価関数を算出する。
具体的には、各評価関数に対する重み付き和を新しい一つの評価関数とする。複数の評価関数の重み付き和を最適化における評価関数として設定して最適化手法で解くことにより、複数の目的変数の各々を重みで考慮した最適運転条件値を得ることができる。この結果、所定の多変量解析が主成分回帰または部分的最小二乗法PLSのいずれの場合においても、現実の物理量に合わせるために多大な労力が必要となる物理モデル及び計算が煩雑になる非線形最適化手法を用いることなく、安価かつ容易にモデル化ができ、人が制御・設定できる変数を用いることにより現実にプラントに実装することができ、取得したデータが示していた変数間の相関性を保った範囲で最適な運転条件を得ることができるプラントの運転条件最適化システム等を提供することができる。
【実施例4】
【0144】
実施例4では、実施例1〜3で説明したプラント1等の運転条件最適化システム10において、運転指標変数最適化部45により得られた最適運転条件値65と運転状態データ取得部41により取得された運転状態データS−DATAとに基づき、最適運転条件値65の妥当性を評価可能に出力する妥当性評価部(妥当性評価手段)(不図示)を更に備えることができる。
【0145】
図11は、実施例1〜3で得られた最適運転条件値65(例えば最適運転条件値65b)を、例えば各運転状態変数S−DATAの度数分布と散布図とにプロットして画面(ディスプレイ等の出力部33)に表示する表示例70を示す。図11で、制御変数一覧は各運転状態変数S−DATAの例であり、散布図一覧の丸番号1、2、3、……、等は制御変数一覧の上から付された番号である。散布図一覧の対角要素は各制御変数の度数分布であり、横方向の要素はある制御変数と他の制御変数とについての散布図である。
例えば、散布図一覧の(1,1)要素は発電出力の度数分布、(1,2)要素は縦軸が発電出力で横軸が凝縮水流量とした場合の散布図、(1,3)要素は縦軸が発電出力で横軸が主蒸気流量とした場合の散布図、(以下同様)である。図11では、最適運転条件値65bを内部を黒色とした四角または丸で示し、現実のデータ(PLSモデル60b作成に用いたデータ)中、計算結果である最適運転条件値65bに近い現実の点を、内部を斜線とした四角または丸で示し、現実のデータ中で最良の運転指標を示した運転条件を、内部を灰色とした四角または丸で示している。図11に示されるように、最適運転条件値65bに近い現実の点と最適運転条件値65bの点とに基づき、得られた最適運転条件値65bの現実の妥当性を評価することができる。
【0146】
以上のように、本発明の実施例4によれば、実施例1〜3で説明したプラント1等の運転条件最適化システム10において、運転指標変数最適化部45により得られた最適運転条件値65bと運転状態データ取得部41により取得された運転状態データS−DATAとに基づき、最適運転条件値65bの妥当性を評価可能に出力する妥当性評価部を更に備えることができる。図11に示されるように、最適運転条件値65bに近い現実の点と最適運転条件値65bの点とに基づき、得られた最適運転条件値65bの現実の妥当性を評価することができる。
【実施例5】
【0147】
上述したように、プラント1等として発電プラントを例に取上げ、運転状態データS−DATAは発電プラントにおける流量、圧力、温度のいずれか1つ以上を含むものとし、運転指標データI−DATAは効率を含むものとした。しかし、本発明の運転条件最適化システム10が適用されるプラントは発電プラントに限定されるものではなく、製造プラント等であってもよいことは勿論であり、この場合、運転状態データS−DATA、運転指標データI−DATAは適宜設定可能である。以下、発電プラントの場合における諸変数につき例示する。
【0148】
ある発電プラントにおいて、以下の運転状態変数S−DATAについて、3つの運転指標データI−DATAを表すPLSモデル60bを作成し、これにより運転指標を最適化する運転条件を抽出する。図12は7つの運転状態変数S−DATAを例示し、図13は3つの運転指標変数I−DATAを例示する。
図14は7つの運転状態変数S−DATAの時系列グラフ80を示し、図15は3つの運転指標変数I−DATAの時系列グラフ90を示す。図16は、得られたPLSモデル60bを示す。図17は、得られたPLSモデル60bに基づいて3つの運転指標変数I−DATAを重み付けし、線形計画法で最適化したときの結果(最適化結果100)を示す。
図17に示されるように、重みとしては[w1,w2,w3]=[1,1,1],[10,1,1],[1,1,10],[1,10,1]の4通りについて実施した。図18は、得られた最適運転条件値65bの妥当性の評価のための画面表示例70’を示す。図18は、図11の表示例70に示した最適運転条件値65bの妥当性評価(散布図一覧)中、(2,1)要素に対応する1つの散布図を抜き出して表示した表示例70’である。
図18で、横軸は発電出力、縦軸は凝縮水流量であり、菱形が実績データ、四角が高効率運転条件、丸が実績データ(類似データ)、三角が実績データ(最高効率)である。図18に示されるように、両変数は互いに相関を持っているため、この相関を保った範囲で最適運転条件値65bを設定する必要がある。図18では相関を保っている既存のデータの範囲内に最適運転条件値65b(四角)もプロットされており、得られた最適条件も相関を保っていることがわかる。既存データ(菱形)中で最高の効率を示したデータ(三角)と比較すると非常に近い条件となっており、現実の状況と適合していることを示している。即ち、実績データ(菱形)が示していた変数間の相関性を保った範囲で最適運転条件値65bを得ることができると共に、得られた最適運転条件値65bの現実の妥当性を評価することができる。
【実施例6】
【0149】
実施例6では、上述した実施例1等において、プラント1等が顧客のプラントである場合のビジネスモデルについて説明する。図19は、プラント1等が顧客のプラントである場合の運転条件最適化システム10’を示す。図19で図1と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図19の顧客プラント1’は図1のプラント1に対応し、顧客プラント2’は図1のプラント2に対応している(以下同様に「顧客プラント1’等」と言う。)。顧客プラント1’内のMES11’は図1のMES1に対応し、DCS12’は図1のDCS12に対応している(以下同様)。
図19に示されるように、コンピュータ30の機能ブロック40には以下の機能が追加されている。即ち、運転指標変数最適化部45により求められた最適運転条件値65等(最適な運転条件)を顧客のプラント1’等側に実装する最適運転条件値実装部(最適運転条件値実装手段)36と、最適運転条件値実装部36による実装前後の所定の期間における顧客プラント1’等の運転を評価する運転指標データI−DATAに基づき、顧客の利益増加及び/または費用節減効果を算出する利益等算出部(利益等算出手段)37と、利益等算出部37により算出された顧客の利益増加及び/または費用節減効果に基づく対価を徴収する対価徴収部(対価徴収手段)38とを更に備えている。
【0150】
最適運転条件値実装部36は、顧客の運転状態データS−DATA、運転指標データI−DATAから回帰モデル化/PLSモデル化を行って得られた最適運転条件値65等を、図19に示されるように遠隔のネットワーク20経由等により顧客の制御システム(MES11’、DCS12’)に実装する。この条件設定前後の一定期間の運転指標(効率)データI−DATAを蓄積し、これに基づいて顧客の利益増加または費用節減効果を算出し、その一定割合をサービス料として顧客から徴収する。
【0151】
図20は、対価徴収部38が対価を徴収する際に発行する請求書例110を示す。図20の累積効果に示されるように、例えば発電プラントにおいて、同出力で燃料費用が1ヶ月で148.8万円節減できたと推定されるため、その5%である74,400円を費用として請求している。顧客側で費用節減効果をわかりやすくするように、グラフで効率の向上を視覚的に示している。この請求書110を郵送で顧客に送ってもよいし、電子的なデータ(例えばe−メール)として顧客に送付したり、コンピュータ30またはネットワーク20に接続されて顧客からアクセス可能な他のコンピュータを介して、Web上で顧客が随時閲覧できるようにしてもよい。以上のようにして、本発明の運転条件最適化システム10’を用いたビジネスモデルを構築することができる。
【実施例7】
【0152】
図21は、上述した各実施例を実現するための本発明のコンピュータ・プログラム(プラントの運転条件最適化プログラム)を実行するためのコンピュータ30の内部回路120を示すブロック図である。図21に示されるように、CPU121、ROM122、RAM123、画像制御部125、コントローラ126、入力制御部128及び外部I/F(インタフェース)部129はバス130に接続されている。図21において、上述の本発明のコンピュータ・プログラムは,ROM122、HD(ハードディスク)等の記録装置31、またはDVD若しくはCD−ROM127等の記録媒体(脱着可能な記録媒体を含む)に記録されている。記録装置31には上述した計測DB50等、回帰モデル60等、PLSモデル60bが記録されている。
本発明のコンピュータ・プログラムは、ROM122からバス130を介し、あるいは記録装置31またはDVD若しくはCD−ROM127等の記録媒体からコントローラ126を経由してバス130を介しRAM123へロードされる。入力制御部128は、マウス、テンキー等の入力操作部34と接続され入力制御等を行う。画像メモリであるVRAM124はコンピュータ30のディスプレイ等の出力部33の少なくとも一画面分のデータ容量に相当する容量を有しており、画像制御部125はVRAM124のデータを画像データへ変換して出力部33へ送出する機能を有している。このようにして妥当性評価部の画面表示機能が実行される。外部I/F部129は入出力インタフェース機能を有しており、これによりコンピュータ30はルータ25、ネットワーク20、プラント1等、プラント1’等と接続されている。以上のようにCPU121が本発明のコンピュータ・プログラムを実行することにより、本発明の目的を達成することができる。
【実施例8】
【0153】
図22は、本発明の実施例8に係るプラントの運転条件最適化システムにおける処理の流れを示す図である。図22において、図1、図2、図5等と同じ符号を付した個所は同じ要素または機能を示すため、説明は省略する。
前記同様に、データ取得装置49は、複数のセンサ13により測定されたプラント1等の運転状態を示す運転状態データS−DATAを取得する。データ取得装置49は、運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データS−DATAに対応するタイミングで、別途センサ13または分析計(不図示)で測定及び評価を行うことにより、運転指標データI−DATAを取得する。あるいは、運転状態データ取得ステップで取得された運転データS−DATAに基づき、プラント1等の運転を評価する運転指標データI−DATAを求めてもよい。データ取得装置49は、運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データS−DATAと運転指標データ取得ステップで求められた運転指標データI−DATAとを所定の項目(例えば、図2の取得タイミング欄51に示される取得タイミング)に基づき、関連させた一組の計測データとし、当該計測データを記録装置31内の計測DB50に記録する。以上のデータ取得装置49の機能はコンピュータ30の機能(プラントの運転条件最適化プログラム)の一部として実現することができるが、データ取得装置49はコンピュータ30とは別のコンピュータとして実現することが好適である。
なお、計測DB50に記録される計測データは、例えば前述した図7のようなものである。図7において、効率は運転状態データから物理的な数式等により求められる場合も多い。例えば、発電プラントであれば、効率はエンタルピー計算等の複雑な数式とテーブルとから求められることになる。
【0154】
図22の予測モデル作成手段61には、過去の通常運転時の計測データがモデル作成用データとして計測DB50から入力される。予測モデル作成手段61は、モデル作成用データを用いて多変量解析エンジンにより予測モデル60cを作成して記録装置31に記憶する。
なお、予測モデル60cは、請求項28に記載するように、元の説明変数と非線形処理を施して得られた新たな変数との全体か、またはそのうち変数減少法等により一部の変数を抽出して予測モデルの説明変数とし、これに対して運転指標変数を目的変数とする重回帰モデルを用いることができる。ここで、変数減少法は、例えば、竹内寿一郎による「重回帰分析における変数選択について」(日本APL協会、2004年シンポジウム論文集)に記載されている。
また、予測モデル60cは、請求項30や請求項31に記載するように、元の説明変数と非線形処理を施して得られた新たな変数との全体を予測モデルの説明変数とし、これに対して運転指標変数を目的変数とする主成分回帰モデルや部分的最小二乗法(PLS)モデルを用いることができる。
更に、予測モデル60cには、請求項32に記載するように、元の説明変数及び運転指標変数を学習させて構築したニューラルネットワークを用いることもできる。
【0155】
一方、モデル作成用データは成分変換手段62にも入力されている。
一般に、説明変数は多数あり、互いに相関を持っている。そこで、成分変換手段62では、入力されるモデル作成用データの中の説明変数を主成分分析や部分的最小二乗法等の多変量解析により互いに無相関な、元の説明変数よりも数が少ない中間変数としての「成分」に集約・圧縮することにより成分変換を行う。ここで、「成分」は元の説明変数の空間中の部分空間内の座標に対応し、この部分空間は元の説明変数の空間の一部を構成している。元の説明変数を「成分」に変換することは、元の説明変数を部分空間に射影し、その点の部分空間の座標を求めることであり、この射影に対応する変換係数行列62aが成分変換手段62となる。
【0156】
図22には示されていないが、請求項25におけるQ統計量・T統計量計算手段は、元の説明変数の空間内の任意の点と部分空間上の射影点との距離の2乗をQ統計量として計算し、前記射影点と前記部分空間の中心との正規化された距離の2乗をT統計量として計算する。これらのQ統計量及びT統計量は、ゼロ以上の値である。
成分変換手段62により得られた「成分」により、元の説明変数の空間内に部分空間が形成され、この部分空間は、モデル作成用データの説明変数同士が持っていた相関を保っており、部分空間上の射影点は説明変数の空間内では互いに相関を保っていることになる。
ここで、説明変数の空間内の任意の点(運転状態に対応するベクトル)から部分空間上に射影して得られた点は、元の説明変数が部分空間に含まれなければ、その部分空間上の元の説明変数に最も近い点であるので、元の説明変数の部分空間上の近似点となる。説明変数の空間内の任意の点とその部分空間上の射影点との距離の2乗(説明変数の空間内の2ノルム)を前記Q統計量と呼ぶ。このQ統計量は、説明変数の空間内の任意の点と部分空間との距離であり、モデル作成用データの説明変数同士が持っていた相関からの乖離に対応している。
また、説明変数の空間内の任意の点から部分空間内に射影した点と、この部分空間の中心(モデル作成用データの説明変数の空間内の平均に対応し、部分空間内の座標の中心:ゼロ)との、正規化された距離の2乗を前記T統計量と呼ぶ。正規化された距離とは、座標(「成分」)ごとに重み付けされた距離であり、この重みは、「成分」ごとに元のデータから計算される当該「成分」の分散の逆数として定められるものである。これは、複数の説明変数を含めた平均値からの外れ度を示している。
なお、図23は、Q統計量及びT統計量を説明するための概念図である。
【0157】
図22におけるQ統計量・T統計量上限値設定手段63は、モデル作成用データの運転状態変数の各サンプルについて、例えば、Q統計量及びT統計量の外れ値を除いた最大値を上限値として設定し、あるいは、Q統計量及びT統計量の外れ値を除いた値の分布に基づいて上限値を設定する。
これらの上限値を制約条件とし、Q統計量を上限値以下とすることで元の説明変数同士が持っていた相関を保ったデータとすることができ、特にQ統計量はゼロに近いほど変数間の相関が高いことを示すので、上限値を小さく設定すれば変数間の相関がより高い場合のみ許容することができる。また、T統計量を上限値以下とすることにより、元の説明変数を平均値から大きく外れないようにすることができ、多変数空間内で存在していた範囲を逸脱することがない。
【0158】
図22の運転条件最適化手段45cには、予測モデル60c、Q統計量・T統計量の上限値等により定まる制約条件、及び、運転状態指数と運転指標、またはこれらから算出されるプラント状態量に関する制約条件、目的変数(評価関数)が入力され、数理計画法等の最適化手法により最適化が行われて最適運転条件値が出力される。
ここで、予測モデルは一般に非線形であるため、これを説明変数(運転状態変数)の関数として、y^=f(x1,x2,……,xN)と表すものとする。
運転条件最適化手段45cは、上記予測モデルを用いて、最適化問題として数式55に示す定式化を行う。
なお、この最適化問題では最大化が目的であるため、数式55ではmaximize …となっているが、最小化が目的の最適化問題では、minimize …となる。
【数55】

【0159】
ここで、y^=f(x1,x2,……,xN)はx1,x2,……,xNに基づく予測モデルによる予測値、Q,Tは決定変数から求まるQ統計量及びT統計量であり、厳密には、Q(x1,x2,……,xN),T(x1,x2,……,xN)と表現してもよい。Q,Tに「 ̄」を付したものは制約条件となるQ統計量の上限値,T統計量の上限値であり、x,xは各決定変数の下限値,上限値である。
なお、上記最適化問題を解くための最適化手法としては、柳浦,茨木による「組合せ最適化−メタ線略を中心として−」(経営科学のニューフロンティア2、朝倉書店、2001年)や、J. Kennedy and R. Eberhartによる“A discrete binary version of the particle swarm optimization algorithm”(Proc. Of the IEEE conference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC’97), pp.4104-4109,1997年)等に記載された準ニュートン法、逐次二次計画法、PSO(Particle Swarm Optimization)等を用いることができる。
【0160】
次に、この実施例において、多変量解析として主成分分析処理を行う場合について説明する。
例えば、元の運転状態変数に非線形処理として2乗を適用し、元の運転状態変数と、得られた2乗の項との全体を説明変数xとして以下の主成分分析処理を行う。
記憶装置31の計測DB50に蓄積された計測データから、運転条件についてのサンプル×変数の2次元データXと運転指標についての同様の2次元データYとが取り出され、コンピュータ30に入力される。
これらのデータは、図8に示したように時刻や変数名を除いた正味のデータだけで構成されており、各行がサンプルに対応して各列が変数に対応する、サンプル×変数の2次元データであり、例えば2次元データXは数式56に対応する。
【0161】
【数56】

ここで、変数の数(列数)はN、サンプルの数(行数)はMである。
【0162】
なお、以下では、実施例1と同様に、非特許文献2に記載されたNIPALSアルゴリズムを用いることとする。
主成分分析処理では、入力された2次元データXから主成分分析モデル係数Pを計算し、これを記憶装置31(モデルデータベース)に格納する。Pは主成分数をAとすると、N行A列の行列である。
Aとしては、例えば非特許文献2に記載された累積因子寄与率80%となる値とする。
【0163】
主成分分析モデル係数Pは、以下のようにして求める。
1)行列Xのうち分散最大の行(横ベクトル)の転置をpの初期値とする。
2)次に、数式57を計算する。
【数57】

3)前回のスコアt(k−1)と現在のスコアt(k)とを比較し、||t(k)−t(k−1)||<10−12なら収束で6)へ移行する。
4)次に、数式58を計算する。
【数58】

5)更に、数式59を計算して2)へ移行する。
【数59】

6)次の主成分の計算が必要ならX=X−tpとして1)へ移行し、不要なら終了する。
7)このようにして1)〜6)の処理をA個の縦ベクトルpが得られるまで行い、得られたpを順に左から並べてPを得る。
【0164】
Qの算出:上記により得られたtを並べた行列TとYとから、Qを最小二乗法により求める。
Q=(TT)−1
【0165】
次に、成分変換手段として主成分分析を用いる場合のQ統計量・T統計量の計算方法について説明する。
この場合には、元の運転状態変数を説明変数xとして上記と同様に主成分分析処理を行い、得られた係数行列Pを用いて、Q統計量・T統計量を数式60、数式61によりそれぞれ計算する。
【0166】
【数60】

数式60において、x^は、与えられた説明変数のベクトルxの部分空間上の近似値であって、元の状態変数空間内の元の点から部分空間へ射影した点であり、x^=Pt=PPxで表される。
【数61】

数式61において、tは与えられた説明変数のベクトルxから成分変換手段62により得られた成分ベクトルt=Pxのa番目の座標値、σtaはモデル作成用データについて、成分変換手段62により変換された成分についてのa番目の座標値に関する標準偏差である。また、Aは「成分」の数(部分空間の次元)である。
【0167】
これらに基づき、最適化問題は前述した数式55のように定式化される。参考のために、数式55を再掲する。
【数55】

【0168】
なお、上記は、元の変数に対して例えば平均値0、分散1となるように標準化された後の変数に対する定式化である。標準化後の定式化で得られた最適解をxopt,xopt,……,xoptとし、xopt,xopt,……,xoptをベクトルとしてxoptとすると共に、これより得られるこのときの運転状態変数(標準化後の最適運転条件)と運転指標変数(標準化後の最適運転指標)の推定値をそれぞれxopt,yoptと表すと、標準化前の元の単位系での値で表すには以下の数式62、数式63のようになり、実際のプラントに実装するときにはこのXopt,Yoptを用いる。
【0169】
【数62】

【数63】

【0170】
opt:標準化された変数(単位系)での最適条件
opt:標準化される前の変数(単位系)での最適条件
opt:標準化された変数(単位系)での最適運転指標
opt:標準化される前の変数(単位系)での最適運転指標
:X平均値
:X標準偏差
:Y平均値
:Y標準偏差
【0171】
なお、ここでX,Yは複数の変数からなるためベクトルであり、その平均値や標準偏差値もベクトルとしている。またYs.yopt等のベクトル同士の積にとの間に“.”を記しているのは各要素同士の積として得られるベクトルを表す。
【0172】
次いで、この実施例において、多変量解析として部分的最小二乗法を用いる場合について説明する。なお、部分的最小二乗法のアルゴリズムとしては、非特許文献2に記載されたアルゴリズムを用いる。
例えば、元の運転状態変数に非線形処理として2乗を適用し、元の運転状態変数と得られた2乗の項との全体を説明変数xとして、以下の部分的最小二乗法モデル作成処理を行う。
記憶装置31の計測データベース50に蓄積された計測データから、正常な部分のモデル作成用データについて、数式64に示す説明変数及び目的変数のサンプル×変数の2次元データXとサンプル×1変数のyとが取り出され、入力される。
【0173】
【数64】

【0174】
部分的最小二乗法処理では、入力された2次元データから数式65に基づいて部分的最小二乗法係数P,W,Qを計算し、これを記憶装置31(モデルデータベース)に格納する。
【数65】

【0175】
次に、N種類のデータをA種類の成分に変換する。Aが2である場合は、最終的な予測モデル式は後述の数式67によって表現する。
部分的最小二乗法の場合も、主成分分析の場合と同様に潜在変数の行列Tは左の列から分散の大きい順に並んでおり、分散を左の列から順に積算したものが分散全体の和(XとTとで全列の分散全体の和は一致する)に対する比率(累積因子寄与率と呼ばれる)が80%に達する分が潜在変数の数として適当であると考えられるため、例えば、累積因子寄与率が80%となる値をAの値として採用する。
具体的には、tを潜在変数行列Tの第a列、σtaをtの標準偏差としたとき、数式66に示すとおりである。
【数66】

Aが2である場合の最終的な予測モデル式は、次式の通りである。
【数67】

【0176】
ここで、1番目の成分に関係する係数は数式68により算出される。
【数68】

【0177】
2番目の成分は、1番目の成分に関係しない成分を求めるので、数式68を数式69により変換する。
【数69】

【0178】
よって、2番目の成分に関係する係数は数式70となる。
【数70】

【0179】
なお、成分が3より多い場合も同様に求めることができる。
上記を一般化すると、数式71となる。
【数71】

【0180】
部分的最小二乗法係数であるPはN行A列、QはA行1列のベクトル、WはN行A列の行列となる。
【0181】
次に、成分変換手段として部分的最小二乗法を用いる場合のQ統計量・T統計量の計算方法について説明する。
この場合には、元の運転状態変数を説明変数xとして上記と同様に主成分分析処理を行い、得られた係数行列Pを用いて、数式72によりQ統計量を、数式73によりT統計量を計算する。
なお、請求項30に示すように、元の運転状態変数と、上記のように非線形処理(2乗)を施した変数を含めた全体をxとして行った主成分分析に基づいて、Q統計量・T統計量をそれぞれ計算してもよい。
【0182】
【数72】

【0183】
数式72において、x^は、与えられた説明変数のベクトルxのモデルの近似値(推定値)であって、変数空間内の元の点からモデル(潜在変数空間)へ射影した点であり、x^=P(WP)−1xにより表される。
【0184】
【数73】

数式73において、Tは与えられた説明変数のベクトルxから成分変換手段62により得られた成分ベクトルt=(WP)−1xのa番目の座標値に関する標準偏差であり、Aは「成分」の数(部分空間の次元)である。
【0185】
このようにして得られた部分的最小二乗法モデルの係数P,Qを用いて、例えば、目的関数が運転指標推定値の最大化であれば、以下の数式74のように最適化問題として定式化される。
【数74】

【0186】
なお、前記の主成分回帰の場合と同様に、ここに記したのは平均値ゼロ、標準偏差1に標準化した後の変数についての最適化であり、これを元の単位系の変数値に戻す場合には、前記と同様の処理を行う。
【実施例9】
【0187】
次に、本発明の実施例9を説明する。この実施例は請求項31の実施例に相当する。
フィルム状の太陽電池製造における太陽電池の製膜工程において、製膜条件によって製品の品質(太陽電池の変換効率)が変化する。品質の予測モデルとして製膜条件から変換効率を表す非線形モデルを作成し、製膜条件が最適となる製膜条件を求める。ここで、膜は10程度の層よりなり、各層について膜厚、ドープ量等、複数の製膜条件があるため全体で製膜条件(因子)は数十に及び、それらは互いに相関を持った動きをする。
この実施例では、数十の因子のうち20個の因子を、製品品質である太陽電池の変換効率が最適となるように定める。これらの20因子の一例を、図24に示す。
【0188】
ここで、これらの20因子を入力とし、変換効率を出力とする通常の(線形の)部分的最小二乗法でモデル化したところ、因子と製品品質との関係を十分にモデル化することができなかった。
そこで、各因子の2次項を含めて説明変数として部分的最小二乗法でモデル化したところ、図25に示すように推定精度が向上し、製品品質を推定するモデルとして十分な精度が得られたと判断された。
【0189】
そこで、こうして得られた予測モデルに基づき、説明変数間の相関を保ち、かつ複数の説明変数を含めた平均値からの外れ度が一定範囲にあり、また、各説明変数が上下限値に収まっているという制約の範囲内で、製品品質が最適になるような製膜条件を求めた。
この場合のQ統計量、T統計量は、それぞれ数式75、数式76に示すとおりである。なお、数式75において、非線形モデルでは、元の20個の説明変数にそれぞれの2次項が加わるため、説明変数は合計40個となっている。また、数式76において、元の説明変数の次元40から、部分空間を13次元とした。
【0190】
【数75】

【数76】

【0191】
これらを用いて最適化問題を定式化すると、数式77のようになる。
【数77】

【0192】
この最適化問題を準ニュートン法により解くことにより、図26に示すような最適条件が得られた。
この条件は現実的に実装可能であり、またこの条件による推定効率値0.919は十分に高い値であり、これまでの製造実績の経験から製品品質である変換効率の向上が期待できる条件であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は、発電プラント、製造プラント等を始めとして各種のプラントに利用可能である。
【符号の説明】
【0194】
1,1’,2,2’,3,3’:プラント(顧客プラント)
10,10’:プラント(顧客プラント)の運転条件最適化システム
11,11’:MES
12,12’:DCS
13,13’:センサ
14,14’,31:記録装置
20:ネットワーク
21,22,23,24,25:ルータ
30:コンピュータ
33:出力部
34:入力部
35:専門家(監視員)
36:最適運転条件値実装部
37:利益等算出部
38:対価徴収部
40:機能ブロック
41:運転状態データ取得部
42:運転指標データ取得部
43:計測データ記録部
44:回帰モデル作成部
44a:主成分分析処理(部)
44b:部分的最小二乗法処理
45:運転指標変数最適化部
45a,45b:運転条件最適化(部)
45c:運転条件最適化手段
46:成分変換部
47:予測部
48:逆変換部
50,50a,50b,50c:計測DB
50b−1:計測時刻欄
50b−2:圧力1欄
50b−3:温度1欄
50b−5,50c−5:効率欄
50c−1:ロット番号欄
50c−2:計測時刻1欄
50c−3:計測時刻2欄
51:計測タイミング欄
52:センサ1欄
53:センサ2欄
54:センサN欄
55:運転指標1欄
56:運転指標K欄
60,60a:回帰モデル
60b:PLSモデル
60c:予測モデル
61:予測モデル作成手段
62:成分変換手段
62a:変換係数行列
63:Q統計量・T統計量上限値設定手段
65,65a,65b:最適運転条件部
70,70’:表示例
80,90:時系列グラフ
100:最適化結果
110:RAM
120:内部ブロック
121:CPU
122:ROM
123:RAM
124:VRAM
125:画像制御部
126:コントローラ
127:記録媒体
128:入力制御部
129:外部I/F部
130:バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの運転条件最適化システムであって、
複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態データを取得する運転状態データ取得手段と、
プラントに設けられたセンサにより測定された、または前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データに基づいて求められた、プラントの運転を評価する運転指標データを取得する運転指標データ取得手段と、
前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データと前記運転指標データ取得手段により求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録する計測データ記録手段と、
前記データ記録部に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行い回帰モデルを作成する回帰モデル作成手段であって、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換手段と、該成分変換手段により変換された成分から目的変数を予測する予測手段と、該成分変換手段に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換手段とを有するものであり、
前記回帰モデル作成手段により作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める運転指標変数最適化手段であって、前記逆変換手段により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ前記予測手段により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項2】
請求項1記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記運転指標データ取得手段により求められる運転指標データが複数ある場合、
前記計測データ記録手段は、前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データと前記運転指標データ取得手段により求められた複数の運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録し、
前記回帰モデル作成手段は、前記データ記録部に記録された複数組の計測データであって一組の計測データ中に複数の運転指標データを含み得るものに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す複数の運転指標変数を複数の目的変数として各々所定の多変量解析を行い各回帰モデルを作成し、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換手段と、該成分変換手段により変換された成分から複数の目的変数を予測する予測手段と、該成分変換手段に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換手段とを有するものであり、
前記運転指標変数最適化手段は、前記回帰モデル作成手段により作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求めるものであって、前記逆変換手段により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ、前記予測手段により予測された複数の目的変数に関する各評価関数に基づく一つの評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項3】
請求項2記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記一つの評価関数は各評価関数の所定の重み付け和により求められることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記所定の多変量解析は主成分回帰であることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記所定の多変量解析は部分的最小二乗法(Partial Least Squares:PLS)であることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記評価関数が目的関数に関する線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する線形な式である場合、前記最適化は線形計画法を用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記評価関数が目的変数に関する非線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する非線形な式である場合、前記最適化は非線形計画法を用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記運転指標変数最適化手段により得られた最適な運転条件と前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データとに基づき、該最適な運転条件の妥当性を評価可能に出力する妥当性評価手段を更に備えたことを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記プラントは顧客のプラントであり、
前記運転指標変数最適化手段により求められた最適な運転条件を顧客のプラント側に実装する最適運転条件値実装手段と、
前記最適運転条件値実装手段による実装前後の所定の期間における顧客のプラントの運転を評価する運転指標データに基づき、顧客の利益増加及び/または費用節減効果を算出する利益等算出手段と、
前記利益等算出手段により算出された顧客の利益増加及び/または費用節減効果に基づく対価を徴収する対価徴収手段とを更に備えたことを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記プラントは発電プラントであり、前記運転状態データは発電プラントにおける流量、圧力、温度のいずれか1つ以上を含み、前記運転指標データは効率を含むことを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項11】
プラントの運転条件の最適化をコンピュータに実行させるプラントの運転条件最適化方法であって、
複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態データを取得する運転状態データ取得ステップと、
プラントに設けられたセンサにより測定された、または前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データに基づいて求められた、プラントの運転を評価する運転指標データを取得する運転指標データ取得ステップと、
前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データと前記運転指標データ取得ステップで求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録する計測データ記録ステップと、
前記データ記録部に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行い回帰モデルを作成する回帰モデル作成ステップであって、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、該成分変換部により変換された成分から目的変数を予測する予測部と、該成分変換部の変換に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換部とを有するものであり、
前記回帰モデル作成ステップで作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める運転指標変数最適化ステップであって、前記逆変換手段により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ前記予測手段により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とするプラントの運転条件最適化方法。
【請求項12】
請求項11記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記運転指標データ取得ステップにより求められる運転指標データが複数ある場合、
前記計測データ記録ステップは、前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データと前記運転指標データ取得ステップで求められた複数の運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録し、
前記回帰モデル作成ステップは、前記データ記録部に記録された複数組の計測データであって一組の計測データ中に複数の運転指標データを含み得るものに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す複数の運転指標変数を複数の目的変数として各々所定の多変量解析を行い各回帰モデルを作成し、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、該成分変換部により変換された成分から複数の目的変数を予測する予測部と、該成分変換部の変換に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換部とを有するものであり、
前記運転指標変数最適化ステップは、前記回帰モデル作成ステップで作成された各回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求めるものであって、前記逆変換部により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ、前記予測部により予測された複数の目的変数に関する各評価関数に基づく一つの評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とするプラントの運転条件最適化方法。
【請求項13】
請求項12記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記一つの評価関数は各評価関数の所定の重み付け和により求められることを特徴とするプラントの運転条件最適化方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記所定の多変量解析は主成分回帰であることを特徴とするプラントの運転条件最適化方法。
【請求項15】
請求項11〜13のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記所定の多変量解析は部分的最小二乗法(Partial Least Squares:PLS)であることを特徴とするプラントの運転条件最適化方法。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記評価関数が目的変数に関する線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する線形な式である場合、前記最適化は線形計画法を用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化方法。
【請求項17】
請求項11〜15のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化方法において、前記評価関数が目的変数に関する非線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する非線形な式である場合、前記最適化は非線形計画法を用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化方法。
【請求項18】
プラントの運転条件の最適化を求めるプラントの運転条件最適化プログラムであって、コンピュータに、
複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態データを取得する運転状態データ取得ステップ、
プラントに設けられたセンサにより測定された、または前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データに基づいて求められた、プラントの運転を評価する運転指標データを取得する運転指標データ取得ステップ、
前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データと前記運転指標データ取得ステップで求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録する計測データ記録ステップ、
前記データ記録部に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行い回帰モデルを作成する回帰モデル作成ステップであって、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、該成分変換部により変換された成分から目的変数を予測する予測部と、該成分変換部の変換に対応した方法で成分から説明変数を推定する逆変換部とを有するものであり、
前記回帰モデル作成ステップで作成された回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める運転指標変数最適化ステップであって、前記逆変換部により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ前記予測部により予測された目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とするステップを実行させるためのプラントの運転条件最適化プログラム。
【請求項19】
請求項18記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、前記運転指標データ取得ステップにより求められる運転指標データが複数ある場合、
前記計測データ記録ステップでは、前記運転状態データ取得ステップで取得された運転状態データと前記運転指標データ取得ステップで求められた複数の運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録し、
前記回帰モデル作成ステップでは、前記データ記録部に記録された複数組の計測データであって一組の計測データ中に複数の運転指標データを含み得るものに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す複数の運転指標変数を複数の目的変数として各々所定の多変量解析を行い各回帰モデルを作成し、該回帰モデルは、説明変数を相互に無相関でかつ元の説明変数より少ない数の成分へ変換する成分変換部と、該成分変換部により変換された成分から複数の目的変数を予測する予測部と、該成分変換部の変換に対応したプログラムで成分から説明変数を推定する逆変換部とを有するものであり、
前記運転指標変数最適化ステップでは、前記回帰モデル作成ステップで作成された各回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求めるものであって、前記逆変換部により推定された説明変数に関する制約条件を満たしつつ、前記予測部により予測された複数の目的変数に関する各評価関数に基づく一つの評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、該説明変数値を最適な運転条件とすることを特徴とするプラントの運転条件最適化プログラム。
【請求項20】
請求項19記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、前記一つの評価関数は、各評価関数の所定の重み付け和により求められることを特徴とするプラントの運転条件最適化プログラム。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、
前記所定の多変量解析は主成分回帰であることを特徴とするプラントの運転条件最適化プログラム。
【請求項22】
請求項18〜20のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、
前記所定の多変量解析は部分的最小二乗法(Partial Least Squares:PLS)であることを特徴とするプラントの運転条件最適化プログラム。
【請求項23】
請求項18〜22のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、
前記評価関数が目的変数に関する線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する線形な式である場合、前記最適化は線形計画法を用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化プログラム。
【請求項24】
請求項18〜22のいずれかに記載のプラントの運転条件最適化プログラムにおいて、
前記評価関数が目的変数に関する非線形な式でありかつ前記制約条件が説明変数に関する非線形な式である場合、前記最適化は非線形計画法を用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化プログラム。
【請求項25】
プラントの運転条件最適化システムであって、
複数のセンサにより測定されたプラントの運転状態を示す運転状態データを取得する運転状態データ取得手段と、
プラントに設けられたセンサにより測定された、または前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データに基づいて求められた、プラントの運転を評価する運転指標データを取得する運転指標データ取得手段と、
前記運転状態データ取得手段により取得された運転状態データと前記運転指標データ取得手段により求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一組の計測データとし、該計測データをデータ記録部に記録する計測データ記録手段と、
前記データ記録部に記録された複数組の計測データに基づき、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数とする予測モデルを作成する予測モデル作成手段と、
前記計測データを対象として、互いに相関を持つ説明変数を、相互に無相関であり、かつ元の説明変数より少ない数の成分であって、元の説明変数を部分空間に射影することにより設定された座標としての成分に変換する成分変換手段と、
元の説明変数の空間内の任意の点と前記部分空間上の射影点との距離の2乗をQ統計量として計算し、前記射影点と前記部分空間の中心との正規化された距離の2乗をT統計量として計算するQ統計量・T統計量計算手段と、
前記Q統計量及びT統計量から最適化における制約条件としての上限値をそれぞれ設定するQ統計量・T統計量上限値設定手段と、
前記予測モデルに基づき目的変数を最適化する説明変数を求める手段であって、前記Q統計量及びT統計量がそれぞれ前記上限値以下であることを制約条件の少なくとも一つとし、元の説明変数同士が持っていた相関を保ちつつ、前記目的変数に関する評価関数を最適化する際の説明変数値を求め、この説明変数値を最適な運転条件とする運転条件最適化手段と、
を備えたことを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項26】
請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記成分変換手段として主成分分析を用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項27】
請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記成分変換手段として部分的最小二乗法を用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項28】
請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、
前記予測モデルとして、元の運転状態変数と、元の運転状態変数に非線形変換を施して得られる新しい変数とを合わせた全変数、またはそのうちの適当な変数を抽出した変数を説明変数とし、運転指標変数を目的変数とする重回帰モデルを用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項29】
請求項28記載のプラントの運転条件最適化方法において、
前記Q統計量・T統計量計算手段が、元の説明変数と前記予測モデルの作成に用いた非線形項の一部または全部を含めた変数と、に基づいて前記Q統計量及びT統計量を計算することを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項30】
請求項28または29記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、
前記予測モデルとして、元の運転状態変数に非線形変換を施して得られる新しい変数を加えた変数を説明変数とし、運転指標変数を目的変数とする主成分回帰モデルを用い、
前記Q統計量・T統計量計算手段が、前記主成分回帰モデルの中で計算される主成分分析に基づいて前記Q統計量及びT統計量を計算することを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項31】
請求項28または29記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、
前記予測モデルとして、元の運転状態変数に非線形変換を施して得られる新しい変数を加えた変数を説明変数とし、運転指標変数を目的変数とする部分的最小二乗法モデルを用い、
前記Q統計量・T統計量計算手段が、前記予測モデルとしての部分的最小二乗法モデルに基づいて前記Q統計量及びT統計量を計算することを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。
【請求項32】
請求項25記載のプラントの運転条件最適化システムにおいて、前記予測モデルとしてニューラルネットワークを用いることを特徴とするプラントの運転条件最適化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−74007(P2012−74007A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140180(P2011−140180)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】